所有盤リストからブログのレビュー記事へのリンクをつけました
最近いろいろレビューをしていて、以前レビューをしたアルバムや曲をもう少しわかりやすくした方がいいと思い始めていました。ブログ自体でもユーザータグで曲を選択できるようにしていますが、所有盤をいちばんわかりやすく整理しているリストから直接レビュー記事に飛べた方が直感的でわかりやすいに決まっています。
既に700件近い記事を書いていますので、リストからリンクを張るのも大変でしたが、なんとなくやり始めると勢いでやめられなくなり、この1週間作業漬けになっていました。
所有盤リストを見ていただくと、各演奏の末尾に «Review» と付記してあるものは、クリックするとその演奏のレビュー記事に飛べるという仕組みです。
例えば「天地創造」では現在66種の演奏がリストアップされていますが、38種にレビュー記事があることがわかります。天地創造はずいぶんレビューした事になりますね。
こちらで見てみてください。
Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
いちおう、この工事は終了しました。
現在、もう一つリストのメンテナンスを進めているのは、演奏者のフルネーム記載化です。これまでは、たとえば”Eugen Jochum”を”Jochum”とだけ表記していましたが、本来のフルネーム表記にこつこつ書き換えています。交響曲、管弦楽曲、協奏曲、弦楽四重奏曲、ピアノトリオ、ピアノソナタくらいまでは書き換えが終わり、もう少しのところまで来ています。
普段から忙しい中アルバムを登録しているので、少々間違いがあったりすることもあるので、たまには見直してチェックした方がいいようですね。
作業も落ち着きましたので、そろそろレビューを再開したいと思います。
ヘスス・ロペス=コボス/ローザンヌ室内管の「朝」

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ヘスス・ロペス=コボス(Jesús López-Cobos)指揮のローザンヌ室内管弦楽団(Orchestre de Chambre de Lausanne)の演奏で、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」の3曲を収めたアルバム。収録は1991年2月15日から17日、スイスのラ・ショード・フォンのムジカ・テアトルでのセッション録音。手に入れたアルバムはDENONのHi Quality CDというシリーズのもの。
自宅のCDプレーヤーはただのCDプレーヤーでSACDにも対応していないので、普段は高音質のアルバムを意識して探している訳ではありませんが、ちょうどこのCDの現役盤が高音質CDだったということで、音質目当てではなく入手した次第。どちらかと言うと国内盤はあまり好きではなく、輸入盤の方が面白いものが多いので、国内盤であるという点でも所有盤としては珍しいもの。まあ、DENONなので輸入盤も何もありませんが(笑)
CDの帯には「ONE POINT EDITION」とか「2本のメイン・マイクロフォンのみによるピュアな高音質録音を高音質CDで聴く」とか、気になる人には気になるコピーが踊ります。国内市場ではこういった魅力の打ち出し方をしないとCDが売れないのかもしれませんね。
今日は視点を変えて、ヘスス・ロペス=コボスのこのアルバムを録音という視点を中心にレビューしてみましょう。
ヘスス・ロペス=コボスの演奏はこれまで2枚取りあげています。演奏者についてはそちらをご参照ください。
2012/02/01 : ハイドン–交響曲 : ヘスス・ロペス=コボス/ローザンヌ室内管のアレルヤ、ラメンタチオーネ、ホルン信号
2011/01/10 : ハイドン–協奏曲 : ナカリャコフのトランペット協奏曲
上の交響曲のアルバムは、堅実なヘスス・ロペス=コボスの指揮と、こちらもラ・ショー・ド・フォンでの名録音が相俟って素晴らしい演奏だったもの。ハイドンの交響曲の演奏の模範的名演と言える出来でした。今回もラ・ショー・ド・フォンでの録音ゆえ、音質は期待通りだと思いますが、最近流行の高音質CDということで、音質、ことさら音楽のリアリティ、キレがさらに良く聴こえるのかどうなのかがポイントになるかと思います。
今日は時間の都合から交響曲6番「朝」のみ取りあげようと思います。
Hob.I:6 / Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
気のせいか、はたまた本当に音が良いのか、聴き慣れた朝のメロディー、立体感と粒立ちがかなり良く聴こえます。オケが前にせり出して演奏している感じ。ヘスス・ロペス=コボスの指揮は、先日のホルン信号同様キリッとした秩序あるコントロール。速めのテンポでくいくい攻めて行きます。以前の記事でも触れましたが、デニス・ラッセル・デイヴィスの演奏に生気を吹き込んだような演奏。なんとなく奥行きや定位感がよく、音楽が活き活きししたように聴こえます。
意外でしたが録音の良さが際立つのは静かな2楽章。広い音場に響き渡る、そっと奏でられるメロディー。これはいいですね。少ない楽器が絡み合う様子が手に取るようにわかり、しみじみと音楽を楽しめます。迫力やダイナミックレンジを聴くというより、静かな音楽が本当に静かに落ち着いて聴こえるというのはいいものですね。オーディオ的な仕組みや理論にはあまり入り込みたくはないのですが、この肌合いの違いは確かなもの。CDのポリカーボネート素材などの違いは確かに音質の違いを生むようですね。
3楽章のメヌエットは、彫刻的なオーケストラの存在感と各楽器の音色の色彩感の鮮度が聴き所。溶け合う弦楽器、フルートの膨らんだ音色、オーボエやファゴットの柔らかな響き。まさに家の中にオーケストラがやってきたような絶妙の響きが聴かれます。律儀な演奏だけに音色の解け合いと立体感に聴神経が集中します。
フィナーレも破綻なく、速めのテンポによる安定した演奏。ラテン系のスペイン人ながらスワロフスキーに教わっただけに、誠実堅実な音楽を奏でます。まさに教科書的な誠実な演奏。フィナーレも力みすぎず、本当に誠実な演奏ですね。
続く昼も、音響的なソノリティーを存分に楽しめる演奏と録音ですが、紹介はまたの機会に。
ヘスス・ロペス=コボスの誠実な演奏を、極上の響きのラ・ショー・ド・フォンのホールで、最上のワンポイント録音、そしてそれを高音質CDに焼いたもの。演奏自体は生真面目さを感じるくらい誠実、律儀な演奏で、これもハイドンの一面を表すもの。そしてその演奏が、極上の響きで部屋に再現される素晴らしいプロダクションといえるでしょう。演奏自体の評価は[++++]とします。ただしこのアルバムには素晴らしい録音という付加価値があり、オーディオ的な面や、演奏する方が見本として聴くなどの聴き方には非常にいいアルバムだと思います。やはりこの静けさと立体感は普通のCDとは違う魅力をもっていますね。今までは食わず嫌いでしたが、レーベルごとにいろいろ高音質のものが出ているようですので、すこしかじってみたいと思います。
ファイン・アーツ四重奏団の「ひばり」

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ファイン・アーツ四重奏団(Fine Arts Quartet)によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.5「ひばり」、ヴォルフのイタリアン・セレナーデ、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲Op.59のNo.3「ラズモフスキー3番」の3曲を収めたアルバム。収録は1986年、ロンドンの聖バルナバ教会でのセッション録音。レーベルはスイス、ジュネーヴに本拠を置くLodiaというところ。
ファイン・アーツ四重奏団については以前にOp.77を収めたアルバムを取りあげています。
2011/01/04 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ファイン・アーツ四重奏団のOp.77
リンクを張った記事の演奏が1998年から1999年にかけての演奏ですので、こちらはそれより10年以上前の録音。クァルテットの紹介は前記事をご覧ください。メンバーはOp.77の時と変わらず。
第1ヴァイオリン:ラルフ・エヴァンス(Ralph Evans)
第2ヴァイオリン:エフィム・ボイコ(Efim Boico)
ヴィオラ:ジェリー・オーナー(Jerry Horner)
チェロ:ウォルフガング・ラウファー(Wolfgang Laufer)
ファイン・アーツ四重奏団のハイドンはリラックスして聴ける気の置けないもの。尖った演奏もいいですが、ハイドンの弦楽四重奏曲の楽しみはそれだけではありません。
Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
期待通り非常にリラックスした入り。ひばりの有名な導入部はゆったりと音階を奏でながらヴァイオリンが糸を引くようにメロディーを奏で、まさに老練。若手には真似の出来ない落ち着きぶり。弾く方も聴く方も音楽の悦びを満喫できるような演奏。ちょっと行書風に崩しながらも、迫力は十分。録音も悪くなく、ヴァイオリンが自然にクッキリと浮かび上がる様子はなかなか。木質系の柔らかな響きが特徴。鮮明さも十分。1楽章は安心して身を委ねることができるまさに至芸。テクニックの誇示もなければ表現意図の誇示もなく、純粋無垢な響き。そして十分なメリハリと安定感。言うことなし。
アダージョは行書の筆の運びが墨の濃淡の微妙な変化でたどれるような陰影の美しい演奏。ヴァイオリンをはじめとした各楽器の織りなすアンサンブルが手作りの音楽を作り上げてゆく様子が手に取るようにわかる素晴らしい演奏。一人一人の演奏スタイルが良くそろって、完璧な調和。長年アンサンブルをともにしているメンバーの信頼関係がよくわかるような演奏。非常に安心感のある演奏ながら、表現の起伏は大きく、間も効果的にとった演奏。絶品。
メヌエットはリズムと音色の変化と迫力を感じる深い演奏。筋骨隆々の立体感ではなく、どちらかと言うと枯れた感じを感じるような立体感。わかりにくいですが、音楽そのものは老練なのに、若々しさを感じる演奏と言えばいいでしょうか。音楽の完成度の高さはあるのに活き活きした感じもあります。一人一人が楽器をフルに鳴らしきっている感じ。教会での録音が功を奏しているのでしょうか。
フィナーレは小気味好い切れ味、ヴァイオリンの弓さばきは見事。3楽章までに十分な深みを感じさせておいたのが非常に効果的。最後は快速テンポでキレの良さを印象づけて終了。いやいや、見事な演奏。
ファイン・アーツ四重奏団のハイドンはハイドンに対する深い理解を感じさせる、非常に説得力のあるもの。4本の弦楽器で4声の曲を奏でる意味と美しさをしみじみ感じます。とくにこの「ひばり」は絶品。上手く演奏しようとか、上手く聴かせようという次元ではなく、ハイドンの弦楽四重奏曲を弾き熟した者だけが到達できる至高の領域の演奏というのが正統な評価でしょう。このアルバムの素晴らしさは心に残るもの。探した甲斐がありました。もちろん評価は[+++++]とします。
tag : ひばり 弦楽四重奏曲Op.64
Meta4の弦楽四重奏曲Op.55

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Meta4によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.55のNo.1、No.2「剃刀」、No.3の3曲を収めたアルバム。収録は2008年11月4日から6日、ドイツ、ハイデルベルクの南方の街ザントハウゼンにあるクララ・ヴィーク・オーディトリウムでのセッション録音。レーベルは最近良く取りあげているhänssler CLASSIC。
クララ=ヴィークとは調べたところクララ・シューマンのことのようですね。ヴィークが旧姓です。
さて、Meta4ですが、ライナーノーツによると、フィンランドのクァルテット。メンバーは下記のとおり。
第1ヴァイオリン:アンティ・ティッカネン(Antti Tikkanen)
第2ヴァイオリン:ミンナ・ペンソラ(Minna Pensola)
ヴィオラ:アッテ・キルペライネン(Atte Kilpeläinen)
チェロ:トマス・デュプシェバッカ(Tomas Djupsjöbacka)
2001年に結成され、ヨーロッパ室内楽アカデミーのハット・バイエルレ(アルバン・ベルク四重奏団のヴィオラ奏者)とヨハネス・マイスル(ウィーン・アルティス四重奏団の第2ヴァイオリン)に師事。2004年にモスクワで開催された国際ショスタコーヴィチ弦楽四重奏コンクールで優勝し、同時にショスタコーヴィチのすぐれた演奏によって特別賞も受賞しました。2007年4月にはウィーンで開催されたヨゼフ・ハイドン国際室内楽コンクールでも優勝しました。その後、フィンランド文化省から、フィンランドの若手で将来有望な演奏家たちを奨励するフィンランド賞を授与され、2008年以降、フィンランド内陸部でロシア国境に近い街、クフモで開催されるクフモ室内楽音楽祭の常任クァルテットとなっています。また、2008年9月から、BBC新世代の芸術家に選ばれ、シティ・オブ・ロンドン音楽祭、チェルトナム音楽祭、マンチェスター・ミッドデイ・コンサーツ・ソサエティやバーミンガム・タウン・ホールに招かれているなど、活躍の場を広げています。
ヨーロッパの辺境フィンランドの若手演奏家によるハイドンの比較的地味な曲の録音。ライナーノーツによれば、このクァルテットのデビュー盤で、ハイドンを選んだのはマドリードでのハイドンの弦楽四重奏曲全曲演奏でこのOp.55を演奏したからとのことでしたが、もともと師であるアルバン・ベルク四重奏団のヴィオラ奏者だったハット・バイエルレから2003年にバーゼルで教わり始めた際、「ハイドンを学ばなければならない。ハイドンを演奏出来れば、どんな曲も演奏することができる」と言われたからだとのこと。けだし名言だと思います。
ジャケットに目をやれば、才気あふれる若者がかなり挑戦的な眼差しでたたずむ姿。これまでのハイドンの弦楽四重奏曲の演奏史に、この新たな才能が一石を投じる事が出来るでしょうか。以前取りあげたミネッティ四重奏団もそうですが、若手のクァルテットのアルバムを聴くのは、非常に楽しみな事です。老練なハイドンもいいですが、若い才能がハイドンをどう料理するかも興味深いですね。今日はこのアルバムの最初の2曲を取りあげます。
Hob.III:60 / String Quartet Op.55 No.1 [A] (1788)
非常に鮮明かつダイレクトな音響。刺激が強すぎる一歩手前の鮮明な尖った音の録音。若手らしく音符から精一杯のメリハリを汲みとり、クッキリとしたソノリティを再現。特に高音域の鮮明さが音響上の特徴でしょうか。北欧だからかわかりませんが、透徹した氷のような響き。各奏者が自在にメロディを奏でていますが、テイストがそろっているせいか一体感は悪くありません。一音一音のチュナーミクをきっちりコントロールして、研ぎすまされた響きをつくっていくような演奏。テクニックは確かなものがあります。特に第1ヴァイオリンの磨き抜かれた高音のメロディーの浸透力は流石なもの。
2楽章のアダージョ・カンタービレは、クッキリした表情のままくつろいだ表現に。現代音楽ばりの精妙な響きで演奏されるハイドン特有の暖かいメロディー。ユニークな演奏ではありますが、悪くありません。ハイドンを良く理解して演奏しているようなので、表現が浮ついていませんし、なかなかの情感。
メヌエットは鋼のような強さのヴァイオリンがリードしてリズミカルな演奏。鮮度とリズム感を重視した意外とオーソドックスな演奏。ハイドンの難しいところは表現重視になれば、曲の美しさをスポイルしかねず、かといって大人しい演奏では凡庸に聴こえてしまうので、どこまで表現を踏み込むかのバランス感覚を鍛えられるところ。Meta4は、このバランスをうまくわきまえ、きっちり個性を出しながらも、ハイドンのクァルテットの演奏として踏み外さないバランス感覚を身につけているようです。
フィナーレも軽さをうまく表現しながら、持ち前の強い音色と表現を上手く織り交ぜて、自分たちのハイドンの表現をしっかり持った演奏にまとめています。フィナーレはコミカルな表情を上手く取り入れて、ハイドンらしさを十分表現しています。出だしの1曲目からなかなかの腕を披露していますね。
Hob.III:61 / String Quartet Op.55 No.2 "Lasiermesserquartetett" 「剃刀」 [f] (1788)
切れる剃刀に困っていたハイドンが、カミソリと交換しようと提案したエピソードで知られるこの曲。音響的には前曲そのままですが、表情が少し穏やかになって、ハイドンのメロディーを素直に楽しむ余裕がでてきました。短調の悲しげなメロディーを切々と弾いていきます。途中から顔を出すチェロのソロの柔らかい音色が妙にいい音。後半の明るい展開部の素朴な表現は1曲目の険しい表情とは打って変わってほのぼのとしたもの。
2楽章はアダージョではなくアレグロ。中庸なテンポと、程よいメリハリでハイドンの曲をじっくり描いていきます。時折見せるレガートが変化をつけます。軽さと輝きが同居してフーガのような深遠な波を表現して、徐々にタイトな表現に変化していきます。
メヌエットも適度なテンションで変化の幅を比較的大きくとり自在な表現を加えます。特に中間部の起伏は見事なもの、両端部は落ち着いているので対比も十分。
フィナーレは軽さとテンションの高い部分の繰り返しを鮮明に描き、この曲の面白さを際立たせる演出。ハイドンを研究し尽くした上での表現でしょう。この曲でも表現の踏み込みが個性的かつやり過ぎない絶妙のところにあり、なかなかのものとうならされる演奏。かなりの才能と見ました。
フィンランドの俊英によるMeta4のハイドンのOp.55の3曲を収めたアルバム。ジャケットに写る自信満々の挑戦的な姿そのもの攻めるハイドン。若手らしく尖ったところも見せながら、ハイドンの弦楽四重奏曲のハイドンらしさの域を超えないあたりも、賢明な判断です。鮮明かつ浸透力ある音響、テクニックも安定しており、音楽性も十分.
才能あふれるクァルテットですね。ハイドンを良く研究し、ハイドンを得意としたアルバン・ベルク四重奏団の元ヴィオラ奏者ハット・バイエルレに学んだだけのことはあります。評価はNo.1が[++++]、No.2の「剃刀」が[+++++]とします。今後が楽しみなクァルテットです。
tag : 弦楽四重奏曲Op.55 剃刀
ルドルフ・ブッフビンダー/ウィーン響のピアノ協奏曲XVIII:11
今日は今まで取りあげていなかったブッフビンダーのアルバム。

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ルドルフ・ブッフビンダー(Rudolf Buchbinder)のピアノと指揮、ウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker)の演奏でハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)と、シューマンの序奏とアレグロ・アパッショナータ、ラヴェルのピアノ協奏曲、モーツァルトのきらきら星変奏曲、シューマンの交響的練習曲、幻想曲ハ長調を収めた2枚組のアルバム。ハイドン以外の演奏者などは上のHMV ONLINEのリンク先をご覧ください。ハイドンの収録は、1994年6月26日、ウィーンのムジークフェラインの大ホールでのライヴ。
ルドルフ・ブッフビンダーはオーストリア人かと思っていましたが、Wikipediaを調べてみるとチェコ生まれです。1946年、チェコのプラハの北方の街、リトムニェジツェ(Litomĕřice)の生まれ。5歳でウィーン国立音楽大学に入学し、8歳でマスタークラスを履修して同大学の最年少記録となったという神童ぶりでした。9歳で最初の公開演奏会を開き、1966年にヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで特別賞、1967年にはベートーヴェン・ピアノコンクールで1等を獲得するなど若い時から才能が開花しました。その後は室内楽やピアニストとして活躍。1976年にはハイドンのピアノ曲全曲録音によってグランプリ・デュ・ディスクを受賞したとのこと。ブッフビンダー本人のサイトがありましたので紹介しておきましょう。
RUDOLF BUCHBINDER - The Official Website
ブッフビンダーのハイドンのピアノ曲全集は、ちょっと肌合いが悪いというか、ハイドンのピアノソナタの深遠な響きに到達していない印象があって、あまり評価はしていなかったので、あまり聴き込んでいませんでしたが、このアルバムの協奏曲は指揮を含めて悪くありません。
Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
ウィーン響の透き通るようなヴァイオリンによる序奏。ムジークフェラインの柔らかく美しい響きが乗ったウィーン響の序奏が穏やかなテンポで入ります。木質系の美しい響き。非常にオーソドックスなオケの響き。これぞ古典的なハイドンの響きです。ブッフビンダーのピアノも中庸なテンポなからクッキリとメリハリがついて、俊敏な反応を楽しめるもの。ライヴならではの緊張感に包まれた演奏。オーソドックスなハイドンの協奏曲の演奏ながら、音楽の喜びに溢れた演奏です。盤石の安定感を見せるオケの伴奏に乗ってブッフビンダーは軽々と転がすようにピアノを弾き進めていきます。推進力は十分。愉悦感も十分。緩急の変化も適度についた秀演です。
2楽章はこの曲のもつ暖かい表情を十分表現したもの。分厚いオケの響きと高音を主体としたきらめくようなピアノの掛け合いから醸し出される素晴らしい情感。この曲の美しさを存分に味わえます。とろけるようなムジークフェラインの響きに包まれてゆったりと音楽を楽しむひと時。至福とはこの事でしょう。ハイドンのピアノ協奏曲の最も正統な演奏と思わせる説得力があります。
この演奏では曲全体で豊かな音楽を狙っていると思われ、楽章間の表情の変化はほとんどなく、テンポも演奏スタイルも一貫したもの。テンポやスタイルではなく楽譜に込められたメロディーの意図をフレーズごとに拾って再現していくよう。オケとピアノの美しい響きが織りなす音楽をただただ楽しむべき演奏といえるでしょう。フィナーレは適度な力感の盛り上がりと、終結に向かう音楽構成に身を任せるような演奏。最後はムジークフェラインの観客から万来の拍手で迎えられます。
ハイドンのご当地ウィーンで開かれたコンサートの模様を収めたこのアルバム。なぜかハイドンらしさ、ウィーンらしさを存分に感じる演奏でした。奏者の表現意図もあるのでしょうが、自然なオーケストラと自然なピアノがハイドンの名曲XVIII:11の美しさを浮き彫りにするようです。コンサートを聴く楽しみも合わせて感じる素晴らしいライヴ録音。ブッフビンダーのピアノ音楽全集の方は、なぜか平板な響きが魅力を削いでいるようにも感じますので、録音は重要ですね。評価はもちろん[+++++]とします。















