ヨーゼフ・メスナーのオラトリオ版「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ハイドン)

最近手に入れた非常に古い録音のLP。

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ヨーゼフ・メスナー(Joseph Messner)指揮のザルツブルク大聖堂合唱団(The Salzburg Dome Choir)、モーツァルテウム管弦楽団(The Mozarteum Orchestra)の演奏で、ハイドンのオラトリオ版「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を収めた2枚組のLP。収録情報はこのアルバムには記載されていませんが、同一音源と思われる手元のCD-Rには1950年7月30日のライヴ収録と掲載されています。レーベルは英REMIGTON。

鮮烈な赤地にキリストのイラスト、そして印象的なタイポグラフィのジャケットが所有欲をそそるアルバム。1950年の録音ということでもちろんモノラル。しかもこの曲を2枚組4面に渡って収録してあるもの。先日オークションで入手したアルバムです。音源自体はCD-Rとして出回っているものなので、特段珍しいものではありませんが、このアルバム自体の放つ独特のオーラがたまりませんね。

手元の所有盤リストを調べてみると、オラトリオ版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」ではこの演奏が一番録音年代が古く、そのあとはシェルヘン盤の1962年のものということで、この曲の録音史に残るものと言えるでしょう。

指揮者のヨーゼフ・メスナーは1893年、オーストリア西部のアルプス山麓のシュヴァーツという村の生まれ。幼い頃から音楽教育を受け、ミュンヘンで作曲、オルガンを学び、1920年代には作曲家、オルガニストとして活動をし始めます。1922年からはザルツブルク大聖堂のオルガニスト、1926年には楽長となり1969年に亡くなるまでその地位にあったとのこと。オルガン音楽の巨匠として知られ、ブルックナーの後継者とみなされていたということです。凄いのが歌手の布陣。

ソプラノ:ヒルデ・ギューデン(Hilde Guden)
アルト:クララ・エルシュレガー(Clara Ölschläger)
テノール:ユリウス・パツァーク(Julius Patzak)
バリトン:ハンス・ブラウン(Hans Braun)

ギューデンにパツァークとこの時代の一流どころを揃えた見事な配役ということで、いやが上にも期待が高まります。

Hob.XX:2 "Die sieben letzten Worte unseres Erlösers am Kreuze " 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1796)
古いアルバムゆえ、いつものようにクリーニングしてもスクラッチノイズは少々残る感じですが、このくらい古いものだと逆にフィルムの映画同様、ノイズが味わいの要素のように聞こえます。そしてやはりCD-Rよりもリアリティは上。序章の入りは時代がかった古風な雰囲気を感じさせる至極ゆったりとしたもの。序章の後、ハープシコードに続いて滔々と流れる大河のようなコーラスを伴った第1ソナタに入ります。ライヴらしく縦の線が揃わないところもありますが、逆にそれが教会でのリアルな行事のような印象を与えていい感じ。すぐにソロが入りますがやはりギューデンの輝かしく圧倒的な美声が一段と目立ちます。

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第1ソナタが終わると2面に移ります。第2ソナタはまるで劇画音楽のようにドラマティックな展開。荒々しく、しかも力強いコーラスのエネルギーが押し寄せます。じっくり朗々と音楽が語られていくにつれて、巨大なエネルギーに取り込まれていくような錯覚に陥ります。そして第3ソナタはさらにテンポを落として、孤高感が際立ちます。メスナーの自然の呼吸のようなコントロールにオケとコーラスはゆったりと反応。歌手も朗々と歌を合わせていくことで絶妙な一体感に至ります。

再び面を変えて第4ソナタ、第5ソナタ。もはやゆったりとしたテンポに体が慣れてきていますが、第5ソナタのピチカートがここまで遅いとは想像できませんでした。超スローテンポによって歌手による四重唱が聴きどころになった感じ。同じ曲なのに他の演奏とは全く異なる響きに感じてきます。終盤再びピチカートに戻りますが音楽を保つギリギリ所までテンポを落としてきます。キワモノ的解釈という印象はなく、この時代の演奏スタイルと理解すべきでしょう。

最後の面に変えて第6ソナタ、第7ソナタに地震。第6ソナタの途中で「ゴン」というノイズが入ることで、これがライブだと気付かされます。ここまで一貫して遅めのテンポで、ザックリと音楽を作ってきましたが、ただ遅いだけではなく、起伏が実に音楽的であると同時にこれがオラトリオであるとはっきりとわかる祈りの感情を伴わせてきています。終盤に差し掛かったことを思わせる陰りも見事。そして第7ソナタはこれが結びであるとわかる折り目正しさを感じさせる見事な展開。渾身の力で険しさと郷愁を描いていきます。まさに劇的なクライマックス。最後の地震はアンサンブルが若干崩れ気味なのが地震っぽい。力で押すのではなく純音楽的な表現が予想とちょっと違いました。

1950年録音のオラトリオ版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」ですが、まさにヒストリカルな演奏。時代の空気と奏者のエネルギーが音溝にしっかりと刻まれていました。演奏としてはもちろん荒く録音も時代なりですが、この演奏の価値はそこではなく、演奏史上の貴重な記録という所でしょう。人によって評価はまちまちでしょうが、私の評価は[++++]としておきます。何より同演奏のCD-Rとはコレクション価値が異なりますね。針音に時代の空気を感じる貴重なアルバムでした。

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ジョナサン・ノット/東響のマーラー10番、ブルックナー9番(サントリーホール)

新年度が始まって、いつもながら仕事でドタバタしており、レビューも進まぬ中、チケットをとってあったコンサートに行ってきました。

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東京交響楽団:第659回 定期演奏会

このところお気に入りのジョナサン・ノット(Jonathan Nott)率いる東京交響楽団のコンサート。古典から現代まで幅広いレパートリーを誇るノットですが、マーラーや現代音楽の素晴らしさは体験済み。アルバムでは評判が良さそうだったブルックナーはどうかということでチケットをとった次第。ノットのこれまでのコンサートのレポートは下記の通り。

2017/12/10 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「ドン・ジョヴァンニ」(ミューザ川崎)
2017/10/15 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の86番、チェロ協奏曲1番(東京オペラシティ)
2017/07/23 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「浄められた夜」、「春の祭典」(ミューザ川崎)
2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)
2016/12/12 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「コジ・ファン・トゥッテ」(東京芸術劇場)

初めて聴いた「コジ・ファン・トゥッテ」が滅法面白かったので色々聴きましたが、モーツァルトもマーラーも春祭も見事なコントールで楽しめましたが、肝心のハイドンはちょっと演出過剰でゴテゴテした印象になり、ハイドンを演奏する難しさを感じさせた次第。そのノットがブルックナーの9番をどう料理するのかが聴きどころ。

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この日は土曜で前日夜は札幌泊の出張に出ておりましたゆえ、若干疲れ気味の中、夕刻いつも通り、開場少し前にサントリーホールに到着。事前情報ではNHKのカメラが入ることになっているということで、注目のコンサートなんでしょう、ホールの前はかなりの人で賑わってました。

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すぐに開場となり、まずはこちらもいつも通りホワイエで軽く腹ごしらえ。いつもはワインですが、この体調でワインをいただくと深い眠りに落ちてしまいかねないというリスクを回避するため、ビールをセレクト。結果的には正しい選択でしたね(笑)

この日の席は珍らしく1階席で中央後ろから2列目。オケが正面に見える席ですね。お気に入りのRA席は埋まっていたため高い席を取ったんですね。RA席だと指揮者の指示やパート間のフレーズのやりとりが克明にわかるんですが、この日の席はアルバムやテレビで聴くのと同様、オケの音とともにホールの響きを遠くから聴く席。各パートの響きよりもオケの音量バランスを聴く感じですね。

プログラムは2曲とも大編成の曲ということでステージいっぱいに団員席が広がる中、定刻となり団員がステージ上に並び、いつものようにちょっと小柄なノットが颯爽と登場。ほぼ満席の客席に向かってにこやかに会釈してすぐにマーラーの10番が始まります。最初のヴィオラのメロディーから息を飲むようなただならぬ緊張感が漂い、いきなりヴィオラの孤高の響きに釘付けになります。この曲の刷り込みはアバドがウィーンフィル振ったアルバムですが、アバドらしいしなやかなメロディーの流れの美しさをを極めた演奏に対して、ノットはやはりフレーズごとの表情の変化と現代音楽的な響きの峻厳さ、そしてオケのダイナミクスを極限まで追い込むようにコントラストを明確につけていきます。どちらかというとマゼールに近い感じ。マゼールは灰汁の強い印象がありますが10番はかなり洗練された演奏です。昨年にミューザで聴いた復活と同様の手法。全てのパートをコントロールするようなノットの細かい指示に対し、東響もノットの棒に完璧に応える精緻な演奏でノーミスの熱演。特に素晴らしかったのがヴィオラをはじめとする弦楽陣。弦の奏でるメロディーのニュアンスの豊富さが音楽に深みを与え、弱音のコントロールがこのマーラー最後の曲の孤高感を際立たせていました。静寂の中に消え入るような最後も見事。全ての余韻が消え去り、ノットがタクトをゆっくりと下ろすと客席から拍手が湧き上がります。オケの熱演に惜しみない拍手が送られました。この曲に込められたマーラーの諦観のようなものまで見事に描ききった名演でした。

休憩中にステージ上の座席配置が若干修正され、ハープがかたずけられて後半のブルックナーに移ります。

ノットのブルックナーは以前の8番のコンサートを収録したアルバムがリリースされており、評判はなかなか良いように聞いていますが、私は未聴です。ノットはキビキビ爽快にモーツァルトを描き、マーラーではニュートラルなダイナミックさ、現代音楽では峻厳な透明感を描いてきますが、ブルックナーをどう料理するのかあまりイメージできませんでした。この日のコンサートを聴いた結果から言うと、マーラーと同様なスタイルで現代的なダイナミックなブルックナーでした。ブルックナーの演奏には画家で言う画風がかなり重要な要素かと思いますが、ノットの画風は正攻法でブルックナーの演奏にはもう一歩踏み込みが欲しい印象を残しました。もちろん演奏は素晴らしいもので、3楽章終盤に金管が少し安定度を欠いた以外はオケは見事なパフォーマンス。特にスケルツォ楽章の怒涛の迫力は素晴らしいものがありました。マーラー同様弦楽陣は素晴らしいコントロール。そしてフレーズごとに表情を彫り込んでいくノットのコントロールも見事。ただ滔々と流れるブルックナーの音楽を少し微視的に捉えすぎてもう少し流れの良さがあるとよかった。コンサートではこのところスクロヴァチェフスキの描く大伽藍に圧倒されてきましたが、ノットの大伽藍はコンクリート製で意匠は凝らしているものの、ブルックナーらしさからちょっと離れてしまったといえばわかるでしょうか。この曲も3楽章の終結部は弱音で終わりますが、この日の観客は見事に静寂を保ち、オケの熱演を盛大な拍手で讃えており、お客さんの反応は極めて良いものでした。ノットもオケの熱演を讃え、コンサートは盛況のうちに終了。

マーラーはノットと東響のコンビの底力を見せつける素晴らしい演奏、ブルックナーも機能的には同様かと思いますが音楽の本質を考えさせらる演奏でした。



終演後は、サントーホール向かいの最近お気に入りのお店で反省会。ここ数日は母親がショートステイでお泊りのため、帰って介護の心配がありません。

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バレンシアナバル ブリーチョ

ワインとサングリアで喉を潤し、小皿を色々注文。この小皿が皆絶妙に旨いんですね。

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桜海老のアヒージョに、マグロの生ハムとトマト。アヒージョにはニンニクが丸ごとゴロゴロ入っているんですが、これがまた旨い。海老の香りも良く出ていて見事。そして生ハムに添えられたトマトが甘くて絶品。

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いつも必ず頼むレンズ豆とチョリソの煮込み。チョリソの独特の香りがこれまた絶妙。

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初めて頼んでみたホワイトアスパラのフリット。ナツメグで香りづけしたソースがこれまたいい香り。

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最後はジャガイモとタコのグリル。これとパンで2人でお腹いっぱいです。コンサートの余韻を楽しみながら美味しいお酒と料理でいい気分。

さて、レビューせねば、、、(笑)

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【新着】ハンス・ロスバウトの交響曲集(ハイドン)

最近手に入れたヒストリカルなアルバム。しかも大物です!

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ハンス・ロスバウト(Hans Rosbaud)指揮のバーデン=バーデン南西ドイツ放送交響楽団(Südwestfunkorchester Baden-Baden)を指揮したハイドンの交響曲と協奏曲などの南西ドイツ放送の放送録音を7枚のCDにまとめたもの。もちろんレーベルはSWR CLASSIC。収録場所はバーデン=バーデン、南西ドイツ放送「ハンス・ロスバウト・スタジオ」でモノラル音源です。収録曲目と収録日は下記の通り。記載はCDへの収録順。

交響曲第12番(1961年6月22日)
交響曲第19番(1961年7月9日)
交響曲第48番「マリア・テレジア」(1961年7月8日)
交響曲第52番(1961年12月15日、16日)
交響曲第58番(1959年2月17日)
交響曲第65番(1959年2月16日)
交響曲第83番「めんどり」(1953年11月7日)
交響曲第87番(1952年6月23日)
交響曲第90番(1957年10月26日)
交響曲第93番(1958年12月19日)
交響曲第95番(1959年5月19日)
交響曲第96番(1954年6月25日)
交響曲第97番(1953年12月28日)
交響曲第99番(1952年6月27日)
交響曲第100番「軍隊」(1953年3月25日)
交響曲第102番(1953年3月25日)
交響曲第104番「ロンドン」(1952年6月27日)
チェロ協奏曲2番(1952年12月21日)
 チェロ:モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron)
トランペット協奏曲(1959年4月9日)
 トランペット:ヴァルター・グライスレ(Walter Gleissle)
ヴァイオリン、チェンバロと弦楽オーケストラのための協奏曲ヘ長調 Hob.XVIII:6(1959年2月18日)
 ヴァイオリン;スザンネ・ラウテンバッハー(Susanne Lautenbacher)、チェンバロ:エディト・ピヒト=アクセンフェルト(Edith Picht-Axenfeld)
ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII:11(1959年4月3日)
 ピアノ:マリア・ベルクマン(Maria Bergmann)
レオポルド・ホフマン(伝ハイドン):フルート協奏曲(1960年7月2日)
 フルート:クラフト=トーヴァルト・ディロー(Kraft-Thorwald Dillo)
交響曲第104番(1962年3月30日、31日)
交響曲第45番「告別」(1958年11月15日-19日)

ただし、最後の「告別」はオケはベルリンフィル、収録場所はベルリンのツェーレンドルフ(Zehlendorf)のプロテスタント教区教会での収録で、この曲のみステレオ収録です。

ハンス・ロスバウトの振るハイドンの交響曲は以前に1度取り上げています。

2013/09/02 : ハイドン–交響曲 : ハンス・ロスバウト/ベルリンフィルのオックスフォード、ロンドン(ハイドン)

これは1956年から57年にかけてベルリンフィルを振った演奏で、1955年にカラヤン体制となったベルリンフィルを見事にコントロールしまとめ上げる匠の技。そのロスバウトがこれほど多くのハイドンの交響曲の録音を残しているということで、リリースを知った時にはかなり驚きました。というよりはやく聴いてみたいということで、すぐに注文を入れそれが先日届いたという次第。ちなみにその驚きの大きさから、amazonに発注していたのうっかり忘れてTOWERにも注文を入れ、なんと手元に2組あります(苦笑)

早速所有盤リストに登録すべくデータを見てみると、交響曲は初期の12番からロンドンまで18曲も収録され、ロンドンは録音交響曲収録時期を見ると1952年から1962年までと、52年と62年の2種が含まれます。また告別のみベルリンフィルと1958年の収録で、先に取り上げたDGとのアルバムの収録の後に南西ドイツ放送の放送録音が残されたことになります。この辺りの経緯を想像すると、この南西ドイツ放送との素晴らしい放送録音がDGに現代音楽で知られるロスバウトにベルリンフィルでハイドンの交響曲集を録音させることを決断させたのではないかと思います。

到着してから色々聴いていますが、骨格のしっかりした演奏で、なおかつハイドンの曲の面白さをしっかりと踏まえた見事な演奏が並び、聴きごたえ充分。ハイドンの交響曲録音、特にドラティによる全集が完成する前の50年代から60年代の交響曲のまとまった録音としては、リステンパルトやアンセルメ、ビーチャムなどと並んで最も完成度が高い演奏であると思います。特にドイツ的なハイドンの面白さを非常によく表現しており、ビーチャムともリステンパルトともアンセルメとも異なる辛口の面白さを感じさせます。この頃の録音は他にも最近CDとしてリリースされたマックス・ゴバーマンとウィーン国立歌劇場管、nonesuchなどからリリースされているレスリー・ジョーンズとリトル・オーケストラ・オブ・ロンドン、アントニオ・アルメイダとハイドン協会管、デニス・ヴォーンとナポリ管など色々ありますが、しっかりと筋の通った演奏はロスバウトが一番です。

ちなみに、いつものペースでレビューするのと1月かかってしまいますので、聴きどころのいくつかの曲を取り上げます。

まずは、このセットの目玉であるベルリンフィルとのステレオ録音。

Hob.I:45 Symphony No.45 "Abschied" 「告別」 [f sharp] (1772)
1楽章は速めのテンポでしかもインテンポでの颯爽とした入り。畳み掛けるようにグイグイと攻めてきますが、決してバランスを崩すことなく秩序を保ちアクセントもくっきり。まさにこの曲の理想的な演奏。続くアダージョは弱音器付の弦楽器が奏でる穏やかなメロディーを淡々と重ねていきます。1楽章からの繋がりにも一貫性があって音楽が淀みなく流れます。静かな気配の中に流れる悲しげなメロディーの美しさが際立ちます。現代音楽を得意とするだけあって、この研ぎ澄まされた感覚は見事の一言。メヌエットも冷静な進行ながらジワリと情感が香る佳演、というかここまで雰囲気に溢れ美しさが滲み出るメヌエットは滅多にありません。聴きどころのフィナーレ、前半はあえてオケが少し乱れるほどに荒く入ります。ただし造形は必要十分に彫り込まれてスタイリッシュ。そして奏者が1人づつ去るアダージョは実に豊かなニュアンスを伴いながら楽器が少しずつ減っていく絶美の進行。最後のヴァイオリンの音が消えいる瞬間の美しさは例えようがありません。これは素晴らしい演奏です。

続いてちょい地味な90番。これが実に素晴らしい。

Hob.I:90 Symphony No.90 [C] (1788)
冒頭から冷静に引き締まったいい流れ。録音はモノラルながら非常に聴きやすく問題ありません。非常に紳士的な気品に溢れた演奏。テンポが落ちる前のジュリーニの演奏を少々ドイツ的にした感じといえばいいでしょうか。続くアンダンテは、これがまた慈愛に満ちた素晴らしい入り。しかも古びた印象は皆無。感傷的な印象も皆無。ゆったりと楔をうつような中間部の余裕も気品が感じられます。そしてあえて淡々としたフルートのソロも見事すぎる出来。メヌエットも気品に満ちたリズムのキレを聴かせます。そして終楽章は、ラトルが繰り返し取り上げていますが、エンディングを終わりそうで終わらないという演出のコミカルさでまとめるだけでなく、音楽の格調高さも感じさせる秀演。ここでもロスバウトの気品の高さが際立ちます。

そして特に気に入ったのが97番。

Hob.I:97 Symphony No.97 [C] (1792)
こちらもザロモンセットの中では比較的地味な曲ゆえ、ロスバウトの見通しのよい構成感と気品が絶妙にマッチする曲。少し足早な1楽章から、2楽章に入ると告別同様の素晴らしい雰囲気を堪能できます。こうした緩徐楽章のしなやかな起伏の表現は絶品。よく聴くとフレーズごとに丹念に表情が変化させる緻密なコントロールがなされていることがわかります。木管楽器の悲しげなハーモニーと全奏の慟哭のコントラストも見事。ハイドンの交響曲に込められた機知と変化を見事に表現しています。極上の音楽。メヌエットはこの曲では優雅で雄大。そしてトリオへのつながりのなんとさりげないこと。このセンスの良さはただならぬものがあります。そしてフィナーレはキレ良く軽やかにまとめます。軽快な吹き上がりとオケのバランスを保つ匠の技。

他の曲もいい演奏ばかりで聴きごたえ十分です。

ハンス・ロスバウトによるハイドンの交響曲集ですが、気負いなくハイドンの曲の面白さを見事に表現した名演揃い。1950年代から60年代という録音年代を考えると非常に垢抜けた演奏であり、現在我々が聴いても古さを感じさせるどころかハイドンの普遍的な魅力に迫る見事な演奏という評価が適正でしょう。レビューした3曲はいずれも[+++++]とします。他の曲もざっと聴いた感じでは[+++++]レベルの演奏が多く、少し癖を感じる演奏も混入しているというところ。ハイドンの交響曲がお好きな方は必聴のアルバムと言っていいでしょう。

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tag : 交響曲90番 交響曲97番 告別 ヒストリカル

Haydn Disk of the Month - March 2018

3月末は世の中は年度末で忙しい日が続きます。そして3月31日はハイドンの誕生日。毎年なんか企画でもと思いつつも、仕事が忙しかったりすることも多く、大抵は何もしないで終わってしまいます。今年は私も仕事で部署が異動になった関係で普段でも山ほどの人事考課に追われているのに加えて自分の仕事の引き継ぎなどもあってドタバタ。家でも母親の介護やら色々あってなかなか記事を書く時間が取れない状況が続いており、特番を組むという余裕もなかったのが正直なところ。

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写真は庭の植木鉢に咲いたスミレの花。なんとなく可憐でいいですね。今年は庭の梅も花の付きが良く早咲きから遅咲きのものまで綺麗な花が楽しめました。梅が終わりかかると木瓜ですが、ここ数年、木瓜の花が咲くとヒヨドリが花ごと食べてしまい、満開の姿を見られないことが続きました。そこで今年は嫁さんが鳩よけのネットをボケの周りに張って鉄壁の防御。それでも地面スレスレのネットの隙間から中に入り込んで花をむしっている次第。一度私がそれを見つけて、あと少しでヒヨドリを捉えるところまで追い詰めたんですが、寸前でネットの隙間から逃げられてしまいました。その後ネットを地面に固定することで、ヒヨドリ避けは成功。

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ということで人類対鳥類の戦いに勝利した成果の写真(笑) 生前は父が始終庭いじりをしていたのでヒヨドリも木瓜の花の蜜の味を覚えるまでにならなかったのでしょう。



さて、本題の3月にレビューしたアルバムからベスト盤を選ぶ月末恒例の企画ですが、今月は皆様の予想を裏切らない選択です。

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2018/03/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第3巻(ハイドン)

ご存知、飯森範親が2015年から大阪のいずみホールで取り組んでいる「ハイドン・マラソン」なるハイドンの交響曲全曲演奏会をライヴ収録した第3巻。3巻に至ってようやく演奏の質も揃って、当ブログでもお勧めできるところとなりました。最近のハイドンの交響曲の演奏のトレンドはもちろん古楽器による演奏が本流となってきていますが、このシリーズは現代楽器の演奏で、古楽器風なテイストも感じさせず、鮮度の高い録音によって色彩感と推進力の魅力で聴かせる正攻法なもの。かえってこれが新鮮な印象を与えているのも事実でしょう。今後のリリースの継続は商業的な成否に影響されることでしょうから、このシリーズの継続の為にも力一杯応援しなければなりませんね。生でも一度聴きたいところです。日本センチュリー響の中の人、是非東京でもコンサートの企画をお願いいたします!



今月高評価だったアルバムは下記の通り。

2018/03/18 : ハイドン–室内楽曲 : ウォルフガング・シュルツ一家によるフルート三重奏曲集(ハイドン)
2018/03/17 : ハイドン–交響曲 : フォルカー・シュミット=ゲルテンバッハ/ポーランド室内管の悲しみ(ハイドン)
2018/03/14 : ハイドン–交響曲 : マリナー/アカデミー室内管の99番、102番(ハイドン)

シュルツ一家のフルート三重奏曲集は珠玉の室内楽が味わえる名盤。どうやらCD化もされていたようですね。そしてフォルカー・シュミット=ゲルテンバッハの「悲しみ」への感動的な再会。このあと同じ組み合わせのモーツァルトの初期交響曲集のLPも入手しましたが、予想通り素晴らしいオケを堪能できました。そして、今まで知らなかった、マリナーの名前なし交響曲の演奏。渋めの2曲を実にスケールの大きい演奏でまとめた絶品の演奏。どのアルバムも素晴らしい出来でした。

新年度に入ってもなかなかペースアップできないかとは思いますが、いつも通りマイペースで行こうと思いますので、よろしくお願いいたします。



2018年3月のデータ(2018年3月31日)
登録曲数:1,361曲(前月比±0曲) 登録演奏数:10,773(前月比+95演奏)

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【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第3巻(ハイドン)

飯森範親と日本センチュリー交響楽団が取り組むハイドンマラソン。第3巻がリリースされました。

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飯森範親指揮の日本センチュリー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲96番「奇跡」、18番、99番、30番「アレルヤ」の4曲を収めたSACD。収録は99番とアレルヤが2015年11月20日、その他2曲が2016年2月26日、大阪のいずみほホールでのライヴ。レーベルは日本のEXTON。

ハイドンマラソンと名付けられた日本センチュリー交響楽団のいずみ定期演奏会の第3回、第4回のコンサートのライブ収録。ハイドンの全交響曲を演奏するというプロジェクトの壮大さと、アルバムにはどこにも全集を目指すと書かれていないスリリングさ(笑)から注目を集める本シリーズも、無事第3巻までリリースにこぎつけました。もちろん当ブログはこれまでの2巻同様注目のプロジェクトゆえ、重大な関心を持って取り上げます。

2017/07/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第2巻(ハイドン)
2016/11/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第1巻(ハイドン)

そしてもちろん、当ブログの読者の皆さんにとっても関心は高かろうということで、その出来が気になるところでしょう。前2巻については、記事に書いた通り、手放しで賞賛したわけではありません。第1巻ではライブらしくはありますが、かなり力みを感じる演奏もあり、第2巻では肝心の時計が若干一本調子な印象がありました。そして注目の第3巻ですが、ここにきて、飯森範親と日本センチュリー響の精緻なコントロールが素直に楽しめる演奏を揃えてきました。ライヴ収録という面と全集の記録という両面からのバランスが取れてきたと言っていいでしょうか。

Hob.I:96 Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
比較的残響をたっぷりと残した録音。会場ノイズは全くといっていいほど聴こえません。演奏の方は肩の力が抜けて、このコミカルな交響曲のメロディーをキレ良く演奏することを楽しむような余裕があります。適度な推進力に乗って小気味好く吹け上がるオケが心地良いですね。一糸乱れぬオケの精度もなかなかのもの。
続くアンダンテもキビキビとした歩みを重視した引き締まった演奏。キビキビしたところと少し手綱を緩めるところ、そして全奏部分の対比の面白さを上手くまとめてきます。ハイドンの面白さをしっかりと踏まえた見事な構成。
さり気なく堂々とした響きの迫力を聴かせるメヌエット。トリオのオーボエのソロの愉悦感溢れる演奏も見事。
そして、この曲の最大の聴きどころであるミラクルなフィナーレ。オケはここぞとばかりに前のめりで攻めに入りますが、均整を保ちながらのキレ味充分なクライマックスは素晴らしい出来。拍手が来ないのが不思議なくらい。

Hob.I:18 Symphony No.18 [G] (before 1766)
打って変わってハイドンのごく初期の交響曲。理知的というか冷静にリズムを刻む面白さを味わえと言われているような曲。ヴァイオリンのフレージングが活き活きとしていてリズムの面白さが際立ちます。この曲でも実にリラックスしての演奏だとすぐにわかります。指揮者も奏者もハイドンのユーモラスな曲の演奏を楽しんでいるよう。
快活な2楽章はやはりキレ味充分。ヴァイオリンパートの鮮やかなボウイングにホルンのタンギンングの鮮やかさがワクワクするような音楽のキレをもたらします。これは見事。
終楽章のメヌエットも鮮度の高いキレ味を聴かせます。短調の中間部の可憐な美しさが音楽に深みをもたらします。両端部の鮮度の高さとの組み合わせがこれも見事。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
とろけるような柔らかな音色を狙ってくる演奏が多い中、ざっくりとした響きをベースにオーボエが一際鮮やかに彩りを加える序奏。主題に入るとキビキビとしたリズムに乗って推進力は充分。非常に引き締まったいい響きに身をゆだねます。アクセントがしっかり効いているので立体感も見事な本格派の演奏。この曲をこれだけ引き締めた表現でまとめてくるとは思いませんでした。
美しいメロディーの宝庫たるアダージョでも感傷的になることなく、冷静にオーケストラをコントロールして音楽のフォルムの美しさを淡々と描いていきます。この楽章の穏やかな起伏を鮮明なライティングで見事な陰影をつけて描き切る匠の技。
メヌエットは俊敏なオケの反応を試すように吹き上がり、オケも俊敏な反応の聴かせどころとばかりに軽々と演奏。そしてフィナーレの最初はかなり抑えて入りますが、すぐに堂々としたピラミッドバランスのオケの迫力に圧倒されるようになります。最後にふっと力を抜いて余裕を見せて終わります。この曲も見事。

Hob.I:30 Symphony No.30 "Alleluja" 「アレルヤ」 [C] (1765)
最後に軽めの曲を持ってきました。18番同様、演奏するオケのメンバーがリラックスして弾いているのが良くわかる演奏。まさにハイドン初期の交響曲の見本のような愉悦感満点の楽しい指揮ぶり。美しいメロディーと美しい響きに包まれる幸せ。ここでも曲の美しさを信じて淡々とコントロールして、適度なメリハリと適度な起伏の面白さが充分に味わえる演奏に仕立てます。
中間楽章のアンダンテではキーになるメロディを即興的な装飾をちりばめながら繰り返していくことで実に楽しげな雰囲気を重ねていきます。終楽章は力をかなり抜いて流すように入りますが、次々と変化するメロディに合わせて表情を変える見事な技でまとめました。

飯森範親指揮の日本センチュリー交響楽団によるハイドンの交響曲集も第3巻になって、ようやく本領発揮といったところでしょう。やはりハイドンに力みは禁物。この巻に収録された4曲はどの曲もリラックスして曲の面白さを的確に捉えた名演奏。ハイドンの交響曲に仕込まれたユーモアや美しいメロディーをしっかりと拾ってイキイキと楽しくまとめ、しかもしっかりとメリハリがついたフォーマル感もある理想的な演奏と言っていいでしょう。これはこの先のリリースが楽しみになりましたね。評価は全曲[+++++]といたします。

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tag : 奇跡 交響曲18番 交響曲99番 アレルヤ

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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