下野 竜也/読響のチェロ協奏曲、時計(よみうり大手町ホール)

9月16日(水)はチケットを取ってあったコンサートに行ってきました。

以前行った読響のコンサートの時に配られたチラシでハイドンのコンサートがあると知り、会場でのチケット販売で席を取ったもの。

サントリーホールやオペラシティなどで行われるいつものシリーズとは異なり、場所はちょっと小規模なよみうり大手町ホールという新しいホール。読売新聞の新本社ビルの4階5階にあり、調べてみるとオープンは昨年春のようですね。大手町の駅直結でアクセスは便利なホールです。私はこのホールははじめて。

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読売日本交響楽団:第7回読響アンサンブル・シリーズ

プログラムは次の通り。

ハイドン:王立音楽家協会のための行進曲
ハイドン:チェロ協奏曲 第1番
ハイドン:交響曲 第101番 ニ長調「時計」
指揮:下野 竜也
チェロ:上村 文乃

近年珍しいオールハイドンプログラム。

下野さんの演奏はテレビなどでは何度か見たことがありますが、生で聴くのははじめて。チェロの上村 文乃(かみむらあやの)さんは現在バーゼル音楽院に留学中の若手チェリスト。こちらももちろんはじめて聴く人。



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珍しく開演が19:30からとういことでしたが、開演前の19:00からステージ上で下野さんのトークイベントがあったようです。こちらはいつも通り、カフェでサンドウィッチとワインを楽しんでのんびりしながら開演を待ちました。

開演時間になると、会場の照明が落とされ、なぜかティンパニの岡田さんだけステージに。いつものようにチューニングを終えると、いきなりティンパニだけで演奏が始まります! まるで太鼓連打の最近の演奏のようにアドリブを効かせてティンパニの音が鳴り響く間にオケのメンバーがステージ上に登場。全員揃ったところで1曲目の「王立音楽家協会のための行進曲」の演奏が始まりました。この時点で指揮者は不在。この曲は1792年ハイドン2回目のロンドン渡航の際、王立音楽家協会の年次夕食会に招かれた際に作曲した曲で、同じメロディーてティンパニなどが省かれたウェールズ皇太子のための行進曲という曲もあります。

曲自体はハイドンらしい祝祭感にあふれた行進曲で、それを元気よく演奏している感じですが、リズムがちょっと平板でキレも今ひとつ。指揮者がいないからでしょうか。そうこうするうちに下野さんが大きな旗を掲げて舞台下手から登場し、会場がどよめきます。よく見ると旗には「読売」と書いてあり、読売新聞の社旗でしょうか。旗を掲げながら客席に降り、軍隊の謁見式のように行進しながら前の方を一回りしてステージに戻り、曲の終わりを少し指揮して締めくくるという演出。冒頭からハイドンの曲の根底に潜むユーモアに呼応して、指揮者もユーモアで応えたということなのでしょうが、ちょっとセンスがイマイチ。先ほど触れたように、オケのキレとメリハリが今一つということで、ユーモアにしては代償が大きかったと言わざるを得ません。お客さんの反応はまずまずでしたが、私はちょっと出端をくじかれた印象。

このホールは500名収容という比較的小規模なホール。この日取った座席は左手後方。小さなホールで後方でも音が明瞭とのふれ込みで、残響は少なめ、オケの音がまさに明瞭に聞こえます。1曲目を聴いての印象は、弦楽器の響きがちょっとざらついて聴こえたり、大きな音や肝心のティンパニの音が特定の音域だけぼんつく感じがあり、明瞭とは言ってもオケの演奏にはちょっと難ありといった感じ。それだけ普段よくコンサートに通っているサントリーホールや東京オペラシティの出来が良いということかもしれませんね。

1曲目は短い曲でしたが一旦オケが下がり、ステージ上は続くチェロ協奏曲用のオケの配置に修正され、再びメンバーが戻ります。奏者が減ってかなりの小編成。しかもティンパニが入らないんですね。こうしてステージを視覚的に見て初めてわかることがあります。オケに続いてチェロのブルーのドレスの上村さんと下野さんがステージへ。上下コンビだと今気づきました(笑)

チェロ協奏曲は、序奏からオケがよくコントロールされ、先ほどの行進曲のリズムの平板さはありません。やはり指揮者がきっちりコントロールした方が良いということでしょう。上村さんのチェロは若手らしい意欲的な演奏。要所にかなりのメリハリをつけ、インテンポでグイグイきます。この曲本来の晴朗さよりも、テクニックの冴えを見せようという感じ。音の伸び、テンションはかなりのもので、濃いめの表現。技術的にはかなりのものですが、少々濃い感じです。ライブで聴くと迫力があっていいのですが、録音で聴くとちょっとくどいかもしれませんね。ホールの響きのせいか、はたまた楽器のせいか、音の伸びはいいのですが、響きはちょっとくすみ気味です。また早いパッセージの音階がちょっと曖昧に聴こえますが、フレーズ自体はかっちりエッジが効いていますのでさほど気になりません。下野さんも、上村さんに煽られてか、オケはキレよく推進力があり、好サポートといったところでしょう。このチェロ協奏曲は上村さんの意欲的な演奏にブラヴォーが降り注ぎ、アンコールでバッハの無伴奏チェロソナタ3番のジーグを披露。こちらも要所にアクセントをつけていい意味で強引さもある演奏。バッハの表現は個性的で良かったですが、ハイドンの方は逆にもうすこし抑えて曲の美しさに迫ったほうが良かったかもしれません。何れにせよ、将来が楽しみな人ですね。

休憩を挟んで、この日のメインイベント、時計です。編成が再び大きくなりますが、それでも小さなホールですのでそれほどの人数でもありません。流石にこの曲は、曲の構造をよく見通して、骨格のしっかりした演奏に仕上げてきました。1楽章の構成感はなかなか見事、2楽章のアンダンテも軽快なテンポでの進行、そしてメヌエットは強弱のコントラストをきっちりつけ、フィナーレは最後のクライマックスの凝縮感もなかなかのものでした。金管がところどころ音を外していたほかはオケもまずまずの精度。下野さんのコントロールによくついて行ってました。良かったのはオーボエとファゴット。実にニュアンス豊かで、ソロの部分の響きの美しさは惚れ惚れするほど。そしてティンパニの岡田さんは流石の安定感。小編成のハイドンということで、渾身の一撃は聴かれませんでしたが、キレはいつも通り。逆にフルートが平板で単調な印象を与えてしまっていたのが惜しかったですね。最後は盛大な拍手につつまれましたが、ブラヴォーはなし。

読響は先日聞いたイェンセンやシナイスキー、もちろんスクロヴァチェフスキが振ると、世界の一流オケにも引けをとらない素晴らしいアンサンブルを聴かせますが、この日の下野さんのコントロールは響きの成熟度と音楽のしなやかさという意味で、一流どころとは差があるのは仕方のないところでしょう。普段ハイドンの名演ばかり聞いているからちょっと厳し目になってしまいますが、指揮者のハイドンに対する理解の深さと、オケの技術、そして全員のハイドンに対する謙虚な姿勢が合致した時に聴かれる、至福の瞬間のようなものへの期待を持ってのことということでお許し願いたいと思います。

コンサートの企画自体は、オールハイドンプログラムの上、普段滅多に取り上げられない「王立音楽家協会のための行進曲」など含む意欲的なもので、客席も500名と少ないながらほぼ満員。ハイドンの音楽の普及啓蒙には非常に貢献する取り組みゆえ、こうした機会をまたつくっていただきたいものです。

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ジャンル : 音楽

tag : よみうり大手町ホール

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Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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