井上道義/オーケストラ・アンサンブル金沢の「アレルヤ」(ハイドン)

4月に入って相変わらずドタバタと仕事が忙しくなかなかレビューが進みません。ようやく3本目の記事。

Inoue30.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

井上道義(Michiyoshi Inoue)指揮のオーケストラ・アンサンブル金沢(Orchestra Ensemble Kanazawa)の演奏で、ハイドンの交響曲30番「アレルヤ」他を収めたアルバム。ハイドンの収録は2007年9月21日、金沢駅前にある石川県立音楽堂コンサートホールでのライヴ。レーベルはWarner Classics。

普段はあまり国内盤には手を出さない方ですが、売り場で見かけてハイドンの曲が入っているので入手した次第。ハイドンは交響曲30番という渋めの1曲ですが、その他にはニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」、オーケストラ・アンサンブル金沢の創設者でこのコンサートの前年に亡くなった岩城宏之の追悼のために書かれた一柳慧の交響曲7番「イシカワ・パラフレーズ」、武満徹の3つの映画音楽よりワルツ、チャイコフスキーの弦楽のためのセレナードからワルツ、ヨハン・シュトラウスII世の「芸術家カドリーユ」と多彩なプログラム。なんとなく統一感のない曲の並びだと思ったら、ハイドン以外の曲は2008年1月8日とまったく別の日のコンサートでの収録でした。ネットで調べてみると、ハイドンが演奏された2007年9月21日には、ハイドンに続きベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲に交響曲5番「運命」と古典派の曲を並べたコンサートということで、この配曲はアルバムの都合ということでした。

井上道義さんはおなじみでしょうが、1946年生まれで桐朋学園で斎藤秀雄に師事。1971年にミラノ・スカラ座でのグィド・カンテルリ指揮者コンクールで優勝し、活躍するようになります。これまでニュージーランド国立管弦楽団首席客演指揮者や新日本フィルの音楽監督などを歴任しています。2007年からオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督に就任して、この9月21日のコンサートが就任後初の指揮だったとのこと。

このアルバムを取り上げたのは、もちろんハイドンの演奏が良かったからに他なりません。

Hob.I:30 Symphony No.30 "Alleluja" 「アレルヤ」 [C] (1765)
冒頭からキビキビとした進行で入ります。石川県立音楽堂コンサートホールは響きがいいのでしょう。小編成のオケが程よい残響につつまれながらスピーカーの少し奥に定位して、オケの響きは厚みもあって実に理想的。1楽章はコミカルなメロディが次々と顔を出すのですが、驚いたのがその表情付けの面白さ。ユーモラスな表情の演出が実に上手い。オケも見事に指揮に合わせて、この初期の曲の軽快な面白さにあわせて吹き上がります。アクセントも実に軽快。このメロディーラインをクッキリと浮かび上がらせて陽気で弾むような演出、井上道義さんの天性のものがあるのでしょう。オーケストラ・アンサンブル金沢の奏者の腕もなかなかです。録音が良いので生のオケをホールの最上の席で聴いているよう。
つづくアンダンテではリズミカルに刻む弦楽器に合わせて木管楽器が代わる代わるメロディーをつないでいきますが、とりわけフルートが絶妙な巧さ。ホールに響きわたるフルートの音が実に爽快。そして弦楽器もメリハリがきちんとついて表情豊かな演奏。
フィナーレも自然に弾む美しいメロディーの宝庫。アンサンブルの精度も高く、またフレーズごとの表情の変化も絶品。実に聴き応えがあります。

アルバムの最後に収められたハイドンの小交響曲ですが、この1曲のためにこのアルバムを買う価値があります。大変失礼なことにさして期待せず手にいれたアルバムですが、あまりのすばらしさに驚いた次第。先に書いたようにハイドンの収録日は井上道義さんがオーケストラ・アンサンブル金沢の音楽監督に就任してから最初のコンサートの1曲目ということで、もっとも集中して臨んだコンサートに違いありません。このハイドンの演奏、オーケストラ・アンサンブル金沢率いる井上道義さんの演奏の素晴らしさを伝えるばかりではなく、ハイドンの交響曲の真髄を突く見事な演奏といっていいでしょう。レビューのために何度か聴きましたが、聴けば聴くほどに味わいのある名演奏です。評価は[+++++]をつけます。なお、ハイドン以外の曲も井上道義さんの聴かせ上手な演奏が楽しめますので念のため。いつもながらですが、交響曲好きな方、手にはいるうちにどうぞ!

熊本では連夜の大地震。今も余震が絶え間なく不安な状況が続いています。音楽を聴く余裕などないかもしれませんね。謹んでお見舞い申し上げます。早く地震が収まりますように。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : アレルヤ

ホグウッド/AAMのアレルヤ、ホルン信号

今日はついにホグクッド盤。しかも全集第一弾としてリリースされた第4巻からの2曲。

Hogwood_Vol4.jpg
amazon

クリストファー・ホグウッド(Christpher Hogwood)指揮のアカデミー室内管弦楽団(The Academy of Ancient Music)の演奏でハイドンの交響曲30番「アレルヤ」、31番「ホルン信号」の2曲。この2曲はホグウッドのハイドン交響曲全集の第4巻から。収録は1988年11月、1989年4月、ロンドンののウォルサムストウ・アッセンブリー・ホールでのセッション録音。レーベルはL'OISEAU-LYRE。

ホグウッドはこれまで何回か取りあげていますが、ハイドンの交響曲は1度だけ取りあげたのみです。

2011/11/03 : コンサートレポート : 【サントリーホール25周年記念】ホグウッド/N響の第九
2011/06/08 : ハイドン–交響曲 : ホグウッド/AAMの校長先生
2011/04/02 : ハイドン–声楽曲 : 【新着】ホグウッドの伴奏による歌曲集、室内楽
2010/09/21 : ハイドン–協奏曲 : ホグウッドのトランペット協奏曲
2010/09/15 : ハイドン–協奏曲 : コワン/ホグウッドのチェロ協奏曲

これまで書いた通り、ホグウッドのハイドンはどちらかというと協奏曲の伴奏のほうが気に入ってます。ホグウッドの交響曲の演奏は、どちらかというと均衡と洗練を旨としたもの。最近評判のいいトーマス・フェイやマルク・ミンコフスキなどのダイナミックな演奏と比べるとスタティックなものですが、ハイドンの機知の表現としてはなかなか趣深いものです。今日取りあげる2曲はハイドンの交響曲でも、古楽器の音色の魅力を十分に表したもの。久しぶりに聴くホグウッドの交響曲はどう聴こえるでしょうか。

両曲ともハイドンがエステルハージ家の楽長ヴェルナーの死により楽長に昇進する前年の1765年の作曲。シュトルム・ウント・ドラング期前夜のハイドン充実の時代の曲です。

Hob.I:30 / Symphony No.30 "Alleluja" 「アレルヤ」 [C] (1765)
入りはホグウッドらしい非常に透明感高い洗練された響きと、キビキビとしたテンポが特徴。録音は引き締まった音像が素晴らしいタイトな響き。弦よりも木管の存在感を強めに録っています。きりりと引き締まった響きが痛快な演奏。
アンダンテはゆったりした楽章でも練らず、というホグウッドの特徴をはっきりと出してさっぱりと進めます。このさっぱり感がホグウッドの真骨頂でしょう。まさにアンダンテ。フルート・トラヴェルソの素朴な音色が沁みます。ヴァイオリン・パートが活き活きと弾み、フレーズの切れ目の間も絶妙。
リズムのキレの良さを保ちながら流れよくフィナーレに入ります。フィナーレは途中に短調の特徴的なメロディーがクザビのように入りますが、その部分のキレも絶妙。3楽章構成の短い曲ですが、鮮やかなリズム感と古楽器のタイトな響きで一気呵成に聴かせてしまいます。この曲はホグウッドのツボにはまってます。

Hob.I:31 / Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
つづいて名曲ホルン信号。冒頭のホルンの炸裂、最高ですね。これほどの演奏だったとは記憶の中のホグウッドの演奏とは異なります。前曲同様、洗練された響きとキレのいいリズムが、まさに痛快。ホルンを中心に鋭いアクセントと弦楽器の流麗さが絶妙のコンビネーション。各メンバーのテクニックは素晴らしいものがあり、アンサンブルの精度は非常に高いです。なによりホルンが最高。ライナーノーツをみるとアンソニー・ホールステッドをはじめとする4人ですが、このホルンのテクニックはナチュラルホルンのしては超絶的なもの。完璧です。
アダージョはやはり、テンポ良く流麗に。穏やかな表情の曲を節度を保ちながら、古楽器のクッキリとした響きで淡々とこなしていきます。ここでもホルンのとろけるようなアンサンブルが最高。ヴァイオリンソロののびのびとした美しい音色も聴き所。ゆったりした楽章はテンポが重くなりがちですが、ホグウッドのコントロールはリズムの重さとは対極にあるようなキリッとしたキレのいいもの。後半ホルンのアンサンブル音程が少し不安定になる瞬間がありますが、ホルンの難しさにふと気づかされるような感じ。
メヌエットは最もホグウッドの良さが出た楽章でしょう。まさに自然な感興。ハイドンの書いた構成感溢れる曲を切れ味良く、しかも自然で、そして古楽器の絶妙の響きでまとまりよく聴かせる秀逸なコントロール。
フィナーレは、これまでの曲を振り返るようなフレーズをさっぱりしているのに、ちょっと深い印象を与えるように奏でていきます。ユーモラスでかつ素朴で美しいメロディーを弦楽器から、フルート、ホルン、ヴァイオリン、コントラバスなどに次々とつないでいきます。このあたりの折目正しいコントロールがホグウッドの魅力でしょう。最後はホルンの号砲で曲を閉じます。

久しぶりに取り出した、ホグウッドの美しい装丁の全集ボックス。記憶の中のイメージはもう少しスタティックなものでしたが、あらためて聴いた印象は記憶の中の印象がいい意味で裏切られました。特にアレルヤの方はホグウッドの美点が理想的に出た秀演。古楽器の美しい響きとキレが絶妙。ホルン信号の方もその勢いを汲んでなかなかの秀演。ということで評価はアレルヤが[+++++]、ホルン信号は[++++]とします。

IMG_3428.jpg

今日は久々に、LPを取り出してのんびり聴きました。アルバムはラヴィ・シャンカールのシタール協奏曲。やはりLP独特のダイレクトなサウンドと深い奥行きは絶妙。CDでは出せない音ですね。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : アレルヤ ホルン信号 古楽器 オーディオ

ヘスス・ロペス=コボス/ローザンヌ室内管のアレルヤ、ラメンタチオーネ、ホルン信号

今日は東京は昼間は気温が上がったんですが、夜は再び寒くなってきました。何の脈絡もありませんが、久しぶりに「ラメンタチオーネ」が聴きたくなり、ラックから取り出した1枚。

Cobos30.jpg
amazon

ヘスス・ロペス=コボス(Jesús López-Cobos)指揮のローザンヌ室内管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲30番「アレルヤ」、26番「ラメンタチオーネ」、31番「ホルン信号」の3曲を収めたアルバム。収録は1995年2月8日~10日、スイスのラ・ショー=ド=フォンで。レーベルはDENON。現役盤と思いきや、そうではないようです。

ヘスス・ロペス=コボスは1940年スペインのマドリードの北西約200キロの街トロ生まれのスペイン人指揮者。マドリード・コンプルテンセ大学にて哲学を学び、ウィーン国立音楽大学にてフランコ・フェラーラやハンス・スワロフスキーに指揮を学びました。その後の経歴は、1981年から1990年までベルリン・ドイツ・オペラの総監督、1984年から1988年までスペイン国立管弦楽団の音楽監督、1986年から2000年までシンシナティ交響楽団の首席指揮者、1990年から2000年までローザンヌ室内管弦楽団の首席指揮者、そして2003年からはマドリード王立劇場の音楽監督となっています。ヨーロッパを中心に主要なオケや歌劇場のトップを歴任してきたことになります。このアルバムを録音した95年頃はちょうどローザンヌ室内管弦楽団のトップとして5年が経過し、オケを掌握していた時期でしょう。

これまでロペス=コボスはDENONからアルバムが多くリリースされているので、名前は知っていますが、ちゃんと聴いたのは、このブログで以前取りあげたナカリャコフのトランペット協奏曲の伴奏がはじめて。前記事のリンクを張っておきましょう。

2011/01/10 : ハイドン–協奏曲 : ナカリャコフのトランペット協奏曲

鮮度が高く端正なコントロールが心情の人でしょう。このアルバムを手に入れたのはおそらく10年以上前。もちろん演奏の印象もあまりはっきりとしません。それゆえ久々に取り出した次第。

Hob.I:30 / Symphony No.30 "Alleluja" 「アレルヤ」 [C] (1765)
流石DENONの録音。しかも響きの良さで知られるラ・ショー=ド=フォンでの収録。適度な残響に適度な実体感、1995年録音ですが、鮮明かつ穏やかさもあるほぼ完璧な録音。冒頭から非常に端正な演奏。小編成オケのクリアな響きでテンポ良くハイドンの楽譜を音にしていきます。傾向としてはデニス・ラッセル・デイヴィスの演奏に近いですが、デイヴィスの演奏が端正さに極度に向いた演奏であるのに対し、ロペス=コボスのコントロールはバランス重視というところでしょう。
2楽章のアンダンテも鮮明な響きで穏やかというよりは、几帳面な感じもするもの。教科書的なオーソドックスさと言えばいいでしょうか。ただ、ここの楽器の表情は豊かで、悪い意味で教科書的というのではなく正統的、標準的な名演奏という感じ。これはこれでなかなかいい感じです。
この曲は3楽章構成。フィナーレはメヌエット。フィナーレに入り、わずかですが力感のレベルを上げ、メリハリを強くし、隈取りをつけるような演出。リズムを少し強調しながら曲を終える感じをうまく表現しています。教科書的な演奏としては、骨格がしっかりして、癖がなく、響きもいい演奏。

Hob.I:26 / Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
期待のラメンタチオーネ。速めの一貫したテンポでなかなかいい入り。曲の骨格をしっかり表現しており、細かいところもいいのですが、ボリューム感をしっかり捉えたデッサンのような堅実な演奏。曲が進むにつれて畳み掛けるような感じも感じさせて迫力も十分。立体感を感じさせるいい演奏ですね。
アダージョは情感と知性のバランスのよい演奏という趣。抑制された中にメロディーラインの美しさが光ります。訥々と弾かれる旋律に素朴な美しさ宿り、徐々に心に沁みてくる感じ。ラメンタチオーネの演奏では以前取りあげたNAXOSのニコラス・ウォードのアダージョが絶品ですが、ロペス=コボスのより抑えた表現も秀逸ですね。
この曲も3楽章構成。フィナーレは端正な悲しみといえばわかりますでしょうか。やはりフィナーレは力強さが増して立体感が見事。ここに来て弦楽器のキレも増し、管弦楽の醍醐味も少し味わえます。

Hob.I:31 / Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
意外と言っては失礼ですが、このホルン信号の入りはこのアルバム一番の出来。肝心のホルンはことさら強調することなく、むしろ控えめですが、これが非常にいいセンス。ロペス=コボス流の端正で一貫したリズムにのって、この曲の純粋な魅力がよくわかる演奏。特にヴァイオリンパートの美しさが印象的。ダイナミクスは抑え気味で、キレの良いリズム感で聴かせるという設計でしょう。この曲では教科書的という表現から、抑制の美学というような領域に入り、完成度もかなり上がってます。ホルンは目立ちませんが、音程、リズム感、デュナーミク、どれをとっても言うことなし。非常に高いテクニックをもっているのでしょう。
2楽章のアダージョは音楽に情感が宿りはじめ、音楽が濃密さを帯びてきました。ところどころ音を切りアクセントをつけますが、抑えた音量で淡々と音楽をこなして聴き所をつくっていきます。大人の音楽。ホルンの演奏もとろけるような響きを聴かせるようになり、この楽章は一段踏み込んだ表現。
続くメヌエットは弦楽器の鋭敏な反応が素晴らしいですね。キレてます。やはりオケのメンバーも集中力が上がり、一人一人のフレージングが明らかに綿密になってます。ここでも力ではなくキレで聴かせる演奏。玄人好みの演奏。
フィナーレは、セッション録音とはいえ、ここまでの楽章でリスナーの心をしっかりつかんでいるので、流したような演奏ながら、勘所がピタリと定まり実に愉悦感ある演奏。各変奏では木管楽器の美しさも絶品。チェロのリズムが若干重いのが少々気になりますがそれ以外は節度あるゆったり感、のんびり感をしっかり感じさせて完璧な演奏。音量を抑えたところもしっかり沈んで表現の幅を広げます。最後のコーダも力みなく終えるのが秀逸。

久々に聴いたロベス=コボスのハイドンのシュトルム・ウント・ドラング期の前夜から頂点に至る時期に作曲された3曲をまとめたアルバム。ロペス=コボス独特の端正なキレの良い演奏が基調ながら、アレルヤでは、曲の深みに依存するのかもしれませんが、すこし教科書的な演奏に聴こえ、ラメンタチオーネでは端正さが曲の新たな美しさを浮かび上がらせました。聴き所はホルン信号で表現が一段踏み込んだもの。やはり精緻、端正だででは音楽の深みにはたどり着かないという事でしょう。評価はアレルヤが[++++]、その他が[+++++]としました。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : アレルヤ ラメンタチオーネ ホルン信号

シェファード/カンティレーナの交響曲24番、哲学者、アレルヤ

今日は初期交響曲です。

Shepherd24.jpg

エイドリアン・シェファード(Adorian Shepherd)指揮のカンティレーナの演奏でハイドンの交響曲24番、22番「哲学者」、30番「アレルヤ」の3曲を収めたアルバム。イギリスのChandosレーベルのアルバム。録音は1986年5月11日、12日、グラスゴーのSNOセンターでのセッション録音。

エイドリアン・シェファードはイギリスのロンドン東部の街エセックス生まれの指揮者。ロンドンで音楽を学んだ後スコットランド国立管弦楽団やBBCスコットランド管弦楽団の団員となり1966年に主席チェロ奏者としてスコットランド国立管弦楽団に戻り、その後はチェロ奏者として室内楽や協奏曲のソリストとして活躍したようです。1979年にこのアルバムのオケであるカンティレーナを創設し、音楽監督となっています。イギリスでは司会者や指導者としても知られているようですね。

まずは交響曲24番から。このアルバムに含まれる曲はすべて1764年から1765年頃の作曲で、ハイドンがエステルハージ家の副楽長時代のもの。

1楽章はこれ以上晴朗な音楽はないほどの素晴らしく明るく、推進力にあふれた音楽。小編成のオケの鮮明な響きと非常にクッキリとしたリズム感が素晴らしい音楽を作っています。ハイドンの初期交響曲の魅力的な音楽を完璧に表現。フレージングはカッチリ感を非常に意識したもの。Chandosレーベルらしいクッキリしながらも豊かで自然な響きの素晴らしい録音が華を添えています。抑制された部分もリズム感を維持して素晴らしい流れで、圧倒的な推進力。個性的な演奏ではないんですが、何もしないのに音楽が満ちあふれてくるという私の好きなタイプの演奏。音楽的な完成度は非常に高い演奏ですね。
2楽章アダージョは練ったり溜めたりは一切なく、ゆったりとした音楽を抑えた表現で一貫して奏でます。ハイドンの交響曲の魅力に取り付かれた人なら解ると思いますが、音符から音楽が浮き出てくるあの感じです。
3楽章のメヌエットも無為自然ながら素晴らしい音楽性。中間部のフルートやホルンのうまさは絶妙でとろけそう。
フィナーレは落ち着ききったテンポで入り、オケの楽器が次々と重なっていく様を絶妙のフレージングでコントロール。アレグロなのにむしろゆったり気味とも感じられる落ち着いたテンポで曲想の美しさを極限まで磨き込もうとするような演奏。テンポに関わらず推進力は維持して進めます。この演奏は素晴らしいですね。シェファードのアルバムは他にも所有しているんですが、あまり鮮明な印象はありませんでした。目から鱗の素晴らしさ。

つづいて交響曲22番「哲学者」。

哲学者の特徴的な1楽章のアダージョ。中庸なテンポでいきなり素晴らしいオケのフレージング。音の強弱のメリハリはほどほどながらひとつひとつの楽器のフレージングの表情が豊かなため全体のメロディーが非常に精妙に聴こえます。弦の音階による伴奏に乗って管楽器が同じメロディーの変奏を次々と受け継ぎ、音符上は非常にシンプルな曲を素晴らしく豊かな表現で進めていきます。圧巻の1楽章。
2楽章はプレスト。シェファードの特徴は速い楽章のスピードを上げず、音楽上の推進力で聴かせてしまうこと。この楽章も本来はもう少し速いんでしょうが、実際のスピードはそれほど速くないのに推進力に溢れた演奏。そのかわり音符を完璧に弾いていきますので鮮明に楽譜を分解しているような、大判カメラで撮った写真のような鮮明さ。それでいてスタティックではないところが流石。
3楽章のメヌエット。力の抜けたすばらしいコントロール。中間部のホルンと木管によるメロディーは非常に魅力的な響き。ハイドンの交響曲の素晴らしさに打たれる瞬間。
フィナーレは前曲同様、ほどほどのスピードで鮮明な演奏。力感もそこそこなのに不思議と聴き劣りしません。哲学者も一級品です。

最後は交響曲30番「アレルヤ」

意外にこの曲は遅めで入ります。前2曲とは異なりちょっとリズムが重めです。このリズムの重さで曲の印象が大きく変わり、オケの鮮明さや演奏の精度は前曲同様素晴らしいのですが、推進力ががっくり落ちたため、前2曲とは明らかに差がついてしまいます。これは惜しい。ずいぶん静的な印象に。
2楽章のアンダンテも少々おそめに感じます。前楽章の印象を引きずってしまいますね。演奏自体は非常に美しいもの。途中のフルートのメロディーの美しさが際立ちます。
この曲は3楽章構成ゆえ、3楽章がフィナーレ。全般に遅めのテンポを選択したこの曲ですが、前2曲とは明らかに演奏のコンセプトが違います。じっくり聴かせる方に主眼を移し、爽快感や推進力はかなり抑えめになっています。フィナーレの中間部はオペラで不安な心情や誰かを探すような場面でつかわれそうなメロディーを配した面白い構成。最後は爽快に終わるのがハイドン交響曲の定番ですが、この曲はなんとなく終わります。演奏の結果からはわかりませんが、何らかの意図があってやったことだろうと思います。

シェファードのハイドンの初期交響曲を集めたこのアルバム。シェファードの抜群の音楽性を知らしめた素晴らしいアルバムです。評価は交響曲24番、哲学者は文句なしに[+++++]。アレルヤは[++++]としました。アレルヤの演奏がキレていて、このアルバムが現役盤であれば、「ハイドン入門者向け」タグも進呈するところですが、惜しいところですね。ただし、ハイドンの交響曲が好きな方には探してでも手に入れてほしい名演奏でもあります。オークションや中古屋さんを丹念にさがせば手に入るかと思いますので、お好きな方は探してみてください。

Chandosにはシェファードの交響曲集があと2組リリースされており、こちらは現役盤の模様ですので、またの機会にレビューしたいと思います。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲24番 哲学者 アレルヤ おすすめ盤

アーノンクールの初期交響曲集

先日ブリュッヘンの交響曲集の記事で、古楽器のなかでも個性的なものだと紹介したんですが、個性的という意味では触れなくてはならないものがあることにアップ直後に気づきました。もちろんアーノンクールです。

Harnoncourt30.jpg
HMV ONLINEicon

Harnoncourt31.jpg
HMV ONLINEicon

アーノンクールのハイドンはアムステルダムコンセルトヘボウとのザロモンセットをはじめとして、ミサ曲集などいろいろでていますが、最も特徴的なのは初期交響曲集じゃないかと思います。

上に取り上げたのは、31番ホルン信号、59番火事、73番狩を収めた1枚と、30番アレルヤ、53番帝国、69番ラウドン将軍を収めた1枚です。他に、45番告別、60番迂闊もの、そして6番朝、7番昼、8番晩を収めたものなど計4枚がリリースされてます。

久しぶりに取り出して、アーノンクール独特の金管のアクセントを効かせた祝祭的演奏を楽しみましたが、ここで気づくべきは選曲なんじゃないかと思ったわけです。ザロモンセットやパリセットは多くの指揮者が録音していますが、ハイドンの初期の交響曲のなかからここにあげた曲を選ぶというところからアーノンクールの好みが色濃く反映されていると思わざるを得ません。このあたりの曲を録音するときには、受難とか悲しみ、マリアテレジアなんかを選んでくるのが一般的だと思いますが、そうではなく、ある意味アーノンクールのアプローチが映える曲を並べてアルバムとしているのが面白いところ。

おそらく最もアーノンクールのアプローチが効果的なのはホルン信号で、冒頭のホルンの号砲から金管がはじけきってます。帝国や狩は終楽章のみが単独で取り上げられるほど盛り上がる曲ですし、告別や火事など残りの曲もハイドンの中ではユニークな曲想を持つ曲です。これらの曲をギョロ目をひんむいて、これでもかと言わんばかりにメリハリをつけて振られれば、個性的と言わざるを得ない演奏となります。

これらの曲をアーノンクールで最初に聴いてしまうと、強烈な印象が刷り込まれて普通の演奏では満足できない体になってしまうこと確実です(笑)
私自身はハイドンではいろんな演奏を聴いてからアーノンクールに至ったため、アーノンクールの呪縛にはまることはありませんでしたが、何を隠そうモーツァルトでは、どうしても20番の交響曲の強烈な印象があり、20番はアルーンクール以外の演奏を受け付けない体になっちゃってます(笑)
嘘だと思ったら一度モーツァルトの20番のアーノンクール盤を是非聴いてみてください。20番といわれてピンとくる方は少ないかもしれませんが、なかなか突き抜けた曲です。ちなみに同様の呪縛に23番のコープマンというのもあって、こちらはワクワク呪縛タイプの演奏です(モーツァルトねたばかりでスミマセン)

ハイドンの曲をいろいろな指揮者で聴いて20年くらいになりますが、まだまだ聴き飽きることはありません。自分だったらどう振るかなんて想像しながら聴くのは至福のひと時です。
今日はアーノンクールをつまみに、ラガヴーリンの16年を少々いただいてます。(ほんとはモルトで至福なだけです、、、、)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ホルン信号 火事 アレルヤ 帝国 ラウドン将軍 古楽器 おすすめ盤

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
スクロールできます。

剃刀ひばり古楽器弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:268人のへぼ仕立屋に違いない東京オペラシティバードタリスパレストリーナモンテヴェルディアレグリ天地創造すみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ライヴ録音マーラーストラヴィンスキー弦楽四重奏曲Op.9アンダンテと変奏曲XVII:6ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:6交響曲97番ヒストリカル告別交響曲1番美人奏者ピアノソナタXVI:39四季迂闊者交響曲70番交響曲12番東京芸術劇場太鼓連打ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:3アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:4SACDバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンディヴェルティメントヴェルナーモーツァルトベートーヴェンシューベルトLPピアノソナタXVI:38ラメンタチオーネ哲学者交響曲80番交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番協奏交響曲ヴァイオリン協奏曲DVDピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:52交響曲47番十字架上のキリストの最後の七つの言葉テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40アリエッタと12の変奏XVII:3ピアノソナタXVI:20サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76皇帝ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲弦楽四重奏曲Op.64日の出チェロ協奏曲ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33軍隊リヒャルト・シュトラウス騎士弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.20交響曲17番ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹時の移ろい交響曲4番無人島交響曲42番ベルリンフィル交響曲19番ホルン信号弦楽四重奏曲Op.55弦楽四重奏曲Op.54王妃交響曲87番交響曲86番フルート三重奏曲トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:25驚愕時計ロンドンリュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集アレルヤピアノ協奏曲XVIII:9ピアノ協奏曲XVIII:5ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ホルン協奏曲ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲78番交響曲79番交響曲81番交響曲99番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットドイツ国歌カノンオフェトリウムスタバト・マーテルピアノソナタXVI:42弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベル弦楽四重奏曲Op.17交響曲102番アダージョXVII:9受難ピアノソナタXVI:35パリセット交響曲84番ベルクブーレーズ交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアスクエアピアノピアノソナタXVI:41ショスタコーヴィチ交響曲57番交響曲68番オーボエ協奏曲リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10奇跡交響曲18番交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタ交響曲98番ドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生交響曲93番ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11音楽時計曲ピアノ小品カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストシェーンベルクピアノソナタXVI:14オーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:12変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノピアノソナタXVI:2ヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場マリア・テレジア裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ピアノソナタXVI:8ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場弦楽四重奏曲Op.2皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ小オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番交響曲10番サルヴェ・レジーナテ・デウムカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲95番交響曲108番交響曲107番変わらぬまこと交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲9番交響曲2番交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤン弦楽三重奏曲スウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
98位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
5位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ