【新着】リサ・ラーションのアリア集(ハイドン)

久しぶりの声楽曲。

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リサ・ラーション(Lisa Larsson)のソプラノ、ヤン・ヴィレム・デ・フリエンド(Jan Willem de Vriend)指揮のコンバッティメント・コンソート・アムステルダム(Combattimento Consort Amsterdam)の演奏で、「レディー・ファースト」と名付けられたハイドンのオペラ・アリア集SACD。収録は2012年1月10日から11日、2012年8月24日から27日、アムステルダムのシンゲル教会(Singelkerk)でのセッション録音。レーベルは蘭CHALLENGE CLASSICS。

このアルバム、リリースされたばかりですが、amazonしか取扱いがありません。

リサ・ラーションははじめて聴く人。コープマンのバッハのカンタータ集などで歌っている人との事。1967年スウェーデンに生まれたソプラノ歌手。最初はフルーティストだったようですが、バーゼルで学び、1993年からチューリッヒ歌劇場のメンバーとなり、フランツ・ウエルザー=メスト、ニコラウス・アーノンクール、クリスト・フォン・ドホナーニなどと共演。スカラ座では1995年にムーティの魔笛でパパゲーナを歌うなど、以降ヨーロッパの歌劇場で活躍しています。

指揮者のヤン・ヴィレム・デ・フリエンドは1962年、オランダのライデン生まれの指揮者、ヴァイオリニスト。アムステルダム音楽院、ハーグ王立音楽院などで学び、1982年にこのアルバムのオケであるコンバッティメント・コンソート・アムステルダムを設立、17世紀から18世紀の音楽を中心に演奏し、多くの録音も残しています。アルバムへの記載はありませんが、古楽器オケのようですね。

Hob.XXIVa:10 / Scena di Berenice "Berenice, che fai" ベレニーチェのシェーナ「ベレニーチェ、何をしようとしているのか?」 [D-f] (1795)
この曲はハイドンが第2回のロンドン旅行で交響曲99番から104番を作曲していたころに作曲されたもの。当時のイタリアの名ソプラノ、ブリギッタ・ジョルジ・バンティのために書かれた曲。恋人の死を嘆き、霊があの世に旅立つ際、連れて行ってほしいと乞う場面を歌った劇的な内容。
最新の鮮明な録音。すこし狭い響きの少ない教会で、残響を活かして収録されている感じ。オケは古楽器らしい鋭い響き。かなりアクセントがハッキリ刻まれれた、劇的な曲調を踏まえた演奏。特に抑えた部分の繊細なコントロールが素晴しいですね。古楽器オケの演奏としてはかなり表情の濃いものですが、くどい感じはありません。ラーションのソプラノは可憐さを主体に、声量はそこそこながら、非常に艶やかで、語りと歌の表情の変化のコントロールが巧み。クライマックスに向けた盛り上げ方も見事。線は細いものの、その良さを感じさせる好きなタイプのソプラノ。かなりの実力派とみました。

Hob.XXVIII:12 / "Armida" 「アルミーダ」 (1783)
アルミーダの序曲。ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート各1、ホルン、バスーン、オーボエ各2と小編成による演奏。クリアな響きで、かなりリズムを強調した演奏。中間部の沈みこみも深く、劇的な演奏。古楽器ではフスの演奏が印象に残っていますが、響きの純度は近いものの、かなり劇性を強調しています。これはこれで悪くありません。

Hob.XXVIII:13 / "L'anima del filosofo, ossia Orfeo ed Euridice" 「哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ」 (1791)
つづいては、ハイドン最後のオペラ、そしてエステルハージ家のため以外に書かれた唯一のオペラ「哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ」の2幕からの3曲。レチタティーヴォにつづいてしっとりと歌われるエウリディーチェのしっとり語るような魅力ある歌唱が聴き所。

Hob.XXVIb:2 / Cantata "Arianna a Naxos" 「ナクソスのアリアンナ」 [E flat] (c.1789)
当ブログでもかなりの演奏を取りあげている演奏。数えてみるとこれで13演奏目。通常ピアノ伴奏で歌われる事が多いですが、オケによる伴奏版。これまでではバルトリ/アーノンクール盤、オジェー/ホグウッド盤のみがオケによる伴奏を採用しています。語るように柔らかく寄り添うオケ。ラーションは感情を表に出すのではなく、淡々と美しい声で歌い上げていきます。途中からオケのキレが良くなり、緊迫感が増しますが、ラーションはしなやかな歌で諌める感じ。オケの表現の幅の広さと歌の美しさが聴き所でしょう。

Hob.XXVIII:9 / "L'isola disabitata" 「無人島」 (1779)
つづいて歌劇「無人島」から序曲とアリア。序曲は、先程のアルミーダ同様、小編成オケのキレの良さ全開。このキレ、以前取りあげたヌリア・リアルの伴奏を担当したミッヒ・ガイックの振るオルフェオ・バロック管弦楽団に近いものがありますね。畳み掛けるように攻め込み、金管は炸裂、ハイドンの序曲のスペクタクルな音楽を聴き応え十分に演奏します。
アリアは第1部のシルビアのアリア「甘い錯乱のなかで」という曲。タイトル通り、実に甘い雰囲気の優雅な音楽。これまでの曲の中では一番ラーションの声質に合っています。美しいソプラノにうっとり。

Hob.XXVIII:5 / "L'infedeltà delusa" 「裏切られた誠実」 (1773)
サンドリーナのアリア、"E la pompa un grand'imbroglio"とありますが、神々しく祝祭的な序奏からはじまるカンタータの様な曲。自動翻訳にかけると「ポンプはまったくの詐欺」とのこと(笑)ラーションのいろいろなタイプの歌が楽しめると言う意味ではなかなか良い選曲。

Hob.XXIVb:3 / Aria di Nannina "Quando la rosa" for for Pasquale Anfossi's "La metilde ritrobata", Act 1 Scene 7 「薔薇に刺がなくなったら」アンフォッシの歌劇「メティルデの再会」への挿入曲 [G] (1779)
この曲、ライナーノーツのホーボーケン番号はXXXIVb:3ですが、曲名などからこれは誤りで、XXIVb:3でしょう。ハイドンが別の作曲家のオペラのために書いた挿入アリア。コケティッシュなラーションの魅力が際立ちます。(ハート)

Hob.XXVIII:5 / "L'infedeltà delusa" 「裏切られた誠実」 (1773)
最後は再び「裏切られた誠実」からヴェスピーナのアリア"Trinche vaine allegramente"。自動翻訳にかけても良くわかりません。最後は陽気に騒ぐ場面。まさにオペラの一場面のような臨場感です。

リサ・ラーションの歌うハイドンのオペラアリア集。ラーションは良く磨かれた非常に美しい声の持ち主。迫力はほどほどですが、艶やかな声質と高音の美しさはなかなか。好きなタイプの声です。ハイドンのオペラの名場面を、古楽器の表現力豊かなオケにあわせて華麗に歌い上げます。最新録音のSACDということで録音も万全。これまでヌリア・リアルの素晴しい歌曲集をおすすめしてきましたが、このアルバムも負けず劣らずです。このアルバムの魅力はヤン・ヴィレム・デ・フリエンド指揮のコンバッティメント・コンソート・アムステルダムの伴奏にもあり、まさに曲、歌、伴奏の三拍子そろった名盤でした。評価は全曲[+++++]とします。歌曲好きの皆さん、これは買いです!

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tag : ナクソスのアリアンナ 古楽器 オペラ SACD

ジョーン・サザーランドとデニス・ブレインの共演

旅日記にかまけてレビューをお休みしておりました。しばらくレビューから遠ざかっていたので、リハビリを兼ねて、短い曲を取りあげましょう。

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ジョーン・サザーランド(Joan Sutherland)、エイプリル・カンテロ(April Cantelo)のソプラノ、レイモンド・ニルソン(Raymond Nilsson)のテノール、サー・チャールズ・マッケラス(Sir Charles Mackerras)指揮のゴールズブロウ管弦楽団(現イギリス室内管弦楽団)の演奏による、ハイドンの2人のソプラノとテノールのための三重唱"Pieto di me, Benigni Dei"などを収めたアルバム。ホルンの独奏にはなんと、デニス・ブレイン(Denis Brain)が登場。この曲の収録は1956年12月17日、BBCとだけ書かれているのでBBCのスタジオででしょうか、拍手などはありませんが、解説によるとライヴのようです。

久しぶりの歌曲のアルバム。しかもハイドンを歌うというイメージがあまりなかったジョーン・サザーランドの歌。もちろん、サザーランドとハイドンという組み合わせの珍しさから手に入れた次第。

ジョーン・サザーランドは1926年、オーストラリアのシドニー生まれのソプラノ歌手。両親はスコットランド出身とのこと。ソプラノ歌手だった母の影響でソプラノを学び始め、事務職につく傍らシドニー音楽院でドラマティックソプラノの才能を見いだされます。1947年に歌手デビュー、1952年にはロイヤル・オペラ・ハウスで「魔笛」の第一の侍女役でデビューしました。その後リチャード・ボニングにベル・カント・ソプラノの能力を見いだされ、ベル・カントの道を歩み始めました。1952年にリチャード・ボニングと結婚。その後「ランメルモールのルチア」、「夢遊病の女」、「清教徒」、「セラミラーデ」などをレパートリーとしていったそう。イタリアではラ・ステュペンダ(La Stupenda「とてつもない声を持つ女」)と賞賛される存在になりました。1970年代以降は声が衰え始め、1992年にオペラから引退、亡くなったのは2010年と最近のことです。

調べたところ、サザーランドはボニングの指揮でハイドンの「哲学者の魂、オルフェオとエウリディーチェ」のエウリディーチェを歌ったアルバムがあり、手元にもありました。ハイドンとは縁遠いイメージだったのは単なる私の先入観でした。

もう一人のソプラノ、エイプリル・カンテロは1928年生まれとサザーランドと同世代のソプラノ。コリン・ディヴィスの最初の奥さんだったとのこと。

Hob.XXVb:5 / Trio "Pieto di me, Benigni Dei" [Es] (????)
13分ほどのハイドンの晴朗な曲調が特徴の管弦楽伴奏付きの三重唱曲。手元の大宮真琴さんの「新版ハイドン」の曲目リストに曲は載っているものの、作曲年代の表記はありません。マッケラスの振るオケは、精度は粗いものの、オペラのような高揚感があるリズミカルないい伴奏。音程はちょっとふらつき気味ですが、存在感のあるホルンの演奏はデニス・ブレイン。音はモノラルで時代なりのものですが、なぜか雰囲気のあるいい演奏。序奏でのホルンと木管の掛け合いだけでもなかなかの風情。歌はサザーランドのソプラノから入りますが、いきなり艶があり、良く転がる素晴しいソプラノで抜群の存在感。特に高音の声量と伸びは流石です。不思議と歌に余裕があり、華麗な余韻が残ります。この曲では歌手以上にホルンが大活躍。テノールのレイモンド・ニルソンが続きます。サザーランドと似て、転がるようすが滑らかで、若々しい透明感のある美しい声を響かせます。またホルンをはさみ、今度はエイプリル・カンテロのソプラノ。サーザーランドよりも少し陰のある声質。転がるような曲調は一貫していますが、滑らかさはサザーランドに敵いません。後半は3人が絡み合いながら展開していきますが、祝祭感溢れる曲調の部分と、少し陰がさす部分の表現の変化の綾を楽しみます。終盤の3人のアンサンブルは聴き応えがあります。良く聴くと見事な構成感を感じる名曲ですね。最後はテープの伸びか音程がちょっと下がってしまいますが、この演奏の面白さを損なうものではありません。やはりサザーランドの存在感は見事。デニス・ブレインも張り合います。

Hob.XXVIII:13 / "L'anima del filosofo, ossia Orfeo ed Euridice" 「哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ」 (1791)
つづいて、解説によれば歌劇「哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ」からの一節"Se ti perdo"。こちらはサザーランドとオーケストラによる演奏。前曲のテンポのよい感じから一転、まさにオペラの一場面。マッケラスの棒はなかなか劇的。サザーランドのソプラノが時に鋼のような強さで刺さります。流石に名ソプラノと言われただけの人。強さ、しなやかさ、輝きとどれをとっても圧倒的。オペラ好きの人が唸るわけがわかります。ただただサザーランドの美声に打たれます。

ハイドンの曲を集中して聴いていましたが、このアルバムには他にモーツァルトの「エクスラーテ・ユビラーテ」、「後宮からの逃走」からの一節、ベルリーニの「ノルマ」からの一節、ヘンデルの「アルチーナ」からの一節、ドニゼッティの「ランモルメールのルチア」からの一節などが収められており、念のため他の曲を聴き始めてあまりのソプラノの輝きに腰を抜かしました。「ノルマ」や「アルチーナ」、「ルチア」はサザーランドのソプラノのパワーが炸裂。ソプラノとはこれほどの輝きのあるものなのかと衝撃を受けるような圧倒的な歌唱。むせ返るような香しさ。花の香りにに包まれるような幸せな時間。人の声の美しさの極限を聴いたような気分にさせられます。オペラ好きな人をノックアウトする破壊力。「アルチーナ」、「ルチア」の最後には熱狂しすぎて半狂乱となった観客の嵐のような拍手とブラヴォーが収められています。まさに事件のようならライヴ。

ハイドンの曲も素晴しいのですが、やはり20世紀最高のソプラノと言われただけあって、このアルバムに収められた曲はどれも素晴しいものです。ハイドンやモーツァルトは他の曲を聴いてから聴くと、牙を剥かない、古典の秩序を守った貞操あるサザーランドの姿だったことがわかります。これはこれで素晴しいものです。ハイドンの2曲の評価は[+++++]をつけます。また一枚家宝となるアルバムに出会えました。

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tag : 歌曲 オペラ ヒストリカル

ディルク・フェルミューレン/シンフォニアの悲しみ、告別

パーヴォ・ベルグルンドの演奏を聴いて、もう少しシンプルな交響曲の良さを聴きたくなって選んだアルバム。

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ディルク・フェルミューレン(Dirk Fermeulen)指揮のシンフォニア(Sinfonia)の演奏で、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」、45番「告別」、歌劇「アチデとガラテア」序曲の3曲を収めたアルバム。収録はベルギー、ブリュッセルのSteurbautスタジオでのセッション録音。レーベルはKOCH DISCOVER INTERNATIONAL。

アルバムの風情はさも廉価盤然としたものなので、もしかしたら「あたり」の可能性もあると思い手に入れたアルバム。選曲は名曲ぞろいで悪くありません。

指揮者のフェルミューレンについて調べると、オフィシャルサイトがありました。

Dirk Fermeulen(英文など)

サイトの情報によると、フェルミューレンはベルギーの指揮者。古典派、初期ロマン派の曲を得意とする事で知られていますが、バロックから現代音楽の新作を演奏するまでと広いレパートリーをもつとのこと。当初はソロヴァイオリニストとしてヨーロッパ中で有名指揮者と演奏し、フランダース・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを数年にわたり務めました。1985年に指揮者に転向することを決断し、ウィーンで指揮を学び、1991年に自らプリマ・ラ・ムジカ室内管弦楽団を設立し、間もなくベルギーでも指折りのオーケストラとみなされるようになりました。このオケとは2回アイゼンシュタットの国際ハイドン・ターゲに招待されています。フェルミューレンはモーツァルトのオペラを数多く振っており、得意としているようですね。現在はブリュッセル王立音楽院の教職にあります。

手元にアルバムはありませんが、このアルバムの他にもハイドンの交響曲のアルバムが何枚かリリースされていますので、ハイドンも得意としているのでしょう。ちょっと期待が高まります。

Hob.I:44 / Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
冒頭はいい響き。小規模オケのタイトな響き。弦楽器の音色はもうちょっと潤いが欲しい気もしますが、テンポや推進力は水準以上。普通にいい演奏なんですが、前記事でレビューしたベルグルンドなどの演奏との違いはわずかなものの、個性が弱いと感じてしまいます。ほんの紙一重なんですが、普通の演奏に聴こえてしまうのも正直なところ。
2楽章のメヌエットも破綻なく、穏やかないい演奏。一貫性がありながら目先のクイックさもあり、フレージングにも工夫が見られます。
この曲で一番良かったのがつづく3楽章のアダージョ。表現が柔らかくなり、すこし踏み込んだ解釈を聴かせます。音を切り気味に訥々と進めているのが効果的なんでしょうね。つくづくいい曲だと思いますね。木管楽器の美しい音色が沁みてきます。
フィナーレは個々の楽器の存在感がきちんとあぶりだされていますが、やはりすこし潤いに欠け、またちょっと粗さも見えてしまいます。録音はオンマイクで残響は少なめなのも影響しているかもしれませんね。テンポと推進力は一貫性があり悪くありません。

Hob.I:45 / Symphony No.45 "Farewell" 「告別」 [f sharp] (1772)
前曲同様小編成オケの特徴が良く出た演奏。演奏の特徴も前曲とよく似ていますが、良く聴くと、すこしリズムに重さがあり、それが全体の印象のキレに影響している事がわかります。オケのメンバーのテクニックに起因するものでしょうか。全般に律儀で真面目な演奏と言う範疇です。曲の骨格設計は悪くありません。
アダージョは前曲同様、浸透力があります。ただ、ここに来て気づいたのは楽章間の対比が弱く、それがちょっと一本調子な印象を残しているのも事実。あとは間の取り方も同様、もう少しメリハリをつけることで、フレーズ間の対比をもう少しクッキリさせることができると思います。
メヌエットに入ると曲自体のもつ鮮烈な印象がうまく出せて調子が上がってきているようです。オケのキレも徐々にアップしてきました。今まであまり意識してきませんでしたが、ホルンがなかなかいい音。
有名なフィナーレの前半はメヌエットの延長で、勢いを感じさせますが、やはり少々単調さをはらんでいるのが正直なところ。そして、奏者が一人づつ立ち去る有名な部分は学芸会での演奏のように、一人一人の奏者が律儀な演奏で、普通だったら詩情漂う演奏のところ、逆に純粋にメロディーを弾く奏者の数が減る事自体を楽しめと言われているような演奏。不思議な感覚の演奏です。

Hob.XXVIII:1 / "Acide e Galatea" 「アチデとガラテア」 (1762)

序曲(Ia:5)のみですが、教科書的な律儀さの支配する演奏。演奏によってはかなりの勢いを感じさせるのでしょうが、おそらくこれがフェルミューレンのスタイルなのでしょう。ちょっと教条的というか家父長的と言うか、古風とも言い切れないのですが、ちょっと古いスタイルという気がします。

当たり狙いで聴き始め、出だしが良さそうな事から、あまり聴き進まないうちにレビュー候補としてしまったこのアルバム。フェルミューレンの律儀な人柄が表現されたのでしょうが、名盤ひしめく悲しみや告別のアルバムとしてはインパクト不足なのは正直なところ。原因の一つはオケにあるような気がします。ジャケットのオケの表記はシンフォニアとしか記載されていないので、寄せ集めのオケでしょうか。探してみましたがあまり情報もありません。評価は3曲とも[+++]とします。

このアルバム、心に残る演奏とそうでない演奏の違いをよくわからせてくれたような気もします。やはり選び抜いたアルバムをレビューした方が筆も進みますね。

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ディミトリ・ミトロプーロス/ニューヨークフィルの軍隊、80番

今日はヒストリカル。

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ディミトリ・ミトロプーロス(Dimitri Mitropoulos)指揮のニューヨークフィルの演奏で、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、交響曲80番、「オルフェオとエウリディーチェ,または哲学者の魂」序曲、チマローザ「麗しきギリシャ婦人」序曲の4曲を収めたアルバム。収録は軍隊が1956年11月4日、80番とハイドンの序曲が1954年2月7日、チマローザは1954年2月21日のライヴ。レーベルはなつかしいイタリアのASdiscです。

このブログでミトロプーロスを取りあげるのははじめてのこと。昨日取りあげたバーンスタイン絡み聴きたくなったので取りあげました。

ミトロプーロスは1896年アテネ生まれのギリシャの指揮者、ピアニスト、作曲家。1960年に亡くなっていますので64歳だったことになります。ギリシャとブリュッセルで音楽を学び、1921年から25年にベルリン国立歌劇場でエーリッヒ・クライバーの助手として働き、1930年にはベルリンフィルをピアノの弾き振りで演奏したとのこと。1936年にボストン交響楽団を指揮してアメリカデビュー、1937年から1949年までミネアポリス交響楽団、そして1951年からニューヨークフィルの首席指揮者となり1957年にはバーンスタインにその立場を譲ることとなったとのこと。このアルバムの演奏は1954年、56年とニューヨークフィル首席指揮者時代の演奏になります。ミトロプーロスは現代音楽やマーラー演奏の先駆者でもあり、バーンスタインがマーラーに興味をもつきっかけを作ったとされています。

こうした先駆者的な指揮者であるミトロプーロスの振るハイドンははたしてどのような響きを聴かせるのでしょうか。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
ノイズの向こうからゆったりと響く軍隊の序奏。ちょっと音が途切れるようなテープの傷があります。録音はまあ年代並みでしょう。それほど聴きにくいコンディションではありません。主題に入ると快活なテンポにギアチェンジ。かなりゆったり目の序奏から速めのテンポへのかなり意図的な変化。以降は細めの音響ながら快速テンポで軍隊の1楽章の名旋律をインテンポでガシガシ弾き進めていきます。
2楽章のアレグレットもちょっと速めのテンポで曲の構造を俯瞰するような演奏。昨日のバーンスタインのじっくりしとりとは正反対の速めのテンポでのメリハリ重視、インテンポの迫力を聴かせる演奏。速めのテンポなのに劇的な感じはうまく表現できていて迫力十分なのが凄いところ。
メヌエットも同様。テンポに関しては楽章間のコントラストよりはインテンポによって一貫して迫力ある演奏を追求しているようです。ただしこの楽章のみ溜めをいかしたフレージング。
フィナーレはもちろん快速テンポ。良く聴くとフレーズごとに巧みに表情付けがされていることで、一貫して速めなテンポなのに聴き応えがある音楽となっていることがわかります。流石に歴史を経て聴かれ続けてきた演奏です。軍隊最後のクライマックスは素晴らしい盛り上がり。メーターが振り切れんばかり。最後は盛大な拍手に包まれます。

Hob.I:80 / Symphony No.80 [d] (before 1784)
今度はだいぶ遡って珍しい80番。演奏の傾向は軍隊と同様、キビキビ感の中に表情豊かな演奏。こちらは軍隊よりも低域が豊かな録音で自然さも少々上。冒頭から会場の咳払いなどがかなり聞こえます。ハイドンの曲に対する一貫した視点の存在を感じさせます。あまり小細工にたよらず、カッチリと仕上げていく人という印象です。低音弦主体のユニークなメロディーをうまく表現して、曲の面白さを浮かび上がらせるあたりは、流石。
2楽章のアダージョは理知的な演奏からにじみ出る慈しみ深さが感動を呼ぶような演奏。これはいいですね。さりげないコントロールが浮かび上がらせる曲本来の魅力。80番の方はテープの傷もなく安心して聴けます。均整のとれた響きの向こうに広がる晴朗な陰りのような不思議な感覚。絶品。
ミトロプーロスはメヌエットでは溜めを効かせるのが定番のようですね。この曲では予想に反してテンポを落としてじっくりきます。くどさは皆無。音量の変化をかなり鮮明につけて、ここぞとばかり美しいフレーズを感情ではなく機知で表現しているよう。この楽章もミトロプーロスの賢い解釈にノックアウト。80番の素晴らしさを再認識。
フィナーレは再び快速テンポと表情豊かな畳み掛けるミトロプーロス節が戻ってきました。脳が先回りして期待した通りに演奏され、それを感じる歓びにアドレナリン噴出! 見事。この曲はミトロプーロスの素晴らしさが良く出た演奏。

Hob.XXVIII:13 / "L'anima del filosofo, ossia Orfeo ed Euridice" 「オルフェオとエウリディーチェ,または哲学者の魂」 (1791)
不気味な迫力を感じさせる渾身の序奏。80番と同日の演奏ながら音響はちょっと異なる感じ。オペラの序曲らしく劇性を適度に表現しながらも、ミトロプーロスの理性的なコントロールが行き渡っているため、筋の通った響きに安心して身を委ねることができます。中盤以降のメロディーラインの美しさが非常にうまく表現できています。この曲も名演でした。

ギリシャの哲人、ミトロプーロスのハイドンは、ハイドンの機知、オーケストラのめくるめく響きの楽しみ、そして指揮者の抑えが利いた素晴らしい演奏でした。惜しいのは軍隊の録音の傷。ということで軍隊はその分減点で[++++]、その他は[+++++]とします。ミトロプーロスの演奏、ハイドン以外もいろいろ聴いてみたくなりました。

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tag : 軍隊 交響曲80番 オペラ ヒストリカル ライヴ録音 おすすめ盤

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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