【新着】フランソワ・ルルーのリラ協奏曲、オーボエ協奏曲(ハイドン)

まだまだ新着アルバムが続きます。

FrancoisLeleux.jpg
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フランソワ・ルルー(François Leleux)のオーボエと指揮、ミュンヘン室内管弦楽団(Münchener Kammerorchester)の演奏で、 フンメルの序奏、主題と変奏(Op.102)、ハイドンのリラ協奏曲2曲(Hob.VIIh:4、VIIh:2)と伝ハイドンのオーボエ協奏曲の4曲を収めたアルバム。収録は2014年2月8日から10日にかけて、ミュンヘンのバイエルン放送第1スタジオでのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。

このところSONY CLASSICALより続々とハイドンの新録音がリリースされています。このアルバムもそのうちの1枚。オーボエ奏者のフランソワ・ルルーを看板にしたアルバムですが、不思議なのは彼よりネームバリューのありそうなエマニュエル・パユがフルート奏者として参加しているのに、まったく写真が露出していないこと。レーベル間の大人の事情によってこうなっているのでしょうか(笑)

フランソワ・ルルーはジャケット写真では貫禄ある姿に写っていますが、意外に若く、1971年、フランス北部のベルギー国境の街、クロワ(Croix)生まれのオーボエ奏者。パリ国立高等音楽舞踏学校でオーボエの名手、ピエール・ピエルロらに師事、18歳でパリオペラ座管弦楽団の主席オーボエ奏者となります。トゥーロン国際コンクール、ミュンヘン国際音楽コンクールで1位となり、1992年から2004年までバイエルン放送交響楽団の主席奏者を務め、現在はヨーロッパ室内感のソロ・オーボエ奏者とのこと。教育者としてはミュンヘン音楽演劇大学の教授として活躍しているとのこと。日本では東京都響、新日本フィル、大阪フィルなどと共演しているということでご存知の方もあるでしょう。

そのルルーが、ハイドンとその後任となったフンメルの曲を収めたアルバムということで、アルバムタイトルは「エステルハージ家の協奏曲」ということで、ハイドン、フンメルが仕えたエステルハージ家を軸にしたアルバム。

最初に置かれたフンメルの序奏、主題と変奏Op.102はもともと4手のピアノために1822年に書かれた曲を2年後にオーボエと管弦楽のために書き直されたものとのこと。劇的に始まりシューベルトのような穏やかなメロディーの美しさが特徴の曲。ルルーの表情豊かなオーボエによってフンメルのメロディーメーカーの才が浮かび上がります。流石にルルーのアルバムだけあって、オーボエの魅力が際立ちます。音階のデリケートな表現と鮮やかなキレが見事。

ハイドンのリラ・オルガニザータ協奏曲のリラ・オルガニザータはルルーのオーボエと、パユのフルートによって奏でられます。これまで取り上げたリラ・オルガニザータ協奏曲の演奏をリンクしておきましょう。

2012/01/11 : ハイドン–協奏曲 : シュツットガルト・ソロイスツのリラ・オルガニザータ協奏曲、オルガン協奏曲
2011/09/02 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲
2011/04/29 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

Hob.VIIh:4 Concerti per la lira organizzata [F] (No.2) (1786)
アレグロ、アンダンテ、フィナーレの3楽章構成。アレグロは手回しオルガンのようなおもちゃっぽい響き炸裂。オーボエとフルートのソロは神がかり的な精度でリラ・オルガニザータの音色を再現。ハイドンによるユーモラスなメロディーが次々と湧き出してくる快感に酔いしれます。ソロとオケの一体感。そして転調しながら陶酔の彼方へ。アンダンテはしっとりと落ち着いた演奏。中間部の静けささえ感じる瞬間が秀逸。そしてコミカルさが際立つフィナーレへ。フレーズ毎にテンポや表情を巧みに変化させながらこの曲の面白さを存分に表現しようとういうことでしょう。先日取り上げたノリントンのパリセットと同様鮮明な録音が演奏の面白さを引き立てます。

Hob.VIIh:2 Concerti per la lira organizzata [G] (No.3) (1786)
ヴィヴァーチェ・アッサイ、アダージョ・マ・ノン・トロッポ、ロンドの3楽章構成。いつもながらハイドンの同時期に作曲された曲の変化の巧みさに唸ります。リラ・オルガニザータの音色の面白さを推進力に昇華させて聴かせようということでしょうか。オケのノリノリの推進力とオーボエとフルートによるユーモラスな音色の対比の妙。ゾクゾクするような臨場感。音楽の持つ多彩な面白さを感じないわけにいきません。2楽章はざらついたオケの響きとリズムの溜めが意表をつきます。よく聴くとフルートのパユの音色の美しさを感じるのですが、意識的にか、裏方にまわってオーボエのルルーを引き立てるのに徹しています。結果的にルルーの美音が際立ちます。3楽章は意外にあっさりとした表情ですが、それによって音楽自体の面白さが浮かびあがります。ところどころに挟まれたオーボエの修飾音のキレのよさにハッとさせられます。

Concerto per il oboe [C] (Hob.VIIg.C1)
最後は伝ハイドン作のオーボエ協奏曲。最近何枚かアルバムを取り上げています。古典的な均整のとれた曲ゆえ、ハイドン作ということで長らく認識されてきた曲です。この演奏でもオケのキレの良さが印象的。小編成ながら、ゴリっとしたオケの低音の迫力を存分に活かした演奏が痛快。リラ・オルガニザータ協奏曲が曲をうまく生かした変化に富んだ演奏だったのに対し、こちらはややオーソドックスな入り。ただしオーボエもオケもキレキレで実に面白い。鮮やかに吹き上がるオケ、余裕たっぷりに間をとって入るオーボエの粋なソロ、そして物憂い翳りを感じさせるオーボエの表情の変化。ルルーの自在な指揮とソロの魅力に釘付けです。非常にレベルの高い演奏。古典的な曲の垢がはがされ鮮やかな姿が蘇ります。1楽章最後のカデンツァではオーボエの宇宙への交信的信号音のような音を聴かせてビックリさせます。
アンダンテはオーボエの美音の独壇場。オーボエの名手といえばホリガーが有名ですがホリガーが天上に昇るような透明感を感じさせるのに対し、ルルーのオーボエは豊かな音色と濃いめの起伏が特徴という感じでしょうか。このアンダンテでもオーボエの美音を色濃く感じさせる演奏で圧倒。
3楽章はオーボエのソロと吹き上がるオケの対比を変幻自在に繰り返し、陶酔感へ誘います。音階の滑らかさとキレに圧倒されます。やはりルルーのテクニックに釘付け。最後はゴリっと締まって終わります。

はじめて聴くフランソワ・ルルーによるハイドンのオーボエが主役の曲3曲を収めたアルバム。いかつい姿をジャケットに晒すだけあって、ルルーのテクニック、音色は素晴らしいものがあります。リラ・オルガニザータ協奏曲のコミカルな魅力、そして伝ハイドンのオーボエ協奏曲の力感漲る演奏も見事。ソリストしてもオケのコントローラーとしての指揮者としても見事な手腕でした。ハイドン(伝ハイドンを含む)の3曲はいずれも[+++++]としておきます。

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tag : リラ・オルガニザータ協奏曲 オーボエ協奏曲

パウルス・ファン・デア・メルヴェ/ヴァントのオーボエ協奏曲(伝ハイドン)

前記事でオーボエ協奏曲を取り上げたのですが、手元の未聴盤ボックスにもう一枚素晴らしい演奏がありました。

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ギュンター・ヴァント(Günter Wand)指揮の北ドイツ放送交響楽団(NDR Symphony Orchestra)の演奏で、バッハのヴァイオリン協奏曲(BWV1041)、伝ハイドン作のオーボエ協奏曲(Hob.VIIg:C1)、モーツァルトのセレナータ・ノットゥルナの3曲を収めたCD-R。ハイドンの協奏曲のオーボエソロはパウルス・ファン・デア・メルヴェ(Paulus van der Merwe)。ハイドンの収録は1992年1月12日とだけ記載されています。

ヴァントにはもう一枚Profilからハンスヨルグ・シェーレンベルガーのソロ、ケルン放送交響楽団の演奏による1980年の録音がありますが、今回聴き比べてみたところ、今日取り上げるアルバムの方が演奏が良いため、こちらを取り上げた次第。ヴァントはハイドンでは交響曲76番を得意としていて、ライヴでかなりの回数取り上げていたようですが、この曲も複数の録音があるということで得意としていたのでしょうか。

演奏を聴く限り、全記事のコンセルトヘボウ室内管の演奏を超えるようなオケの充実ぶり。オーボエのソロを担当するパウルス・ファン・デア・メルヴェは調べたところ、このアルバムの演奏を担当する北ドイツ放送交響楽団の首席オーボエ奏者のようです。

ご存知ヴァントは北ドイツ交響楽団とは多くの録音を残しています。ヴァントがこのオケの首席指揮者となったのは1982年、クラウス・テンシュテットの後を受けて。そして1990年にはその座をジョン・エリオット・ガーディナーに譲っています。ということで、これはヴァントが首席指揮者の座をガーディナーに譲った直後の演奏ということになります。

前記事と同じ曲ですので解説のほうは前記事を御覧ください。

Concerto per il oboe [C] (Hob.VIIg.C1)
ヴァント独特の筋骨豊かながら推進力にあふれた演奏に序奏から盛り上がります。CD-Rらしからぬ実在感あるいい録音。オケの迫力は十分。これを聴いて前記事のコンセルトヘボウ室内管が小規模オケだったと気付かされます。メルヴェのオーボエは協奏曲らしくスポットライトをあてられ、くっきり浮かび上がります。音色の変化も大きく、伸びやさも十分。ヴァントの指示がキレているのか、ソロとオケの掛け合いもリズムがピタリと合って完璧なやりとり。コンセルトヘボウ室内管も良かったんですが、このヴァントのコントロールは流石と言わざるを得ません。ゆったりとした音楽が流れながらも彫刻的に引き締まったフォルムが圧倒的。交響曲76番の名演を彷彿とさせる説得力。1楽章最後には、メルヴェが鮮やかな音階のキレとオーボエ独特の唸るような美しい音色の長大なカデンツァを披露。
2楽章は独特の香りたつような音楽。オーボエの美しい音色に縁取られた可憐な花束のよう。オーケストラが次々と響きを変化させながら伴奏していきます。メルヴェも音色ばかりではなくメロディーの起伏をかなり意識た演奏で、ヴァントに負けないほどの起伏を感じさせます。
フィナーレに入ると規則正しいリズムに乗りながらもオケの力感が湧き上がる快感に酔いしれます。中盤、響きが短調に変わり、さっと光が射すような場面の面白さがヴァントのコントロールで際立ちます。オーボエもかなりの雄弁さでオケに負けていません。実に見事な演奏でした。

伝ハイドンのオーボエ協奏曲。前記事の演奏でなんとなくその面白さがわかってから興味がでてきました。手元にあるアルバムではこのアルバムの演奏がベストではないでしょうか。コンセルトヘボウ室内管とエルネスト・ロンボーの演奏も良かったのですが、オケとオーボエのバランス、オーボエの躍動感と響きの面白さ、そしてなによりヴァントがコントロールするオケの躍動感はこちらの方が上でしょう。偽作ではあっても、これまでにその音楽の面白さを認めた録音も多数あることを考慮すると、真贋ではなく音楽自体を楽しむべきでしょう。もちろん評価は[+++++]とします。

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tag : オーボエ協奏曲 偽作 CD-R

エルネスト・ロンボーのオーボエ協奏曲(伝ハイドン)

3月に入ってから出張に送別会と忙しい毎日を送っており、ちっとも記事の執筆が進みませんが、こうゆう時は短い曲のアルバムが都合がいいんですね(笑)

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エルネスト・ロンボー(Ernest Rombout)のオーボエ、ヨハン・クラフト(Johan Kracht)指揮のコンセルトヘボウ室内管弦楽団(Conertgebouw Chamber Orchestra)の演奏で、伝ハイドンのオーボエ協奏曲(Hob.VIIg:C1)、モーツサルとのオーボエ協奏曲(K.314)、フンメルのオーボエと管弦楽のためのアダージョ(序奏)、主題と変奏(Op.102)の3曲を収めたアルバム。収録は1993年2月、アムステルダムのWaalse教会でのセッション録音。手元のアルバムはLONDONの国内盤。

当ブログの読者の方ならご存知のとおり、このオーボエ協奏曲はハイドンの作であるかどうかはわからず、偽作というような扱いをされている曲。このアルバムの解説でも、今世紀になってからザクセン州ツィッタウの図書館で発見されたパート譜をもとに、1926年にブライトコップフ&ヘルテル社によって出版され、以来多くの演奏者によって演奏されてきたものとあります。元のパート譜はハイドンの没後10年後に書かれたもので、表紙にうっすらとハイドンの名が書かれたもの。本来の作曲者はオーストリアのイグナーツ・マルツァートやウィーンの宮廷作曲家レオポルド・コジェルフの名が挙がっていますが、本当のところはわからない模様。
この曲、協奏曲としてはなかなかいい出来ゆえ、偽作とのレッテルが定着しているにもかかわらず録音は少なくありません。手元に登録済みのものだけでも現在9種のアルバムがあります。

オーボエ奏者のエルネスト・ロンボーは1959年オランダに生まれた人。王立ハーグ音楽院を経てフライブルク音楽大学で名手ハインツ・ホリガーにオーボエを学び、卒業後はアーノンクールらに師事しました。コンサートデビューは1983年、アムステルダムコンセルトヘボウでリヒャルト・シュトラウスのオーボエ協奏曲。その後世界的に活躍しているとのこと。1985年からユトレヒト音楽院、2007年からはアムステルダム音楽院でオーボエを教えているそうです。
指揮者のヨハン・クラフトはアムステルダム・コンセルトヘボウ管のヴァイオリニストのようですね。小編成の室内管の指揮をとっていたということでしょう。

このアルバム、取り上げたのはもちろん演奏が非常に良いからに他なりません。真贋に耳が行くのではなく純粋に音楽を楽しめるなかなかいい演奏です。

Concerto per il oboe [C] (Hob.VIIg.C1)
往時のDECCAサウンド。実体感のあるオーケストラが教会に響きわたります。PHILIPSの透明感のある録音とは異なりますが、こちらも悪くありません。オケは流石に腕利き揃いと思わせるキレ。序奏だけでも見事なオーケストラの演奏。ロンボーのオーボエは音量はそこそこながら、しなやかさはホリガー譲り。ホリガーはオーボエの音色だけで天上に昇るような崇高さを感じさせますが、ロンボー、そのホリガーの純度の高い高音に近い音を出します。協奏曲なのでもう少しソロにスポットライトを当てても良さそうなのですが、完全にオケの迫力に食われています。オーボエの旋律は親しみやすく美しいもの、冒頭の主題の提示以降の展開が形式的でハイドンの創意がこちらの期待を上回る展開の妙とまでは至らず、やはりハイドンの作ではないとの印象を強くしますが、この時代の協奏曲としてはソロのメロディーのラインの美しさとオケのしっかりとしたサポートはかなり聴き応えがあります。
2楽章はロマンツェ・ポコ・アダージョ。オーボエの美しいメロディーから入ります。オケもそっと寄り添い、時折り短調に振れ、響きのデリケートな変化はなかなか。オーボエ独特の物悲しい音色が映えますね。オーボエも表情豊かなんですが、それ以上にオケが実に雄弁。自然を保ちながらも音楽の陰影が深く、ソロの引き立て役としては十分すぎるくらい。
フィナーレもオーボエから入ります。じきにオケがスロットルをふかして、フル回転でサポート。室内オケにもかかわらず分厚い響きはさすが。メロディーラインの展開の面白さと伴奏の迫力。最後のカデンツァではロンボーが超絶テクニックを披露しますが、オケは何事もなかったように迎えます。

このあとのモーツァルトのオーボエ協奏曲はハインツ・ホリガーの神がかった演奏が刷り込み盤ですが、流石ホリガー門下、オーボエの聴かせどころが似ています。実に伸びやかなオーボエにうっとりです。

エルネスト・ロンボーのオーボエによる、ハイドン、モーツァルト、フンメルと同時代の協奏曲を集めたアルバム。ロンボーの妙技とヨハン・クラフトの操るコンセルトヘボウ室内管の名手たちの技を聴くべきアルバムでした。偽作とのことでいままでちょっと避けて通ってきましたが、これは面白い曲であることがわかりました。特に印象的だったのがクラフト操るオケの雄弁さ。決してソロが悪いわけではありませんが、この伴奏の素晴らしさは目を見張るものがあります。ハイドンの作品とはちょっとだけ印象が異なりますが、後世の人がハイドンの名を冠しようとしたのも頷けますね。評価はオケに敬意を払って[+++++]とします。

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tag : オーボエ協奏曲 偽作

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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