ホーレンシュタイン/フランス国立管弦楽団の軍隊ライヴ

今日は気分を変えてヒストリカルなハイドン。これまで取りあげていなかった名演奏家シリーズ再開です。

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ヤッシャ・ホーレンシュタイン(Jascha Horenstein)指揮のフランス国立管弦楽団(Orchestre National de France)の演奏でハイドンの交響曲100番「軍隊」、マーラーの「亡き子をしのぶ歌」、グルックのオペラ「アルチェステ」からアリアを1曲(独唱マリアン・アンダーソン)、プロコフィエフの交響曲5番などを収めたアルバム。収録は1956年11月22日、パリのシャンゼリゼ劇場でのコンサートのライヴです。レーベルは米MUSIC & ARTS。このアルバムは2枚組で他にベートーヴェンのエグモント序曲、ニールセンの交響曲6番などが収められていますが、オケも収録日も別のもの。

ホーレンシュタインは、一貫した筋の通った音楽を引き出す人。シェルヘンから少し灰汁をとり、また同じく構えの大きい音楽を引き出すデュトワのフランス風の色彩感を独墺系の質実さに置き換えたような感じ。マーラーを得意としていたようで、手元にも何枚かのライヴ盤があり愛聴しています。ハイドンでは天地創造やこの軍隊の他に、ロンドン、驚愕などの録音が手元にありますが、他に時計など未入手のアルバムがあるようです。

ちゃんと調べた事がなかったので、この機会にホーレンシュタインの略歴をさらっておきましょう。

ヤッシャ・ホーレンシュタインは1898年、オーストリア人を母親にウクライナのキエフに生まれました。1911年に家族に連れられウィーンに移り、オーストリアの作曲家・指揮者のフランツ・シュレーカーに師事。その後、ベルリンに移ってフルトヴェングラーの助手を務めて腕を磨きました。1920年代に入るとウィーン交響楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮台に立つようになります。ナチスの台頭により亡命を余儀なくされ、1940年に渡米し、最終的にアメリカ国籍を取得しました。1973年にロンドンで亡くなっています。

このアルバムのメインのプログラムは1956年のパリ、シャンゼリゼ劇場のコンサートの模様を収めたもの。コンサート冒頭にハイドンでも華やかな曲想の軍隊を置き、マーラーの「亡き子をしのぶ歌」でぐっと沈み、諧謔なプロコフィエフの5番で締めるという、通好みのプログラム構成にぐっときます。こうした選曲のセンスも指揮者を理解する上で重要なものでしょう。

今日、このアルバムを選んだのは、ホーレンシュタインの壮大なつくりを浮かび上がらせる棒で描かれた軍隊を聴き直したいと思っての事。シャンゼリゼ劇場のライヴというのもいいですね。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
ホールのざわめきの中から立ちのぼる、香しい軍隊の序奏。激しく咳払いする人や足音まで鮮明にとらえた臨場感たっぷりの録音。古さは感じますがおどろおどろしい迫力はしっかり伝えており、なかなかのものです。冒頭から静かな進行ながらスケール感と迫力はビリビリ伝わります。フレーズの切れ目で少し間をとる以外は一貫したテンポですが、一貫した部分の揺るぎない感じが非常にうまく演出できているため、音楽にきっちり一体感があるように聴こえます。決して荒ぶることなく、着実に盛り上げていくあたりは流石。オケも引き締まった響きをきっちり出して満足そう。
聴き所の2楽章の軍隊の行進は意外とオーソドックスというか平板気味にすすめますが、このままで終わろうはずもありません。静かに青い炎が灯るような小爆発を次々とおこしていき、不気味な迫力を感じさせます。音符の数が減ったように曲が整理されて聴こえます。最後のトランペットのファンファーレからティンパニの爆発に至る部分は流石に大爆発でした。
メヌエットも終始一貫した骨格の確かなもの。しっかりした骨格ですが、やはり抑えた部分のメロディーを非常に丁寧に描いていく事で、逆に骨格がはっきりするようですね。
フィナーレも畳み掛けようとするエネルギーと小細工を避けながら一貫した演奏をしようとする理性が拮抗している感じ。音響的にダイナミックを極めたという感じではないにも関わらず、ホーレンシュタイン独特のスケール感の表現によって、不思議と壮大な印象を残します。終盤はほんのすこしテンポを上げるだけで、見事にギアチェンジし、最後は軍隊らしい華やかかつ壮麗なフィニッシュが決まります。もちろん盛大な拍手に迎えられます。

このアルバムの冒頭に置かれたエグモント序曲も腰にくるほどの図太さのある音塊、そして軍隊を経て、亡き子をしのぶ歌では実に深く沈み込む情感を引き出し、最後のプロコフィエフはホーレンシュタインならではの迫力と諧謔性の両立した見事な響き。この日の聴衆はホーレンシュタインの仕込んだ音楽に酔いしれたことでしょう。手に入れたのはかなり前になりますが、今更ながら素晴らしいライヴです。軍隊の評価は私の好みを反映して[+++++]とします。かれこれ60年近く前のシャンゼリゼ劇場の1夜のコンサートの興奮。今も昔も音楽は人の心にじんわりつたわります。

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tag : 軍隊 ヒストリカル ライヴ録音 シャンゼリゼ劇場

シューリヒト/フランス国立管のベートーヴェン1番、英雄(DISQUES MONTAIGNEシャンゼリゼ劇場ライヴ)

仕事が忙しくてちょっと更新できませんでした。前記事のモニク・ド・ラ・ブルショリュリのシャンゼリゼ劇場ライヴの独特の乾いた響きを聴いて、このアルバムを思い出しました。今日はハイドンではなくベートーヴェン。

SchurichtEroica1.jpg

本当は金と紺の粋な配色なんですが金が反射して真っ黒に写っちゃいましたということでライナーノーツ裏面写真も追加。

SchurichtEroica2.jpg

HMV ONLINEicon(Altus盤)

カール・シューリヒト(Carl Schuricht)指揮のフランス国立管弦楽団(Orchestre National de France)の演奏でベートーヴェンの交響曲1番と交響曲3番「英雄」の2曲を収めたアルバム。収録は1番が1965年6月15日、英雄が1963年5月14日、いずれもパリのシャンゼリゼ劇場でのライヴ。レーベル今は幻の仏DISQUES MONTAIGNE。所謂お宝盤です。なお、フランス国立管弦楽団はこのオケの現在の呼称で、当時はフランス放送管弦楽団(Orchestre national de la radiodiffusion Française)と呼ばれていたそうです。

上のHMV ONLINEのリンク先はこのDISQUES MONTAIGNE盤の英雄の演奏の日のコンサートの模様を収めたアルバムで、もちろん入手可能です。

モニク・ド・ラ・ブルショリュリのアルバムの響きはまさに、このアルバムから聴こえる響きと同質なもの。おそらくコンクリート建築の父と呼ばれたオーギュスト・ペレによるこの劇場特有の響きの個性なのではと思います。シャンゼリゼ劇場は過去2度ほどパリを訪問した際にもコンサートを聴く機会に恵まれず、実際にこの劇場の音は聴いていません。なお、シャンゼリゼ劇場は今年創立100周年とのことです。

指揮者のカール・シューリヒトはおなじみでしょう。1880年ドイツ北部のダンツィヒに生まれた指揮者。紹介は下のDISQUES REFRAIN盤の記事をご覧ください。シューリヒトは1967年はじめに86歳で亡くなっていますので、この演奏は英雄が81歳、1番が83歳頃の演奏ということで最晩年の演奏になります。シューリヒトは晩年リウマチを患っていたということで、体調も万全でなかったことが、手元にあるミシェル・シェヴィ著の「大指揮者カール・シューリヒト 生涯と芸術」(アルファベータ)にも触れられています。

2011/02/25 : ハイドン以外のレビュー : シューリヒト/ウィーンフィル1956年のモーツァルトライヴ
2011/02/23 : ハイドン–交響曲 : シューリヒトの「ロンドン」(MEMORIES REVERENCE)
2011/02/22 : ハイドン–交響曲 : シューリヒトの「ロンドン」(DISQUES REFRAIN)
2010/04/21 : ハイドン–交響曲 : 枯淡、シューリヒトのハイドン

シューリヒトは好きな指揮者ゆえ、これまで何度もとりあげています。直裁、明解なのに味わい深く、音楽に魂が宿っているような生命感すら感じさせる演奏が特徴です。ハイドンでは86番とロンドンの素晴らしい演奏があり、以前触れたようにわがコレクションでも至宝クラスのアルバムです。

シューリヒトといえばブルックナー、モーツァルト、ベートーヴェンなんでしょうから、ハイドン以上にすばらし演奏が多い訳ですが、そのシューリヒト最晩年、しかもシャンゼリゼ劇場でのライヴということで注目度の高いもの。もちろん実に素晴らしい演奏で、長年愛聴しております。

ベートーヴェンの1番と3番は何れもハイドン存命中に完成した作品。ハイドンは創作活動をほぼ終えていた時期ですが、ハイドンの築いた交響曲という形式の次の時代を切り開くベートーヴェンの衝撃的な曲を聴いたのでしょうか。

ベートーヴェン 交響曲1番op.21(1800年)
会場のざわつきの中から鮮明に響き渡る音響。冒頭どすんと何かが落ちたような音まで録られた鮮明な録音。もちろんシャンゼリゼ劇場独特の音響。ライヴ好きの私にとっては会場の空気そのままの理想的な録音です。会場での演奏の緊張感あるようすが手に取るようにわかります。録音はステレオなのもプラスですね。演奏の方は冒頭からシューリヒトは80歳を超えているとは信じられない素晴らしい生命感溢れるコントロール。キリッと引き締まって、直裁なフレーズで淡々とすすめているのに、音楽に立ちのぼるえも言われぬ高貴な雰囲気と味わいがあります。シューリヒトにしかできない演奏でしょう。オケも万全。特にシャンゼリゼリゼ劇場の独特の響きに溶け込む木管楽器が素晴らしいですね。まさにシャンゼリゼ劇場の客席で聴いているような気分になります。終盤は畳み掛けるような素晴らしい迫力。とても80歳を超えた人の奏でる音楽とは思えません。
間をおかず2楽章のアンダンテ・カンタービレに。1楽章とかわらぬテンポによるサクサクとした演奏。もちろんシューリヒとならでは達観したフレージングと緊張感溢れるオケのエネルギーが感じられる素晴らしい音楽。
またまた、会場が咳き込む隙を与えないように間を置かずメヌエットに入ります。気品と迫力の両立した響きの塊のようなメヌエット。オケの響きはシャンゼリゼ劇場に響き渡ります。
フィナーレも有名なメロディーが速めのテンポに乗って軽い感じなのに活き活きと奏でられ、オケは抜群の精度で対応します。センス良く乱舞する音階のそこここでオケが爆発。まさに新時代の音楽の登場を鮮明に印象づける音楽でしょう。全く練らないのに音楽には素晴らしいメリハリがついて、音楽の構造がクッキリ浮かび上がります。最後の音を待たずにシャンゼリゼ劇場の観客から嵐のような拍手が降り注ぎます。このコンサートがパリの聴衆にとって、どれほど期待されたものだったのかを物語るよう。拍手は自然と手拍子にかわっていきました。会場の興奮がそのまま伝わってくる素晴らしい演奏でした。

ベートーヴェン 交響曲3番「英雄」op.55(1804年)
続いて英雄。前曲の1番より少し前の1963年5月のライヴ。最初の一撃から、ノックアウト。もの凄い緊張感。録音は前曲同様鮮明ですが、比べると前曲のほうが鮮明度では上で、こちらのほうが少し低域の量感重視でしょうか。いずれにせよシャンゼリゼ劇場の雰囲気がしっかり伝わります。オケの調律が少し緩い感じがしますが、気にしません(笑)。1楽章は最後のクライマックスを目指して徐々に盛り上げていくプロセスがどの演奏も聴き所なんですが、シューリヒトのコントロールは一貫して気品と直裁な表現のバランスのとれたもの。過度なメリハリを抑えながらも実に慈しみ深く、味わい深いもの。燻し銀の演奏という感じでしょう。1番がかなりエネルギー感のある演奏だったのに対し、こちら最初の一撃以降はじっくり攻めていく感じ。特に木管、金管の響きにシャンゼリゼ劇場の響きが乗って、これもまた味わい深さにつながっています。終盤はザクザクとした響きによる迫力のある演奏。
やはり間をとらず2楽章のアダージョに入ります。この楽章間の間をあまり置かず入るのはシューリヒトの特徴なんでしょうか。1楽章がバランス重視だったのに対し、2楽章はかなり起伏の幅をとって大きなうねりを表現していますが、葬送行進曲を過度に暗く表現するのではなく、陰影の深い彫刻に丁寧にライティングしたようなアーティスティックな表現。こうした部分の芸術性はシューリヒトならではの高みに達していて、この演奏の一番聴き所です。最後の消え入るようなところまで含めてまさに孤高の表現。
音楽はつながっていても雰囲気がさっと変化してスケルツォに。オケにエネルギーも漲りますが、シューリヒトが手綱を上手く捌いて、抑える部分をしっかり抑えることで一貫した音楽が流れます。金管を象徴的に目立たせる演奏も多いですが、かなり抑えているのが特徴でしょうか。弦楽器のフレージングはシューリヒトの真骨頂でしょう。
フィナーレは変奏曲。メロディーの受け渡しが重なるようになるのがシューリヒト流。メロディーラインの流れのよさとメロディー間の対比が鮮明になり、音楽が非常に豊かに聴こえます。時折そよ風のような優しい表現を挟みながら、メロディーの織りなすざっくりとした綾を大きなうねりに乗せていきます。終盤のホルンの号砲も穏やかな表現です。このあたりの表現が気品と深みを両立させたシューリヒトの演奏のポイントなのかもしれませんね。最後はテンポをかなり落として、曲を締めくくります。前曲同様嵐のような拍手で終わります。こちらも当日の感動が伝わってくる演奏でした。

カール・シューリヒトの演奏によるシャンゼリゼ劇場のベートーヴェンのライヴ。シャンゼリゼ劇場独特の響きのなかに、シューリヒトならではの味わい深いベートーヴェンが響きわたる素晴らしい演奏でした。このアルバム、英雄の演奏の方が記憶に残っていましたが、あらためて聴き直すと1番もそれ以上に素晴らしい演奏。1965年とシューリヒトがコンサートの指揮台に登れるかどうか危うい時期の貴重なコンサートゆえ観客の興奮も一入でしょう。シューリヒトもそれに応えて、素晴らしい覇気を感じさせます。いまから50年も前のコンサートの感動がよみがえりますね。

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モニク・ド・ラ・ブルショリュリのピアノソナタXVI:35

前記事のリステンパルトの演奏で、一昔前の香り立つような演奏に酔いしれました。もう一枚香り立つ演奏いきます。

Bruchollerie.jpg
HMV ONLINEicon / TOWER RECORDS

モニク・ド・ラ・ブルショリュリのピアノによるハイドンのピアノソナタHob.XVI:35他、モーツァルト、ショパン、ディティユー、サンサーンス、シューベルトなどのピアノ曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1962年3月、パリのシャンゼリゼ劇場でのライヴ。レーベルは仏INA mémoire vive。

エッフェル塔ををバックにしたブルショリュリの写真とセンスのいいタイポグラフィが配された粋なジャケット。ピアニストのモニク・ド・ラ・ブルショリュリは私はこのアルバムで初めて聴いた人。いつものようにWikipediaなどの情報から略歴を調べておきましょう。

ブルショリュリは1915年パリ生まれのフランスのピアニスト。音楽一家に生まれ、母はイヴ・ナットを教えた人。母に手ほどきを受けたのち、7歳の若でパリ音楽院に入り、両親の親友でもあったピアニストのイシドール・フィリップに師事、1928年に13歳の若さで音楽院を首席で卒業。その後はパリでアルフレッド・コルトー、ウィーンでエミール・フォン・ザウアー、ベルリンでラウル・コチャルスキに師事。1932年に18歳の若さでシャルル・ミュンシュの指揮で協奏曲を演奏してデビューしました。1936年から1938年まで数々のコンクールで入賞し、1937年にワルシャワのショパン国際コンクールに入選。戦後はアメリカやポーランドなどを皮切りに国際的に活躍するようになり、ヨッフム、アンセルメ、カラヤン、チェリビダッケらの著名な指揮者と共演しました。1966年、ルーマニアで自動車事故にあい左手の機能を失ったため引退。晩年は教育活動に献身し、1973年に亡くなっています。

このアルバムの演奏はブルショリュリ47歳頃の演奏。まさに香り立つようなピアノに酔いしれます。

Hob.XVI:35 / Piano Sonata No.48 [C] (c.1780)
速めのテンポによる、非常にあっさりとしたタッチによる入り。ただ良く聴くとあっさりとしたというよりはさらさらと自在にテンポを揺らしながらそよ風のように弾き進めていきます。録音は低域が薄めですが鮮明さは十分。1962年という録音年代にしてはかなりの質の高い録音です。シャンゼリゼ劇場特有のカッチリした音です。
さらっとしたまま2楽章に入ります。ただ、徐々に立ちのぼる色香。テンポが徐々に落ちて、詩情が満ちあふれるようになります。このピアノの濃いニュアンスはフランス人ピアニストならではでしょう。自然ながら独特の雰囲気がすばらしいですね。情に流される事なくさらっとした詩情。
間を置く事なく、これまたあっさりとフィナーレに入ります。一貫して軽いタッチ、ピアノを鳴らしてはいるのですが、この軽さと詩情は見事。高音の転がるような音階にブルショリュリの才能が光ります。最後は間をおかず拍手が降り注ぎます。

つづくモーツァルトのファンタジアK.475も軽さと詩情が溢れる名演。コンサート会場にいた人が酔いしれる様子が想像できます。

モニク・ド・ラ・ブルショリュリのピアノによるシャンゼリゼ劇場のライヴ。この時代のこの瞬間を切り取ったような極上の演奏。ハイドンの演奏はこの曲のスタンダードという訳ではありませんが、ブルショリュリにしか弾けないハイドンであることは間違いありません。日本ではあまり有名な存在ではないでしょうが、演奏はハスキルやリパッティを彷彿とさせる、非常に雰囲気のある演奏。このアルバムは貴重な瞬間の記録と言う意味でも素晴らしいもの。ハイドンのピアノが好きな方にはオススメの演奏です。評価は以前より上げて、[+++++]とします。

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ブルーノ・ワルター/フランス国立管弦楽団の「奇跡」

今日は巨匠ブルーノ・ワルターのハイドン。

walter86Miracle.jpg

ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のフランス国立管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。奇跡の前にはベルリンフィルとのブラームスの交響曲2番、後にはストックホルムフィルとのモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークが置かれています。奇跡の演奏について、ライナーノーツには収録は1955年とだけ記載されていますが、ワルターのディスコグラフィーをネットで調べると1955年5月12日、パリのシャンゼリゼ劇場でのライヴとのこと。レーベルは懐かしいイタリアのASdisc。なぜか郷愁を感じるASdiscの定番ジャケットデザインですね。

ワルターのハイドンの交響曲は以前に一度取りあげています。同じASdiscのアルバムでした。

2011/04/17 : ハイドン–交響曲 : 爆演、ブルーノ・ワルターの86番、88番

ワルターほどになると、ディスコグラフィーも大変充実しています。下記のサイトにはワルターのハイドンの演奏がいろいろあることがわかりますが、まだ未入手のものもあります。

Recorded Performances of Bruno Walter(英文)

かなり決まった曲を繰り返し取りあげるようなイメージがありますが、今回取りあげた96番奇跡はワルターが得意としていた曲のようです。上記のディスコグラフィーによると4種の演奏があることがわかります。

1937年5月5日:ウィーンフィル
1954年11月29日、12月6日:ニューヨークフィル
1954年11月21日:ニューヨークフィル(カーネギーホールライヴ)
1955年5月12日:フランス国立管弦楽団(シャンゼリゼ劇場ライヴ)

最後の演奏が今回のアルバム。3番目の演奏のみ未入手でどうやら同じくASdiscからアルバムがリリースされているようですので、気長に中古やオークションを探してみようと思います。

ワルターは1876年生まれで1962年に亡くなっていますので、この演奏はワルター78歳のライヴということになりますが、我々の世代になじみのあるコロンビア交響楽団との最晩年のスタジオ録音で聴かれる慈しみ深い演奏とはかなり印象が異なり、抜群の生気とエネルギー。カザルスの演奏のときも驚きましたが、今更ながらこの年齢でこのエネルギー感は見事という他ありません。かくありたいものです、私も(笑)

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
冒頭の序奏から素晴らしい覇気。オケはちょっと荒々しい感じはしますが、主題に入るとテンポが上がり、粗いながらも生気が漲る演奏。ワルターらしいちょっと早足ですすむ、というか一筆書きで描くような浮き足立った表現が印象的。1楽章のコミカルな旋律がワルター流の即興的な演出で描かれます。録音は年代なりで潤いには欠けますが、迫力は十分あり、ヒストリカルな録音が好きな方には全く問題ない仕上がり。
2楽章のアンダンテはワルターらしい慈しみ深さはほどほど。シャンゼリゼ劇場のコンクリートを主にした独特の残響の雰囲気でオケの音色も古風に聞こえます。途中のヴァイオリンのソロがくっきりと浮かび上がり、オーボエなどにメロディーを引き継ぎアンダンテを閉じます。
楽章間の会場のざわめきが引く間もなくメヌエットがはじまります。メヌエットは力感溢れる演奏ですが、冷静にコントロールしている印象もあり、テンポは一定な感じでダイナミクスの幅もほどほど。徐々に音量が上がり迫力もましますが、それだけではないのがワルターたる所以。徐々に大胆さが増し、メヌエットの最後は迫力とキレが聴き所とはっきりわかる演奏。
フィナーレはデッドなシャンゼリゼ劇場のダイレクト感のある音色。奇跡といえばアバド/ヨーロッパ室内管の火を噴くような俊敏な演奏の記憶が残ってますが、ワルターの奇跡はキレはほどほどながら意外と迫力が素晴らしいもの。終盤の畳み掛けるような盛り上がりはまさに生気溢れるもの。会場の万来の拍手で終えます。奇跡のユニークな曲想が十分表現されています。

久々に聴いたワルターのハイドン。流石ワルターと言うべき個性的な演奏でもあります。ワルターの演奏としての盤石さという意味ではまだ上がありますので評価は[++++]ということにしたいと思います。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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