ティボー/コルトー/カザルスによるジプシー・ロンド

今日は85年前の録音を。

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(NAXOS盤)HMV ONLINEicon/ amazon / TOWER RECORDS

ジャック・ティボー(Jacques Thibaud)のヴァイオリン、アルフレッド・コルトー(Alfred Cortot)ののピアノの演奏を集めたアルバム。ハイドンはパブロ・カザルス(Pablo Casals)のチェロを加えたピアノ三重奏曲(Hob.XV:25)が2曲目に収められています。他にバッハのブランデンブルク協奏曲5番とベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」が収録されています。ハイドンの収録は1927年6月20日、なんと85年前の録音。レーベルは古めのヒストリカル録音復刻を多く手がけているBiddulph RECORDINGS。ライナーノーツにはハイドンの演奏はHMV DA 895/6という原盤から起こされたものとのこと。

今回レビューに取りあげるにあたって調べたところ、Biddulph RECORDINGSのアルバムは流通していないようです。そこでアルバム写真下のリンクはハイドンはおそらく同音源であろうNAXOS盤のものを張っています。

ジャック・ティボーは私の年代だと、実はあまり親しみはありませんが、クライスラーと並び称される名ヴァイオリニスト。1880年フランスのボルドーに生まれ、1953年飛行機事故で亡くなっています。1905年にはこの演奏でトリオを組んだ、コルトー、カザルスとカザルス三重奏団を結成し、翌1906年からコンサートを開くようになったとの事。

アルフレッド・コルトーも同様、ご年配の方にはなじみがあるでしょう。1877年スイスに生まれ、1962年に亡くなった大ピアニスト。ショパンの演奏等で知られた人でしょう。先に触れたカザルス三重奏団は1920年代後半まで演奏を続けたが、ティボーとコルトーの仲が疎遠となり、解散したとのこと。ということでこのアルバムの演奏はこのトリオの絶頂期の録音でしょう。

カザルスは紹介の必要はないでしょう。以前カザルスが指揮したアルバムを取りあげていますのでそちらをご参照ください。

2011/01/12 : ハイドン–交響曲 : パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別-2
2011/01/11 : ハイドン–交響曲 : パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別

CDをかけると、SPらしいスクラッチノイズが郷愁を誘います。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
派手に針音がしますが、ヴァイオリン、チェロ、ピアノは鮮明に録られており、定位感も悪くありません。リアリティは驚くほど。良質なSP盤から奏でられる素晴らしい音楽。以前取りあげた古いクァルテットがポルタメントを多用した演奏だったのに対し、ティボーのヴァイオリンは直裁な響きながら味わい深いフレージングでじつに雰囲気の良いもの。歴史の流れを感じる演奏。コルトーは軽いタッチで雰囲気豊かな伴奏。カザルスのチェロも2人の演奏によく合わせながらも、存在感のある弓さばき。ティボーのヴァイオリンは実に美しい響きを聴かせます。
2楽章のボコ・アダージョは針音を伴奏に時間の流れが止まりかけるような至福の一時。この曲の美しいメロディーをティボー、コルトー、カザルスがかわるがわる受け継いで奏でていきます。まるで、月夜の静かな海に浮かぶボートで波の揺れを楽しむがごとき風情。ティボーのヴァイオリンはポルタメントっぽい節回しが聴かれます。この豊穣な音楽は何でしょうか。
有名なジプシー・ロンドはちょっとビリつきを伴うものの、それほど聴きづらくありません。SP録音の優秀さを重知らされるダイナミックな展開。これより後の時代の録音でもこれだけのリアリティはなかなか出せないものです。かなりはっきりとしたアクセントをつけて有名な旋律を重ねていきます。終盤は音量をかなり抑えて意欲的な表現。

ティボー、コルトー、カザルスという神様のような3人によるハイドンの演奏。今の時代の演奏とははっきり異なるものの、この豊かな音楽は85年の歳月を経てもなお、人の心に届きます。針音を伴って聴こえる素晴らしい音楽。連綿とつづく演奏の歴史のパースペクティヴ上の金字塔と言っていいものだと思います。続く「クロイツェル・ソナタ」もさらに鮮明な録音によって眼前に3人が降臨したような素晴らしい録音。いやはや恐れ入りました。評価は[+++++]とします。

このアルバム、手に入れたのはおそらく20年くらい前で長らくホコリをかぶっていました。85年経っても聴く価値のある素晴らしい録音です。ヒストリカルなものの好きな方はもちろん、多くの方に聴いてほしい素晴らしい演奏。リンクをつけたNAXOS盤は未聴のため、この素晴らしいリアリティがNAXOS盤でも聴けるかどうかはわかりません。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノ三重奏曲 ジプシー・ロンド

カリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオによるピアノ三重奏曲

昨日ディスクユニオンで手に入れたアルバム。

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カリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオ(Kalichstein-Laredo-Robinson Trio)によるハイドンのピアノ三重奏曲4曲(収録順にHob.XV:12、XV:27、XV:28、XV:25)を収めたアルバム。収録は1991年9月、アメリカニューヨーク州の内陸の街トロイにあるトロイ貯蓄銀行音楽ホールでのセッション録音。レーベルは優秀な録音が多いマイナーレーベルDORIAN RECORDINGS。

今ひとつ垢抜けないジャケットですが、こうゆうジャケットには名演の匂いもします(笑)。昨夜手に入れた6枚のアルバムを整理しつつまずこのアルバムからCDプレイヤーにかけると、じわりと伝わる素晴らしい音楽。予感的中です。

カリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオのメンバーは下記のとおり。

ピアノ:ヨゼフ・カリヒシュタイン(Joseph Kalichstein)
ヴァイオリン:ハイメ・ラレード(Jaime Laredo)
チェロ:シャロン・ロビンソン(Sharon Robinson)

ヨゼフ・カリヒシュタインは1946年イスラエル生まれのアメリカ人ピアニスト。1962年にアメリカに移住しジュリアード音楽院で学び、バーンスタインとニューヨークフィルの伴奏でベートーヴェンのピアノ協奏曲4番を共演したのを皮切りに世界中で活躍するようになりました。室内楽分野でも活動し、1981年にこのアルバムのメンバーとカリヒシュタイン・ラレード・ロビンソン・トリオを設立ししています。現在はジュリアード音楽院で教える立場でもあるようですね。

ハイメ・ラレードは1941年ボリビア出身のヴァイオリニスト。英語読みだとジェイミーですがボリビア生まれとの事でスペイン語読みでハイメとのこと。フィラデルフィアのカーティス音楽院で学び、1960年にカーネギーホールでリサイタルを開く。このリサイタルが評判となり、その後有名オーケストラとの共演を重ねる。ヴィオラもこなし、室内楽ではアイザック・スターン、ヨー・ヨー・マ、エマニュエル・アックスなどと組んでピアノ四重奏曲の録音を残し、また、グレン・グールドとの録音もあります。1999年よりヴァーモント交響楽団の指揮者を務めており、また、現在インディアナ大学音楽学部の教授を務めています。

シャロン・ロビンソンは1949年テキサス州ヒューストン生まれのアメリカのチェリスト。両親ともにヒューストン交響楽団のメンバーと言う音楽一家の出身。ノース・カロライナ芸術学校、ロスの南カリフォルニア大学、ボルチモアのピーボディ大学などで学び、1974年にこのアルバムのメンバーでニューヨークデビュー、1977年にはソロデビューを果たし、以後はソロ及びこのトリオで活躍しています。どうやらヴァイオリンのハイメ・ラレードと夫婦のようですね。

Hob.XV:12 / Piano Trio (Nr.25/op.57-2) [e] (1788)
いきなり部屋にピアノトリオの鮮明な音像が出現します。まずは録音の素晴らしさに耳を奪われます。引き締まった各楽器の音像。ピアノの音色の美しさも素晴らしいものがあります。カリヒシュタインのピアノは極めて冷静沈着ながら音色の美しさは素晴らしいものがあります。カリヒシュタインがリードする音楽は火花散るようなホットなものではないんですが、非常にシャープなリズム感と透徹したピアノの音色を生かしたもの。チェロのロビンソンは女流ながら素晴らしく図太い音色で低音部を支えます。ラレードのヴァイオリンはすこし軽めのタッチですが、リズム感の良さは確かなもの。3人の音色と音楽性が一体化した素晴らしい音楽。
2楽章のアンダンテも透徹したピアニズムが音楽の基底をつくっていいます。寄り添うように演奏するヴァイオリンとチェロ。抑えた表現が絶妙の緊張感を醸し出しています。ピアノ三重奏曲を聴く真髄にいきなり触れる名演奏。音量を落としても保たれるシャープなテンポ感と豊かな音楽。何と素晴らしいアンダンテでしょう。
フィナーレはピアノもヴァイオリンも素晴らしいキレ。軽妙洒脱なメロディを余裕たっぷりに弾き進めます。速いパッセージの正確な演奏は素晴らしいものがあります。1曲目から完璧な出来。ここのところ聴いたピアノ三重奏曲の中ではピカイチの出来です。

Hob.XV:27 / Piano Trio (Nr.43/op.75-1) [C] (1796)
2曲目は有名な曲。聴き慣れたメロディですが、清涼感がまるで異なる素晴らしい音楽。やはり抜群の安定感と音楽性をもったカリヒシュタインのピアノがポイント。非常に冷静ながら、少しも冷たい感じがせず、音楽の豊かさに心を打たれる感じ。音楽の表情は前曲と変わりなく揺るぎない安定感です。適度に要素が分解されながらも、聴き進めると非常に一体感のある演奏。
2楽章のアンダンテは前曲同様、美しすぎるメロディーをカリヒシュタインのピアノを中心に演奏していきます。強音の抜けのよい録音もポイントでしょう。まさに自宅にピアノトリオがやってきたようなリアリティですね。カリヒシュタインの奏でるピアノの美しさにノックアウトされっぱなしですね。
そしてこちらも聴き慣れたフィナーレを一瞬のそよ風のような爽快感を伴った演奏です。最後の吹き上がる迫力を聴かせるところは素晴らしい迫力で終了。この曲もケチを付けるところすらありません。

Hob.XV:28 / Piano Trio (Nr.44/op.75-2) [E] (1796)
比較的大人しい曲想ですが、演奏者のテンションは変わらず、素晴らしい緊張感を保っています。落ち着いているのにワクワクするような素晴らしい演奏。このアンサンブルのメンバーの音楽性は素晴らしいですね。曲調がシンプルなのであえて素朴さに焦点を合わせてこれまでの曲よりも一音一音をゆったり鳴らしているように聴こえます。テンポもこれまでの曲が中庸だったのに対し、この曲は少し遅めの設定。ピアノがキラ星のごとき美しさ。
2楽章のアレグレットに入ると、ただでさえ美しかったピアノの音色がさらに磨かれて、その美しさは例えようもないほど。ヴァイオリンとチェロが寄り添うように入り、素晴らしい迫力で険しい盛り上がりを演出。
フィナーレはそよ風のような優しい入り。この曲は最後までゆったりした気分を保ちます。非常に素朴なメロディーが繰り返されますが、なぜか非常に慈しみ深い音楽になります。ハイドンの晩年の技のなせるところでしょう。最後はきっちりアクセントが決まって曲を閉じます。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
最後は有名なジプシー・ロンド。1楽章はあえて素朴にゆったりとした展開。普通のテンポで抑えた表現ながらメロディーの粒立ちが素晴らしく鮮明で、曲の美しさにハッとします。この曲ではラレードの繊細なヴァイオリンの美しさが素晴らしい効果をあげています。ピアノは相変わらずの素晴らしい構成感。ただ奏でているだけなのに極上の音楽がそこにあります。まさに至福のひと時。ハイドンのピアノトリオがこれほどきらめきに満ちた音楽であったかと今更ながら気づかされました。後半の転調後のヴァイオリンは鳥肌がたつような繊細さ。
2楽章のポコ・アダージョ。もはや言葉での説明は不要でしょう。ただただ美しいメロディに酔いしれるばかり。
そしてジプシー・ロンド。個性的でも技巧を凝らしてもいないんですが、殺気や狂気を感じるような素晴らしい切れ味。恐ろしい音楽性です。むしろ抑え気味の演奏でありながらこの迸るエネルギー。いやいや素晴らしい演奏です。

ふと出会ったこのアルバム。これまでピアノ三重奏曲はいろいろ聴きましたが、今まで聴いた演奏の中ではダントツの出来です。メンバー全員が素晴らしいテクニックと音楽性をもっており、しかもそのテクニックに裏付けられた自然な演奏。ごく自然な演奏なのに各パートが活き活きとした音楽を奏で、結果的に素晴らしく一体感のある演奏となっています。このアルバムに収められた4曲ともに素晴らしい出来。普通は多少のムラがあるのですが、逆に曲ごとのキャラクターをしっかり把握して少しづつ演奏スタイルを変えています。評価はもちろん全曲[+++++]です。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノ三重奏曲 ハイドン入門者向け ジプシー・ロンド

ブダペスト弦楽四重奏団のひばり他

前記事のヨッフムの天地創造につづいて古めのヒストリカルを。

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ブダペスト弦楽四重奏団によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.64 No.5「ひばり」、ミェチスワフ・ホルショフスキ(Mieczyslaw Horszowski)のピアノが加わったベートーヴェンのピアノ四重奏曲Op.16、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76 No.5、そしてブダペスト弦楽四重奏団のヴァイオリン、チェロとホルショフスキのピアノでハイドンのピアノ三重奏曲「ジプシー・ロンド」の3楽章の4曲を収めたアルバム。全曲ライブのようでひばりは1940年8月3日、Op.76 No.5は1941年3月29日、ジプシー・ロンドが1955年4月7日。ニューヨークのBridge Recordsというレーベル。

ブダベスト弦楽四重奏団はハンガリーのブダペスト歌劇場管弦楽団のメンバーによって1917年に創設された弦楽四重奏団ですが、1938年にアメリカに活動の場を移して最終的なメンバーは全員ロシア人となり、ハンガリーおよびブダペストとは関係が無くなったとのこと。この演奏を行った1940年代のメンバーは次のとおり。

第1ヴァイオリン:ヨーゼフ・ロイスマン(Josef Roismann)
第2ヴァイオリン:アレクサンダー・シュナイダー(Alexander Schneider)
ヴィオラ:ボリス・クロイト(Boris Kroyt)
チェロ:ミッシャ・シュナイダー(Mischa Schneider)

1940年代というのは戦後ではなく戦中という混乱期の演奏。録音を介して聴く弦楽四重奏の響きは経過した時代を感じさせない素晴らしい響きでした。

Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
1940年という録音年代にしては鮮明な録音。おそらくSPかLPからの板起こしでしょう。スクラッチノイズが混じった録音。ノイズの向こうから聴こえてくる音は意外に鮮明。ひばりの1楽章の聴き慣れたメロディーを軽いタッチで奏でますが演奏はコンパクトにまとまった感じのあるはじまり。ヴァイオリンの伸びはそこそこですがアンサンブルのまとまりが良く、軽々とリズミカルな開始。芯のしっかりある音で逆に時代を感じさせない音。ヴァイオリン中心というわけでもなく緊密なアンサンブルによる1楽章。
2楽章はアダージョ・カンタービレ。1楽章同様リズミカルでコンパクトにまとまった演奏。見通しのよい演奏。カンタービレというほど練らず、逆にテンポはあっさりしながらリズムを保ちます。スクラッチノイズのようにチリチリしたノイズが少々気になりますが音の鮮度は1940年という録音年代が信じられないほど。
メヌエットもテンポ感がよく緊密なアンサンブルでまとまりよく進みます。この軽快なテンポ感がこの演奏の特徴でしょう。そのままフィナーレに入り。非常に細かいボウイングで速いパッセージを正確な音程をたもちながら駆け抜けるように演奏。まさに疾風のようなフィナーレ。最後は万来の拍手に迎えられます。

Hob.III:79 / String Quartet Op.76 No.5 [D] (1797)
間にはさまれたベートーヴェンがホルショフスキの穏やかなピアノで絶品。再びはじまるハイドンの聴き慣れたフレーズ。前曲の1年後の1941年の録音。録音自体は悪くありませんが、こちらの方が若干饐えた感じがする音。ブダペスト弦楽四重奏団の演奏は過度なメリハリはなく、速めのテンポで正確に刻まれる音階をインテンポでどんどん進める感じが特徴でしょうか。時代の特徴かもしれませんが叙情的な感じは皆無で、むしろ淡々と進めることで音楽自体に語らせるような演奏。
2楽章は前曲同様淡々とすすめますが、あっさり弾かれることによってかえって叙情性が引き立つような凛々しい演奏といえばいいでしょうか。録音の古さもかえってプラスに働くような渋い展開。ダイナミックレンジの幅は広くないものの演奏自体はくっきりとしたメリハリがついて、各楽器が良くそろって強弱をつけていくことで音楽のまとまりを感じさせているようです。
メヌエットはくっきりとテンポ感良く描くのは前曲同様。考えてみると70年前の演奏ですが、それが信じられない鮮明な音楽。 フィナーレも恐ろしく鮮明なヴァイオリンの響き。早いパセージの安定感は流石と思わせるもの。この時代のハイドン観が現れているのでしょう、くっきりと描かれ緊密な構成感を中心に早いテンポでまとまりよくまとめられたハイドンですね。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
最後はアンコールのようにピアノ三重奏曲の名曲のフィナーレをあしらってます。2曲目におかれたベートーヴェンの素晴らしい演奏(このアルバムの白眉)を聴かせたホルショフスキのピアノがキレてます。穏やかながら深みを感じさせる素晴らしい演奏。もちろん速めのテンポで畳み掛けるような演奏。ブダペスト弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンのロイスマンとチェロのシュナイダーが火花が散るような激しい掛け合いに応じます。これは凄い演奏。ロンドのみならず全曲聴きたかったですね。こちらは1955年とだいぶ時代が下った録音ゆえ、自然さがだいぶアップしています。

以前から手元にあったアルバムですが、しっかり聴いている訳ではありませんでした。あらためてレビューに取りあげて時代を超えた価値を認識した次第。繰り返しますがこれが70年前の演奏とは信じられない鮮明さで眼前に浮かび上がり、時代の息吹をつたえる貴重な録音。評価は弦楽四重奏曲2曲が[++++]、ジプシー・ロンドは3楽章のみですが、[+++++]とします。以前よりだいぶ評価をアップしました。時代を超えて聴かれ続けられている理由がはっきりと感じられる名演奏ということでしょう。はるか70年前の混乱の時代に想いを馳せながらゆったりと素晴らしい演奏を楽しみました。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.64 弦楽四重奏曲Op.76 ライヴ録音 ヒストリカル ひばり ジプシー・ロンド

ロンドン・フォルテピアノ・トリオのピアノ三重奏曲集

最近のお気に入りはピアノ三重奏曲。今日はCDラックの中から最近あまり取り出していないアルバムを取りあげました。

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ロンドン・フォルテピアノ・トリオ(London Fortepiano Trio)の演奏でハイドンのピアノ三重奏曲の有名どころ3曲(Hob.XV:24、XV:25、XV:26)を収めたアルバム。収録は1988年1月30日、31日のセッション録音。ロケーションは記載されていません。レーベルはロンドンのhyperion。

このアルバムを取りあげたのは、最近いろいろと素晴らしい演奏を聴くピアノ三重奏曲ですが、以前わりといい感触をもっていたこのアルバムが、最近の肥えた耳で聴いてみたくなったから。フォルテピアノのリンダ・ニコルソンも以前聴いた録音がなかなか良かったので、この古いアルバムを再び手に取ったという流れです。

ロンドン・フォルテピアノ・トリオについて、このアルバムにも解説はなくネット上にもあまり情報がありません。そこでリンダ・ニコルソンのことを調べてみるとありました。

Linda Nicholson, Harpsichord, Clavichord, Fortepiano(英独文)

このアルバムの演奏当時のロンドン・フォルテピアノ・トリオのメンバーは次の通り。
モニカ・ハゲット(Monica Huggett、ヴァイオリン)
ティモシー・メイソン(Timothy Mason、チェロ)
リンダ・ニコルソン(Linda Nicholson、フォルテピアノ)

これに対し、現在もロンドン・フォルテピアノ・トリオという名前で継続していますが、ニコルソン以外は入れ替わっています。
ヒロ・クロサキ(Hiro Kurosaki、ヴァイオリン)
マーティン・フリッツ(Martin Fritz、チェロ)

ニコルソンとヒロ・クロサキの弾いたモーツァルトのヴァイオリンソナタのアルバムが以前聴いて印象に残ったアルバム。

このアルバムは1988年と今から23年も前の録音ゆえ、ライナーノーツの写真のニコルソンも若々しいですね。若きニコルソンの弾くハイドンの三重奏の出来は、いまどう聴こえるでしょうか。

ピアノ三重奏曲Op.38 [D] Hob.XV:24(1795年作曲)
鮮烈な開始が印象的な曲。古楽器の鋭利な音色が耳に刺さります。今聴くと意外と溜めもありテンポも緩急を結構つけて曲のメリハリを良く表現しています。少し音量を上げて聴くと自宅にトリオが出現するようなリアルな音像。やはりニコルソンが主導権を握ってアンサンブルを引っ張ります。休符の使い方が効果的でフレーズごとのメリハリが見事。ハゲットのヴァイオリンは直裁な音色が魅力。チェロのメイソンは少し控えめながら力強い演奏でアンサンブルを締めています。やはりピアノトリオはいいですね。アンサンブルの妙味を味わえます。
2楽章は古楽器の尖った音色がちょっと険しすぎるのかもしれません。特にヴァイオリンのアクセントは刺さるような鋭利さで迫ります。ニコルソンの豊かな情感を感じさせるフレージングと比べるとヴァイオリンに若干単調さを感じなくはありません。
フィナーレは前楽章のすこし単調な印象を引き継いでしまっているため、乗り切れないで音を重ねて行ってしまっているのが残念なところ。念入り、濃いめの表情なんですが、音楽に踊る感じがあまりせず、曲から音楽を紡ぎ出せていない感じを残してしまいます。

ピアノ三重奏曲Op.39 [G] Hob.XV:25(1795年作曲)
終楽章が有名なジプシー・ロンドの曲。1楽章は最近聴き慣れた演奏の中では念入りな遅めの演奏の一つ。ヴァイオリンの響きは前曲よりも変化をつけて豊かさを増しています。ヴァイオリンの出来は明らかに前曲よりも良い感じ。
2楽章はポコ・アダージョ。穏やかな曲調ですが、古楽器のダイレクト感のある音色で弾き進め、若干刺激をのこしている印象。前に出てくるフレージングでぐいぐい攻める感じもします。
3楽章のジプシー・ロンド。ヴァイオリンが今までと替わり引きずるような独特な弓使い。徐々にスピードが上がりアンサンブルの興奮も高まります。

ピアノ三重奏曲Op.40 [F Sharp] Hob.XV:26(1795年作曲)
最後の曲は1楽章からヴァイオリンのフレージングに変化が見られます。オーソドックスな範囲な演奏から、ヴァイオリンが少し変化で自己主張をしているようですね。基本的に前曲と同様ですが、曲が成熟して聴こえる分少し落ち着いた演奏でもあります。メリハリの幅が広がり、アクセントも決まります。
2楽章はどこかで聴いたフレーズ。そう、交響曲102番のあの穏やかなメロディー。オーケストラの柔らかいフレーズではなくクッキリしたピアノトリオで聴くメロディーもいいものですね。
最後の楽章は決まったリズムを基調とした曲ですが、やはりちょっと単調さを垣間見せてしまいます。

遠い昔の記憶では古楽器のいい演奏との印象でしたが、最近素晴らしい演奏を聴き続けている耳からすると、演奏の単調さが気になる部分があります。とくにヴァイオリンがちょっと弱いのが全体の印象を左右している感じがします。ニコルソンのフォルテピアノは流石にニュアンスも豊かですが、アンサンブルゆえ全体の印象はいろいろな要素が影響してしまいます。評価は全曲[+++]としました。最近いろいろな演奏に出会い、昔の記憶も当てにならなくなってきましたね。音楽とは奥が深いものですね。これはニコルソンの新しいアルバムも聴いてみなくてはなりませんね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノ三重奏曲 古楽器 ジプシー・ロンド

アベッグ・トリオのピアノ三重奏曲集

今日はピアノトリオです。またいいアルバム見つけました!

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アベッグ・トリオ(Abegg trio)の演奏によるハイドンのピアノ三重奏曲、Hob.XV:25、XV:31、XV:27、XV:29の4曲を収めたアルバム。上の写真はオリジナルなTACET CLASSICSのものですが、手元のアルバムはINTERCORDのもの。版権を買い取っての再発盤でしょうか。収録は1991年7月にフランクフルトのfesteburg教会でのセッション録音。

アベッグ・トリオはドイツのピアノ三重奏団。現メンバーの3人がハノーヴァーの音楽演劇大学を卒業して間もなくの1976年3月に設立した団体。楽団名はシューマンのアベッグ変奏曲Op.1をもとに名付けられましたが、シューマンのプログラムが多いことにもとづく訳ではなく、シューマンと彼の運命に敬意を表してのこと。彼らの集中的な取り組みにより1977年には国際的なレベルと評価されるようになり、その後ヨーロッパで様々な賞を得たとのこと。演奏活動はヨーロッパ、アメリカ、ロシア、東南アジアにわたり、ドイツの放送局によって多くの録音がされていて、またスイスをはじめとするヨーロッパやアメリカの放送局を通じて評価が高まり、現在の地位を得ているとのこと。日本での知名度はおそらくあまり高くないでしょうが、演奏を聴く限り、その素晴らしい音楽性は紹介記事に恥じないものです。いつものように楽団のホームページがありましたのでリンクを張っておきましょう。ただしドイツ語がメインで一部のみ英語です。

Abegg trio公式ホームページ(独文・英文)

曲目はハイドンが1795年から1796年と2回目のロンドン旅行に出かけた後のころに作曲したピアノ三重奏曲の傑作ばかりを4曲集めたもの。

Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
いわゆるジプシー・ロンド。アベッグ・トリオの演奏は微風のような演奏。以前取りあげたトリオ・ヴァンダラーが力感溢れる演奏だったのに対し、この演奏はメリハリも力感もほどほどながら、流麗かつ軽いタッチの演奏。それぞれの奏者は活気ある演奏ですが、アンサンブルは柔らかさと音楽の一体感が見事な演奏。火花散るようなアンサンブルではなく落ち着いた大人のアンサンブル。美しい旋律の受け渡しの妙を楽しむ大人の演奏。特徴的なのはヴァイオリンの音色。少々細めの繊細な音色が特徴的な音。メロディーをおいていくような楽譜に忠実な演奏。ピアノは粒立ちのよいこれも大人な感じの演奏。チェロは相対的に活気あるように聴こえます。3人は対等な関係で誰が主導権をとっているという感じはしません。
2楽章はポコ・アダージョ。変わらず3人の音楽的には緊密な、でもゆったりとした演奏が心地いい演奏。この楽章はピアノが美しい音色で主導。ピアノとヴァイオリン、チェロのバランスと重なりが非常に美しいアンサンブル。何気ない演奏ながら、非常に濃い音楽。最上の時間が過ぎていきます。
フィナーレはこれまでの穏やかな美しさを吹き飛ばすようなキレのいい演奏に変化。ピアノのキレにつられてヴァイオリンもチェロもキレキレ。以前聴いたトリオ・ヴァンダラーの演奏のような火を噴く感じまでは行きませんが、非常にテンションの高い演奏でこの曲を結びます。音楽的なまとまりと情感の濃さはただ者ではありません。

Hob.XV:31 / Piano Trio (Nr.41/op.101) [E flat] (1795)
2楽章構成で、1楽章は非常に落ち着いた曲調。アベッグ・トリオの穏やかな演奏はそこはかとない音楽が流れる素晴らしい演奏。特にこれといって特徴的ではないんですが、あえて言えば自然さの表現が深い感じ。おそらくヴァイオリンパートの落ち着きが曲調を支配しているんじゃないかと思います。落ち着いたテンポと間。途切れず流れる音楽。糸を引くようなヴァイオリンの切ない響き。そしてピアノだけが晴朗なメロディーを進める感じ。完璧に息の合ったアンサンブル。
2楽章はやはりピアノが基調をなし、ヴァイオリンとチェロがそのまわりを自在に駆け回る感じ。残響が多めのホールでの演奏ゆえ、音色の変化なども響きが綺麗にのってすばらしい愉悦感。

Hob.XV:27 / Piano Trio (Nr.43/op.75-1) [C] (1796)
本格的にエンジンがかかり、1楽章から素晴らしい立体感と推進力。この曲も穏やかなアンサンブルの中のかちっとした隈取りが美しい演奏。全体には落ち着いたトーンのアンセル・アダムスの風景写真がよく見ると印画紙のラチュード一杯にトーンの変化に溢れているような演奏。けっして派手な演奏ではないんですが非常にクッキリしたフレージングによって聴き応え十分。この曲は名曲ですね。8分とはいいませんが9分の力で完璧な演奏。非常に豊かな音楽を1分の理性でコントロールしているよう。無理したり振り切れたりせず、完全にコントロールの効く範囲での演奏。
2楽章のアンダンテ。この楽章は比較的テンポを動かします。ちょっとつんのめるところもありますが、音楽的な変化の範囲。自在さがこれまでよりも増して曲想を十分に踏まえた表現の幅。
フィナーレはピアノが転がるような音階の印象的な曲。ピアノの連綿とした変化にヴァイオリンとチェロが複雑に絡み合う名曲。ピアノが実に気持ち良さそうに音階を弾き連ねていきます。

Hob.XV:29 / Piano Trio (Nr.45/op.75-3) [E flat] (1796)
最後はXV:29。起伏に富んだ曲。これまでの曲と明らかに構成が異なります。途中からメロディーが劇性を帯びてきます。ヴァイオリンの旋律にピアノが立ち回ります。1楽章はヴァイオリンとピアノが大活躍。最後は大きく盛り上がって終えます。
2楽章は素朴な旋律の美しさで一気に聴かせてしまうような録音。
そしてフィナーレ。相変わらず良くそろった緊密なアンサンブルが見事。ピアノの演奏は既に演奏の基調として完全に主導権をとっているよう。複雑なリズムが楽器間をつないで曲を構成しているよう。終盤ばヴァイオリンがこれまでで一番のっているいるようで、楽しんで弾いているような感じ。まさにアンサンブルの楽しみを地でいくような感じですね。

アベッグ・トリオによるハイドンのピアノ三重奏曲集。抑えた中にも変化があり、大人の室内楽の楽しみに通じる玄人好みの演奏。音楽性の高さから全曲[+++++]としました。ピアノ三重奏曲でもいろいろな表現がありますが、テクニックの誇示のような演奏も多いもの。このトリオの演奏は純粋に音楽の濃さを感じさせるもの。気に入りました。

明日は久々の休み。新潟の温泉に一泊で出かける予定ですのでレビューの更新はありませんのでご容赦ください。天気がいいといいんですが、、、

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノ三重奏曲 おすすめ盤 ジプシー・ロンド

トリオ・ヴァンダラーのピアノ三重奏曲集

今日はHMV ONLINEで注文してついたばかりのアルバムを紹介。

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前から発売されていたものが廉価盤となって再発されたもの。トリオ・ヴァンダラー(Trio Wanderer)の演奏するハイドンのピアノ三重奏曲を収めたアルバム。収録曲は43番(Hob.XV:27)、44番(XV:28)、45番(XV:29)、39番(XV:25)の4曲。ピアノ三重奏曲の名曲集という感じですね。収録は2001年、スイスの名音響として知られるラ・ショー・ド・フォンの音楽ホールでのセッション録音。ラ・ショー・ド・フォンはベルンの西、フランス国境のすぐそばの街。

トリオ・ヴァンダラーはパリ国立音楽院の出身の3人のフランス人音楽家によって作られた三重奏団。名前を直訳すると放浪者三重奏団ですね。このアルバムを取り上げたのは、CDプレイヤーにかけてすぐに素晴らしい緊張感と濃い音楽が流れてきたからに他なりません。名演の予感がします。

ハイドンのピアノ三重奏曲全集のファーストチョイスはやはり、ボザール・トリオなのは疑いのないところ。PHILIPSの素晴らしい録音とゆったりとしながら音楽の感興を伝える名演奏です。このトリオ・ヴァンダラーの演奏は現代楽器の演奏ゆえ、ボザール・トリオの演奏との違いも聴き所ですね。

共通するのは現代楽器による早めのテンポによるキビキビ感溢れる演奏。ラ・ショー・ド・フォンでの録音らしい、素直に減衰する美しい響きと楽器の透明感。2001年の録音ですが、音はほれぼれするような素晴らしい録音。解像感とリアリティと残響のバランスという点でこれ以上の録音は難しいのではないかと思わせる完成度。自宅にトリオが出現したような素晴らしい録音です。

まずはXV:27から。この曲はピアノ三重奏を収めたアルバムでは冒頭を飾ることが多いですね。

冒頭からピアノの素晴らしい輝き、ヴァイオリンとチェロの伸びのある音響に魅せられます。速めのテンポで活力溢れる演奏。ピアノが主導権をもってヴァイオリンとチェロとのフレーズの掛け合いを聴かせますが1楽章から火花散る展開。速めのテンポながら緩めるところはしっかり緩めてメリハリも十分。3人のアンサンブルの息もピタリと合ってピアノの仕掛ける掛け合いに見事にヴァイオリンとチェロが応じています。爆走するピアノにヴァイオリンとチェロが見事についていっています。
2楽章のアンダンテは、ヴァイオリンが主導権を握ろうとして穏やかな表情のなか、絶妙に美しいフレーズを奏でますが、途中からピアノの迫力が増し、完全に主導権を奪われてしまいます。それだけピアノの表情が豊かなことが印象に残ります。この楽章のメロディーの美しさが引き立つのは終盤、奇跡的な美しさを聴かせます。
3楽章はふたたびピアノが火を噴くような鮮烈なリズムを刻みながら入ります。すばらしい快速テンポ。この楽章のピアノのキレは恐ろしいほど。何かが乗り移っているような圧倒的な存在感。ヴァイオリンもそれに応えてトランス状態寸前。響きのカオスのごときすばらし盛り上がりを見せて終了。圧倒的な迫力、まいりました。

つづいてXV:28。前曲の興奮さめやらぬ中始まります。

冒頭から、やはり素晴らしい興奮。ヴァイオリンのピチカートの音色がアクセントになって曲の面白さが引き立ちます。相変わらず美しく抜群にキレたピアノの存在が圧倒的。途中から大波のように盛り上がるフレーズがこの曲のアクセントになっていることがわかります。よく聴くとピアノはキレばかりではなく非常にデリケートなニュアンスも表現していて、その表情の多彩さがこのアルバムの支えになっていることがわかります。
2楽章はアレグレットで弦の伴奏を従えたピアノのソロという感じから入り、冒頭からビアノの圧倒的な存在感。途中から掛け合いになりますが、ピアノ優位の構図は変わらず。
フィナーレは一転して抑えてリズムの面白さを静かに表現する展開。抑えを見事に表現するあたりにこのトリオの実力の高さを感じます。終盤の絶妙な休符と抑制、見事です。

つづいてXV:29。

がらっと曲想が変わって、弦の存在感が増します。今度はピアノが伴奏にまわって弦がメロディーラインを握ります。ここまで来て気づいたんですが、明らかに録音のバランス上チェロが下がった感じなんですね。もう少しチェロのマイクの音量を上げてもいいですね。後半からピアノの右手のきらめくような輝きの美しさが際立ち、響きも洗練度を高めます。
2楽章はこの世のものとは思えない夢見心地のような美しいメロディーから入ります。何でもないメロディーなんですが、ピアノとヴァイオリンの織りなす精妙なメロディーは途中にちょっとした転調などを折りまぜ、ゆったりと天にも昇るような不思議な上昇感。
間をおかずに3楽章に突入。ちょっとアクセントつけるように溜めを効かせてたフレーズを象徴的に混ぜてメリハリをつけます。素晴らしい推進力。ここでもチェロはあくまで控えめ。最後はピアノのクッキリしたアクセントの魅力を楽しみつつ終了。

最後はXV:25です。有名なジプシー・ロンド。この曲も一度聴いたら忘れられない特徴的な曲。

冒頭から高音の特徴的なメロディーが美しい曲調。演奏によっては単調に聴こえる冒頭部ですが、流石の表現で曲の書かれた意図を浮かび上がらせるようなデリケートな表現。この曲に至ってチェロのバランスがようやく正常なものに。チェロのシンプルながら興味深いメロディーラインが浮かび上がります。この曲で印象に残るのはピアノの軽やかさ。相変わらずキレは抜群なんですが、この軽やかさを表現するのは非常に難しいのではないかと思います。
2楽章のポコ・アダージョ、ハイドンらしいゆったりとしたなかにもほの暗い明るさと言うか、光と影の交錯する絶妙のメロディーをテンションを下げたピアノとヴァイオリンが交互に引き継いで演奏していきます。時折暗闇に一筋の光がさすような一瞬の輝きが曲の情感の深さを浮き彫りにします。この楽章のピアノは力感を抑えてメロディーの美しさを表現する秀逸なもの。
3楽章はこのアルバムの総決算のようなキレ。有名なジプシー・ロンドをキレと溜もつかって早めのテンポで圧倒的な推進力の演奏。最後は余裕を感じさせるフィニッシュ。この曲も手に汗握るスリリングな演奏でした。

着いたばかりのアルバムでしたが、その演奏は抜群の出来。現代楽器によるハイドンのピアノ三重奏曲の演奏では最近一押しと言っていい出来です。若干チェロが大人しいといえますが、ピアノとヴァイオリンの掛け合いと全演奏を貫くスリリングな緊張感は抜群。そして録音もラ・ショー・ド・フォンの素晴らしい響きが堪能できます。これらの演奏の評価は全曲[+++++]。ピアノ三重奏曲を初めて聴く人にもおすすめの素晴らしい演奏です。「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。

こうゆう出会い頭に衝撃を受けるような演奏があるので、コレクションはやめられませんね。今日も一杯飲みながら素晴らしい音楽を楽しめました。最近平日は仕事が忙しくゆっくり音楽を楽しむ余裕がないだけに、のんびり音楽を楽しむだけでも幸せです。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノ三重奏曲 ハイドン入門者向け ジプシー・ロンド

新倉瞳さん他のピアノ・トリオ

今日は帰宅が10時過ぎ。やはり仕事が忙しいです(涙) 忙しくてもレビューはしなければなりません。

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人気ブロガーとしても有名な新倉瞳さん他のメンバーによるハイドンのピアノ・トリオ39番(Hob.XV:25)とメンデルスゾーンのピアノ・トリオ1番の2曲を集めたアルバム。
ヴァイオリンが凬谷直人、チェロが新倉瞳、ピアノが沼沢淑音の3人のトリオ。皆さん1985年から87年までの生まれなので20代と若い組み合わせ。

新倉瞳さんのブログのリンクを張っておきましょう。

新倉瞳オフィシャルブログ「瞳の小部屋」

録音は2010年(今年!)2月20日、21日、東京エレクトロン韮崎文化ホールでのセッション録音。レーベルはFlorestanというプロダクションも兼ねているような事務所でしょう。

曲目はハイドンとメンデルスゾーンのピアノ・トリオですが、当ブログで取り上げるのは当然ハイドンの方のみ。
この曲は作曲が1795年頃ということで、ハイドン63歳、交響曲でいえば102番から104番ロンドンまでを作曲していた時期。2年後には天地創造の作曲に着手するというハイドン円熟の時期の作品。この曲の3楽章は通称「ジプシー・ロンド」と呼ばれ、ジプシー風のメロディーで知られる曲。

演奏は全体に日本人ならではの繊細かつ透明感あふれた佳演。
1楽章は思ったより遅めのテンポではじまり、ヴァイオリンとピアノの一体感あるデュオにチェロが合わせている感じ。ヴァイオリンもチェロも灰汁の強いところは一切見せず、ある意味淡々と進めていきます。最新の録音だけあって音の実体感と響きの美しさが際立ついい録音。生で聴いたら室内楽の悦びを感じられそうですが、録音ということになると、もう一つ踏み込みがあってもいいかもしれません。アンサンブルの精度はきっちりしており、悪くありません。ヴァイオリンは非常に几帳面な感じですが、もう少し色っぽさがあったら華がでてよかったんでしょう。

2楽章はピアノの堂々としたメロディーが基調となり、ヴァイオリンとチェロがそのまわりを駆け巡るような曲調。2楽章の方が作為がなくても聴けてしまう自然な曲調。徐々に調子が上がり、メロディーに張りと厚みが漲ってきます。その勢いを保ったまま3楽章、「ジプシー・ロンド」へ。

3楽章はリズムが弾み、ピアノのダイナミックレンジも広がってきます。相変わらずテンポは大きく変化させませんがジプシー風のメロディーの部分はあえて小節を利かせて重めな展開。最後まで繊細感、透明感あふれる基本的なアンサンブルの精度のいい演奏でした。

視点を変えると、ちょっと個性が弱いといった面もあるかと思いますが、ハイドンのピアノ・トリオの重要曲を最新の良い録音でとらえた演奏を選ぼうとすると、いい演奏として選択肢に上がる演奏かもしれません。

評価は[++++]としました。ただし、このアルバム、曲名の作品番号がHob.25と誤った番号だったり、最後の英語表記のホール名の綴りが間違っていたり、ちょっと造りが粗いのが残念なところ。せっかくのいい演奏なので、この辺はレーベルがもう少し気をつけた方がいいと思います。

ピアノ・トリオはまだ当ブログで取り上げていませんので、今月は何組か取り上げようと思っています。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノ三重奏曲 ジプシー・ロンド 美人奏者

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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