シェレンベルガー/パユのスケルツァンド集(ハイドン)

今日はアイドル路線なんですが、曲は珍しいもの。

Pahud.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ハンスイェルク・シェレンベルガー(Hansjörg Schellenberger)指揮のハイドン=アンサンブル・ベルリン(Haydn-Ensemble Berlin)の演奏で、ミヒャエル・ハイドンのフルート協奏曲、ハイドンのスケルツァンド(Hob.II:33、34、35、36、37、38)、かつてハイドン作とされたレオポルド・ホフマン作曲のフルート協奏曲の3曲を収めたアルバム。フルート独奏はエマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)。収録は1997年6月、ベルリンの東南部オーバーシェーネヴァイデ(Oberschöneweide)のキリスト教会でのセッション録音。レーベルはEMI CLASSICS。

このアルバムをなぜ取りあげたかというと、まずはスケルツァンドの最新のアルバム、デニス・マッカルディンの2枚組のアルバムを聴いて、このスケルツァンドという曲自体の面白さに気づき、手元にあるアルバムをいろいろ聴いて確認したところ、意外にこのアルバムが良い演奏だと気づいたことから。アルバム自体はベルリンフィルのイケメンフルーティスト、エマニュエル・パユの顔写真をあしらった、いかにもアイドル売り路線のアルバム故、これまで踏み込んで聴いていなかったのが正直なところ。

エマニュエル・パユは1970年、スイスのジュネーヴ生まれのフルート奏者。バーゼルで名フルーティスト、ペーター=ルーカス・グラーフにフルートを師事、その後パリ音楽院で学び、1990年首席卒業。1989年から92年までバーゼル放送交響楽団の首席フルート奏者、そして1992年以降はご存知、ベルリンフィルに入団、93年からは首席奏者を務めています。仕事量の多さから2000年に一度退団したそうですが、2002年に復帰とのこと。

このアルバムで指揮を担当しているハンスイェルク・シェレンベルガーも1980年以来、ベルリンフィルの首席オーボエ奏者。2001年に退団し、現在は教育者として活躍しているとのこと。

オケのハイドン=アンサンブル・ベルリンはシェレンベルガーの発案でベルリンリンフィルの15人の奏者によって1991年に設立された室内オケということです。

このスケルツァンドは1765年に発刊された、ブライトコップ目録に記載され、1750年代に作曲された小交響曲集の一部と考えられているそう。オーボエ2、ホルン2にヴィオラをのぞく弦楽三声部と言う編成で4楽章構成の曲6曲のセット。すべての曲で2楽章がメヌエット、そのトリオのソロがオーボエに代わってフルートが用いられており、パユの腕の見せ所となっています。

いつも通りヨゼフ・ハイドンの曲のみ取りあげます。

Hob.II:33 / Scherzando No.1 [F] (c.1760)
流石ベルリンフィルの腕利き奏者の集まり。弦、ホルン、オーボエが寸分違わぬ精度でキビキビとした音楽を奏でていきます。愉悦感溢れる演奏。メヌエットに入ると、パユのフルートは一際華やか。数フレーズのみなのに、花が咲いたような明るさを感じさせるのは流石。続くアダージョの濃い音楽に、フィナーレは再び恐ろしい精度でリズムも快活。ここまできっちりあわせられると快感すら覚えます。

Hob.II:34 / Scherzando No.2 [C] (c.1760)
モーツァルトの初期交響曲に近い軽さと推進力のある曲。ハイドンの交響曲よりもずっとモーツァルトに近い感じ。途中でほの暗さも感じさせるのところもモーツァルト風。メヌエットはハイドン風とハッキリわかるもの。トリオは陰のある不思議な響きですが、ここでもパユが入ると空気が変わります。ゆったりした音楽なのに一人だけ浮かびあがります。パユの人気の秘密がわかったよう。アダージョは演奏の一貫性を保ったまま、実に自然にギアチェンジして、しっかり沈みます。この小曲なのに楽章感の対比は見事。フィナーレは30秒の小曲ですが、箱庭のような楽しさがある曲です。

Hob.II:35 / Scherzando No.3 [D] (c.1760)
だんだん、ハイドンの手中にハマってきました。ここまでホルンが、見事に裏方に廻って響きをまろやかにする役に徹している。3曲目に入って、前2曲とはまったく異なるメロディーの構成に驚きいるばかり。特にフルートが登場するメヌエットの面白さが際立ちます。まさに曲ごとの変化の楽しさに釘付け。各曲のアダージョの豊かな曲想にも引き込まれます。最後に鮮度抜群のオケの響きで曲が締まります。

Hob.II:36 / Scherzando No.4 [G] (c.1760)
後半3曲は簡単に。今度は色彩感の際立つ曲。メヌエットのフルートも蝶が飛ぶような間と華やぎがあるもの。アダージョはピチカートが印象的。

Hob.II:37 / Scherzando No.5 [E] (c.1760)
再びモーツァルト風の流麗な曲。この曲が1950年代の作曲だとするとモーツァルトはまだ生まれたばかりの頃。ハイドンのこの曲などをモーツァルトが聴いていたのでしょうか。快活な1、2楽章に対して、深く沈むアダージョの対比は、後年の成熟を予感させるもの。良く聴くとこの曲、名曲ですね。演奏も変わらず完璧。

Hob.II:38 / Scherzando No.6 [A] (c.1760)
最後の曲もモーツァルトの曲といっても誰も気づかないでしょう。明るい曲調と華やかな音階に彩られた推進力溢れる曲。パユのフルートの軽やかな響きも素晴しいのですが、この曲の聴き所は、儚い響きのアダージョ。明るい響きなのに儚さを感じる実に繊細な曲。まさにハイドンの真骨頂。このころからこれだけ素晴しいメロディが聴かれることにいまさらながら驚きます。

このスケルツァンド、パユの華やかなフルートソロも素晴しかったんですが、シェレンベルガー率いるハイドン=アンサンブル・ベルリンの演奏が出色の演奏。これ以上精度の高いアンサンブルはあり得ないほどの見事なアンサンブル。ベルリンフィルの安定感ある音色で奏でられる、ハイドンの千変万化する小交響曲集。これほど楽しい曲だとあらためて気づきました。評価は全曲[+++++]としました。

冒頭のミヒャエル・ハイドンのフルート協奏曲はパユの超絶テクニックが楽しめます。たんなるアイドル路線のアルバムではなく、音楽を楽しめる良いアルバムでした。おすすめです。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : スケルツァンド ベルリンフィル

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

時計ロンドン太鼓連打交響曲102番交響曲99番軍隊交響曲95番交響曲93番交響曲98番交響曲97番驚愕奇跡ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:37フルート三重奏曲古楽器LPオーボエ協奏曲ロッシーニドニぜッティライヒャピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:48ディヴェルティメント弦楽三重奏曲皇帝ひばりピアノ協奏曲XVIII:3ピアノソナタXVI:20ストラヴィンスキーシェーンベルクミューザ川崎東京芸術劇場マーラーチェロ協奏曲東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.20弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:46ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:318人のへぼ仕立屋に違いないタリスモンテヴェルディパレストリーナアレグリ東京オペラシティバード天地創造すみだトリフォニーホールライヴ録音ピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6アンダンテと変奏曲XVII:6ヒストリカル交響曲1番告別美人奏者ピアノソナタXVI:39四季交響曲70番交響曲12番迂闊者アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4バリトン三重奏曲SACDスコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルトベートーヴェンモーツァルトピアノソナタXVI:38哲学者交響曲67番交響曲80番ラメンタチオーネピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲51番交響曲46番ヴァイオリン協奏曲協奏交響曲DVDピアノソナタXVI:52交響曲47番十字架上のキリストの最後の七つの言葉テレジアミサピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ピアノソナタXVI:40サントリーホール帝国ラ・ロクスラーヌハイドンのセレナード弦楽四重奏曲Op.76ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノ三重奏曲日の出弦楽四重奏曲Op.64ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1リヒャルト・シュトラウス騎士弦楽四重奏曲Op.74交響曲17番ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:27シベリウス武満徹時の移ろい交響曲42番交響曲4番無人島ベルリンフィルホルン信号交響曲19番弦楽四重奏曲Op.55弦楽四重奏曲Op.54王妃交響曲86番交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:10リュートピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6ピアノ五重奏曲チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナ英語カンツォネッタ集アレルヤピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲81番交響曲79番交響曲78番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードドイツ国歌カノンモテットオフェトリウムスタバト・マーテルピアノソナタXVI:42弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールクラヴィコードパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ブーレーズベルク交響曲全集主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノショスタコーヴィチ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲50番交響曲89番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲18番交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生ピアノ小品音楽時計曲ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストピアノソナタXVI:14オーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:12変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノピアノソナタXVI:2ヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実マリア・テレジアバリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番小オルガンミサ大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番交響曲10番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲107番交響曲62番交響曲108番変わらぬまことジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲9番交響曲2番交響曲3番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番ニコライミサ交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽Blu-ray狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
149位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
10位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ