アニク・マシスの宗教曲アリア集(ハイドン)

久々の歌モノです。

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アニク・マシス(Annick Massis)のソプラノ、ダニエル・インバル(Daniel Inbal)指揮のコロンヌ合唱団&管弦楽団(Chœurs & Orchestre Colonne)の演奏で、モーツァルトの宗教曲の中のアリア5曲、ハイドンの宗教曲からのアリア6曲を収めたアルバム。収録は2003年10月21日、パリ、リュクサンブール公園近くのノートル・ダム・デュ・リバン教会(Eglise Notre-Dame du Liban)でのライブ収録。レーベルはスイスのCASCAVELLE。

ソプラノのアニク・マシスはHMV ONLINEの解説によれば、フランスではナタリー・デセイと人気を二分する存在とのこと。生まれは1960年(私より年上!)、最初は学校の教師とした働いていたそうですが、パリのフランシス・プーランク音楽院で学び歌手の道に入ったとのこと。デビューは1990年代にトゥールーズ歌劇場でモーツァルトのオペラやビゼーの真珠採りなどを歌ったということです。以来ヨーロッパ、アメリカの歌劇場などで活躍しています。彼女のサイトも紹介しておきましょう。

Annick Massis, Soprano: The Official Website

今日取り上げるアルバムのジャケット写真ではちょっと婦長さん的イメージで写っていますが、オフィシャルサイトでのイメージは妖艶なソプラノです(笑)

指揮者のダニエル・インバルは名前からお察しのとおり、エリアフ・インバルの息子とのこと。パーヴォやカルロス並みに親を超える存在なのでしょうか、興味深々。

このアルバムの収録曲目のうちモーツァルトの5曲は下記のとおり。

証聖者の盛儀晩課(K.339)
エクスルターテ・ユビラーテ(K.165)
戴冠式ミサ(K.317)
ミサ曲第16番(K.427(417a))
聖体の秘蹟のための連祷(K.243)

ハイドンの曲はレビューをしながら紹介しましょう。

Hob.XXI:1 / "Il ritorno di Tobia" 「トビアの帰還」 (1775)
「トビアの帰還」の第2部からラッファエッレのアリア「天の使いが皆さんに語っているものとして」(No.10b Aria:"Come se a voi parlasse um messagier del cielo" )。実にゆったりとしたオケの伴奏から入ります。オケはエリアフ・インバルの息子ダニエル・インバルのコントロールと知って聴くと、素直に空気感を生かしたストレスのない演奏に合点がいきます。アニク・マシスのソプラノは空中に浮かぶようにちょっと非現実的に定位する不思議な録音。肝心の歌唱は朗々とした高音の伸びが聴きどころのベルカント風の歌唱。録音のせいか低音部が細く、表情の変化は少なく、表現の幅があとすこし広がればと思わせなくはありません。終盤、オーケストラのユーモラスな旋律に乗ってソプラノの絶唱に至る部分が登場しますが、高音の伸びと声量でかなりのインパクトを与えます。

Hob.XXI:3 / "Die Jahreszeiten" 「四季」 (1799-1801)
つづいて「四季」から2曲。夏からハンネのレチタティーヴォ「さあ、暗い森にきました」に続いてアリア「なんという爽やかな感じでしょう」、冬からハンネのカヴァテーナ「光と命は衰え」。やはりオケの空気感は心地良いですね。教会での録音ゆえたっぷりした残響を伴い、実に癒しに満ちた伴奏。曲が成熟したからか、伴奏と歌も落ち着いてじっくり音楽を描いていく感じ。マシスはここぞというところまでは表情を抑えて、前曲よりも抑制が効いている感じ。ソプラノの定位は前曲ほどの違和感がなく実態感が増した感じ。オーボエのトロけるような美音が伴奏を彩り、歌以上にオケに癒されます。レチタティーヴォからアリアに入るとマシスの歌が雄弁に変わり、音量を上げて聴くとマシスの存在感が一層際立ちます。最後の超絶高音がど迫力。
冬のカヴァティーナではふたたび空中に漂うソプラノに戻ります。

Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
天地創造からは、まずは有名な第1部のガブリエルのレチタティーヴォとアリア。このアリアはカラヤン盤などで歌うヤノヴィッツの心に刺さる歌が記憶に残るところですが、このアニク・マシスも悪くありません。これまでの曲で聴かれた少々腰高な印象は消え去り、このガブリエルのアリアではゆったりと響きわたるオケに乗ってかなりリラックスした歌を聴かせます。やはり終盤のきかせどころで高音の音階を惜しげもなく披露。
もう1曲は第2部冒頭のガブリエルのレチタティーヴォとアリア。こちらもオケの心地よい響きを十分楽しんだ上でのアリア。若干浮き足立つようなインテンポでマシスが入りますがオケは慌てずゆったりとした演奏を維持。第2部ということで少しリラックスする時間があったのか、いい具合に癒しエネルギーが発散されています。

Hob.XXbis / "Stabat Mater" 「スタバト・マーテル」 [g] (1767)
最後のスタバト・マーテルからの曲はライナーノーツでは第3曲という記載になってますが、他のアルバムと聴き比べると第4曲の誤りですね。このアルバムに収録されたハイドンの曲としては一番作曲年代が早い曲が最後に置かれました。スタバト・マーテルといえばハイドンが病から回復した時に感謝の意を込めて作曲した曲。このアルバムでもそのような感謝の心が眼に浮かぶような祈りに近い清澄な音楽が流れます。マシスのソプラノ以上にダニエル・インバル率いるオケの自然なソノリティに惹きつけられる演奏でした。

久々に取り上げた歌モノ。ソプラノのアニク・マシスは触れ込み通り本格的なソプラノで、高音の伸びと音量で聴かせるベル・カント・ソプラノ。古典期のハイドンの宗教曲に合うのかとの危惧もありましたが、アルバムを聴くと朗々とした高音の魅力は聴かせどころとして申し分ありません。こうしてベル・カントで歌われているのを聴くと、ハイドンの宗教曲も後の世代の音楽とは根本的に異なるものの、声の魅力を生かして書かれていることがよくわかります。アニク・マシスの歌いぶりもさることながら、このアルバムの魅力の半分はダニエル・インバル率いるオケの非常に自然な演奏にあります。決定盤とはいわないものの、ハイドンの宗教曲のアリアをまとめたアルバムとしては、かなりいい線いっていると思います。評価は全曲[++++]としたいと思います。

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アンタル・ドラティ/ロイヤル・フィルの「トビアの帰還」2

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昨日のアンタル・ドラティ/ロイヤル・フィルの「トビアの帰還」第1部のレビューで終わってましたので、残りを。昨日歌手の紹介をきちんとしてませんでしたので、途中に写真を貼っておきましょう。

第2部

トラック4:レシタティーヴォ「ああ、敬虔な信仰心の驚くべき結果!」(アンナ/サーラ/ラファエッレ)
第2部も冒頭から艶やかのオケの響きが絶妙の美しさ。女声3声の微妙な声の違いを楽しむ風情。

トラック5:アリア「天の使いが皆さんに語っているものとして」(ラファエッレ)
アリアの伴奏に共通する、晴れ渡った空のようなオケが奏でるメロディー。バーバラ・ヘンドリクスの天上に突き抜ける高音の魅力をたっぷり堪能。それにても高音域に音が上がる時の伸びは素晴らしいですね。夜の女王張りのアリアに痺れます。ヘンドリクス絶唱です。

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バーバラ・ヘンドリクス(Barbara Hendricks)

トラック6:レシタティーヴォ「アザリーアの顔にはこんなに明るいまなざしが輝き」(アンナ/サーラ)
ふたたびリンダ・ゾーバイとデッラ・ジョーンズの掛け合い。

トラック7:アリア「私には思えません」(サーラ)
またまた至福のアリア。ハイドンの暖かく、優しく、非常にデリケートの旋律にノックアウトですね。ピチカートや木管の加わり方が絶妙で、幸福感が満ちあふれてきます。ドラティ、怖い顔でここまでデリケートに歌手を支えるのは流石です。ハイドンのすべてを知る男ゆえの怪演でしょう。リンダ・ゾーバイは抑えた音の美しさと中音域の独特の響きが魅力ですね。

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リンダ・ゾーバイ(Linda Zoghby)

CD-3
トラック1:レシタティーヴォ「何と優しい言葉!」(アンナ/トビア)
短いレシタティーヴォ。

トラック2:アリア「船乗りが幸せにも、遠くから」(トビア)
またまた、ドラティのコントロールするオケの極上の響きからフィリップ・ラングリッジの良く通るテノールがキングスウェイ・ホールに響き渡ります。後半は難易度の高い旋律を安定したテクニックでこなし、音楽的な完成度を上げています。

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フィリップ・ラングリッジ(Philip Langridge)

トラック3:レシタティーヴォ「もっともな望みを早く実行しなさい」(アンナ)
短調の曲調のレシタティーヴォ。

トラック4:アリア「夢の中で、一群が私の前に現れた時」(アンナ)
嵐の到来を告げるような不安な曲調ではじまり、デッラ・ジョーンズは髪を振り乱さんばかりの激しい歌唱。この曲では珍しい激しいアリア。後半は明るい曲調に転じて曲を閉じます。

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デッラ・ジョーンズ(Della Jones)

トラック5:合唱「一瞬にして消え失せるもの」
続いてコーラスの大波。前曲につづいて素晴らしい緊張感が続きます。ソロは休憩という楽章でしょうか。途中から音量を抑えてデリケートな情感を讃えた美しいメロディーの中間部に。何と美しいメロディー。時間が止まりそうな恍惚感。再度コーラスの大波をへて、最後はまた美しいメロディーに移って終了。

トラック6:レシタティーヴォ「ああ、急いでどこへ、父上?」(トビア/トービト/ラファエッレ)
男声2声と女声1声による掛け合い。レシタティーヴォはどこか後年の天地創造を思い起こさせる展開が多いですね。

トラック7:アリア「そう求めても駄目だ、友よ」(トービト)
バスのラクソンのアリア。これまた至福のアリア。ラクソンの艶やかなバスが、賢者が諭すような歌を朗々と歌います。10分を超える大曲。

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ベンジャミン・ラクソン(Benjamin Luxon)

トラック8:レシタティーヴォ「何と、思ってもみなかった雷撃」(トビア/アンナ)
トビアとアンナの掛け合い。

トラック9:ニ重唱「さても、ああ、神よ、私は」(トビア/アンナ)
静かな伴奏に乗って、ラングリッジの神々しいソロが入ります。非常にゆったりしたテンポのオケの伴奏。ソロの美しさを一際浮き彫りにするドラティ渾身のコントロール。つづいてアンナ役のデッラ・ジョーンズのふくよかな声。二人の歌声がからまり素晴らしいデュエットに。

トラック10:レシタティーヴォ「ここでは死ぬお話が出ていますが」(サーラ/アンナ/トビア/トービト/ラファエッレ)
終盤にさしかかってオケの迫力が尋常ならざるレベルに。全ソロが絡む激しいレシタティーヴォ。オケがキレまくって大爆発ですね。ヘンドリクスのソプラノもふたたび突き抜けます!

トラック11:合唱「とても目を上げることができない」(ヘブライ人たち/トービト/アンナ/サーラ/トビア)
終曲。全曲を結ぶ曲はさりげない序奏から入り、まずコーラスが大爆発。コーラスがキングスウェイ・ホールの壁を打ち破らんばかりの大迫力。途中からフーガのような波の繰り返しとなり、壮麗なコーラスの響きに包まれて終了。

いやいや、「トビアの帰還」素晴らしいです! 晦日と大晦日をかけてじっくり聴きましたが、あまりに美しいアリアの数々にうっとりする、素晴らしい演奏です。これはハイドン没後200年記念としてリリースされるべき素晴らしいアルバムであることは間違いありませんね。昨日フライング気味に評価を先に書いてしまいましたが、後半を含めて[+++++]であることに変わりはありません。

この演奏、オラトリオという言葉のもつ襟を正した雰囲気がもしかしたら購買層を限定しているかもしれません。ドラティの演奏から素直に感じるこの演奏のキャッチは、「ハイドンが最も創意を持って作曲していた時代のイタリアオペラのアリア集のようなオラトリオ」というところではないでしょうか。中野博詞さんの「ハイドン復活」には「晩年の2大オラトリオとはまったく異なる、華やかなコロラトゥーラが織り込まれたアリアを中心とする、ナポリ派オラトリオのスタイル」との記述があり、まさにそのとおりの曲。もっと多くの人に聴いていただきたい名曲、そしてドラティの素晴らしい指揮を堪能できる名演奏ということが出来るでしょう。



昨夜はドラティのトビアの帰還を楽しみながら、どうしても一杯飲みたくて、いつものプレミアム・モルツを。風邪で美味しくなければ、それでやめたんですが、染み渡るような爽快感(笑)

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お店もお正月仕様になっていますので、和食に。ハタハタ寿司やらハムやらをつまみに一杯。いつもながら至福のひと時。食欲はあるんですね(笑)

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嫁さんが巨大なホタテを買ってきましたのでグリルして。このあと残りの浦霞禅にいっちゃいました。

今日は、いつもの年ならば都内の私の実家に行って大晦日を迎えるんですが、まだ熱もあり、のどがだいぶガホガホしますので、自重して、自宅で過ごすことに。正月から親に風邪を移すのもへまなので。



今日は昼過ぎからBS-hiで「秩父山中 花のあとさき ムツばあさんの秋」を再放送してましたね。秩父山中で暮らしてきた老夫婦にNHKが長期にわたって取材した歳時記のような番組なんですが、忘れかけてしまった日本人のつましい暮らしと心のありかたを思い出させてくれる番組。もう3回くらい見てますが、みるたびに心を洗われるような純粋な気持ちになります。主人公のムツさんが昨年亡くなったと聞いて感慨深いものがあります。番組作りをしたスタッフの方の素晴らしい視点に何時も感動させられます。夕方また続編を放送するようですので楽しみにしてます。
以前秩父の温泉巡りをしたときにムツさんの紅葉を見に行こうとしたんですが、迷って近づけませんでした。こんどまたトライしてみたいと思います。

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アンタル・ドラティ/ロイヤル・フィルの「トビアの帰還」

今日はお休みの日でもなければ取り上げられない3枚組の大作を。年末にふさわしい祝祭感も満点です。

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ハイドンの最初のオラトリオ「トビアの帰還」です。アンタル・ドラティ(Antal Dorati)指揮のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団。合唱はブライトン・フェスティバル合唱団。ソロはソプラノがバーバラ・ヘンドリクス、リンダ・ゾーバイ、デッラ・ジョーンズの3名、テノールはフィリップ・ラングリッジ、バスはベンジャミン・ラクソンの5名。演奏は1979年12月、ロンドンのキングスウェイ・ホールでのセッション録音。

手元のアルバムは最近手に入れた珍しく国内盤。帯にはハイドン没後200年記念と記されていることから2009年に発売されたものでしょう。帯に同時に発売された本盤を含む10組のアルバムの紹介がありますが、ユニバーサルクラシクスがDECCAのマークを冠してリリースする定番アルバムでしょう。ショルティのザロモン・セット、コープマンなどによる協奏曲集、タカーチ四重奏団の弦楽四重奏曲、ボザールトリオのピアノトリオ全集、ドラティの天地創造、四季、アメリングとデムスによる歌曲など、名盤ぞろいのシリーズ。そのシリーズに「トビアの帰還」を入れるということは、よほどの出来との想像も働きます。私も手元には好きなシュペリング盤がありますが、全曲通してしっかり聴いたことはないんですね。3枚組は迫力です。天地創造のようによく知った曲でもやはり家で聴くのは2枚組でも長いですね。

せっかくなので、曲の成り立ちを調べて紹介しておきましょう。いつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」やら中野博詞さんの「ハイドン復活」を紐解きます。作曲は天地創造のおよそ20年も前の1774年から75年にかけて。大量のバリトン・トリオやシュトルム・ウント・ドラング期の交響曲の作曲が一段落した頃。

トビア書にもとづくイタリア語オラトリオで、ウィーン音楽家教会のために作曲されたもの。エステルハージ家のためのものではないんですね。この協会は、作曲の4年前の1771年に設立され、毎年四句節と待降節にイタリア語オラトリオを演奏し、収益金を音楽家の寡婦と孤児の救恤(きゅうじゅつ)にあてていたとのことで、今でいうチャリティー目的で作曲したものなのでしょうか。歌詞は作曲家ボッケリーニの兄ジョヴァンニ・ガストーネ・ボッケリーニの作。17775年に初演されて以降、1784年に再演される際にアリアを短縮したり、レシタティーヴォに手を加えるなどの改作がなされたとのこと。

全体の構成は序曲と2部構成。初めてちゃんと調べて聴くので、今日は丁寧に紹介しておきましょう。

トラック1:シンフォニア
序曲は短調の悲痛な響きで始まり、ドラティらしい引き締まった響きの推進力抜群の主題に移ります。素晴らしいオケの充実感。この序曲の音楽の充実ぶりは図抜けてます。達筆の楷書のようなドラティのコントロールによる最良のサウンドが再現されていますね。生気漲りまくりです。

第1部
第1曲から第9曲までが第一部。イタリア語ということもありオラトリオというよりオペラのような展開。

トラック2:合唱「お慈悲を、お慈悲を、不幸な女に」(アンナ/トービト/ヘブライ人たち)
冒頭からアンナとトービトの艶やかな声とコーラスの美しいハーモニー。オケの美しい響きにライトン・フェスティバル合唱団の分厚いコーラスが加わり素晴らしい迫力。録音は年代並みですが実体感溢れるデッカサウンド。キングスウェイ・ホールの美しい音響も寄与しているのでしょう。

トラック3:レシタティーヴォ「あの子は現れません、神様!」(アンナ/トービト)
さざ波のように漂うオケの伴奏に乗ってアンナとトービトの掛け合い。台詞の部分の美しさもピカイチ。

トラック4:アンナのアリア「戦士は汗をかいたが、栄光を手にしました」(アンナ)
突き抜ける青空のような清透なオケの伴奏に乗って、デッラ・ジョーンズの名唱。アルトに近い低い音の響きが美しい歌声。それしてもオケの力漲る響きの美しいこと。冒頭部分の聴かせどころのひとつでしょう。ドラティの解釈の凄いところはこのフレージング以外はあり得ないとしか思えない完成度の高いコントロール。一部の隙もない完璧な演奏。

トラック5:レシタティーヴォ「どうか悲しみを和らげてくれ」(トービト) アリア「ああ、神よ、私の言葉に耳をお貸しいただきたい」(トービト)
バスのレシタティーヴォからアリア。ラクソンは高音に輝きがある柔らかい声。アリアに入るとぐっと落ち着いた表現による濃い音楽が流れます。

トラック6:レシタティーヴォ「あれは傭人のアザリーアでは」(アンナ/ラファエッレ)
ようやくラファエッレのバーバラ・ヘンドリクス登場。デッラ・ジョーンズのふくよかな声に対し、キリッとした軽い声が心地いいですね。レシタティーヴォにも関わらずオケの響きは相変わらず極上。実体感も残響もハーモニーも完璧ですね。

トラック7:アリア「アンナ様、お聴きください」(ラファエッレ)
これまた突抜ける青空を思わせる清透なオケの序奏に乗って、ラファエッレの天地をつんざくような高音から入るアリア。ヘンドリクス絶唱です! オペラの名場面のようなソプラの高音が転がる素晴らしい曲。

トラック8:レシタティーヴォ「何といいました? 私の息子が」(アンナ)
ふたたびデッラ・ジョーンズのふくよかな声にバトンタッチ。

トラック9:アリア「ああ、偉大な神様、感謝を知らぬ心を」(アンナ)
アンナの情感溢れるアリア。ここまで聴く限りアリアの洪水のような曲。純粋に歌を楽しむという意味では素晴らしい曲だと思います。美声の響宴とそれを支えるハイテンションのオケ。

トラック10「ああ、偉大なる神よ、御身ただお一人が御身のような方」(合唱)
壮大な合唱曲。祝祭感も極まります。この曲が寡婦と孤児のために書かれたことを知るにつけ、この曲の音楽的完成度の素晴らしさが胸を打ちますね。

トラック11:レシタティーヴォ「サーラ、私の愛する妻よ」(トビア/サーラ)
ようやくテノールのトビア登場。

トラック12:アリア「私に暗示に満ちた教えを」(トビア)
14分以上もかかる長大なアリア。非常にデリケートにコントロールされたオケの伴奏に乗って、テノールのラングリッジの優しい声による幸福感に満ちたメロディー。時間のせいか眠気をさそいます。

CD-2
トラック1:レシタティーヴォ「御身に心からの感謝を捧げます」(サーラ)アリア「愛する夫の家に・・・・私はおります」(サーラ)
最後に登場したリンダ・ゾーバイのサーラ。中音域の芯のしっかりした、ちょっと癖のある声ですが、転がるような音階の表現は見事。アリアの伴奏の弦楽器、特にヴァイオリンのキレは最高。これ以上美しいオケはないほどの完成度。何と美しい曲なんでしょう。CDを変えたとたん素晴らしい幸福感に襲われる素晴らしい曲。天地創造や四季、そして十字架上のキリストの最後の七つの言葉などにみられるオラトリオの襟を正すべき神々しさとは異なり、何処までも美しいアリアの洪水を楽しむべき曲という位置づけですね。

トラック2:レシタティーヴォ「神にあられてはあなたさまに夢で真実を明かそうと望まれました」(ラファエッレ/トービト/サーラ/アンナ/トビア)
1部も終わりに近づき全員によるレシタティーヴォ。

トラック3:合唱「我らの声を聴き給え」(ヘブライ人たち/トビア/アンナ/トービト/サーラ/ラファエッレ)
そして第1部のフィナーレは、祝祭感が突き抜けます。分厚いコーラスとキレまくったオケの至福のメロディーからはじまり、次々にソロが絡んでいきます。途中からオケはリズムを刻む伴奏に徹して、ソロに観衆の感心を集中させます。最後はフーガのような展開になって各声部が複雑にからまって天上に至る階段を登るがごとき展開。最後は厳かな和音で終了。

いやいや、いままで突っ込んで聴いてきませんでしたが、この曲は名曲ですね。まるでロッシーニの曲を聴くようにアリアに打たれます。

まだ第一部だけですが、丁寧に書いていたら長くなってしまいましたので、記事を分けることに。読まれて解るとおり、評価は[+++++]です。明日残りを書いて、12月のHaydn Disc of the Monthを発表することにしましょう。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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