ロマン・ルルーのトランペット協奏曲(ハイドン)

実に久しぶりにトランペット協奏曲を取り上げます。

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TOWER RECORDS / amazon

ロマン・ルルー(Romain Leleu)のトランペット、エマニュエル・ルドゥック=バローム(Emmanuel Leducq-Barôme)指揮のバルティック室内管弦楽団(Baltic Chamber Orchestra)の演奏で、フンメル、ネルーダ、ハイドンのトランペット協奏曲と、グルックの歌劇「オルフェーオとエウリディーチェ」より「メロディ(精霊の踊り)」を収めたアルバム。収録は2010年11月5日から7日にかけて、ペテルスブルクのペテルスブルク録音スタジオ及び聖カタリナルーテル教会でのセッション録音。レーベルはharmonia mundi傘下のAPARTÉ。

このアルバム、例によって湖国JHさんから送られてきたもの。比較的最近リリースされたものですが、こちらの手元にないということで、いつも通りさりげなくコレクションの重大な欠陥を突かれたという形(笑)。こういったケースで送られてきたものに悪いものはないというのがこれまでの経験則ですので、ちょっと調べてから聴いてみた次第。

まずはジャケットを眺めると、ちょっと内山くん似の小太りなルルーの姿が気にならなくもありません。調べてみると、これだけならよくある古典期のトランペット協奏曲の詰め合わせなんですが、このアルバム、ハイドンのトランペット協奏曲がカデンツァ違いで3つのバージョンが収められているのが珍しいところ。自身のカデンツァに加えてクシシュトフ・ペンデレツキ、カールハインツ・シュトックハウゼンによるカデンツァの3種で、しかもカデンツァ部分のみならず全曲通しが3パターン収録されています。そもそも、ペンデレツキにシュトックハウゼンという現代音楽の作曲家が古典中の古典であるハイドンの、よりによってトランペット協奏曲にカデンツァを書いているのが不思議なところ。

シュトックハウゼンについては息子であるマルクス・シュトックハウゼンがトランペッターということで、息子がトランペットを吹き父が指揮したアルバムがあるため、シュトックハウゼンがカデンツァを書く動機があったということでしょう。またペンデレツキも1999年にサン・ノゼ交響楽団の指揮をした時にハイドンのトランペット協奏曲を演奏し、その際にカデンツァを書き、その後改定されたものとのこと。このハイドンの非常に古典的な協奏曲のカデンツァに奇しくも現代音楽の大家がカデンツァを書きたくなったというところに、ハイドンの存在感を感じる次第です。

そして、それを録音に残したロマン・ルルーという人ですが、1983年、フランスのベルギー国境に近いリール生まれのトランペット奏者。今回初めて知った人ですが、いちおう若手トランペッターの有望株とのこと。パリ国立高等音楽院でエリック・オービエに、カールスルーエ音楽院ではラインホルト・フリードリヒという現代の両巨頭に学んでいます。その後フランス、欧米を中心にソリストとして活躍していますが、日本にもラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに2010年と2012年に来日しているそうですので、ご存知の方も多いかもしれませんね。ちなみに楽器はYAMAHAを愛用しているとのこと。

オケのバルティック室内管はサンクトペテルブルクフィルの精鋭メンバーを集めた団体ということで、指揮のエマニュエル・ルドゥック=バロームはヤンソンス門下の人とのことです。

Hob.VIIe:1 Concerto per il clarino [E flat] (1796)
(cadences:Romain Leleu)
まずはCD1の3曲目に収められているルルーのカデンツァによるバージョンから。最近の録音らしくオケは鮮明、程よいキレと推進力を感じる安定した序奏の入り。ルルーは安定した演奏で入りますが、フランス人トランペッターにしては大人しい印象。リズムもフレージングもオーソドックスで破綻がありません。欲を言えばもう一歩踏み込みというか輝きが欲しいところ。徐々に音階が複雑になってくるところでも安定感は流石なところ。よく聴くと、トランペットよりも鮮やかなオーケストラの方に耳が入ってしまいそう。1楽章のカデンツァはよくあるトランペット奏者によるもののように、ちょっとアクロバティックな音階のジャンプなどを織り交ぜたオーソドックスなもの。ちょっと安心しました。
続くアンダンテはしっかりと呼吸を緩めて、ゆったり朗々としたトランペットの美音が鳴り響きます。ここでは逆に安定した演奏が落ち着いていていい感じです。オケも手馴れた感じでまとめてきます。ルルーのトランペットは特定の音域に輝きがあるわけではなく、常に一歩引いいたような落ち着きに満ちたもの。
そして最後のフィナーレもじっくりとしたテンポで入り、終始落ち着きが乱れません。これはこれでなかなかできるわけではありません。適度に爽快な好演。最後までバランス感覚に優れたオーソドックスな名演でした。

(cadences:Krzysztop Penderecki)
続いてCD2の冒頭におかれたベンデレツキによるカデンツァのもの。序奏の演奏は前の演奏とほどんど変わらないものの、ちょっと響きが多く感じるのは気のせいでしょうか。もしかしたら録音会場が違うかもしれません。心なしかライヴ感も上がってコンサートのように聴こえます。カデンツァまではおそらくほぼ同じ感じの演奏ですので、ペンデレツキ節への変化のタイミングを待ちながら聴くという不思議な感覚。予想通り、きました! カデンツァの入りこそ普通な感じですが、徐々にヘンテコな転調にホルンまで加わり、これはユニークなもの。そして突然曲に戻る感じもこれまたユニーク。ただし、ハイドンの曲に合っているかと言われれば、かなりキワモノ的な印象が強いのが正直なところ。ハイドンへのリスペクトやオマージュも少々弱いのかもしれません。
アダージョは1楽章同様、ルルー版よりも幾分しなやか印象を感じます。フィナーレのカデンツァも予想だにしない展開で途中独自の境地の入ってしまいますが、なんだかわからないうちに原曲に戻るところも1楽章同様のもの。最後にも聴かせどころがあります。欲をいえば、カデンツァの違いだけでなく、曲全体を見渡して、カデンツァに負けない変化を聴かせるくらいの遊びがあっても良かったかもしれません。

(cadences:Karlheinz Stockhausen)
そしてCD2の後半に置かれたシュトックハウゼンによるカデンツァのもの。オケが慣れたのか、3バージョンの中では一番しなやかな伴奏に感じます。オケの熱気も一番。肝心のカデンツァに入る前の溜めもちょっと前2バージョンとは違います。このカデンツァは突き抜けた面白さ! ペンデレツキ版のちょっと中途半端な感じとは異なり、ハイドンも喜びそうなくらいやりたい放題。オケが迎えに来るのところも全く迎えを待っているそぶりなし。これはこれで実に面白い。そしてなんとなく異種の音楽による不調和な余韻を、オーソドックスなアダージョが断ち切る面白さ。1楽章の不思議な余韻で逆にアダージョの美しさが際立つと気付いた次第。そしてフィナーレではカデンツァに入る前の音を長〜く伸ばし、これまた想像だにしないメロディーというか、楽器の慣らしのために色んな音を練習しているような奇妙奇天烈なカデンツァが痛快。いや、本当に痛快。このくらいハチャメチャでこそハイドンの機知へ対抗できるというもの。聴きなれたメロディーに戻った安堵感ったらありません。なぜか不思議なほど幸福間に包まれます。最後はあえてオーソドックスに終わりますがキレは最高。

いやいや、この3種のカデンツァを並べる企画は面白かった。読んでいただいて分かる通り、私は最後のシュトックハウゼン版が一押しです。正直に言うと、ルルーのオリジナル版は演奏自体もちょっと硬く、またルルーの演奏も踏み込みが足りない印象。そして、これが初めての録音になるというペンデレツキ版もユニークではありますが、ちょっと中途ハンパな印象を残してしまいます。シュトックハウゼン版も同様かとあまり期待せず聴いたんですが、これは面白かった。やはりルルーもノリが良く、楽しんで演奏しているのが伝わったのが大きいでしょうか。作曲者と演奏者の創意がハイドンの原曲に負けないくらい張り合えないとこのレベルの面白さには到達できないのでしょう。評価はシュトックハウゼン版を[+++++]、他2つを[++++]とします。まあ、このアルバムはマニア向けというところでしょうね(笑)

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エリック・オービエ/ブルターニュ管のトランペット協奏曲(ハイドン)

いやいや、仕事が忙しい。そういうときは1曲ものということで、トランペット協奏曲を取り上げます。

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エリック・オービエ(Eric Aubier)のトランペット、ヴァンサン・バルト(Vicent Barthe)指揮のブルターニュ管弦楽団(Orchestre de Bretagne)の演奏でフンメル、テレマン、バッハ、レオポルド・モーツァルト、ハイドンのトランペット協奏曲を収めたアルバム。収録情報は記載されておらずPマークが2009年。レーベルは仏indesens。

このアルバム、トランペット協奏曲の所有盤を整理していたときに演奏の印象があまりないアルバムということで取り出し聴いてみたところ、出だしのフンメルが素晴らしいので、ハイドンも悪かろうはずがないということで聴き直したもの。フランスのオケは金管楽器が優秀なところが多く、このアルバムでトランペットを吹くエリック・オービエもフランス人ということで、ちょっと期待です。

エリック・オービエは1960年パリ生まれのトランペット奏者。14歳でパリ音楽院に入学、かのモーリス・アンドレに師事。1976年にトランペット、1977年にコルネット、1978年に室内楽にそれぞれ1等で卒業。翌1979年にはパリオペラ座管弦楽団首席奏者に就任しました。コンクールでは1979年パリ国際コンクール4位、1981年トゥーロン国際コンクール3位、1987年プラハの春国際コンクール2位などの受賞歴があります。近年ではリュエイユ・マルメゾン国立音楽院で教鞭を取り、後進の教育を行っています。amazonなどでアルバムを検索すると、このアルバム以外にも数多くのアルバムがリリースされており、かなりの実力者とみました。

Hob.VIIe:1 Concerto per il clarino [E flat] (1796)
オケはオーソドックス。最近の録音だけにクオリティは良く、序奏からオケの厚みと溶け合いをうまくとらえて、この曲独特の高揚感が心地よいですね。エリック・オービエのトランペットも最初はオーソドックスな印象。テンポ感もよく押し出しもなかなか。流石にアンドレ門下と思わせる存在感のある音色でメロディーを正確に置いていきます。ソロとオケが対等な音量でオケもソロに負けない勢いがあります。うまい具合にオケとソロが溶け合いこの曲の面白さを引き立てます。オケは音量をすっと落とす演出が効いて、引き締まった表現。そしてトランペットは朗々と吹き抜きます。途中からトランペットがところどころアクセントをつけ、徐々に本領発揮、終盤の速いパッセージの音階の鮮やかさ、そしてカデンツァに至りテクニック炸裂。羊の皮を脱いだように伸びの良い高音とキレの良い音階で圧倒します。これは見事。
アンダンテは実にゆったりとしたオケの序奏から入り、オービエはトランペットは王者の風格を帯びるような朗々たる演奏。曲調をふまえてこちらも実に堂々としたもの。中盤の伸びやかな盛り上がりは、圧倒的な音量と厚みのある音色で聴かせます。
フィナーレは期待通り、キレよくしかも適度に柔らかなオケが心地よい入り。すぐにオービエの圧倒的なプレゼンス。演奏のキレの良さからか、これまでの楽章より録音のリアリティが上がったように聴こえます。やはりリズム感の良さとリアリティあってのこの躍動感でしょう。良く聴くとオケの木管陣の爽やかな音色が印象的。トランペットのソロに花を添えています。最後はやはり圧倒的な迫力でさっと締めくくり曲を終えます。

フランスのトランペッター、エリック・オービエとフランスのオケによるハイドンのトランペット協奏曲の秀演。やはりフランスものらしく華やかな響きがあり、独墺系の演奏とは一味ちがう印象を残すのは流石です。オービエのトランペットはアンドレ門下らしい輝かしさと音量があり、最初はオーソドックスに聴こえましたが、やはりインパクトのあるソロを披露。そしてヴァンサン・バルト率いるブルターニュ管弦楽団も演奏に華やかさを加えるナイス・サポート。オケも見事でした。短いながらも独特の高揚感をもつハイドンのトランペット協奏曲には名演が多いですが、その名演にこのアルバムも加わりますね。評価は[+++++]とします。

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アラン・モリア/トゥールーズ室内管の管楽協奏曲集(ハイドン)

皆様、明けましておめでとうございます。

いつも通りの正月、御節にお酒にとのんびり過ごしております。東京は幸いいい天気に恵まれておりますが、日本海側などは豪雪に見舞われているとのこと。雪かきに忙しい正月の方もあるかもしれませんね。

さてさて、正月にのんびりとばかりはしていられませんので、そろそろレビューに入りたいと思います。今年最初の取り上げるのはこちら。

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アラン・モリア(Alain Moglia)指揮のトゥールーズ室内管弦楽団(Orchestre de Chambre National de Toulouse)の演奏でハイドンのトランペット協奏曲、ホルン協奏曲1番(Hob.VIId:3)、伝ハイドン作のホルン協奏曲(Hob.VIId:4)、ミヒャエル・ハイドン作のホルンとトロンボーンのための協奏曲の4曲を収めたアルバム。トランペットソロはティエリー・カンス(Thierry Caens)、ホルンソロはアンドレ・カザレ(André Cazalet)、トロンボーンソロはミシェル・ベッケ(Michel Becquet)。収録は1994年9月19日から21日、フランス南部のトゥールーズのカルメル会礼拝堂(Chapelle des Carmélites)でのセッション録音。レーベルは仏disques PIERRE VERANY。

正月早々どマイナーなアルバムですが、これがまた素晴らしい演奏。これだからやめられません。もちろん、このアルバムはホルンものをこよなく愛する湖国JHさんから貸していただいているもの。昨年から貸していただいておりまして年を越してしまいました。まことに申し訳ありません。

さて、奏者についてさらっておきましょう。このアルバム、解説はハイドンと曲についてのごく簡単なもののみで、奏者の情報などは名前のみでしたので、ネットでちょっと調べてみました。
指揮のアラン・モリアは1943年生まれで、パリ国立高等音楽院を卒業し、すぐにコロンヌ管弦楽団のコンサートマスターに就任します。その後もパリオペラ座管弦楽団、フランス室内管弦楽団などの奏者として活躍しますが、中でも気になるのが、ブーレーズ率いるアンサンブル・アンテルコンテンポランのメンバーだったこと。アンサンブル・アンテルコンテンポランは2013年のラ・フォル・ジュルネに来日した際にそのコンサートを生で聴きましたがカミソリのような切れ味の精緻な演奏に鳥肌がたったものです。

2013/05/05 : コンサートレポート : 【番外】ラ・フォル・ジュルネで衝撃のブーレーズライヴ

現代音楽の中でも特に演奏の難しいブーレーズの作品を完璧に演奏するアンサンブル・アンテルコンテンポランのメンバーであったということでもモグリアの手腕は素晴らしいものだったと想像できます。1977年から1991年まではバレンボイムに招かれパリ国立管弦楽団のコンサートマスターを務め、その後1992年から2002年まで、今日取り上げるアルバムのオケであるトゥールーズ室内管の音楽監督を務めました。教育者としてはパリ国立高等音楽院の弦楽器科主任教授を務め多くの弦楽器奏者を育てたそうです。こうした経歴のモグリアのコントロールするオケということで、弦の扱いの上手さが期待できるわけです。

トランペットのティエリー・カンスは1958年、フランスのディジョン生まれのトランペット奏者。彼のサイトがありましたので紹介しておきましょう。

Accueil | Thierry Caens

なんと、そこに日本語の経歴がありますのでリンクしておきましょう。

ティエリー・カンス トランペット奏者

モーリス・アンドレに師事したフランスのトランペット奏者ということですが、経歴で気になったのは映画「シラノ・ド・ベルジュラック」の音楽を担当したとのこと。昔BSの深夜枠でやっていてあまりに面白かったので通しで見ちゃった記憶があります。なんとなくご縁がある奏者ということでしょう。また、このアルバムでソロを担当しているホルンのアンドレ・カザレとトロンボーンのミッシェル・ベッケと3人でトリオを組んで演奏活動をしていたということで、このアルバム自体、気心の知れたメンバーでの演奏ということでしょう。
ホルンのアンドレ・カザレは1955年生まれのフランスのホルン奏者。カザレもアンサンブル・アンテルコンテンポランのメンバーだったということで、テクニックは折り紙つきでしょう。その後パリ管の首席ホルン奏者となっています。1985年からはパリ音楽院でホルンの教授とのこと。
ということで、このアルバムのソロはフランスの管楽器の一線級の奏者ということがわかりました。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
とろけるようなオケ。非常に滑らかなティエリー・カンスのトランペット。録音も自然で言うことなしです。オーソドックスなタイプの演奏ですが、オケもトランペットもフランス人奏者だからか、どこか華のある演奏です。無骨さはなく響きが隅々までコントロールされた演奏。特に高音の抜けるような華やかさはフランスのオケの管楽器に共通したものでしょう。オケの方もアラン・モリアによる流石のコントロール。自然ながらかなりアクセントをつけてメリハリのある伴奏。1楽章のカデンツァではまさにカンスの華麗なトランペットが炸裂。アドルフ・ハーセスほどの突き抜けた高音や、モーリス・アンドレほどの輝かしさほどではありませんが、非常に流麗、磨き抜かれたコントロールで華やかさを醸し出しています。
2楽章のアンダンテは伸び伸びとしたカンスのトランペットに聴き惚れます。ゆったりとした伴奏に乗って孤高のトランペットという感じ。そしてフィナーレはオケの伴奏が躍動感と精緻さが同居した素晴らしいもの。流石に隅々までコントロールが行き届いています。ブーレーズに比べれば音数は一桁以上違いそうですからコントロールは容易なのでしょう、盤石の安定感。なにげにクレッシェンドの冴えなども聴かせてオケのキレの良さを印象づけます。これはなかなかの名演。

Hob.VIId:3 / Concerto per il corno [D] (1762)
序奏から爽快感炸裂。モーツァルト以上に音階が転がり、実に軽快。ホルンのアンドレ・カザレも軽々とメロディーを吹いていきます。ホルンという楽器がまるで簡単にメロディーを描けると誤解しかねないほどの軽快さ。ドイツ系のホルン奏者とは音楽の造りが異なります。こちらも非常に華やか。先ほどのトランペット協奏曲では軽快ながら程よくダイナミックだったんですが、この曲ではあえてダイナミクスを抑えて、速めのテンポで軽快感を強調しているよう。オケとホルンの軽やかさの相乗効果で程よい陶酔感。時折鳴らされる低音も軽々とした印象が悪くありません。
聴きどころの2楽章は、軽やかさを残しながらも、オケがぐっと抑えてホルンを引き立てます。ホルンは磨き抜かれた金属のはなつ光沢感を帯びた、極めて滑らかな音色。まったく不安定なところは見せず、伸び伸びと美しいメロディーを奏でていきます。オケはあえて表情を抑えているので、ホルンの艶やかな音色が引き立ちます。まさに至福の境地。アンドレ・カザレ、絶品です。カデンツァのホルンの伸びやかなことといったら例えようもありません。
フィナーレでようやくカザレのテクニックの冴えを確認。これまでも安定した演奏だったんですが、フィナーレの速いパッセージを事もなげに吹き抜いていくホルンにあらためて驚きます。やはりフランスの金管陣の優秀さは並ではありませんね。隅々までコントロールが行き渡ったホルンは見事。モグリアの伴奏も完全一体でサポート。

Hob.VIId:4 / Concerto per il corno [D] (1781) by Michael Haydn?
ミヒャエル・ハイドンの作とも言われるホルン協奏曲2番。曲想は前曲と比較すると単純になりますが、ホルンソロがあまりに見事なので、グイグイ引き寄せられてしまいます。リズミカルな伴奏に乗ったこのホルンは見事。オケの方もなにげに生気に富んだ見事な演奏ですが、それに合わせてホルンはものすごい立体感。ホルンという楽器がこれほどメリハリをつけられる楽器だったと再認識。カデンツァはあまりに見事な吹きぶりが圧巻。これは聴いていただかなければわかりませんね。
聴き進むと前曲のハイドンのホルン協奏曲よりホルンがキレているのがわかります。ちょっとホルンの神様が降りてきています。自在にホルンを操り、シンプルなメロディーを類い稀な音楽に昇華させています。
フィナーレではホルンの名演に応えて、オケも異様な立体感。先日聴いたアレグリーニのホルン三重奏曲のホルンも良かったんですが、このカザレの演奏もそれに劣らず素晴らしいもの。ちょっと鳥肌ものの超絶技巧。まったくほころびを見せず、活き活きとメロディーを置いていきます。最後のカデンツァも圧巻。いやいやスバラシイ!

このあとのミヒャエル・ハイドン作のホルンとトロンボーンのための協奏曲ですが、ヤスパー・デ・ワール盤でも触れたとおり、なかなか面白い曲。ホルンとトロンボーンのえも言われぬ掛け合いが実に興味深い曲。

2014/05/02 : ハイドン–協奏曲 : ヤスパー・デ・ワール/コンセルトヘボウ室内管のホルン協奏曲(ハイドン)

ここではトロンボーン奏者のミシェル・ベッケの見事なトロンボーンが味わえます。2楽章構成ですが、2楽章は躍動感あふれる旋律の中でホルンとトロンボーンの音色の微妙な違いに耳が釘付けになります。こちらもおすすめ。

このアルバム、調べたところなかなか入手は容易ではなさそう。私もこの素晴らしさを聴いて、ぜひ手元に置いておきたいものですが、中古を丹念に探すほかなさそうです。オケでもフランスの金管は優秀と言われていますが、このアルバムを聴くとまさにそのとおり。このような名演盤は是非入手可能な状態にしておいてほしいものです。音楽好きな方には絶対のオススメ盤です。もちろん評価は全曲[+++++]といたします。

なかなかレビュー頻度を上げられておりませんが、今年もお付き合いのほどをよろしくお願いいたします。いつもながらですが、ツッコミ、叱咤、激励などいつでも受付中でございます。本年のよろしくお願いいたします。

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ハンス・ガンシュ/カメラータ・アカデミカ・ザルツブルクのトランペット協奏曲(ハイドン)

ハンス・ガンシュのトランペット協奏曲の旧盤がみつかりました。

HansGansch94.jpg
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ハンス・ガンシュ(Hans Gansch)のトランペット、カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク(Camerata Academica Salzburg)の演奏によるテレマンのトランペット協奏曲、フンメルのトランペット協奏曲、レオポルド・モーツァルトのトランペット協奏曲、ハイドンのトランペット協奏曲、ヴィヴィルディの2本のトランペットのための協奏曲の5曲を収めたアルバム。収録は1994年3月15日から18日にかけて、ザルツブルクのモーツァルテウムの大ホールでのセッション録音。レーベルはオーストリアの ATEMMUSIK。

最近オークションで手に入れたもの。ハンス・ガンシュは1982年から96年までウィーンフィルの首席トランペット奏者を務めた人。ハンス・ガンシュのトランペット協奏曲は以前に2007年の録音を取り上げています。

2011/07/24 : ハイドン–協奏曲 : ハンス・ガンシュのトランペット協奏曲

上の記事で略歴には触れていますが、1953年生まれということで、今日取り上げるアルバムの録音時は41歳と覇気あふれる頃の演奏。2007年の録音から遡ること13年前の録音。また、ガンシュはアダム・フィッシャーとオーストリア・ハンガリー・ハイドン・フィルハーモニーの来日公演で生でもトランペット協奏曲を一度聴いており、なんとなく印象深い人。そのへんのあたりは下記をご参照ください。

2010/01/24 : ハイドン–交響曲 : アダム・フィッシャー全集その後

オケはカメラータ・アカデミカ・ザルツブルクで、シャーンドル・ヴェーグやパウムガルトナーの振ったハイドンの録音を何回か取り上げています。

2013/09/15 : ハイドン–交響曲 : ヴェーグ/カメラータ・アカデミカのブダペストライヴ
2012/02/08 : ハイドン–協奏曲 : アンドレ・ナヴァラ/パウムガルトナー/カメラータ・アカデミカのチェロ協奏曲2番
2010/11/27 : ハイドン–交響曲 : シャーンドル・ヴェーグの時計、102番ライヴ
2010/11/25 : ハイドン–交響曲 : シャーンドル・ヴェーグの太鼓連打、ロンドンライヴ

中でも一番上のブダペストライヴは、ヴェーグ渾身の指揮とカメラータ・アカデミカがフルオーケストラのようなど迫力の演奏が素晴らしい宝物のようなアルバムですが、録音は今日取り上げるアルバムの翌年の1995年のもの。ということでガンシュもオケもハイドンのトランペット協奏曲の演奏の最も正統な演奏を期待できるものということで、かなりの期待をもって聴きます。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
少し奥に定位する柔らかな響きのオケ。十分鮮明な録音で低音の厚みと迫力がありますが、高域、特にヴァイオリンはすこし薄めで繊細。オケはテンポよくオーソドックスな演奏ですが響きに力があって悪くありません。ガンシュのトランペットは前に取り上げたアルバム同様、抜群の安定感で堂々としたもの。モーリス・アンドレのように輝かしい音色で聴かせるタイプではなく、誠実さと実直さが持ち味という感じ。ただ聴き進むうちにじわりとトランペットの音色の魅力を感じさせるような味のあるもの。1楽章のカデンツァは落ち着きはらってトランペットの音色の魅力と高音の音階のキレの良さを披露。基本的な演奏のスタンスは新盤と変わりませんが、若い時の演奏の分、新鮮な印象があります。
アンダンテはオケもトランペットもじっくりと落ち着いて美しいメロディーを淡々と置いていきます。曲自体の美しさを前提に、しっかりと演奏することでこみ上げるほのかな感情を聴けと言っているよう。そしてフィナーレも教科書通りの律儀が演奏。踏み込んだ表現はありませんが、テクニックは確かなので演奏のキレは十分。オケは今までの楽章で一番雄弁ですが古典の範疇の中での表現ということで格調高いもの。よく聴くとトランペットの音階が鮮やかに上下するあたり、かなりのキレ。演奏する人が聴けばこの演奏の凄さがわかるのかもしれません。最後はオケがぐっと沈み込んで迫力を演出して終わります。

ハンス・ガンシュとカメラータ・アカデミカ・ザルツブルグによるトランペット協奏曲の94年の録音。2007年の録音もそうでしたが実にオーソドックスな演奏。オケのトランペット奏者として活躍してきた人だけに、派手な演出は微塵もなく、誠実そのものの演奏。ウィーンフィルのとろけるようなホルンやトランペットの響きの延長の美しいトランペットです。コンチェルトのソロという意味ではもう一歩踏み込んだ表現を期待したいという声も聞こえてきそうですが、晩年ウィーンで暮らしていたハイドンの曲の正統な演奏としてはこうゆう演奏もありでしょう。これがガンシュの音楽だという意味で、含蓄に富んだ演奏だと思います。評価は[++++]としたいと思います。

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ミロスラフ・ケイマル/チェコフィルのトランペット協奏曲(ハイドン)

ここ数記事、チェコものが続いておりましたが、手元の未登録盤にチェコものがありましたので続けて取りあげます。

Keimar.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ミロスラフ・ケイマル(Miroslav Kejmar)のトランペット。ペトル・シュクヴォル(Petr Škvor)指揮のチェコフィルハーモニー室内管弦楽団の演奏によるハイドンのトランペット協奏曲、ミヒャエル・ハイドンの小トランペット協奏曲、レオポルド・モーツァルトのトランペット協奏曲、ヨハン・ヘルテルのトランペット協奏曲2番の4曲を収めたアルバム。収録は1987年9月4日から12月1日にかけて、プラハの芸術家の家でのセッション録音。レーベルはSPURAPHONですが日本コロムビアによる国内盤。

トランペットのミロスラフ・ケイマルは1941年生まれのチェコのトランペット奏者。ネットにはあまり情報がありませんが、どうやら元チェコフィルの首席トランペット奏者のようです。もともとリベレツの軍隊付属音楽学校でトランペットを学び、5年間軍隊の任務に着いたあと、1971年までプラハ音楽院、プラハ音楽アカデミーで本格的に音楽を学びました、1970年からはチェコフィルの団員となり、国際的に活躍するようになり、名が知られるようになったそう。チェコフィルのトランペット奏者として、マーラーの交響曲3番の3楽章のソロでヴァーツラフ・ノイマンを感激させたとライナーノーツにあります。
このアルバムで指揮をとる、ペテル・シュクヴォルは1948年生まれのヴァイオリニスト、指揮者。こちらもネットに情報がありませんが、チェコフィルとのアルバムでヴァイオリニストとしてソロを担当するアルバムがいくつかあることから、チェコフィルのヴァイオリン奏者だった人でしょう。チェコ語のサイトを調べると1993年に亡くなっているようです。
そしてオケもチェコフィルではなくチェコフィルハーモニー室内管ということで、チェコフィルの団員による室内管弦楽団でしょう。

国内盤ということで日本語の解説がついているのですが、奏者についてはケイマルの情報がわずかに書かれているのみ。折角の名演奏なので、もう少し奏者の情報があるといいですね。私は奏者がどんな環境で学び、どんな人生を送ってきたかということに非常に興味があります。残念ながらチェコ語は読めませんので、こうしたローカルな奏者について紹介するのは限界がありますね。

ということで、当ブログで取りあげたのも、ひとえにその演奏が素晴しいからに他なりません。演奏について虚心坦懐にレビューする事に致しましょう。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
深く燻したような伴奏のオケの音色。活気と覇気に満ちあふれているのに響きは実にしっくりときます。冒頭からオケの素晴しい響きに圧倒されます。ケイマルのトランペットはメロディーがくっきりと浮かび上がるはっきりとした音色。ただし録音のバランスはオケの迫力優先なので、冷静なケイマルのトランペットソロがオケの迫力に飲み込まれそう。ケイマルは終始おちついたコントロールでトランペットを操りますが、吹き上がるところでの浸透力があり、オケに負けてはいません。オケは指揮のシュクヴォルが煽っているのかかなりのインテンポで攻めて来ますが、ケイマルが冷静にやり過ごす感じ。1楽章の終盤、ケイマルもオケに触発されるように盛り上がり、カデンツァでは見事に滑らかなトランペット捌きを聴かせ、転がるように音階を操り、ようやくソリストここにありとの存在感を示します。
アンダンテでは、オケがしっとりと沈み、今度はトランペットの引き立て役にまわります。この辺の切り替えは見事。ケイマルは今度は主役とばかり、朗々と美しいメロディーを吹いていきます。フレージングはオーソドックスですが、よく情感が乗った美しい音楽。ハイドンのトランペット協奏曲の魅力でもある、楽器の響きの真髄に触れるような滑らかなメロディーを無心に奏でていきます。小細工は不要、自然に沸き上がる情感。
予想通りフィナーレはオケが再び主導権を握り、鮮やかな響を聴かせながらソロを迎えます。ケイマルはフレーズの終わりをキリリと引き締め、かなりメリハリをつけた演奏。このへんはオケの熟練奏者の燻し銀のテクニックというところでしょうか。こうした緩急が音楽に変化を与え、短いフィナーレを聴き応えあるものにしています。ここぞと言うときのトランペットの輝きは見事。シカゴ響のアドルフ・ハーセスが全編にわたる輝きを聴かせたのとは異なり、要所要所でキリリと引き締める味のあるトランペットですね。いや、見事。

この後につづく3曲もオケが実に上手い。しっとりとした伴奏にケイマルが応じる素晴しい音楽。ミヒャエル・ハイドンの小トランペット協奏曲では、突き抜けるように上昇する高音が鳥肌もの。レオポルド・モーツァルトの典雅な音楽もしっとりと濡れたような表情にうっとり。あまり聴かないヨハン・ヘルテルのトランペット協奏曲も古典の均衡を保ついい曲です。

このアルバム、一聴するとオーソドックスな演奏に聴こえますが、良く聴くとレビューしたように実に味わい深い演奏。トランペット協奏曲は名盤が多いですが、その中にあってもこの味わい深さはかなりのもの。トランペットも素晴しいのですが、特にオケの燻し銀の響きがこの演奏の価値を高めています。このアルバム、奏者も指揮者も未知の人でしたが、この素晴しさに触れて、世界は広いと実感。まだまだ未知の名盤が潜んでいるのでしょうか。幸いまだ手に入るようですので、広くオススメできますね。もちろん評価は[+++++]とします。

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ヘルムート・シュナイデヴィントのトランペット協奏曲

弦楽四重奏曲のレビューすべきアルバムは山のようにあるのですが、本日は訳あってこのアルバム。

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フリッツ・レーアン(Fritz Lehan)指揮のコンソルティウム・ムジクム(Consortium Musicum)の演奏で、ハイドンのトランペット協奏曲、ハイドン作とされた3つの協奏曲であるフルート協奏曲、オーボエ協奏曲、ホルン協奏曲(VIId:4)を収めたアルバム。トランペット協奏曲のソロはヘルムート・シュナイデヴィント(Helmut Schneidewind)収録は1964年6月8日から14日にかけてドイツ南部のブリュールの教会堂でのセッション録音。レーベルはEMI。

このアルバム、いつものように湖国JHさんにお借りしているもの。ハイドンの管楽協奏曲を集めたアルバムですが、今日ハイドンの真作とされているのはトランペット協奏曲のみ。ということで、今日はトランペット協奏曲のみ取りあげます。

演奏者の情報を調べてみたのですが、ネットにはなかなか情報がありません。このアルバム、ライナーノーツは同じシリーズのアルバムの宣伝ばかりで、曲の解説も演奏者の解説もありません。この組み合わせのアルバムであれば、なにがしかの解説があったほうが良いですね。

ということで、割り切って純粋に音楽を楽しむ事としましょう。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
いきなり素晴しい音響に驚きます。1964年という録音年代が信じられない素晴しくつややかなオケの序奏。全盛期のEMIの覇気が感じられるもの。オケは非常に上手い。磨き抜かれて各楽器の粒立ちがよく、華麗、流麗、うっとりするほどのオケ。トランペットも安定感、リズム、高音の伸び、どれをとっても文句のつけようがありません。ハイドンのトランペット協奏曲の演奏として理想的なもの。これだけの名演奏をする奏者なのに、情報がほとんどないとは。驚きはカデンツァ。何という高音の伸び、驚愕の存在感です。1楽章から痺れっぱなし。演奏の種類としては、以前取りあげた、グラン・カナリア・フィルの演奏に近い、のびのびとした正攻法の演奏。

2013/03/31 : ハイドン–協奏曲 : グラン・カナリア・フィルのトランペット協奏曲、2つのホルンのための協奏曲

つづくアダージョも、惚れ惚れするような伸びのあるトランペットによって、ハイドンの癒しに満ちたフレーズがゆったりと朗々と奏でられます。ゆったりとしたオケに乗ってトランペットも実にゆったりとメロディーを吹いていきます。メロディーがクッキリと浮かび上がるのは彫りの深いフレージングによって。強音の力強さはモーリス・アンドレさながら。
フィナーレはリズムの刻みをすこし強調して、軽快感を際立たせます。オケもトランペットもリズムのキレが良く、安心して聴いていられます。そしてオケもトランペットも強音の吹き上がりが素晴しい。なにげに名演奏ですね。

今となっては全く知られていない演奏者のトランペット協奏曲ですが、正直モーリス・アンドレ盤と良い勝負というクラスの演奏です。この素晴しい演奏が解説なしの廉価盤として埋もれいることに驚くべきでしょう。つづくフルート協奏曲、オーボエ協奏曲、ホルン協奏曲もオケの上手さは変わらず、そしてソロを担当する奏者も腕利きぞろいで、十分楽しめます。トランペット協奏曲は[+++++]とします。

このアルバム、中古盤もほとんど見た事がないので、アルバム自体はほとんど流通していないですが、iTunesになぜかオーボエ協奏曲を除いた3曲がありますので聴く事ができます。

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tag : トランペット協奏曲

ヘルムート・ウォビッシュ/アントニオ・ヤニグロのトランペット協奏曲

今日もLPから。

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amazon(別装丁のCD)

ヘルムート・ウォビッシュ(Helmut Wobisch)のトランペット、アントニオ・ヤニグロ(Antonio Janigro)指揮のイ・ソリスティ・ディ・ザグレブ(I Solisti di Zagreb)の演奏で、ハイドンのトランペット協奏曲を取りあげます。収録年はLPには表記されていませんが、YouTubeにアップされた動画に1951年との記載があります。収録場所等はLPに記載がありません。レーベルは米VANGUARD。

今日取り上げるLPはVANGUARDのThe Best of Haydnという2枚組のアルバム。モーゲンス・ヴェルディケ/ウィーン国立歌劇場管弦楽団の軍隊、グリラー四重奏団の騎士、アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の告別など、VANGUARDレーベルの名録音からここぞという演奏を選りすぐった、まさにベスト盤。この中の1曲が今日取り上げるトランペット協奏曲です。

このLP、しばらく前にディスクユニオンで手に入れましたが、なんと、未開封盤。薄いビニールを、まさに今日、ひっちゃぶって開封。開封の瞬間、いつものとおり過呼吸に陥りました(笑)
埃をクリーナーでさっと拭き取ると、まったく針を落とした事のないLPということで、全くノイズのない素晴しいコンディション。過呼吸から回復できません! いやいやお宝がまだまだあるものですね。

さて、アントニオ・ヤニグロのハイドンは以前に取りあげています。ヤニグロの紹介は「悲しみ」の方の記事をご覧ください。

2012/04/26 : ハイドン–交響曲 : アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の「受難」
2012/04/24 : ハイドン–交響曲 : アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の「悲しみ」

記事を読んでいただければわかるとおり、両者とも素晴しすぎる名演奏。古典的なハイドンの交響曲の名演奏として今も燦然と輝いています。

トランペットを吹くヘルムート・ウォビッシュは1912年、ウィーン生まれのトランペット奏者で後にウィーンフィルの管理サイドとして活躍した人。ウィーン大学で哲学と化学を、ウィーン音楽アカデミーに入学し音楽を学んだという異色の経歴の持ち主。1936年にはウィーン国立歌劇場でトランペットを吹くようになりました。1939年にはウィーンフィルのメンバーとなりましたが、ヒトラー時代に若手の管楽トレーナーとして働いていたため、1950年までウィーンフィルに復帰できない時代がありました。その後ウィーンフィルでトランペット奏者を務めた後、管理サイドに入り、1980年に亡くなっています。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
オリジナル盤ほどのキレではありませんが、序奏から素晴しい広がりある音響。ヤニグロのコントロールするオケは艶やかかつ引き締まった素晴しいもの。湧き出るようなエネルギー感が素晴しいですね。ウォビッシュのトランペットはカッチリした音色で、オケのエネルギーを制しようとするようにテンポがうわずります。かなりインテンポで攻めてくるトランペット。とろけるようなヤニグロのサポートに対して、野武士のように立ちはだかります。しきりにブレスをコントロールしているように感じる、まさに息づかいのわかるリアルなトランペット。協奏曲の醍醐味満喫です。カデンツァに入らんとするところからは、明らかに早い入りで主導権を握ろうとします。カデンツァ自体はオーソドックスなもの。
アンダンテはことさら情感を強調する事なく、淡々と演奏。この淡々とした風情が郷愁を感じさせるんですね。LPで聴く実体感と空気感、そしてちょっと古びた音色が相俟って、ノスタルジーをかき立てます。ここでもヤニグロのコントロールする瑞々しいオケが絶品。
フィナーレは入りからオケの美しい響きにうっとり。トランペットも完璧なお膳立てにいきり立ちます。ここにきてトランペットの存在感が際立ち、オケとのスリリングな掛け合いが絶妙。オケはヴァイオリンの透明感と、木管の華やかな音色で鮮明な色彩感を味わえます。最後はしっかりと盛り上がってフィニッシュ。

やはりヤニグロのサポートが光る演奏でした。ヘルムート・ウォビッシュのトランペットは所謂味わいのあるトランペット。ウィーンフィルの奏者らしいほのかな柔らかさと、キリッとしたエッジがあるトランペット。テクニックや完成度を追求する演奏というものではなく、トランペットの音色と息づかいをリアルに感じられる玄人向けの演奏という感じでしょう。評価としては[++++]というところでしょうが、私はかなり気に入りました。やはりLPで聴いているというところが大きいと思います。音楽を楽しめる大人の演奏でしょう。

このアルバムでトランペット協奏曲の所有盤は40演奏目。まだまだ未知の演奏が沢山ありそうな気がします。

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tag : トランペット協奏曲 ヒストリカル LP

オーレ・エドワルド・アントンセン/テイト/ECOのトランペット協奏曲

番外記事が3本続いたので、正常化の必要性に迫られています(笑) 以前書きかけの記事をまず仕上げます。

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オーレ・エドワルド・アントンセン(Ole Edvard Antonsen)のトランペット、ジェフリー・テイト(Jeffrey Tate)指揮のイギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンのトランペット協奏曲他、フンメル、テレマン、ネルーダ、タルティーニのトランペット協奏曲を収めたアルバム。収録は1993年2月、ロンドンのアビー・ロード・スタジオの第1スタジオでのセッション録音。レーベルはEMI CLASSICS。

ハイドンのトランペット協奏曲はかなり集めているはずですが、このアルバムは初めて見るもの。先日ディスクユニオンの店頭でお目にかかり仕入れたものです。手元の所有盤リストを確認すると、このアルバムを含めて現在37演奏が登録されています。そのうちレビューに取りあげたのが22演奏、実に6割近くの演奏をレビューしている事になります。それだけトランペット協奏曲が好きだからと言いたいところですが、実際はさにあらず。トランペット協奏曲のアルバムはたいていフンメルとかテレマンなどの曲とカップリングされる事が多く、レビューに取りあげる時は1曲のみで記事がかけると言う事で、忙しい時間の合間で記事を書くには、この短い曲1曲でネタになるのがありがたいからに他なりません。もちろん、曲もハイドンらしい祝祭感とトランペットの迫力が素晴しいので好きな曲でもありますが(笑)

今日もいろいろバタバタしたので、先日手にいれたこのアルバムを取りあげます。

トランペットのアントンセンははじめて聴く人。1962年生まれと言う事で私と同じ歳。名前からわかるとおり、ノルウェーの人です。1982年、ノルウェー国立音楽院で学び、同校を金管奏者として初の最優秀賞で卒業。1987年ジュネーヴ国際音楽コンクールで優勝、1989年ブラチスラヴァのユネスコ国際コンクール優勝などの経歴を持ち、モーリス・アンドレ以来の逸材と言われたそう。ノルウェーのオスロフィルののトランペット奏者を務めていましたが、1990年に退団し、以後、ソロとして活躍しているそうです。

ジェフリー・テイトはおなじみでしょう。かなり以前にザロモンセットを取りあげています。

2010/04/12 : ハイドン–交響曲 : 歌の人、テイト

最近あまり録音しているのを見かけませんが、あらためて調べてみると2008年からハンブルク交響楽団の首席指揮者として活躍しているようです。生まれは1943年4月28日、イギリス南部の大聖堂で有名なソールズベリーの生まれ。何と昨日が70歳の誕生日でした。生まれつき二分脊椎症を患っているとのこと。最初はケンブリッジ大学で医学を学び、ロンドンのセント・トーマス病院で研修などを受けますが、1970年から音楽の道に転向、ロンドン・オペラ・センターで学びはじめます。ショルティ、ブーレーズ、カラヤン、レヴァイン、ルドルフ・ケンペ、カルロス・クライバー、コリン・デイヴィスらの助手を務めて腕を磨き、1979年、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でデビュー、1985年からこのアルバムのオケであるイギリス室内管弦楽団の初代の首席指揮者とロイヤルオペラハウスの首席指揮者となりました。テイトの録音はこれ以降、EMIからいろいろリリースされてメジャーになったと言う訳です。その後2005年にはナポリのサン・カルロ劇場の音楽監督、そして2008年からは冒頭に書いたようにハンブルク交響楽団をまとめているということです。どちらかというとオペラ中心に来た人だったというのは今回初めて知りました。

テイトの指揮は非常にしっとりとした柔らかな音色で曲を丹念に磨いていくという印象。オケも名手ぞろいのイギリス室内管ゆえ、アントンセンのトランペット以上にオケの伴奏の出来にも興味があって手に入れたというところ。イギリス室内管は先日70年代のバレンボイムの演奏を取りあげたばかりですので、指揮者や時代の違いにも興味が向くところです。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
期待通りテイトのコントロールするイギリス室内管は素晴しく瑞々しい響き。録音もアビーロードスタジオでの全盛期のEMIの実体感と響きの余韻の美しいもの。中庸なテンポで磨き込まれたオケの美しさが印象的。アントンセンのトランペットはテイトの伴奏に身を任せて、最初は大人しめですが、徐々に高音の素晴しい伸びを印象的に交えていきます。高音の伸びは明るい音色で輝きもあり、モーリス・アンドレの再来との評価もあながち過大評価とは言い切れません。北欧出身者としては明るいトランペット。カデンツァはその高音の伸びと迫力を存分に聞かせます。
2楽章のアンダンテはテイトのコントロールする美しい伴奏が素晴しいですね。アントンセンもテイトと同じようにトランペットを巧みにコントロールして美しくメロディーを乗せていきます。ヴィブラートのかけ方うまく、メロディーがオケに溶け込み、非常に美しい。これはかなりのテクニックですね。
フィナーレも極上のオケの響きに乗ってアントンセンのトランペットが気持ちよく吹き上がります。オケの色彩感とトランペットの輝き、そしてしっとりと柔らかい響きが相俟って素晴しい響き。アントンセン、テンポ感も柔らかい音色のコントロールも非常に迫力ある高音の使い方も素晴しいトランペットでした。

ノルウェーのトランぺッター、オーレ・エドワルド・アントンセンによるハイドンのトランペット協奏曲、はじめて聴く人でしたが、素晴しい腕前の持ち主でした。テイトの指揮にあわせるように磨き込まれたメロディーを聴かせ、しかもトランペットという楽器の聴かせどころのツボをおさえた非常に良くコントロールされたトランペットでした。評価は[+++++]とします。

(おまけ)
昨夜は早速蒲鉾のカルパッチョ。もちろん蒲鉾は近所のスーパーで鈴廣を(笑)

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tag : トランペット協奏曲 イタリアン

グラン・カナリア・フィルのトランペット協奏曲、2つのホルンのための協奏曲

今日は湖国JHさんに貸していただいたアルバム。

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HMV ONLINEicon / amazon

グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団(Orquesta Filharmónica de Gran Canaria)のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの作品を収めたアルバム。ハイドンはトランペット協奏曲、ハイドンの作とされる2つのホルンのための協奏曲、モーツァルトのホルン協奏曲3番、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲Op.11が収録されています。ハイドンの演奏者はトランペット協奏曲はトランペットがダヴィット・ラクルズ(David Lacruz)、アントニ・ロス=マルバ(Antoni Ros-Marba)指揮、2つのホルンのための協奏曲はホセ・ザルゾ(Jose Zarzo)とエリサ・ヴェルデ(Elisa Verde)のホルンにホセ・ルイス・ガルシア・アセンシオ(Jose Luis Garcia Asensio)指揮です。収録年は残念ながら表記がありませんが、アルバムのリリースが2010年ですのでそれほど古くありません。協奏曲3曲は最後に拍手が収められていますのでライヴでしょう。

このアルバムはHMV ONLINEのお気に入りリストに長らく登録していたのですが、何となく安っぽい廉価盤然としたジャケットからか、注文せずにおいたもの。ところがところが、良くメールをいただく湖国JHさんの好きな2つのホルンのための協奏曲の名演奏とのことで、貸していただいたもの。荷物がついて開けてみると見覚えのあるジャケット。アルバムの善し悪しは聴いてみなければわからない訳です。いつもはジャケットからにじみだす妖気に敏感に反応して、名演奏を嗅ぎ分けてきたわけですが、今回は勘が冴えていなかったということです(笑)

アルバムタイトルは"Vienna Classics in Gran Canaria"と題されたもの。カナリア諸島はスペイン領でヨーロッパの遥か南、アフリカのモロッコ、西サハラ沖に浮かぶ諸島で、中心となる島がグラン・カナリア島。ラテン語で「犬の島」を意味するそう。鳥のカナリアではないのですね。カナリア諸島の情報をまとめたサイトを紹介しておきましょう。

スペイン政府観光局オフィシャルサイト カナリア諸島

グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団は当地のオーケストラでしょう。ヨーロッパを中心に年間1000万人もの観光客が押し寄せる(Wikipedia)とのことで、このオケのコンサートを楽しみに観光に訪れる人も多いのではないでしょうか。

Orquesta Filarmónica de Gran Canaria OFGC

オーケストラのサイトを見てみると、歴史は古く設立は1845年に遡るそう。ヨーロッパのセレブが避暑に訪れるためか、共演した指揮者は一流どころがずらりとならんでいます。ロストロポーヴィチ、ルドルフ・バルシャイ、レイモン・レッパード、クリストファー・ホグウッド、フランス・ブリュッヘン、ギュンター・ヘルヴィッヒ、このアルバムでも指揮しているアントニ・ロス=マルバなどなど。現在はペドロ・ハルフター(Pedro Halffter)が音楽監督を務め、首席客演指揮者はギュンター・ヘルヴィッヒとのこと。いままであまり知りませんでしたが、伝統あるオケですね。録音も多く、Arte Novaからマーラーやドヴォルザーク、シベリウス!の交響曲等がリリースされています。南国のオケで聴くシベリウスは如何なる響きか、ちょっと聴いてみたくなります。

トランペット協奏曲を振っているアントニ・ロス=マルバは以前にも古い録音を取りあげています。

2011/01/22 : ハイドン–管弦楽曲 : ロス=マルバ/カタルーニャ室内管弦楽団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉

経歴などはこちらをご覧ください。

また2つのホルンのための協奏曲を振っているホセ・ルイス・ガルシア・アセンシオは、ヴァイオリニストでもあり、史上最年少でロンドンの王立音楽大学の教授となった人。20年以上にわたりイギリス室内管弦楽団のコンサートマスター指揮者として活躍してきた人とのこと。1992年からはマドリードのライナ・ソフィア音楽学校で教えているそうです。弦楽器の扱いに注目でしょうか。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
なぜかしっとりと心に染み入る柔らかい響き。残響の多いホールでゆったりと鳴らされたオーケストラの響きが非常に豊か。テンポは中庸ですが、極度にリラックスしている演奏。トランペットのソロを担当するダヴィット・ラクルスはグラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団の首席トランペット奏者。先日取りあげたモーリス・アンドレのインパクトにはもちろん比べるべくもありませんが、オケの伴奏に乗っておおらかにトランペットを吹いていきます。これはこれで十分なパフォーマンス。時折り高音をキリッと鳴らして変化をつけていくところ等ツボを押さえた演奏。ライヴですが、ノイズは皆無で、しかも音響処理をしたような不自然さはなく、録音は非常に自然です。ハイドンの書いたおおらかな音楽を、おおらかに演奏した、実に素朴でいい演奏。カデンツァを聴く限りテクニックも自然で音も非常に美しく、素晴らしい演奏。南国のオケの奏でる音楽は、小細工など考えもせず、おおらかさ一本の演奏です。
アンダンテも同様。ホールに響く美しいメロディーに癒されるよう。オケも過度に叙情的にならず、ラクルスはハイドンの書いたメロディーを淡々と演奏していくことで、素朴なメロディーの美しさが引き立ちます。
フィナーレもしっとりとした柔らかい響きを保ち、小気味好いテンポなんですが実に味わい深い演奏。トランペットの速いパッセージも難なくこなし、高音のもしっかり美しく輝くトランペットの美音を聴かせます。なんでしょう、ライヴなのにこの非常にリラックスした音楽は。緊張感張りつめるとは大曲にある穏やかな音楽。テクニックとは自然に振る舞うためにあると言わんばかりの演奏。遠くヨーロッパから来た観客に極上のもてなしを供するような音楽です。会場から自然に沸き上がる暖かい拍手が心を打ちます。

Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762) (Composed by Antonio Rosetti/Michael Haydn?)
そして2つのホルンのための協奏曲。ソロは前グラン・カナリア・フィル首席ホルン奏者のホセ・ザルゾと現首席奏者のエリサ・ヴェルデの二人。録音は少しハイ落ちで低音の定位感がちょっとぼやけ気味になりますが、前曲同様ホールの柔らかい響きをつたえる穏やかな録音。またもや朗らかなオーケストラの響きの魅力に溢れた演奏。この曲は先日ティルシャル兄弟の名演盤をレビューしましたが、この演奏のホルン奏者、ティルシャル兄弟に負けていません。ホルン2本が醸し出すえも言われぬ響きの重なり。ホルンが吹き上がるところの豪快な迫力も満点。素朴な造りの曲の魅力をつたえるオケ。いやいやこれは名演奏。グラン・カナリア・フィル、侮れません。指揮のホセ・ルイス・ガルシア・アセンシオはトランペット協奏曲のロス=マルバ同様、自然な表情を大切にするひとのよう。やはりイギリス室内管のコンサートマスターを長年務めただけに、弦楽器の表情付けは素晴らしいものがあります。音楽を楽しむ純粋無垢な心情をそのまま表現することだけをしっかりやっているよう。えも言われぬ幸福感で1楽章を終わります。
2本のホルンが大活躍の2楽章のロマンツァ。二人のホルンの息はぴったり。朗々と吹くホルンの音色の存在感も際立ち、オケの伴奏もしっとりと沈み込むロマンティックなもの。さざめくようにホルンを支えるデリカシーに富んだオケのコントロールは秀逸。深く深く沈み込む情感。2楽章、美しすぎます。
フィナーレは再びしっかりと独特のリズムを刻み、ホルンとオケが渾然一体となって振りまいた情感を拾い集めていくよう。ゆったりと広がるオーケストラをバックに2本のホルンが互いホルンの音に自身の音を乗せて響きをつくっていく様子がよくわかります。最後もオケのしっとりした情感が心にしみます。やはり会場から沸き上がる暖かい拍手とブラヴォーの声が印象的。いやいや、素晴らしい演奏でした。

このあとのモーツァルトのホルン協奏曲も名演。モーツァルトの閃きがしっとりと表された、これも特別な名演。特に1楽章のカデンツァは驚きのテクニック。何という奏法だかわかりませんが、素晴らしい効果。絶品です。正直ブレイン/カラヤン盤よりいいかもしれません。

南海に浮かぶカナリア諸島のオケゆえ、自身でも注文を躊躇していたアルバムですが、これは目から鱗の素晴らしい演奏。かつてカルロス・クライバーもカナリア諸島で演奏していますで、音楽的には非常に成熟したところなんでしょう。南国らしくおおらかな演奏なんですが、その音楽には心に刺さる深い感動がありました。音楽を純粋に演奏する喜び、純粋に聴く悦びに溢れた演奏といえばいいでしょうか。音楽に対する虚心坦懐な姿勢の大切さを教えられた気がします。これはすべての人におすすめの名盤です。評価はもちろん両曲とも[+++++]とします。

湖国JHさん、ありがとうございました!

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tag : トランペット協奏曲 2つのホルンのための協奏曲 ライヴ録音

ガボール・タルケヴィのトランペット協奏曲

久しぶりの協奏曲。最近入手した話題盤。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ガボール・タルケヴィ(Gábor Tarkövi)のトランペット、カール=ハインツ・ステフェンス(Karl-Heinz Sterrens)指揮のバンベルク交響楽団、バイエルン州立フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ハイドンのトランペット協奏曲の他、ハイドンと同時代のレオポルド・モーツァルト、ヨハン・バプティスト・ゲオルク・ネルーダ、ヨハン・ネポムク・フンメルらのトランペット協奏曲を収めたアルバム。収録は2009年5月4日から8日にかけて、ドイツのバンベルクにあるバンベルク会議場のヨゼフ・カイルベルト・ホールでのセッション録音。SACD-Hybridでマルチチャネル録音。レーベルはスイスのTUDOR。

ガボール・タルケヴィはベルリンフィルの首席トランペット奏者として知られた人。1969年ハンガリーのエステルゴム県(Esztergom)に生まれ、家族は代々音楽家でおもに管楽器奏者とのことです。エステルゴム県のCsolnokで育ち、9歳のときに父のイシュトヴァン・タルケヴィからトランペットの手ほどきを受けました。地元のシュワブブラスバンドの音楽に夢中になったことが彼のキャリアに大きな影響を及ぼしました。近くのジュールにあるヤーノシュ・リヒター音楽院を卒業後、フランツ・リスト教員養成大学、フランツ・リスト音楽アカデミーに進み、なかでもジョルジュ・クルタークとハンス・ガンシュに師事したことが重要だったとのことです。オーケストラでのキャリアは、まず、ヴュルテンベルク・フィルハーモニー管弦楽団の共同首席トランペット奏者、つづいてベルリン交響楽団(現ベルリン·コンツェルトハウス管弦楽団)の首席トランペット奏者、1999年からはバイエルン放送交響楽団の首席トランペット奏者などを歴任しました。そして2004年からはベルリンフィルハーモニー管弦楽団の首席トランペット奏者となり、ベルリンフィルの他の奏者同様、室内楽アンサンブルにもいろいろ参加しているようです。現在は今日取り上げるアルバムをリリースしているTUDORの専属契約とのことです。

ハイドンのトランペット協奏曲はこれまでもいろいろ取りあげています。モーリス・アンドレの柔らかい美音、アドルフ・ハーセスの突き抜ける高音、女流のアリソン・ボールソムの意外と図太い輝きある美音などなど、トランペットの音色の魅力もそれぞれ。また実演ではタルケヴィの師でもあるハンス・ガンシュをアダム・フィッシャーの来日時にかぶりつきの席で聴いて、圧倒的な音量と存在感を味わいました。

今日聴くタルケヴィのトランペットは、やはり師であるハンス・ガンシュに近いイメージがあります。それは中音のなみなみならぬ存在感でしょうか。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
SACDのせいか、極めて自然な柔らかい音。オケの低音が風圧のように迫ってくる録音。鮮明を通り越して、非常に自然な音。ソロの入りはクッキリと浮かび上がりますが、オケが大海のように満ちているなかに鮮明に定位する感じ。オケは非常に自然な伴奏。最近の演奏らしくヴィブラートはあまりかけていないように聴こえます。タルケヴィのトランペットはことさら技巧をこらすことなく、楽譜に忠実な素直な演奏。ただ、カデンツァに入ると、伸びのよい高音域の美音を轟かせるとともに、非常に柔らかい肌触りと管楽器独特の存在感、力強さを両立させた素晴らしいソロを聴かせます。
2楽章は非常に柔らかい音色でなでるようにメロディーをおいていきます。トランペットは美音を聴かせるというより、じわりとつたわる浸透力のある音色。しっとりとした語り口と、柔らかい音色のオケと相俟って、2楽章はこれまで聴いたいろいろな演奏とはひと味違うもの。
フィナーレも派手さはなく、堅実なオケと、タルケヴィの落ち着いたトランペットによる堅実な音楽。指揮のカール=ハインツ・ステフェンスももとベルリンフィルのクラリネット奏者だった人だけに、ソロとオケのアンサンブルは息がピタリと合って流石の精度。文字通り堅実な演奏でした。

ベルリンフィルの首席トランペット奏者タルケヴィの演奏によるトランペット協奏曲ですが、上手すぎるので非常に自然ということなのか、音楽の聴かせどころの踏み込みが足りないのか、非常に上質な演奏なのに、奏者の主張がすこし弱く感じるような演奏。これがベルリンフィルという世界一流のオケの首席奏者に求められる才能なのかもしれません。おそらくオーディオ的にはSACDマルチチャネル録音ということで、非常に自然かついい録音なのだと想像できます。うちのなんちゃってシステムではなく本格的なオーディオシステムで聴くとその素晴らしさも違って聴こえるような気がします。評価は[++++]としておきます。

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tag : トランペット協奏曲

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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