ドーリック弦楽四重奏団のウィグモアホールライヴ

実に久しぶりの弦楽四重奏曲。未聴盤ボックスからようやく脱出です。

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ドーリック弦楽四重奏団(Doric String Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲 Op.9のNo.4、Op.50のNo.2、Op.76のNo.1の3曲を収めたアルバム。収録は2009年1月15日、ロンドンのウィグモアホールにおけるライヴ。レーベルはWIGMORE HALL LIVE。

ドーリック弦楽四重奏団は1998年、イギリス、サフォークで開催されていた「若い音楽家のための夏期ミュージック・スクールの室内楽コース」をきっかけとして結成されました。2002年からパリでアルバン・ベルク四重奏団、アルテミス四重奏団、ハーゲン四重奏団、ラサール四重奏団のメンバー等によるプロ演奏家のためのトレーニングコースに参加して腕を磨きました。その後もハーゲン四重奏団のライナー・シュミットについてバーゼル音楽アカデミーで学びました。2000年に開催された、ブリストル・ミレニアム弦楽四重奏コンクールで第1位、2007年に開催されたメルボルン国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門で入賞、2008年に大阪国際室内楽コンクールで1位、イタリアのパオロ・ボルチアーニ国際弦楽四重奏コンクールで2位となるなど、現在のヨーロッパにおける実力派若手クァルテットのといったところでしょうか。現在のメンバーは次のとおり。

第1ヴァイオリン:アレックス・レディントン(Alex Redington)
第2ヴァイオリン:ジョナサン・ストーン(Jonathan Stone)
ヴィオラ:サイモン・タンドリー(Simon Tandree)
チェロ:ジョン・マイヤースコウ(John Myerscough)

このアルバム、ハイドンの弦楽四重奏曲の3曲を収めていますが、組み合わせはかなり珍しいもの。最初にOp.9からくるあたり、ちょっとこだわりを感じます。

Hob.III:22 / String Quartet Op.9 No.4 [d] (c.1769-70)
奏者の息づかいが鮮明に録られた雰囲気のあるライヴ。厳かにはじまり、丁寧すぎるくらいデュナーミクを積極的にコントロールして、フレーズごとに濃い表情をつけていきます。楽天的な印象はなく、かなりストイックな姿勢。第1ヴァイオリンは軽めの音色で、非常に軽やかに音階を刻んでいきます。重厚な伴奏に軽やかなヴァイオリンという構図。曲自体を研究し尽くしたような演奏。やはりコンサートの開始はこの曲でなくてはならないのでしょう。シュトルム・ウント・ドラング期のハイドンの特有のほの暗さをもった曲ですが、かなり磨き混んで深い陰影をつけていきます。
基本的にネクラな印象の演奏ですが、メヌエットは彫りがすこし浅くなり、明るい光がさっと刺したような輝きがあります。表情のちょっとした変化に敏感にさせられる演奏。やはり弱音部を丁寧に引き込んでいきます。
3楽章がアダージョ・カンタービレ。全奏者の演奏スタイルが良くそろっており、前楽章までの特徴を全員が共有しています。ヴィオラやチェロもヴァイオリンに負けず表情が豊かなので、アダージョは聴き応えがあります。クッキリと言う表現はちょっと違い、メロディーをじっくり料理していく感じです。この楽章の終盤の孤高の感じ、このクァルテットの音楽のポイントでしょう。
フィナーレは緩急の変化を変化をかなり鮮明につけた個性的な解釈。ここまで踏み込んだ表現は最近では珍しいですね。会場からは割れるような拍手で迎えられます。

Hob.III:45 / String Quartet Op.50 No.2 [C] (1787)
続いて、だいぶ時代が下って、Op.50プロシア四重奏曲集からNo.2。やはりじっくり丁寧なアプローチ。この曲もだいぶ研究した上での演奏に聴こえます。ひとつひとつのメロディーをどのように演奏するかじっくり考えて、ユーモラスな曲を丁寧に描いていきます。ひとりひとりのデュナーミクの起伏が大きいのですが、良く歌うというより、他の奏者の音をよく聴いて、音を上手く重ねながら演奏している感じ。ヴァイオリンのみ鋭い音色を聴かせるのが特徴なんでしょう。
アダージョは細めのヴァイオリンの張りつめた凛とした美しさが印象的。ハイドンの美しい曲の儚さが強調されて、ガラス細工のような繊細な輝きをもった演奏。かなり自在なボウイングでじっくりと美しい旋律を描いていきます。
メヌエットは実にユニークな曲調。このクァルテットの選ぶ曲に共通する曲調がわかってきました。HMV ONLINEの解説を見ると、この曲をかなり得意としているよう。間を活かしたユーモラスさが彼らの演奏で強調され、ハイドンのアイデアが実によく引き立ちます。
フィナーレも同様、ハイドンの創意に満ちた曲の面白さが強調されます。絡み合う音階の綾と美しいメロディーの交錯。実に軽いタッチで千変万化する曲想をこなしていきます。最後はしっかり盛り上がりますが、すっと消え入るようなフィニッシュも見事。この曲の本質的な面白さをこの演奏に教えられました。

Hob.III:75 / String Quartet Op.76 No.1 [G] (1797)
最後は晩年の名曲。この夜の演奏会はハイドンの弦楽四重奏曲の成熟の歴史を体験するような流れ。前曲までの演奏からもう少し線が細い演奏を想像していましたが、かなりしっかりとした厚みのあるアンサンブル。演奏が進み温まったのか、曲事のアプローチの違いかは判然としませんが、アンサンブルの緊密度が高まったのは確か。聴き慣れたメロディーがいつもより陰影が濃くついて聴こえます。迫力や推進力で聴かせる演奏ではありませんが、ライヴらしい変化に富んだアンサンブルの面白さを聴く演奏でしょう。なぜか引き込まれる実に玄人好みの演奏。1楽章はぐっと集中度の高い演奏。
つづくアダージョ・ソステヌートはボウイングにかなり明解に隈取りをつけて、クッキリとメロディーラインを強調します。聴き慣れたメロディーですが、表情は驚くほど豊か。不思議とくどさはなく、芸術性の高さが印象に残ります。音や響きを合わせるのではなく、音楽が合っている感じ。実に複雑なアンサンブル。間と静寂も効果的。明らかに集中力が上がってきて、ビリビリきます。この緊張感、聴いていただきたいですね。
メヌエットに入ると、鬼気迫る迫力。俊敏さとエネルギーの噴出が素晴しい。それだけでなくリズムの跳躍、響き渡るピチカート、変化するテンポ。ホール内がドーリック弦楽四重奏団の演奏の迫力にのまれています。
フィナーレもエネルギーに満ちた演奏なんですが、逆に前楽章の緊張を鎮めるように流す感じもあります。起伏を前楽章より抑え気味にしているところはいいセンス。後半に入ると、やはりギアチェンジして、徐々にクライマックスに向けて力が漲ってきます。途中に水を打ったような静けさを挟むあたりも流石、ドーリック弦楽四重奏団の名演奏に会場は釘付け。これは事件のようなライヴです。ホールは拍手とブラヴォーと驚きのようなどよめきに包まれます。

Hob.III:44 / String Quartet Op.50 No.1 [B flat] (1787)
アンコールにOp.50のNo.1のフィナーレ。アンコールにいつも弾いているのでしょうか、安心して聴けるハイドンの機知に溢れた曲。ドーリック弦楽四重奏団の魅力が詰まった演奏。普通に終わったかのような大拍手を一旦受けますが、実は終わっていないというパフォーマンス付き。観客もドーリックに見事にやられ、会場からは笑いも溢れます。いやいや、実に素晴しいコンサートでした。

最初のOp.9を聴いたときには、ちょっと表情の濃い演奏をする人たちだとの印象でしたが、聴き進むうちに、ドーリック弦楽四重奏団のスゴさがわかってきました。ぐんぐん調子が上がり、ホールの観客を釘付けにする素晴しい緊張感。弦楽四重奏のコンサートでこれだけの極度の緊張感に溢れた演奏は聴いた事がありません。この日の聴衆は事件に出会ったような衝撃を受けたことでしょう。ハイドンの弦楽四重奏曲の真髄の髄をつく素晴しい演奏。弦楽四重奏好きの方、必聴です。評価は1曲目のOp.9は[++++]、残りはもちろんすべて[+++++]とします。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.9 弦楽四重奏曲Op.50 弦楽四重奏曲Op.76 ライヴ録音 ハイドン入門者向け

ブルーノ・ヴァイル/ターフェルムジークの86番

そろそろ5月のテーマを決めようかと思っていました。4月はLPを中心に聴きましたが、聴く方はいいもののマイナー感満点で、少しメジャーなものも取りあげた方がいいのではとの軌道修正。ということで、5月は交響曲のメジャーな演奏を取りあげることに。当ブログのアクセス解析のキーワードでなぜかヴァイルの出現回数が多いため、まずはブルーノ・ヴァイルを取りあげます。

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ブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil)指揮のターフェルムジーク(Tafelmusik)の演奏による、ハイドンの交響曲85番「王妃」、86番、87番の3曲を収めたアルバム。収録は1994年2月15日から19日まで、カナダ、トロントのグレン・グールドスタジオでのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。

このバラのアルバムはもう流通していないようで、こちらが現役盤のターフェルムジークのハイドンの交響曲の録音7枚をまとめたもの。

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今手に入れるなら、もちろんこちらでしょう。今日はこのなかから、好きな86番を取りあげましょう。

ブルーノ・ヴァイルのハイドンは今までいろいろ取りあげています。

2012/08/11 : ハイドン–管弦楽曲 : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」
2012/01/24 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの四季
2011/08/14 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番4】ブルーノ・ヴァイルのテレジアミサ、ネルソンミサ
2011/01/10 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイルの天地創造
2010/12/25 : ハイドン–交響曲 : 【年末企画】ブルーノ・ヴァイルの交響曲50番、64番、65番
2010/03/08 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへ

ヴァイルの紹介は交響曲50番などのアルバムの記事をご覧ください。私は古楽器によるハイドンの交響曲の演奏のなかでは力感と鮮度のバランスのよさからヴァイルをお薦めしています。ピノックほどカッチリ形式的ではなく、アーノンクールほど尖っていず、ホグウッドよりも力感があり、時にスタティックすぎるブリュッヘンよりも自在で、ハイドンの曲のもつポテンシャルに対してバランス良くいい演奏が多いのがヴァイルの特徴でしょうか。
最近ではトーマス・ファイなんでしょうけれども、ファイのものは純粋に古楽器による演奏ではなく金管楽器など一部を古楽器という形態でした。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
昔はずいぶん聴いた愛聴盤だけに、久しぶりにCDプレイヤーにかけると、脳裏に焼き付いた古楽器独特の鮮明な響きが蘇ります。比較的速めのテンポで、さらりとした入り。古楽器独特の練らない序奏は、昔はは違和感がありましたが、今ではごく当たり前。推進力抜群の主題に入るとヴァイル独特のさっぱりと爽やかな演奏にすぐに耳を奪われます。この曲独特のリズムの響宴。キレのいいオーケストラのアタックの連続による楽興に痺れます。音ごとに楽器の重なりが変化し、リズミカルに寄せては返す波に身を任せるような極上のひと時。高音弦のキレの良さとティンパニをはじめとするリズムセクション、時折色っぽい音色で花を添える木管楽器とオーケストラの色彩感あふれる音色に魅了されます。まさにハイドンの傑作たらん素晴しい出来を堪能できます。
2楽章に入ると微妙にテンポと力感を変えながらそれぞれの楽器が絶妙の一体感でハイドンの美しい曲にクッキリと表情をつけていきます。良く聴くとかなり大胆にテンポを変えてきますが、不思議と流れがよく、曲に多彩な表情を与えています。このへんがヴァイルの上手いところ。ヴォリュームを上げていくと、スタジオ録音ながら響きの良さが際立ちます。録音もなかなかいいです。
そしてメヌエットに入りますが、このラルゴからメヌエットへの入りの呼吸の見事さはいつ聴いても痛快。メヌエットにハイドンが込めた推進力を実に上手く表現しています。実に自然で、実に印象的。ハイドンのメヌエットの豊かな表情を古楽器でこれだけ華やかに表現できるのはよほどの音楽性が必要でしょう。ヴァイル独特のセンスの良さが際立ちます。メヌエットの幸福感に浸ります。
敢えて間をとって静寂を印象的に表現した上で、フィナーレに入ります。迫力重視の演奏が多い中、ヴァイルはあくまでもバランス重視。力まず、適度な力感をベースに、抜群の推進力でグイグイ弾んでいきます。金管群はもの凄い精度で全く乱れず音を重ねていきます。聴き慣れているせいもありますが、予定調和のようにすべての音が、そこで鳴るべくして鳴る完璧な演奏。ここにハイドンの音楽の理想の演奏があります。最後もピカイチの決め球をキャッチャーの構えたミットに煙をたてて吸い込まれるように投げたピッチャーの満足感のような余韻が残るフィニッシュ。実に爽快な演奏です。

続く87番の出だしの音を聴いただけでアドレナリン大噴出。やはりこの曲の刷り込み盤だけに言うことなしですね。

久々に聴き直しましたがヴァイルのハイドン、特にこのアルバムのパリセットあたりの録音は素晴しい演奏であり、ハイドンの交響曲の古楽器による演奏の定番として、多くの人にお勧めできるものです。今更ですが評価は[+++++]とします。

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セバスチャン・コンベルティ/エイジ・オブ・エンライトメント管のチェロ協奏曲集

4月も大詰めになってきました。今日は湖国JHさんにお借りしたアルバム。

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セバスチャン・コンベルティ(Sebastian Comberti)のチェロ、エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団(Orchestra of the Age of Enlightenment)の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲1番、2番、ハイドンと同時代のヨハン・ルドルフ・ツムシュテークのチェロ協奏曲の3曲を収めたアルバム。収録は2008年7月28日から30日、ロンドン郊外にあるハムステッド・ガーデン・サバーブにある聖ユダ教会でのセッション録音。レーベルはCELLO CLASSICSというイギリスのレーベル。

このアルバム、当方の所有盤リストにないということで、貸していただいたもの。調べてみると最近リリースされたもので、全くその存在に気づいていませんでした。チェロ協奏曲は好きでいろいろ集めているつもりでも、気づかないものもあるのですね。

連休がはじまってすぐに出かけて、その後始末で番外編のブログにかまけておりましたゆえ、ようやく今日取り出して聴いたところ、これがまた素晴しい演奏でビックリ。いやいやまだまだ探求が足りませんね。

チェロのセバスチャン・コンベルティはロンドン生まれのチェロ奏者ですが、今日取り上げるアルバムをリリースしているCELLO CLASSICSレーベルの創始者でもあるとのことです。イタリアや王立音楽アカデミーで音楽を学び1977年に卒業。1976年にボックマン四重奏団の創設メンバーとなりイギリスやヨーロッパを中心に演奏活動を行った。1983年にはロンドン・クラシカル・プレイヤーズの首席チェロ奏者となり、以後、ソロなども担当するようになりました。このアルバムのオケである、エイジ・オブ・エンライトメント管やハノーヴァー・バンドの首席チェロ奏者として客演したこともあるそうです。ということで古楽器のチェロ奏者としては実力派の方だとわかりました。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
古楽器独特の響き。ただし堅苦しいところはなく、かなり楽天的な響き。規則正しいリズムに乗って、古楽器の美しい響きが部屋に充満します。コンベルティのチェロは非常に軽やか。冒頭から力が抜けて、淀みなく美しいメロディを軽々とこなしていきます。まるで岩清水のような清らか。ハイドンの楽譜に忠実に演奏することで十分とでも言いたそうな演奏です。カデンツァはこれまでのオーソドックスさだけではないと実力を誇示するように変化に富んだもの。全体のバランスは非常にいいですね。
アダージョもこの演奏の特徴は変わらず、サラッとした感触の演奏。非常にリラックスした境地。ときおりグァルネリの高音の美音を轟かせますが、情感が濃くなることはなく、純音楽的な範囲で詩情を表す感じ。淡々とした語りから音楽の真髄に迫るいい演奏。
フィナーレの入りは適度に鮮烈な感じで、規則正しいテンポが心地良い演奏。オケの響きも非常にフレッシュ。コンベルティのチェロは完全にオケに身を任せる感じで、しなやかにオケについていきます。ベテランのチェロ奏者らしく、表現は慎ましやかなのに非常に味わいのあるチェロのソロ。オケの色彩感も最高。感触は違いますが先日取りあげたマルク・デュストリベのヴァイオリン協奏曲の演奏に近い感じといえばわかるでしょうか。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
見事な1番の演奏につづいて2番。2番独特の深みが出るでしょうか。期待通り淡々としたオケの入りですが、2番の円熟を読んだのか、すこし雄弁な印象。チェロの入りはなんと清々しい! 音色のセンスがいいというか、この入りの絶妙さは見事。オケも1番ほどオーソドックスではなく、あちこちで変化を聴かせますが、穏やかな機知という範囲でこれも見事なセンス。コンベルティの方もすこし書体がくだけたようなところがあって乙な印象。ハイドンの曲に潜む遊び心のようなものが垣間見える演奏です。整然としたリズムでの正確無比な演奏とは異なり、手作りの素朴な良さをもった淡々としたスタンスの演奏と言えばいいでしょうか。2番独特の無邪気な側面がうまく出て絶妙な演奏。カデンツァは自在な心境を存分に感じさせ、テクニックを披露する気などさらさらないと言いたげな純真なもの。これは素晴しい。オケもそれを受けてあえてキリリと締めます。
アダージョはまさに天真爛漫の境地。音色は古楽器ですが、演奏は自在を極め、しかも淡々としたリズムの存在が淀みない印象を強くして、サラサラ流れながらチェロが自在に弓で遊ぶよう。なかなか出来るものではありません。
そしてフィナーレは独特の郷愁に満ちた音楽から入りますが、こうした感情をさらりと上手く表現するセンスの良さを持ち合わせているようですね。高音の美しさを織り交ぜながら、名残を惜しむように糸を引くチェロ。まるで酔拳のように自在に立ち回りますが、不思議に音楽は一貫しています。オケも最後は印象的な響きを多用して曲を締めくくります。

いやいや、これは見事。古楽器演奏ではありますが、一貫してテンポ感の良いところと美しい響きは古楽器風ながら、演奏の本質にはハイドンの音楽に対する深い理解にもとづく自在さと遊び心、そして虚心坦懐さをもった素晴しい演奏でした。古楽の演奏を長年やっているからこそ到達できる深みと言えばいいのでしょうか。表面的な表現やテクニックの誇示といった感じは一切せず、純粋にハイドンの音楽の楽しさを伝えようと言う姿勢がひしひしと伝わってきます。これは名盤と言うべきでしょう。評価は両曲とも[+++++]とします。

湖国JHさん、いいアルバムを聴く機会をいただきありがとうございます。

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【新着】マルカンドレ・アムランのピアノ協奏曲集

このところLP漬けの幸せな日々が続いていますが、ここらで下界に降りて新着アルバムを紹介しておきましょう。

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マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)のピアノ、ベルナール・ラバディ(Bernard Labadie)指揮のル・ヴィオロン・ドゥ・ロワ(Les Violons du Roy)の演奏で、ハイドンのピアノ協奏曲 (Hob.XVI:11、XVI:3、XVI:4)の3曲を収めたアルバム。収録は2012年10月1日から4日にかけて、カナダ東北部のケベック・シティーにあるパレモントカームでのセッション録音。レーベルは英hyperion。

アムランはハイドンのピアノソナタを最近3集に渡って録音しており、ハイドンに格別な興味をもっているよう。現代曲を難なく弾きこなす素晴らしいテクニックの持ち主がハイドンに興味をもつと言う事にハイドンのソナタの特別な価値があるような気がします。以前に第3集は当ブログでも取りあげています。

2012/05/17 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】マルカンドレ・アムランのピアノソナタ集3

そのアムランの最新録音はピアノ協奏曲集。ソナタ集では器の大きさを見せつけたアムランですが、協奏曲においても冴え渡るアムランの静かな狂気のようなものが聴かれるでしょうか。

アムランの情報はリンク先の記事をご覧戴くとして、伴奏の方は指揮者もオケも初めて聞く名前故、ちょっと調べておきましょう。

ベルナール・ラバディは1963年、カナダケベック州生まれの指揮者で、ケベック・シティの聖シャルル・ガルニエ大学とラヴァル大学音楽科で学び、1984年彼自身が設立したこのアルバムのオケであるル・ヴィオロン・ドゥ・ロワと、こちらも1985年に設立したケベックオペラの音楽監督を務めている人。アメリカでは知られた人のようで、ニューヨークフィル、ロサンジェルスフィル、フィラデルフィア管などにも客演しているといるとのこと。アムランのサポートを担当するという事ですからそこその実力者でしょう。

さて、ソナタ同様の冴えが聴かれるでしょうか。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
むむむ。冒頭から素晴らしいキレ。アムランのソロが入る以前からオケがキレキレ。透明感溢れる超高精度のオケが抜群のリズムで入ります。もちろんアムランのソロはその伴奏にミクロン単位の精度で応えてピタリと入ります。冒頭の一音からもの凄いスリリングな展開。アムランの冴えは予想通りではありましたが、オケのキレは期待したものとは次元が異なります。むしろオケのキレにのけぞるような素晴らしい演奏。ピアノとオケの火花散る展開ですが、音楽のベクトルが一致しているので一体感もある希有なアンサンブル。これはスゴい。アムランはいつものようにソロだけで高みに達するような演奏ですが、オケも難なくついていきます。この曲のカデンツァは非常に変わったもので響きの変化を楽しめるものですが、ライナーノーツを見るとワンダ・ランドフスカのもの。
2楽章はアムランの恐ろしい精度のピアノの極限まで磨き込まれた美しい響きに支配されます。並のピアニストのリズム感とは次元が異なります。現代音楽に通じた冷徹な印象すら感じさせる険しさもありますが、ハイドンの書いた美しいメロディの陰影がクッキリ浮かび上がり、8X10の大型カメラで精密に録られた写真のような美しいディティールとトーンの変化の多彩さを感じさせる音楽。この楽章のカデンツァもランドフスカのもの。途中宝石箱を開けたような懐かしさと美しさが同居する瞬間もあり、ハイドンのこの曲の新次元を切り開くような素晴らしい演奏。
フィナーレは予想通り、冒頭のキレとキレの対決。なぜかピアノとオケ以外の音が伴奏に入ります。何かを叩いているよう。アムランもオケも冴えまくって聴いている方が切れそう。アムランのキレは古典期の曲の解釈の枠を遥かに飛び出した表現とも取れますが、不思議に違和感はまったくなく、本質を踏み外していないことがわかります。1曲目から圧倒的な迫力。

Hob.XVIII:3 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
続く2曲は簡単に。前曲よりも20年近く前の作曲。ピアノとオケのリズムの響宴。アムランのソロが入るとやはり
鋭いリズム感が冴えまくってます。オケは今度はサポートに徹するような柔らかさもありますが、各奏者のリズム感はかなり鋭敏で緊張感を保ちます。ラバディのコントロールは各パートをクッキリ浮かび上がらせ、各パートそれぞれがアムランのピアノと対峙すするような引き締まったもの。アムランは相変わらす、完璧なリズム感できらめくような美しいピアノの音を置いていきます。この曲のカデンツァはアムラン自身のもので、短くオーソドックス。
この曲の聴き所となる美しいラルゴ・カンタービレはもちろんアムランの独壇場。タッチの確かな抑えた美音の魅力が溢れます。アムラン自身のカデンツァもハッとするような転調を聴かせる見事なもの。
フィナーレは躍動感漲る素晴らしい演奏。再びアムランもオケもキレキレ。コンチェルトの快感がすべて詰まった素晴らしい感興。ピアノの速いパッセージのキレの良さは何も引っかからず、キレが良すぎて逆にさらさら流れていると感じるほど。2曲目も格の違いを見せつけます。

Hob.XVIII:4 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
最後の曲。わずかにピアノの調律が変わった感じがします。アムランも3曲目ということで、ワインでも一杯やってすこしリラックスして弾いているように感じます。もちろんリズムのキレの良さはそのまま。この曲では左手のアタックが特徴的。カデンツァはアムラン自身のものですが、前曲よりも踏み込んで、リズムの面白さと転調の妙を主体とした本格的なもの。ハイドンのコンパクトな協奏曲に華をもたせるようなカデンツァ。
2楽章のアダージョはアムラン自身が過去を懐かしむように、今までになく叙情的なピアノを聴かせます。ここにきて、暖かみのあるゆったりとしたフレージングになります。曲調を踏まえての判断か、最後の曲故の名残惜しさでしょうか。
フィナーレはもはや説明の必要はないでしょう。アムランとオケの絶妙なアンサンブル。鋭敏なリズム感は健在で、触ると切れそうなほどのキレ味。音量を下げたところの静寂感も素晴らしく、やはりこのコンビの素晴らしさをを証明するがごとき完成度でした。

マルカンドレ・アムランの最新作であるハイドンのピアノ協奏曲集。書いたようにアムランもオケも凄まじいばかりのキレを聴かせる名演奏です。アムランが描いたハイドンのピアノ協奏曲は、モーツァルトの美しくセンチメンタルな旋律に溢れたものでも、ベートーヴェンの力感と威厳に満ちたものでもなく、打鍵するピアノの構造の本質にせまる、リズムとピアノの音色の美しさを際立たせるものでした。まさにハイドンのピアノ協奏曲の本質的な魅力を知り尽くしているからこそ出来る名演奏。アムランが最近ハイドンの録音を集中的にこなしてきた意味がわかりました。このアルバム、ハイドンのピアノ協奏曲演奏の新次元を開く偉業と断定します。もちろん評価は[+++++]。オケと録音の優秀さも素晴らしいものでした。

たびたびで恐縮ですが、当ブログの読者であるコアなハイドンファンの皆様。買いです。このリズムのキレに打たれるべきです。

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【新着】トーマス・ファイ/ハイデルベルク響のラメンタチオーネ他

しばらく続いたLP特集は一旦お休みにして、今日届いたばかりの新着アルバムを紹介。

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おなじみトーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のハイデルベルク交響楽団(Heidelberger Sinfoniker)の演奏で、ハイドンの交響曲26番「ラメンタチオーネ」、27番、42番の3曲を収めたアルバム。収録は2012年7月17日から20日にかけて、ハイデルベルク近郊のヒルシュベルク=ロイタースハウゼンにあるユダヤ教旧会堂でのセッション録音。レーベルはhänssler CLASSIC。

このアルバム、彼らのハイドンの交響曲全集の第19巻です。

2012/11/20 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団の交響曲1番他、爆速!
2012/07/08 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団の90番、オックスフォード
2012/06/11 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/ハイデルベルグ交響楽団のマリア・テレジア、56番
2012/05/03 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/シュリアバッハ室内管の「時の移ろい」「告別」
2011/07/06 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの「帝国」、54番
2010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号
2010/08/01 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイの69番、86番、87番

ファイの振るハイドンは目が離せません。最近取りあげた交響曲1番を含む初期交響曲集もテンポ設定が爆速で、しかもハイドンの書いた楽譜からめくるめくような知的刺激に溢れた音楽が流れ出す演奏。単に前衛的というだけでなくハイドンの音楽の本質をつく面白さに溢れています。その最新のリリースが今日取り上げるアルバム。シュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲「ラメンタチオーネ」を含むものゆえ、到着を心待ちにしていましたが、HMV ONLINEに一緒に注文していたものの入荷に引っ張られて、到着が少し遅くなりました。

Hob.I:26 / Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
ホルンの鋭い音色に隈取られた1楽章の導入。キリッとエッジが立ってキビキビと進みます。一筋縄ではいかないファイのめくるめくようなフレージング。ビシッとタイトな演奏は多いものの、ラメンタチオーネの1楽章からこれだけ変化を聴かせるのはファイの才能でしょう。畳み掛けるような部分と手綱を緩める部分の交錯。ほの暗い雰囲気と青白く光り輝く前衛の才気。1楽章からなみなみならぬ素晴らしさ。音楽の方向は異なりますが、クライバーのバラの騎士の序曲を聴くような興奮を感じます。
2楽章は美しい美しいメロディーが心に沁みいる楽章ですが、ファイの手にかかるとじっくりとした演奏ながら、フレーズの節々に創意が漲り、まるで美しいフレーズで遊び回るような印象。この美しさを出すために創意は控え、しっとりとした表情ながら、絡み合う副旋律の表情や間の取り方がキレていて、常に新鮮な印象を保ちます。後半はメロディーを象徴的に浮かび上がらせたり、装飾をかなり加えてこの楽章の陰影を一層深く感じさせる秀逸な演出。
3楽章はメヌエットでこの楽章が終楽章。前楽章の落ち着いた表情を引き継いではじまり、力感を抑えながら、フレーズに巧みに変化をつけて、静かに旋律を変化させることで生じるニュアンスの多様さを楽しむような演奏。非常にあっさりと終わってしまいます。

Hob.I:27 / Symphony No.27 [G] (before 1766)
ごく初期の推進力あふれる音楽が印象的な作品。ハイドンの初期の交響曲の明朗快活な面白さがつまった作品。ファイの解釈は前曲の諦観とのコントラストを楽しむように、遊び心と推進力に溢れた演奏。いつも通り、フレーズというより音単位でめくるめくように表情を変化させ、ハイドンの曲に猫がじゃれるがごとき演奏。以前より演奏から力が抜けて、軽妙さが際立つようになりました。オケも演奏を完全に楽しんでいるようです。
つづくアンダンテ・シチリアーノは弱音器つきのヴァイオリンのメロディーがそよ風のように吹き抜ける演奏。後年のシュトルム・ウント・ドラング期の彫りの深いほの暗さとは比べるべくもありませんが、この時期のハイドン独特のセンチメンタルなメロディー構成が印象的。
フィナーレは、楽章の対比をことさら強調するように鮮明な入り。やはり力みなく鮮明な表情を生み出すファイのコントロールは流石。19巻まできて、演奏も新たな地平が見えたような自在さが際立ちます。

Hob.I:42 / Symphony No.42 [D] (1771)
ラメンタチオーネとほぼ同時期の作品。冒頭から躍動感に溢れ、オケの吹き上がりも見事。ハイドンの交響曲の面白さがいろいろ詰まった缶詰のような曲。次から次へとでてくるでてくる名旋律。この旋律の面白さとめくるめく変化にスポットライトを当てたファイも流石です。聴き慣れたメロディーですがそこここにファイの仕組んだ変化が待ち受けており、聴きながら脳の音楽中枢に刺激が途絶えません。いやいやハイドン自身もこれほどの演奏を想像しなかったでしょう。これほど面白い42番は初めてです。13分もの長さがあっという間。オケはファイの指示をどう演奏してやろうかと待ち受けている感じ。知的刺激の連続にノックアウトです。
つづく2楽章も13分超と長いですね。曲自体に潜む静謐な印象をファイ流にさらさらとこなし、メロディーの美しさをさりげなく聴かせながらじっくり進んでいきます。このアルバムでも比較的オーソドックスな展開の楽章。終盤見事に沈み込み、音楽の深さを上手く表現できています。
メヌエットはキレのいい響きを強調しますが、すぐにレガートをかけたり、鮮度を強調したりファイ流の変化で聴かせるようになります。途中のヴァイオリンソロもニュアンスたっぷりな表情ながら抑えた響きが美しさを強調しています。
フィナーレに至り、変化の面白さは頂点に。力みのない愉悦感に溢れた演奏。速いパッセージの痛快な展開。ハイドンの書いたフィナーレをこれだけ力を抜いて演奏したものは他に知りません。

いやいや、このアルバムも期待以上に素晴らしい出来でした。ファイの解釈も力が抜けて、才気が冴えまくってます。ファイのハイドンの交響曲全集は19巻に至り、新たな次元に到達した印象があります。強奏にたよらず、曲の自在な解釈によって、音響的な迫力ではなく、解釈の突き抜けた冴えで聴かせていくというスタイルへ進化しています。ファイのハイドンは一体どこまで進化するのでしょうか。まだまだ先が楽しみです。評価はもちろん3曲とも[+++++]とします。

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tag : ラメンタチオーネ 交響曲27番 交響曲42番 ハイドン入門者向け

モーリス・アンドレ4種目のトランペット協奏曲

以前Morleyさんから、未入手盤の情報をメールで戴いていたもの。

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モーリス・アンドレ(Maurice André)のトランペット、テオドール・グシュルバウアー(Theodor Guschlbauer)指揮のバンベルク交響楽団(Orchestre Symphonique de Bamberg)の演奏で、ハイドンのトランペット協奏曲などをおさめたアルバム。他にアンドレのソロで、ハイドン作とされていたオーボエ協奏曲のトランペット版、レオポルド・モーツァルトのトランペット協奏曲、モーツァルトのオーボエ協奏曲をトランペットで吹いたものが収められています。ハイドンのトランペット協奏曲の収録は1971年とだけ記載されています。バンベルク交響楽団の当時の本拠地でのセッション録音でしょうか。レーベルはERATOのなつかしいBONSAIコレクション。

モーリス・アンドレのERATOレーベルに入れたトランペット協奏曲のアルバムは、ながらくパイヤールと入れたものしかないと思っていたところ、ブログの読者のかたよりメールをいただき、このグシュルバウアー盤がある事を教えていただきました。いやいや、先入観とは恐ろしいものです。ERATOのトランペット協奏曲はパイヤール盤とばかり思い込んでいました。

これで4種目のモーリス・アンドレのトランペット協奏曲。これまでに他の3種は取りあげています。

2012/06/09 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・アンドレ/ミュンヘン室内管のトランペット協奏曲
2012/02/28 : ハイドン–協奏曲 : 【追悼】モーリス・アンドレ/パイヤールのトランペット協奏曲
2010/11/05 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・アンドレのトランペット協奏曲

年代的には60年代のパイヤール盤、66年のシュタットルマイヤー盤、そして今日取り上げる71年のグシュルバウアー盤、そして84年のムーティ盤となるわけですが、これまでに取りあげた中では66年のDGのシュタットルマイアー盤の演奏が最も聴き応えがあり、最近の録音であるアンドレ51歳の時のムーティ盤では、一歩引いて指揮者を引き立たせる大人の演奏を聴かせていました。この71年のアンドレ38歳の時のグシュルバウアー盤がアンドレの全盛期演奏とも期待できます。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
オケの音質はすこし古びた響きながら、序奏から突き抜けるようなトランペットの音色が耳をつんざきます。なにやら鬼気迫る迫力を感じます。ソロの入りは抑えていながらもエネルギーがわき出してくる感じ。なによりグシュルバウアーのコントロールするオケが殺気を感じるほどの集中力。冒頭からトランペットとオケのエネルギーのぶつかり合いのような演奏。アンドレならではパワーの乗った輝かしい音色。すこし荒々しくもある迫力満点の演奏。音量を上げて聴くとエネルギーが突進してくるよう。グシュルバウアーは伴奏に徹する気など微塵もなく、アンドレのエネルギーに真っ向勝負を挑むよう。ザクザク切り込んで見事な戦い。ただし、カデンツァに至ると勝負あり。カデンツァのアンドレは余人をよせつけない孤高の吹き上がり、輝き、エネルギーの噴出。全盛期のアンドレの迫力に鳥肌が立ちます。
2楽章のアンダンテ・カンタービレは、ビロードのように柔らかな表情に変わったオケの伴奏にのって、アンドレのトランペットも柔らかで伸びの良い見事な音色を響かせます。所々で異次元の伸びのある見事なトーンを織り交ぜながらも、トランペットという楽器のもつ柔らかな音色をこれでもかと聴かせます。
フィナーレは再びエネルギーのぶつかり合いの予感。グシュルバウアーは神々しい神殿のような建築的な入り。アンドレは余裕たっぷりにトランペットの音を乗せていきます。ぶつかり合いではなくエネルギーが渾然一体となった素晴らしい音楽。トランペットのソロは、そこここにアクセントをつけてアンドレらしい王道のフレージング。徐々に輝かしさとエネルギーを増してクライマックスへ。オケは非常にエネルギッシュながらもようやく落ち着いて伴奏に徹するようになります。最後はトランペットとオケの風圧を感じるような素晴らしいフィニッシュ。

いやいや、参りました。間違いなくこのアルバムがアンドレの代表盤です。わたしが聴いた順番がかなり特殊なものだったのだろうと思います。モーリス・アンドレがなぜこれほどまでに大きな存在だったのか、このアルバムを聴いてようやく合点がいきました。チェロにおけるカザルス、ギターのセゴビアのような存在と言えばいいでしょうか。楽器の限界の中で音楽を創っている多くの奏者とは異なり、楽器の枠を超える大きな音楽をつくって、楽器の魅力の次元を高めるまでの存在です。ハイドンのトランペット協奏曲でもありますが、アンドレの音楽でもあります。やはり、モーリス・アンドレは偉大な人でした。評価はもちろん[+++++]とします。

アンドレさん、昨年2月に亡くなられました。あらためて追悼を。一度コンサートでこの弩迫力に打ちのめされたかった、、、

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tag : トランペット協奏曲 ハイドン入門者向け

アベッグ・トリオ20年ぶりのピアノ三重奏曲集

今日は久しぶりのピアノトリオ。

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アベッグ・トリオ(Abegg Trio)の演奏による、ハイドンのピアノ三重奏曲3曲(Hob.XV:18、XV:23、XV:28)とチェンバロ五重奏曲(XIV:1)、ホルン三重奏曲(IV:5)の5曲を収めたアルバム。ナチュラルホルンはウィルヘルム・ブルンス(Wilhelm Bruns)とティルマン・シャーフ(Tilman Schaerf)。収録は2010年、ドイツ、ヴァイマル(ワイマール)のヴァイマル宮殿内の白いホール(Weißen Saal)でのセッション録音。レーベルは優秀録音で知られる独TACET。

以前聴いたピアノ・トリオのアルバムの出来が素晴らしかったのですが、ハイドンの録音はそのほかにないと思っていました。先日タワーレコード新宿店の店頭にてこのアルバムを見かけ、迷わずゲットした次第です。以前取りあげたアルバムの記事はこちら。

2011/06/03 : ハイドン–室内楽曲 : アベッグ・トリオのピアノ三重奏曲集

以前の録音は1991年の録音ですから、今回の録音の20年前のもの。20年の時が演奏をどう変えたかが聴き所でしょうか。アベッグ・トリオの情報は前記事をご参照ください。メンバーは下記のとおり。

ヴァイオリン:ウルリッヒ・ビーツ(Ulrich Beets)
チェロ:ビルギット・エリクソン(Birgit Erichson)
ハープシコード:ゲリット・ジッターバルト(Gerrit Zitterbart)

今日取り上げるアルバムにはピアノ三重奏曲に加えて、ホルンが活躍する曲が2曲。しかもナチュラルホルンでの演奏ということで、コントロールの難しい楽器からどのような音が聴こえてくるかも注目でしょう。ホルンの演奏者についても触れておきましょう。

ホルンが登場する2曲でナチュラルホルンを吹いている、ヴィルヘルム・ブルンズは1963年、ドイツのオランダ国境に近いグレーヴェン(Greven)生まれのホルン奏者。エッセンのフォルクヴァンク音楽大学でヘルマン・バウマンなどに学び、主にナチュラルホルン奏者として、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、カペラ・コロニエンシス、アムステルダム・バロック・ソロイスツなどで活躍。現在はマンハイム国立劇場のホルン奏者であるとともにマンハイム音楽大学で教職にあるとのことです。当ブログでも以前に取りあげたトーマス・ファイのアルバムでホルンのソロを担当しており、安定したテクニックを披露しています。

2010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号

また、ホルン五重奏曲のみ登場するティルマン・シャーフは、ヘルマン・バウマンとヴィルヘルム・ブルンズに学んだ人とのこと。彼もムジカ・アンティクァ・ケルン、コンチェルト・ケルン、カペラ・コロニエンシスなどの古楽器オケでホルン奏者を努めていた人。現在はヴィルヘルム・ブルンズらとドイツ・ナチュラル・ホルン・ソロイスツという団体での活動がメインとのことです。

Hob.XV:18 / Piano Trio (Nr.32/op.70-1) [A] (before 1794)
まずはピアノ・トリオから。この曲ではフォルテピアノを弾いていますが、楽器は1808年製のJohn Broadwood & Son。残響が程よく乗りながら、鮮明さを失わない録音。流石TACETというところでしょう。いきなり鮮度十分、アクセントがかなりはっきりとした火を噴くようなアンサンブル。クレーメルとアルゲリッチの掛け合いを彷彿とさせるようなもの凄い緊張感。古楽器での演奏でのこれほどのせめぎ合いはなかなか聴かれません。古楽器のダイナミックレンジの枠を超えんばかりのアタックが痛快です。リズムのキレは最高。やはりアベッグ・トリオのキレは健在でした。キレばかりでなく、抑えたところの情感も素晴らしいので、一層キレが引き立ちます。2楽章のアンダンテの深く静かな表情は鳥肌が立たんばかりの美しさ。実に活き活きとゆったりした楽章を演奏していきます。フィナーレでは適度に楽天的な表情を垣間見せ、楽章ごとに鮮明に表情を変えていきますが、それが曲自体の音楽の面白さを鮮明に表しているようなすばらしい説得力。1曲目から素晴らしい完成度に驚きます。ハイドンのピアノトリオの面白さ炸裂の名演奏です。

Hob.XIV:1 / Quintett [E flat] (c.1760)
曲が変わって、今度はチェンバロ、ナチュラル・ホルン、ヴァイオリン、チェロの五重奏曲。チェンバロの繊細な響きとナチュラル・ホルンの織りなす実に趣き深い響き。ブルンズとシャーフは絶妙のコントロール。コントロールの難しいナチュラルホルンを完全に制御。ホルンの響きの美しさと、キッという古楽器独特の音を巧く使ってシンプルな音楽に奥行きを与えています。このアルバムに収められた曲の中では作曲年代が若い頃の作品であり、曲の造りはやはりピアノトリオの成熟した筆致とは差がつきますが、演奏自体も、それを意識してか、素朴な曲の魅力に光を当てるような余裕があります。特にフィナーレの不思議なリズム感が面白い曲です。狩りの音楽でしょうか。ハイドンの実験精神がよくわかる曲ですね。

Hob.XV:23 / Piano Trio (Nr.37/op.71-3) [d] (before 1795)
変わって短調のピアノ三重奏曲。1曲目とは異なり、じっくりと落ち着いた入り。まさに曲調によって表現の方向性をきちんと使い分けているところが見事。だんだん音楽に立体感が出てきて、激しい掛け合いに変化していく予感がします。この期待感はなんでしょうか。音楽の表現の幅が大きいので、情感の微妙な変化をダイナミックに楽しめます。落ち着いた音楽なのに手に汗握る面白さ。まさに室内楽を聴く悦びに満ちた演奏。終盤の深い呼吸と最後の凛々しい盛り上がり。1楽章から神々しささえ漂います。実に深い音楽。
2楽章のアダージョの朗らかなのに耽美的な音楽。ハイドンにはモーツァルトほどの閃きはありませんが、モーツァルトにはこの朗らかな美しさはありません。安心して身を委ねられる響き。この曲のアダージョがこれほど心に刺さる音楽だったとは今まで気づきませんでした。気づけばヴァイオリンもチェロもフォルテピアノも極上のビロードのようなきめ細かい響きになっていました。
フィナーレは夢から覚まされるようにキリッとした音楽に変わります。演奏は寝起きに刺激が強すぎないように、適度な力感で流すようにはじまり、徐々にテンションを上げていきます。音楽のツボを完全に掌握していますね。

Hob.IV:5 Divertimento à tre [flat] (1767)
ホルンとヴァイオリン、チェロの三重奏。このホルンパートは難しそうですね。ここでもブルンズは安定した素晴らしいテクニックで、ナチュラル・ホルンの魅力的な響きを聴かせています。というか、超絶テクニックかもしれません。ホルンを吹けるわけではないので、この曲の難しさはわかりませんが、良く聴くと超絶的な音階をこともなげに吹いていきます。三重奏と声部の少ない音楽ですが、フレーズ一つ一つをクッキリと浮かび上がらせて、曲の面白さを十分に表現しています。

Hob.XV:28 / Piano Trio (Nr.44/op.75-2) [E] (1796)
最後のピアノ三重奏曲。いきなりフォルテピアノの澄みきった境地の演奏。ヴァイオリンの抜けるような高音に、チェロの実に柔らかい表情のサポート。フレーズごとに微妙に変化する多様な表情。ハイドン晩年の作の演奏は、このアルバムで一番無欲の演奏に聴こえます。ただただ音楽自体に語らせるように、デリケートに表情をつけていきます。1楽章は最後をキリッと引き締めるのみ。
2楽章のアレグレットはフォルテピアノの左手のおおらかな表情付けと右手のメロディーの弾き分けが見事。グールドばりのテクニック。中盤からヴァイオリンとチェロが重なっていきますが、張りつめた音楽の切々とした感じが迫ってきます。ふとテンションを下げてさっと終わる変化が素晴らしい。
フィナーレはこの曲でもハイドンの実験精神炸裂。面白いモチーフを発展させながら曲を作っていきますが、その変化の多様性と展開の豊穣さがやはり晩年の円熟を物語っています。やはり後半、すっと力を抜く部分で音楽の深みを感じさせるあたりの演出はアベッグ・トリオならでは。自然に音楽が深まり、味わいも深くなります。

3曲のピアノ三重奏曲の演奏は見事の一言。古楽器、現代楽器を問わず、ピアノ三重奏曲の演奏の理想的なものの一つに数えられるでしょう。間に挟まれたホルンが主役の2曲も見事。ナチュラル・ホルンの美しい音色を存分に楽しめます。もちろん評価は全曲[+++++]です。

当ブログの購読者のコアなハイドンファンの皆様。このアルバムをお持ちでなかったら買うべきです。ハイドンの音楽のすばらしさに溢れた絶対のオススメ盤です。

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キャロル・セラシのフォルテピアノ/クラヴィコードによるソナタ集

3月に入りましたね。しばらく弦楽四重奏曲を取りあげてきましたので、少し雰囲気を変えて。

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キャロル・セラシ(Carole Cerasi)のフォルテピアノとクラヴィコードによる「変奏曲の芸術」とタイトルがつけられたハイドンのピアノソナタ4曲(XVI:48、XVI:40、XVI:19、XVI:42)と「アンダンテと変奏曲」(XVII:6)の5曲を収めたアルバム。XVI:19のみクラヴィコードで、それ以外はフォルテピアノによる演奏。収録はクラヴィコードによる演奏が2009年6月5日、ロンドンの北の街、ハートフォードシャーのプレストン教区教会、フォルテピアノによる演奏が同年6月17日から18日、イギリス西部、ブリストル近郊のダイラム・パークでのいずれもセッション録音。レーベルは英METRONOME。

このアルバムは以前取りあげたクラヴィコード奏者で製作者でもあるデレク・アドラムの演奏を聴いて、クラヴィコードの素晴らしさに開眼し、クラヴィコードの演奏によるハイドンのソナタのアルバムをいろいろHMV ONLINEに注文していたものがようやく到着したもの。全5曲のうちクラヴィコードによる演奏は1曲のみですが、フォルテピアノの演奏とクラヴィコードによる演奏の響きの違いが鮮明に聴き取れ、しかも演奏も極上のもの。古楽器奏者の演奏にはいろいろなタイプがありますが、響きの細部にわたるまで完全にコントロールされた精緻な演奏。あえて言えばインマゼールの演奏に近いでしょうか。しかも録音も非常によく、フォルテピアノとクラヴィコードの音色を存分に楽しむ事ができます。

奏者のキャロル・セラシについて調べておきましょう。オフィシャルサイトはこちら。

Carole Cerasi's Website

キャロル・セラシはセファルディ(中世にスペインとポルトガルに居住したユダヤ人の子孫)とトルコ人を親にもち、スウェーデンに生まれたフォルテピアノ奏者。しかもフランス語環境で育ったという特異なオリジンを持つ人。1982年からロンドンを拠点に活動しています。
11歳でハープシコードの演奏に興味をもつようになり、しばらくしてアントワープのケネス・ギルバートのコースに最年少で参加しています。その後師事したジル・セヴァーズに音楽的に決定的な影響を受け、またグスタフ・レオンハルトやトン・コープマンの薫陶も受けたとのこと。現在はユーディ・メニューイン・スクールのハープシコード講座の教授、ギルドホール音楽学校と王立音楽アカデミーでハープシコードとフォルテピアノの講座の教授として活躍しています。セラシの最初のソロアルバムである、エリザベト=クロード・ジャケ=ド=ラ=ゲール(Élisabeth-Claude Jacquet de la Guerre)のクラブサン曲集は英グラモフォン・アワードのバロック器楽部門賞を受賞して有名になったとのことです。

セラシのアルバムはすべてMETRONOMEレーベルからリリースされていて、このハイドンが8枚目ということになります。

最初の2曲はフォルテピアノの演奏。楽器は1795年頃に造られたウィーンのヨハン・シャンツ(イギリスのバースにあるホルバーン美術館所蔵のもの)で、シャンツといえば、以前にパウル・バドゥラ=スコダのソナタ集で取りあげましたが、ハイドン自身が「シャンツこそ最も優れたフォルテピアノ工房である」と言っている楽器です。

2013/01/13 : ハイドン–ピアノソナタ : ハイドンの時代の響き パウル・バドゥラ=スコダのフォルテピアノ作品集

クラヴィコード目当てで手に入れたアルバムですが、なにやらフォルテピアノの方も気になってきました(笑)

Hob.XVI:48 / Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
適度な残響を伴った鮮明な録音。良く響く部屋で収録されているようです。ワンポイントマイクによる収録のような広大な空間にフォルテピアノが浮かび上がります。楽器の音色はハイドンの言葉がうなずける素晴らしいもの。鮮明なタッチとその余韻が心地よく広がります。この楽器、中低音のしっかりとした音色は、楽器の骨格の堅牢さを感じさせる素晴らしい安定感。キャロル・セラシの演奏はピアノに近いダイナミックさを感じさせながらも古楽器である事を踏まえた節度もあります。ゆったりとしたテンポとフレーズごとにしっかりとの表情をつけていく事で、ハイドン成熟期の詩情溢れる音楽が立ちのぼります。非常におちついた大人の演奏。
2楽章は転がるような速いテンポのパッセージのキレが見事。音楽のメリハリもしっかりついて、躍動感も十分。楽器の響きの隅々までコントロールして、ダイナミクスも楽器のキャパシティー十分に踏まえたもの。音が割れる寸前まで楽器を鳴らし、駆け抜けるような見事な指の回転。1曲目から、相当の実力者とわかる圧倒的な制御力。

Hob.XVI:40 / Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
次も2楽章構成。フレーズのメリハリの付け方が非常にうまく、ハイドンらしい古典の範疇での適度な立体感。一線を踏み越えると台無しになってしまいますので、この辺の音楽性、バランス感覚は確かなものでしょう。訥々と語っていくような絶妙な語り口でメロディーを重ねていきます。
2楽章は前曲と同様、クッキリとしたフレーズと吹き抜けるような速いパッセージが見事な、完璧な演奏。テクニックが確かなことは言うまでもありませんが、テクニックの誇示にならない理性が働き、爽やかな余韻が残る、言うことなしの出来です。

Hob.XVI:19 / Piano Sonata No.30 [D] (1767)
期待のクラヴィコード。音量は落ちますが、フォルテピアノの鮮明な響きに慣れた耳に、いきなり優しい音色がしっとりとしみ込んできます。クラヴィコードは1998年カリン・リヒターのもの(1771年頃に造られたクリスティアン・ゴットローブ・フーベルトのコピー)。フォルテピアノもクラヴィコードもa=415Hzに調律されています。録音会場も異なるため、音色も響く空間も異なります。フォルテピアノが少し遠くに定位していたのに対し、クラヴィコードは近くで弾いているように感じる録音。こちらも録音は見事。何より見事なのは曲と楽器の選択。前2曲がハイドン成熟期である1780年代のものなのに対し、クラヴィコードで弾かれたこの曲は1760年後半とシュトルム=ウント=ドラング期に入らんとする時期のもの。素朴な曲調に素朴な音色がマッチして、実に絶妙な響き。繊細な高音の響き、指のタッチそのままの柔らかいアタック感、張られた弦同士が微妙に響き合う事から生じる精妙さ、そして、限られた範囲で非常に繊細にコントロールされた音量の変化。クラヴィコードの響きの宇宙に引き込まれます。まるで別世界のような繊細きわまりない音楽に飲み込まれてしまったよう。キャロル・セラシはフォルテピアノとはタッチも演奏スタイルも見事に切り替えて、クラヴィコードの繊細な響きに合わせて音楽を創っていきます。自室で音楽を語り聞かされるような親密さです。デレク・アドラムのキレのよい語り口のクラヴィコードも良かったんですが、このセラシの精妙な響きに引き込まれるようなクラヴィコードも絶妙です。

Hob.XVI:42 / Piano Sonata No.56 [D] (c.1783)
フォルテピアノの鮮明な響きにもどり、夢から覚めたよう。この曲の刷り込みはピアノを色彩感豊かに響かせたブレンデル盤ですが、フォルテピアノでも素晴らしいな色彩感が得られることがわかります。ハイドンのソナタのなかでも格別濃い詩情が漂う名曲ですが、現代ピアノによる演奏に慣れた耳にも、フォルテピアノによる演奏の方が説得力があると思わせる素晴らしい演奏。最初の2曲でも触れましたが、フレーズひとつひとつの描き方が非常にうまく、落ち着いた古典の品格もある素晴らしい演奏。3楽章を通して、非常に安定感があり、セラシによる極上の演奏をただただ楽しむべき演奏という印象です。もはやこれを超える演奏は考えられないような神憑ったものと聴こえます。

Hob.XVII:6 / Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
最後に名曲でアルバムを締めます。「変奏曲の芸術」とのタイトルをつけられている意味がここに来てはっきりわかりました。一つ一つの変奏の見事な描き分けの積み重ねが描く音楽の豊穣さがこのアルバムのテーマであったわけです。この最後の大曲でその表現を極めようということですね。これまでの曲と同様、丁寧なフレージングでじっくりと曲を描いていくばかりではなく、後半予想外にテンポを上げてダイナミックスさと荘厳な躍動感を極めようと言う意図まで見えてきて、セラシの音楽の大きさを思い知ることになりました。この人、只者ではありません。

初めて聴くキャロル・セラシのハイドンのソナタ集。クラヴィコードへの興味からたどり着いたアルバムでしたが、クラヴィコードの演奏のみならず、フォルテピアノの演奏も恐ろしく冴えたものでした。冒頭響きの細部までコントロールされているところをインマゼールの演奏に近いと例えましたが、レビューを通して得た印象は、ブラウティハムのダイナミックさをもちながらもより古典のバランスを踏まえた演奏であり、シュタイアーのような自在な表現力を持ちながら、過度な踏み込みを避けるバランス感覚を持ち合わせるなど、フォルテピアノの演奏者として、特にハイドンの演奏ではこれまで聴いた素晴らしい演奏に勝るとも劣らない素晴らしいものだと感じました。今まで全く知らない人ですが、要注目です。ハイドン以外にリリースされたアルバムも聴いてみたくなりました。評価はもちろん[+++++]とします。

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超名演盤発見! マルク・デストリュベ/パシフィック・バロック管弦楽団のヴァイオリン協奏曲集

今日は久しぶりにマイナー盤に戻ります。先日オークションで見かけて手に入れたもの。

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TOWER RECORDS

マルク・デストリュベ(Marc Destrubé)のヴァイオリン、パシフィック・バロック管弦楽団(Pacific Baroque Orchestra)の演奏で、ハイドンのヴァイオリン協奏曲3曲(Hob.VIIa:4、VIIa:1、VIIa:3)を収めたアルバム。収録は2001年11月26日から28日、カナダのバンクーバーの聖フィリップ英国国教会でのセッション録音。レーベルは加ATMA classique。

久々に所有欲を満たす、いいジャケット。ヴァイオリニストのマルク・デストリュベが気さくにふだん着で微笑む姿の写真をあしらった、実にカジュアルな作り。なぜか海辺の岩の前で写っているように見えますが、こればバンクーバーの風景でしょうか。こうゆう何気ないジャケットのアルバムに名演が多いんですね。本当です。

演奏者のマルク・デストリュベもパシフィック・バロック管弦楽団も全くはじめて聴く人。一度も鞘から出したことのない刀の鞘を抜く時のような緊張感が漲ります(笑)

いつものように演奏者の情報を調べておきましょう。彼のサイトがありました。

Marc Destrubé - violinist

マルク・デストリュベはカナダのヴァイオリニスト。ソリストや室内楽奏者、オケのコンサートマスター、指導者でもあります。調べてわかったんですが、古楽器演奏の花形として活躍してきた人。生年は記載されていませんが師事したのはシャーンドル・ヴェーグやアマデウス弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンのノーバード・ブレイニンら。現代楽器による演奏も、古楽器による演奏もこなします。特に古楽器の分野では有名どころにいろいろかかわっています。カナダのラルキブデッリにヴァイオリニストとして録音に参加しているのをはじめとして、ヨス・ファン・インマゼール率いるベルギーのアニマ・エテルナのモーツァルトのピアノ協奏曲全集へ参加、またフランス・ブリュッヘン率いる18世紀オーケストラの副コンサートマスターと名の知れた古楽器オケにずいぶんと参加している人でした。腕は確かなのでしょう。このアルバムのオケであるパシフィック・バロック管弦楽団は彼が設立したオケで、カナダのバンクーバーを拠点にしています。

このアルバム、いろいろ調べながら聴き始めましたが、聴きすすむうちにただならぬ演奏であることがわかりました。

Hob.VIIa:4 / Violin Concerto [G] (c.1765/70)
冒頭から華やかな古楽器オケの音色が部屋に満ちあふれます。様々な一流古楽器オケに参加してきたデストリュベが自ら設立したオケだけに、その音色はどの古楽器オケよりも素晴らしいものに聴こえます。18世紀オーケストラの迫力とアニマ・エテルナの瑞々しさ、ラルキブデッリのソロの見事さを併せ持って、なおかつそれに色彩感を加えたよう見事な音色。録音は教会での録音らしく残響は豊かですが、直接音重視なため鮮明さは十分です。デストリュベのコントロールはハイドンのヴァイオリン協奏曲の華やかさを生かしながらも自然なソノリティを生かしたもの。ヴァイオリンの音色は古楽器独特の高音域の美しさと木質系の柔らかな中音域に特徴がある落ち着いたもの。カデンツァはデストリュベ自らのもの。派手さはありませんが、ヴァイオリンの音色の美しさを知り尽くした人のもの。
1楽章からアダージョに移ると、テンポの自然さを聴いて、やはり指揮者というよりヴァイオリニストがコントロールしているのだとわかる、音楽を豊かに聴かせようと言う視点の演奏だとわかります。弦楽器の表情、色彩感はは非常に豊かで、ヴァイオリニストならでは。古楽器の美しい音色を最大限に発揮させようとしているのがよくわかります。起伏も非常に大きく、またオケのそれぞれの奏者の息も完璧に合って、見事なもの。カデンツァの美しさは鳥肌が立たんばかり。特にアメリカ系のオケに聴かれるテクニック重視のキリッとした演奏とはことなり、ヨーロッパ系のしっかりとした情感が伴います。
フィナーレはデストリュベのヴァイオリンの自然さが際立ちます。フレーズのキレは抜群にいいのですが、キレの良さを強調する演奏ではなくそれを超えた自然さ。オケも同様で腕利き揃いであることがわかります。1曲目からあまりの素晴らしさにノックアウト。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
1曲目と同様、演奏の精度、表現の幅、音色の美しさがいきなり際立ち、やはり部屋中に華やかな響きが満ちあふれます。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲に対して今一マイナーな存在のハイドンのヴァイオリン協奏曲ですが、この演奏を聴くととモーツァルトに勝るとも劣らない作品であることがよくわかります。また、有名なチェロ協奏曲がチェロという楽器の響きの真髄をふまえたつくりになっているのと同様、この曲がヴァイオリンの華やかかな響きを如何に生かした曲である事もよくわかります。ハイドンのヴァイオリン協奏曲の演奏の新次元を切り開くような、素晴らしい表現力。曲ごとに演奏にムラがあるようなことはなく、抜群の安定感。特にデストリュベのテクニックと存在感は見事。
圧巻はピチカートに乗ったヴァイオリンの名旋律が有名なアダージョの美しさ。デストリュベのヴァイオリンは非常にデリケートなニュアンスを余すところなくつたえ、この曲の美しさの極北を示すよう。教会に響き渡るヴァイオリンの凛とした音色。控えめながら起伏に富んだオケのピチカート。この演奏を聴くとデストリュベがソリストとしてもっと活躍していてもおかしくないと思わせます。磨き抜かれた純粋無垢な音楽に酔いしれます。
フィナーレはこちらの目を覚ますように、再びキレのいい華やかな響きが戻ります。デストリュベのヴァイオリンとオケのヴァイオリンパートが拮抗するような展開。ソロが浮かび上がるところもあれば、飲み込まれそうなほどオケが踏み出すところもあり、協奏曲の多様な面白さが味わえます。

Hob.VIIa:3 / Violin Concerto "Merker Konzert" 「メルク協奏曲」 [A] (c.1765/70)
アルバムを聴いているのに最後の曲ということで、名残惜しい気持ちに。ハイドンのヴァイオリン協奏曲をこれほどの聴き応えある演奏で聴く充実感。以前とりあげたカルミニョーラ盤はカルミニョーラの斬新なセンスが光る名盤でしたが、この演奏はより曲自体に近い視点で自然な演奏というタイプの極上のもの。ハイドンのヴァイオリン協奏曲の古楽器による定番としても良いと思います。曲ごとの出来を問うような演奏ではなく、デストリュベがハイドンの曲に込められた素晴らしさをを我々に伝えてくれているような演奏。この曲はソロの部分が比較的多く、デストリュベの語るような素晴らしいヴァイオリンの響きをより深く味わえます。
アダージョもさらさらと流れるフレーズを素晴らしい色彩感としっとりとしたフレージングで磨き上げていきます。フィナーレまで含めて、デストリュベによってハイドンの書いた音楽自体が蘇るよう。演奏者の個性や狙いではなく、ハイドンによって書かれた音楽自体が流れるようなすばらしい演奏でした。

オークションの写真をみて、このアルバムは手に入れるべきと即断しただけのことはありました。ジャケットで微笑むデストリュベ、ここにこそハイドンの音楽があるのだという自信からでた、本当の微笑みでした。様々な一流オケで活躍してきたデストリュベが作り上げたオケとの素晴らしいアルバム。ハイドンのヴァイオリン協奏曲の決定盤と断じます。最初の一音をならしたときの驚きは、以前取りあげた、シュミット=ゲルテンバッハ/ワルシャワ・シンフォニアの悲しみの時と同様の衝撃に近い驚きでした。なぜかジャケットの佇まいも似ています。そう、知る人ぞ知る素晴らしいアルバムのジャケットはさりげないのです。おそらく、真の実力者はこのさりげなさを愛する謙虚な人なのだろうと勝手に想像しています。評価はもちろん全曲[+++++]です。皆さん、是非手に入れてください。あいにく取り扱いはTOWER RECORDSのみですが、、、

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【新着】エルサレム四重奏団のOp.20のNo.5、鳥、Op.76のNo.5

昨年のH. R. A. Awardの室内楽部門に輝いたエルサレム四重奏団のもう一枚のアルバムがHMV ONLINEから先日到着。当ブログを読んでこのアルバムを注文した方も絶賛するアルバム。maro_chroniconさん、湖国JHさんに遅れを取ってしまいましたが、当ブログも追いつきます(笑)

JerusalemQ20_5.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

エルサレム四重奏団(Jerusalem Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.5、Op.33のNo.3「鳥」、Op.76のNo.5の3曲を収めたアルバム。2008年9月、ベルリンのテルデックススタジオ(Teldex Studio)でのセッション録音。レーベルはharmonia mundi。

2012/11/26 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : エルサレム四重奏団の「ひばり」、「五度」

エルサレム四重奏団については前の記事をご参照ください。わたしも前の記事のアルバムに出会ってその素晴らしさを知った口。最近聴いたハイドンの弦楽四重奏曲の中では抜きん出て素晴らしい演奏だといえるでしょう。前のアルバムが2003年の録音なのに対し、このアルバムは2008年と、ちょうど5年後の録音。以前はレギュラー盤としてリリースされていたようですが、harmonia mundiの常套策で、ちょっと値段を落としたシリーズとしてこの12月に再発売されたもの。ということで、当ブログで取りあげるアルバムとしては珍しく入手しやすいもの。

若手メンバーによる演奏ですが、素晴らしい前アルバムに対し、5年間でどれほどの成熟がみられたのかが、聴きどころでしょう。前振りは短めにして、早速レビューに入りましょう。

Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
Op.20のなかでも短調ではじまる独特の入りですがかなり軽目の入りから一気に盛り上がって、短調なのに色彩感豊かで流麗な入り。表情は穏やかでも音楽が溌剌とはずむのがわかります。5年の経過は余裕となって洗われています。キレのいいリズムと色彩感豊かな弦の響きは前アルバムそのままですが、演奏に一層の落ち着きが聴かれます。前アルバムできかれた緊張感はすこし薄れ、円熟味を増したというところ。
2楽章のメヌエットからフレージングのメリハリがはっきりとしてきて、第1ヴァイオリンのアレクサンダー・パヴロフスキーの絶妙な弓さばきによる美音が切々と語るようになります。やはり秀逸な弱音域のコントロール。
つづくアダージョに入ると各パートの自在さが際立つようになり、アンサンブルの面白さが一段上がります。ここにきて前アルバムの緊張感がつたわるように。温まって調子が上がってきましたでしょうか。非常にリラックスして互いの音をよく聴いた絶妙なアンサンブル。こちらもぐっと身を乗り出して聴き始めます。
フィナーレはフーガ。各楽器の良く響く美しい音色の織りなす綾の美しさとハイドンの書いた変奏の巧みさに耳を奪われます。クァルテットの表現のダイナミックレンジもぐっと上がり、楽器間の迫力あるせめぎ合いの面白さが際立ちます。1曲目だけに徐々に本領発揮といったところでしょう。

Hob.III:39 / String Quartet Op.33 No.3 "Vogelquartett" 「鳥」 [C] (1781)
Op.33らしい明るくクッキリとした旋律を鮮やかな弓さばきで軽々と奏でていきます。ヴァイオリンをはじめとする各楽器の非常に丁寧なデュナーミクのコントロールは流石。エルサレム四重奏団のキャラクターと曲が見事に一致。軽やかで鮮やか、そしてクッキリとしたメロディー。突き抜けるようなヴァイオリンの高音の美しさ。やはり4人の音楽性がピタリと一致して、一体となった素晴らしい音楽が流れます。このセンスというか音楽性がエルサレム四重奏団の凄いところでしょう。音が消え入るところのそろい方は鳥肌が立つような瞬間。
2楽章に入っても緊張感はそのまま。弱音の絶妙なコントロールによる入りから、鳥のさえずりのようなヴァイオリンの素晴らしいメロディを経て、再び絶妙な弱音。
3楽章は流麗なアダージョ。4人それぞれが美しいメロディー弾きながら、その重なりが醸し出す面白さもつたわる絶品の楽章。つづくフィナーレ速いパッセージのキレ具合が尋常じゃありません。それでいて音楽がしっかりながれていて、決してテクニックの誇示に聴こえないところが流石。軽々とこなす余裕が素晴らしい。

Hob.III:79 / String Quartet Op.76 No.5 [D] (1797)
ハイドンの音楽の円熟を感じる素晴らしい入りからの展開。先の鳥も良かったんですが、このOp.76は神憑った演奏。キレのいいエルサレム四重奏団の各楽器が鳴りまくりながら、この曲の精妙な音楽を活き活きと描いていきます。1楽章は息をつく間もないほどの緊張感。
と思ったら2楽章のラルゴはさらに凄い演奏。弦楽四重奏の演奏でこれほどの深みを表現できるとは。チェロも素晴らしい安定感。フレーズのコントロールは流麗かつダイナミックかつ清浄。ハイドンの音楽がこれほどの高みに至っていたということををこの演奏によって気づかされたというほどの凄さ。スクロヴァチェフスキのブルックナーの荘厳なアダージョと深さでは負けていないほどのもの。圧倒的。
堂々と自在なメヌエットを経て、クライマックスのフィナーレ。鳥のフィナーレ同様、速いパッセージの鮮やかのキレをちりばめながらメロディーをやり取りして音楽を織っていきます。ヴァイオリンの高音のキレは絶品。超鮮明な録音も手伝って、ハイドンの機知の宝庫のフィナーレを畳み掛けるように奏でていきます。最後は余韻をたのしむようにちょっとリズムを練って終わります。

期待して手に入れたアルバムですが、期待以上の出来です。2曲目の鳥と3曲目のOp.76のNo.5が素晴らしいのですが、特に3曲目は圧倒的な素晴らしさ。エルサレム四重奏団、凄すぎます。たった4本の楽器の奏でる音楽ですが、その豊かさ、深さ、そして楽しさはハイドンの音楽の真髄をつくもの。この演奏はハイドンにも聴かせて上げたかったですね。ハイドンの生きていた時代にこれほどの洗練された演奏はなし得なかったでしょうから。1曲目も悪くはありませんが、特に前半はアルバムの前座なのでしょうね。それも許せてしまう後半2曲の圧倒的な出来です。評価は1曲目が[++++]、他はもちろん[+++++]です。ハイドンの弦楽四重奏曲のすばらしさを伝える真の名盤です。皆様手に入れましょう。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.20 弦楽四重奏曲op.33 弦楽四重奏曲Op.76 ハイドン入門者向け

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Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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