【新着】ディートハルト・ヘルマン/南西ドイツ放送交響楽団のハルモニー・ミサ

今日は最近復刻されたちょっと古めのミサ曲の録音。

HellmannHarmonie.jpg
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ディートハルト・ヘルマン(Diethard Hellmann)指揮の南西ドイツ交響楽団(Sinfonieorchester de Südwestfunks)、マインツ・バッハ合唱団(Bachchor)の演奏によるハイドン最後のミサ曲ハルモニーミサを収めたアルバム。HMV ONLINEから最近届いたもの。収録は1981年1月29日~31日、ドイツのバーデン=バーデン・スタジオでのセッション録音。ドイツのProfilレーベルのアルバムですが元々CALIGレーベルの音源のようです。ソロは下記のとおり。

ソプラノ:バルバラ・マルティヒ=テュラー(Barbara Martig-Tüller)
アルト:リア・ボーレン(Ria Bollen)
テノール:アダルベルト・クラウス(Adalbert Kraus)
バス:クルト・ヴィトマー(Kurt Widmer)

ディートハルト・ヘルマンは旧東ドイツライプツィヒ近郊の街グリンマに1928年に生まれた人。バッハの研究者、スペシャリストとして知られた人でしょうか。ライプツィヒで教会の合唱団やオルガン奏者などを経験し、1950年に国際バッハコンクールのオルガン部門で優勝。1955年からマインツのキリスト教会の合唱団を指揮し、その合唱団が1965年にマインツバッハ合唱団と改名したのがこのアルバムの合唱団。1974年ミュンヘン音楽大学学長及び国際バッハ協会会長に就任し、バッハ・フェストの総監督、国際バッハコンクールの審査員など歴任するなどまさにバッハ界の重鎮でした。ヘルマンは1999年に亡くなっています。

ヘルマンは日本のカンタータ・ムジカTOKYOの指導者としても活動していたようですね。

カンタータ・ムジカTOKYO

そのバッハのスペシャリストによるハルモニーミサは如何なものでしょうか。

Hob.XXII:14 / Missa "Harmoniemesse" 「ハルモニーミサ」 [B flat] (1802)
キリエ
実にゆったりとしたテンポで入ります。滔々と流れる大河のごときキリエ。スタジオでの収録ですが、教会で録られているようにゆったりした響き。ハイドンの最晩年のミサ曲を澄み切った無欲の心境で、ただただ雄大に演奏するという姿勢でしょう。フレーズごとに表情をつけていくというようなことは感じられず、ある意味非常にオーソドックスな演奏。その結果ハイドンの書いた曲の名旋律をじっくり味わうことができます。キリエの終盤はさらにスピードダウンして足取りが止まりそうになるほど。

グロリア
同様のテンポで来るかと思いきや、グロリアの冒頭はなんと快速テンポで来ました。ソプラノのマルティヒ=テュラー響きが豊かな艶のある声。ずしんと腹にくる強音でアクセントをつけながらヴァイオリンの刻む音階が痛快に決まります。
中盤はテンポを戻してアルトのボーレンのゆったりした歌からはじまります。こちらも独特の体に響く声。続いてソプラノが引き継ぎ一段鮮明な良く通る声で落ち着いた歌唱。オケもじっくりとした伴奏に徹します。続くテノールのクラウス、バスのヴィトマーがからみ、コーラスとオケのオケによる荘厳な聴き所へ。再びテンポをぐっと落として聴かせます。ヘルマンのコントロールは聴き所のテンポぐっと落としてじっくり描くのがポイントでしょう。
終盤は一貫してじっくりした演出。テンポは揺らさず、自然な範囲いっぱいにデュナーミクをコントロールしながら迫力を十分、力感十分な演奏。ヘルマンの好みが一番でた部分かもしれません。

クレド
クレドの導入もグローリアそのままの覇気をたもち録音スタジオを幸福な響きで満たします。非常に自然な演奏ですが良く聴くと各フレーズにクッキリと表情をつけて活き活きとした推進力を感じさせるのは流石教会音楽のスペシャリストならでは。中盤の静謐な曲想に徐々に加わるコーラスの厚い響き。終盤は曲想が次々と変化するハイドンのこの曲に与えた変化を楽しむべき部分。曲想の変化に合わせてしっかりフレーズの変化をつけて構成感を保つあたりは流石なところ。

サンクトゥス
ハルモニーミサで一番美しい瞬間。天上から一筋の光が差すように静寂にコーラスのメロディーが置かれていきます。ティンパニが一振りずつ楔を打ち、弦楽器が大きな流れを描いていきます。

ベネディクトゥス
駆け抜けるそよ風のような曲。絡み合うソロとそれを支えるヴァイオリンを中心とした弦楽器の音階のキレが聴き所。

アニュス・デイ
ハイドンの一連の6曲のミサ曲の最後の曲の最後を飾る曲。ゆったりした序奏を突き破るようなファンファーレから最後のクライマックスに向けて盛り上がります。金管楽器が大活躍。

導入部は古典的な雄大な演奏を思わせる感じですが、聴き進めるうちに結構きっちりメリハリをつけ、古典的ながら踏み込んだ表現をみせるようになりました。ハイドン最後のハルモニーミサの雄大かつ深遠な感じも良く表現されていて、力感ばかりにたよらず深みもよく出ています。30年以上を経て復刻されるべき価値のある演奏でしょう。評価は[++++]としました。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ハルモニーミサ

【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

お盆の特集でミサ曲などの教会音楽を取りあげようというシリーズの第二弾。

JansonsHarmonieMass.jpg
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マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のバイエルン放送交響楽団とバイエルン放送合唱団の演奏で序曲(Hob.Ia:7)、交響曲88番、ハイドンの最後のミサ曲、「ハルモニーミサ」の3曲を収めたアルバム。ソロはソプラノがマリン・ハルテリウス(Malin Hartelius)、アルトがジュディス・シュミット(Judith Schmid)、テノールがクリスティアン・エルスナー(Christian Elsner)、バスがフランツ=ヨセフ・ゼーリヒ(Franz-Josef Selig)。2008年10月7日、ドイツ東部のチェコとの国境近くの街、ヴァルドザッセンのバシリカでのライヴ録音。今日は特番ゆえ、ハルモニーミサのみ取りあげます。

ヤンソンスはウィーンフィルのニューイヤーコンサート振るなどメジャーな存在ゆえ皆さんご存知の指揮者でしょうが、いつものようにちょっと調べておきましょう。1943年、バルト三国ラトビアの首都リガ生まれ。父はレニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者を務めたアルヴィド・ヤンソンス。レニングラード音楽院でピアノ、ヴァイオリン、指揮を学び、その後ウィーン国立音楽アカデミーでスワロフスキーに師事、またザルツブルクでカラヤンに師事したとのこと。1971年カラヤン国際指揮者コンクールで2位となり、同年レニングラード・フィルを指揮してプロ・デビューを果たします。その後ムラヴィンスキーの助手としてレニングラードフィルの複式者を務めた後、オスロ・フィルハーモニーの首席指揮者、ロンドンフィルの首席客演指揮者、ピッツバーグ交響楽団の首席指揮者、2003年にはこのアルバムのオケであるバイエルン放送交響楽団の首席指揮者と数々の名門オケのトップに着きます。2004年からはアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の常任指揮者も務めるようになり、ヨーロッパの代表的な指揮者といってもよい存在になってます。

ヤンソンスはオケを柔らかく鳴らしきる独特の魅力をもった指揮者。今の指揮者ではあまりいないタイプの指揮者ですね。このアルバムは同じ日の収録のDVDがリリースされているので映像が好みの方はそちらをご覧いただいてもいいと思います。

ハルモニーミサはこれまで2回取りあげていますので、曲の紹介はそちらの記事をご覧ください。

2010/12/30 : ハイドン–声楽曲 : ヤーノシュ・フェレンチクのハルモニーミサ
2010/10/07 : ハイドン–声楽曲 : アーノンクールのハルモニーミサ

Hob.XXII:14 / Missa "Harmoniemesse" 「ハルモニーミサ」 [B flat] (1802)
石造りの教会の高い天井に響き渡る長い響き。ヤンソンス独特のきめ細やかなデュナーミクがコントロールされた柔らかい響き。冒頭のキリエは確信的なコントロールで生み出された穏やかな表情。各声部それぞれが磨き込まれているようすがうかがえ、トータルな響きには一体感がある自然ながら緻密な演奏。このようなところがヤンソンスの人気につながっているのでしょう。豊かな音楽なのに心情は鏡のように澄み渡る水面のような不思議な感覚。音楽から昇華される祈り。

つづくグローリアに入り、オケの推進力が漲りはじめます。アクセントを鋭角的につけることはなく、すべてのアクセントが絶妙に面取りされて音楽を艶やかにしています。またメロディーラインの表現上、音を切り気味につないでいくことで変化をつけフレーズをわかりやすく描いていきます。中間部はソロが大活躍。ソプラノのハルテリウスは独特の響きを感じさせる声。高音の伸びと美しいヴィブラートが聴きどころ。途中から4声が絡み合う素晴らしいアンサンブル。後半は再び響きのうねりに身を任せるだけのような音楽。次から次へと襲ってくるコーラスの波。ここでもヤンソンスはきめ細かくフレーズと音量を絶妙にコントロール。

クレドの出だしは特徴的なリズム感を基調とした曲。前曲同様間にソロ中心の曲を置いて最後はコーラスの波が襲ってきます。

サンクトゥスは静寂からコーラスが浮かび上がる絶妙な曲想。ヤンソンスのコントロールは人工的な感じがするほど磨き込んだものですが、不思議と穏やかな自然さを感じさせるもの。ハイドンの音楽というよりやはりヤンソンスの音楽という印象が強いですね。続くベネディクトゥスはすこし浮き足立った感じを巧くだして変化をつけます。ささっとこなす感じが新鮮。そして最後のアニュス・デイは天上で小鳥が遊ぶような趣の曲。最後はファンファーレを皮切りにオケとコーラスが最後のクライマックスを盛り上げます。最後までオケはヤンソンスの的確なコントロール下で巧みに柔らかい音響による感興を表現。熱くたぎるような音響ではなく、ほのかな暖かさを感じるような盛り上がりという感じ。終始ヤンソンス色の強い演奏です。最後は響きを楽しむ人と拍手をする人が半ば。

マリス・ヤンソンスのハルモニーミサ。豊かな響きと巧みなコントロールから浮かび上がる暖かい響き。ハイドン最後の最大編成のミサ曲をヤンソンス色で表現。一聴すると音楽性豊かなほのぼのとした演奏、ただし良く聴くと非常に個性的な演奏です。自然な演奏が好きな私ですがこの演奏はきらいではありません。ちなみにハルモニーミサの前に置かれた88番も基本的に同様の傾向の演奏なんですが、こちらはちょっと人口的なコントロールが鼻についてしまうような印象をもちました。ミサ曲故ヤンソンスのコントロールの個性的な部分が目立たないということなんじゃないかと思ってます。評価は[+++++]をつけます。音楽の印象は非常に微妙なところがキモになるという例でしょう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ハルモニーミサ ライヴ録音 おすすめ盤

ヤーノシュ・フェレンチクのハルモニーミサ

風邪が治らず喉が痛いですね。仕事の心配もありませんので今日はのんびりとCDラック掃除といきましょう。今日手に取ったのは、ハイドン最後のミサ曲。

FerencsikHarmonie.jpg
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ヤーノシュ・フェレンチク(János Ferencsik)指揮のスロヴァキア合唱団と管弦楽団の演奏で、ハイドンの最後のミサ曲「ハルモニーミサ」(XXII:14)。ソロはソプラノがイロナ・トコディ、コントラアルトがクララ・タカーチ、テノールがデニス・グリヤーシュ、バスがヨーゼフ・グレゴル。録音年やロケーションが記載されていませんが、Pマークが1982年ということで、このアルバムの初出は1982年ということになります。

このアルバムは最近入手したもの。ハルモニーミサは流石に名曲だけあって、良い演奏も多いんですが、今日とりあげたフェレンチク盤は、いつもメールをいただく横浜のYさんから薦められたのと、フェレンチクといえばハンガリーの大御所でいわば本場ものということで、いつかはフェレンチクの演奏を取り上げたいと思っていたため。

フェレンチクについてちょっと調べると、1907年にブダペストに生まれたハンガリーの指揮者。1984年に亡くなっているんですね。若い頃はブダペストの音楽院でオルガンと作曲を学び、20日でハンガリー国立オペラのリハーサル指揮者として登用されたとのこと。その後1930~31年にバイロイトでトスカニーニの助手を務めたりしてキャリアを磨き1930年代後半にはハンガリー国立オペラの首席指揮者となり、ブダペスト歌劇場やハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団、ブダペストフィルハーモニー管弦楽団など、ハンガリーの主要な歌劇場やオケのポストを歴任。戦後1948年から50年にはウィーン国立歌劇場の主席客演指揮者に就任。また、バルトークやコダーイなどとも親交があり、彼らの音楽の演奏者としても有名なわけですね。

ハンガリーと言えば、ライナー、セル、オーマンディー、フリッチャイ、ショルティ、ケルテスなど名指揮者を多く排出する国ですが、彼らの名声の前に少し影がうすいというのが正直なところでしょう。ハンガリー国内の仕事を多くこなしてきたためなんでしょうね。

ハルモニーミサはハイドン最後のミサ曲で、天地創造や四季よりもあとのハイドン70歳を迎えた1802年の作曲。初演は1802年9月8日。エステルハージ公爵夫人の命名日の祝祭のため、貴族などを招待した演奏会で演奏されたとのこと。ハイドンのミサ曲の中でも最も大きな構成のオーケストラと4名の独唱、4声の混声合唱のための曲。ハルモニーミサの呼び名は、このミサ曲で管楽器の編成が最大級となっていることからつけられたニックネームとのこと。70歳のハイドンが残る力を振り絞って書いた傑作ミサ曲という位置づけでしょう。

さて、肝心の演奏です。

冒頭のキリエ。フンガロトン独特の録音の味を感じる冒頭の一音。ゆったり堂々として、一切の小細工なく、大音響のオケと合唱の塊が押し寄せます。冒頭から独唱の艶やかな声に圧倒されます。大音響の大迫力の魅力をたっぷり楽しめます。主題を繰り返すところで再度響き渡る音の塊! 繰り返される大波と余韻。

続くグロリアは3部構成。最初はソプラノのソロの艶かしい声色が魅力的。大規模オケの迫力によって押し出される演奏が続きます。相変わらず、落ち着いたテンポでゆったりと曲を進めていくフェレンチク。音量をあげるところでちょっとテンポを落とすことで迫力を増す感じがいいですね。中間部はコントラアルトのソロから。こちらも艶やかなソプラノに似た声ですが、低音部のふくよかな響きが特徴的。ちょっと陰のある美しい旋律をソプラノ、テノール、バスとつないでいきます。コーラスとオケの響きに飲み込まれて、混沌とした大音響に。最後はコーラスとオケが沈み込んで終わります。
終結部。ソロが今までのメロディ-を回想するようなメロディーを歌って最後はアーメン。

3曲目はクレド。ライナーノーツではトラックが次の曲と別れているんですが、実際のCDではトラックは一つにまとめられた13分近い大曲。開始からずっとコーラスがハイテンションで歌い続ける曲。途中にある男性2声の絡む美しいフレーズにはっとさせられます。続いて静かな曲調に変わり、ソプラノの美しいソロをゆったり楽しむ部分を経て、ファンファーレとまたもコーラスの渦に巻き込まれます。最後はフーガのような繰り返すメロディーに呑まれて終了。

4曲目はサンクトゥス。素晴らしい響きの洪水から一転透明感溢れるコーラスのハーモニー。3分少々の曲ですが大迫力の音響。

5曲目はベネディクトゥス。オケの変化に富んだメロディーからコーラスが重なり、千変万化するメロディーと響き。ソロ、オケ、コーラスが次々の変化する曲想を順番に奏でていきます。曲調が次々と変わりますが、フェレンチクの演奏は印鑑したテンションを保ちます。

最後のアニュス・デイは木管のアンサンブルにのって、各独唱の精妙なアンサンブルが加わります。ぐっと心にしみるメロディーラインが続きます。最後にかかって、ファンファーレとともにオケとコーラスが爆発。名残を惜しむようなメロディーが続いたあと、ふたたびファンファーレとともにオケとコーラスの大波。クライマックスの爆発を経て終了。

フェレンチクのハルモニーミサは、大規模オケの魅力を存分に味わえる、大迫力の演奏。本場物のハイドンは小細工なく曲に素直な演奏でした。評価はやはりコントロールが大味な分減点せざるを得ないでしょう。[++++]としておきます。音楽自体は十分濃いものです。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ハルモニーミサ

アーノンクールのハルモニーミサ

今日もう一枚はアーノンクールのハルモニーミサ。

HarnoncourtHarmonie.jpg

手元の盤は上のアルバム。以前バラでリリースされていたものです。

HarnoncourtMasses.jpg
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こちらは現行盤のミサ曲を集めた6枚組。こちらを手に入れればアーノンクールのハイドンのミサ曲の録音はすべて手中にできます。廉価なので、今手に入れるならこちらでしょう。

アーノンクールの指揮によるウィーン・コンツェントゥス・ムジクス、アーノルド・シェーンベルク合唱団の演奏。収録曲目はハルモニーミサ、カンタータ「今いかなる疑いが」XXIVa:4、テ・デウムXXIIIc:1の3曲。ソロはソプラノがエヴァ・メイ(Eva Mei)、コントラルトがエリザベス・フォン・マグヌス(Elisabeth von Magnus)、テノールがヘルベルト・リッペルト(Herbert Lippert)、バスがオリバー・ウィドマー(Oliver Widmer)という陣容。1998年7月、オーストリア南部のグラーツのそばの町シュタインツのPfarrkircheという教会での録音。

最近はアルバムのレビューの際には録音場所を調べるようにしています。何となく録音が行われたロケーションも演奏の出来に関係ありそうな気がしているからと、日本という辺境の地でハイドンを聴くということで、ヨーロッパの文化、伝統などにつながる情報をなるべく得ようと思うからです。
今回シュタインツを調べると、シュタイリアルテ(Styriarte)という音楽祭の存在がわかりました。今でもアーノンクールがメインの演奏を担当する音楽祭です。アーノンクールはすぐそばのグラーツの生まれとのことで、合点がいきました。

このシュタイリアルテのウェブサイトにはなんと日本語の解説もアップされているので、リンクを張っておきましょう。

STYRIARTEのウェブサイト(英文)
シュタイリアルテの日本語案内
録音場所であるPfarrkircheの写真

上記リンクの写真を見ると、素晴しい内装の教会であることがわかります。歴史の重みが伝わりますね。

さて、肝心の演奏です。

まずはハイドン最後のミサ曲、ハルモニーミサ。アーノンクールの声楽曲は先日天地創造の新盤を取り上げました。記事は下記をご参照ください。

ハイドン音盤倉庫:灰汁の抜けたアーノンクールの天地創造新盤

この録音は天地創造新盤の2003年から5年前の1998年の録音。天地創造がアーノンクールのトレードマークであるくどい小節と鋭角性が抜けて穏やかな演奏になったものの、やはりはっきりとアーノンクールとわかる個性的な演奏であり、その個性が評価上のポイントでした。素晴しい精度の演奏ながら、時折かいま見せるアーノンクール節がやはり気になるというのが正直なところでした。

こちらのハルモニーミサの方は、逆に虚心坦懐に楽譜に忠実な演奏を心がけているように聴こえます。全体にメリハリを利かせたアーノンクールとわかる節回しながら、不思議とくどさを感じさせないところが評価の分かれ目となります。

入りはアーノンクール独特のフレーズを分解して再構築したような分析的なコンセプトを感じさせますが、音響は残響の豊かな教会の響きにつつまれて、不思議と穏やかな表情に聴こえます。録音も実体感も残響も程よくバランスがとれて非常に聴きやすい名録音ですね。この組み合わせの録音はいつもながら演奏の精度は抜群に高く、演奏者一人一人の技術も素晴しいもの。演奏の成否はアーノンクールのコントロールが握っているといっていいでしょう。ソロは声がそろって抜群の出来と言っていいでしょう。ソプラノのエヴァ・メイは透明感のある若々しい爽やかな声、テノールのリッペルトも爽やか系でトーンが合ってます。

印象的なのは導入のキリエ(トラック1)、ソロの競演を楽しめるトラック3、静寂から合唱が浮かび上がるサンクトゥス(トラック8)、溶け合うソロの応酬が聴き所のアニュス・デイ(トラック9)といったところでしょうか。

2曲目はカンタータ「今いかなる疑いが」XXIVa:4。この曲はシュペリング指揮のharmonia mundi盤でその存在を知った曲。明るい曲調で素晴しい高揚感のある演奏。シュペリングのキリッとしたコントロールもいいですが、アーノンクールの小節の効いた表現もいいですね。
1トラック目(トラック12)がレシタティーヴォ。オーケストラによるオペラの1場面のような曲。エヴァ・メイによる語り。2トラック目がアリア、オケとオルガンの華麗な曲に乗ってソプラノの可憐な歌声が響き渡ります。エヴァ・メイの絶唱! 明るくシンプルな曲調だけに歌の善し悪しが浮き彫りになってしまう可能性もありますが、伸びのある声で見事に聴かせきってしまいます。そして3トラック目が再びレシタティーヴォ、そしてコーラスで曲を終わります。この曲は親しみやすい名曲ですね。

そして最後がXXIVa:4、テ・デウムXXIIIc:1。7分ほどの小曲です。ソロ4声と4声合唱とオケのための曲。この曲は最後に流した感じもあります。力がぬけてそこそこいい感じですね。

評価はハルモニーミサとカンタータ「今いかなる疑いが」XXIVa:4が[+++++]、テ・デウムが[++++]としました。天地創造の新盤よりもセッション録音だけに良い出来ということになりますね。

アーノンクールにはいろいろ録音がありますので、まだまだレビューに取り上げなくてはなりませんね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ハルモニーミサ おすすめ盤 アーノンクール

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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