ヴァルター・オルベルツのピアノソナタ旧録音(ハイドン)

ようやくレビューに戻ります。2018年最初のアルバムはこちら。

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ヴァルター・オルベルツ(Walter Olbertz)のピアノによるハイドンのピアノソナタ2曲(Hob.XVI:23、XVI:40)、モーツァルトピアノソナタ(KV332)、アダージョ(KV540)の4曲を収めたLP。収録年の表記はありませんが、ネットを調べたところ1964年のリリースのようです。レーベルは旧東独ETERNA。

このアルバムは最近オークションで入手したもの。見かけたときはちょっと過呼吸になりました(笑) 当ブログの読者の皆さまならご存知のとおり、オルベルツといえば、ハイドンのピアノソナタ全集を録音し、しかもその全集は現在でもそのファーストチョイスとして揺るぎない価値を持つもの。そのオルベルツの全集をお持ちの方も多いと思いますが、このアルバムはその全集の前に録音されたもの。全集の方が1967年から76年の録音で、こちらはリリースは1964年との情報がありますが、収録はモノラルのため、それより前の可能性もあります。

全集からXVI:20を取り上げて記事を書いてありますので、オルベルツの略歴や全集についてなどはこちらをご覧ください。

2013/01/30 : ハイドン–ピアノソナタ : ワルター・オルベルツのピアノソナタXVI:20

ちなみに、これまでワルター・オルベルツと表記してきましたが、ドイツ語読みだとヴァルターの方が近いのでしょうから、今後はヴァルターとします。

オルベルツは1931年生まれですので、このアルバムが1964年録音だとすると33歳くらい。ジャケットに写る姿はそれよりだいぶ若そうな気がしますね。オルベルツの揺るぎない演奏の原点を探れるという意味もあり、貴重なものと言えるでしょう。いつも通りVPIのクリーナーと必殺超音波美顔ブラシで丁寧にクリーニングして、年末の大掃除でモノラル専用のプレーヤー環境をセッティングしたのでそちらの方に盤を置き、針を落とします。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
全く気負いのない滑らかな入り。後年の達観したかのような冷静さよりは、流麗なタッチの魅力を表現しようとする意欲を感じます。ただし、音楽の骨格の確かさは後年の演奏と同様、表現にブレはなく、やはり揺るぎないと言わざるを得ません。若いぶんテンポは速めでタッチのキレも鮮やかですが何か一貫した安定感があるのは流石。LPのコンディションはわずかにノイズを伴いますが、音の実在感は流石のもの。1楽章のアレグロ・モデラートは爽やかながら落ち着いた心情を感じさせます。
その余韻をさらに深めるように始まる続く2楽章のアダージョは針音混じりながら静寂感を感じさせる素晴らしいもの。あらためて全集のCDと比べても録音の鮮度は全集に分がありますが、雰囲気と音楽の深さはこちらでしょう。ピアノの美音に包まれる幸福感を味わえます。
続くフィナーレではオルベルツらしい、落ち着き払った透徹したピアノの音色が聞かれます。メロディーラインをくっきりと浮かび上がらせながらも全体のバランスを乱さない流石のコントロール。凛々しさを感じさせながらもこのソナタの表現を極めようという意図が感じられ、それが演奏の抜群の安定感に繋がっています。

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Hob.XVI:40 Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
続くソナタは2楽章制。不思議に静寂感を感じさせる落ち着いた入り。後年の演奏よりもよほど達観しているとさえ感じさせる、冴えた落ち着き。全指に全神経が張り巡らせて冷静にコントロールしている感じながらさらりとした流れの良さを保った演奏。実に自然なタッチですが、これが常人には非常に難しいのでしょう。すでにハイドンの音楽と一体化するオルベルツの恐ろしいまでの制御能力を感じさせます。力の抜け方はちょっと特別なものを感じます。
2楽章のプレストはその力の抜けた優雅な雰囲気のまま実に軽々としたタッチでさらりとやっつけます。これがまた常人離れしたもの。短い曲なのであっという間に終わってしまいますが、泡沫の夢のような淡い音楽に酔いしれます。古い録音ながら、古い録音だからこそ味わえる素晴らしい音楽を楽しめる素晴らしい演奏でした。

LPの裏面はモーツァルト。ギーゼキングを思わせるこちらも揺るぎない安定感を感じさせる演奏。私はギーゼキングよりもオルベルツの軽やかさ保った演奏をとります。こちらも絶妙なる音楽を味わえる名演奏と言っていいでしょう。

ヴァルター・オルベルツの金字塔たるハイドンのピアノソナタ全集のオリジンを聴くようなこのLPでしたが、期待に違わず素晴らしい演奏が音溝に刻まれていました。なんでしょうこの豊かな音楽は。時代の空気まで刻まれたような素晴らしい録音に酔いしれました。ハイドンもモーツァルトも絶美の演奏。アナログもデジタルもステレオもモノラルも関係なく、この素晴らしいピアノの音に包まれる幸せを感じる演奏です。LPの再生環境のある人は是非手に入れてこの幸福感を味わってほしいものです。もちろん評価は[+++++]とします。

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tag : ピアノソナタXVI:23 ピアノソナタXVI:40

【新着】マルクス・ベッカーのピアノソナタ集(ハイドン)

久々にCDに戻ります(笑)

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マルクス・ベッカー(Markus Becker)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ5曲(Hob.XVI:21、XVI:34、XVI:28、XVI:46、XVI:23)を収めたアルバム。収録は2015年10月、ドイツのハノーファーにある北ドイツ放送(NDR)の放送大ホールでのセッション録音。レーベルはAvi-musicとdeutschelandradioの共同プロダクション。

しばらくLP、もちろん旧譜で手に入れにくいものばかり取り上げておりましたので、ここらで新譜を取り上げませんと、新譜情報を求める読者の期待を裏切りかねません。最近手に入れたものの中でもこれはという演奏でしたので取り上げます。

Markus Becker - Pianist

奏者のマルクス・ベッカーは1963年生まれのドイツのピアニスト。カール=ハインツ・ケマーリング(Karl-Heinz Kämmerling)やアルフレッド・ブレンデル(Alfred Brendel)に師事し、1987年、ハンブルクで開催された国際ブラームスコンクールで1位となりました。また、マックス・レーガーの作品の録音では2000年にドイツ・レコード賞、エコー賞などを受賞しています。また、1993年からはハノーファーの音楽演劇大学の教職にあります。

上に掲載した彼のサイトの録音のページを見るとこれまでにかなりの枚数のアルバムがリリースされていて、バッハからブラームス、シューマンをはじめとして数多くの作曲家の作品を録音していることがわかります。ひときわ目を引くのがマックス・レーガーの12枚に及ぶ作品集。マックス・レーガーとなると、こちらは全くの門外漢ということで、マルクス・ベッカーの奏者の器を計れる立場にありませんね(笑) ということで、このハイドンのアルバムでその器を実感したいと思います。

Hob.XVI:21 Piano Sonata No.36 [C] (1773)
非常に軽やかなタッチの演奏。録音も非常に優秀で空間にピアノがクリアに定位し、ハイドンのソナタの理想的な演奏。あえて低音の重厚感を殺し、中高域のクリアさを強調しているよう。よく聴くと一音一音ごとに絶妙にタッチがキレており、タッチのキレ味で聴かせる演奏。リズムの小気味良さが光り輝く演奏。これは鮮やか。
アダージョに入っても一貫して気持ちよく響くピアノの音色の心地よさ。これがマルクス・ベッカーの持ち味と見ました。ゆったりした楽章でもゆったりし切ることなく、適度にクリアでタイトなピアノの響きの面白さで聴かせるかなりの腕前。全ての音の響きが澄み渡ってて本当に気持ちよく楽器を響かせます。こんな印象を感じたのは初めて。
びっくりしたのがフィナーレ。一音一音のコントラストの見事な演出。完全に全ての指のタッチの強さとタイミングが制御しきれている感じ。しかもさっぱりとした爽やかさを纏う完璧なタッチ。力みは皆無でむしろかなり力を抜いているように聴こえます。ハイドンがこんなにも爽やかな表情を見せる匠のタッチ。1曲からベッカーの爽やかさにやられました。

Hob.XVI:34 Piano Sonata No.53 [e] (c.1782)
ブレンデルの演奏が刷り込みの曲ですが、ベッカーを聴いてブレンデルの響きをデフォルメした演奏の垢が完全に落ちました。この曲も爽やかなピアニズムが聴きどころだったと再発見。相変わらず全音符が完璧に制御され、一音一音のタッチの鮮やかさはもはや神がかってきています。重厚さとは無縁のリズムのキレに惚れ惚れとします。次々とやってくる打鍵の波に打たれるエクスタシー!
アダージョも前曲同様ゆったりすることなくピアノの響きに吸い込まれるような透明感。これほどにタッチのキレを感じた演奏は他にはアムランの演奏がありますが、アムランの響きには青白くひかる狂気のような前衛性を感じるのに対し、ベッカーの演奏は純粋無垢。そしてタッチは冴え渡っているのに、どこかほのぼのとした印象もあり、それがハイドンらしさを感じさせます。響きの余韻に無駄がなく清潔さも保つ見事さ。
そしてジブシー風な3楽章のメロディーから滲み出る独特な雰囲気のセンスも見事。見事。見事。こりゃ参りました。

Hob.XVI:28 Piano Sonata No.43 [E flat] (1776 or before)
次々と演奏されるソナタですが、この曲も冒頭から鳥肌がたたんばかりのタッチの見事さに圧倒されます。まさに音符ごとにタッチが千変万化。なんというコントロール力でしょうか。指一本一本の打鍵の強さとタイミングが超精密に制御され、超自然な響きを生み出します。細密画はどこか不自然な緻密さがあるものですが、その不自然さが皆無な超自然な細密画のよう。しかも写真とは異なるアーティスティックさを帯びているので、絵としての迫力も十分。ハイドンという古典を自然なまま現代アートにも比較し得る作風で蘇らせているよう。ソナタを聴く快感に溺れます。
鳥のさえずりのようなメヌエットの入り。さっと日が陰るとデリケートなニュアンスを帯び、同じ鍵盤からとは思えない音色に変わり、そして再び鳥のさえずりに戻ります。この音色とニュアンスの変化の面白さこそがハイドンの真骨頂。
そして、驚異のタッチを感じるフィナーレ。完璧な制御で絶妙なタッチの連続に再び驚きます。この楽章がこれほど聴きごたえがあったとは。マルクス・ベッカーのもはやマジックレベルのタッチが冴え渡ります。ユッタ・エルンストもビックリ(笑)

Hob.XVI:46 Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
こちらも有名曲ですが、これまでの演奏の垢を一切感じさせない純粋な響きにちょっと驚きます。音符を重ねる重ね方のアクセントが絶妙な面白さを生み出し、こんな響きがあったのかと改めて気づかされます。新たなハーモニーを発見した気分。特に速いパッセージの流麗なタッチから生み出されるさざ波のような響きの面白さは並ではありません。そして天から星が降り注ぐような高音のメロディーの美しさ、硬質なアクセントのキレ、硬軟織り交ぜた音色の変化。やられっぱなしです。おそらく左手はかなり控えめな力での演奏ですが、それがクリアな響きを生んでいるよう。休符を長く取ることで曲想の変化を印象づけるのではなく、むしろ休符を短くしてタイトな印象を作ってきます。色々発見のある演奏。
この曲でもアダージョの美しさは筆舌に尽くしがたいもの。無言で夜空の星を眺めていたい気分。音符が少ないだけに一音一音の意味を噛み締めて聴きますが、やはりハイドンは天才だと思う素晴らしいメロヂィーの連続。爽やかな演奏から深い深い情感が滲みます。
アダージョの余韻の消え入る絶妙なタイミングでフィナーレに入ります。耳を澄ますと右手の鮮やかたタッチに加えて左手の表情の豊かさもかなりのもの。この爽やかながらイキイキとした表情の秘密がわかった気がします。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
あっという間に最後の曲。聴きなれた曲が新鮮に響くのはこれまで通り。リズムは踊り、メロデイーはクッキリと浮かび上がり、大きな波の変化もあり、そしてそこここに新鮮なハーモニーを感じます。ハイドンのソナタが完全に現代風にクリアに響く快感。しかもエキセントリックなところは全くなく、古びた感じもなく、モーツァルトよりも垢抜けていて、ここに音楽のすべての面白さが詰まっていると言っても過言ではありません。
最後の曲のアダージョはやや叙情的な曲ですが、もちろん純粋無垢な美しさに仕上げてきます。一つとして同じメロディーの繰り返しがないように、演奏の方もニュアンスを次々と変化させながら進み、曲の素晴らしさと演奏の素晴らしさの相乗効果で音楽に深みが宿ります。
フィナーレはむしろあっけらかんとしているほどの吹っ切れ方。最後に純粋にリズムの面白さを印象付けて終わります。

イカしたデザインショップの店員さんのような風貌のマルクス・ベッカーですが、繰り出された音楽は素晴らしいものがあります。ハイドンのピアノソナタにはこれまでにも色々名演奏を紹介してきていますが、このベッカー盤も1、2を争う名盤と言っていいでしょう。タッチの鮮やかさ、制御の完璧さは目もくらむほど。特に爽やかさとクッキリ感は並外れたものがあります。ハイドンの音楽の癒しはこの純粋無垢な演奏の向こうにも広がっていました。すべての人に必聴の名盤です! 評価は全曲[+++++]とします。

色々ストレスを抱えて癒しを求めてる方、癒されてください!

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ギルバート・カリッシュのピアノソナタ集(ハイドン)

ピアノソナタのLPが続きます。

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ギルバート・カリッシュ(Gilbert Kalish)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ3曲(Hob.XVI:20、XVI:40、XVI:23)、アリエッタと12の変奏(Hob.XVII:3)の合わせて4曲を収めたLP。収録は1978年5月、ニューヨークでのセッション録音。レーベルは米nonesuch。

こちらも先日ディスクユニオンの店頭で発見し仕入れたもの。このアルバムの存在は知ってはいたものの今まで出会うことなくきたため、売り場で見かけた時にはちょっと呼吸が乱れました(笑)。そもそもの発端は次の記事をご参照ください。

2014/11/09 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】ギルバート・カリッシュのピアノソナタXVI:52(ハイドン)

新譜としてリリースされた老年のギルバート・カリッシュのアルバムですが、これが、、老いたカリッシュが奥さんの愛した曲をまとめたという、心温まるプロダクションで、なんとなく心に残る演奏でした。その記事でカリッシュのことを調べていた際、ハイドンの録音もかなりあるということがわかりましたので、以来見つけたら手に入れようとずっと思ったまま、出会わずに来た次第。今回手に入れたLPはプロモーション用の非売品とのシールが貼られたものでしたが、タイトルは「ヨゼフ・ハイドンのピアノ音楽第4巻」とあり、ライナーノーツには第1巻から3巻までの収録曲も掲載され、カリッシュのハイドンの録音の全容も判明しました。

カリッシュの略歴などは上の記事を参照いただくとして、早速針を落とすと、実に慈しみ深く、美しい響きにいきなり耳を奪われました。LPのコンディションも悪くなく美しいピアノの音色を存分に堪能できる状態!

Hob.XVI:20 Piano Sonata No.33 [c] (1771)
録音のせいか、妙にしみる音色。眼前にピアノの美しい響きが広がります。nonesuchといえばワンポイント録音で名を馳せたレーベルゆえ、録音の自然さは見事なレベル。テンポは遅めで一音一音を慈しむようにゆったりと弾いていきます。まるで大切な宝石を一つ一つ数えていくようなタッチ。晩年のカリッシュの演奏の原点がここにあると知り、ちょっと感動的。これだけ音を大切にするタッチは滅多にありません。そして紡ぎ出される音楽は人の温もりの伝わる音楽。カリッシュ40代の演奏にしては枯れすぎかもしれませんが、これが彼のスタイルなのでしょう。
続く2楽章は、ハイドンのソナタの中でも最も美しいアンダンテの一つですが、カリッシュの訥々としたタッチで聴くこの曲はその素朴な美しさが最も自然に表された名演奏と言っていいでしょう。美しい音色やタッチなど技術的なことに対する執着は皆無で、純粋無垢な響きが自然に滔々と湧き出てくる音楽。飾り気なく淡々と弾き進めるカリッシュの真面目な音楽に心を洗われるよう。
フィナーレでもピアノが美しく響く範囲で優しいタッチから音楽が紡ぎ出されていきます。力むことを知らないカリッシュの音楽は心地よさを失いません。1曲目から素晴らしい演奏がジワリと沁みてきます。

Hob.XVI:40 Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
続く曲はまるでそよ風のような心地良さで入ります。ことさらサラサラとしたタッチでサクサクと進めることで曲の素朴な味わいが活きてきます。この曲では特に高音のタッチの透明感、キラメキが素晴らしい。時折り輝く高音がアクセントになって、力を入れるところはないのに音楽がくっきりと浮かび上がります。ピアノの響きを知り尽くした奏者による円熟の技。
この曲は2楽章構成。常に軽さを帯びたタッチが紡ぎ出す音楽の軽妙さがカリッシュの音楽のベースにあるよう。力任せでは音楽は弾まないとでも言いたげな軽妙洒脱な展開にうっとり。速い音階も技術を誇示することなく、実に自然流麗なもの。非常に滑らかな音階によってハイドンの音楽が自然に磨かれ、素朴な美しさを纏います。この曲も見事。

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Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
レコードを裏返して3曲目。すでにカリッシュの素晴らしい演奏にノックアウトされていますので、あとは純粋に楽しむだけ。落ち着いたタッチから繰り出される自然に磨かれた音楽の美しさに酔いしれます。1楽章の起こりに2楽章の沈み。特にこのアダージョも全曲同様美しい表情を持つだけに、カリッシュのタッチによって自然な美しさの極みに達します。耳を澄ますと、フレーズごとに大きな起伏をつけて弾いており、素朴に響くもののかなりの表現力を駆使しての演奏であることがわかります。慈しみ深いハイドンのソナタの演奏の代表格と言っていいでしょう。そしてフィナーレのリズムの面白さも秀逸。軽々とこなしていくので爽やかさまで纏いますが、やはりかなりの表現力があってのことですね。

Hob.XVII:3 Arietta con 12 variazioni [E flat] (early 1770's)
最後は変奏曲。力の抜けたカリッシュのタッチにより、まずはメロディーがいきなり枯れた美しさで驚かせます。そして変奏が始まると、フレーズごとに表情がくっきりと浮かび上がるところはカリッシュの表現力の面目躍如。冒頭から孤高の美しさを発散し続けます。この曲に入ってカリッシュのタッチは冴え渡り、フレーズの一つ一つが素晴らしい生命力を帯び、すでに神がかっています。これまで見せなかった大胆なタッチと息の長い休符を織り交ぜて演奏は自在の極地へ。変奏とはこのように弾くべしとのカリッシュの心情がハイドンの曲に乗り移ったような、カリッシュにしかできない演奏。いやいや、これは絶品です。

探し求めていた若き日のギルバート・カリッシュのソナタ集。晩年の演奏も感動的でしたが、実は若い頃から感動的な演奏をする人でした。全曲素晴らしいんですが、中でも最後のアリエッタと12の変奏はこれまで聴いたどの演奏より素晴らしい、超名演です。間違いなくこの曲のベスト盤としてよいでしょう。残念ながらこの素晴らしいLPを手に入れるのは難しいでしょうが、本家nonesuchのウェブサイトを見ると2009年のハイドン没後200年を記念してmp3で再発売されていますので、聴くことはできるでしょう。評価は全曲[+++++]とします。

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tag : ピアノソナタXVI:20 ピアノソナタXVI:40 ピアノソナタXVI:23 アリエッタと12の変奏XVII:3 LP

【新着】ジョン・オコーナーのピアノソナタ集(ハイドン)

今日はピアノの美しい響きをとことん味わえるアルバム。

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ジョン・オコーナー(John O'Conor)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ5曲(Hob.XVI:32、XVI:23、XVI:46、XVI:20、XVI:23)を収めたアルバム。収録は2016年8月29日、ニューヨークのスタインウェイホールでのセッション録音。レーベルはピアノで有名なSTEINWAY & SONS。

最近リリースされたアルバムをチェックしていて、何気なく手に入れたアルバムですが、ピアノメーカーのスタインウェイが自らリリースしているアルバムということで、ちょっと気になる存在でした。世界中の一流のピアニストに弾かれる楽器ゆえ、多くのピアニストの中から、スタインウェイの美音を最も美しく響かせる演奏に違いないとの想像力も働きます。

ピアニストのジョン・オコーナーは1947年、アイルランドのダブリン生まれのピアニストで教育者。ダブリンのベルヴェデーレ・カレッジでピアノを学んだ後、オーストリア政府の奨学金でウィーンに留学、ディーター・ウェーバーの元で学びました。その間、ケンプにベートーヴェンの演奏の教えを受け、1973年にウィーンで開催された国際ベートーヴェンピアノコンクールで優勝、1975年にはベーゼンドルファーコンクールで優勝し、世界に知られるようになったとのこと。今回アルバムをリリースしているスタインウェイとはライバル関係にあるベーゼンドルファーのコンクールで優勝しているのも何かの因果でしょうか(笑)

これまでにリリースされているアルバムを調べてみると、TELARKレーベルからベートーヴェンのピアノソナタ全集、協奏曲全集、モーツァルトの協奏曲全集などがリリースされており、やはりベートーヴェンを得意としているようですね。

ということで、早速聴いてみます。

Hob.XVI:32 Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
流石に最新の録音だけあってピアノの臨場感は素晴らしいものがあります。自然な響きと鍵盤の重みが伝わってくるような録音。このところエイナフ・ヤルデンやツィモン・バルト、デニス・コジュヒンなど、ハイドンの機知をアーティスティックに表現したピアノを聴いてきましたが、このジョン・オコーナーは実にオーソドックスで変な自己顕示欲は皆無。淡々とハイドンの書いた音楽をピアノに乗せていく感じの演奏で、安心して演奏を楽しむことができます。オコーナー自身もリラックスして演奏を楽しんでいる感じ。かといってオルベルツほど枯れてもおらず、程よくバランスのとれた演奏。先生が楽しげに見本で演奏しているような感じ。この「楽しげに」というのが大事なところ。タッチが精緻を極めるわけでもなく、このすっかりリラックスしてストイックさとは無縁の表情がハイドンの面白さを引き立てるわけです。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
軽いタッチで入る曲。まるで朝飯前だとでも言いだしそうなカジュアルな入り。これが曲想にピタリ。よく聴くと一音一音が磨かれていて、流石にピアノの音色は絶品です。1楽章は流れるように一貫して軽めにサカサカ弾き進めていくのが乙なところ。
素晴らしいのが続くアダージョ。軽さを保ちながらも、ぐいぐい響きが深く変化して行きます。デリケートな表情の変化に引き込まれます。音の長さを絶妙にコントロールして曲の一貫性を保ちながら表情を変えていく表現が素晴らしい。
そして軽いフィナーレ。同じ軽さでもわずかな曇りを帯びさせて曲想に合わせているのがわかります。ピアノの響きをリアルに伝える録音だからこそ、こうしたデリケートな変化を味わえます。

Hob.XVI:46 Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
同じく軽くくるのかと思いきや、実に滑らかしっとりとした表情にハッとさせられます。ピアノの響きの表情の変化を実に巧みに表現してくる、さすがスタインウェイという演奏。ふとしたフレーズの切り替えのアクセントの一音の変化で響きが実に新鮮に聴こえます。こうしたところを控え目にさりげなく挟んでくるのが流石なところ。静寂の中に浮かび上がるハイドンのメロディーの美しさが際立ちます。徐々にタッチがチョコがとろけるように流れ出したり、千変万化するオコーナーのタッチに聴き惚れます。この曲からこれまで聴いたことのないような多彩な響きがあふれ出します。
前曲同様、アダージョの美しさは絶品。とりわけピアノの響きの美しさは鳥肌もの。凜と澄んだ夜空に浮かぶ天の川を眺めるよう。細かい星雲に無数の表情が宿り、美しい音楽が心に刺さります。
対比のためにあえて繊細さを避けるようにグイグイとくるフィナーレで曲を引き締めます。

Hob.XVI:20 Piano Sonata No.33 [c] (1771)
好きな曲。入りは意外に少し重め。この短調の入りを厳かなコントラストで強調しようということでしょう。もちろんふと力を抜いたり、さりげないアクセントで曲の変化の面白さを炙り出してくるところはこれまで同様。力の抜き際のタッチの鮮やかさが徐々に印象的になり、曲にグイグイ引き込まれて行きます。最初の重さから徐々にキレてくる絶妙な演出。聴き進むうちにオコーナーの意図がなんとなくわかってきました。
ハイドンのソナタの緩徐楽章の中でも一二を争う美しい楽章。期待どおり、あまりの美しさに言葉になりません。この詩情あふれる楽章がオコーナーの手にかかると、美しさも極まり、一音一音が宝石のごとく輝きます。ピアノという楽器の素晴らしさを思い知らされる感じ。
フィナーレはアンダンテの余韻をすっと断ち切り、気配を一瞬にして変えるマジックのよう。全く異なる音楽の魅力を突合させるハイドンのアイデアとそれを鮮やかに演出するオコーナーの技にやられました。

Hob.XVI:48 Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
最後の曲は唯一晩年の曲。最後は余裕たっぷりに有名曲の演奏を楽しむスタンス。自分の指から繰り出される多彩な響きを自ら楽しんでいるよう。ピアノの余韻が消え入る美しさを存分に味わえます。聴き進むうちに後年の作曲であるアンダンテと変奏曲を先取りするような曲想を感じさせる大きな構えの音楽であることに気づきます。
そして、絶妙な軽さのタッチでのロンド。このタッチの変化の幅の大きさと自然さがオコーナーの魅力でしょう。重さも軽さも自在に使い分けながらピアノという楽器の表現の幅を生かしきった演奏。ハイドンだけにダイナミクスの表現の幅は上品な範囲でこなしていくところが良識的です。最後はカッチリとした響きで締めました。

ベテランピアニスト、ジョン・オコーナーによるハイドンのソナタ集。最初はオーソドックスな演奏かと思いきや、これは深い演奏です。途中で触れたように、最近聴いたエイナフ・ヤルデンやツィモン・バルト、デニス・コジュヒンなどハイドンの曲に潜む機知をアーティスティックに表現した演奏とは表現の方向が異なり、自然な美しさの範囲での表現ですが、円熟の技がもたらすその美しさはかなりのもの。ピアノメーカーであるスタインウェイがリリースするアルバムだけあって、ピアノという楽器がもつ響きの美しさを存分に活かした演奏となりました。これはこれで素晴らしいもの。非常に気に入りました。XVI:20も良かったんですが、その前のXVI:46は、この曲の素晴らしさを改めて知ることになった秀演です。もちろん評価は全曲[+++++]とします。

これほど美しい音色ゆえ、できればSACDでリリースすべきでしょうね。

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ツィモン・バルトのピアノソナタ集(ハイドン)

ピアノのアルバムが続きます。今日はハイドンの演奏としては変り種。

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ツィモン・バルト(Tzimon Barto)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:1、XVI:23、XVI:27、XVI:50)を収めたアルバム。収録は2008年1月、フィンランドのヘルシンキの少し北の街、ヤルヴェンパー(Järvenpää)のヤルヴェンパーホールでのセッション録音。レーベルはフィンランドのONDINE。

これは最近手に入れたものですが、CDプレイヤーにかけるとすぐに異常に気づきました。異常といってもトラブルではなく異常な表現意欲。ハイドンのソナタの演奏は結局は素直に演奏する方が楽しめるものが多く、妙に力が入ると空回りしてしまい、奏者の音楽性を丸裸にしてしまう怖さがあります。この演奏は力の抜き方で勝負してくる珍しいタイプ。その力の抜き方と間の緊張感のようなものに語らせようという演奏です。

奏者のツィモン・バルトはもちろんはじめて聴く人。いつものように調べてみると経歴というかプロフィールも変わった人でした。1963年、アメリカのフロリダ州ユースティス(Eustis)生まれと私と同世代。ピアニストであるばかりか、作家でもあり、しかもボディービルダーでもあるとのこと。ジュリアード音楽院で学び、1989年にはウィーンのムジークフェラインでエッシェンバッハの指揮で演奏、翌1990年にはカラヤンの招きでザルツブルク音楽祭に出演するなど、ピアニストとしては素晴らしい経歴の持ち主。検索するとアルバムもかなりの数がリリースされていますので、世界的に活躍している人のようですね。ちょっとボディービルダーという経歴が気になってGoogleで画像検索してみると、若い頃の太もものように鍛え上げられた腕をがっしり組んで微笑む写真が何枚か出てきました。クラシックの演奏者でボディービルをやっているという超個性派。しかも冒頭で触れたように力任せの演奏とは真逆の演奏をするということで、記事にしようと思った次第。

このアルバムのリリースは2009年のハイドン没後200年に当てたものでしょうが、タイトルは”Unexpected Encounters”、「予期せぬ出会い」とあり、バルトにとってハイドンのアニヴァーサリーに出会った宝物のようなものという意味でしょうか。ハイドンのオペラに「突然の出会い」"L'incontio improvviso"というのがありますが、それとかけたものとも思えなくはありませんね。

Hob.XVI:1 Piano Sonata No.10 [C] (c.1750-1755)
普通になめらかなタッチのピアノの演奏と思って聴き始めますが、だんだんタッチがキレてきて、何やらただならぬ雰囲気を感じ始めます。しかもキレているのは弱音部。1楽章はまだその片鱗を感じさせただけで下が、2楽章に入ると、音量を一段と落として、ピアノのダイナミックレンジとしては普通のピアニスト抑える音量よりはるかに小さな音量に驚きます。そして何より実に濃密な音楽が流れます。鍵盤を触るか触らないかくらいの微妙なタッチを織り交ぜながらの演奏。ハイドンの曲に込められたメロディーの全く異なる美しさを引き出します。とぼとぼと歩みながら奏でる超デリケートな音楽。そして3楽章のメヌエットは、ほんの少し音量を上げただけで、視界の霧が晴れたようなクリアさが聞き取れます。スローテンポとゆったりと歩き回るような展開は変わらず、非常に濃密な時間が流れます。まるで人生を回想しているような枯れ具合。ハイドンの初期のソナタからこのような音楽が浮き彫りになるとは。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
1曲目の静寂の余韻から立ち上がる立体的な響き。特段強いタッチではないのに超立体的に聴こえるのが不思議なところ。音楽とはそれまでの演奏の余韻の中に流れるものであり、対比によって様々なニュアンスが乗るものだと改めて痛感した次第。相変わらずタッチのキレは最高。若い時のグールドの狂気のような切れ味とは少々異なり、実に丁寧にリズムで遊びながらも純音楽的なピュアさを狙ったような方向。この純度の高いスリリングさは見事です。高音のメロディーはくっきりと浮かびあがり、タッチを千変万化させてハイドンの楽譜に込められた隠れたニュアンスを次々と掘り起こして行きます。演奏時間はこの曲の1楽章では最長の8分25秒。
続くアダージョでは前曲ほど音量を落とすことなく、しっとりとした雰囲気を作りながらもメロディーをクッキリと浮かび上がらせます。この曲の素朴ながらもキラメキに満ちた音楽がしみじみと紡がれていきます。そしてフィナーレでも7分の力でクッキリとリズムとメロディーを刻んで終了。見事です。

Hob.XVI:27 Piano Sonata No.42 [G] (1776 or before)
相変わらずリズムのキレとタッチの巧みな変化の面白さに集中しますが、バルトの音楽に十分慣れてきたので、この曲くらいになると、安心して聴けるようになります。粒立ちの良い1楽章に、音量を落としてしっとりと沈みながらもクッキリとした2楽章、そして再びクリアなフィナーレという曲の展開を相変わらず鮮やかなタッチでまとめてきます。

Hob.XVI:50 Piano Sonata No.60 [C] (probably 1794)
最後に晩年の大曲を持ってきました。予想通り力むことなく、これまでの曲と同様、タッチのキレで聴かせようとするのは同じですが、超スタッカート気味にタッチの冴えを強調して軽やかに入ります。この曲に潜むリズムの面白さにピンスポットを当てた感じ。右手のクリアな旋律に比べて、左手は強打することなく、リズムのキレに集中しています。一音一音の粒たちがこれ以上ないほどに鮮明に響き、和音の魅力は旋律とアクセントの魅力で聴かせきってしまいます。徐々に左手に力が漲り、特徴的なリズムを刻み出すとようやく普通の演奏に近い曲のニュアンスが浮かび上がります。またしても所有盤リスト中最長の演奏時間。
この曲のアダージョではこれまでの演奏にはない即興的なタッチが紛れ込んで晩年のソナタの自在な境地をバルトなりに表しているよう。最後は静寂の中に消え入るように終わります。
そしてフィナーレでは音符を分解するようにタッチは明晰さを極め、ホールに響くピアノの余韻を楽しむような演奏。最後の曲は迫力不足に聴こえるのではとの危惧がありましたが、杞憂に終わりました。最後まで鍛え上げられた肉体を感じさせる。素晴らしいタッチの魅力で聴かせきってしまいました。

ツィモン・バルトによるハイドンのソナタ集ですが、普通の演奏とは一味もふた味も違う演奏でした。はじめに書いたように、ハイドンのソナタの演奏としては変り種と言っていい演奏ですが、不思議に違和感はなく、ハイドンのソナタの曲の面白さがきっちり浮かび上がるなかなかの演奏です。ファーストチョイスにはなりませんが、ピアノソナタを色々聴いている人にとってはこれは非常に面白いアルバムだと思います。私は気に入りましたので、[+++++]を進呈することといたします。

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デニス・コジュヒンのピアノソナタ集(ハイドン)

今日はピアノソナタの名演盤です。

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デニス・コジュヒン(Denis Kozhukhin)のピアノによるハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:49、XVI:23、XVI:32、XVI:24)を収めたアルバム。収録は2014年1月6日から8日にかけて、ベルリンのテルデックススタジオでのセッション録音。レーベルはonyx。

このアルバム最近リリースされたものですが、当方の所有盤リストにないことを見抜いた湖国JHさんが、最近送っていただいた何枚かのアルバムに忍ばせていただいたもの。一聴してすぐにハイドンのソナタ演奏のツボを押さえた見事な響きに聴き惚れ、取り上げた次第。

ピアニストのデニス・コジュヒンはもちろん初めて聴く人。1986年、ロシアのモスクワの東方にあるニジニ・ノヴゴロド生まれのピアニスト。バラキレフ音楽学校で学び、その後ルガーノでマルタ・アルゲリッチプロジェクトなどの他、各地の音楽祭になどで腕を磨き、
2009年リスボンで開催されたヴァンドーム・コンクールで第1位、2005年にはエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝し頭角を現しました。日本にも2011年と2013年の2度来日し、NHKでも放送されたそうですのでご存知の方も多いかもしれません。ウェブサイトが見つかりましたのでリンクしておきましょう。

Denis Kozhukhin - Piano

ウェブサイトを見てみると、このハイドンのアルバムは彼の2枚目のアルバムで、デビュー盤がプロコフィエフのソナタ集、そして最新のリリースがグリークとチャイコフスキーの協奏曲、しかも指揮はワシーリー・シナイスキーと強力。シナイスキーは思い出深い指揮者で、少し前に読響に客演した際にコンサートにも出かけています。ということで目下売り出し中のピアニストということでしょう。

Hob.XVI:49 Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
スタジオ録音ですが、残響は豊か。ピアノの音は厚みがあり艶やか。コジュヒンのタッチは極めてオーソドックス。キレ良く、適度にダイナミックで流麗。このバランスがなかなか出せないんですね。特にハイドンらしい展開の面白さと古典の均衡を両立させるセンスが重要なのですが、コジュヒンは冒頭から絶妙なセンスでまとめ、安定感も抜群。ハイドンのソナタの晴朗な美しさ、ピアノの響きの美しさ、機知に富んだ展開が苦もなく示されています。コジュヒンと比べるとブレンデルも独特のクセがおるように聴こえるほどニュートラルな印象。
続くアダージョ・カンタービレも磨き抜かれたピアノの響きの美しさに溢れた演奏。どちらかと言うとさっぱりとした演奏なんですが、そのさっぱりさが曲自体の純度の高い美しさをうまく表現している感じ。特に中音域から高音域の響きの美しさはかなりのもの。右手のタッチの感度が絶妙なのでしょう。ウルトラニュートラル。この繊細な感覚、ロシアのピアニストという先入観を打ち砕きます。
フィナーレはちょっとしたリズムの弾み方が冴えまくっています。このリズム感で曲がしなやかに躍動します。躍動感とフレーズ間の間のコントロールが醸し出す音楽の豊かさ。自然さのなかに冴えた感覚が見え隠れします。1曲目から見事な演奏。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
ちょっと遡った時期の曲。素直なタッチは変わらず、リズムのキレと機知に富んだ展開が鮮やか。相変わらず安定感は抜群というか、ハイドンのソナタの理想像と言っても良い一貫した演奏が続きます。耳を澄ますと、大きな骨格のメリハリがしっかりしていて、それをつなぐ音階がキレ良く流れているのがポイントのよう。この人、ハイドンのソナタ全集を録音した方がいいと思います。オルベルツの地位を脅かすような安定感を感じます。フレーズごとに閃きもちりばめられ刺激十分。
アダージョは逆に穏やかな表情で安心させ、きらめく星空のような素晴らしい時間が流れます。消え入るような静寂を感じさせ、緩急のコントロールセンスも抜群。
静寂を断ち切る一音。フィナーレの入りでハッとさせ、やはりリズムが踊り、程よいダイナミクスで余裕たっぷりに音符にそって音を置いていきます。やはりデッサンが正確というか、構造が明確になるポイントを押さえながら、他の音符をさらりと加えて行くセンスの良さで聴かせ切ってしまいます。見事。

Hob.XVI:32 Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
1曲1曲にドラマを感じる展開。最初の入りから曲のイメージが鮮明に浮かび上がります。ちょっと前にシフのピアノがしなやかにニュアンスを加えて行くのに対し、コジュヒンは骨格の確かさを保ちながらニュアンスをちりばめているので、ハイドンのソナタとの相性は一段上かもしれません。確かな骨格の存在がハイドンの機知をさらに洗練させているのでしょう。明確なアクセントで空間を仕切っていくので、曲の構造がくっきりと浮かび上がります。ハイドンの音楽のツボを押さえている感じはここから来るのでしょう。
独特の曲想のメヌエットですが、やはり速めのサッパリとした演奏で逆に曲想の面白さが引き立ちます。曲の見通しが非常によく、楽章間の対比の面白さに興味が移ります。
フィナーレも同様、快速な展開でメロディーの面白さを早送りで楽しむよう。残響豊かな空間にピアノの美音で描かれるハイドンの機知に富んだメロディー。この面白さを知っているからこその演奏。またまた見事。

Hob.XVI:24 Piano Sonata No.39 [D] (1773)
最後のソナタ。最後にハッとするような美しい響きの入りで驚かせます。シンプルな音楽の流れですが、そこここに知的刺激がちりばめられて、脳が冴えまくります。さりげないメロディーにつけられた微妙な表情の変化がこちらの期待を超えて響き、それに合わせて聴きに行きながら次の刺激に反応する繰り返し。聴きなれたメロディーなのにあちこちに仕掛けが施され、音楽がコジュンヒンの感性で再構築されていきます。豊かな音楽とはこのようなことの繰り返しでしょう。実に自然に流れる音楽なのに、実に豊か。
少し速めのアダージョはこのアルバム共通。このアダージョ、転調が印象的な曲ですが、その転調の瞬間のニュアンスがあまりに素晴らしく、ゾクゾクします。その瞬間の鮮やかさを強調するように、それまでは実に穏やかに音楽が流れます。
名残惜しさを感じさせながらさらりとフィナーレに入り、いたずら心に溢れたメロディーが弾みます。どこにも力みを感じさせずに、軽々とメロディーを絡ませていき、最後はさらりとまとめます。

これは絶品。途中にも書きましたが、コジュヒン、ハイドンのソナタ全集を録音すべきです。このアルバムに収められた4曲の演奏が上手いのではなく、ハイドンのソナタの本質を突くような絶妙な演奏であり、他のソナタもこのタッチなら間違いなく名演奏になるはずだとの安心感があります。まったくムラなく、まったく迷いなく、確信に満ちた演奏。録音も見事で言うことなし。このアルバム、すべての人に聴いていただきたい名盤と言っていいでしょう。もちろん評価は[+++++]とします。いつもながら湖国JHさんの深謀遠慮にやられました。いつもながらありがとうございます!

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ボビー・ミッチェルによるソナタ集(ハイドン)

今日はフォルテピアノによるソナタ集。

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ボビー・ミッチェル(Bobby Mitchell)のフォルテピアノによるハイドンのピアノソナタ3曲(Hob.XVI:23、XVI:28、XVI:48)、アダージョ(Hob.XVII:9)、アンダンテと変奏曲(Hob.XVII:6)の5曲を収めたアルバム。収録は2014年1月13日から15日、ベルギーのブリュージュ音楽堂でのセッション録音。レーベルはouthere MUSICグループのAlpha Productions。

このアルバム、タワーレコード新宿の店頭で見かけて手に入れたもの。マーキュリーが輸入盤に解説をつけてパッケージしたもの。いつもながら輸入盤そのままの雰囲気に丁寧な翻訳、解説をつけたパッケージングがありがたいですね。

ジャケットは意表を突く犬がフォルテピアノのような楽器を弾く姿の油彩。解説を見てみると、これはハイドンと同時代のフィリップ・レイネグルという人が描いた「びっくりするくらい音楽がわかる、とある犬の肖像」というもの。この謎めいたジャケットからこのアルバムに込められた創意が伝わってくるようで聴く前から実に興味深いもの。

奏者のボビー・ミッチェルは1985年生まれのアメリカのピアニスト。マイアミのインターロッケン芸術アカデミー、ニューヨークのイーストマン音楽院などで学びました。その後渡欧し、オランダのデン・ハーグ王立音楽院でピアノ、歴史的ピアノ奏法などを学び、ドイツのフライブルク音楽院でロバート・ヒルに師事。2013年にベルギーのブリュージュ古楽コンクールで入賞し、本盤の録音につながったとのことです。このアルバムにはボビー・ミッチェル自身による「21世紀の今、ハイドンの作品を録音するということ」という記事が掲載され、その内容が実に深い洞察を含むもの。彼の主張を要約すると、ハイドンの時代の楽器と、その演奏スタイルを意識して演奏するが、自分自身から湧き出てくる音のことばとして読み解き、そのことばで流暢に語ることにこだわっているということ。そして、それゆえ当時よく行われてきたように、曲間やフェルマータの箇所で即興を挟み、それは作曲家と張り合おうということではなく、そうした混沌を挟むことによって作曲家の作品の素晴らしさを際だたせようとしているといことです。彼の演奏はフォルテピアノによるありきたりな演奏ではなく、彼のことば通り、ハイドンの音楽の多様な魅力を際だたせようとそこここに即興を挟み、大きな川の流れのように感じさせるもの。ハイドンに対するアプローチの角度が非凡。なんとなく「びっくりするくらい音楽がわかる、とある犬の肖像」をジャケットに使った意図もわかってきました。

この録音に使われている楽器はハイドンが活躍していた18世紀末のオーストリア、ドイツ南部のヨハン・アンドレアス・シュタイン作のモデルと良く似た作者不詳の楽器とのこと。コンディションは非常によく、フォルテピアノの録音としては理想的なものですね。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
ホールに自然にフォルテピアノの響きが広がる名録音。音の粒立ちというか鮮度は抜群で、楽器がよく鳴っているのがわかります。ボビー・ミッチェルはクッキリとメリハリをつけながらもテンポを自在に揺らし、最初から即興的なタッチの面白さを感じさせ、ハイドンの曲に仕込まれた機知を十分踏まえているよう。スピードコントロールの自然な加減を楽しむような風情。速い部分でタッチのキレを見せたかと思うと、しっとりと長い休符をとり、曲の立体感をしっかり際だたせるあたり、そしてそれがハイドンの曲の真髄をふまえたものと感じさせる手腕は見事なものです。
続くアダージョはさらに見事。ミッチェルがまさに自身から湧き出てくる音のことばとして弾いているのがよくわかります。ミッチェルの指にハイドンの魂が乗り移ったような活き活きとした音楽。そしてフィナーレに入る瞬間のえも言われぬ絶妙さ。この冴え渡るセンスはミッチェルのただならぬ才能を感じさせるところ。ちょとした修飾と間の取り方でこのソナタがこれだけ冴えた表情を見せるということがミッチェルの非凡さを物語ります。

そして曲の結びの余韻を踏まえた短い即興が入りますが、これがまた絶妙。ソナタとソナタを実に見事につなぎます。

Hob.XVI:28 Piano Sonata No.43 [E flat] (1776 or before)
すっかりミッチェルの術中にハマって、ミッチェル自身の音のことばにどっぷり浸かります。ミッチェルはハイドンの楽譜の上で自在に遊びまわるよう。本当に自在。それがミッチェルの独りよがりに聴こえないのが凄いところ。聴いていただければわかりますが、演奏自体は実に自然な印象を保っていますが、これまでフォルテピアノの演奏でここまで自在な演奏は聴いたことはありません。奏者によってここまでの表現に行き着くということを思い知ります。前曲よりさらに踏み込んだ境地に達しています。
つづくメヌエットは遠い日の記憶のような不思議な入り。曲に潜む気配のようなものをえぐり出す才があるようです。音量を落として静かに語るようなタッチの妙。
そしてフィナーレは非常に個性的な曲想をこれもえぐり出すように際だたせ、冴え渡るタッチで描いていきます。いつ聴いても不思議なメロディーですが、その不思議さを際だたせるという常人離れした解釈。う~ん、凄いです。

ふたたび即興。現代音楽的な冷たさがなく、不思議とホッとする瞬間。そして次のソナタへの絶妙なつなぎ。

Hob.XVI:48 Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
聴きなれた有名曲ですが、これまで聴いた演奏が踏み込み不足に聴こえるほど旋律に説得力が漲ります。ハイドンへのリスペクトからか、この有名曲では自在な表現の振れ幅は少し抑えてオーソドックスに演奏していきますが、それでも表情のキレは素晴らしく、古楽器でのこの曲の演奏のベストといってもいい出来。終盤にちょっと加えた装飾音の機転と、1楽章最後の和音の幸福感にこの演奏の真髄を感じます。
2楽章構成の2楽章。右手のメロディーの冴え渡り方が尋常ではありません。脳内にアドレナリンが噴出。この短いロンドがものすごい陰影がついてクッキリと浮かび上がります。これまた見事。

このあとはかなり激しく盛り上がる即興。すっと引いたと思うと、つづくアダージョにつながります。

Hob.XVII:9 Adagio [F] (before 1792)
ブレンデルの演奏が刷り込みの曲。ピアノの演奏もいいものですが、ミッチェルのフォルテピアノでの演奏は、すこし溜めながら、幽玄なメロディーをしっとりと綴っていく、これも曲自体の気配をよく踏まえたもの。曲に合わせて表現の幅をかなり意図的にコントロールしていることがわかります。すっと心になじむ純粋さがあります。

なぜかこのあとに即興は入らず、最後は名曲アンダンテと変奏曲。

Hob.XVII:6 Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
表現というより音色をかなり巧みに変えながらの入り。フォルテピアノの音色をどう変えるのかは詳しくありませんが、乾いたキレのいい音としっとりと曇った柔らかい音をフレーズ毎に入れ替え、フレーズ毎に千変万化する表情。もともと変奏曲だけに、こうしたアプローチは自然ですが、変化の幅が大きいので面白さが際立つわけです。変奏が進むにつれてミッチェルが音楽に込めるエネルギーが増してくる様子が手に取るようにわかります。力むわけではなく、そのエネルギーが虚心坦懐な表現として曲自体の魅力をしっかり伝えます。20分強あるこの曲があっという間に感じられる至福の時間。だんだん変奏間の間が長くなって終盤の盛り上がりの後は枯淡の境地に。そして最後はカデンツァのような即興をたっぷり聴かせて終わります。

アメリカの若手ピアノ奏者、ボビー・ミッチェルによるハイドンのソナタ集。あまり期待せずに聴いたのですが、このアルバム、絶品です。ミッチェルのウェブサイトを見てみると、このアルバムがデビュー盤のようですね。フォルテピアノに限らずピアノも弾くようですが、その彼がデビュー盤でフォルテピアノでハイドンに挑み、しかもしっかりとしたコンセプトを持った演奏。恐ろしい才能の持ち主と見ました。このアルバムを聴く限り、テクニックはかなりのものですが、テクニックの誇示といった感じはまったくなく、それを上回る音楽的な才能を持った人ですね。このアルバム、最近聴いたフォルテピアノによるハイドンでは一押しです。久々にハイドンに聴かせたいと思った次第。偉大な作曲者は現代の若者のこの演奏にきっと驚くでしょう。評価はもちろん全曲[+++++]とします。御一聴あれ!

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【新着】オリヴィエ・カヴェーによるピアノソナタ集(ハイドン)

最近リリースされ、届いたばかりのアルバムです。

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TOWER RECORDS / amazon

オリヴィエ・カヴェー(Olivier Cavé)のピアノによるハイドンとスカルラッティのピアノソナタ集。ハイドンのソナタはHob.XVI:37、XVI:6、XVI:10、XVI:23、XVI:24の5曲でハイドンとスカルラッティの短いソナタ5曲が交互に置かれた珍しい構成。収録は2015年1月4日から6日にかけて、ブレーメンの放送ホールでのセッション録音。レーベルはæon。

このアルバム、”chiaro e scuro”とイタリア語でタイトルがつけられていますが「明暗」とでも訳すのでしょうか。いままでありそうであまり見かけなかったハイドンのソナタとスカルラッティのソナタを交互に構成したアルバム。ハイドンとスカルラッティといえば当ブログにコメントをいただくpascal_apiさんの提唱する「ハイドン良ければ、スカルラッティもまた良し」という法則がありますが、その法則を知ってのこのアルバムを構成したわけではないでしょう。ただしハイドンのソナタの演奏に必要なセンスというかバランス感覚とスカルラッティに必要なそれに共通するものがあるというのは頷けるところでしょう。

このアルバムのライナーノーツにはアルバムのコンセプトとその辺の核心に触れる記述が冒頭に記されていますので、訳して載せておきましょう。なかなか難しい文章なので、アルバムをお持ちで英語の才がある方、訂正などあれば宜しくお願いします。

ハイドンとスカルラッティに共通する芸術的感覚があることはあまりにも知られていなさすぎます。変幻自在な多様性、リズムの創意、哀愁への展開、変化に富んだ表情の二拍子を好んで用いたことなど、絶えず私たちに音楽的発見をもたらしてくれます。私たちは創造の喜びを実感しています。加えて2人の作曲家は、作曲技法よりも聴衆の求めにどれだけ応えられるかに細心の注意を払い、このことに関して驚くほど類似した方法で自己表現しているのです。


時代は大分異なるものの、ハイドンとスカルラッティに共通するものがあることは世界的にもあまり知られていないなか、日本のハイドンコミュニティでは、すでにそれを見抜いていたということでしょう。

ピアニストのオリヴィエ・カヴェーはスイス人ながらナポリにルーツを持つ人のようです。アルド・チッコリーニ、マリア・ティーポらナポリ出身のイタリア人ピアニストらに師事し、デビューしたのは1991年、メニューヒン率いるカメラータ・リジー・グシュタートとの共演。メニューヒンの愛弟子、アルベルト・リジーのヴァイオリンによるヴァイオリン協奏曲の演奏は以前取り上げ、素晴らしい演奏が記憶に新しいところ。近年では2008年、このアルバムと同じaeonからリリースされたスカルラッティのソナタ集が評判を呼び、その後クレメンティのソナタ集、バッハの協奏曲集をリリース。このハイドンとスカルラッティのソナタ集が4枚目のリリースとなります。

Olivier Cavé

はたしてこのアルバム、pascal_apiさんの法則の普遍性を立証することになるのでしょうか。

Hob.XVI:37 Piano Sonata No.50 [D] (c.1780)
鮮烈な音色の感覚をもつ曲。実に輝かしいイタリア風の音色をもつ人。チッコリーニに師事したというのも頷けます。ハイドンのソナタの演奏に必要な軽さというか、機知に富んだタッチを身につけ、さらりとこなしていきます。くっきりとアクセントがついた旋律を速めのテンポでこなしていきますが、まるで陽光に輝くイタリアの風景のように感じる明るさがあります。タッチのキレも最高。
驚くのは2楽章のラルゴ。ぐっとテンポを落として深い淵を覗くような濃密な音楽に変わります。いきなり香り立つ詩情。1楽章で見せたキレと輝きからデリケートなタッチに急変。休符を長くとって音楽の陰影が一気に深まります。
静けさから光が射すように明るい音楽が戻るフィナーレ。強音のタッチのキレは素晴らしく、音楽のキレにつながっています。ハイドンの小曲のなかにこれだけの表情の変化を込めるあたり、かなりの実力と見ました。

間に挟まれたスカルラッティのKk 425は小曲ながらも鮮やかなタッチが眩しい演奏。

Hob.XVI:6 Piano Sonata No.13 [G] (before 1760)
このアルバムに収録されたハイドンのソナタは初期から中期のもの。前曲同様軽めのタッチが心地よい演奏。1楽章は速めの楽章をクッキリと明るく描き、特に高音の明晰な音色はこの人の特徴ですね。この曲は2楽章がメヌエットで3楽章がアダージョ。メヌエットではタッチの軽さと諧謔ささえ感じる表現の幅が冴えて短い楽章をじっくり聴かせます。そして短調のアダージョでは前曲のアダージョ同様ゆったりとした音楽のなかに閃きと深みを感じさせる至福の時間が流れます。そしてフィナーレでは再び軽さをとりもどしてまとめます。ハイドンのソナタのツボを完全に掌握して軽々と終えるあたり、流石です。

続くスカルラッティのKk 495は、ハイドンの軽快さを受けつぐようなタッチの軽さとメロディーの面白さに溢れた曲。途中無限ループに入ったような不思議な感覚を感じさせます。この軽さ、尋常ではありませんね。

Hob.XVI:10 Piano Sonata No.6 [C] (before 1760)
タッチのキレは安定しています。ハイドンの初期のソナタの面白さを存分に感じさせます。この曲は2楽章がメヌエットの3楽章構成。アダージョのじっくりした魅力を味わえないのが残念ですが、メヌエットが十分聴かせどころになるという凄腕。これほど表情豊かにしっとりと耳に入るメヌエットはなかなかありません。よほどに鋭敏な感覚を持った人ですね。

このあとのスカルラッティはKk 432と、鮮やかなタッチが印象的。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
シュトルム・ウント・ドラング期直後のソナタに入ります。これまでの演奏ですでにハイドン奏者としての才は把握しているつもりで聴き始めますが、この1楽章の恐ろしいほどのキレと落ち着きは予想を上回るもの。最近ではアムランのソナタ集が殺気を感じるほどの冴えを聴かせたんですが、アムランのハイドンにはハイドンの時代の空気のようなものは感じられず、あくまで現代の視点での演奏といった感じなのに対し、このカヴェーの演奏はハイドンの作品に潜む明るさや明晰さ、機知などの魅力をふまえたより音楽的な魅力をもっているように感じます。完全にカヴェーの術中にはまった感じ。2楽章のアダージョのしっとりと落ち着き払った佇まいも完璧。そしてフィナーレも余裕たっぷりに鮮やかなタッチでさっと終えます。

スカルラッティの4曲目はKk 342。多くの音符の織りなす綾のようなものをくっきりと浮かび上がらせて音楽的快感を感じる演奏。

Hob.XVI:24 Piano Sonata No.39 [D] (1773)
ハイドン最後のソナタ。前曲同様シュトルム・ウント・ドラング期直後のソナタ。軽いタッチで速いパッセージをキレよくクッキリとこなしていくところは前曲同様。この曲で素晴らしいのはやはりアダージョ。そっと鍵盤に触れるようなタッチから入り、ハイドンの書いた美しいメロディーを空間においていくよう。研ぎ澄まされた凜とした風情。これ以上の癒しはないほど。ふと暖かい表情の和音につつまれる瞬間の幸福感。絶品ですね。そしてその幸福感も時の流れだと言わんばかりに軽快なフィナーレに移り、サラリとフレーズをこなして終わります。いやいや本当に素晴らしい。

最後のスカルラッティはKk 128。短調のうら悲しい表情が印象的なゆったりとした曲。ハイドンの曲と言われてもわからないような雰囲気もあります。5分少々とスカルラッティの中では最も長い曲。じっくりとメロディーをかみしめるような演奏でこの曲の芳しいような魅力が引き立ちます。

暗闇に不敵な笑みを浮かべてライティングで浮かび上がるオリヴィエ・カヴェーの姿が印象的なジャケット。ハイドンの新譜ということで何気なく手に入れたアルバムですが、よく見てみるとハイドンとスカルラッティを交互に組み合わせた、通好みの選曲。このアルバムの企画から、この演奏の素晴らしさは予想されたかもしれませんね。もちろんpascal_apiさんの法則の普遍性まで検証されたことになります。このアルバム、ハイドンの初期のソナタの魅力を余すところなくつたえる名盤として皆さんにオススメすべき名盤です。カヴェーはスイス人ということですが、チッコリーニやティーポに習い、スカルラッティがデビュー盤ということでイタリアナポリの血が流れているのではと思うほどです。評価はもちろん全曲[+++++]とします。スカルラッティも素晴らしいですよ。

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【新着】ダリア・グロウホヴァのハイドンのピアノソナタ集新盤(ハイドン)

先日取りあげたアルバムがとても良かったダリア・グロウホヴァですが、ハイドンのソナタ集の2枚目が届きましたので早速レビュー。

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ダリア・グロウホヴァ(Daria Gloukhova)のピアノによるハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:44、XVI:47、XVI:20、XVI:23)を収めたアルバム。収録は2012年7月、1枚目と同じモスクワ議会議事堂のラジオ放送収録第1スタジオでのセッション録音。レーベルは米CENTAUR。

2013/12/02 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】ダリア・グロウホヴァのピアノソナタ集

前に取りあげたアルバムもなんだかインパクトのあるジャケットでしたが、こちらも負けず劣らず。前のアルバムが中途半端にツッパっていたのが、今度はだいぶアーティスティックになってきました。グロウホヴァの情報は前記事の方をご覧ください。

グロウホヴァのピアノは、ハイドンなのにまるでショパンを弾くような詩的なもの。さらりと弾き流すようなスタイルから詩情が溢れる演奏。前アルバムが2011年12月の録音だったので、1年経たずに次のアルバムを録音したことになります。

ジャケットには"ESSENTIAL HAYDN"と何やら気になるタイトルがつけられています。「ハイドンの真髄」とでも訳せばいいのでしょうか。ライナーノーツに書かれたグロウホヴァの解説によれば、このアルバムでは第1集とは全く異なるハイドンの世界を描くことを意図しており、短調で書かれたメロディーこそがハイドンの真髄であるというようなことが書かれています。このアルバムには2曲の短調作品の他、へ長調の2曲も中間楽章に印象的な短調の曲が置かれていて、その表現の深さがポイントのようです。若い奏者ながらこうしたアルバムのコンセプトはよく考えられていますね。

果たして、意図通り短調のソナタの深遠な世界が描かれるでしょうか。

Hob.XVI:44 / Piano Sonata No.32 [g] (c.1771)
シュトルム・ウント・ドラング期に作曲された2楽章とも短調の曲。この時期のハイドン独特の憂いに満ちた曲想の名曲。グロウホヴァのしなやかなタッチが活きる曲でしょう。冒頭から力をぬいた独特の柔らかいタッチで、テンポ大胆に揺らしながらいきなり濃い詩情を聴かせます。所々でクッキリしたアクセントを効かせながらも基本的にしっとりと濡れたような表情で音楽を創っていきます。
続く2楽章も切々とメランコリックなメロディーを刻んでいきます。あえて曲想の変わる部分の区切りをぼやかし、曲の構造ではなく、しなやかな変化を聴かせるあたりがグロウホヴァ流。ほのかに明るさを感じさせる部分へのじわりとした変化が深いですね。

Hob.XVI:47 / Piano Sonata No.57 [F] (c.1765)
こちらはシュトルム・ウント・ドラング期直前の作。この曲にはホ短調版(XVI:47bis)もあり、最近の研究ではホ短調版がオリジナルとされているようです。1楽章は非常に穏やかに音階が繰り返されながら曲が進みます。
やはりこの曲は2楽章の短調の美しいフレーズが聴き所と、そう言われてきくと、まさにその通り。シュトルム・ウント・ドラング期の深い深い世界を予感させる、素朴ながら陰りのあるフレーズが重なり、えも言われぬ詩情が浮かび上がります。表現の幅を広げるべく、左手のタッチがめずらしく強靭に変化しますが、すぐに鎮まり興奮の余韻を楽しみます。
フィナーレは対比を鮮明につけるように明るく快活。グロウホヴァも弾むのを楽しむように無邪気に鍵盤上を跳ねているよう。2楽章のきらめくような美しさを引き立てる素晴しい構成が鮮明に描かれました。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
ふたたびシュトルム・ウント・ドラング期の、ご存知名曲。私が偏愛する曲であります。この曲はもともと2楽章が聴き所なんですが、言われてみれば1楽章は短調の入りでした。この曲はグロウホヴァの特徴が良く出て、かなりテンポを動かして、自在な演奏。テンポを急に上げたり、下げたりしながら曲の面白さを引き出そうという意図でしょう。淡々と描く名演奏に慣れているからか、最初は違和感を感じましたが、聴き進むうちにグロウホヴァの意図がなじんで、これも悪くないという印象になりました。
続く2楽章は1楽章、穏やかな心境でテンポを揺らしながら、美しいフレーズを奏でていきます。グロウホヴァの手にかかるとフレーズが生き物のように感じられ、しなやかに踊ります。ほどほどの力で音符に潜む曲想を浮かび上がらせながら、独特の詩情を残していきます。
フィナーレは短調から入ります。短調の曲の2楽章にほんのり明るさを感じさせる曲を挟んでいるわけですね。かなり速めのテンポをとりますが、程よくテンポを落とす場面を挟んで、構成感をキチンと保っているのは流石。最後は静かに沈みます。

Hob.XVI:23 / Piano Sonata No.38 [F] (1773)
シュトルム・ウント・ドラング期直後の明解な構成が特徴の曲。1楽章はカッチリ明解な曲調に変わり、暗い時代から時代が変わったような新鮮さを感じさせます。グロウホヴァはここでも緩急自在のスタンスで、曲を自分のペースにしっかり据えます。
短調のアダージョは、これまでの陰りは消え、華やかさを感じさせる短調に変わります。一音一音が磨かれ、まさに宝石のよう。グロウホヴァ流にテンポが変化し、可憐とも言えるような表情が色濃くなってきます。かなりの流麗な展開に、これまで聴いた他の演奏を聴くと、固く聴こえそう。ここでも表情の微妙な変化の移り変わりのきめ細かい綾の美しさが冴え渡ります。明るく明解な1楽章の入りから一転、美しさを極めたアダージョが曲を引き締めます。
この曲でもフィナーレは速めで、千変万化するタッチとテンポの複雑な変化を楽しめと言っているよう。力感のコントロールが秀逸で、特に力を抜く表現がアーティスティックなところ。

ダリア・グロウホヴァのハイドンのソナタ集の2枚目は、短調の美しい曲を集めて、まさにグロウホヴァのしなやかに変化するタッチの面白さと、詩情の濃さを見せつけられた感じ。アルバムの企画意図も冴え、演奏もこれまでのハイドンのソナタの演奏とはひと味違うもの。この若さでこの音楽性は流石です。円熟すればハスキルのような神がかった存在になるかもしれませんね。聴き始めは違和感もちょっとありましたが、聴き進むうちに、グロウホヴァのしなやかなハイドンも気に入りました。評価は全曲[+++++]とします。

ピアノソナタ好きな皆さん、一聴あれ。

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ワリド・アクルのピアノソナタ集(ハイドン)

今日も湖国JHさんに貸していただいているアルバムから。

Akl20.jpg
amazon

ワリド・アクル(Walid Akl)のピアノによるハイドンのピアノ作品全集の第1巻。ソナタ4曲(Hob.XVI:20、XVI:22、XVI:35、XVI:23)と変奏曲(Hob.XVII:7)の5曲を収めたアルバム。収録はPマークが1998年、場所はパリとだけ記載されています。レーベルはオーストリアのKOCH DISCOVER INIERNATIONAL。

ワリド・アクルのアルバムは手元に「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」のピアノ版のアルバムがあるのみ。そのアルバムにもハイドンのピアノ作品全集の第3巻との記載がありますが、他の巻のアルバムをあまり目にすることもなかったので、とりたてて注目しているわけではありませんでした。今回このアルバムを貸していただいて、ライナーノーツをよく見ると、裏面に「ワリド・アクル(1945-1997)に捧ぐ」との記載があり。ハイドンのピアノ作品全集を残して、亡くなられたということでしょう。

ライナーノーツの解説によるとワリド・アクルは終戦の年、1945年にレバノンに生まれたピアニスト。パリで教育を受け、マルグリット・ロン・アカデミー、エコール・ノルマル、パリ音楽院などで学び、1969年からヨーロッパの都市を中心に活躍したとのこと。オケとはミュンヘン・フィル、ラジオ・フランス管弦楽団、パウル・クエンツ管弦楽団などと共演。レパートリーは広く、ベートーヴェン、リスト、ボロディンなどまでこなしましたが、とりわけ気に入っていたのがハイドンとのことで、ピアノ作品全集まで録音したということです。1997年、パリで心臓手術を受け、そのあと52歳という若さで亡くなったとのことです。

現在、amazonで中古が数枚みつかる他、あまり目にしないアルバムですが、聴いてみるとさすがにハイドンの全ピアノ作品を録音しようというほどの意気込みが伝わる演奏でした。1曲1曲の表現を磨くのではなく、非常に大きな視点から音楽を描いて行く感じ。これは悪くありません。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
録音は自然でいいですね。アクルのピアノはさっぱりとしたテイストでサラサラと弾き進めていくもの。自然に生まれる感興がほどよく感じられ、曲自体がもっている音楽に集中することができます。表現が大げさでないのににじみ出る情感は濃いという不思議な感覚。フレーズはキリリと引き締まり、8分の力でメリハリをつけながら弾いていきます。
期待の2楽章。星がきらめくような名曲ですが、ことさらきらめきを強調することはせず、淡々と弾いていきます。途中音量を結構落とす場面があるのですが、これがいい味をだしています。さっぱりとした美しさがにじみ出てきます。叙事詩が語られるのを聴いているような落ち着いた音楽。ただタッチのキレ、音楽の濃さはそれなりにあって、アクルの演奏スタイルにだんだんハマってきます。
フィナーレは練習曲を速弾きするような軽やかさ。大上段に構えるのではなく、普段の練習のようなくだけたスタイルがハイドンに合っています。冒頭にも書きましたが、やはり全集を演奏するということで、一歩引いた立場で冷静な視点をもちながら、自然な演奏から音楽を滲ませようというスタンス。

Hob.XVI:22 / Piano Sonata No.37 [E] (1773)
つづく曲も姿勢は変わりません。まるでハイドンの多くのソナタをすべて初見で弾いているような新鮮さ。1曲1曲の出来ではなく、ソナタ全体から音楽を引き出そうとしているようにすら感じます。途中の転調でハッとさせられる他は、実に地道な演奏。
2楽章のアンダンテはしっかり沈んで、美しいメロディーを引き立てます。そしてフィナーレは禁欲的なほどあっさりとまとめます。ハイドンの秩序と規律を軽快に表現しているようで、微笑ましい限り。最後の一音のさっと消え入る感じ、こちらも実に味わい深い。

Hob.XVI:35 / Piano Sonata No.48 [C] (c.1780)
軽やかなメロディーラインが心地良い曲。子犬が走り回るような微笑ましい軽快さ。喜んで型にはまっているような律儀さがあり、まさにハイドンのソナタに相応わしいコミカルさをはらんでいます。良く聴くと非常にクッキリとした右手の音階。終盤、きちんと間をとりメリハリをつける事は忘れません。要はハイドンのツボを押さえているということです。
この曲まで来ると、アダージョのしっとり感もかなりのもの。頭の中に音楽が流れているのでしょう、指から紡ぎ出される音楽は非常に完成度の高い表現。陽光に輝く雪山を遠くから眺めるがごとき陰影の深さ。ゆったりと音楽が紡ぎ出され、輝きは最高潮。
フィナーレは相変わらずの軽さ。これだけの軽さにはかなりのタッチのキレが求められます。

Hob.XVI:23 / Piano Sonata No.38 [F] (1773)
もうアクルの術中にハマってます。いやいや、ハイドンのピアノ作品をこよなく愛していることがひしひしと伝わります。ハイドンのソナタのツボを完全に掌握。とくに軽さとと機知の表現が絶妙。有名なこの曲もアクルのさりげないピアノで聴くと、じつに趣き深いですね。この曲では珍しくかなりアクセントを効かせてメロディーを奏でます。転がるような音階ときっちりメリハリをつけた部分の対比の鮮明さはかなりのもの。
アダージョのさっぱりしながらも濃密な音楽は相変わらず。ゆったり語られる音楽には、比較的硬質なスタインウェイの高音の美しさが効いているよう。抑えた表情の美しさが決まります。
いつもながら、アダージョとフィナーレの切り替えは鮮やか。まさに鮮烈なフィナーレ。音量は抑えながら、色彩感を感じさせる見事な指さばき。

Hob.XVII:7 / Variazioni [D] (1766)
珍しい曲。コミカルなメロディが次々と変奏となっていきます。音楽の方向性は異なるものの、この狂気を感じるほどの鮮やかなタッチのキレはグールドを彷彿とさせるもの。独特のあっさりとしたテイストは保ちながら、右手と左手の独立性はまさにグールド並み。いやいや恐ろしいテクニックです。この小曲が小宇宙のような深さを醸し出します。見事。

今までノーマークだった、ワリド・アクル。このアルバムをじっくり聴き直して、その音楽、テクニックに打ちのめされました。いや素晴らしい。特に最後の小さな変奏曲の鮮やかさには圧倒されました。流石ハイドンのピアノ作品の全集を録音しただけの奏者と納得です。前に触れた通り、この他にもアルバムがリリースされています。入手はなかなか大変そうですが、これは収集しなくてはなりませんね。評価は全曲[+++++]とします。

TOWER RECORDSさんかどこかで、まとめて復刻すべき素晴らしい録音だとおもいますが、如何なものでしょうか。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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