【新着】ポール・ルイスのピアノソナタ集(ハイドン)

なぜかピアノの新譜が続きます。

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ポール・ルイス(Paul Lewis)のピアノによるハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:49、XVI:50、XVI:32、XVI:40)を収めたアルバム。収録は2017年4月15日、8月20日から22日にかけて、ベルリンのテルデクススタジオ(Teldex Studio Berlin)でのセッション録音。レーベルはharmonia mundi。

このアルバムはリリースされたばかりのものですが、先日当ブログのマルクス・ベッカーの記事を取り上げていただいたyoshimiさんのブログの記事のコメントでその存在を知り、注文を入れていたもの。

どうやら巷では話題のポール・ルイスですが、私は存在も含めて初めて聴く人です。調べてみるとこのアルバムがリリースされているharmonia mundiからベートーヴェンのピアノソナタ全集や、イルジー・ビエロフラーヴェクの振るBBC響とのピアノ協奏曲全集、マーク・パドモアとのシューベルトの主要歌曲、主要ピアノソナタ集などを次々とリリースしており、いずれもなかなかの評判ということで、harmonia mundiの看板ピアニストといったところ。ハイドンの未聴盤の発掘に極度に偏ってアルバムを収集している私だけが知らぬ存在だったというのがオチでしょう(笑)

いつものように略歴をさらっておきましょう。1972年英リバプール生まれで、マンチェスターのチェタム音楽学校、ロンドンのギルドホール音楽演劇学校などで学び、その後はアルフレート・ブレンデルに師事。1994年にロンドン国際ピアノコンクールで2位に入賞したのを皮切りにその後多くのコンクールでの入賞を経て欧米のコンサートや音楽祭で活躍するようになります。2005年から2007年にかけて欧米のコンサートでベートーヴェンのピアノソナタ全曲を演奏するのと並行し、harmonia mundiに全ソナタを収録し、それぞれのアルバムがGrammophone誌のEditor's Choiceに選定された上、第4巻は同誌の最優秀器楽賞と2008年の年間ベストアルバムに選定されており、このことがポール・ルイスの名を世界に轟かせたのでしょう。以後の活躍、アルバムのリリースは先に触れたとおりです。

さてさて、なんとなくアルバムが届いてから記事にしようとしているうちに、yoshimiさんのブログで取り上げられました。レコード芸術の5月号にインタビューも掲載されており、その引用も含めてyoshimiさんのブログに詳しく触れられていますので、是非ご覧ください。

気ままな生活 ポール・ルイス ~ ハイドン/ピアノ・ソナタ集

私の方は、前記事で取り上げたトッド・クロウの演奏の余韻が残る中、曲ごとに演奏の特徴に触れておきましょう。

Hob.XVI:49 Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
非常に艶やかで磨かれたピアノの響きが心地よい録音ですが、低音はあえて抑え気味にして中高音域の美しさを強調しようとしている感じ。リアリティよりも雰囲気重視の録音。全ての音が艶やかに響くところはブレンデルに師事したというのが頷けるところ。トッド・クロウのしみじみと語るような語り口の上手さとは表現の角度が異なり、グイグイと弾き進めながらも多彩なタッチの変化で聴かせます。推進力があり、淀みなく音楽が流れていきます。1楽章はハイドンのソナタの喧騒感を上手く表現しています。
続くアダージョ・カンタービレは思ったほど沈まず、美しい音色でメロディーを包み込むような演奏となります。柔らかなさざなみに乗って装飾を凝らした主旋律がくっきりと浮かび上がります。
そして終楽章も楽章間の表現の差はあまり感じさせず、軽やかな躍動感を軸にさらりと弾き進めてまとめます。

Hob.XVI:50 Piano Sonata No.60 [C] (probably 1794)
演奏スタイルは前曲と同様、曲ごとの変化を感じさせることなく、センス良くまとめる力で演奏している感じ。この曲でも落ち着かないほどグイグイとひっぱていくのがポール・ルイス流なんでしょう。時折りふっと静けさを感じさせる他は一貫して攻め続けていく感じ。場面転換の瞬間瞬間のはっとさせるようなアイデアは流石なところ。アダージョは前曲よりもしっとり感が出てきて、要所でテンポも大きく動かすことで表現の幅が大きくなります。終楽章に入ると表現はさらに大胆なひらめきが散りばめられ、ポール・ルイスの面目躍如。最後の力の抜き方も見事です。

Hob.XVI:32 Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
この曲は師であるブレンデル盤が刷り込みです。ブレンデルの力感とコクが新鮮なセンスで刷新されたような演奏。全般にライトな印象はやはり録音の影響もありますが、この曲独特の重さを少し軽減して儚い華やかさを感じさせるのが流石なところ。この華やかさが続くメヌエットにも引き継がれ、得も言われぬような美しいメロディーが漂います。軽やかな中にトリオの険しさが顔を覗かせることで曲のメリハリがつきます。フィナーレは目の覚めるような鮮やかなタッチの右手とゴツゴツした左手の織りなす見事な調和で一気に聴かせます。

Hob.XVI:40 Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
最後にしっとりと落ち着いた語り口も聴かせようという意図での曲順でしょうか。どちらかというとセンスとタッチのキレ味で聴かせるルイスのハイドンですが、ここにきて静寂感と詩情が溢れる演奏でアルバムに深みが加わります。ルイスのしっとり感はそれでも軽やかさと華やかさを失わないのが流石。ブレンデルのような骨太な印象とは逆に良い意味で線の細いところがそう感じさせるのでしょう。
終楽章はやはりタッチの鮮やかさが聴かせどころ。あまりに鮮やかなタッチで若干技巧披露的な余韻がついちゃいました。

ポール・ルイスによるハイドンのソナタ集でしたが、ルイスの閃きに満ちた鮮やかなタッチが楽しめるいいアルバムでした。ジャケットを見るとピアノの横に自信ありげにすっくと立つポール・ルイスの姿が印象的ですが、よく見ると左側のピアノの黒にうっすらと数字の1が浮かび上がっています。レコード芸術誌のインタビューでも来年ハイドンのソナタ集の2枚目がリリースされると触れられていますが、これまでのルイスの録音歴を考えると全集化もあり得ると思います。数枚リリースするアルバムの1枚目にわざわざ1とは書かないのが普通ですよね。ということでこれからが楽しみな企画になりました。評価は全曲[+++++]とします。

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ヴァルター・オルベルツのピアノソナタ旧録音(ハイドン)

ようやくレビューに戻ります。2018年最初のアルバムはこちら。

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ヴァルター・オルベルツ(Walter Olbertz)のピアノによるハイドンのピアノソナタ2曲(Hob.XVI:23、XVI:40)、モーツァルトピアノソナタ(KV332)、アダージョ(KV540)の4曲を収めたLP。収録年の表記はありませんが、ネットを調べたところ1964年のリリースのようです。レーベルは旧東独ETERNA。

このアルバムは最近オークションで入手したもの。見かけたときはちょっと過呼吸になりました(笑) 当ブログの読者の皆さまならご存知のとおり、オルベルツといえば、ハイドンのピアノソナタ全集を録音し、しかもその全集は現在でもそのファーストチョイスとして揺るぎない価値を持つもの。そのオルベルツの全集をお持ちの方も多いと思いますが、このアルバムはその全集の前に録音されたもの。全集の方が1967年から76年の録音で、こちらはリリースは1964年との情報がありますが、収録はモノラルのため、それより前の可能性もあります。

全集からXVI:20を取り上げて記事を書いてありますので、オルベルツの略歴や全集についてなどはこちらをご覧ください。

2013/01/30 : ハイドン–ピアノソナタ : ワルター・オルベルツのピアノソナタXVI:20

ちなみに、これまでワルター・オルベルツと表記してきましたが、ドイツ語読みだとヴァルターの方が近いのでしょうから、今後はヴァルターとします。

オルベルツは1931年生まれですので、このアルバムが1964年録音だとすると33歳くらい。ジャケットに写る姿はそれよりだいぶ若そうな気がしますね。オルベルツの揺るぎない演奏の原点を探れるという意味もあり、貴重なものと言えるでしょう。いつも通りVPIのクリーナーと必殺超音波美顔ブラシで丁寧にクリーニングして、年末の大掃除でモノラル専用のプレーヤー環境をセッティングしたのでそちらの方に盤を置き、針を落とします。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
全く気負いのない滑らかな入り。後年の達観したかのような冷静さよりは、流麗なタッチの魅力を表現しようとする意欲を感じます。ただし、音楽の骨格の確かさは後年の演奏と同様、表現にブレはなく、やはり揺るぎないと言わざるを得ません。若いぶんテンポは速めでタッチのキレも鮮やかですが何か一貫した安定感があるのは流石。LPのコンディションはわずかにノイズを伴いますが、音の実在感は流石のもの。1楽章のアレグロ・モデラートは爽やかながら落ち着いた心情を感じさせます。
その余韻をさらに深めるように始まる続く2楽章のアダージョは針音混じりながら静寂感を感じさせる素晴らしいもの。あらためて全集のCDと比べても録音の鮮度は全集に分がありますが、雰囲気と音楽の深さはこちらでしょう。ピアノの美音に包まれる幸福感を味わえます。
続くフィナーレではオルベルツらしい、落ち着き払った透徹したピアノの音色が聞かれます。メロディーラインをくっきりと浮かび上がらせながらも全体のバランスを乱さない流石のコントロール。凛々しさを感じさせながらもこのソナタの表現を極めようという意図が感じられ、それが演奏の抜群の安定感に繋がっています。

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Hob.XVI:40 Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
続くソナタは2楽章制。不思議に静寂感を感じさせる落ち着いた入り。後年の演奏よりもよほど達観しているとさえ感じさせる、冴えた落ち着き。全指に全神経が張り巡らせて冷静にコントロールしている感じながらさらりとした流れの良さを保った演奏。実に自然なタッチですが、これが常人には非常に難しいのでしょう。すでにハイドンの音楽と一体化するオルベルツの恐ろしいまでの制御能力を感じさせます。力の抜け方はちょっと特別なものを感じます。
2楽章のプレストはその力の抜けた優雅な雰囲気のまま実に軽々としたタッチでさらりとやっつけます。これがまた常人離れしたもの。短い曲なのであっという間に終わってしまいますが、泡沫の夢のような淡い音楽に酔いしれます。古い録音ながら、古い録音だからこそ味わえる素晴らしい音楽を楽しめる素晴らしい演奏でした。

LPの裏面はモーツァルト。ギーゼキングを思わせるこちらも揺るぎない安定感を感じさせる演奏。私はギーゼキングよりもオルベルツの軽やかさ保った演奏をとります。こちらも絶妙なる音楽を味わえる名演奏と言っていいでしょう。

ヴァルター・オルベルツの金字塔たるハイドンのピアノソナタ全集のオリジンを聴くようなこのLPでしたが、期待に違わず素晴らしい演奏が音溝に刻まれていました。なんでしょうこの豊かな音楽は。時代の空気まで刻まれたような素晴らしい録音に酔いしれました。ハイドンもモーツァルトも絶美の演奏。アナログもデジタルもステレオもモノラルも関係なく、この素晴らしいピアノの音に包まれる幸せを感じる演奏です。LPの再生環境のある人は是非手に入れてこの幸福感を味わってほしいものです。もちろん評価は[+++++]とします。

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ギルバート・カリッシュのピアノソナタ集(ハイドン)

ピアノソナタのLPが続きます。

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ギルバート・カリッシュ(Gilbert Kalish)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ3曲(Hob.XVI:20、XVI:40、XVI:23)、アリエッタと12の変奏(Hob.XVII:3)の合わせて4曲を収めたLP。収録は1978年5月、ニューヨークでのセッション録音。レーベルは米nonesuch。

こちらも先日ディスクユニオンの店頭で発見し仕入れたもの。このアルバムの存在は知ってはいたものの今まで出会うことなくきたため、売り場で見かけた時にはちょっと呼吸が乱れました(笑)。そもそもの発端は次の記事をご参照ください。

2014/11/09 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】ギルバート・カリッシュのピアノソナタXVI:52(ハイドン)

新譜としてリリースされた老年のギルバート・カリッシュのアルバムですが、これが、、老いたカリッシュが奥さんの愛した曲をまとめたという、心温まるプロダクションで、なんとなく心に残る演奏でした。その記事でカリッシュのことを調べていた際、ハイドンの録音もかなりあるということがわかりましたので、以来見つけたら手に入れようとずっと思ったまま、出会わずに来た次第。今回手に入れたLPはプロモーション用の非売品とのシールが貼られたものでしたが、タイトルは「ヨゼフ・ハイドンのピアノ音楽第4巻」とあり、ライナーノーツには第1巻から3巻までの収録曲も掲載され、カリッシュのハイドンの録音の全容も判明しました。

カリッシュの略歴などは上の記事を参照いただくとして、早速針を落とすと、実に慈しみ深く、美しい響きにいきなり耳を奪われました。LPのコンディションも悪くなく美しいピアノの音色を存分に堪能できる状態!

Hob.XVI:20 Piano Sonata No.33 [c] (1771)
録音のせいか、妙にしみる音色。眼前にピアノの美しい響きが広がります。nonesuchといえばワンポイント録音で名を馳せたレーベルゆえ、録音の自然さは見事なレベル。テンポは遅めで一音一音を慈しむようにゆったりと弾いていきます。まるで大切な宝石を一つ一つ数えていくようなタッチ。晩年のカリッシュの演奏の原点がここにあると知り、ちょっと感動的。これだけ音を大切にするタッチは滅多にありません。そして紡ぎ出される音楽は人の温もりの伝わる音楽。カリッシュ40代の演奏にしては枯れすぎかもしれませんが、これが彼のスタイルなのでしょう。
続く2楽章は、ハイドンのソナタの中でも最も美しいアンダンテの一つですが、カリッシュの訥々としたタッチで聴くこの曲はその素朴な美しさが最も自然に表された名演奏と言っていいでしょう。美しい音色やタッチなど技術的なことに対する執着は皆無で、純粋無垢な響きが自然に滔々と湧き出てくる音楽。飾り気なく淡々と弾き進めるカリッシュの真面目な音楽に心を洗われるよう。
フィナーレでもピアノが美しく響く範囲で優しいタッチから音楽が紡ぎ出されていきます。力むことを知らないカリッシュの音楽は心地よさを失いません。1曲目から素晴らしい演奏がジワリと沁みてきます。

Hob.XVI:40 Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
続く曲はまるでそよ風のような心地良さで入ります。ことさらサラサラとしたタッチでサクサクと進めることで曲の素朴な味わいが活きてきます。この曲では特に高音のタッチの透明感、キラメキが素晴らしい。時折り輝く高音がアクセントになって、力を入れるところはないのに音楽がくっきりと浮かび上がります。ピアノの響きを知り尽くした奏者による円熟の技。
この曲は2楽章構成。常に軽さを帯びたタッチが紡ぎ出す音楽の軽妙さがカリッシュの音楽のベースにあるよう。力任せでは音楽は弾まないとでも言いたげな軽妙洒脱な展開にうっとり。速い音階も技術を誇示することなく、実に自然流麗なもの。非常に滑らかな音階によってハイドンの音楽が自然に磨かれ、素朴な美しさを纏います。この曲も見事。

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Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
レコードを裏返して3曲目。すでにカリッシュの素晴らしい演奏にノックアウトされていますので、あとは純粋に楽しむだけ。落ち着いたタッチから繰り出される自然に磨かれた音楽の美しさに酔いしれます。1楽章の起こりに2楽章の沈み。特にこのアダージョも全曲同様美しい表情を持つだけに、カリッシュのタッチによって自然な美しさの極みに達します。耳を澄ますと、フレーズごとに大きな起伏をつけて弾いており、素朴に響くもののかなりの表現力を駆使しての演奏であることがわかります。慈しみ深いハイドンのソナタの演奏の代表格と言っていいでしょう。そしてフィナーレのリズムの面白さも秀逸。軽々とこなしていくので爽やかさまで纏いますが、やはりかなりの表現力があってのことですね。

Hob.XVII:3 Arietta con 12 variazioni [E flat] (early 1770's)
最後は変奏曲。力の抜けたカリッシュのタッチにより、まずはメロディーがいきなり枯れた美しさで驚かせます。そして変奏が始まると、フレーズごとに表情がくっきりと浮かび上がるところはカリッシュの表現力の面目躍如。冒頭から孤高の美しさを発散し続けます。この曲に入ってカリッシュのタッチは冴え渡り、フレーズの一つ一つが素晴らしい生命力を帯び、すでに神がかっています。これまで見せなかった大胆なタッチと息の長い休符を織り交ぜて演奏は自在の極地へ。変奏とはこのように弾くべしとのカリッシュの心情がハイドンの曲に乗り移ったような、カリッシュにしかできない演奏。いやいや、これは絶品です。

探し求めていた若き日のギルバート・カリッシュのソナタ集。晩年の演奏も感動的でしたが、実は若い頃から感動的な演奏をする人でした。全曲素晴らしいんですが、中でも最後のアリエッタと12の変奏はこれまで聴いたどの演奏より素晴らしい、超名演です。間違いなくこの曲のベスト盤としてよいでしょう。残念ながらこの素晴らしいLPを手に入れるのは難しいでしょうが、本家nonesuchのウェブサイトを見ると2009年のハイドン没後200年を記念してmp3で再発売されていますので、聴くことはできるでしょう。評価は全曲[+++++]とします。

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tag : ピアノソナタXVI:20 ピアノソナタXVI:40 ピアノソナタXVI:23 アリエッタと12の変奏XVII:3 LP

【新着】ダリア・グロウホヴァのハイドンのピアノソナタ集第3巻(ハイドン)

ショパンのようにハイドンを弾く人、ダリア・グロウホヴァのソナタ集の3枚目がリリースされました。

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ダリア・グロウホヴァ(Daria Gloukhova)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ5曲(Hob.XVI:6、XVI:34、XVI:14、XVI:40、XVI:37)を収めたアルバム。このアルバムのタイトルは「ハイドンのお気に入りのソナタ」。収録は2012年11月、これまでの2枚と同じ、モスクワ議会議事堂のラジオ放送収録第1スタジオでのセッション録音。レーベルは米CENTAUR。

短期間に3枚リリースされ、今回のアルバムも有名曲を集めたものではないことことを考えると、もしかして全集を企てているのでしょうか。

2013/12/30 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】ダリア・グロウホヴァのハイドンのピアノソナタ集新盤(ハイドン)
2013/12/02 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】ダリア・グロウホヴァのピアノソナタ集(ハイドン)

いずれにせよ、ハイドンのピアノソナタに新風を吹き込むグロウホヴァの新盤は気になるものということで、迷わずゲットし、迷わずレビューと言う流れです。

Hob.XVI:6 / Piano Sonata No.13 [G] (before 1760)
ごく初期のソナタ。4楽章構成。いつものように軽やかな入り。テンポを自在に動かし、サラサラとメロディーを置いていきます。いつものようにまさにショパンを弾くような詩情が溢れます。ハイドンの古典的な美しいメロディーと簡潔な構成の曲に花の香りをまぶしたような華やかさ。きらめくような高音の音階、疾走するような鮮やかなパッセージとふと力を抜いた間のコントラストが絶妙ですね。リズムを強調せず流すように弾いていくことでメロディーの美しさと構成の面白さをさらりと表現しています。
すっとメヌエットに入り、しっとりと落ちついた景色が広がります。中間部は敢えてすこし刺激を残すようなアクセントを織り交ぜ、ふたたび癒されるようにしっとりとした音楽に戻ります。さりげない変化が音楽を豊かにしています。
お気に入りのソナタというタイトルに偽りなし。このアダージョのデリカシーに富んだタッチは曲の魂に近づいたような渾身の演奏。なんと澄みきった音楽。なんとデリケートなタッチ。この初期のソナタの楽譜からこれほどの香しい音楽が流れ出そうとは。
フィナーレは広がった癒しを片付けるようにさらりと表情を変え、聴くものの脳に創意というものを教えるような機転。軽やかに進むメロディーの純粋に音楽的な響きに安堵。

Hob.XVI:34 / Piano Sonata No.53 [e] (c.1782)
一転してだいぶ後の時代の有名なソナタ。この曲はブレンデルのアルバムの冒頭に置かれていたので、ブレンデルの演奏で刷り込まれたもの。やはりブレンデルの骨太な楽興とはことなり、速めのテンポで力感ではなく流れの良さで聴かせる。ブレンデルがそば粉の噛見応えで聴かせるのに対し、グロウホヴァはそうめんの喉越しで聴かせているよう(笑) このソナタに込められたしなやかな流れの部分にスポットライトを当てて、これまでのこのソナタのイメージとは違った余韻を残します。
アダージョは流れの良さを出そうとしているのか、かなり速めのテンポで入りますが、この速めのテンポでメロディーの一音一音が天の川のきらめきのようなきめ細かな音のシャワーのようになって降り注ぎます。満天の星空を眺めるような澄みきった心境になります。終盤の起伏も迫力ではなくドラマティックに間をとります。
フィナーレはやはりきらめくようなメロディーの美しさが際立ちます。美しいタッチから生まれる控えめな推進力と響きのデリケートな変化。この繊細なニュアンスのコントロールこそグロウホヴァの真骨頂でしょう。この曲をリズムと力感で聴かせる演奏が多かったのでグロウホヴァのさらりとした演奏になじめないかと思いきや、聴いてみると、すっと心に染み込みました。

Hob.XVI:14 / Piano Sonata No.16 [D] (early 1760)
再びごく初期のソナタ。最初の1音の醸し出す癒しにいきなりノックアウト。この音色の感覚、冴え渡っています。千変万化する響きの魅力にやられっぱなし。指一本一本のタッチのコントロールの繊細さに驚きます。この記事を書きながらジャケット写真に目をやると、こちらの心に灯をともすようなグロウホヴァの視線にぐらっときます(笑) なんでしょう、この豊かな音楽。ハイドンのソナタのハイドン自身が書いた音楽に魔法をかけ、妖艶な魅力を与えてしまったよう。フォルテピアノの時代に書かれた音楽が、現代の艶やかなピアノの音色で、艶かしく、そして突き抜けるように清透な響きを帯びて流れていきます。繰り返し奏でられるメロディーが麻薬のように脳の癒し中枢を麻痺させていきます。
続くメヌエットは足早に。流れる音階の快感。そして時折きらめき、時折慌てながら、ハイドンのメヌエットのメロディーと構成の面白さを早送りで見せるような機転。この辺の演出の上手さも唸らされるところです。
フィナーレはメヌエットの流れを受け、早送りのイメージを引き継ぎます。やはり曲を完全に読みこなしてこそのアプローチでしょう。

Hob.XVI:40 / Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
初期のソナタと後年のソナタを交互に配置しているのですね。1783年頃作曲された2楽章構成のソナタ。長調のソナタなんですがすぐに短調に変わる光と影をあらわすような曲調。今までの曲のなかでは一番あっさりとした入り。初期のソナタに素晴しく豊かなニュアンスを与えたのに対し、このソナタでは少し枯れたような表情を垣間見せます。右手と左手のメロディーをすこしずらして聴かせるなど、はっとさせられる部分もあり、この曲ではすこしアプローチがこれまでと変わったようです。豊かなニュアンスを耳が期待しますが、逆に高音の透明感と良く響くピアノの響きの複雑さが聴こえてきます。
プレストに入ると鮮やかなタッチで活き活きとした音階を奏で、特に右手のキレの良い隈取りが音楽に輝きを与えます。2楽章構成のこの曲想に合わせて、響きのデリケートさよりも透明感のある軽やかなキレを聴かせたかったようです。

Hob.XVI:37 / Piano Sonata No.50 [D] (c.1780)
最後の曲は前曲よりも3年ほど遡った1780年頃の曲。アルバムの最後を飾るのに相応しい、色彩感と力感。グロウホヴァ独特の豊かなニュアンスが戻ってきました。速いパッセージなのにタッチのデリケートさと豊かな色彩感が出色。音楽に宿る気配から表情を引き出す鋭い感覚があるのでしょう。一気に弾き進める演奏も多い中、このような速いパッセージでも素晴しく豊かな表情が際立ちます。
つづくラルゴは好きな曲。ゆったりと沈み込む情感が特徴の曲ですが、グロウホヴァは沈み込まず、メロディの美しさを聴かせようとしているのか、フレーズのつなぎ目に間をおかずさらさらと流れる音楽に仕立て上げます。間をおかず軽やかなフィナーレに入りますが、こんどは途中で絶妙にリズムに重さををまぶし、一筋縄ではいかないというところを聴かせます。これも機知。ハイドンが仕込んだのとは異なる機知を織り込んできます。おそらくハイドンが聴いたら、この新しい才能を見抜き、自らの曲に新たな息吹を吹き込むこの奏者を気に入る事でしょう。

ダリア・グロウホヴァのハイドンのソナタ集の3枚目ですが、詩情溢れるグロウホヴァの魅力炸裂の素晴しい出来でした。とりわけ最初の3曲はタッチの繊細さが素晴しい超名演です。アルバムタイトルの「ハイドンのお気に入りのソナタ」に偽りなし。グロウホヴァ自身がソナタの中でもお気に入りの曲を選んで演奏しただけのことはあります。最近の若手ピアニストのなかでもハイドンの演奏にかけては右に出る人がいないほどでしょう。この美貌とこの演奏、ブレイクしそうですね。評価はもちろん全曲[+++++]とします。

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マルコム・ビルソンのクラヴィーアソナタ集(ハイドン)

最近手に入れたアルバムから。

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マルコム・ビルソン(Malcolm Bilson)のフォルテピアノによるハイドンのクラヴィーアソナタ5曲(Hob.XVI:50、XVI:43、XVI:3、XVI:20、XVI:40)を収めたアルバム。収録は2003年8月13日,14日、カナダ、トロントのカナダ放送グレン・グールド・スタジオでのセッション録音。レーベルはスイスのclaves records。

マルコム・ビルソンといえば、ガーディナーとイングリッシュ・バロック・ソロイスツとのモーツァルトのピアノ協奏曲全集でしょう。リリースされる度に一枚一枚手に入れて聴いたのが懐かしいですね。ブレンデル/マリナー盤が刷り込みでしたので、特に20番より前の協奏曲の鮮やかな色彩感は、ビルソン盤でその魅力を知ったものです。調べてみるとガーディナーとのモーツァルトの全集は1983年から88年にかけての録音ということで、古楽器によるモーツァルトのピアノ協奏曲録音の走りだったことがわかります。

マルコム・ビルソンのハイドンのソナタの録音は、手元にELECTRA NONSUCHによる1982年にXVI:49、XVI:52を収めたアルバムがあるのですが、ビルソン独特の媚びないというか、素っ気ない演奏と、普段は超絶Hi-Fi録音で知られるNONSUCHのリアルすぎる録音によって、どうにも音楽に入り込めない演奏という印象でした。

このアルバム、店頭で見かけた時に、NONSUCH盤の延長かと思いきや、レーベルも異なり、録音年代がぐっと新しいものだとわかり、迷わず購入しました。

マルコム・ビルソンは1935年、アメリカ、ロスンゼルス出身の鍵盤楽器奏者。弾くばかりではなく研究者でもあるそうです。ニューヨーク州のバード大学を卒業後、ベルリンの音楽舞台芸術アカデミー、パリのエコール・ノルマル音楽院で音楽を学び、イリノイ大学で博士号を得ました。1976年からはコーネル大学で教えています。ガーディナーとのピアノ協奏曲全集の他、フォルテピアノによるモーツァルトとシューベルトのピアノソナタ全集をHUNGAROTONに録音するなど、古楽器演奏の一翼を担いました。

このアルバム、ジャケットには気になるフレーズがあります。

”Five Keyboard Sonatas on a Schanz Fortepiano”

そう、ハイドン自身が「シャンツこそ最も優れたフォルテピアノ工房である」と言っている楽器です。シャンツのフォルテピアノを弾いたソナタは、これまで2つレビューで取りあげています。詳しくはパウル・バドゥラ=スコダの記事をご参照ください。

2013/03/02 : ハイドン–ピアノソナタ : キャロル・セラシのフォルテピアノ/クラヴィコードによるソナタ集
2013/01/13 : ハイドン–ピアノソナタ : ハイドンの時代の響き パウル・バドゥラ=スコダのフォルテピアノ作品集

古楽器に詳しいビルソンだけに、ハイドン自身が気に入っていたシャンツでの録音にこだわったのでしょうか。

Hob.XVI:50 / Piano Sonata No.60 [C] (probably 1794)
さっぱりとした表情はビルソンならではですが、音量を上げて聴くと、いつものビルソンとはちょっと違い、楽器の余韻を活かした透き通るような空気感とピリッとした緊張感に包まれています。響きに力があるシャンツの音色を活かして、力強いタッチで、フレーズごとにメリハリをつけて弾き進めていきます。録音は最新のものだけあって、自然で適度な残響がともなうもの。ビルソンの演奏はインマゼールのような色彩感やブラウティハムのようなしなやかなダイナミックさはなく、そのかわり誠実かつ骨格のしっかりした演奏。研究者でもある奏者として色づけを排した純粋な響きを求めているよう。少々音楽に固いところがありますが、それが良さでもあるでしょう。ハイドン晩年のソナタから禅の心境にも似た純粋な境地を感じさせます。一音一音のタッチが実にガッチリと決まります。
アダージョはゆったりした印象はなく、テンポはゆっくりなのに険しさを感じる音楽。前楽章同様、一音一音がクッキリ浮かび上がる鮮明なタッチで進みます。この曲のアダージョから情感を排して純粋な音楽のみが結晶となったような響き。ヨーロッパの伝統とは異なり、アメリカ出身のビルソンの中にある純粋な感性がベースにあるからでしょうか。純粋無垢な音楽。
フィナーレでも、間を活かしながらも強いタッチの鮮明な響きが繰り返しやってくるもの。シャンツのフォルテピアノのダイナミックレンジいっぱいに楽器を響かせ、強音の迫力で聴かせます。1曲目からハイドンのソナタの素晴しい迫力に圧倒されます。

演奏のスタンスは曲によって変わらず、一貫しているため、以後の曲は簡単に。

Hob.XVI:43 / Piano Sonata No.35 [A flat] (1770's)
続く曲はだいぶ作曲年代を遡った中期のもの。演奏によってはリズムの面白さ、軽妙洒脱さにスポットライトを当てる曲ですが、ビルソンはここでも、正攻法の演奏。確実なタッチで生真面目とも映る誠実さで弾き進めていきます。多少力は抜けているものの、教科書通り折り目正しい演奏。2楽章の途中で柔らかい音に響きを変化をさせる部分の美しさは楽器を知り尽くしたビルソンならでは。聴いているうちに、この淡々とした楽興は現代楽器と古楽器の違いはあるものの、オルベルツの演奏に近いように感じてきました。楽器が良く鳴って弾くのが気持ち良さそうな演奏。

Hob.XVI:39 / Piano Sonata No.52 [G] (1780)
前曲同様、小気味好い演奏も多い曲ですが、ビルソンは一貫してオーソドックスな攻め方。ハイドンのピアノソナタ全体を叙事詩を語るように演奏するような感じ。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
好きなXVI:20。この曲はじっくりとした入りから来ました。響きを美しく聴かせようというより、メロディーをとぼとぼ語っていくような弾きっぷり。時折テンポを落として音階を分解して鳴らすような場面があります。
キラ星のような美しさを誇るアンダンテは、ことさら曲の美しさに媚びることなく地味な展開。ただ、その地味さから音楽の美しさが立ちのぼるのがこの曲の素晴しいところ。

Hob.XVI:40 / Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
最後の曲は2楽章構成。アルバムの最後を飾る素朴さ。ビルソンは曲をどう料理するかということよりも、ハイドンの創作に対する謙虚な心情を吐露するように演奏することに集中しているよう。右手の音階がときおり鮮明に駆け上がりますが、全体ととしては落ち着いたもの。フィナーレもクッキリした表情が印象的でわかりやすい演奏。

このアルバム、評価が非常に難しいです。古楽器の研究者としてオーソドックスにフォルテピアノの演奏を仕上げてくるあたりは、かなりの腕前ですが、音楽自体が非常に謙虚で律儀なもの。ハイドンの音符をきっちり弾いていくことにかけて、そして楽器をきっちり鳴らしていく事にかけては素晴しい演奏ですが、どうしても音楽に固さを感じてしまうのがが正直な所。この5曲の演奏として皆さんに推すべき演奏は他にもいろいろありますが、ハイドンのソナタをいろいろ聴き込んできた人にはこのアルバムでのビルソンの筋の通った演奏の価値は伝わるのだと思います。私の評価はXVI:50が[+++++]、思い入れの強いXVI:20は[+++]、その他の曲は[++++]とします。

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tag : ピアノソナタXVI:50 ピアノソナタXVI:43 ピアノソナタXVI:39 ピアノソナタXVI:20 ピアノソナタXVI:40

キャロル・セラシのフォルテピアノ/クラヴィコードによるソナタ集

3月に入りましたね。しばらく弦楽四重奏曲を取りあげてきましたので、少し雰囲気を変えて。

CaroleCerasi.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

キャロル・セラシ(Carole Cerasi)のフォルテピアノとクラヴィコードによる「変奏曲の芸術」とタイトルがつけられたハイドンのピアノソナタ4曲(XVI:48、XVI:40、XVI:19、XVI:42)と「アンダンテと変奏曲」(XVII:6)の5曲を収めたアルバム。XVI:19のみクラヴィコードで、それ以外はフォルテピアノによる演奏。収録はクラヴィコードによる演奏が2009年6月5日、ロンドンの北の街、ハートフォードシャーのプレストン教区教会、フォルテピアノによる演奏が同年6月17日から18日、イギリス西部、ブリストル近郊のダイラム・パークでのいずれもセッション録音。レーベルは英METRONOME。

このアルバムは以前取りあげたクラヴィコード奏者で製作者でもあるデレク・アドラムの演奏を聴いて、クラヴィコードの素晴らしさに開眼し、クラヴィコードの演奏によるハイドンのソナタのアルバムをいろいろHMV ONLINEに注文していたものがようやく到着したもの。全5曲のうちクラヴィコードによる演奏は1曲のみですが、フォルテピアノの演奏とクラヴィコードによる演奏の響きの違いが鮮明に聴き取れ、しかも演奏も極上のもの。古楽器奏者の演奏にはいろいろなタイプがありますが、響きの細部にわたるまで完全にコントロールされた精緻な演奏。あえて言えばインマゼールの演奏に近いでしょうか。しかも録音も非常によく、フォルテピアノとクラヴィコードの音色を存分に楽しむ事ができます。

奏者のキャロル・セラシについて調べておきましょう。オフィシャルサイトはこちら。

Carole Cerasi's Website

キャロル・セラシはセファルディ(中世にスペインとポルトガルに居住したユダヤ人の子孫)とトルコ人を親にもち、スウェーデンに生まれたフォルテピアノ奏者。しかもフランス語環境で育ったという特異なオリジンを持つ人。1982年からロンドンを拠点に活動しています。
11歳でハープシコードの演奏に興味をもつようになり、しばらくしてアントワープのケネス・ギルバートのコースに最年少で参加しています。その後師事したジル・セヴァーズに音楽的に決定的な影響を受け、またグスタフ・レオンハルトやトン・コープマンの薫陶も受けたとのこと。現在はユーディ・メニューイン・スクールのハープシコード講座の教授、ギルドホール音楽学校と王立音楽アカデミーでハープシコードとフォルテピアノの講座の教授として活躍しています。セラシの最初のソロアルバムである、エリザベト=クロード・ジャケ=ド=ラ=ゲール(Élisabeth-Claude Jacquet de la Guerre)のクラブサン曲集は英グラモフォン・アワードのバロック器楽部門賞を受賞して有名になったとのことです。

セラシのアルバムはすべてMETRONOMEレーベルからリリースされていて、このハイドンが8枚目ということになります。

最初の2曲はフォルテピアノの演奏。楽器は1795年頃に造られたウィーンのヨハン・シャンツ(イギリスのバースにあるホルバーン美術館所蔵のもの)で、シャンツといえば、以前にパウル・バドゥラ=スコダのソナタ集で取りあげましたが、ハイドン自身が「シャンツこそ最も優れたフォルテピアノ工房である」と言っている楽器です。

2013/01/13 : ハイドン–ピアノソナタ : ハイドンの時代の響き パウル・バドゥラ=スコダのフォルテピアノ作品集

クラヴィコード目当てで手に入れたアルバムですが、なにやらフォルテピアノの方も気になってきました(笑)

Hob.XVI:48 / Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
適度な残響を伴った鮮明な録音。良く響く部屋で収録されているようです。ワンポイントマイクによる収録のような広大な空間にフォルテピアノが浮かび上がります。楽器の音色はハイドンの言葉がうなずける素晴らしいもの。鮮明なタッチとその余韻が心地よく広がります。この楽器、中低音のしっかりとした音色は、楽器の骨格の堅牢さを感じさせる素晴らしい安定感。キャロル・セラシの演奏はピアノに近いダイナミックさを感じさせながらも古楽器である事を踏まえた節度もあります。ゆったりとしたテンポとフレーズごとにしっかりとの表情をつけていく事で、ハイドン成熟期の詩情溢れる音楽が立ちのぼります。非常におちついた大人の演奏。
2楽章は転がるような速いテンポのパッセージのキレが見事。音楽のメリハリもしっかりついて、躍動感も十分。楽器の響きの隅々までコントロールして、ダイナミクスも楽器のキャパシティー十分に踏まえたもの。音が割れる寸前まで楽器を鳴らし、駆け抜けるような見事な指の回転。1曲目から、相当の実力者とわかる圧倒的な制御力。

Hob.XVI:40 / Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
次も2楽章構成。フレーズのメリハリの付け方が非常にうまく、ハイドンらしい古典の範疇での適度な立体感。一線を踏み越えると台無しになってしまいますので、この辺の音楽性、バランス感覚は確かなものでしょう。訥々と語っていくような絶妙な語り口でメロディーを重ねていきます。
2楽章は前曲と同様、クッキリとしたフレーズと吹き抜けるような速いパッセージが見事な、完璧な演奏。テクニックが確かなことは言うまでもありませんが、テクニックの誇示にならない理性が働き、爽やかな余韻が残る、言うことなしの出来です。

Hob.XVI:19 / Piano Sonata No.30 [D] (1767)
期待のクラヴィコード。音量は落ちますが、フォルテピアノの鮮明な響きに慣れた耳に、いきなり優しい音色がしっとりとしみ込んできます。クラヴィコードは1998年カリン・リヒターのもの(1771年頃に造られたクリスティアン・ゴットローブ・フーベルトのコピー)。フォルテピアノもクラヴィコードもa=415Hzに調律されています。録音会場も異なるため、音色も響く空間も異なります。フォルテピアノが少し遠くに定位していたのに対し、クラヴィコードは近くで弾いているように感じる録音。こちらも録音は見事。何より見事なのは曲と楽器の選択。前2曲がハイドン成熟期である1780年代のものなのに対し、クラヴィコードで弾かれたこの曲は1760年後半とシュトルム=ウント=ドラング期に入らんとする時期のもの。素朴な曲調に素朴な音色がマッチして、実に絶妙な響き。繊細な高音の響き、指のタッチそのままの柔らかいアタック感、張られた弦同士が微妙に響き合う事から生じる精妙さ、そして、限られた範囲で非常に繊細にコントロールされた音量の変化。クラヴィコードの響きの宇宙に引き込まれます。まるで別世界のような繊細きわまりない音楽に飲み込まれてしまったよう。キャロル・セラシはフォルテピアノとはタッチも演奏スタイルも見事に切り替えて、クラヴィコードの繊細な響きに合わせて音楽を創っていきます。自室で音楽を語り聞かされるような親密さです。デレク・アドラムのキレのよい語り口のクラヴィコードも良かったんですが、このセラシの精妙な響きに引き込まれるようなクラヴィコードも絶妙です。

Hob.XVI:42 / Piano Sonata No.56 [D] (c.1783)
フォルテピアノの鮮明な響きにもどり、夢から覚めたよう。この曲の刷り込みはピアノを色彩感豊かに響かせたブレンデル盤ですが、フォルテピアノでも素晴らしいな色彩感が得られることがわかります。ハイドンのソナタのなかでも格別濃い詩情が漂う名曲ですが、現代ピアノによる演奏に慣れた耳にも、フォルテピアノによる演奏の方が説得力があると思わせる素晴らしい演奏。最初の2曲でも触れましたが、フレーズひとつひとつの描き方が非常にうまく、落ち着いた古典の品格もある素晴らしい演奏。3楽章を通して、非常に安定感があり、セラシによる極上の演奏をただただ楽しむべき演奏という印象です。もはやこれを超える演奏は考えられないような神憑ったものと聴こえます。

Hob.XVII:6 / Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
最後に名曲でアルバムを締めます。「変奏曲の芸術」とのタイトルをつけられている意味がここに来てはっきりわかりました。一つ一つの変奏の見事な描き分けの積み重ねが描く音楽の豊穣さがこのアルバムのテーマであったわけです。この最後の大曲でその表現を極めようということですね。これまでの曲と同様、丁寧なフレージングでじっくりと曲を描いていくばかりではなく、後半予想外にテンポを上げてダイナミックスさと荘厳な躍動感を極めようと言う意図まで見えてきて、セラシの音楽の大きさを思い知ることになりました。この人、只者ではありません。

初めて聴くキャロル・セラシのハイドンのソナタ集。クラヴィコードへの興味からたどり着いたアルバムでしたが、クラヴィコードの演奏のみならず、フォルテピアノの演奏も恐ろしく冴えたものでした。冒頭響きの細部までコントロールされているところをインマゼールの演奏に近いと例えましたが、レビューを通して得た印象は、ブラウティハムのダイナミックさをもちながらもより古典のバランスを踏まえた演奏であり、シュタイアーのような自在な表現力を持ちながら、過度な踏み込みを避けるバランス感覚を持ち合わせるなど、フォルテピアノの演奏者として、特にハイドンの演奏ではこれまで聴いた素晴らしい演奏に勝るとも劣らない素晴らしいものだと感じました。今まで全く知らない人ですが、要注目です。ハイドン以外にリリースされたアルバムも聴いてみたくなりました。評価はもちろん[+++++]とします。

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tag : ピアノソナタXVI:48 ピアノソナタXVI:40 ピアノソナタXVI:19 ピアノソナタXVI:42 アンダンテと変奏曲XVII:6 古楽器 ハイドン入門者向け

【新着】グリュミオー三重奏団のピアノソナタ編曲集

今日は珍盤。久しぶりに府中の山野楽器の店頭で手に入れた国内盤。アルテュール・グリュミオーの芸術と題されたシリーズの第2巻。最近最発売されたシリーズです。

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グリュミオー三重奏団(Grumiaux Trio)の演奏でハイドンのピアノソナタ3曲(Hob.XVI:40、XVI:41、XVI:42)をフランツ・アントン・ホフマイスター(Franz Anton Hoffmeister)が弦楽三重奏のために編曲したとされる曲とベートーヴェンの弦楽三重奏曲1番Op.3の4曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1969年2月、収録場所は記載がありません。レーベルはDECCAマークの国内盤。グリュミオーということで旧PHILIPS盤ではないでしょうか。

アルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux)は良くご存知でしょう。以前にヴァイオリン協奏曲の記事で取りあげています。

2011/02/20 : ハイドン–協奏曲 : アルテュール・グリュミオーのヴァイオリン協奏曲

演奏者の情報はリンク先をご覧ください。もちろん、私の刷り込みは先の記事でもふれているようにハスキルとのモーツァルトのヴァイオリンソナタ集。グリュミオーのヴァイオリンの図太い美音とこちらも灰汁の抜けきったハスキルのピアノはもはや神憑ったような緻密さで、モーツァルトの素晴らしいメロディーを演奏していきます。図太い美音はグリュミオーならではの圧倒的な存在感を残しました。

今日取り上げるピアノソナタ3曲はもともと1783年頃の作曲で翌1784年にマリー・エステルハージ公爵夫人に献呈され出版されたもの。これが1788年に出版を盛んにしていたホフマイスターからヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの弦楽三重奏として出版されたもの。編曲はホフマイスターとする説もあるが、よくわからないとのこと。3曲ともピアノソナタとしては良く聴くものですが、この弦楽三重奏曲版もなかなか侮れない出来。まるで最初から弦楽三重奏曲のために書かれたような素晴らしい演奏です。

グリュミオー三重奏団のメンバーは下記の通り。

ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux)
ヴィオラ:ジョルジュ・ヤンツェル(Georges Janzer)
チェロ:エヴァ・ツァコ(Eva Czako)

Hob.XVI:40 / Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
驚くのが録音の鮮明さ。1969年の録音としては素晴らしいもの。グリュミオーの美音がいきなり炸裂です。張りのある素晴らしいヴァイオリンの音色に圧倒されます。明るく少し郷愁を感じさせる聴き慣れたピアノソナタのメロディーが、素晴らしいテンションで弾かれます。リズムとかキレとかではなく、耳に飛び込んでくる素晴らしい緊張感。ヴィオラとチェロはあまりのヴァイオリンのテンションにやはり伴奏に回らざるを得ないでしょう。耳を突き抜けて心に刺さる音楽。小細工のない正面突破の演奏の迫力は素晴らしいものがあります。3人のアンサンブルは完璧。今日取り上げる3曲はすべて速いテンポの2楽章構成。2楽章は鮮明かつ素晴らしいキレの演奏。速めのテンポですが、その彫りの深さは切れ味の良い斧でザクザク丸太を刻むような趣。ただ切れ味鋭いだけではありません。ちょっとツボにはまりました。1曲目からもの凄い迫力に圧倒されっぱなし。

Hob.XVI:41 / Piano Sonata No.55 [B] (c.1783)
2曲目もテンションは衰えず、蒸気機関車が爆音を轟かせて走り去るところを眼前に観るよう。目の前で本当にヴァイオリンを弾いているようなリアリティ。これほどの強く美しい音色のヴァイオリンは知りません。全音域ハイテンション。うっすらと自動車の走るような暗騒音が聴こえるのが、不気味な迫力を増しています。この曲は曲想が穏やかで、休符を長めにとった印象的な演奏なんですが、それでもヴァイオリンの圧倒的な存在感は微塵もゆらがないのが凄いところ。アンプのヴォリュームを少し揚げて、美爆音に身を委ねる快感。良く聴くとヴィオラとチェロも少しざらつくような迫力ある音色でグリュミオーと音色が良く合っています。2楽章に入って少し流すような雰囲気も加わりますが、手加減はなし。

Hob.XVI:42 / Piano Sonata No.56 [D] (c.1783)
原曲は非常に美しいメロディーで好きな曲。編曲ものにありがちな不自然さは一切なく、これが原曲といわれても疑問はまったくありません。ホフマイスターの編曲だとしたら、相当な腕前と言わざるを得ないでしょう。もちろんグリュミオーの美爆音による素晴らしい演奏が合ってそう聴こえているのだと思います。弦楽三重奏の演奏を聴きながら脳内でピアノの響きが鳴り響きます。脳の老化防止に絶妙な効果がありそう。この曲ではチェロのエヴァ・ツァコの素晴らしい音色も堪能できます。脇も手堅いですね。
2楽章の速いパッセージもドンピシャのリズムとアンサンブルで完璧な演奏。痺れます。弦楽器の浸透力にしびれる演奏。

グリュミオーの美音が聴けるだろうというような軽い期待で聴いたこのアルバムですが、あまりのテンションの高さと突き抜けるような迫力に圧倒されっぱなしでした。正直弦楽四重奏曲の最高の演奏よりも、弦楽器の音色の魅力がダイレクトに味わえる素晴らしい演奏。人類の至宝レベルの演奏です。ハイドンのオリジナルの作品ではない可能性が高いですが、編曲も見事故ハイドンの作品と同等以上に緊密かつ機知に富んだ曲と言える出来。通りがかりに手に取り偶然みつけたアルバムですが、この素晴らしさは圧倒的でした。評価はもちろん全曲[+++++]とします。

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tag : ピアノソナタXVI:40 ピアノソナタXVI:41 ピアノソナタXVI:42 ヒストリカル

アンヌ・ケフェレックのピアノソナタ集

今日は整理したばかりのピアノソナタの最近入手したアルバムを。

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アンヌ・ケフェレック(Anne Queffélec)の弾くハイドンのピアノソナタ集。収録曲目は収録順にピアノソナタ(XVI:52)、アンダンテと変奏曲(XVII:6)、ピアノソナタ(XVI:34)、ピアノソナタ(XVI:40)の4曲。録音は2001年9月30日、10月1日、スイスのモントルー東方の街、シオンのティボール・ヴァルガホールでのセッション録音。レーベルはフランスのMIRARE。

ピアニストのアンヌ・ケフェレックは私は初めて聴く人。1948年パリ生まれのフランスのピアニスト。パリ音楽院でピアノを学び、その後パウル・バドゥラ・スコダ、イェルク・デームス、ブレンデルにピアノを学び、ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝したとのこと。ということで、現在63歳、このアルバム収録時は53歳ということになります。意外なところでいうと映画「アマデウス」でマリナーの指揮でピアノ協奏曲の演奏を担当していたということ。

ケフェレックの演奏は一言で言うと女流ブレンデルという感じです。ブレンデルのハイドンは既に何度か触れていますが、ハイドンのピアノソナタの響きの変化を自在に表現し、PHILIPSの名録音による静寂の空間にピアノの美音を響き渡らせるもの。特に左手の力感はハイドンの演奏においても重要な役割を担っており、ハイドンのソナタに潜む力感を抜群の起伏で聴かせると言うもの。ブレンデルにピアノを学んだこともあるというケフェレックですが、その響きの本質にはブレンデルのソナタのイメージが大きく影響しているように聴こえます。ただし、ピアノのならし方は女性ならではというか、女性の力感の限界も感じさせてしまいます。悪い意味ではなく、やはり感じるのはブレンデルの線の太さに対し、繊細さ。そう、あのブレンデルの純度の高い響きが繊細さを伴って表現されているんですね。

1曲目はハイドンのピアノソナタの最高峰XVI:52。

ピアノを存分にならしきった冒頭の入り。速いパッセージの指のキレも十分で、ブレンデルより少し低音の厚みというか、響きの揺るぎなさが弱いように感じますが、純度ではもしかしたら上回るような非常に磨き抜かれた響き。弱音のフレーズの線の細い繊細さがもしかしたら一番の特徴かもしれません。テンポは結構ゆらして、特に休符を効果的に使ってフレーズの変化を付けていきます。2楽章は女性ならではの優しい、けれどもどこか厳しさのあるタッチが美しい演奏。後半の音量を落としたところの詩情は、ケフェレックの良さがとてもでていますね。3楽章はピアノの響きの自在さをフルに使った名演。ブレンデルが太い指で弾く音だとすれば、ケフェレックは細い指で奏でる繊細さと、鋼のような強さをみせる音もあり、音色上の面白さが際立ちます。特に最高音分のキラメキ感はブレンデルの演奏を上回るもの。この曲、存分に楽しめる名演だと思います。

続いてアンダンテと変奏曲。

冒頭からピアノの美音に打たれる名演奏。最初の入りの旋律は氷の微笑のような厳しさと暖かさを兼ね備えたもの。この曲はケフェレックの表現にマッチしていますね。フレージングは弾き進むうちにケフェレックの個性が徐々にでてきます。ゆったりとしたフレーズの最後をちょっと早めにたたむ感じです。変奏がすすむにつれ険しさが増す感じも悪くありません。美しいメロディーラインを抑制した表現を旨く使いながら絶妙の間で表現していきます。トレモロで弾かれるメロディーのちょっと不安を含む表情が素晴らしい。途中から右手の奏でるメロディーが宝石のごとき輝き。この曲はケフェレックの良さが存分に発揮されていますね。右手の美音の連なりは息を飲むほど。後半の盛り上がりも曲の構造をよく把握してうまくこなしています。この曲は私はブレンデル以上の感動を覚えました。

つづいてピアノソナタXVI:34。この曲はいつもコメントをいただくyoshimiさんがいろいろな奏者の演奏を比較した含蓄に富んだ記事を書かれていますのでそちらもご覧いただいた方がいいと思います。

気ままな生活:ハイドン ~ 短調のピアノ・ソナタ(1) Hob.XVI:34

この曲はブレンデルのアルバムでも最もよく聴くアルバムの冒頭を飾る曲だけにその刷り込みの印象も大きいんですね。そのアルバムを紹介した記事もリンクを張っておきましょう。

ハイドン音盤倉庫:絶品、ブレンデルのピアノソナタ

この曲でケフェレックの個性がよくわかりました。起伏よりもメロディーの線の美しさの表現の表現が彼女の特徴なんでしょう。特に右手のキラメキ感を主体としたガラス細工にも似た繊細さが持ち味。もちろん師であるブレンデル同様の響きの変化、純度の高い音という共通する要素があるものの、その中でもケフェレックの魔法のような右手のキラメキ感の存在感は際立ちます。

つづくXVI:40でも同様。このアルバムを聴いて感じるのは曲ごとの出来、不出来の差が極めて小さいこと。セッション録音でも曲ごとにかなりムラのある演奏も多いもの。最後のXVI:40まで緊張が張りつめているのもこのアルバムの良いところですね。これまでの3曲とは異なるくだけた曲想ですが、その曲想を旨く表現できていると思います。

このアルバム、非常に気に入りました。評価は全曲[+++++]です。ハイドンのソナタの美しいキラメキ感を旨く表現した佳演という位置づけでしょう。このアルバムもいままで聴いていなかったのが、ハイドンのアルバムを聴き通す当ブログの主旨から言うと惜しまれるもの。もっと早く手に入れているべきすばらしいアルバムでしたね。ピアノ好きな方には是非聴いていただきたい良い演奏です。



今日はスポーツクラブで泳いでから家でのんびり。

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夕食は鳥のハムと、スペイン産のムール貝の缶詰をつまみにビールから。(後で確認したら、メキシコ産でした)

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いろいろつまんで、今日はスペインTORRESの白ワインで。

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伊勢丹で豚の良い肉を見つけたのでいつものように塩、胡椒、強力粉をはたいてソテー。厚みがあったので弱火でじっくりソテーのうえ、ファイアー、もといフランベです。

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今日はいつものセージではなくたっぷりとタイムの香りを油に移して、爽やかな香りでいただきました。明日からまた仕事が忙しいです。なるべく更新したいんですが、ちょっと間が空くかもしれませんのでよろしくお願いいたします。

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tag : ピアノソナタXVI:52 ピアノソナタXVI:34 ピアノソナタXVI:40 アンダンテと変奏曲XVII:6

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

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