【新着】フランチェスコ・コルティのソナタ集(ハイドン)

今日はハープシコードによるソナタ集。

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フランチェスコ・コルティ(Francesco Corti)のハープシコードによる、ハイドンのファンタジア(XVII:4)、ピアノソナタ(XVI:37、XVI:31、XVI:32、XVI:46、XVI:26)、カプリッチョ「8人のヘボ仕立屋に違いない」(XVII:1)の7曲を収めたアルバム。収録はパリのピエール・マルボスというピアノ販売店の4'33ホールでのセッション録音。レーベルは初めて手に入れるevidenceというレーベル。

フランチェスコ・コルティという人は初めて聴く人。調べてみると、何と今週近所で行われる調布音楽祭に来日するとのこと。いつものように略歴をさらっておきましょう。イタリアのフィレンツェの東南にあるアレッツォで1984年に生まれ、ペルージャでオルガン、ジュネーブとアムステルダムでハープシコードを学びました。2006年ライプツィヒで開催されたヨハン・セバスチャン・バッハ・コンクール、2007年に開催されたブリュージュ・ハープシコード・コンクールで入賞しているとのこと。2007年からはマルク・ミンコフスキ率いるレ・ミュジシャン・ドゥ・ルーヴルのメンバーとして活躍している他、主要な古楽器オケとも多数共演しているそうで、ハープシコード界の若手の注目株といったところでしょうか。

Hob.XVII:4 Fantasia (Capriccio) op.58 [C] (1789)
速めのテンポでハープシコード特有の雅な音色が響き渡ります。使っている楽器はDavid Ley作製の1739年製のJ. H. Gräbnerと記載されています。録音は割と近めにハープシコードが定位するワンポイントマイク的なもので、ハープシコードの雅な響きを堪能できる録音。約6分ほどの小曲ですが、ハープシコードで聴くとメロディーラインが全体の響きの中に調和しつつもくっきりと浮かび上がり、この曲の交錯するメロディーラインの面白さが活きます。しかも速めにキリリと引き締まった表情がそれをさらに強調するよう。最後に音色を変えるところのセンスも出色。普段ピアノやフォルテピアノで聴くことが多い曲ですが、ハープシコードによる演奏、それもキレキレの演奏によってこの曲のこれまでと違った魅力を知った次第。

Hob.XVI:37 Piano Sonata No.50 [D] (c.1780)
軽快なテンポは変わらずですが、今度は所々でテンポをかなり自在に動かしてきます。また、休符の使い方も印象的。ちょっとした間を効果的に配置して、ソナタになると少し個性を主張してきます。速いパッセージのキレの良さは変わらず、ハープシコードという楽器につきまとう音量の変化の幅の制限を、テンポと間の配置で十分解決できるという主張でしょうか。次々と繰り出される実に多彩なアイデアに驚くばかり。ピアノとは異なる聴かせどころのツボを押さえてますね。驚くのが続く2楽章。予想に反してグッとテンポを落とし、一音一音を分解してドラマティックに変化します。ハープシコードでここまでメリハリをつけてくるとは思いませんでした。そしてフィナーレでは軽快さが戻り、見事な対比に唸ります。フィナーレもハイドンの機知を上手く汲み取ってアイデア満載。見事なまとめ方です。

Hob.XVI:31 Piano Sonata No.46 [E] (1776 or before)
冒頭のメロディーのハープシコードによるクリアな響きが印象的。この曲では落ち着いた入り。一音一音のタッチをかみしめるように弾いて行きながら、徐々にタッチが軽くなっていく様子が実に見事。曲想に合わせて自在にタッチを切り替えながら音楽を紡いでいきます。瞬間瞬間の響きに鋭敏に反応しているのがわかります。ここでも印象的な間の取り方で曲にメリハリがしっかりとつきます。アレグレットの2楽章は壮麗な曲の構造を見事に表現、そしてフィナーレではハープシコードの音色を生かしたリズミカルな喧騒感と楽章に合わせた表現が秀逸でした。

Hob.XVI:32 Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
ピアノでの演奏が耳に残る曲で、低音の動きの面白さが聴きどころの曲ですが、コルティのハープシコードで聴くと、新鮮な響きでその記憶が刷新されるよう。ハイドンはハープシコードの華やかな響きも考慮して作曲したのでしょうか。古楽器では迫力不足に聴こえる演奏も少なくない中、そういった印象は皆無。むしろキレのいいタッチの爽快感が上回ります。続くメヌエットでは調が変わることによる気配の変化が印象的に表現されます。ピアノではここまで変化が目立ちません。そして短調のフィナーレは目眩くような爆速音階が聴きどころ。コルティ、テクニックも素晴らしいものを持っていますね。最後の一音の余韻に魂が漲ります。

Hob.XVI:46 Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
初期のお気に入りの曲。壮麗な1楽章、この曲が持つ静かな深みのような不思議な気配を見事に捉えたタッチに引き込まれます。メロディ中心の穏やかな曲想だけに、落ち着いたタッチで穏やかに変化する曲想をじっくり楽しむことができます。やはり曲想に応じて巧みにタッチをコントールしており、その辺りの音楽性がハイドンの真髄を捉えているのでしょう。特に高音のメロディの研ぎ澄まされた美しさを聴かせどころで披露するあたりも見事。そして、アダージョではさらに洗練度が上がり、響の美しさは息を呑むほど。このアルバム一番の聴きどころでしょう。微視的にならずに曲全体を見渡した表現に唸ります。比較的長い1楽章と2楽章をこれだけしっかり聴かせるのはなかなかのものですね。そしてそれを受けたフィナーレは爽快さだけではなく、前楽章の重みを受けてしっかりとしたタッチで応じ、最後に壮麗な伽藍を見せて終わります。

Hob.XVI:26 Piano Sonata No.41 [A] (1773)
ソナタの最後はリズムの面白さが際立つハイドンらしい曲。コルティは機知を汲み取り、リズムの変化を楽しむかのようにスロットルを自在にコントロールしていきます。そして明るさと陰りが微妙に入れ替わるところのデリケートなコントロールも見事。途中ブランデンブルク協奏曲5番の間奏のようなところも出てきますが、これぞハープシコードでの演奏が活きるところ。曲が進むにつれて繰り出されるアイデアの数々。コルティの多彩な表現力に舌を巻きます。メヌエットは端正なタッチで入りますが、終盤音色を変えてびっくりさせ、非常に短いフィナーレではさらに鮮やか。

Hob.XVII:1 Capriccio "Acht Sauschneider müssen sein" 「8人のへぼ仕立屋に違いない」 [G] (1765)
最後はユーモラスなテーマの変奏曲。この曲を最後に持ってくるあたりにコルティのユーモアを感じざるを得ません。ハープシコードでの演奏に適したソナタ数曲のまとめに、軽い曲を楽しげに演奏するあたり、かなりハイドンの曲を研究しているはずですね。もちろん演奏の方はソナタ同様素晴らしいものですが、力を抜いて楽しんでいる分、こちらもリラックスして聴くことができます。まるでソナタ5曲をおなかいっぱい味わった後のデザートのよう。聴き進むとデザートも本格的なものでした! 最後はびっくりするような奇怪な音が混じるあたりにコルティの遊び心とサービス精神を味わいました。

久々に聴いたハープシコードによるソナタ集。まるで眼前でハープシコードを演奏しているようなリアルな録音を通してフランチェスコ・コルティの見事な演奏を存分に楽しめました。これは名盤ですね。評価は全曲[+++++]とします。調べてみると、これまでにも色々とアルバムをリリースしているようですので、私が知らなかっただけだと思いますが、若手の実力派と言っていいでしょう。コルティのウェブサイトにもリンクしておきましょう。

Francesco Corti

これは是非実演を聴いてみたいところですが、折角近所で行われる調布音楽祭にコルティが出演する6月14日も17日もあいにく都合がつきません。次回の来日を期待するとしましょう。

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【新着】マルクス・ベッカーのピアノソナタ集(ハイドン)

久々にCDに戻ります(笑)

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マルクス・ベッカー(Markus Becker)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ5曲(Hob.XVI:21、XVI:34、XVI:28、XVI:46、XVI:23)を収めたアルバム。収録は2015年10月、ドイツのハノーファーにある北ドイツ放送(NDR)の放送大ホールでのセッション録音。レーベルはAvi-musicとdeutschelandradioの共同プロダクション。

しばらくLP、もちろん旧譜で手に入れにくいものばかり取り上げておりましたので、ここらで新譜を取り上げませんと、新譜情報を求める読者の期待を裏切りかねません。最近手に入れたものの中でもこれはという演奏でしたので取り上げます。

Markus Becker - Pianist

奏者のマルクス・ベッカーは1963年生まれのドイツのピアニスト。カール=ハインツ・ケマーリング(Karl-Heinz Kämmerling)やアルフレッド・ブレンデル(Alfred Brendel)に師事し、1987年、ハンブルクで開催された国際ブラームスコンクールで1位となりました。また、マックス・レーガーの作品の録音では2000年にドイツ・レコード賞、エコー賞などを受賞しています。また、1993年からはハノーファーの音楽演劇大学の教職にあります。

上に掲載した彼のサイトの録音のページを見るとこれまでにかなりの枚数のアルバムがリリースされていて、バッハからブラームス、シューマンをはじめとして数多くの作曲家の作品を録音していることがわかります。ひときわ目を引くのがマックス・レーガーの12枚に及ぶ作品集。マックス・レーガーとなると、こちらは全くの門外漢ということで、マルクス・ベッカーの奏者の器を計れる立場にありませんね(笑) ということで、このハイドンのアルバムでその器を実感したいと思います。

Hob.XVI:21 Piano Sonata No.36 [C] (1773)
非常に軽やかなタッチの演奏。録音も非常に優秀で空間にピアノがクリアに定位し、ハイドンのソナタの理想的な演奏。あえて低音の重厚感を殺し、中高域のクリアさを強調しているよう。よく聴くと一音一音ごとに絶妙にタッチがキレており、タッチのキレ味で聴かせる演奏。リズムの小気味良さが光り輝く演奏。これは鮮やか。
アダージョに入っても一貫して気持ちよく響くピアノの音色の心地よさ。これがマルクス・ベッカーの持ち味と見ました。ゆったりした楽章でもゆったりし切ることなく、適度にクリアでタイトなピアノの響きの面白さで聴かせるかなりの腕前。全ての音の響きが澄み渡ってて本当に気持ちよく楽器を響かせます。こんな印象を感じたのは初めて。
びっくりしたのがフィナーレ。一音一音のコントラストの見事な演出。完全に全ての指のタッチの強さとタイミングが制御しきれている感じ。しかもさっぱりとした爽やかさを纏う完璧なタッチ。力みは皆無でむしろかなり力を抜いているように聴こえます。ハイドンがこんなにも爽やかな表情を見せる匠のタッチ。1曲からベッカーの爽やかさにやられました。

Hob.XVI:34 Piano Sonata No.53 [e] (c.1782)
ブレンデルの演奏が刷り込みの曲ですが、ベッカーを聴いてブレンデルの響きをデフォルメした演奏の垢が完全に落ちました。この曲も爽やかなピアニズムが聴きどころだったと再発見。相変わらず全音符が完璧に制御され、一音一音のタッチの鮮やかさはもはや神がかってきています。重厚さとは無縁のリズムのキレに惚れ惚れとします。次々とやってくる打鍵の波に打たれるエクスタシー!
アダージョも前曲同様ゆったりすることなくピアノの響きに吸い込まれるような透明感。これほどにタッチのキレを感じた演奏は他にはアムランの演奏がありますが、アムランの響きには青白くひかる狂気のような前衛性を感じるのに対し、ベッカーの演奏は純粋無垢。そしてタッチは冴え渡っているのに、どこかほのぼのとした印象もあり、それがハイドンらしさを感じさせます。響きの余韻に無駄がなく清潔さも保つ見事さ。
そしてジブシー風な3楽章のメロディーから滲み出る独特な雰囲気のセンスも見事。見事。見事。こりゃ参りました。

Hob.XVI:28 Piano Sonata No.43 [E flat] (1776 or before)
次々と演奏されるソナタですが、この曲も冒頭から鳥肌がたたんばかりのタッチの見事さに圧倒されます。まさに音符ごとにタッチが千変万化。なんというコントロール力でしょうか。指一本一本の打鍵の強さとタイミングが超精密に制御され、超自然な響きを生み出します。細密画はどこか不自然な緻密さがあるものですが、その不自然さが皆無な超自然な細密画のよう。しかも写真とは異なるアーティスティックさを帯びているので、絵としての迫力も十分。ハイドンという古典を自然なまま現代アートにも比較し得る作風で蘇らせているよう。ソナタを聴く快感に溺れます。
鳥のさえずりのようなメヌエットの入り。さっと日が陰るとデリケートなニュアンスを帯び、同じ鍵盤からとは思えない音色に変わり、そして再び鳥のさえずりに戻ります。この音色とニュアンスの変化の面白さこそがハイドンの真骨頂。
そして、驚異のタッチを感じるフィナーレ。完璧な制御で絶妙なタッチの連続に再び驚きます。この楽章がこれほど聴きごたえがあったとは。マルクス・ベッカーのもはやマジックレベルのタッチが冴え渡ります。ユッタ・エルンストもビックリ(笑)

Hob.XVI:46 Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
こちらも有名曲ですが、これまでの演奏の垢を一切感じさせない純粋な響きにちょっと驚きます。音符を重ねる重ね方のアクセントが絶妙な面白さを生み出し、こんな響きがあったのかと改めて気づかされます。新たなハーモニーを発見した気分。特に速いパッセージの流麗なタッチから生み出されるさざ波のような響きの面白さは並ではありません。そして天から星が降り注ぐような高音のメロディーの美しさ、硬質なアクセントのキレ、硬軟織り交ぜた音色の変化。やられっぱなしです。おそらく左手はかなり控えめな力での演奏ですが、それがクリアな響きを生んでいるよう。休符を長く取ることで曲想の変化を印象づけるのではなく、むしろ休符を短くしてタイトな印象を作ってきます。色々発見のある演奏。
この曲でもアダージョの美しさは筆舌に尽くしがたいもの。無言で夜空の星を眺めていたい気分。音符が少ないだけに一音一音の意味を噛み締めて聴きますが、やはりハイドンは天才だと思う素晴らしいメロヂィーの連続。爽やかな演奏から深い深い情感が滲みます。
アダージョの余韻の消え入る絶妙なタイミングでフィナーレに入ります。耳を澄ますと右手の鮮やかたタッチに加えて左手の表情の豊かさもかなりのもの。この爽やかながらイキイキとした表情の秘密がわかった気がします。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
あっという間に最後の曲。聴きなれた曲が新鮮に響くのはこれまで通り。リズムは踊り、メロデイーはクッキリと浮かび上がり、大きな波の変化もあり、そしてそこここに新鮮なハーモニーを感じます。ハイドンのソナタが完全に現代風にクリアに響く快感。しかもエキセントリックなところは全くなく、古びた感じもなく、モーツァルトよりも垢抜けていて、ここに音楽のすべての面白さが詰まっていると言っても過言ではありません。
最後の曲のアダージョはやや叙情的な曲ですが、もちろん純粋無垢な美しさに仕上げてきます。一つとして同じメロディーの繰り返しがないように、演奏の方もニュアンスを次々と変化させながら進み、曲の素晴らしさと演奏の素晴らしさの相乗効果で音楽に深みが宿ります。
フィナーレはむしろあっけらかんとしているほどの吹っ切れ方。最後に純粋にリズムの面白さを印象付けて終わります。

イカしたデザインショップの店員さんのような風貌のマルクス・ベッカーですが、繰り出された音楽は素晴らしいものがあります。ハイドンのピアノソナタにはこれまでにも色々名演奏を紹介してきていますが、このベッカー盤も1、2を争う名盤と言っていいでしょう。タッチの鮮やかさ、制御の完璧さは目もくらむほど。特に爽やかさとクッキリ感は並外れたものがあります。ハイドンの音楽の癒しはこの純粋無垢な演奏の向こうにも広がっていました。すべての人に必聴の名盤です! 評価は全曲[+++++]とします。

色々ストレスを抱えて癒しを求めてる方、癒されてください!

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【新着】ジョン・オコーナーのピアノソナタ集(ハイドン)

今日はピアノの美しい響きをとことん味わえるアルバム。

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ジョン・オコーナー(John O'Conor)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ5曲(Hob.XVI:32、XVI:23、XVI:46、XVI:20、XVI:23)を収めたアルバム。収録は2016年8月29日、ニューヨークのスタインウェイホールでのセッション録音。レーベルはピアノで有名なSTEINWAY & SONS。

最近リリースされたアルバムをチェックしていて、何気なく手に入れたアルバムですが、ピアノメーカーのスタインウェイが自らリリースしているアルバムということで、ちょっと気になる存在でした。世界中の一流のピアニストに弾かれる楽器ゆえ、多くのピアニストの中から、スタインウェイの美音を最も美しく響かせる演奏に違いないとの想像力も働きます。

ピアニストのジョン・オコーナーは1947年、アイルランドのダブリン生まれのピアニストで教育者。ダブリンのベルヴェデーレ・カレッジでピアノを学んだ後、オーストリア政府の奨学金でウィーンに留学、ディーター・ウェーバーの元で学びました。その間、ケンプにベートーヴェンの演奏の教えを受け、1973年にウィーンで開催された国際ベートーヴェンピアノコンクールで優勝、1975年にはベーゼンドルファーコンクールで優勝し、世界に知られるようになったとのこと。今回アルバムをリリースしているスタインウェイとはライバル関係にあるベーゼンドルファーのコンクールで優勝しているのも何かの因果でしょうか(笑)

これまでにリリースされているアルバムを調べてみると、TELARKレーベルからベートーヴェンのピアノソナタ全集、協奏曲全集、モーツァルトの協奏曲全集などがリリースされており、やはりベートーヴェンを得意としているようですね。

ということで、早速聴いてみます。

Hob.XVI:32 Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
流石に最新の録音だけあってピアノの臨場感は素晴らしいものがあります。自然な響きと鍵盤の重みが伝わってくるような録音。このところエイナフ・ヤルデンやツィモン・バルト、デニス・コジュヒンなど、ハイドンの機知をアーティスティックに表現したピアノを聴いてきましたが、このジョン・オコーナーは実にオーソドックスで変な自己顕示欲は皆無。淡々とハイドンの書いた音楽をピアノに乗せていく感じの演奏で、安心して演奏を楽しむことができます。オコーナー自身もリラックスして演奏を楽しんでいる感じ。かといってオルベルツほど枯れてもおらず、程よくバランスのとれた演奏。先生が楽しげに見本で演奏しているような感じ。この「楽しげに」というのが大事なところ。タッチが精緻を極めるわけでもなく、このすっかりリラックスしてストイックさとは無縁の表情がハイドンの面白さを引き立てるわけです。

Hob.XVI:23 Piano Sonata No.38 [F] (1773)
軽いタッチで入る曲。まるで朝飯前だとでも言いだしそうなカジュアルな入り。これが曲想にピタリ。よく聴くと一音一音が磨かれていて、流石にピアノの音色は絶品です。1楽章は流れるように一貫して軽めにサカサカ弾き進めていくのが乙なところ。
素晴らしいのが続くアダージョ。軽さを保ちながらも、ぐいぐい響きが深く変化して行きます。デリケートな表情の変化に引き込まれます。音の長さを絶妙にコントロールして曲の一貫性を保ちながら表情を変えていく表現が素晴らしい。
そして軽いフィナーレ。同じ軽さでもわずかな曇りを帯びさせて曲想に合わせているのがわかります。ピアノの響きをリアルに伝える録音だからこそ、こうしたデリケートな変化を味わえます。

Hob.XVI:46 Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
同じく軽くくるのかと思いきや、実に滑らかしっとりとした表情にハッとさせられます。ピアノの響きの表情の変化を実に巧みに表現してくる、さすがスタインウェイという演奏。ふとしたフレーズの切り替えのアクセントの一音の変化で響きが実に新鮮に聴こえます。こうしたところを控え目にさりげなく挟んでくるのが流石なところ。静寂の中に浮かび上がるハイドンのメロディーの美しさが際立ちます。徐々にタッチがチョコがとろけるように流れ出したり、千変万化するオコーナーのタッチに聴き惚れます。この曲からこれまで聴いたことのないような多彩な響きがあふれ出します。
前曲同様、アダージョの美しさは絶品。とりわけピアノの響きの美しさは鳥肌もの。凜と澄んだ夜空に浮かぶ天の川を眺めるよう。細かい星雲に無数の表情が宿り、美しい音楽が心に刺さります。
対比のためにあえて繊細さを避けるようにグイグイとくるフィナーレで曲を引き締めます。

Hob.XVI:20 Piano Sonata No.33 [c] (1771)
好きな曲。入りは意外に少し重め。この短調の入りを厳かなコントラストで強調しようということでしょう。もちろんふと力を抜いたり、さりげないアクセントで曲の変化の面白さを炙り出してくるところはこれまで同様。力の抜き際のタッチの鮮やかさが徐々に印象的になり、曲にグイグイ引き込まれて行きます。最初の重さから徐々にキレてくる絶妙な演出。聴き進むうちにオコーナーの意図がなんとなくわかってきました。
ハイドンのソナタの緩徐楽章の中でも一二を争う美しい楽章。期待どおり、あまりの美しさに言葉になりません。この詩情あふれる楽章がオコーナーの手にかかると、美しさも極まり、一音一音が宝石のごとく輝きます。ピアノという楽器の素晴らしさを思い知らされる感じ。
フィナーレはアンダンテの余韻をすっと断ち切り、気配を一瞬にして変えるマジックのよう。全く異なる音楽の魅力を突合させるハイドンのアイデアとそれを鮮やかに演出するオコーナーの技にやられました。

Hob.XVI:48 Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
最後の曲は唯一晩年の曲。最後は余裕たっぷりに有名曲の演奏を楽しむスタンス。自分の指から繰り出される多彩な響きを自ら楽しんでいるよう。ピアノの余韻が消え入る美しさを存分に味わえます。聴き進むうちに後年の作曲であるアンダンテと変奏曲を先取りするような曲想を感じさせる大きな構えの音楽であることに気づきます。
そして、絶妙な軽さのタッチでのロンド。このタッチの変化の幅の大きさと自然さがオコーナーの魅力でしょう。重さも軽さも自在に使い分けながらピアノという楽器の表現の幅を生かしきった演奏。ハイドンだけにダイナミクスの表現の幅は上品な範囲でこなしていくところが良識的です。最後はカッチリとした響きで締めました。

ベテランピアニスト、ジョン・オコーナーによるハイドンのソナタ集。最初はオーソドックスな演奏かと思いきや、これは深い演奏です。途中で触れたように、最近聴いたエイナフ・ヤルデンやツィモン・バルト、デニス・コジュヒンなどハイドンの曲に潜む機知をアーティスティックに表現した演奏とは表現の方向が異なり、自然な美しさの範囲での表現ですが、円熟の技がもたらすその美しさはかなりのもの。ピアノメーカーであるスタインウェイがリリースするアルバムだけあって、ピアノという楽器がもつ響きの美しさを存分に活かした演奏となりました。これはこれで素晴らしいもの。非常に気に入りました。XVI:20も良かったんですが、その前のXVI:46は、この曲の素晴らしさを改めて知ることになった秀演です。もちろん評価は全曲[+++++]とします。

これほど美しい音色ゆえ、できればSACDでリリースすべきでしょうね。

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友田恭子のピアノソナタ集(ハイドン)

今日は久しぶりの日本人演奏者のアルバム。また一枚、名演盤をみつけました。

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友田恭子(Yasuko Tomoda)のピアノによるハイドンのピアノソナタ4曲(Hob.XVI:42、XVI:37、XVI:34、XVI:46)と、アンダンテと変奏曲(XVII:6)の合わせて5曲を収めたアルバム。収録は2002年8月28日から30日、青森県鯵ヶ沢にある音楽ホール、日本海拠点館あじがさわでのセッション録音。レーベルはコジマ録音というマイナーレーベル。

このアルバムの奏者である友田恭子さんはもちろんはじめて聴く人。売り場でこのアルバムをみつけてコレクションにないものということだけで、たまたま手に入れたものですが、帰ってライナーノートを読んでみると、この友田さん、アルバムリリース当時は青森県の明の星高校の音楽科の非常勤講師。青森の高校の音楽の講師が青森のホールで録音したアルバムということで、なんとなくアルバムの立ち位置を勝手に想像して、さして期待もせず聴き始めましたが、一音目からあまりに研ぎすまされた響きにのけぞりました。なんたるギャプ! いや、これは素晴しい演奏です。青森県はハイドン王国なのでしょうか?

あらためて友田さんについて調べてみました。彼女のサイトがみつかりましたので、紹介しておきましょう。

ピアニスト友田恭子 Official Website

出身は桐朋学園大学で、卒業後ヨーロッパに渡り、いくつかのコンクールで入賞し、ソロや室内楽、オケとの共演などヨーロッパでの演奏活動ののち1992年に帰国。国内では東京、大阪、神戸、青森などでリサイタルを開いたり、ペレグリーニ四重奏団と共演するなどの活動を行っているとのこと。姉の笠原純子とのピアノデュオではヨーロッパでもリサイタルを開き評判をとったそうです。レコーディングはおそらくこのハイドンのソナタ集がデビュー盤で、他にモーツァルトのソナタ集が4枚、笠原純子とのデュオによるシューベルトなどの録音があります。モーツァルトのソナタ集は評価が高いようで、ピアノ好きな方の間では知られた存在なのかもしれませんね。

このアルバム、ハイドンのソナタの中から詩的な響きの美しい曲を選りすぐった選曲。曲の並びからも並々ならぬ意気込みが伝わってきます。

Hob.XVI:42 / Piano Sonata No.56 [D] (c.1783)
実に落ち着いたタッチで入ります。広めのホールに気持ちよく広がる残響をうまく捉えた録音。ライヴで聴いているような実体感のあるピアノの音が美しく響き渡ります。奏者も録音スタッフもハイドンのピアノソナタが美しく響くツボををよく理解しているような素晴しい録音。右手のメロディのきらめき感がポイント。リズムも落ち着いてしっとりとしたもの。曲の美しさを知り抜いた人のさりげない演奏と言う感じ。岩清水のような清澄さに溢れています。濃い音楽ではなくあくまでも清らかさを主体とした日本人奏者ならではの研ぎすまされた感覚です。

Hob.XVI:37 / Piano Sonata No.50 [D] (c.1780)
キレのいいタッチが印象的な入り。実にオーソドックスな演奏ながら、音楽が適度に弾んで豊かに展開します。さりげないパッセージにも音楽が息づいているあたり、この奏者の力量が示されている感じ。良く聴くと大きな流れの起伏もしっかりついて、しかもディティールの磨き方も非常に自然なもの。この曲でも2楽章のラルゴの、沈みながらもほのかに明るさを保ったフレージングの見事さに上手さが光ります。一貫して爽やかさを保ちながらの詩情の表現。音の流れ、時の流れに身を任せながらゆったりと楽しめます。
たっぷりと間をとって、その間の気配をふまえたフィナーレの入り。このしなやかながら鋭敏な感覚。狂気を感じるようなキレではなく実におだやかな鋭敏さ。最後も爽やかな余韻で終わります。

Hob.XVI:34 / Piano Sonata No.53 [e] (c.1782)
刷り込みはブレンデルの磨き込まれた演奏ですが、友田さんの演奏も磨きこまれ方は劣りません。ただ、日本人らしい爽やかさを基調としている根底のところが違うだけ。左手のアクセントもブレンデルの厚みのある強靭さには及びませんが、逆に、バランスを保った強さと言う意味でいいところを突いています。和音の変化の余韻が美しいので、聴き飽きません。
楽章間のコントラストは程々に、ゆったりとしたアダージョに入ります。淡々と進めながらも儚い美しさ、高音のきらめくような音階の美しさをうまく表現しています。フィナーレに入ると意図的なのか、ちょっとタイミングをはずすような休符で変化をつけ、緩急の変化の面白さを引き出します。やはりフレーズ毎の描き分けも見事なので、詩情も濃くなります。

Hob.XVI:46 / Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
終盤にちょっと響きの変わった曲を配置。この曲で際立つのは速いパッセージの音階の鮮やかなキレ。曲ごとの聴かせどころを踏まえて、実に巧みな演出。この曲こそ緩急の面白さが際立ちます。この縦横無尽な音階をさらりとこなすあたり、テクニックはかなりのものと見受けました。
この曲でもアダージョの美しさは格別。オーソドックスなのに音楽が溢れてくる名演奏。音数が少ない曲ゆえ、一音一音の磨き抜かれた響きの美しさがグッと沁みます。あえて音量を落として夜空の星の瞬きのような深みを感じさせます。ほんのりと暖かい音楽に移り変わって行くところの変化の見事さ。フィナーレは今までで一番快活。グイグイ来ます。

Hob.XVII:6 / Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
最後に傑作をもってきます。ここまでの演奏ですっかり聴き惚れてますので演奏スタイルは予想がつくものの、実際に曲が進み、美しいメロディーが変奏となって交錯するところの美しさはなみなみならぬもの。メロディーの描き方が上手いので、音楽が淀まず、清潔感ただよう色気のようなものに聴き惚れます。これまでのソナタで聴かせた清澄な印象は決して構成の弱さなどにつながらず、むしろ美しさを際立たせる方向に作用して、独特の輝きを生んでいます。このアルバム、冒頭にもふれましたが録音が素晴しく、ピアノの響きの美しさと実体感をともに感じる理想的なもの。鯵ヶ沢町のホールでの録音ですが、有名なラ・ショー=ド=フォンで録ったといわれてもおかしくない仕上がり。演奏は最後までゆるまず、素晴しい緊張感がつづきました。

まったく知らなかった友田恭子さんのハイドンのソナタ集。レビューを読んでいただければわかるとおり、大変気に入りました。選曲も演奏もハイドンの面白さを知り尽くした人のものと唸らされるもの。日本人らしい清らかな響きに彩られたハイドンのソナタの演奏として広くオススメできます。評価はもちろん全曲[+++++]とします。友田さんには是非ハイドンのソナタ集の続編の録音を期待したいところです。最近ではダリア・グロウホヴァのショパンのようなハイドンのピアノソナタ集が印象に残っていますが、それに劣らず、日本らしい美しさを帯びたハイドンとして全世界にその素晴らしさを問いたいものです。友田さん、レコード会社の方、是非ご検討ください!

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ハイドンの時代の響き パウル・バドゥラ=スコダのフォルテピアノ作品集

今日は今まで取りあげていなかった著名演奏家のアルバム。

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パウル・バドゥラ=スコダ(Paul Badura-Skoda)のフォルテピアノによる、ハイドンのピアノソナタ(Hob.XVI:46)、アンダンテと変奏曲(XVII:6)、ピアノソナタ(XVI:20)、「神よ皇帝フランツを護りたまえ」変奏曲(III:77)、アダージョ(XVII:9)の5曲を収めたアルバム。収録は2008年10月18日から19日、オーストリアのリンツの南にある街クレムスミュンスター(Kremsmünster)のクレマグ城楽器博物館でのセッション録音。レーベルは仏ARCANA。

楽器博物館での録音というのもこのアルバムに使われている楽器自体がポイントになります。ライナーノーツを開くとハイドン自身の言葉が紹介されています。

「シャンツこそ最も優れたフォルテピアノ工房である」

ここに書かれたシャンツとはこの録音に使われているウィーンのヨハン・シャンツ(Johann Schantz)のことで、録音にはシャンツの1790年頃製作のオリジナル楽器が使われているとのことです。

ハイドンのピアノソナタの演奏にはクラヴィコードやスクエアピアノ、ハープシコード、フォルテピアノなど様々な古楽器による演奏があり、楽器の音色によって醸し出される表情は大きく変わります。はたしてハイドンの好んだ響きが浮かび上がるのでしょうか。

演奏者のパウル・バドゥラ=スコダは1927年ウィーンに生まれたピアニスト、音楽学者。彼とイェルク・デームス、フリードリヒ・グルダの3人を称して「ウィーン三羽烏」と呼ぶそう。ウィーン音楽院で学び、1947年にオーストリア音楽コンクールに優勝して頭角を現しました。それをきっかけにエトヴィン・フィッシャーに師事することととなります。その後、1949年にフルトヴェングラー、カラヤンなど当時の一線級のの指揮者と共演を重ね、国際的な活躍をするようになり、1950年代には来日もしているとのこと。レパートリーはもちろんウィーン古典派が中心となりますが、とりわけモーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトを得意としているようですね。1976年にはオーストリア政府よりオーストリア科学芸術功労賞を授与されています。

これまでもバドゥラ=スコダのハイドンは何枚か持っていて聴いてはいるのですが、わかりやすいキャラクターというものが感じられず、実に堅実かつ地味に弾く人との認識です。フォルテピアノは奏者によっても響きが千変万化し、シュタイアーの自在さ、ブラウティハムのダイナミックさ、ピノックの緊張感ある規律など人それぞれ。バドゥラ=スコダの音楽の根底にあるのは、時代への誠実さでしょうか。

Hob.XVI:46 / Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
比較的近めに定位するフォルテピアノ。残響はどちらかというと少なめで、狭い部屋で間近で聴いているようなリアルな音像。楽器のせいか演奏のせいか、低音は あまり鳴らずに中高音の鮮明な響きが印象的なものです。リズミカルに躍動するメロディーが特徴のこの曲の入りですが、バドゥラ=スコダは虚心坦懐な表現。淡々と楽譜をこなしさらさらと弾いていく感じ。アクセントをつけようとかフレーズを上手く聴かせよう等ということは一切考えずに、ただただ、淡々と弾いて いく感じ。速い音階もちょっとごつごつとして引っかかりもあります。曲のデュナーミクの波も意図してコントロールする感じではなく、自然に任せるようで す。まるでハイドンが練習でもしているようです。そう、演奏家の演奏というよりは作曲家が音符を確かめているような演奏。聴いているうちに自然な佇まいに慣れていきます。
アダージョも変わらず淡々としていますが、曲想がマッチして枯淡の境地。途中楽器の音色を何度か変えて表現の幅を広げますが、基本的に淡々と弾いているので、解脱した人の演奏のよう。独特の味わいがありますが、聴いている人に合わせた表現ではなく、自らが慈しむために弾いているよ う。聴いているうちに、バドゥラ=スコダの意図がなんとなくわかってきました。
フィナーレも同様。ピアノでは素晴らしい聴き映えのする曲ですが、フォルテピアノの限られたダイナミクスのなかでの表現で、しかもさらさらと弾流すような独特の演奏で、この曲の違った一面を感じるよう。

Hob.XVII:6 / Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
次は大曲XVII:6。名曲ゆえ録音も多く、ハイドンの時代からベートーヴェンへの橋渡しのような位置づけの曲。冒頭の短調の入りから、前曲よりかなり繊細なタッチで音色をコントロールしていきます。フレージングの根底には前曲同様さらりとしたものがありますが、明らかに表現が丁寧になります。ダイナミクス の変化はあまりつけずに淡々と行きますが、音色の変化でかなりはっきりとしたメリハリがついて、なかなか聴き応えがあります。この楽器、高域の音がツィンバロンのような音色で、高域の音階がクッキリと浮かび上がります。最後は抑えた部分と楽器の音色の変化を織り交ぜて大曲のスケール感をしっかりつけに行 き、ダイナミックさも聴かせてから、さっと汐が引くように終わります。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
名曲つづきでXVI:20。ピアノで聴き慣れた曲ですのでちょっとフォルテピアノの演奏は不利でしょうか。ちょっとテンポが重い部分が引っかかりますが、この曲独特のきらめくようなメロディーラインはうまく表現されています。この曲は年老いたハイドンが昔を慈しみながら自ら弾いているような風情。指がまわっていない感もちょっとありますが、音楽的にはなんとなく味わい深い方向に作用していて、それほど悪くありません。時折バドゥラ=スコダの息づかいやうなり声のようなものがうっすら聴こえます。
2楽章のアンダンテは意外となめらかなタッチでフォルテピアノならではの美しさを表現。速めのテンポでさらさらいくところはバドゥラ=スコダならでは。ちょっとハイドン時代にトリップした気分にさせられます。メロディが最高域を奏でる部分では楽器の限界も聴かせますが、それもハイドンの時代の楽器ならではのことでしょう。
フィナーレはザラザラと弾き進めていくいつものバドゥラ=スコダスタイル。この拘りなく音符をどんどん弾いていくスタイルが定番ですね。最後の一音もさっと響きを止めてしまうあたりが面白いです。

Hob.III:77 / String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartett" 「皇帝」 [C] (1797)
このアルバム、選曲は本当に名曲揃い。現ドイツ国歌として有名なメロディーによる変奏曲。演奏を聴けというより、曲自体を聴けといっているよう。あまりに拘りなくサクサクとすすめていくがかえって新鮮です。意外にこの曲、バドゥラ=スコダの演奏スタイルに合ってます。

Hob.XVII:9 / Adagio [F] (before 1792)
最後も好きな曲。ブレンデルの演奏を愛聴してますが、ブレンデルの透徹したピアノが静寂のなかに消えていくような絶妙の演奏に対して、バドゥラ=スコダは一貫して淡々としたもの。ある意味予想どおりの演奏です。美しい曲の儚さを、儚い美しさではなく、時の儚さ、表現の儚さと一歩踏み込んでいるよう。

なんとなくとらえどころのない演奏をする人との印象があったバドゥラ=スコダですが、このアルバムを聴いて、ちょっと演奏スタイルが見えたような気がします。古楽器の演奏ではブラウティハムなど、楽器の響きをどうやって美しく聴かせようかということに集中しているのに対し、バドゥラ=スコダはその対極のスタンスでしょう。視点は演奏家ではなく作曲者の視点のよう。ハイドン自身になりきって、曲の構造や着想、メロディーをまるで作曲者自身がさらって演奏しているような演奏です。響きへのこだわりではなく、頭の中で鳴っている音楽を、ひとつひとつ確認していくようです。このアルバム、選曲はまさに名曲揃いで初心者向けですが、演奏は玄人向けです。ハイドンのピアノソナタをいろいろな演奏で聴き込んだ、違いのわかる人にこそ聴いてほしい、このさりげなさ。私は、聴いているうちにちょっと気に入りました。磨き抜かれた演奏もいいですが、たまにはこういった演奏もいいものです。評価は全曲[++++]としました。

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【更新再開】イーヴォ・ポゴレリチのソナタ集

皆様、ご無沙汰しております。10月末の記事から11日ぶりの記事更新です。この間、府中の自宅マンションから狛江の実家に引越をしておりました。11月5日に引越自体は終えたものの、部屋は段ボールだらけ。積上った家財、CDやら本やらを段ボールに詰めたところ都合、130箱! 梱包と開梱でヘトヘトです。 今日はようやく片付けが一段落したので、久々にブログを書いてみようと言う気になりました(笑)

今日は、整理途上のラックの取り出しやすいところにあったアルバム。有名盤ですがまだ、取りあげていませんでした。

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イーヴォ・ポゴレリチ(Ivo Pogorelić)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ2曲(Hob.XVI:46、XVI:19)を収めたアルバム。収録は1991年7月、8月にハノーヴァーのベートーヴェン・ホールでのセッション録音。レーベルはご存知Deutsche Grammophon。

ポゴレリチは1958年、ユーゴスラビア(現セルビア)の首都ベオグラード生まれのピアニスト。ご存知の通り1980年のショパンコンクールで本選前に落選させたことにマルタ・アルゲリッチが異を唱えたことによって一躍有名になった人。デビュー当時はイケメンであることもあってかなり話題になりましたが、最近の写真を見ると、坊主頭のおじさんという風体。時は流れるという事でしょう。

ちゃんとした履歴を知らなかったので、少し紹介しておきましょう。

7歳の頃から音楽をはじめ、12歳からモスクワ中央音学院、17歳からチャイコフスキー音楽院で学び、18歳の頃からグルジア人ピアニストのアリス・ケゼラーゼに師事しました。旧ユーゴスラヴィア国内の開催された数々のコンクール、1978年のイタリアで開催されたのカサグランデ国際コンクール、1980年のモントリオール国際コンクールなどで優勝するなど、ショパン・コンクールまでのキャリアも相当なものでした。1980年に21歳年上だった師であるケゼラーゼと結婚するなど、話題に事欠きませんでした。ケゼラーゼは1996年亡くなったとのことです。1980年のショパンコンクールでの一件以降は一躍音楽会のスターダムにのし上がり、1981年のカーネギーホールでのリサイタル以降、世界中でコンサートを開くようになりました。録音では名門Deutsche Grammophonから矢継ぎ早にアルバムをリリースするなど、当時かなり話題になった事を思い出します。

このハイドンのソナタ集は1980年に有名になってからほぼ10年後の録音。ポゴレリチと言えば奇抜な演奏と思いきや、このハイドンは磨き抜かれた美音による鮮度の高い秀演です。

Hob.XVI:46 / Piano Sonata No.31 [A flat] (1767/70)
鮮やかなタッチの音階が自由闊達に上下する、この曲ならではの面白さを存分に感じさせる入り。鍵盤上の指の移動を楽しむがごとき余裕を感じます。指のキレは十分で、倍速く弾けと言われても対応できそうな余裕があります。ただテクニックが素晴らしいだけではなく、紡ぎ出される音楽には詩情がのって、実に趣ある音楽になっています。特に高音の音階のキレは孤高の響き。他のピアニストとは違う閃きを持った人だとすぐにわかります。プレトニョフがよりコンセプチュアルなのに対し、ポゴレリチの音楽は純音楽的。
2楽章のアダージョは予想通り、磨き込まれた美音とポゴレリチ流の詩情が相俟って素晴らしい感興。ことさら左手の低音のアクセントを強打することがないので、旋律の美しさがが際立ちます。表情もクリアな響きにもかかわらず彫り込みが深く表現の幅も大きい名演。曲が進むにつれ音楽が深く沈み込み、孤高の響きが際立ちます。
フィナーレは流すように表現の幅を少し抑えて入りますが、半ばの盛り上がりはしっかり描いてメリハリをつけます。才気あふれるポゴレリチがハイドンのマナーを踏まえて軽々とこなしたような演奏です。

Hob.XVI:19 / Piano Sonata No.30 [D] (1767)
番号はだいぶ違いますが、前曲とほぼ同じ頃の作品。1767年と言えばまさにシュトルム・ウント・ドラング期の真っ最中。ハイドンの才気にポゴレリチが上手く乗ったような演奏。前曲同様八分の力に抑えて、軽々と弾いていき、ここぞというところでキリッと引き締めるところは流石。指の動きに全くストレスはなくテクニックは万全。キーとなる音型を象徴的に響かせて、それを自身で追いかけるような劇性もあります。良く聴くとキーとなる音とそれ以外の音のコントラストをかなり明確につけることでクッキリと旋律を描いている事がわかります。久しぶりにポゴレリチのハイドンに聴き惚れます。
続くアンダンテは、このアルバムの白眉。自在なタッチによって浮かび上がるハイドンの美しいメロディーライン。中音域主体のメロディーに時折現れる高音のメロディーの美しさは筆舌に尽くし難いもの。山頂で眺める漆黒の空にきらめく無数の星のごとき凛とした美しさ。情に流されない素晴らしい音楽がここにあります。グールドとは異なるものの音楽の根底には迸る才気を感じます。
フィナーレはヴェーベルンかと思うような前衛的な響きを感じさせる入り。ポゴレリチが数多のハイドンのソナタからこの曲を選んだ理由がわかるような気がします。めくるめく音階とそれをつんざく強音、変化するリズム。1767年当時のハイドンがこの曲に込めた機知が今に伝わります。

話題の人、だったポゴレリチのハイドンのソナタ2曲ですが、久々に取り出して聴いてみると、ポゴレリチの創意と才気が迸りながらも、ハイドンの曲の演奏の範囲を踏み出さず、また力任せなところも一切ない、真の天才による演奏だと再認識しました。もちろん両曲ともに[+++++]とします。以前より評価をアップしました。

おそらくこのアルバム以外にハイドンの録音は残していないと思いますが、他の曲の演奏も是非聴いてみたくなりました。ただ、冒頭に書いた通り、この演奏当時の若さは失われ、坊主頭のおじさんとなってしまったポゴレリチがハイドンをこのアルバムと同じスタンスで弾くとは限りません。時は流れ、人は変わり、音楽も変わっていくものでしょう。

言い忘れましたが、このアルバム、ピアノと言う楽器の美しい響きを堪能できる素晴らしい録音です。

追伸)湖国JHさん、もうちょっとお待ちください!

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【新着】フー・ツォンのピアノ・ソナタ集 絶品!

最近週後半になかなか更新できません。帰りが遅いのと、疲れがたまって夕食をとると眠くなっちゃうんですね(笑)今日はちょっと寝坊してゆっくり。お昼過ぎに宅急便が到着。待っていたアルバムが到着。

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フー・ツォン(Fou Ts'ong)のピアノによるハイドンのピアノソナタ集。収録曲目は収録順にピアノソナタHob.XVI:46、XVI:20、XVI:50、XVI:33、XVI:32、XVI:49、そしてアンダンテと変奏曲Hob.XVII:6の7曲。収録は2009年8月25日~27日、ロンドンのエドワード懺悔王教会でのセッション録音。レーベルはイギリスのMeridian、なにげに良いアルバムの多いレーベルです。

フー・ツォンは以前、ピアノ協奏曲のアルバムをたまたま聴いてその素晴らしさにビックリして以来注目しています。以前のアルバムのレビューはこちら。

2010/07/09 : ハイドン–協奏曲 : フー・ツォンのピアノ協奏曲、快演

このアルバムはハイドン没後200年のアニバーサリーイヤーである2009年に録音されたもの。曲目もハイドンのピアノソナタの名曲ぞろいでピアノソナタ集の決定盤の期待が高まります。

ピアノソナタ Hob.XVI:46(1767/70年作曲)
最初はXVI:46。ハイドンがエステルハーザの楽長に就任した直後の作曲。教会らしく広い空間に気持ちよく響き渡るピアノの音が心地よいですね。非常にリラックスして弾いているような余裕たっぷりの演奏。比較的ゆったりしたテンポで進めますが、テンポの変化はかなりつけていてフレーズごとにしっかりと表情をつけます。不自然なところは皆無。ハイドンの音符を自在に濃い音楽に変換。力の抜き方は老練さを感じますね。1楽章からハイドンのソナタの孤高の表情、険しい起伏、純粋に磨き込まれた音楽、機知が凝縮された素晴らしい緊張感。期待どおりというか、これ以上の演奏はないのではないかと思わせる出来。冒頭からノックアウトです。
2楽章はテンポと表現がしっとりと引き継がれ、音楽が続きます。やはりアダージョは格別濃い音楽になります。この美しさの表現は並のピアニストでは表現できない特別な領域の音楽。訥々と音符をおきながら詩情溢れる音楽。
3楽章はよく溜めを利かせてメリハリをつけた濃いめの演出。速さで聴かせる演奏も多い中きちんとフレーズごとの表情をつけてソナタの締めにふさわしい重厚感があります。1曲目から素晴らしい出来。これは超名盤の予感。

ピアノソナタ Hob.XVI:20(1771年作曲)
私の好きな20番。前曲の直後1771年の作曲。1楽章はじっくりとしたテンポで入り、一音一音の強弱をしっかりつけてメロディーをきっちり浮かび上がらせていきます。録音は前曲とほとんど違いがわからないのでセッティングなどはいじっていないのでしょう。前曲同様相当の集中力。研ぎすまされたような空間にピアノの美しい響きだけが響き渡る素晴らしい瞬間。
2楽章は筆舌に尽くし難い美しさ。左手の奏でる柔らかなピアノの音階にのって、右手のきらめくようなメロディー。音楽の濃さは変わらず、メロディーの彼方に諦観のようなものまで感じさせる凄みがあります。
3楽章はツォンのスタイルなんでしょう、テンポはゆっくり目でしっかりとした表情をつけたフィナーレ。最後のアクセントにはっとさせられますが、非常に丁寧に、しかもくどさもなく自然さの延長で弾かれたハイドンの名ソナタという印象。この曲の好きな演奏にエマニュエル・アックスのものがありますが、アックスのほうがもうすこし淡白な印象。

2曲聴いたところで時間切れ。今日は実家に行かなくてはなりませんので、残りの曲は記事を分けて。

2曲を聴くかぎりこの演奏はハイドンのピアノソナタの決定盤としてお薦めすべき名盤という印象。どなたにもお薦めできる素晴らしい演奏です。この2曲の評価はもちろん[+++++]です。

では、のこりは別記事で。

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カテリーネ・ゴルデラーゼのピアノソナタ集

今日はピアノソナタの珍しいアルバムを。

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カテリーネ・ゴルデラーゼ(Catherine Gordeladze)の弾くハイドンのピアノソナタ集。収録曲目は収録順にピアノソナタXVI:6(1950年代作曲)、VI:37(1780年頃)、VI:30(1776年)、VI:46(1767年~70年)、VI:52(1794年)の5曲。収録は2007年2月24日から26日。レーベルはドイツのARS MUSICI。このアルバムを選んだのは昨夜ちょっと手に取ったら録音日がちょうど4年前の今日ということで。こうゆうこともあるんですね。

彫りの深い容姿とちょっと濃いめのお化粧をしたピアニスト然とした姿の写真をインパクトのあるジャケット。先日ディスクユニオンの店頭で、一目でコレクションにないアルバムと判明したため入手。これまで見知らぬ演奏家の見知らぬアルバムでも素晴らしい演奏と出会うこともたびたびあるため、CDプレイヤーにかけて最初の音をだすまで、緊張が走ります。この緊張感がたまりません。

レビューに入る前に、奏者のことを調べます。ネットに本人のサイトがありましたのでリンクを張っておきましょう。

Catherine Gordeladzeのウェブサイト(ドイツ語、英語)

最初はジョージア州出身と読んだんですが、よく読むとグルジアのトビリシ出身。黒海とカスピ海の間の国。グルジアと言えば力士の黒海や臥牙丸、栃ノ心で日本に親しまれていますね。現在はドイツに住んで活躍しているようです。ソロピアニストとして、そして室内楽の奏者としてドイツなどで知られているそうです。ピアノはアレクシス・ワイゼンベルクに師事し、現在はフランクフルトの大学での講座も持っているようですね。おそらく日本ではあまり知られた存在ではないでしょう。

ゴルデラーゼ演奏は非常にキレの良いピアノのオーソドックスなもの。ハイドンのソナタの模範的な演奏として安心して聴けるもの。非常にクリアな指使いでメロディーラインをクッキリ浮かび上がらせ、感情表現は控えめながら楽譜に書かれた音符を克明に音楽にしていくような演奏。音ではなく音楽といったのは、音楽性もそこそこあり、シンプルな表現ながら楽しめる演奏となっています。

1曲目のXVI:6はかなり初期の作品。シンプルな曲想をテンポよくクッキリと弾いていきます。晴朗感、弾む感じが曲想にあっていて良い演奏。1楽章、2楽章は若干平板な印象もありますが、3楽章のアダージョはすこしリラックス度があがり、情感が深くなります。なかなか良い演奏。終楽章ふたたびクリアな音響。

2曲目は名曲XVI:37。全曲のアダージョが良かっただけに、有名な2楽章のラルゴの情感は期待できそうですね。1楽章は前曲の速い楽章にすこし固さが見られたのとは変わり、メリハリと変化もついてなかなかいい感じ。元々右手の輝き感は美しいだけに、この曲の特徴的なメロディーをクッキリ浮かび上がらせて、なかなかいい感じです。1楽章の後半に不思議なアクセントをつけてちょっとトランス状態に入りそうな規則的なアクセントの繰り返し。面白い解釈です。期待の2楽章。クッキリとしながらゆったりとして期待通りの美しさ。抑えた部分もクッキリしながら音量を落とせるので変化の幅もいいですね。フィナーレも右手の輝きでクリアな響き。この人の演奏は色っぽい感じはしないんですが、健康的な響きの中にほのかなおしろいの香りのような優美さが感じられるというの特徴ですね。

3曲目のXVI:30、4曲目のXVI:46も基本的に同様の傾向の演奏ということで、ちょっと割愛。

最後の大曲XVI:52。これまでの曲とはスケール感の表現要求が一段階変わります。1楽章はこれまでの曲よりも起伏をつけているように感じます。聴き進めていくうちにちょっと感じたのが師であるワイゼンベルクの影響。すべての指の音をクリアに響かせるワイゼンベルクの音の特徴がゴルデラーゼの弾くピアノの特徴にもなっているように感じます。音色の特徴は感じるものの、曲のスケール感を表現するにはフレージングが若干平板な印象を与えてしまうのも正直なところ。2楽章のアダージョは持ち前の呼吸の良さが活きて良い演奏。フィナーレもアダージョの良い流れを受け継いで程よい流れ。

このアルバムの評価はXVI:6とXVI:52が[+++]、その他の曲が[++++]としました。全体にクッキリした響きとキレの良さが、そしてゆったりした部分にはうっすらと良い詩情を伴う演奏ですが、曲のメリハリと言うか、特に速い楽章のフレージングが若干単調さを感じさせるところがあり、そのあたりの音楽性が豊かになってくると評価も上がるのではないかと思います。

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エレーヌ・クヴェールのピアノソナタ

しばらく交響曲というかラトルとベルリンフィルの話題がつづいたので、ここらで涼しげなピアノソナタを。

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涼しげなのは音楽だけでなく、クヴェールの容姿。写真を引用しちゃいます。

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ちょっと涼しくなりましたでしょう(笑) 奏者の魅力を伝えるポートレートという意味でもよく撮れていますね。ジャケットの外側からはクヴェールの容姿はわかりません。売上げ的にはポートレートをあしらったジャケットにした方がよかったのではないかと邪推してます。

クヴェールは1970年パリ生まれのピアニスト。このアルバムは2002年12月の録音。32歳のときの録音ですから若いですね。
収録曲目はピアノソナタXVI:49、46、20の3曲。好きな曲ばかり集めたアルバムというところがこのアルバムを取り上げた理由の一つです。ハイドンのピアノソナタ集を録音する時、この3曲を選ぶということは、そうとう選曲に気を使っているということは明白です。49と20はともかく46が入っているといことが選曲眼が確かな証となっていますね。

ピアノはある意味非常にオーソドックスな演奏。右手の輝きを基本としながらもダイナミックさもねらい、流れを切らさないというスタイル。特に奇を衒ったようなことをしていないのが、いい結果につながっていますね。
3曲とも生き生きとしたいい演奏です。とくにどの曲も2楽章の自然な美しさが心にしみます。私はことさらXVI:20の2楽章の美しさに打たれました。作為のない自然な演奏をするだけで曲の美しさが際立ちます。

暑いさなかに、一服の涼を得るにはいいアルバム。評価は3曲とも[++++]としました。

アルバムを手にとり、CDプレイヤーにセットして、リモコンで演奏スタート。それだけでハイドンの世界にどっぷり浸る悦びを得られるなんて。いや幸せですな。

ただし、ここ数日、忘れられる暑さではありませんね。残暑お見舞い申し上げます。

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ハイドン生家の響き

昨日入手の一枚。

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ローラウのハイドン生家(現ハイドン生家博物館)で、1782年作のフォルテピアノで録音したピアノソナタ集。これまた企画者の視点が明確に存在するアルバム。こうゆうの好きです!

ハイドンが生きていた当時の楽器で弾いてはじめてソナタの真の魅力がつたわるということでしょう。
確かに、現代のピアノの美しい音色とは全く異なる素朴、古雅な響きで聴くピアノソナタもまたいいものです。おまけにハイドンの生家での録音ということで、なにやらいわくありげな気もしますが、雰囲気や響きが独特なわけではなくスタジオ録音と言われてもわかりません。録音は非常に良く、ハイドン生家でのフォルテピアノの音色がリアルに響きます。

収録曲はXVI:38、44、46、20の4曲。
演奏は古雅なフォルテピアノの音色の魅力を素直に感じさせるもの。中音域から高音域にかけての音色が鳥の羽の軸で弦を弾くような音色に特徴があるでしょうか。低音域から高音域まで音域ごとに異なる音色の違いをうまく生かして、フレーズの切れ目ごとに丹念にタッチを変え、音色の変化に非常に神経をつかっている感じです。最後におかれたXVI:20の2楽章は、メロディーラインの美しさが浮き立つ名演。これはおすすめ盤ですね。

古雅な音色に遥か昔のハイドンが生きていた頃に想いをはせて、、、

ちょっと飲み過ぎてます(笑)

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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