アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル(東京オペラシティ)

3月21日月曜は、コンサートに出かけてきました。

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ハイドンファンにはおなじみのアンドラーシュ・シフ(András Schiff)による「ザ・ラスト・ソナタ」と銘打たれた2017年のコンサート。このコンサートに注目したのは、もちろんハイドンのソナタが演奏されるからに他なりません。

当初は3月25日土曜の彩の国さいたま芸術劇場のチケットを取っていたんですが、なんとドンピシャの日に仕事が入ってしまい、やむなくそのチケットを友人に譲り、ネットを駆使して(笑)あらためて東京オペラシティのチケットを取った次第。普段だったら、譲ってあきらめるだけで終わるんですが、なんとなくこういうコンサートは機会を逃すと再びチャンスがこないような気がしたので、私にしては珍しく深追いしたもの。

そういえば、以前もスクロヴァチェフスキと読響のブルックナーの7番も仕事で聴き逃しましたが、あとから考えるとあれを聴いておきたかったという思うばかり。

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この日の公式のプログラムは下記のとおり。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 変ロ長調 K.570
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
ハイドン:ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob. XVI:51
シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D959

「ザ・ラスト・ソナタ」と名を冠するのにふさわしく、モーツァルトもベートーヴェンもシューベルトも最晩年のソナタを並べていますし、ハイドンもロンドンで作曲された最後の3つのソナタの一つであるXVI:51が選ばれるなど、コンサートの企画としては一本筋の通ったもの。円熟の境地にあるシフの演奏とあって期待が高まりますね。

シフのハイドンのソナタ自体はDENONから1枚、TELDECから2枚組がリリースされていますが、DENON盤が1978年、TELDEC盤が1997年の録音と結構古いもの。フレージングはシフ独特の個性的なもので、多彩なタッチの変化とダイナミクスを強調した演奏が印象に残っています。また奥さんの塩川悠子とボリス・ベルガメンシコフと組んだピアノトリオのアルバムは昨年レビューに取り上げました。

2016/03/15 : ハイドン–室内楽曲 : アンドラーシュ・シフ/塩川 悠子/ボリス・ベルガメンシコフのピアノ三重奏曲(ハイドン)

ピアノソナタ集の方は、ハイドンの曲の良さをもう少し素直に出してもいいのではないかとも思われるもので、今回の実演でそのあたりのシフの個性がどう響くのかを確かめたかった次第。



さて、この日は年度末でバタバタのなか、仕事をやっつけて会場の東京オペラシティには開演の15分前に駆け込み到着。外はあいにくの雨でしたが、ホワイエにはすでに多くの人が駆けつけ、かなりの熱気でした。

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昼飯も抜きで仕事を片付けてきたのでお腹エコペコ。いつものようにサンドウィッチと赤ワインを5分で平らげ、プログラムを買って3分前に着席。この日の席は1階正面8列目とピアノを聴くにはベストポジション。会場はもちろん満員。

定刻の19:00を過ぎると会場の照明が少し落ちて、下手からシフが登場。

すぐにモーツァルトが始まります。コンサートの1曲目ということで、若干硬さも感じられるなか、シフらしく緩急とメリハリをしっかりつけながらフレーズごとの巧みな描き分けが徐々にくっきりと焦点が合ってきて、音楽が淀みなく流れるようになります。ピアノは最近のシフの定番ベーゼンドルファー。厚みというか独特の重みをもった低音に、すこしこもり気味に聴こえる石のような響きの高音が特徴ですが、モーツァルトの曲にはスタインウェイのようなクリアな響きの方が合うような気がしながら聴き進めます。そのうちに左手の表情の豊かさがこの演奏のポイントだという気にさせられ、シフがキレより迫力の表現が引き立つベーゼンドルファーを好む理由がわかったような気がしました。アレグロの起伏の陰影の深さに対し、アダージョの響きの柔らかさの対比は見事。タッチの多様さ表現の変化は流石なところ。そしてアレグレットではタッチの鮮やかさ、躍動感で圧倒されました。弾き進むうちに場内もシフに魔法をかけられたように集中度が上がります。もちろん盛大な拍手が降り注ぎますが、袖に下がることなくすぐに続くベートーヴェンに入ります。

ベートーヴェンは最初の入りは柔らかなハーモニーと力強いアクセントが豊かな情感のなかに交錯するような音楽でした。普段あまり聴かないせいか新鮮に聴こえます。暖かな音色と楔を打つような鋭い音にフレーズごとに巧みに変化する曲想がシフの魔法のようなタッチから紡ぎ出される感じ。ベーゼンドルファーだけに高音の輝きではなく、中低音の輝きが優先するような分厚い響きがベートーヴェンの力感を表すよう。2楽章は分厚い音色に襲われる感じ。タッチの軽さをかなり綿密に制御して、重厚さと軽やかさの対比のレンジが広大。そして3楽章の荘厳な印象も楽章間のコントラストの演出が完璧に決まります。モーツァルトでも豊穣だった響きがさらに豊穣さを増して、観客は皆前のめりでシフのタッチに集中します。またまた拍手が降り注ぎますが、シフはステージを囲う四方の観客に丁寧にお辞儀をしてすぐにピアノに向かいます。

もちろん私の興味はハイドンですが、このコンサートにおけるハイドンの役割はシフの表現力のうち軽やかな機知に満ちた表現に対する適性を垣間見せるという構図のよう。晩年のソナタでも珍しい2楽章構成の曲。最初からタッチのキレの良さが際立ちます。音が跳ね回るように見事な展開。ハイドンのソナタの演奏としては味付けは濃い目ですが、中音部で奏でられるメロディーの面白さはベーゼンドルファーならでは。そしてハイドンだからこそフレーズごとのタッチの変化の面白さが聴きどころ。やはり圧倒的な表現力はシフならではのもの。ハンガリー生まれのDNAに由来するのでしょうか。続く2楽章でもタッチの軽やかが際立ちます。うっとりとしながら人一倍聞き耳を立てて聴き入りますが、短い曲ゆえ、あっと言う間に終わってしまいます。私は2楽章構成と知って聴きますが、他の人は3楽章の始まりを期待しているような終わり方なので、拍手が湧き上がる間も無くすぐに続くシューベルトに入ってしまいます。

この日はやはりシューベルトがメインプログラムでした。普段ほとんどシューベルトは聴きません。その私が聴いてもこれは素晴らしい演奏でした。長大なソナタですが、シフがその魂を抜き取りピアノで再構成したような劇的かつ壮大な音楽。ちょっとくどい感じさえする低音の慟哭がシフの手にかかるとキレよく図太い低音の魅力に昇華され、時折聞かせる長い間が時空の幽玄さすら感じさせます。シューベルトが終わると、まさに嵐のような拍手が降り注ぎ、まさに観客の心をシフが鷲掴みにしてしまったがごとき状況。何度かのカーテンコールにつづいて、アンコールの演奏にシフがピアノの前に座り、演奏を始めました。

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最初はシューベルトの3つの小品から。アンコールとは思えない本格的な構成の曲に再び場内が静まり返ります。コンサートのプログラムも全て暗譜。そしてアンコールに入ってもさらりと演奏をはじめ、はじまると実に豊かな音楽が流れます。すべての曲を完全に自分のものにしきっているところに一流どころのプライドを感じます。シューベルトが終わったところで席を立つ人もいましたが、アンコールは1曲ではありませんでした。プログラム最後のシューベルトの演奏に酔いしれた観客に、さらにシューベルトがだめ押しで加わったかと思うと次はバッハのイタリア協奏曲の1楽章。バッハのアルバムをいろいろリリースしているだけあってシフのバッハを待っていた人も多かったのでしょう。アンコールに寄せられた拍手はどよめきにも近いものに変わります。これで終わりかと思っていると、シフはまたまたピアノに向かい、なんとイタリア協奏曲の2楽章、3楽章を演奏。すでに観客はクラクラ(笑)。完全にシフに魂もってかれてます。もちろん盛大な拍手に迎えられ、シフも引き下がれず、今度はゴリっとした感触が印象的なベートーヴェンの6つのバガテルから。ここまでくると、休憩なしで張り詰めっぱなしの観客とシフの根比べ(笑)。盛大な拍手にアンコールで応えるシフも引き下がらず、その後モーツァルトに最後はシューベルトの楽興の時を披露。聴き慣れた曲が異次元の跳躍感に包まれる至福のひととき。そして盛大な拍手が鳴り止まず、シフが再びピアノの前に座ると、そっと鍵盤の蓋を笑顔で下ろし、長い長いアンコールの終わりを告げ、観客も満足感に包まれました。

プログラムの演奏だけで90分ほど。そしてアンコールを入れると2時間半弱。休憩まったくなしで完璧な演奏を続けたシフ。私はプログラム最後のシューベルトの余韻に浸っていたかった気もしましたが、最後まで聴いてみると、シフの観客をもてなそうとする気持ちもわかり、これがシフの流儀だと妙に納得した次第。ピアノという楽器の表現力の偉大さをまざまざと見せつけられたコンサートでした。

先に紹介したようにシフのハイドンの録音は古いものばかり。この円熟の境地で再びハイドンのソナタに挑んでほしいと思うのは私ばかりではないはず。こころに響くいいコンサートでした。

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スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー&ベートーヴェン!(サントリーホール)

書きかけの記事がいくつかあるんですが、10月9日はコンサートに出かけましたので、レポートしときます。

読響とその桂冠名誉指揮者、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキのコンサート。毎回これが最後かもとの不安がよぎるなか、このところ毎年コンサートに出かけています。今年も読響にやってくるということでチケットとってありました。今回のプログラムはブルックナーの交響曲0番にベートーヴェンの交響曲7番。まずはコンサート情報を。

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読売日日本交響楽団:第541回定期演奏会

スクロヴァチェフスキは1923年10月3日生まれ。つまりこのコンサートの時には91歳ということになります。この日もその年齢が信じられないほどのキビキビとした指揮でサントリーホールを陶酔の坩堝と化してしまう素晴しい指揮ぶり。これまで何度もスクロヴァチェフスキのコンサートに通っていますが、間違いなく過去最高の出来でした。これは事件といってもいいほどの素晴しい出来。この日の聴衆はもの凄いエネルギーを発するスクロヴァチェフスキから、得難い音楽体験を受け取ったことでしょう。

2013/10/13 : コンサートレポート : 90歳のスクロヴァチェフスキ/読響/サントリーホール
2012/09/30 : コンサートレポート : 東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ



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コンサートの開演はいつもどおり19:00。仕事を17:30ごろ切り上げ一路サントリーホールに向かいます。先についていた嫁さんとホール前のカフェでで合流して開演を待ちます。流石にスクロヴァチェフスキの公演だけあって、開演前にはホールの前はかなりのお客さん。読響のスクロヴァチェフスキの公演の素晴らしさを知ってか、一様に笑顔で開演前の時間を楽しんでいます。いつものように開演を知らせるパイプオルゴールが広場に鳴り響き、開演を待っていたお客さんがホールに吸い込まれます。

ホールに入るとまずは2階のドリンクコーナにまっしぐら(笑)。 

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まずはワインにサンドウィッチで腹ごしらえというところですが、開場直後にもかかわらずサンドウィッチが売り切れ! どうゆうことでしょう。なぜか嫁さんが鞄から大きなオリーブ入りフォカッチャを出して、勧めます。なんとなく気が引けましたが、サンドウィッチを切らしたサントリーホールのドリンクコーナーに明白な落ち度有りと妙に納得して、ワインとともにフォカッチャをがぶり。もちろん写真は撮りませんでしたが、2階のドリンクコーナーで巨大なフォカッチャをほおばる客を発見した皆さん、それは私です(笑)

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この日はいつものRA席。指揮者もオケもよく見えて、音もダイレクトに響くお気に入りの席。

1曲目は、あんまり馴染みのないブルックナーの0番交響曲。家に帰ってからザールブリュッケン放送響とのブルックナーの交響曲全集のCDを確認してみると、こちらにも0番は収録されており、他の指揮者はあまり取り上げないもののスクロヴァチェフスキは得意としている曲のようです。いづれにせよコンサートで聴く機会は滅多になかろうということで、聴く側も若干緊張気味。

定刻少し前にオケのメンバーがステージ登場。そして拍手に迎えられてコンサートマスターが登場しチューニング。この日のコンサートマスターは長原幸太さん。チューングを終えたステージ上に袖からスクロヴァチェフスキが登場すると、まさに嵐のような拍手。皆さん91歳にもなる指揮者の登場に早くも興奮気味。興奮と暖かさの入り交じった拍手の嵐にスクロヴァチェフスキも笑顔で応えます。いつもどおり脚をすこし引きずりながら指揮台に向かいますが、体調は悪くはなさそうです。前回コンサートの時より少し痩せたでしょうか。そして指揮台にあがり、いつもどおり極端に短い指揮棒を振り上げた途端、水をうったような静寂からブルックナー独特の弱音からの開始。リズミカルに音階を進めるとすぐに吠える金管。この日の読響、特に前半のブルックナーは完璧なアンサンブル。よほど練習を重ねたのか、弦楽セクションのボウイングは見事の一言。コンサートマスターの長原さんにピタリと従うように全員の弓がそろうところは圧巻。スクロヴァチェフスキが頬を膨らませながら振るタクトにもピタリとついて、しかも分厚い、まるでベルリンフィルのような深い響きをホールに轟かせていました。こちらが曲になじみが無い分、音楽が記憶を通りこしてダイレクトに脳髄に響きます。ブルックナーは習作として、番号をつけなかったこの曲ですが、スクロヴァチェフスキの手にかかると、いつものような巨大な伽藍が出現し、圧倒的な迫力。1楽章のアレグロは時折現れるもの凄い推進力のメロディーと静寂、深い呼吸が交錯する見事な構成。これほどのスケールの曲であると実演ではじめて知りました。
爆音の響きに酔えた1楽章に続いてアンダンテは、深い淵を思わせる沈みこみ。一転して精妙なオケの音の重なりによって荘重なメロディーが奏でられます。研ぎすまされたヴァイオリンの美しいメロディーを木管が響きを華やかに隈取り、幽玄な転調を加えながら独特の神々しさを感じさせます。このへんのスクロヴァチェフスキのコントロールは他の曲での演奏の通り、弦の深々としたフレーズと独特の唸りによって常人には表現できない世界観に至ります。まさにスクロヴァ節。
続くスケルツォはまさにオケが轟きまくります。速めのテンポで極端なアクセントを多用しながらも非常に流れの良い音楽。いつものようにティンパニの岡田さんが渾身の一撃を加え、頬がびりつくような轟音で音楽を引き締めます。ティンパニの岡田さん、これもいつも通り頻繁にマレットを変え微妙に響きを変えています。
フィナーレは癒されるような響きからはじまり、轟音を織り交ぜながらオケをグイグイと煽って音楽を創っていきます。指揮台に登るまでの足腰の弱さはどこにいったのか、指揮台のスクロヴァチェフスキの動きの機敏さと、リズムの正確さは驚くほど。ブルックナーの長大な曲を渾身の力で降り続けていますが、まったく疲れらしきものは見えず、クライマックスに向けてひたすらオケを煽っていく姿は、すでに神がかってます。ホール中がスクロヴァチェフスキの造り出す音楽と発散するエネルギーに圧倒されっぱなし。終盤のクライマックスは観客も身を乗り出してエネルギーを浴びるよう。最後の一音を轟かせ、スクロヴァチェフスキがタクトを下ろすと、場内から嵐のような拍手が降り注ぎます。スクロヴァチェフスキもオケの素晴しい出来に満足したのかオケを讃えながら拍手に応えていました。プログラムの前半から場内は異様な興奮につつまれていました。観客も脚の悪い爺を気遣ってか、カーテンコールは2度ほどで休憩に入ります。

あまりに素晴しい出来のオケに、後半のベートーヴェンにも期待が高まりますが、後半のベートーヴェンの7番、その予想を遥かに上回る怒濤の演奏でした。ベートーヴェンの7番といえば私の世代の刷り込みはもちろんカルロス・クライバー。熱狂の坩堝に叩き込まれる舞舞踏の聖化ですが、最初はクライバーの演奏と脳内で比べながら聴いてしまっていました。しかし、2楽章以降は完全にスクロヴァチェフスキの術中にハマりました。

1楽章は思いのほかオーソドックスに攻めてきます。テンポは予想したほど速くなく荘重な印象。前半のブルックナーの轟音が耳に残る中、逆に古典の矜持をあらためて保とうとする意図か、スクロヴァチェフスキもあえて少し抑え気味の1楽章の入り。印象が一変したのは2楽章。それまでどこかでクライバーの演奏をイメージしながら聴いていましたが、一楽章の最後の一音が鳴り終わるとアタッカですぐに2楽章に入り、そのフレージングはまさにスクロヴァチェフスキの真骨頂。さざ波のようにざわめく弦。現代風のあっさりした演奏とは対極にあり、しなやかにメロディーを刻みながらも、かなりはっきりとしたコントラストをつけて媚びない劇性を表現。ベートーヴェンの音楽がスクロヴァチェフスキによってちょっとブルックナーチックに響きます。そして、3楽章のスケルツォにもアタッカで入りますが、指揮棒を振り下ろす瞬間の気合いが凄い。鬼気迫るとはこのこと。ここからグイグイオケを煽ってフルスロットルの連続。スクロヴァチェフスキのエネルギーがオケに乗り移ってホールを揺るがすような迫力。フィナーレに入る時にはスクロヴァチェフスキの気合いが声になって注がれ、フルスロットルどころかオーバーヒート寸前の気合いの嵐。読響もスクロヴァチェフスキの煽りに見事についていき、ティンパニは皮が張裂けんばかりの打撃で応えます。この音楽と煽り、エネルギーが91歳の老指揮者から生み出されているとは信じられません。最後のリズムがカオスに包まれるところのコントロールも盤石。爆風のようなクライマックスを迎え最後の一音がなり終わると、今まで聴いた事のないようなブラヴォーの嵐が降り注ぎます。すぐにスタンディングオヴェーションになり、オケも一緒に老指揮者に惜しみない拍手を送ります。まさに奇跡のような音楽。ホールの全観客がスクロヴァチェフスキに打ちのめされた、心地よい脱力感。奇跡の瞬間に立ち会った観客の興奮したようすがホール内に満ち、脚を引きずりながらも何度かのカーテンコールに応じますが、爺が握手でコンサートマスターに退場を促します。オケのいなくなった広いステージに再び呼び戻されたスクロヴァチェフスキの快心の笑顔に観客も満足したのか、拍手が止んで素晴しいコンサートが終わりました。

ここ数年スクロヴァチェフスキのコンサートには通ってますが、いつも最高の演奏。今回はこれまでで最高の出来だと思います。ただ力任せな演奏ではなく、オケがクッキリとコントラストがついて格調高く響き、そして振り切れんばかりに鳴らせきってしまう手腕は見事。演奏に老いの影はなく、溌剌としてダイナミック、そして深い響き。この高みはどこまで行くのでしょうか。ほんとうに素晴しいコンサートでした。



心地よい興奮のなか、この日はサントリーホールの並びのカフェで反省会。

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食べログ:ARK HiLLS CAFE

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グラスワインに前菜盛り合わせ、パスタなどをいただきましたが、カジュアルな割に美味しいお店。料理が出てくるのも速いのでコンサートの反省会に向いています。

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サントリーホールのコンサートチケットを見せるとデザートがついてくるというサービスもいいですね。

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コンサートの余韻を楽しみながらゆっくり食事をして帰りました。

この至福の時間、再び味わう事ができるでしょうか。もちろん、スクロヴァチェフスキのコンサートの予定が発表されれば、次の機会もぜひ聴きたいものです。

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tag : サントリーホール ブルックナー ベートーヴェン

デニス・ラッセル・デイヴィス/読響の第九(東京オペラシティ)

なんだかここ数年は、日本でのトレンドに乗って年末は第九を聴きに行くのが習わしとなっております。昨夜は初台の東京オペラシティに母親、嫁さんと3人で出かけました。

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ここ数年、第九はカンブルラン/読響、ホグウッド/N響、スクロヴァチェフスキ/N響となかなか聴き応えのあるコンサートに出かけています。今年読響の第九の指揮は、なんと、デニス・ラッセル・デイヴィス! 突然彗星のごとくハイドンの交響曲全集をリリースしたので、ハイドンマニアの方は一目置く指揮者かもしれません。ただし、わたしはこの全集はあまりお薦めしていないことからもわかるとおり、今ひとつ没入できない指揮者という印象でした。食わず嫌いは良くないということと、母親を連れて行くのにちょうど良い席が空いていたということで、急遽聴きに行くことにしました。

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第4回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ - 読売日本交響楽団

オペラシティはクリスマスのイルミネーションで華やか。なんとなく世の中クリスマス気分ということで、開場前からいい気分。18:00の開場と同時にホワイエに入り、まずは腹ごしらえ。東京オペラシティのサンドウィッチは美味しいので、赤ワインとともに楽しみます。この開演前のちょっとざわついた雰囲気もコンサートの楽しみの一つ。

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母上君も赤ワインをいただきご機嫌です(笑)
→ 母親の友人諸氏の皆様 うちの母も元気です!

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今日は東京オペラシティではじめて2階席です。右側ステージ横でステージが俯瞰できるなかなか良い席。2階席は2列しかないので見通しも十分です。東京オペラシティは1階平土間の勾配が緩いので、なかなかステージが見えませんが、サントリーホール同様、2階席からは逆に見晴らしも良く、なかなか良い席であるのがわかりました。何よりいいのが2階にもビュッフェがあり、こちらのほうがゆっくりできること。これは今回新発見。

プログラムは上のリンク先を参照いただきたいのですが、第九の前に読響メンバーによる室内楽が演奏されました。ヴィオラ四重奏とチェロ四重奏。とくにヴィオラ四重奏は普段脇役のヴィオラの趣深い音色が味わえる素晴しい演奏でした。これはなかなか良い試みですね。

短い休憩を挟んで第九に入ります。

東京オペラシティは普段良く行くサントリーホールよりも体積がだいぶ小さいのでオケが良く響き渡り、迫力もアップ。

デニス・ラッセル・デイヴィスはジャケット写真などの印象では、強面ですが、意外に背が低く、動きもかなり細かいためなんとなく想像したのと異なる印象でした。

1楽章はちょっと力が入り過ぎて、かなり表情が固い印象。リズムをクッキリ描いて行くスタイルはハイドンの交響曲の録音からも想像できましたが、リズムやメロディーを受け継ぐ部分のつながりがぎこちない感じ。ちょっと単調なところがあり、かなり力で押し通すような1楽章。ただしティンパニや低音弦をかなり鳴らして迫力は尋常ではありません。ちょっとこの先どうなるのだろうと不安な印象もありました。
印象が一変したのがつづくスケルツォ。いままでのぎこちなさがウソのように、スケルツォはタイトに引き締まりまくった素晴しい演奏。デイヴィスの力の入ったコントロールがこんどは良い方向に作用して、未曾有の迫力。楽章間でこれほど印象の変わる第九ははじめてです。
アダージョは速めにくるだろうと想像していましたが、これまた予想とかなり異なり、歌う歌う。現代風のタイトなアダージョではなく、美しいメロディーを弦楽器が雄弁に表現。ここにきてデイヴィスの指揮もかなり柔らかくなり、各パートに的確に指示を出しながら音楽を紡いでゆきます。
圧巻は終楽章。これはかなり確信犯的演出です。入りは速目でタイトながら、歓喜の歌のフレーズがはじまった途端、白亜の大神殿が出現するように象徴的に巨大な構造物を表現するようにがっちりと構造を描いて行きます。この終楽章の象徴的にデフォルメした構造の表現こそ、現代音楽まで得意とするデイヴィスの描く第九の真髄だったと気づきます。今日のソロはオール日本人キャストでしたが、とくにバリトンの与那城敬さんは素晴しい声量で、ソロの入りの一瞬でホールの観客を釘付けにする素晴しく朗々とした歌唱でした。そしてコーラスは新国立劇場合唱団。ホールが狭いせいか、コーラスは怒濤の迫力。声が一つにそろって素晴しい精度。母親も仕切りにコーラスをほめていました。デイヴィスの指揮は終楽章に入ると自在さを増し、基本的に速めのテンポながら、時折現代音楽のような峻厳さを感じさせるほどテンポを落とす場面もあり、聴衆を引き込んでいきます。最後は爆風のような迫力でオケが爆発。開場もまさに割れんばかりの拍手で熱演に応えていました。今日もティンパニの岡田さんは見事。母親も「太鼓ぴったりだった」感心しきり。生のオーケストラの大迫力にはじめてふれて、痺れていました。

私もデイヴィスをちょっと見直しました。聴衆の鳴り止まない拍手に深く深く礼をする誠実な姿が印象的でした。第九の演奏としてはかなりユニークなものでしょうが、デイヴィスの狙いは良くわかりました。やはり現代音楽を理解する視点からみたベートーヴェンのあり方をよく考えての設計でしょう。なかなか楽しめました。なにより母親がいたく感激していたのが嬉しかったですね。

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ゆったりとコンサートを楽しんで、お客さんが引けたホワイエのクリスマスツリーをパチリ。良いコンサートでした。

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tag : 東京オペラシティ ベートーヴェン 第九 読売日響

シューリヒト/フランス国立管のベートーヴェン1番、英雄(DISQUES MONTAIGNEシャンゼリゼ劇場ライヴ)

仕事が忙しくてちょっと更新できませんでした。前記事のモニク・ド・ラ・ブルショリュリのシャンゼリゼ劇場ライヴの独特の乾いた響きを聴いて、このアルバムを思い出しました。今日はハイドンではなくベートーヴェン。

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本当は金と紺の粋な配色なんですが金が反射して真っ黒に写っちゃいましたということでライナーノーツ裏面写真も追加。

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HMV ONLINEicon(Altus盤)

カール・シューリヒト(Carl Schuricht)指揮のフランス国立管弦楽団(Orchestre National de France)の演奏でベートーヴェンの交響曲1番と交響曲3番「英雄」の2曲を収めたアルバム。収録は1番が1965年6月15日、英雄が1963年5月14日、いずれもパリのシャンゼリゼ劇場でのライヴ。レーベル今は幻の仏DISQUES MONTAIGNE。所謂お宝盤です。なお、フランス国立管弦楽団はこのオケの現在の呼称で、当時はフランス放送管弦楽団(Orchestre national de la radiodiffusion Française)と呼ばれていたそうです。

上のHMV ONLINEのリンク先はこのDISQUES MONTAIGNE盤の英雄の演奏の日のコンサートの模様を収めたアルバムで、もちろん入手可能です。

モニク・ド・ラ・ブルショリュリのアルバムの響きはまさに、このアルバムから聴こえる響きと同質なもの。おそらくコンクリート建築の父と呼ばれたオーギュスト・ペレによるこの劇場特有の響きの個性なのではと思います。シャンゼリゼ劇場は過去2度ほどパリを訪問した際にもコンサートを聴く機会に恵まれず、実際にこの劇場の音は聴いていません。なお、シャンゼリゼ劇場は今年創立100周年とのことです。

指揮者のカール・シューリヒトはおなじみでしょう。1880年ドイツ北部のダンツィヒに生まれた指揮者。紹介は下のDISQUES REFRAIN盤の記事をご覧ください。シューリヒトは1967年はじめに86歳で亡くなっていますので、この演奏は英雄が81歳、1番が83歳頃の演奏ということで最晩年の演奏になります。シューリヒトは晩年リウマチを患っていたということで、体調も万全でなかったことが、手元にあるミシェル・シェヴィ著の「大指揮者カール・シューリヒト 生涯と芸術」(アルファベータ)にも触れられています。

2011/02/25 : ハイドン以外のレビュー : シューリヒト/ウィーンフィル1956年のモーツァルトライヴ
2011/02/23 : ハイドン–交響曲 : シューリヒトの「ロンドン」(MEMORIES REVERENCE)
2011/02/22 : ハイドン–交響曲 : シューリヒトの「ロンドン」(DISQUES REFRAIN)
2010/04/21 : ハイドン–交響曲 : 枯淡、シューリヒトのハイドン

シューリヒトは好きな指揮者ゆえ、これまで何度もとりあげています。直裁、明解なのに味わい深く、音楽に魂が宿っているような生命感すら感じさせる演奏が特徴です。ハイドンでは86番とロンドンの素晴らしい演奏があり、以前触れたようにわがコレクションでも至宝クラスのアルバムです。

シューリヒトといえばブルックナー、モーツァルト、ベートーヴェンなんでしょうから、ハイドン以上にすばらし演奏が多い訳ですが、そのシューリヒト最晩年、しかもシャンゼリゼ劇場でのライヴということで注目度の高いもの。もちろん実に素晴らしい演奏で、長年愛聴しております。

ベートーヴェンの1番と3番は何れもハイドン存命中に完成した作品。ハイドンは創作活動をほぼ終えていた時期ですが、ハイドンの築いた交響曲という形式の次の時代を切り開くベートーヴェンの衝撃的な曲を聴いたのでしょうか。

ベートーヴェン 交響曲1番op.21(1800年)
会場のざわつきの中から鮮明に響き渡る音響。冒頭どすんと何かが落ちたような音まで録られた鮮明な録音。もちろんシャンゼリゼ劇場独特の音響。ライヴ好きの私にとっては会場の空気そのままの理想的な録音です。会場での演奏の緊張感あるようすが手に取るようにわかります。録音はステレオなのもプラスですね。演奏の方は冒頭からシューリヒトは80歳を超えているとは信じられない素晴らしい生命感溢れるコントロール。キリッと引き締まって、直裁なフレーズで淡々とすすめているのに、音楽に立ちのぼるえも言われぬ高貴な雰囲気と味わいがあります。シューリヒトにしかできない演奏でしょう。オケも万全。特にシャンゼリゼリゼ劇場の独特の響きに溶け込む木管楽器が素晴らしいですね。まさにシャンゼリゼ劇場の客席で聴いているような気分になります。終盤は畳み掛けるような素晴らしい迫力。とても80歳を超えた人の奏でる音楽とは思えません。
間をおかず2楽章のアンダンテ・カンタービレに。1楽章とかわらぬテンポによるサクサクとした演奏。もちろんシューリヒとならでは達観したフレージングと緊張感溢れるオケのエネルギーが感じられる素晴らしい音楽。
またまた、会場が咳き込む隙を与えないように間を置かずメヌエットに入ります。気品と迫力の両立した響きの塊のようなメヌエット。オケの響きはシャンゼリゼ劇場に響き渡ります。
フィナーレも有名なメロディーが速めのテンポに乗って軽い感じなのに活き活きと奏でられ、オケは抜群の精度で対応します。センス良く乱舞する音階のそこここでオケが爆発。まさに新時代の音楽の登場を鮮明に印象づける音楽でしょう。全く練らないのに音楽には素晴らしいメリハリがついて、音楽の構造がクッキリ浮かび上がります。最後の音を待たずにシャンゼリゼ劇場の観客から嵐のような拍手が降り注ぎます。このコンサートがパリの聴衆にとって、どれほど期待されたものだったのかを物語るよう。拍手は自然と手拍子にかわっていきました。会場の興奮がそのまま伝わってくる素晴らしい演奏でした。

ベートーヴェン 交響曲3番「英雄」op.55(1804年)
続いて英雄。前曲の1番より少し前の1963年5月のライヴ。最初の一撃から、ノックアウト。もの凄い緊張感。録音は前曲同様鮮明ですが、比べると前曲のほうが鮮明度では上で、こちらのほうが少し低域の量感重視でしょうか。いずれにせよシャンゼリゼ劇場の雰囲気がしっかり伝わります。オケの調律が少し緩い感じがしますが、気にしません(笑)。1楽章は最後のクライマックスを目指して徐々に盛り上げていくプロセスがどの演奏も聴き所なんですが、シューリヒトのコントロールは一貫して気品と直裁な表現のバランスのとれたもの。過度なメリハリを抑えながらも実に慈しみ深く、味わい深いもの。燻し銀の演奏という感じでしょう。1番がかなりエネルギー感のある演奏だったのに対し、こちら最初の一撃以降はじっくり攻めていく感じ。特に木管、金管の響きにシャンゼリゼ劇場の響きが乗って、これもまた味わい深さにつながっています。終盤はザクザクとした響きによる迫力のある演奏。
やはり間をとらず2楽章のアダージョに入ります。この楽章間の間をあまり置かず入るのはシューリヒトの特徴なんでしょうか。1楽章がバランス重視だったのに対し、2楽章はかなり起伏の幅をとって大きなうねりを表現していますが、葬送行進曲を過度に暗く表現するのではなく、陰影の深い彫刻に丁寧にライティングしたようなアーティスティックな表現。こうした部分の芸術性はシューリヒトならではの高みに達していて、この演奏の一番聴き所です。最後の消え入るようなところまで含めてまさに孤高の表現。
音楽はつながっていても雰囲気がさっと変化してスケルツォに。オケにエネルギーも漲りますが、シューリヒトが手綱を上手く捌いて、抑える部分をしっかり抑えることで一貫した音楽が流れます。金管を象徴的に目立たせる演奏も多いですが、かなり抑えているのが特徴でしょうか。弦楽器のフレージングはシューリヒトの真骨頂でしょう。
フィナーレは変奏曲。メロディーの受け渡しが重なるようになるのがシューリヒト流。メロディーラインの流れのよさとメロディー間の対比が鮮明になり、音楽が非常に豊かに聴こえます。時折そよ風のような優しい表現を挟みながら、メロディーの織りなすざっくりとした綾を大きなうねりに乗せていきます。終盤のホルンの号砲も穏やかな表現です。このあたりの表現が気品と深みを両立させたシューリヒトの演奏のポイントなのかもしれませんね。最後はテンポをかなり落として、曲を締めくくります。前曲同様嵐のような拍手で終わります。こちらも当日の感動が伝わってくる演奏でした。

カール・シューリヒトの演奏によるシャンゼリゼ劇場のベートーヴェンのライヴ。シャンゼリゼ劇場独特の響きのなかに、シューリヒトならではの味わい深いベートーヴェンが響きわたる素晴らしい演奏でした。このアルバム、英雄の演奏の方が記憶に残っていましたが、あらためて聴き直すと1番もそれ以上に素晴らしい演奏。1965年とシューリヒトがコンサートの指揮台に登れるかどうか危うい時期の貴重なコンサートゆえ観客の興奮も一入でしょう。シューリヒトもそれに応えて、素晴らしい覇気を感じさせます。いまから50年も前のコンサートの感動がよみがえりますね。

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tag : ベートーヴェン ヒストリカル ライヴ録音 シャンゼリゼ劇場

東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる

今日は台風17号迫る中、以前からチケットを取ってあったコンサートに。

第147回オペラシティ・マチネーシリーズ-読売日本交響楽団

スクロヴァチェフスキはハイドンを振る訳ではありませんが、以前に行ったコンサートはどれも素晴らしく、年齢が信じられないほどの活き活きとした音楽を楽しめるので、やはりコンサートには足が向きます。これで4回目のスクロヴァチェフスキのコンサートです。

2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

今日は東京オペラシティでのベートーヴェンの2番と3番「英雄」という正統派プログラム。ベートーヴェンの交響曲でも2番はハイドン時代の構成の延長にある曲なので好きな曲。そして英雄はハイドンが到達した交響曲の高みに対して、次元を超える創造で新境地を切り開いた曲でしょう。この名曲をスクロヴァチェフスキがどう料理するのか、期待は高まります。

今日の東京はお昼までは台風襲来を感じさせない平常を保っていました。開場のだいぶ前にオペラシティについて、ホールの下の階にある本屋さんで少々のんびり。英気十分で開場を待ちました。

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もちろん開場後、すぐにビュッフェに立ち寄り、珈琲と赤ワインで喉を潤します。

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今日の赤ワインは勝沼、鳥居平の「鳥居平ルージュ」。山梨特産のブラック・クィーンのワイン。こうして音楽ホールでも国産のワインを名前を出して給するようになったんですね。口当たりが柔らかい優しい味の赤ワインでした。

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開演前に練習するステージ上の奏者たち。今日の席は1階の右前の方。

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ついでに、上方をパチリ。東京オペラシティのタケミツ・メモリアル・ホールの高い天井。この時間はまだ台風の影響もなくホール内はこれから起こるただならぬ演奏を待つ、まさに嵐の前の静けさの状況。



開演時間である14:00の少し前に、ステージ上には読売日本交響楽団の団員が登場しだします。1曲目はベートーヴェンの2番。つづく3番のために少し席を残した規模のオーケストラ。

ベートーヴェンの交響曲2番は1801年から2年の作曲で、初演は1903年4月5日、アン・デア・ウィーン劇場とのこと。1803年といえば、ハイドン最後の作品である弦楽四重奏曲Op.103が作曲された年。

この日のコンサートマスターはデヴィッド・ノーランさん。いつものように調律が終わると、袖から元気そうなスクロヴァチェフスキさん登場で、拍手喝采。指揮台に登る時に脚を気にする様子は、以前と変わりません。演奏前なのに万来の拍手を浴びて、にこやかに応ずる様子もいつも通りで一安心。

2番は、最初の一音から最後まで、圧巻の出来でした。いつもハイドンばかり聴いている私の耳には、交響曲というジャンルを確立したハイドンのなし得た偉業を、新しい世代が、これまでとは異なる次元の力感を込めて超えていった様子が手に取るようにわかる演奏でした。
スクロヴァチェフスキらしい、引き締まった響きと、時折聴かせる弦楽器のうなりを伴うような深い響きで、ベートーヴェンの初期の交響曲を描いていきます。1楽章は長い序奏をじっくりと聴かせたあと、主題に入ると、テンポを上げ、アポロン的な均衡を保ちながら、沸き上がる力感をじっくり描いていきます。スピーディにまとめる演奏が多い中、スクロヴァチェフスキはスピーディななかに、ミケランジェロの彫刻のように筋肉のディティールをデフォルメするように強調しながら、全体のバランスを躍動的に描くような演奏。スクロヴァチェフスキ流のデュナーミクの変化が引き締まった表情を保ち、徐々にエネルギーを増していくようになり、クライマックスではスクロヴァチェフスキは両手を震えるように振り上げて、オケを煽りまくり、もの凄いエネルギーを引き出します。
2楽章のラルゲットはスクロヴァチェフスキの真骨頂。時折まるでブルックナーのアダージョのような深い響きを時折聴かせながらも引き締まった規律を保った演奏。後半の盛り上がりはまさにブルックナーの大伽藍を思わせる神々しさ。ベートーヴェンの2番からこのような荘厳な響きを聴けるとは思いませんでした。
3楽章のスケルツォはハイドン時代のメヌエットによる均衡から一段と力の表現が濃くなり、オケは、エネルギーの塊のように荒れ狂います。つづくフィナーレもあわせて、徐々にクライマックスにいたる大きな流れをつくり、頂点を鮮明に意識して、スロットルを少しづつ開いていきます。静と動の変化も巧みにコントロールして、豊かな表情と引き締まった響きを両立した素晴らしい感興。いやいや、ここまでの高みに至るとは。1曲目なのに割れんばかりの嵐のような拍手に迎えられます。スクロヴァチェフスキさん、満面の笑顔で拍手に応えます。

休憩を挟んで、今日の本命、英雄です。作曲は1802年から4年、初演は1904年12月、ロプコヴィッツ伯爵邸でということです。ロプコヴィッツ伯爵はハイドンが弦楽四重奏曲Op.77を献呈した人です。

こちらは、さらなる高みに。まずは、英雄の最初の一撃の集中力、凝縮感に圧倒されます。スクロヴァチェフスキは震えるようにタクトを振り上げ、素人にはどこで入るのか全くわからないタイミングでの入り。この一音、というかニ音ですが、響きの緊張感はただならぬもの。最初の一撃のみで、開場の聴衆の耳を鷲掴みにします。以降は2番と同様、引き締まった響きで音楽をつくっていきますが、聴き進むうちに2番はそれでも抑制していたことがわかります。要所で見せるスケールの大きさは2番とはやはり差がつきます。オケの編成も少し大きくなり、コントラバスの図太く深い響きや、オーボエの美しい響きが音色の幅を広げています。1楽章は寄せては返す大波のように何度かの盛り上がりのあと、最後のクライマックスはそれまでの音楽の造りも含めて、素晴らしい上昇感と力感。CDで聴くのも悪くありませんが、やはり渾身の生は違いますね。
2楽章の葬送行進曲は、実に深いフレージングでじっくりと攻め込みます。静寂と弦楽器の唸るような響きの繰り返しはやはりスクロヴァチェフスキの得意とするブルックナーのアダージョを思わせるもの。ただ、ブルックナーの響きに没入するような圧倒的な轟音とは異なり、古典の均衡をきっちり意識して、ベートーヴェンらしさも保っています。
スケルツォはホルンの名旋律で知られますが、この日の読響のホルンは絶妙な上手さ。スクロヴァチェフスキの渾身の指揮に奏者が完璧な演奏で応えます。今日はミスらしいミスはなく、読響は素晴らしい演奏で華を添えています。
そしてフィナーレはスクロヴァチェフスキ圧巻のコントロール。とくに極端にテンポを落とすさざめくような場面を意識的に作って、盛り上がりを演出するあたりは、並の指揮者とは異なります。完全にスクロヴァチェフスキのベートーヴェンになっていました。長大な英雄ですが、引き締まってかつ、彫りの深い音楽として、実に聴き応えのあるものでした。最後は嵐のような拍手とブラヴォーに何度も呼び返され、今日の充実振りを楽しむようなスクロヴァチェフスキの笑顔が印象的でした。コンサートマスターのデヴィッド・ノーランとガッチリ握手してずいぶんにこやかに話していたところをみると、今日の演奏はスクロヴァチェフスキにとっても納得の演奏だったのでしょう。

今日は素晴らしいベートーヴェンでした。おそらくテレビでも放送されるでしょうから、このコンサートを聴けなかった人にもこの様子を味わってほしいですね。昨年末に聴いたN響との第九も素晴らしいものでしたが、振り慣れた読響との2番と英雄はそれを上回る出来と言えるでしょう。

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今日は9割5分の入りというところでしょう。心なしか年配者が多かったようですが、皆さん満足げに開場を後にされていました。

いつもだと、このあと食事をして帰るのですが、今日は台風接近に備えて、おとなしく家路につきました。明日からまた、忙しい仕事ですね、、、

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スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)

今日はサントリーホールのコンサートへ。

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NHK交響楽団:FUJITSU Presents N響「第九」 Special Concert

10月に行ったザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニーとのブルックナーの4番のコンサートがあまりに良かったので、奮発して今日はサントリーホールでのN響の第九を聴きにいきました。これでスクロヴァチェフスキのコンサートは3回目。以前のコンサートのレポートはこちらをご覧ください。

2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

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今日は仕事はたまってたのですが、この機を逃す訳にはいかず、早々に会社を引き上げサントリーホールに向かいます。会場の30分前にはいつもどおりサントリーホールにつき、向かいのオーバカナル赤坂店でいつものように軽食とワインをいただきます。今日はコンサートのために昼食すらとっていませんでしたので、お腹ぺこぺこです。まずはワインで聴覚神経が鋭敏になる程度に喉を潤します(笑)

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あとはホットサンド(のようなもの)
ほどよくお腹も満ちてちょうどいい感じです。

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サントリーホール前の広場はクリスマスイルミネーションでこんな感じ。もうクリスマスは過ぎてますがライトアップされていて雰囲気があります。

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スクロヴァチェフスキの第九は同じメンバーにて直前まで4日間にわたりNHKホールで行われており、今日が最終日でかつサントリーホールに会場を移してのもの。NHKホールとサントリーホールでは音響が全く異なりますので、今回は最初からサントリーホールを狙ってチケットをとりました。先日もNHKホールでデュトワのマーラーの8番を聴いたばかりですが、やはりサントリーホールの方がいいですね。

今日の席はRBエリア、オケの右脇2階席。このところサントリーホールで聴く時にはこのあたりを狙って取ります。ただし嫁さんと2枚なんですが、1席間に入る別れた席しか取れませんでした。きょうは幸い間の方が席を代わってくれて並び席に。その代わってくれた方は、娘さんが国立音大の合唱でステージに立つとのこと。その方とおしゃべりしながら開演を待ちました。娘さんは前から3列目の左から12番目で歌ってました。

このコンサートは今日のみオルガンの独奏が前半に置かれています。バッハのトッカータとフーガ、モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス、バッハのコラール「主よ、人の望みの喜びよ」と名曲3曲。オルガンは芸大オルガン科卒の勝山雅世さんという若い方。サントリーホールのオルガンの音量をフルに使った迫力のある、日本人らしい几帳面な演奏でした。会場からも暖かい拍手が送られました。が、、、それはあくまで前座でした。休憩後のスクロヴァチェフスキの第九は圧倒的な出来。やはりスクロヴァチェフスキは凄いです。最初から最後まで圧巻の出来でした。

休憩が終わり、合唱団が入場。3/4が女声というくらいの配分。サントリーホールのステージ裏の席一杯に国立音大合唱団が入ります。これまで厳しい練習を積んできたとの事。

そしてオケが入ってチューニングが済むとしばらくでスクロヴァチェフスキが登場。膝でも悪いのでしょうか、歩く姿は流石に年齢を感じさせます。ただし指揮台にのぼり独特の短い指揮棒を振り上げた途端、ホール内の空気が一変。速めのテンポとキレのいいヴァイオリンのボウイングが印象的なキリッとした1楽章。最初はバランス重視で均衡した演奏でしたが、徐々に力感が漲り、1楽章の中盤に入るとオケの全奏はホールを突き破らんがごとき迫力。ホール中の観客を圧倒し始めます。前半は抑えていた事を振り切れた音響によってはじめて気づかされるようでした。キリッと引き締まり大きな起伏も描かれる素晴らしい1楽章。
さらに素晴らしかったのが2楽章。燃えたぎる火の玉、エネルギーの塊のようなモルト・ヴィヴァーチェでした。速めのテンポはそのままに凄まじい起伏。N響のティンパニは今日は素晴らしい出来。まるで鬼太鼓座のような渾身の一撃。これほどの迫力のこの楽章ははじめて。スクロヴァチェフスキが頬を膨らましながら手を振り回してオケを煽り、オケも抜群の精度でそれに応えていました。鳥肌がたつような痛快さ。ベートーヴェンが聴力を失ってから想像した音響。ベートーヴェンもここまでの迫力は想像し得なかったのではないかと思うほどの渾身の出来でした。
そしてアダージョ。このアダージョはブルックナーを得意とするスクロヴァチェフスキならでは。特にチェロとコントラバスがホール内を揺らさんばかりの図太い響きで美しいメロディーを描き、すべての楽器が独立しながらも有機的に絡み合っていく様は非常に高度な音楽的感興をもたらします。遅めのテンポでじっくり描いたアダージョは期待通りのすばらしさでした。
そして終楽章。3楽章から間を置かずすぐに入りますが、普通は3楽章に入るところでソロ歌手が入場するのですが、今日は終楽章がはじまっても歌手はステージ上にいません。オケのみの演奏がしばらく続き大音量となったところで、歌手陣とグランカッサなどの鳴りもの陣がそろりとステージに入ります。歌手はオール日本人。出演者は上のリンクをご覧ください。歌手陣はいい出来。特にテノールの福井敬さんの突き抜ける高音域は素晴らしい迫力でした。そして秀逸だったのは国立音大の合唱団。非常に精度の高い合唱で、しかもスクロヴァチェフスキのコントロールに見事に反応して、デュナーミクのコントロールも完璧。終楽章は後半になるにつれ徐々にテンポを落とし、終盤はベートーヴェンなのにまるでブルックナーのような白亜の神殿の大伽藍が出現。ホール中に歓喜の歌が溢れ荘厳というか幽玄ですらある響きの渦に。最後はスクロヴァチェフスキがオケを煽って速めのテンポでキリッとフィニッシュ。ブラヴォーの嵐、天から降り注ぐ拍手。素晴らしいひと時でした。

延々と拍手が続きましたが、印象的だったのはスクロヴァチェフスキがステージに上がる度に合唱団をたたえていた事。合唱指揮の田中信昭さんも80歳代とのことですが、この2人の作った音楽は、若々しさとエネルギーに満ちていました。合唱団の最後の一人が去っても鳴り止まぬ拍手にスクロヴァチェフスキが再びステージに登場、満面の笑みで拍手に応える姿が印象的でした。

今日は人の作る音楽のこれ以上ない素晴らしさに出会った気がしました。素晴らしいコンサートに感謝です。

私がスクロヴァチェフスキの演奏にはじめて触れたのもテレビで放映していただいぶ前のN響を振った第九。テレビ画面からも発せられるオーラに釘付けになったのを覚えています。今日のコンサートのパンフレットによれば、スクロヴァチェフスキが以前に第九を振ったのは2000年とのことで、かれこれ10年以上も前のことだったわけですね。後何回聴く事ができるでしょうか。入口でもらったチラシでは3月に読響でブルックナーを振るそう。また行きたくなってしまいました。



コンサートの興奮も覚めませんが、お腹も減ってきたので、前回もよった、アークヒルズのカレー屋さん「フィッシュ」へ。今日も美味しかったです。

食べログ:フィッシュ

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まずはビール。

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そして、チキンカレー。

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名物フィッシュ&キーマ。

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ついでにグラスワインも(笑)

コンサートの余韻に浸るため、今日のお食事情報は簡単に。

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tag : サントリーホール ベートーヴェン 第九 N響

【サントリーホール25周年記念】ホグウッド/N響の第九

書きかけの記事がいくつかたまっているですが、ほとぼりが冷めないうちに今日のコンサートのレポートを。

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サントリーホール:サントリーホール25周年記念 ベートーヴェン「第九」

今日は以前にチケットをとってあったサントリーホールへ。今日のコンサートは主催がN響ではなくサントリーホール。サントリーホールも知らぬ間にオープンから25年もたったわけですね。

このコンサートは当初指揮者がチェコのイルジー・コウトでしたが怪我で来日できないとして、指揮者がクリストファー・ホグウッドに変わったもの。ホグウッドは以前、同じくN響に客演して、ハイドンのロンドンなどを取りあげたコンサートをNHKホールに聴きにいってます。いまN響のサイトで確認したら、2009年9月26日(土)のコンサートでしたね。このブログを始める前でしたのでレポートはありません。N響のサイトにある当時のプログラムのリンクを張っておきましょう。

NHK交響楽団:アーカイブ:2009年9月

この時のプログラムは、ハイドンの時代のスタイルで書いたプロコフィエフの「古典交響曲」、ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」組曲、モーツァルトの「フリーメイソンのための葬送の音楽」、そしてハイドンの交響曲104番「ロンドン」でした。ホグウッドは昔は古楽器演奏の先駆者でしたが、最近は新古典主義というか現代ものも振っており、新境地を開いているようですね。この時のコンサートも、プロコフィエフとストラヴィンスキーを前半に置いて観客の耳を現代の視点に置いた後、往年のホグウッドのキリッとした刻みのリズムによるモーツァルトとハイドン聴かせる非常に意欲的なブログラム。特にロンドンはホグウッドの面目躍如で、メヌエットのリズムの刻みとフィナーレのキレ、迫力は素晴らしいものでした。古典期の中に宿るリズムの躍動と現代音楽の陰影の深いリズムの共通点をえぐり出すような意図を感じました。

今日はそのホグウッドを指揮者の交代により再び聴く事になりました。しかもプログラムはベートーヴェンの第九。再びホグウッドの世界に浸れるでしょうか。



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今日は祝日なので開演は4:00。まだ明るいうちにサントリーホールに到着です。夜のコンサートのときは軽く食事をしてから聴くのが習わしですが、今日は終演後の食事で十分な時間なのでそのまま場内に。今日はブログラムが第九ということもあり、コンサート前のカラヤン広場はいつものコンサートよりもにぎわっていました。噴水の前には土が盛られて綺麗に花が植えられ華やかになっていました。

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今日の席はお気に入りの指揮者の右真横の2階席。1階席の前列や中列も何回か座りましたが、2階席のほうが全体が俯瞰できるのと、オケの音がダイレクトに聴こえて好みです。30分ほど前に入りましたが、ティンパニをはじめとする何人もの奏者がステージで最後のチェックで楽器を鳴らしていました。観客はほぼ満員。いつもながら開演前の華やいだ雰囲気はいいですね。

ほどなく今日の合唱を担当する東京混声合唱団、二期会合唱団がステージ後ろの普段は客席として使っているエリアに入場、そしてオケが入場し場内の灯りが落ちます。1曲目はモーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。今日はサントリーの故佐治敬三さんの命日とのことで演奏されるとプログラムに書かれていました。

ホグウッドが入場。前回よりちょっと恰幅良くなりましたでしょうか。タクトを振り上げた途端、素晴らしい一体感の透明な響き。ヴィブラートを抑えたN響の弦楽器と合唱が渾然一体となった響き。素晴らしかったのは合唱。一体感、力感、透明感の何れも最高の出来。やはりホグウッドは古楽の人と思わせるキリッとした表情と繊細な響き。純粋無垢な楽譜だけに表情付けは抑えて、曲自体の魅力を素直に表現した佳演でした。暖かい拍手が印象的でした。

1曲目のときはオケはステージに用意された席の半数程度の人数。拍手が途切れるとすぐに第九の編成の残りのメンバーとソリストがステージに。ステージ一杯のオケとコーラスは流石に大迫力です。

第九はホグウッドの古楽のスピリットと迸る前衛性がクロスオーバーした、非常に興味深い演奏でした。

1楽章は予想通り、速めのテンポとホグウッド特有のさらりとキレのいいリズムでベートヴェンの力感を存分に表現。素晴らしかったのはオーケストラの俊敏な反応と吹き上がり。1楽章だけで巨大な山脈のような圧倒的な存在感を感じさせました。1楽章後半のクライマックスに至る部分はホグウッドのコントロールの円熟を感じさせます。劇的というよりも俊敏なオケのキレで聴かせる弩迫力な音響。ティンパニ奏者が抜群のキレ。

ホグウッドらしさが最も出ていたのが2楽章のスケルツォ。1度でいいので冒頭のティンパニの渾身の一発を自分で打ってみたいですね。2楽章は諧謔性すら感じさせるリズムの響宴。もちろんベートーヴェンなんですが、ホグウッドが体を上下に揺さぶってことさらリズムのキレを強調し現代音楽のような雰囲気も。ほとんど溜めをつくらずリズムを先に先に打って行くスタイルでぐいぐいすすめて行きます。

3楽章のアダージョも予想通りあっさりと速めにすすめますが、際立っていたのが木管楽器などの音色の色彩感。伝統的なじっくりと一体感ある演奏ではなく、あっさりとしたリズムを刻みながら次々にメロディーを奏でる楽器の音色を際立たせるように強調したコントロール。楽器の音色に対する鋭敏な感覚を感じる楽章。

そして終楽章は驚きの展開でした。前半はほぼ予想通り、速めのテンポですが、ここにきて力感は最高潮に。良く知った第九のフレーズですが、畳み掛けるようにフレーズを速める部分は新鮮さと同時に慣れ親しんだメロディーをかなりデフォルメして聴かせるような印象も与えます。コーラスが入るトゥッティはテンポを落とし逆に神々しいばかりに堂々とした演奏。アヴェ・ヴェルム・コルプスで透明な響きを聴かせた合唱は第九では素晴らしい声量。オケをも圧倒せんばかりの素晴らしい響き。これまで聴いた合唱ものではピカイチの迫力です。
驚きの展開は後半の、打楽器やトライアングルがリズムを刻み、テノールが”Froh”と入る部分。突然極端にテンポを落とし、グランカッサ、トライアングルなどが不気味な迫力を帯びて鳴り響き、まるで現代音楽を聴くような急展開。ホグウッドの古典と現代のクロスオーバーする感覚が冴えまくった解釈でしょう。はっとさせられました。
ソロ陣はN響のサイトを参照いただきたいのですが、総じて良い出来。テノール、バリトンともにもう少し凛々しい感じの方がホグウッドの演奏に合っていたのでしょうが、2人とも安定していい歌唱。女性陣は完璧でした。
終楽章にいたり、ホグウッドの真骨頂である新古典主義的な感覚も覗かせながら、ホール一杯に響き渡るオーケストラとコーラス、ソロを十分にコントロールした渾身の演奏。最後は風圧さえ感じさせるようなフィニッシュ。すべての楽器の響きを瞬時に止め、シンバルの余韻だけが響き渡るホールに嵐のような拍手がすぐに被さり、観客の感動に包まれます。ホグウッドも満足行く出来だったのでしょう、まずはコーラスを立たせて祝福します。今日は確かにコーラスが抜群でした。つづいて合唱指揮の田中信昭さんつれて拍手に応えますが、田中さんはだいぶ高齢の方に見えました。今日のコーラスは本当に素晴らしかったです。ホグウッドがソロやオケの各パートを次々とにこやかに紹介しているのが今日の出来を物語るようでした。

先日の有無をも言わせぬスクロヴァチェフスキのブルックナーのコンサートも素晴らしかったですが、今日のホグウッドの第九もアーティスティックな良いコンサートでした。完全にホグウッドの術中にハマったようですね。



4:00開演でしたのでまだ6:00くらい。程よくお腹が減ってきたので、サントリーホールの前の広場でiPhoneの食べログの現在位置検索で近隣で安くて美味しそうな店を探索。目の前のアーク森ビルにいいお店がありました。

食べログ:カレー専門店フィッシュ

なぜか前回のオペラシティ同様インドカレーですが、食べログの評価は悪くありません。カウンター主体のお店ですが中ではインドの方が料理する本格的なカレーが出てきます。

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今日はビールではなくお店のグラスワインを注文。赤はほどよくタンニンを感じる舌触りが穏やかなメルロー系のいい味。白はほんのりと甘みとフレッシュな果実味を感じる嫁さん好みの味。カレー屋さんのグラスワインにしては出来過ぎのものです。

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サラダは普通のもの。

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そしてカレーがなかなかいい味です。こちらは嫁さんが頼んだ白身魚のカレーとキーマカレーの組み合わせ。白身魚を揚げた香りが良くカレーになじんで絶妙の風味。左側にちょっとのっているのがキーマカレーで、こちらはクローブの香りがかなり効いたスパイシーなカレー。こちらも複雑な香りが本格的です。どちらも非常に美味しい。おすすめです。

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こちらが私が頼んだ、チキンカレーとキーマカレーの組みあわせ。先程の白身魚のカレーとはハッキリ違う味で、こちらは正統派のインドカレーの味。こちらも絶妙に旨いです。キーマレーは同じもの。

コンサートの余韻に浸りながらワインと美味しいカレーを楽しめました。サントリーホールの向かいのアーク森ビルの3階の奥なので、ホールから2~3分のところ。値段も非常に手頃でおすすめのお店です。



さて、このところいいコンサートに当たって、ずいぶん楽しんでいますので、この勢いで年末までいくつかまたチケットを手配しています。またコンサートレポートとして記事にしたいと思います。

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tag : ベートーヴェン サントリーホール

フー・ツォンのピアノ協奏曲、快演

今日はピアノ協奏曲。ハイドンのピアノ協奏曲で最も有名なのはHob.XVIII:11です。
この曲のお気に入りを紹介しましょう。

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幸い現役盤です。このところ紹介するアルバムが、廃盤のものが多く心が痛んでおりました(笑)

フー・ツォンは中国生まれのピアニストですが、1934年3月生まれとのことで、はや76歳です。
このアルバムはライナーノーツのどこを見ても録音年不明。ネットをみてもちょっとわかりません。

演奏ですが、フー・ツォンのピアノと指揮でオケはポーランド室内管。他にベートーヴェンのピアノ協奏曲4番が入ってます。
まず驚かされるのがオケの生き生きとした表現。速めのテンポで颯爽と序奏が始まり、軽々とピアノが合わせて入ります。ピアノのメリハリというか、エッジの利いたアクセントがメロディーラインを鮮明に浮き上がらせ、明解な構成感を表現できています。カデンツァもテンポとメリハリを自在にコントロールしている感じで聴き応え十分です。
2楽章、清明な印象を保ちながら右手のメロディーラインのきらめき感をうまく表現。終盤の弱音部分の静寂感の表現も見事。ピアノの音が輝くような華麗さで引き締めます。
そして終楽章は、余裕持ちながら強弱のコントラストを的確に刻み、ハイドンの終楽章に特有の見事な展開を鮮明に描きます。
残念ながら、一流のオケではないため、オーケストラの音色などは他の盤に一歩譲るところはあるものの、フー・ツォンの指揮者としてのオーケストラコントロールは見事というほかありません。

このアルバムは割と最近入手したものですが、今まで聴いたXVIII:11のなかでは1、2を争う名盤だと思います。評価はもちろん[+++++]です。
フー・ツォンの名前は知っていたものの、その演奏をきちんと聴いていませんでした。これまた無防備だったことになります。

このアルバムに含まれるベートーヴェンの4番が、これまたすばらしい演奏。なんとデリケートなオーケストラコントロール。巨匠風ではないのに風格に満ちているというか、曲を噛み砕いて再構成したような音楽性の高い演奏です。こちらもおすすめです。

これは侮れない存在ですね。モーツァルトなどもチェックしてみなくては、、、

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tag : ピアノ協奏曲XVIII:11 おすすめ盤 ベートーヴェン ハイドン入門者向け

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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