ホーネック/紀尾井ホール室内管の受難など(紀尾井ホール)

コンサート記事が続きます。

20180615Honeck.jpg
紀尾井ホール室内管弦楽団 第112回定期演奏会

ライナー・ホーネック(Reiner Honeck)指揮の紀尾井ホール室内管弦楽団による、紀尾井ホールでのコンサート。ホーネックもこのオケも紀尾井ホールも初めて。プログラムにハイドンが入っていたので、お手並み拝見と言うことでチケットをとってあったもの。プログラムは下記の通り。

ハイドン:交響曲第49番「受難」
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番
ピアノ:アレクセイ・ヴォロディン(Alexei Volodin)、トランペット:古田俊博(Toshihiro Furuta)
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

IMG_2166.jpg

紀尾井ホールは四谷から中央線と上智大学の間を歩いてニューオータニに突き当たるちょっと前にあります。運営は新日鉄住金文化財団ということで、トッパンホール同様企業の文化施設のようですね。いつものように開場時間にはホールについて、一杯やって聴覚神経にスイッチを入れます。
サントリーホールで赤ワインを頼むとよく冷えて(笑)でてきますが、こちらは赤ワインと頼んだら冷えたものと常温のどちらが好みか尋ねてくれる親切さ。もちろん常温でとお願いして、適温のワインを楽しむことができました。飲み終わったグラスを気配を察して取りにきてくれるなど、ほかのホールでも見習って欲しいですね。

IMG_2168.jpg

この日の席はステージ上手の2階席で、ちょうどステージを見下ろす好みの席。紀尾井ホールは客席数が800と言うことで、小規模オケにはぴったりのサイズ。内装も綺麗でなかなかいい感じですが、2階席の手すりがちょうど視線を遮るところにあって、ちょっと鬱陶しいのが惜しいところ。

先日のレ・シエクルが開演前からステージ上で盛大に練習してたのとは対照的に、オケは定刻に皆そろって登壇。入場時に拍手が起こるもの一部のオケでは定番なのでしょう。

さて、ホーネックが登壇して、期待のハイドン。ホーネックは短めの指揮棒を持っての指揮。1楽章のアダージョはちょっとリズムが重い感じで入ります。1曲目なので、まだオケがちょっと硬い感じ。演奏は現代楽器によるオーソドックスなもので、安心して聴いていられるものですが、ハイドンのこの時期の曲に特有な仄暗い感じはあまりせず、オケの鮮明な響きでくっきりとした表情。先日聴いたマルクス・シュテンツが振った哲学者の演奏では、パート間のやり取りにスポットライトを当ててハイドンの曲の面白さを際立たせていたのと比べると、ちょっと工夫がない感じ。テンポが上がる2楽章のアレグロでもキレ味を感じさせるほどではなく、終楽章になってようやくオケが目覚めた感じ。ハイドン目当てでとったチケットでしたが、ハイドンは前座な感じでした。

驚いたのが続くショスタコーヴィチのピアノ協奏曲1番。奏者であるアレクセイ・ヴォロディンにも馴染みはありませんが、曲はアルゲリッチのハイドンのピアノ協奏曲のCDに含まれていて、聴いたことはなくはないと言うレベル。いつものように虚心坦懐に聴きましたが、ピアノのアレクセイ・ヴォロディンはロシア出身だけあって、力強いタッチでこの曲は得意としているよう。オケの方は先ほどのハイドンの時とは冴え方が段違いでキレキレ。もちろん曲の違いもありますが、このオケが名手揃いであることがわかりました。ホーネックはなんとなく古典が得意なのではと言う先入観がありましたが、さにあらず。このショスタコーヴィチは見事でした。ちなみにこの曲はピアノに加えてトランペットもピアノの横に座ってソロ扱いになる珍しい曲。

休憩時間にプログラムのオケのメンバー表をしげしげと眺めると、国内著名オケの首席奏者クラスがずらり。どおりで上手いわけです。

休憩後の田園は、実にオーソドックスな演奏。ハイドンの時よりもしっくりとくるフレージングで、ホーネックも得意としているように見受けました。聴きなれた田園の聴きなれた演奏に安堵感に包まれる感じ。この観客もこの田園はゆったりと楽しんで聴いていたように思います。4楽章の雷雨、嵐の荒れ狂う表情から5楽章の牧歌の幸福感に満ちたメロディーに至る展開も流石の盛り上げ方。実に完成度の高い演奏で終えるかと思いきや、ホーネック、肝心の最後でタクトを落とすハプニング。高雅に締まるはずが、最後は微笑ましい終わり方でした。もちろん観客も一瞬のハプニングに驚いたものの、それまでの素晴らしい演奏を称えて盛大な拍手で迎えました。

ウィーンフィルのコンサートマスターだったライナー・ホーネックの振る紀尾井ホール室内管ですが、ハイドンやベートーヴェンが良かろうとの期待でチケットをとりましたが、意外にも最も良かったのはショスタコーヴィチ。ベートーヴェンは流石に見事でしたが、ハイドンにはひらめきが少し足りませんでした。オケの方は名手揃いで素晴らしい実力。これはもう一度聴かねばなりませんね。



コンサート終了後、外に出てみると霧雨が降っていましたので、向かいのニューオータニの馴染みのとんかつ屋さんに寄ろうかと思って行ってみると、すでに暖簾が降りていたので、仕方なく赤坂見附方面に歩いて、こちらも馴染みのオーバカナルの紀尾井町店に寄ってみることに。

AUX BACCHANALES

IMG_2172.jpg

オススメのオランダグロールシュビールなどで乾杯。

IMG_2173.jpg

ニース風サラダを頼んだら、巨大なサラダが出てきてびっくり(笑) どこがニース風かと調べてみると生野菜にオリーブを使ったサラダがニース風とのことで、名に偽りなし(笑)

IMG_2175.jpg

オムレツも巨大でした(笑)

IMG_2176.jpg

ハウスワインをお代わりして、、、

IMG_2177.jpg

最後はカツオのグリエ。皆ポーションが大きいのでこれでお腹いっぱいでした。昔は頼んでから料理が出てくるまで時間がかかった記憶があるのですが、今回はサクサク出てきてお酒もワインも楽しめました。





にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ベートーヴェン ショスタコーヴィチ 紀尾井ホール

ブロムシュテット/N響のベートーヴェン8番、7番(サントリーホール)

4月26日は仕事を早目に切り上げてコンサートに行ってきました。

nhkso201804.jpg
NHK交響楽団 第1884回 定期公演 Bプログラム

ハイドンではありませんが、ちょっと気になっていたコンサート。ヘルベルト・ブロムシュテット(Herbert Blomstedt)がN響に客演するということで、いくつかのプログラムからサントリーホールで行われるベートーヴェンの7番、8番を選んだ次第。

ブロムシュテットはおそらくハイドンの商業録音を残していないと思いますし、ハイドンを振る印象もありませんが、調べてみるとコンサートでは取り上げているようですね。もちろん有名な指揮者なので私もよく知っていますが、手元には1970年代にドレスデン・シュターツカペレと録音したベートーヴェンの交響曲全集くらいしかアルバムがなく、実はブロムシュテットの演奏にはあまり馴染みはありません。名前はスウェーデン系で両親はスウェーデン人のようですが1927年アメリカ生まれで御歳90歳になるとのこと。198年代後半からサンフランシスコ交響楽団とDECCAに多くの録音を残し、日本でもかなりプロモーションがかかっていたのでおなじみな方も多いでしょう。

最近ではN響によく客演していて、年齢を感じさせない矍鑠とした指揮ぶりを何度かテレビで見て興味を持った次第。90歳という年齢を考えると今聴いておかないとという気もしてチケットを取った次第。



IMG_E1794.jpg

いつものようにサントリーホールに開場時刻くらいに到着。この日は平日ということで開場時刻には人はまばら。チケットはソールドアウトになっていましたので、開演時刻に駆け込むお客さんも多いのでしょう。

IMG_1797.jpg

そしてこちらもいつものようにワインとサンドウィッチで軽く腹ごしらえして開演を待ちます。この日の席は1階席3列目の右側。ステージ右側の下から仰ぎ見る感じで、指揮者、第二ヴァイオリン、ティンパニ奏者の動きは見えるものの、金管、木管陣は視界にははいりません。発売からかなり経ってから手に入れたチケットゆえ仕方ありません。

コンパクトな編成のオケがステージに揃い、チューニングが終わると長身のブロムシュテットが登場。90歳とは思えぬしっかりとした足取りで指揮台に上り、客席ににこやかに挨拶をすると、すっと振り返ってタクトなしで両椀を振り上げ、さっと振り下ろすと8番の冒頭の和音がホールに鳴り響きます。ノンヴィブラートで透明感溢れるクリアな響き。老成や円熟という言葉よりも、むしろ颯爽とした若々しさを感じるほどのキレ味を聴かせます。ハイドンの交響曲とは異なり漲る力感の表現がポイントの曲想に対して、良い意味で節度を保ちながらも、要所でライヴらしく鋭いアクセントを重ねて畳み掛けてくるようにオケを煽ってきます。8番ではオケの響きの純度を保てる範囲でのコントロール。ブロムシュテットは響き重くなることを避けるようにオケに俊敏な反応を求めながら1楽章を非常にタイトにまとめてきました。2楽章も弦楽器が刻むリズムはキレよく連なり、特に席から近い第2ヴァイオリンの刻むメロディーが鮮やかに響き、オケの反応も鮮やか。そして3楽章では力が抜けてオケの反応もさらに良くなります。終楽章ではオケが秩序を失わず赤熱。コンサート特有の高揚感に包まれ見事なクライマックスでした。もちろん、ホールは老指揮者の年齢を感じさせない鮮烈なコントロールに拍手喝采。ヤルヴィほど反応重視ではなく、どこか頑固さを感じさせながらも音楽にはハツラツとしたものが残る名演でした。

休憩後、オケの編成はほぼ変わらず、今度は7番。7番でもタクトは持たず、主にアクセントのポイントをきっちり指示するスタイル。最初の一音から8番とは異なる気合いというかエネルギーが満ちています。オケの方も先ほどまでの8番の秩序だった枠が徐々に取り払われて行き、少々の乱れはかまわず、ベートーヴェンのこの曲に込められたエネルギーが発散されていきます。所々に鋭角的なアクセント設けて曲のエッジをキリリと引き締め、低音弦の迫力は8番の時よりもかなりアップしてきているので音の厚みが違います。木管陣は実に艶やかな演奏でブロムシュテットの指示に応えて1楽章に見事な潤いを与えていました。7番はもう少しリズムの流れよく振ってくるかと思いきや、かなり頻繁にオケを煽って、攻めの指揮。いやいや素晴らしいエネルギーです。
素晴らしかったのが2楽章。アタッカで入り速めのテンポで透明感溢れる弦によって描かれる音楽はこれまで聴いたこの楽章のどの演奏よりもしんしんと刺さる音楽が流れます。雄大に展開する音楽の表情は情感をおさえつつも響きの険しさと崇高さに包まれる見事な構成。ブロムシュテットは各パートに細かく目配りしながら大きな音楽を作っていきます。
続くメヌエットは8番の時のオケの響きが戻りタイトな演奏ですが、終楽章のクライマックスの爆発を予感させるエネルギーが満ちてきて尋常ならざる迫力。そしてフィナーレに入るとこれまでオケが抑えていたのだとわかる、地響きのようなものを伴いながら、ベートーヴェンの執拗に繰り返される音階が火の玉のごとく熱せられ、ホール中に熱気を発散します。ブロムシュテットは最後まで冷静さを失わずオケのスロットルを巧みにコントロールして、重くなりがちなリズムを煽るように引き締め、最後はオケの力を振り絞らせる見事なさばきを見せます。弦も金管もティンパニも渾身の力でホールの空気を揺るがし、余韻が消え入る前に嵐のような拍手が降り注ぎました。もちろん生でのこの曲のフィナーレは盛り上がるに決まっていますが、最後に混沌とするリズムの処理と老獪なアクセント、そして何より90歳とは思えないエネルギーは特別なもの。観客もこの素晴らしい演奏に惜しみない拍手を送り、カーテンコールが続きました。途中でオケの背側の観客の拍手に応えるよう指示するあたりも誠実な人柄がにじみ出ていました。いやいや素晴らしいコンサートでした。またの来日も計画されているということで、機会があればぜひ、もう一度ブロムシュテットのエネルギーに触れてみたいと思います。



終演後は、サントリーホール向かいのアークヒルズの飲食店で一杯やって帰るのがいつもの慣わしですが、開演前に嫁さんが3階に行ったところ、3階のフロア全体が改装されて綺麗になっているということで、最近愛用している2階のスペインバルではなく、3階に行ってみることにしました。入ったのはラーメン屋さん。

IMG_1798.jpg
食べログ:田中そば店 赤坂アークヒルズ店

普段、嫁さんは家での食事が多いので、ラーメンも新鮮ということで、ラーメン屋さんにした次第。まずはビールをグビリ。よく冷えていてグーです(笑)

IMG_1799.jpg

私が頼んだのは山形辛味噌らーめん。かなり強めのかつおダシが効いたスープに辛味噌がドカンと乗っています。最初にスープをいただくとただのかつおダシのスープ。ところが辛味噌を溶かすと、表面にラー油が浮かぶ激辛ラーメンに変身。麺は柔らかめでした。

IMG_1800.jpg

嫁さんが頼んだのは味玉入り中華そば。こちらはかつおの風味は辛味噌ラーメンよりも薄く、スープが違うようですね。

ラーメンは美味しかったんですが、ラーメンのそれぞれの味と辛味に関心が行ってコンサートの余韻を楽しむ余裕はありませんでした(笑) 夏までのコンサートのチケットを色々取ってありますので、次回サントリーホールでのコンサート時には他のお店も開拓してみたいと思います。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ベートーヴェン サントリーホール

【新着】オリヴィエ・カヴェーのソナタ集第2弾(ハイドン)

久々の新着アルバム。CDです!

Cave32_48.jpg
TOWER RECORDS / amazon / HMV&BOOKS onlineicon

オリヴィエ・カヴェー(Olivier Cavé)のピアノによるハイドンとベートーヴェンのピアノソナタ集。ハイドンのソナタはHob.XVI:32とXVI:48の2曲で、ベートーヴェンの3曲のソナタ(Op.2-1、Op.2-2、Op.10-2)に挟まれた曲順。収録は2017年9月にベルリンのテルデクススタジオでのセッション録音。レーベルはα。

オリヴィエ・カヴェーのソナタ集の第1弾は以前に取り上げており、しかもその演奏は素晴らしいものでした。

2015/07/05 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】オリヴィエ・カヴェーによるピアノソナタ集(ハイドン)

演奏以上に意欲的だったのが、ハイドンとスカルラッティを交互に並べ、「明と暗」とタイトルをつけたアルバムの企画。このあたりのことは前記事をご参照ください。そして今日取り上げるアルバムはレーベルは異なるものの同じouthereグループのレーベルで、今度はハイドンの中期以降のソナタとベートーヴェンの初期のソナタを交互に配置したもの。この2枚のアルバムで、ハイドンのソナタを音楽史というより音楽の成り立ちの変遷のパースペクティヴの中で位置付けようと意図しているのでしょう。しかも前アルバムは暗闇の中にすっと浮かぶカヴェーの姿を写したジャケットだったのに対し、今度は目も眩むような明るさの中に浮かぶカヴェーの姿を基調としたもの。なかなかコンセプチュアルな企画に、聴く前から興味津々です。

1曲目はベートーヴェンのソナタOp.2-1ですが、作曲年は1796年とハイドンの存命中。いかにもハイドン的なリズムの面白さと、シンプルながらほのぼのとしたアダージョが印象的な曲。カヴェーの演奏は透明感に溢れたもので、タッチも極めてデリケート。特にアダージョの鏡面に映る星空の澄んだ空気感のようなものが素晴らしい演奏。実に柔らかなタッチから生まれる極上のピアノの響きを堪能できます。メヌエットから終楽章にかけてはハイドンには聴かれなかったエネルギーが漲りベートーヴェンらしさを感じさせます。

Hob.XVI:32 Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
ベートーヴェンよりも少し硬めの音でくっきりとメロディーを浮かび上がらせます。基本的に速めのテンポで爽快に進めますが、1音1音のタッチの揺るぎない感じと、巧みな音量変化のキレの良さで聴かせる演奏。それぞれの音の打鍵から余韻が消えるまでが克明に聴こえることでハイドンの書いたリズムとハーモニーの巧みな融合が実に興味深く感じられます。指先の隅々まで神経が行き届いていて、さらりと弾いていながら実に深い音楽が流れます。特に高音のメロディーラインがきっちり浮かび上がるので、曲の見通しが素晴らしくよく感じられます。
続くメヌエットでは、先ほどベートーヴェンのアダージョで聴かせたしなやかなタッチが復活。メロディーラインでも弱音を非常に効果的に用いてハッとするようなアイデアでフレーズをまとめて行くあたり、タッチの多様さは驚くほど。語りかけるようなピアニッシモから楔のようなアクセントまで表現力は多彩。
そしてフィナーレでは高まる気のようなものを伴って、速いパッセージをグイグイ引き進めていきます。鮮やかなタッチのキレ、透明感、展開の対比などハイドンのソナタに必要な表現について手抜かりなく繰り出してきます。最後はカッチリと締めて終わります。

続いてベートーヴェンのOp.2-2。曲の構えはさらに大きくなり、リズムもハイドンと比べるとぐっと複雑に。ただし音楽の流れの良さはハイドンのシンプルな楽想に分があるように感じるのは私だけでしょうか。ユニークな2楽章、これまでの中ではハイドンっぽいスケルツォ、そして終楽章のロンドンは展開が進むにつれて徐々に音楽のスケールが大きく育っていきます。

Hob.XVI:48 Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
ベートーヴェンの後に聴くと、ハイドンのメロディーラインの明快さと潔さが一層引き立ちます。この曲でもタッチのキレの良さと、余韻の美しさは絶品。よく聴くとかなりの音量差を伴ってくっきりとメロディーを描いています。この緩急自在のタッチこそカヴェーの本領でしょう。そして音階の美しさも同様。しんしんと降る雪に音が吸い取られ、静寂の中にピアノの音が響くような峻厳な美しさ。これぞカヴェー。2楽章のロンドはタッチの冴えも極まってリズムはキレキレ、鍵盤に重さを感じないほどにリズムがいきいきとする見事な演奏。まるで練習で弾いているがごとき遊興の極み。いやいや参りました。

最後のベートーヴェンのソナタはOp.10-2。入りから鍵盤を目一杯使って、ハイドンの作品とは展開のアイデアも規模も違う感じ。私はハイドンをベートーヴェンと対比させて聴いていますが、聴きかたを変えればベートーヴェンをハイドンと対比させて聴くことになり、そういった耳で聴くとこの展開のボキャブラリーとエネルギーに耳が行くわけですね。ハイドンを演奏するのに必要なテクニックと同様のテクニックながら、より表現力を要し、しかもその表現が映える曲の構造であるということが、直接対比させることで見えてくるわけです。これは、このアルバムを通しで聴いていただくことで初めて感じられる感覚かもしれません。

オリヴィエ・カヴェーによるハイドンのソナタの第2弾は、ハイドンに続くベートーヴェンとの繋がりを浮かび上がらせるという企画意図がピタリと決まったアルバムでした。ハイドンだけ聴いたとしても、冴え渡るタッチの素晴らしさを感じられる一級の演奏に違いありませんが、ベートーヴェンと並べることによって、音楽の発展や時代の流れを感じられるのに加えて、ハイドンにはベートーヴェンにない簡潔な美学があることも気づかされます。そしてこの構成で最も際立ったのがカヴェーの表現力でしょう。スカルラッティの見事な演奏とハイドンを組み合わせた時と同様、ベートーヴェンと並べて両者に共通する感覚を意識させながら弾き分ける手腕の凄みを印象付けました。企画意図、演奏共に素晴らしいアルバムです。ハイドンの2曲の評価は[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノソナタXVI:32 ピアノソナタXVI:48 ベートーヴェン

サッシャ・ゲッツェル/読響の第九(サントリーホール)

またまた旅行記の途中ですが、コンサートに顔を出しましたので、コンサートレポートです。

Yomikyo201712.jpg
読売日本交響楽団:第607回名曲シリーズ

ちょっと懐かしいエマニュエル・クリヴィヌが読響を振るということでチケットをとってあったものですが、なんとコンサートの少し前に読響からハガキが届き、クリヴィヌは健康上の問題で来日できず、代役としてサッシャ・ゲッツェルというオーストリアの人が振るとのこと。クリヴィヌが聴けないのは残念ですが、私にとって未知の指揮者が聴けるということで、出かけることにしました。

日本ではなぜか年末に第九を聴く風習があり、各オケとも有力な指揮者で第九を当てて来ます。なんとなく昔はそのマーケティングには乗らずにいたんですが、ブログを書き始めて以降、2011年から3年ほど年末の第九を聴きにいっており、最近は第九をよく聴いているという感触でしたが、調べてみると2013年を最後にしばらく空いていて、今年は久しぶりの年末の第九鑑賞。

2013/12/26 : コンサートレポート : デニス・ラッセル・デイヴィス/読響の第九(東京オペラシティ)
2012/12/21 : コンサートレポート : カンブルラン/読響の第九(サントリーホール)
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/11/03 : コンサートレポート : 【サントリーホール25周年記念】ホグウッド/N響の第九

ということで、チケットを取る時はN響のエッシェンバッハとクリヴィヌの読響で迷ったのですが、バリトンに妻屋さんが出るということで読響を取った次第。妻屋さんは、先日聴いた高関健と東京フィルの天地創造のラファエル、アダムが実に朗々とした歌唱が素晴らしかったので印象に残ってます。

IMG_0809.jpg

これまでに行った第九のコンサートもたまたまというか、なぜか全てサントリーホールでのコンサート。この日もサントリーホールですが、今年はサントリーホールはしばらくお休みして改装工事をしており、私はこの日が改装後はじめてのサントリーホールのコンサートです。ネットで情報収集してみると、今回の改装ではステージの床板の全面張り替え、客席のシート張り替え、パイプオルガンのメンテナンス、トイレ増設、バリアフリー化、照明のLED化、舞台機構のメカニックの最新化などだそうで、音響面は変更なしとのことでした。

IMG_0810_20171223233525008.jpg

ということで、いつも通り先に着いていた嫁さんがドリンクコーナーでワインを注文して待っていてくれたので、仕事帰りで立ち寄った私も一杯やって士気を高めます。ちなみにサントリーホールのドリンクコーナーで以前赤ワインを注文すると、よく冷えた(笑)赤ワインが供され、お酒の文化を先導するサントリーの運営するホールとは思えない状況だったんですが、今回は赤ワインは適温、白もよく冷えていて、私にはこの点が改装の恩恵が一番感じられたところ。惜しむらくは、サントリーが誇る色々なワインが選べてもいいと思うのですが、、、

この日の席はお気に入りのRA。2階のステージ真横の席。コーラスの編成が大人数の時はステージ裏の客席にコーラスが入ることがありますが、この日はコーラスもステージ上に収まりました。

この日、クリヴィヌの代役として急遽指揮をとることになったサッシャ・ゲッツェル(Sascha Goetzel)についてさらっておきましょう。1970年ウィーン生まれで、グラーツ音楽大学、ジュリアード音楽院などで学び、小澤征爾の招きでタングルウッド音楽祭の研修指揮者を経験。その後ウィーンフィルのヴァイオリン奏者を務めながらシベリウスアカデミーで指揮を学び、2001年にウィーンフォルクスオーパーで指揮者デビュー。その後ベルリン交響楽団、バーミンガム市響など各地の有名オケを振る一方、日本でも神奈川フィルの首席客演指揮者を務めるなど、日本でも活動しているとのことでした。読響には今年の4月に客演しているそうです。現在はトルコのボルサン・イスタンブールフィルの芸術監督とのこと。

今回芸劇、サントリーホール、大阪フェスティバルホール、みなとみらいなど4カ所6公演の代役ということで、それなりの実力とスケジュールの両方が合ったということでの代役でしょうが、ゲッツェルにとっては日本での知名度を上げる好機となったことでしょう。

歌手と合唱は下記の通り。
ソプラノ:インガー・ダム=イェンセン(Inger Dam-Jensen)
メゾソプラノ:清水華澄(Kasumi Shimizu)
テノール:ドミニク・ヴォルティヒ(Dominik Wortig)
バス:妻屋秀和(Hdekazu Tsumaya)
合唱:新国立歌劇場合唱団
合唱指揮:三澤洋史(Hirofumi Misawa)

コンサートの方は、おそらくゲッツェルのことを知らないお客さんがほとんどだったと思われますが、サントリーホールが完全に埋まってます。先週のみなとみらいのデュトワ/N響のコンサートが4割くらいの入りだったのと対照的。やはり第九はお客さんが入るということでしょう。

定刻となり、コーラスとオケが入場、そしてゲッツェルが指揮台に登壇。全く予備知識なしに行きましたので、どのような音楽を繰り出すのかわかりませんでしたので興味津々。登壇したゲッツェルはプロフィール写真とは異なり、ロン毛のちょいワルオヤジ分のイケてる感じの人でした。

1楽章は、ダイナミクスを重視しながらも、丁寧なコントロールでベートーヴェンの燃えたぎる音楽を手探りで形にしていくよう。オケが十分に暖まっていないのか少々テンポが落ち着かないところもありましたが、時折クライバーばりに左右に大きく指揮棒と体をくねらせてオケの響きの深みを求めるなど、オケを鳴らし切ろうとするところが多々あり、徐々にオケもそれに刺激されて活気がみなぎってきます。2楽章に入ると、若手らしく鋭いアクセントでグイグイとオケを煽り、オケもだいぶこなれてきました。歌手は3楽章の前に入場。そして3楽章に入ると意外にテンポを落としてこの曲のジワリとくる静寂感を活かすよう、オーソドックスに攻めてきました。響きの流麗さはまだまだ磨くべきところはあるものの、力感を軸にしながら楽章間のコントラストをしっかり意識していて悪くありません。そして特に良かったのが終楽章。畳み掛けるような迫力と、かなりはっきりと音量を落とすところを設けてコントラストを鮮明に表現。迫力一辺倒の演奏とはならず、ダイナミクスが心地よく流れるなかなかのコントロール。そしてバスソロの妻屋さんの第一声が轟くと場内の雰囲気が一変。体の芯から轟く素晴らしいバスに完全にのまれます。ステージ横から見下ろす席から見ると、場内のお客さんが圧倒されているのが良くわかりなす。この一瞬の轟き、神々しさ、そして人の声のもつ浸透力。そして、コーラスが入るとさらに響きにしなやかな厚みが加わり、オケの演奏も一段ギアチェンジ。やはり第九の終楽章の神々しさは素晴らしいですね。歌手も妻屋さんを筆頭に非常にレベルの高い歌唱。コーラスも一糸乱れぬ名唱で盛り上げ、最後はゲッツェルがフルトヴェングラー並みにテンポアップして終了。ゲッツェルを知っている人も知らない人も楽しめるいい演奏でした。

ゲッツェルも満足いく演奏だったのか、歌手とコーラス、そしてオケの各パートの奏者をたたえますが、ピンチヒッターだからかカーテンコールからの切り上げも早くさっぱりとしたものでした。このへんの謙虚さもなかなか良かったですね。

この日のプログラムは第九1曲でしたので、カーテンコールを含めても20:30にはホールを出られました。サントリーホールのコンサートの反省会の定番、向かいのスペインバルを嫁さんが21:00に予約していたんですが、この日は21:00まで団体客で貸切り。仕方なくコンサートの余韻を楽しみながら、ホール前の広場で少し待ってからお店に入りました。

IMG_0812.jpg

バレンシアナ バル ブリーチョ

最初はテンプラニーリョとサングリア。

IMG_0813_20171223233528527.jpg

頼んだチーズがなかったということで代わりに出されたハードチーズ。味は変わったものではないのですが、変わっていたのは蜂蜜をつけて食べること。これが実に美味。日本人には思いつかないアイデアにちょっと驚きます。

IMG_0814.jpg

この日のオムレツにジャガイモのグリル。オムレツはマヨネーズが合わせて出されました。これもなかなか美味。

IMG_0815_20171223233531cb7.jpg

レンズ豆、生チョリソの軽い煮込み。いつも頼む定番。独特の香りがお酒に合って旨いんです。

IMG_0816.jpg

こちらはブラックベリーのシードル。不思議な(笑)味でした!

ということで、軽めの夕食を兼ねた反省会を楽しんで帰りました。ここ、サントリーホールのコンサート帰りにはおすすめです。

年内のコンサートはこれで打ち止め。また旅行記に戻ります(笑)

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ベートーヴェン

アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル(東京オペラシティ)

3月21日月曜は、コンサートに出かけてきました。

AndrasSchiff2017.jpg

ハイドンファンにはおなじみのアンドラーシュ・シフ(András Schiff)による「ザ・ラスト・ソナタ」と銘打たれた2017年のコンサート。このコンサートに注目したのは、もちろんハイドンのソナタが演奏されるからに他なりません。

当初は3月25日土曜の彩の国さいたま芸術劇場のチケットを取っていたんですが、なんとドンピシャの日に仕事が入ってしまい、やむなくそのチケットを友人に譲り、ネットを駆使して(笑)あらためて東京オペラシティのチケットを取った次第。普段だったら、譲ってあきらめるだけで終わるんですが、なんとなくこういうコンサートは機会を逃すと再びチャンスがこないような気がしたので、私にしては珍しく深追いしたもの。

そういえば、以前もスクロヴァチェフスキと読響のブルックナーの7番も仕事で聴き逃しましたが、あとから考えるとあれを聴いておきたかったという思うばかり。

IMG_8060.jpg

この日の公式のプログラムは下記のとおり。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 変ロ長調 K.570
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
ハイドン:ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob. XVI:51
シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D959

「ザ・ラスト・ソナタ」と名を冠するのにふさわしく、モーツァルトもベートーヴェンもシューベルトも最晩年のソナタを並べていますし、ハイドンもロンドンで作曲された最後の3つのソナタの一つであるXVI:51が選ばれるなど、コンサートの企画としては一本筋の通ったもの。円熟の境地にあるシフの演奏とあって期待が高まりますね。

シフのハイドンのソナタ自体はDENONから1枚、TELDECから2枚組がリリースされていますが、DENON盤が1978年、TELDEC盤が1997年の録音と結構古いもの。フレージングはシフ独特の個性的なもので、多彩なタッチの変化とダイナミクスを強調した演奏が印象に残っています。また奥さんの塩川悠子とボリス・ベルガメンシコフと組んだピアノトリオのアルバムは昨年レビューに取り上げました。

2016/03/15 : ハイドン–室内楽曲 : アンドラーシュ・シフ/塩川 悠子/ボリス・ベルガメンシコフのピアノ三重奏曲(ハイドン)

ピアノソナタ集の方は、ハイドンの曲の良さをもう少し素直に出してもいいのではないかとも思われるもので、今回の実演でそのあたりのシフの個性がどう響くのかを確かめたかった次第。



さて、この日は年度末でバタバタのなか、仕事をやっつけて会場の東京オペラシティには開演の15分前に駆け込み到着。外はあいにくの雨でしたが、ホワイエにはすでに多くの人が駆けつけ、かなりの熱気でした。

IMG_8063.jpg

昼飯も抜きで仕事を片付けてきたのでお腹エコペコ。いつものようにサンドウィッチと赤ワインを5分で平らげ、プログラムを買って3分前に着席。この日の席は1階正面8列目とピアノを聴くにはベストポジション。会場はもちろん満員。

定刻の19:00を過ぎると会場の照明が少し落ちて、下手からシフが登場。

すぐにモーツァルトが始まります。コンサートの1曲目ということで、若干硬さも感じられるなか、シフらしく緩急とメリハリをしっかりつけながらフレーズごとの巧みな描き分けが徐々にくっきりと焦点が合ってきて、音楽が淀みなく流れるようになります。ピアノは最近のシフの定番ベーゼンドルファー。厚みというか独特の重みをもった低音に、すこしこもり気味に聴こえる石のような響きの高音が特徴ですが、モーツァルトの曲にはスタインウェイのようなクリアな響きの方が合うような気がしながら聴き進めます。そのうちに左手の表情の豊かさがこの演奏のポイントだという気にさせられ、シフがキレより迫力の表現が引き立つベーゼンドルファーを好む理由がわかったような気がしました。アレグロの起伏の陰影の深さに対し、アダージョの響きの柔らかさの対比は見事。タッチの多様さ表現の変化は流石なところ。そしてアレグレットではタッチの鮮やかさ、躍動感で圧倒されました。弾き進むうちに場内もシフに魔法をかけられたように集中度が上がります。もちろん盛大な拍手が降り注ぎますが、袖に下がることなくすぐに続くベートーヴェンに入ります。

ベートーヴェンは最初の入りは柔らかなハーモニーと力強いアクセントが豊かな情感のなかに交錯するような音楽でした。普段あまり聴かないせいか新鮮に聴こえます。暖かな音色と楔を打つような鋭い音にフレーズごとに巧みに変化する曲想がシフの魔法のようなタッチから紡ぎ出される感じ。ベーゼンドルファーだけに高音の輝きではなく、中低音の輝きが優先するような分厚い響きがベートーヴェンの力感を表すよう。2楽章は分厚い音色に襲われる感じ。タッチの軽さをかなり綿密に制御して、重厚さと軽やかさの対比のレンジが広大。そして3楽章の荘厳な印象も楽章間のコントラストの演出が完璧に決まります。モーツァルトでも豊穣だった響きがさらに豊穣さを増して、観客は皆前のめりでシフのタッチに集中します。またまた拍手が降り注ぎますが、シフはステージを囲う四方の観客に丁寧にお辞儀をしてすぐにピアノに向かいます。

もちろん私の興味はハイドンですが、このコンサートにおけるハイドンの役割はシフの表現力のうち軽やかな機知に満ちた表現に対する適性を垣間見せるという構図のよう。晩年のソナタでも珍しい2楽章構成の曲。最初からタッチのキレの良さが際立ちます。音が跳ね回るように見事な展開。ハイドンのソナタの演奏としては味付けは濃い目ですが、中音部で奏でられるメロディーの面白さはベーゼンドルファーならでは。そしてハイドンだからこそフレーズごとのタッチの変化の面白さが聴きどころ。やはり圧倒的な表現力はシフならではのもの。ハンガリー生まれのDNAに由来するのでしょうか。続く2楽章でもタッチの軽やかが際立ちます。うっとりとしながら人一倍聞き耳を立てて聴き入りますが、短い曲ゆえ、あっと言う間に終わってしまいます。私は2楽章構成と知って聴きますが、他の人は3楽章の始まりを期待しているような終わり方なので、拍手が湧き上がる間も無くすぐに続くシューベルトに入ってしまいます。

この日はやはりシューベルトがメインプログラムでした。普段ほとんどシューベルトは聴きません。その私が聴いてもこれは素晴らしい演奏でした。長大なソナタですが、シフがその魂を抜き取りピアノで再構成したような劇的かつ壮大な音楽。ちょっとくどい感じさえする低音の慟哭がシフの手にかかるとキレよく図太い低音の魅力に昇華され、時折聞かせる長い間が時空の幽玄さすら感じさせます。シューベルトが終わると、まさに嵐のような拍手が降り注ぎ、まさに観客の心をシフが鷲掴みにしてしまったがごとき状況。何度かのカーテンコールにつづいて、アンコールの演奏にシフがピアノの前に座り、演奏を始めました。

IMG_8064.jpg

最初はシューベルトの3つの小品から。アンコールとは思えない本格的な構成の曲に再び場内が静まり返ります。コンサートのプログラムも全て暗譜。そしてアンコールに入ってもさらりと演奏をはじめ、はじまると実に豊かな音楽が流れます。すべての曲を完全に自分のものにしきっているところに一流どころのプライドを感じます。シューベルトが終わったところで席を立つ人もいましたが、アンコールは1曲ではありませんでした。プログラム最後のシューベルトの演奏に酔いしれた観客に、さらにシューベルトがだめ押しで加わったかと思うと次はバッハのイタリア協奏曲の1楽章。バッハのアルバムをいろいろリリースしているだけあってシフのバッハを待っていた人も多かったのでしょう。アンコールに寄せられた拍手はどよめきにも近いものに変わります。これで終わりかと思っていると、シフはまたまたピアノに向かい、なんとイタリア協奏曲の2楽章、3楽章を演奏。すでに観客はクラクラ(笑)。完全にシフに魂もってかれてます。もちろん盛大な拍手に迎えられ、シフも引き下がれず、今度はゴリっとした感触が印象的なベートーヴェンの6つのバガテルから。ここまでくると、休憩なしで張り詰めっぱなしの観客とシフの根比べ(笑)。盛大な拍手にアンコールで応えるシフも引き下がらず、その後モーツァルトに最後はシューベルトの楽興の時を披露。聴き慣れた曲が異次元の跳躍感に包まれる至福のひととき。そして盛大な拍手が鳴り止まず、シフが再びピアノの前に座ると、そっと鍵盤の蓋を笑顔で下ろし、長い長いアンコールの終わりを告げ、観客も満足感に包まれました。

プログラムの演奏だけで90分ほど。そしてアンコールを入れると2時間半弱。休憩まったくなしで完璧な演奏を続けたシフ。私はプログラム最後のシューベルトの余韻に浸っていたかった気もしましたが、最後まで聴いてみると、シフの観客をもてなそうとする気持ちもわかり、これがシフの流儀だと妙に納得した次第。ピアノという楽器の表現力の偉大さをまざまざと見せつけられたコンサートでした。

先に紹介したようにシフのハイドンの録音は古いものばかり。この円熟の境地で再びハイドンのソナタに挑んでほしいと思うのは私ばかりではないはず。こころに響くいいコンサートでした。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 東京オペラシティ モーツァルト ベートーヴェン シューベルト

スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー&ベートーヴェン!(サントリーホール)

書きかけの記事がいくつかあるんですが、10月9日はコンサートに出かけましたので、レポートしときます。

読響とその桂冠名誉指揮者、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキのコンサート。毎回これが最後かもとの不安がよぎるなか、このところ毎年コンサートに出かけています。今年も読響にやってくるということでチケットとってありました。今回のプログラムはブルックナーの交響曲0番にベートーヴェンの交響曲7番。まずはコンサート情報を。

skrowaczewski_20141009.jpg
読売日日本交響楽団:第541回定期演奏会

スクロヴァチェフスキは1923年10月3日生まれ。つまりこのコンサートの時には91歳ということになります。この日もその年齢が信じられないほどのキビキビとした指揮でサントリーホールを陶酔の坩堝と化してしまう素晴しい指揮ぶり。これまで何度もスクロヴァチェフスキのコンサートに通っていますが、間違いなく過去最高の出来でした。これは事件といってもいいほどの素晴しい出来。この日の聴衆はもの凄いエネルギーを発するスクロヴァチェフスキから、得難い音楽体験を受け取ったことでしょう。

2013/10/13 : コンサートレポート : 90歳のスクロヴァチェフスキ/読響/サントリーホール
2012/09/30 : コンサートレポート : 東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ



IMG_9524.jpg

コンサートの開演はいつもどおり19:00。仕事を17:30ごろ切り上げ一路サントリーホールに向かいます。先についていた嫁さんとホール前のカフェでで合流して開演を待ちます。流石にスクロヴァチェフスキの公演だけあって、開演前にはホールの前はかなりのお客さん。読響のスクロヴァチェフスキの公演の素晴らしさを知ってか、一様に笑顔で開演前の時間を楽しんでいます。いつものように開演を知らせるパイプオルゴールが広場に鳴り響き、開演を待っていたお客さんがホールに吸い込まれます。

ホールに入るとまずは2階のドリンクコーナにまっしぐら(笑)。 

IMG_9526.jpg

まずはワインにサンドウィッチで腹ごしらえというところですが、開場直後にもかかわらずサンドウィッチが売り切れ! どうゆうことでしょう。なぜか嫁さんが鞄から大きなオリーブ入りフォカッチャを出して、勧めます。なんとなく気が引けましたが、サンドウィッチを切らしたサントリーホールのドリンクコーナーに明白な落ち度有りと妙に納得して、ワインとともにフォカッチャをがぶり。もちろん写真は撮りませんでしたが、2階のドリンクコーナーで巨大なフォカッチャをほおばる客を発見した皆さん、それは私です(笑)

IMG_9528.jpg

この日はいつものRA席。指揮者もオケもよく見えて、音もダイレクトに響くお気に入りの席。

1曲目は、あんまり馴染みのないブルックナーの0番交響曲。家に帰ってからザールブリュッケン放送響とのブルックナーの交響曲全集のCDを確認してみると、こちらにも0番は収録されており、他の指揮者はあまり取り上げないもののスクロヴァチェフスキは得意としている曲のようです。いづれにせよコンサートで聴く機会は滅多になかろうということで、聴く側も若干緊張気味。

定刻少し前にオケのメンバーがステージ登場。そして拍手に迎えられてコンサートマスターが登場しチューニング。この日のコンサートマスターは長原幸太さん。チューングを終えたステージ上に袖からスクロヴァチェフスキが登場すると、まさに嵐のような拍手。皆さん91歳にもなる指揮者の登場に早くも興奮気味。興奮と暖かさの入り交じった拍手の嵐にスクロヴァチェフスキも笑顔で応えます。いつもどおり脚をすこし引きずりながら指揮台に向かいますが、体調は悪くはなさそうです。前回コンサートの時より少し痩せたでしょうか。そして指揮台にあがり、いつもどおり極端に短い指揮棒を振り上げた途端、水をうったような静寂からブルックナー独特の弱音からの開始。リズミカルに音階を進めるとすぐに吠える金管。この日の読響、特に前半のブルックナーは完璧なアンサンブル。よほど練習を重ねたのか、弦楽セクションのボウイングは見事の一言。コンサートマスターの長原さんにピタリと従うように全員の弓がそろうところは圧巻。スクロヴァチェフスキが頬を膨らませながら振るタクトにもピタリとついて、しかも分厚い、まるでベルリンフィルのような深い響きをホールに轟かせていました。こちらが曲になじみが無い分、音楽が記憶を通りこしてダイレクトに脳髄に響きます。ブルックナーは習作として、番号をつけなかったこの曲ですが、スクロヴァチェフスキの手にかかると、いつものような巨大な伽藍が出現し、圧倒的な迫力。1楽章のアレグロは時折現れるもの凄い推進力のメロディーと静寂、深い呼吸が交錯する見事な構成。これほどのスケールの曲であると実演ではじめて知りました。
爆音の響きに酔えた1楽章に続いてアンダンテは、深い淵を思わせる沈みこみ。一転して精妙なオケの音の重なりによって荘重なメロディーが奏でられます。研ぎすまされたヴァイオリンの美しいメロディーを木管が響きを華やかに隈取り、幽玄な転調を加えながら独特の神々しさを感じさせます。このへんのスクロヴァチェフスキのコントロールは他の曲での演奏の通り、弦の深々としたフレーズと独特の唸りによって常人には表現できない世界観に至ります。まさにスクロヴァ節。
続くスケルツォはまさにオケが轟きまくります。速めのテンポで極端なアクセントを多用しながらも非常に流れの良い音楽。いつものようにティンパニの岡田さんが渾身の一撃を加え、頬がびりつくような轟音で音楽を引き締めます。ティンパニの岡田さん、これもいつも通り頻繁にマレットを変え微妙に響きを変えています。
フィナーレは癒されるような響きからはじまり、轟音を織り交ぜながらオケをグイグイと煽って音楽を創っていきます。指揮台に登るまでの足腰の弱さはどこにいったのか、指揮台のスクロヴァチェフスキの動きの機敏さと、リズムの正確さは驚くほど。ブルックナーの長大な曲を渾身の力で降り続けていますが、まったく疲れらしきものは見えず、クライマックスに向けてひたすらオケを煽っていく姿は、すでに神がかってます。ホール中がスクロヴァチェフスキの造り出す音楽と発散するエネルギーに圧倒されっぱなし。終盤のクライマックスは観客も身を乗り出してエネルギーを浴びるよう。最後の一音を轟かせ、スクロヴァチェフスキがタクトを下ろすと、場内から嵐のような拍手が降り注ぎます。スクロヴァチェフスキもオケの素晴しい出来に満足したのかオケを讃えながら拍手に応えていました。プログラムの前半から場内は異様な興奮につつまれていました。観客も脚の悪い爺を気遣ってか、カーテンコールは2度ほどで休憩に入ります。

あまりに素晴しい出来のオケに、後半のベートーヴェンにも期待が高まりますが、後半のベートーヴェンの7番、その予想を遥かに上回る怒濤の演奏でした。ベートーヴェンの7番といえば私の世代の刷り込みはもちろんカルロス・クライバー。熱狂の坩堝に叩き込まれる舞舞踏の聖化ですが、最初はクライバーの演奏と脳内で比べながら聴いてしまっていました。しかし、2楽章以降は完全にスクロヴァチェフスキの術中にハマりました。

1楽章は思いのほかオーソドックスに攻めてきます。テンポは予想したほど速くなく荘重な印象。前半のブルックナーの轟音が耳に残る中、逆に古典の矜持をあらためて保とうとする意図か、スクロヴァチェフスキもあえて少し抑え気味の1楽章の入り。印象が一変したのは2楽章。それまでどこかでクライバーの演奏をイメージしながら聴いていましたが、一楽章の最後の一音が鳴り終わるとアタッカですぐに2楽章に入り、そのフレージングはまさにスクロヴァチェフスキの真骨頂。さざ波のようにざわめく弦。現代風のあっさりした演奏とは対極にあり、しなやかにメロディーを刻みながらも、かなりはっきりとしたコントラストをつけて媚びない劇性を表現。ベートーヴェンの音楽がスクロヴァチェフスキによってちょっとブルックナーチックに響きます。そして、3楽章のスケルツォにもアタッカで入りますが、指揮棒を振り下ろす瞬間の気合いが凄い。鬼気迫るとはこのこと。ここからグイグイオケを煽ってフルスロットルの連続。スクロヴァチェフスキのエネルギーがオケに乗り移ってホールを揺るがすような迫力。フィナーレに入る時にはスクロヴァチェフスキの気合いが声になって注がれ、フルスロットルどころかオーバーヒート寸前の気合いの嵐。読響もスクロヴァチェフスキの煽りに見事についていき、ティンパニは皮が張裂けんばかりの打撃で応えます。この音楽と煽り、エネルギーが91歳の老指揮者から生み出されているとは信じられません。最後のリズムがカオスに包まれるところのコントロールも盤石。爆風のようなクライマックスを迎え最後の一音がなり終わると、今まで聴いた事のないようなブラヴォーの嵐が降り注ぎます。すぐにスタンディングオヴェーションになり、オケも一緒に老指揮者に惜しみない拍手を送ります。まさに奇跡のような音楽。ホールの全観客がスクロヴァチェフスキに打ちのめされた、心地よい脱力感。奇跡の瞬間に立ち会った観客の興奮したようすがホール内に満ち、脚を引きずりながらも何度かのカーテンコールに応じますが、爺が握手でコンサートマスターに退場を促します。オケのいなくなった広いステージに再び呼び戻されたスクロヴァチェフスキの快心の笑顔に観客も満足したのか、拍手が止んで素晴しいコンサートが終わりました。

ここ数年スクロヴァチェフスキのコンサートには通ってますが、いつも最高の演奏。今回はこれまでで最高の出来だと思います。ただ力任せな演奏ではなく、オケがクッキリとコントラストがついて格調高く響き、そして振り切れんばかりに鳴らせきってしまう手腕は見事。演奏に老いの影はなく、溌剌としてダイナミック、そして深い響き。この高みはどこまで行くのでしょうか。ほんとうに素晴しいコンサートでした。



心地よい興奮のなか、この日はサントリーホールの並びのカフェで反省会。

IMG_9531.jpg

食べログ:ARK HiLLS CAFE

IMG_9532.jpg

グラスワインに前菜盛り合わせ、パスタなどをいただきましたが、カジュアルな割に美味しいお店。料理が出てくるのも速いのでコンサートの反省会に向いています。

IMG_9536.jpg

サントリーホールのコンサートチケットを見せるとデザートがついてくるというサービスもいいですね。

IMG_9541.jpg

コンサートの余韻を楽しみながらゆっくり食事をして帰りました。

この至福の時間、再び味わう事ができるでしょうか。もちろん、スクロヴァチェフスキのコンサートの予定が発表されれば、次の機会もぜひ聴きたいものです。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : サントリーホール ブルックナー ベートーヴェン

デニス・ラッセル・デイヴィス/読響の第九(東京オペラシティ)

なんだかここ数年は、日本でのトレンドに乗って年末は第九を聴きに行くのが習わしとなっております。昨夜は初台の東京オペラシティに母親、嫁さんと3人で出かけました。

IMG_6485.jpg

ここ数年、第九はカンブルラン/読響、ホグウッド/N響、スクロヴァチェフスキ/N響となかなか聴き応えのあるコンサートに出かけています。今年読響の第九の指揮は、なんと、デニス・ラッセル・デイヴィス! 突然彗星のごとくハイドンの交響曲全集をリリースしたので、ハイドンマニアの方は一目置く指揮者かもしれません。ただし、わたしはこの全集はあまりお薦めしていないことからもわかるとおり、今ひとつ没入できない指揮者という印象でした。食わず嫌いは良くないということと、母親を連れて行くのにちょうど良い席が空いていたということで、急遽聴きに行くことにしました。

IMG_6486.jpg

第4回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ - 読売日本交響楽団

オペラシティはクリスマスのイルミネーションで華やか。なんとなく世の中クリスマス気分ということで、開場前からいい気分。18:00の開場と同時にホワイエに入り、まずは腹ごしらえ。東京オペラシティのサンドウィッチは美味しいので、赤ワインとともに楽しみます。この開演前のちょっとざわついた雰囲気もコンサートの楽しみの一つ。

IMG_6490.jpg

母上君も赤ワインをいただきご機嫌です(笑)
→ 母親の友人諸氏の皆様 うちの母も元気です!

IMG_6492.jpg

今日は東京オペラシティではじめて2階席です。右側ステージ横でステージが俯瞰できるなかなか良い席。2階席は2列しかないので見通しも十分です。東京オペラシティは1階平土間の勾配が緩いので、なかなかステージが見えませんが、サントリーホール同様、2階席からは逆に見晴らしも良く、なかなか良い席であるのがわかりました。何よりいいのが2階にもビュッフェがあり、こちらのほうがゆっくりできること。これは今回新発見。

プログラムは上のリンク先を参照いただきたいのですが、第九の前に読響メンバーによる室内楽が演奏されました。ヴィオラ四重奏とチェロ四重奏。とくにヴィオラ四重奏は普段脇役のヴィオラの趣深い音色が味わえる素晴しい演奏でした。これはなかなか良い試みですね。

短い休憩を挟んで第九に入ります。

東京オペラシティは普段良く行くサントリーホールよりも体積がだいぶ小さいのでオケが良く響き渡り、迫力もアップ。

デニス・ラッセル・デイヴィスはジャケット写真などの印象では、強面ですが、意外に背が低く、動きもかなり細かいためなんとなく想像したのと異なる印象でした。

1楽章はちょっと力が入り過ぎて、かなり表情が固い印象。リズムをクッキリ描いて行くスタイルはハイドンの交響曲の録音からも想像できましたが、リズムやメロディーを受け継ぐ部分のつながりがぎこちない感じ。ちょっと単調なところがあり、かなり力で押し通すような1楽章。ただしティンパニや低音弦をかなり鳴らして迫力は尋常ではありません。ちょっとこの先どうなるのだろうと不安な印象もありました。
印象が一変したのがつづくスケルツォ。いままでのぎこちなさがウソのように、スケルツォはタイトに引き締まりまくった素晴しい演奏。デイヴィスの力の入ったコントロールがこんどは良い方向に作用して、未曾有の迫力。楽章間でこれほど印象の変わる第九ははじめてです。
アダージョは速めにくるだろうと想像していましたが、これまた予想とかなり異なり、歌う歌う。現代風のタイトなアダージョではなく、美しいメロディーを弦楽器が雄弁に表現。ここにきてデイヴィスの指揮もかなり柔らかくなり、各パートに的確に指示を出しながら音楽を紡いでゆきます。
圧巻は終楽章。これはかなり確信犯的演出です。入りは速目でタイトながら、歓喜の歌のフレーズがはじまった途端、白亜の大神殿が出現するように象徴的に巨大な構造物を表現するようにがっちりと構造を描いて行きます。この終楽章の象徴的にデフォルメした構造の表現こそ、現代音楽まで得意とするデイヴィスの描く第九の真髄だったと気づきます。今日のソロはオール日本人キャストでしたが、とくにバリトンの与那城敬さんは素晴しい声量で、ソロの入りの一瞬でホールの観客を釘付けにする素晴しく朗々とした歌唱でした。そしてコーラスは新国立劇場合唱団。ホールが狭いせいか、コーラスは怒濤の迫力。声が一つにそろって素晴しい精度。母親も仕切りにコーラスをほめていました。デイヴィスの指揮は終楽章に入ると自在さを増し、基本的に速めのテンポながら、時折現代音楽のような峻厳さを感じさせるほどテンポを落とす場面もあり、聴衆を引き込んでいきます。最後は爆風のような迫力でオケが爆発。開場もまさに割れんばかりの拍手で熱演に応えていました。今日もティンパニの岡田さんは見事。母親も「太鼓ぴったりだった」感心しきり。生のオーケストラの大迫力にはじめてふれて、痺れていました。

私もデイヴィスをちょっと見直しました。聴衆の鳴り止まない拍手に深く深く礼をする誠実な姿が印象的でした。第九の演奏としてはかなりユニークなものでしょうが、デイヴィスの狙いは良くわかりました。やはり現代音楽を理解する視点からみたベートーヴェンのあり方をよく考えての設計でしょう。なかなか楽しめました。なにより母親がいたく感激していたのが嬉しかったですね。

IMG_6495.jpg

ゆったりとコンサートを楽しんで、お客さんが引けたホワイエのクリスマスツリーをパチリ。良いコンサートでした。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 東京オペラシティ ベートーヴェン 第九 読売日響

シューリヒト/フランス国立管のベートーヴェン1番、英雄(DISQUES MONTAIGNEシャンゼリゼ劇場ライヴ)

仕事が忙しくてちょっと更新できませんでした。前記事のモニク・ド・ラ・ブルショリュリのシャンゼリゼ劇場ライヴの独特の乾いた響きを聴いて、このアルバムを思い出しました。今日はハイドンではなくベートーヴェン。

SchurichtEroica1.jpg

本当は金と紺の粋な配色なんですが金が反射して真っ黒に写っちゃいましたということでライナーノーツ裏面写真も追加。

SchurichtEroica2.jpg

HMV ONLINEicon(Altus盤)

カール・シューリヒト(Carl Schuricht)指揮のフランス国立管弦楽団(Orchestre National de France)の演奏でベートーヴェンの交響曲1番と交響曲3番「英雄」の2曲を収めたアルバム。収録は1番が1965年6月15日、英雄が1963年5月14日、いずれもパリのシャンゼリゼ劇場でのライヴ。レーベル今は幻の仏DISQUES MONTAIGNE。所謂お宝盤です。なお、フランス国立管弦楽団はこのオケの現在の呼称で、当時はフランス放送管弦楽団(Orchestre national de la radiodiffusion Française)と呼ばれていたそうです。

上のHMV ONLINEのリンク先はこのDISQUES MONTAIGNE盤の英雄の演奏の日のコンサートの模様を収めたアルバムで、もちろん入手可能です。

モニク・ド・ラ・ブルショリュリのアルバムの響きはまさに、このアルバムから聴こえる響きと同質なもの。おそらくコンクリート建築の父と呼ばれたオーギュスト・ペレによるこの劇場特有の響きの個性なのではと思います。シャンゼリゼ劇場は過去2度ほどパリを訪問した際にもコンサートを聴く機会に恵まれず、実際にこの劇場の音は聴いていません。なお、シャンゼリゼ劇場は今年創立100周年とのことです。

指揮者のカール・シューリヒトはおなじみでしょう。1880年ドイツ北部のダンツィヒに生まれた指揮者。紹介は下のDISQUES REFRAIN盤の記事をご覧ください。シューリヒトは1967年はじめに86歳で亡くなっていますので、この演奏は英雄が81歳、1番が83歳頃の演奏ということで最晩年の演奏になります。シューリヒトは晩年リウマチを患っていたということで、体調も万全でなかったことが、手元にあるミシェル・シェヴィ著の「大指揮者カール・シューリヒト 生涯と芸術」(アルファベータ)にも触れられています。

2011/02/25 : ハイドン以外のレビュー : シューリヒト/ウィーンフィル1956年のモーツァルトライヴ
2011/02/23 : ハイドン–交響曲 : シューリヒトの「ロンドン」(MEMORIES REVERENCE)
2011/02/22 : ハイドン–交響曲 : シューリヒトの「ロンドン」(DISQUES REFRAIN)
2010/04/21 : ハイドン–交響曲 : 枯淡、シューリヒトのハイドン

シューリヒトは好きな指揮者ゆえ、これまで何度もとりあげています。直裁、明解なのに味わい深く、音楽に魂が宿っているような生命感すら感じさせる演奏が特徴です。ハイドンでは86番とロンドンの素晴らしい演奏があり、以前触れたようにわがコレクションでも至宝クラスのアルバムです。

シューリヒトといえばブルックナー、モーツァルト、ベートーヴェンなんでしょうから、ハイドン以上にすばらし演奏が多い訳ですが、そのシューリヒト最晩年、しかもシャンゼリゼ劇場でのライヴということで注目度の高いもの。もちろん実に素晴らしい演奏で、長年愛聴しております。

ベートーヴェンの1番と3番は何れもハイドン存命中に完成した作品。ハイドンは創作活動をほぼ終えていた時期ですが、ハイドンの築いた交響曲という形式の次の時代を切り開くベートーヴェンの衝撃的な曲を聴いたのでしょうか。

ベートーヴェン 交響曲1番op.21(1800年)
会場のざわつきの中から鮮明に響き渡る音響。冒頭どすんと何かが落ちたような音まで録られた鮮明な録音。もちろんシャンゼリゼ劇場独特の音響。ライヴ好きの私にとっては会場の空気そのままの理想的な録音です。会場での演奏の緊張感あるようすが手に取るようにわかります。録音はステレオなのもプラスですね。演奏の方は冒頭からシューリヒトは80歳を超えているとは信じられない素晴らしい生命感溢れるコントロール。キリッと引き締まって、直裁なフレーズで淡々とすすめているのに、音楽に立ちのぼるえも言われぬ高貴な雰囲気と味わいがあります。シューリヒトにしかできない演奏でしょう。オケも万全。特にシャンゼリゼリゼ劇場の独特の響きに溶け込む木管楽器が素晴らしいですね。まさにシャンゼリゼ劇場の客席で聴いているような気分になります。終盤は畳み掛けるような素晴らしい迫力。とても80歳を超えた人の奏でる音楽とは思えません。
間をおかず2楽章のアンダンテ・カンタービレに。1楽章とかわらぬテンポによるサクサクとした演奏。もちろんシューリヒとならでは達観したフレージングと緊張感溢れるオケのエネルギーが感じられる素晴らしい音楽。
またまた、会場が咳き込む隙を与えないように間を置かずメヌエットに入ります。気品と迫力の両立した響きの塊のようなメヌエット。オケの響きはシャンゼリゼ劇場に響き渡ります。
フィナーレも有名なメロディーが速めのテンポに乗って軽い感じなのに活き活きと奏でられ、オケは抜群の精度で対応します。センス良く乱舞する音階のそこここでオケが爆発。まさに新時代の音楽の登場を鮮明に印象づける音楽でしょう。全く練らないのに音楽には素晴らしいメリハリがついて、音楽の構造がクッキリ浮かび上がります。最後の音を待たずにシャンゼリゼ劇場の観客から嵐のような拍手が降り注ぎます。このコンサートがパリの聴衆にとって、どれほど期待されたものだったのかを物語るよう。拍手は自然と手拍子にかわっていきました。会場の興奮がそのまま伝わってくる素晴らしい演奏でした。

ベートーヴェン 交響曲3番「英雄」op.55(1804年)
続いて英雄。前曲の1番より少し前の1963年5月のライヴ。最初の一撃から、ノックアウト。もの凄い緊張感。録音は前曲同様鮮明ですが、比べると前曲のほうが鮮明度では上で、こちらのほうが少し低域の量感重視でしょうか。いずれにせよシャンゼリゼ劇場の雰囲気がしっかり伝わります。オケの調律が少し緩い感じがしますが、気にしません(笑)。1楽章は最後のクライマックスを目指して徐々に盛り上げていくプロセスがどの演奏も聴き所なんですが、シューリヒトのコントロールは一貫して気品と直裁な表現のバランスのとれたもの。過度なメリハリを抑えながらも実に慈しみ深く、味わい深いもの。燻し銀の演奏という感じでしょう。1番がかなりエネルギー感のある演奏だったのに対し、こちら最初の一撃以降はじっくり攻めていく感じ。特に木管、金管の響きにシャンゼリゼ劇場の響きが乗って、これもまた味わい深さにつながっています。終盤はザクザクとした響きによる迫力のある演奏。
やはり間をとらず2楽章のアダージョに入ります。この楽章間の間をあまり置かず入るのはシューリヒトの特徴なんでしょうか。1楽章がバランス重視だったのに対し、2楽章はかなり起伏の幅をとって大きなうねりを表現していますが、葬送行進曲を過度に暗く表現するのではなく、陰影の深い彫刻に丁寧にライティングしたようなアーティスティックな表現。こうした部分の芸術性はシューリヒトならではの高みに達していて、この演奏の一番聴き所です。最後の消え入るようなところまで含めてまさに孤高の表現。
音楽はつながっていても雰囲気がさっと変化してスケルツォに。オケにエネルギーも漲りますが、シューリヒトが手綱を上手く捌いて、抑える部分をしっかり抑えることで一貫した音楽が流れます。金管を象徴的に目立たせる演奏も多いですが、かなり抑えているのが特徴でしょうか。弦楽器のフレージングはシューリヒトの真骨頂でしょう。
フィナーレは変奏曲。メロディーの受け渡しが重なるようになるのがシューリヒト流。メロディーラインの流れのよさとメロディー間の対比が鮮明になり、音楽が非常に豊かに聴こえます。時折そよ風のような優しい表現を挟みながら、メロディーの織りなすざっくりとした綾を大きなうねりに乗せていきます。終盤のホルンの号砲も穏やかな表現です。このあたりの表現が気品と深みを両立させたシューリヒトの演奏のポイントなのかもしれませんね。最後はテンポをかなり落として、曲を締めくくります。前曲同様嵐のような拍手で終わります。こちらも当日の感動が伝わってくる演奏でした。

カール・シューリヒトの演奏によるシャンゼリゼ劇場のベートーヴェンのライヴ。シャンゼリゼ劇場独特の響きのなかに、シューリヒトならではの味わい深いベートーヴェンが響きわたる素晴らしい演奏でした。このアルバム、英雄の演奏の方が記憶に残っていましたが、あらためて聴き直すと1番もそれ以上に素晴らしい演奏。1965年とシューリヒトがコンサートの指揮台に登れるかどうか危うい時期の貴重なコンサートゆえ観客の興奮も一入でしょう。シューリヒトもそれに応えて、素晴らしい覇気を感じさせます。いまから50年も前のコンサートの感動がよみがえりますね。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ベートーヴェン ヒストリカル ライヴ録音 シャンゼリゼ劇場

東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる

今日は台風17号迫る中、以前からチケットを取ってあったコンサートに。

第147回オペラシティ・マチネーシリーズ-読売日本交響楽団

スクロヴァチェフスキはハイドンを振る訳ではありませんが、以前に行ったコンサートはどれも素晴らしく、年齢が信じられないほどの活き活きとした音楽を楽しめるので、やはりコンサートには足が向きます。これで4回目のスクロヴァチェフスキのコンサートです。

2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

今日は東京オペラシティでのベートーヴェンの2番と3番「英雄」という正統派プログラム。ベートーヴェンの交響曲でも2番はハイドン時代の構成の延長にある曲なので好きな曲。そして英雄はハイドンが到達した交響曲の高みに対して、次元を超える創造で新境地を切り開いた曲でしょう。この名曲をスクロヴァチェフスキがどう料理するのか、期待は高まります。

今日の東京はお昼までは台風襲来を感じさせない平常を保っていました。開場のだいぶ前にオペラシティについて、ホールの下の階にある本屋さんで少々のんびり。英気十分で開場を待ちました。

IMG_3523.jpg

もちろん開場後、すぐにビュッフェに立ち寄り、珈琲と赤ワインで喉を潤します。

イメーシ#12441;

今日の赤ワインは勝沼、鳥居平の「鳥居平ルージュ」。山梨特産のブラック・クィーンのワイン。こうして音楽ホールでも国産のワインを名前を出して給するようになったんですね。口当たりが柔らかい優しい味の赤ワインでした。

IMG_3525.jpg

開演前に練習するステージ上の奏者たち。今日の席は1階の右前の方。

IMG_3526.jpg

ついでに、上方をパチリ。東京オペラシティのタケミツ・メモリアル・ホールの高い天井。この時間はまだ台風の影響もなくホール内はこれから起こるただならぬ演奏を待つ、まさに嵐の前の静けさの状況。



開演時間である14:00の少し前に、ステージ上には読売日本交響楽団の団員が登場しだします。1曲目はベートーヴェンの2番。つづく3番のために少し席を残した規模のオーケストラ。

ベートーヴェンの交響曲2番は1801年から2年の作曲で、初演は1903年4月5日、アン・デア・ウィーン劇場とのこと。1803年といえば、ハイドン最後の作品である弦楽四重奏曲Op.103が作曲された年。

この日のコンサートマスターはデヴィッド・ノーランさん。いつものように調律が終わると、袖から元気そうなスクロヴァチェフスキさん登場で、拍手喝采。指揮台に登る時に脚を気にする様子は、以前と変わりません。演奏前なのに万来の拍手を浴びて、にこやかに応ずる様子もいつも通りで一安心。

2番は、最初の一音から最後まで、圧巻の出来でした。いつもハイドンばかり聴いている私の耳には、交響曲というジャンルを確立したハイドンのなし得た偉業を、新しい世代が、これまでとは異なる次元の力感を込めて超えていった様子が手に取るようにわかる演奏でした。
スクロヴァチェフスキらしい、引き締まった響きと、時折聴かせる弦楽器のうなりを伴うような深い響きで、ベートーヴェンの初期の交響曲を描いていきます。1楽章は長い序奏をじっくりと聴かせたあと、主題に入ると、テンポを上げ、アポロン的な均衡を保ちながら、沸き上がる力感をじっくり描いていきます。スピーディにまとめる演奏が多い中、スクロヴァチェフスキはスピーディななかに、ミケランジェロの彫刻のように筋肉のディティールをデフォルメするように強調しながら、全体のバランスを躍動的に描くような演奏。スクロヴァチェフスキ流のデュナーミクの変化が引き締まった表情を保ち、徐々にエネルギーを増していくようになり、クライマックスではスクロヴァチェフスキは両手を震えるように振り上げて、オケを煽りまくり、もの凄いエネルギーを引き出します。
2楽章のラルゲットはスクロヴァチェフスキの真骨頂。時折まるでブルックナーのアダージョのような深い響きを時折聴かせながらも引き締まった規律を保った演奏。後半の盛り上がりはまさにブルックナーの大伽藍を思わせる神々しさ。ベートーヴェンの2番からこのような荘厳な響きを聴けるとは思いませんでした。
3楽章のスケルツォはハイドン時代のメヌエットによる均衡から一段と力の表現が濃くなり、オケは、エネルギーの塊のように荒れ狂います。つづくフィナーレもあわせて、徐々にクライマックスにいたる大きな流れをつくり、頂点を鮮明に意識して、スロットルを少しづつ開いていきます。静と動の変化も巧みにコントロールして、豊かな表情と引き締まった響きを両立した素晴らしい感興。いやいや、ここまでの高みに至るとは。1曲目なのに割れんばかりの嵐のような拍手に迎えられます。スクロヴァチェフスキさん、満面の笑顔で拍手に応えます。

休憩を挟んで、今日の本命、英雄です。作曲は1802年から4年、初演は1904年12月、ロプコヴィッツ伯爵邸でということです。ロプコヴィッツ伯爵はハイドンが弦楽四重奏曲Op.77を献呈した人です。

こちらは、さらなる高みに。まずは、英雄の最初の一撃の集中力、凝縮感に圧倒されます。スクロヴァチェフスキは震えるようにタクトを振り上げ、素人にはどこで入るのか全くわからないタイミングでの入り。この一音、というかニ音ですが、響きの緊張感はただならぬもの。最初の一撃のみで、開場の聴衆の耳を鷲掴みにします。以降は2番と同様、引き締まった響きで音楽をつくっていきますが、聴き進むうちに2番はそれでも抑制していたことがわかります。要所で見せるスケールの大きさは2番とはやはり差がつきます。オケの編成も少し大きくなり、コントラバスの図太く深い響きや、オーボエの美しい響きが音色の幅を広げています。1楽章は寄せては返す大波のように何度かの盛り上がりのあと、最後のクライマックスはそれまでの音楽の造りも含めて、素晴らしい上昇感と力感。CDで聴くのも悪くありませんが、やはり渾身の生は違いますね。
2楽章の葬送行進曲は、実に深いフレージングでじっくりと攻め込みます。静寂と弦楽器の唸るような響きの繰り返しはやはりスクロヴァチェフスキの得意とするブルックナーのアダージョを思わせるもの。ただ、ブルックナーの響きに没入するような圧倒的な轟音とは異なり、古典の均衡をきっちり意識して、ベートーヴェンらしさも保っています。
スケルツォはホルンの名旋律で知られますが、この日の読響のホルンは絶妙な上手さ。スクロヴァチェフスキの渾身の指揮に奏者が完璧な演奏で応えます。今日はミスらしいミスはなく、読響は素晴らしい演奏で華を添えています。
そしてフィナーレはスクロヴァチェフスキ圧巻のコントロール。とくに極端にテンポを落とすさざめくような場面を意識的に作って、盛り上がりを演出するあたりは、並の指揮者とは異なります。完全にスクロヴァチェフスキのベートーヴェンになっていました。長大な英雄ですが、引き締まってかつ、彫りの深い音楽として、実に聴き応えのあるものでした。最後は嵐のような拍手とブラヴォーに何度も呼び返され、今日の充実振りを楽しむようなスクロヴァチェフスキの笑顔が印象的でした。コンサートマスターのデヴィッド・ノーランとガッチリ握手してずいぶんにこやかに話していたところをみると、今日の演奏はスクロヴァチェフスキにとっても納得の演奏だったのでしょう。

今日は素晴らしいベートーヴェンでした。おそらくテレビでも放送されるでしょうから、このコンサートを聴けなかった人にもこの様子を味わってほしいですね。昨年末に聴いたN響との第九も素晴らしいものでしたが、振り慣れた読響との2番と英雄はそれを上回る出来と言えるでしょう。

IMG_3528.jpg

今日は9割5分の入りというところでしょう。心なしか年配者が多かったようですが、皆さん満足げに開場を後にされていました。

いつもだと、このあと食事をして帰るのですが、今日は台風接近に備えて、おとなしく家路につきました。明日からまた、忙しい仕事ですね、、、

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ベートーヴェン 読売日響 東京オペラシティ

スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)

今日はサントリーホールのコンサートへ。

20111227NHK.jpg
NHK交響楽団:FUJITSU Presents N響「第九」 Special Concert

10月に行ったザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニーとのブルックナーの4番のコンサートがあまりに良かったので、奮発して今日はサントリーホールでのN響の第九を聴きにいきました。これでスクロヴァチェフスキのコンサートは3回目。以前のコンサートのレポートはこちらをご覧ください。

2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

IMG_2422.jpg

今日は仕事はたまってたのですが、この機を逃す訳にはいかず、早々に会社を引き上げサントリーホールに向かいます。会場の30分前にはいつもどおりサントリーホールにつき、向かいのオーバカナル赤坂店でいつものように軽食とワインをいただきます。今日はコンサートのために昼食すらとっていませんでしたので、お腹ぺこぺこです。まずはワインで聴覚神経が鋭敏になる程度に喉を潤します(笑)

IMG_2423.jpg

あとはホットサンド(のようなもの)
ほどよくお腹も満ちてちょうどいい感じです。

IMG_2425_20111227233135.jpg

サントリーホール前の広場はクリスマスイルミネーションでこんな感じ。もうクリスマスは過ぎてますがライトアップされていて雰囲気があります。

IMG_2426.jpg

スクロヴァチェフスキの第九は同じメンバーにて直前まで4日間にわたりNHKホールで行われており、今日が最終日でかつサントリーホールに会場を移してのもの。NHKホールとサントリーホールでは音響が全く異なりますので、今回は最初からサントリーホールを狙ってチケットをとりました。先日もNHKホールでデュトワのマーラーの8番を聴いたばかりですが、やはりサントリーホールの方がいいですね。

今日の席はRBエリア、オケの右脇2階席。このところサントリーホールで聴く時にはこのあたりを狙って取ります。ただし嫁さんと2枚なんですが、1席間に入る別れた席しか取れませんでした。きょうは幸い間の方が席を代わってくれて並び席に。その代わってくれた方は、娘さんが国立音大の合唱でステージに立つとのこと。その方とおしゃべりしながら開演を待ちました。娘さんは前から3列目の左から12番目で歌ってました。

このコンサートは今日のみオルガンの独奏が前半に置かれています。バッハのトッカータとフーガ、モーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス、バッハのコラール「主よ、人の望みの喜びよ」と名曲3曲。オルガンは芸大オルガン科卒の勝山雅世さんという若い方。サントリーホールのオルガンの音量をフルに使った迫力のある、日本人らしい几帳面な演奏でした。会場からも暖かい拍手が送られました。が、、、それはあくまで前座でした。休憩後のスクロヴァチェフスキの第九は圧倒的な出来。やはりスクロヴァチェフスキは凄いです。最初から最後まで圧巻の出来でした。

休憩が終わり、合唱団が入場。3/4が女声というくらいの配分。サントリーホールのステージ裏の席一杯に国立音大合唱団が入ります。これまで厳しい練習を積んできたとの事。

そしてオケが入ってチューニングが済むとしばらくでスクロヴァチェフスキが登場。膝でも悪いのでしょうか、歩く姿は流石に年齢を感じさせます。ただし指揮台にのぼり独特の短い指揮棒を振り上げた途端、ホール内の空気が一変。速めのテンポとキレのいいヴァイオリンのボウイングが印象的なキリッとした1楽章。最初はバランス重視で均衡した演奏でしたが、徐々に力感が漲り、1楽章の中盤に入るとオケの全奏はホールを突き破らんがごとき迫力。ホール中の観客を圧倒し始めます。前半は抑えていた事を振り切れた音響によってはじめて気づかされるようでした。キリッと引き締まり大きな起伏も描かれる素晴らしい1楽章。
さらに素晴らしかったのが2楽章。燃えたぎる火の玉、エネルギーの塊のようなモルト・ヴィヴァーチェでした。速めのテンポはそのままに凄まじい起伏。N響のティンパニは今日は素晴らしい出来。まるで鬼太鼓座のような渾身の一撃。これほどの迫力のこの楽章ははじめて。スクロヴァチェフスキが頬を膨らましながら手を振り回してオケを煽り、オケも抜群の精度でそれに応えていました。鳥肌がたつような痛快さ。ベートーヴェンが聴力を失ってから想像した音響。ベートーヴェンもここまでの迫力は想像し得なかったのではないかと思うほどの渾身の出来でした。
そしてアダージョ。このアダージョはブルックナーを得意とするスクロヴァチェフスキならでは。特にチェロとコントラバスがホール内を揺らさんばかりの図太い響きで美しいメロディーを描き、すべての楽器が独立しながらも有機的に絡み合っていく様は非常に高度な音楽的感興をもたらします。遅めのテンポでじっくり描いたアダージョは期待通りのすばらしさでした。
そして終楽章。3楽章から間を置かずすぐに入りますが、普通は3楽章に入るところでソロ歌手が入場するのですが、今日は終楽章がはじまっても歌手はステージ上にいません。オケのみの演奏がしばらく続き大音量となったところで、歌手陣とグランカッサなどの鳴りもの陣がそろりとステージに入ります。歌手はオール日本人。出演者は上のリンクをご覧ください。歌手陣はいい出来。特にテノールの福井敬さんの突き抜ける高音域は素晴らしい迫力でした。そして秀逸だったのは国立音大の合唱団。非常に精度の高い合唱で、しかもスクロヴァチェフスキのコントロールに見事に反応して、デュナーミクのコントロールも完璧。終楽章は後半になるにつれ徐々にテンポを落とし、終盤はベートーヴェンなのにまるでブルックナーのような白亜の神殿の大伽藍が出現。ホール中に歓喜の歌が溢れ荘厳というか幽玄ですらある響きの渦に。最後はスクロヴァチェフスキがオケを煽って速めのテンポでキリッとフィニッシュ。ブラヴォーの嵐、天から降り注ぐ拍手。素晴らしいひと時でした。

延々と拍手が続きましたが、印象的だったのはスクロヴァチェフスキがステージに上がる度に合唱団をたたえていた事。合唱指揮の田中信昭さんも80歳代とのことですが、この2人の作った音楽は、若々しさとエネルギーに満ちていました。合唱団の最後の一人が去っても鳴り止まぬ拍手にスクロヴァチェフスキが再びステージに登場、満面の笑みで拍手に応える姿が印象的でした。

今日は人の作る音楽のこれ以上ない素晴らしさに出会った気がしました。素晴らしいコンサートに感謝です。

私がスクロヴァチェフスキの演奏にはじめて触れたのもテレビで放映していただいぶ前のN響を振った第九。テレビ画面からも発せられるオーラに釘付けになったのを覚えています。今日のコンサートのパンフレットによれば、スクロヴァチェフスキが以前に第九を振ったのは2000年とのことで、かれこれ10年以上も前のことだったわけですね。後何回聴く事ができるでしょうか。入口でもらったチラシでは3月に読響でブルックナーを振るそう。また行きたくなってしまいました。



コンサートの興奮も覚めませんが、お腹も減ってきたので、前回もよった、アークヒルズのカレー屋さん「フィッシュ」へ。今日も美味しかったです。

食べログ:フィッシュ

IMG_2427.jpg

まずはビール。

IMG_2429_20111227233134.jpg

そして、チキンカレー。

IMG_2430_20111227233220.jpg

名物フィッシュ&キーマ。

IMG_2431_20111227233220.jpg

ついでにグラスワインも(笑)

コンサートの余韻に浸るため、今日のお食事情報は簡単に。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : サントリーホール ベートーヴェン 第九 N響

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

古楽器ラメンタチオーネアレルヤ交響曲3番交響曲79番チェロ協奏曲1番オックスフォード驚愕交響曲88番交響曲19番交響曲58番交響曲27番アンダンテと変奏曲XVII:6ショスタコーヴィチベートーヴェン紀尾井ホールラヴェルストラヴィンスキードビュッシーピアノ三重奏曲ミューザ川崎LP協奏交響曲オーボエ協奏曲日の出ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:38サントリーホールスタバト・マーテルピアノソナタXVI:39ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:37ブルックナーマーラー十字架上のキリストの最後の七つの言葉ヒストリカル交響曲90番告別交響曲97番交響曲99番交響曲18番奇跡ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番モーツァルト交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者小オルガンミサミサブレヴィスニコライミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23王妃ピアノソナタXVI:52ライヴ録音SACD武満徹チェロ協奏曲交響曲80番交響曲全集交響曲81番交響曲21番マリア・テレジアクラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり騎士オルランド無人島Blu-ray東京オペラシティ交響曲9番交響曲12番交響曲11番交響曲10番ロンドン太鼓連打交響曲15番交響曲4番交響曲2番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:7ロッシーニドニぜッティライヒャピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3シェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4バードタリスアレグリパレストリーナモンテヴェルディすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6美人奏者四季迂闊者交響曲70番アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルト交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲51番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21アリエッタと12の変奏XVII:3帝国ラ・ロクスラーヌ弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオオフェトリウムモテットドイツ国歌カノン弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ブーレーズベルク主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲68番交響曲57番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bisピアノソナタXVI:11カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲108番交響曲107番交響曲62番変わらぬまことジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
06 | 2018/07 | 08
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
111位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
11位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ