アントニオ・デ・アルメイダ/ハイドン協会管による交響曲集(ハイドン)

12月最初のアルバムは交響曲。最近オークションで手に入れたもの。

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アントニオ・デ・アルメイダ(Antonio de Almeida)指揮のハイドン協会管弦楽団(The Haydn Foundation Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲67番、69番「ラウドン将軍」の2曲を収めたLP。収録は解説によると1969年。レーベルは日本ビクター。

このアルバム、ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、この他に3枚、合わせて4枚のシリーズ物。いずれもアルメイダ指揮のハイドン協会オーケストラによるもので、シリーズは下記の通り。

第1集 交響曲62番、66番
第2集 交響曲67番、69番「ラウドン将軍」(本盤)
第3集 交響曲70番、71番
第4集 交響曲74番、79番

今回、この4枚とも入手できたので、色々聴き比べてこのアルバムをレビューに選んだ次第。国内盤ゆえ日本語の解説が付いているのですが、ハイドンの著作で有名な大宮真琴さんによるもので、ロビンス・ランドンがハイドン協会などで主導した、1960年代から70年代当時のハイドンの交響曲の録音の経緯がよくわかります。まずは、1960年からマックス・ゴバーマンとウィーン国立歌劇場管弦楽団による全集が企画された件はゴバーマンのレビューで触れた通りですが、1962年のゴバーマンの急死で中断。続いて1967年から1968年にかけて、デニス・ヴォーンとナポリ管弦楽団によるパリセットなど82番から92番と協奏交響曲など12曲を録音。そしてロビンス・ランドンが1968年に完成したランドン版の交響曲全集をもとに、このアントニオ・デ・アルメイダとハイドン協会管弦楽団によって60番代から81番の17曲と93番から98番までの6曲が録音されたそう。国内盤でリリースされているのが上記の8曲のみということで、60番代から81番までにあと9曲の録音がある模様ですが、ネットを検索してもそれらしきアルバムは見当たりません。まあ、気長に探してみることにします。

指揮者のアントニオ・デ・アルメイダは1928年パリ近郊のヌイイ=シュル=セーヌ (Neuilly-sur-Seine)生まれの指揮者。父はポルトガル人、母はアメリカ人。10代でアルゼンチンに渡り、ヒナステラに音楽理論を学び、その後ボストンのMITで核化学を専攻するという変わった経歴の持ち主。ただし音楽への興味は尽きず学生オーケストラを組織し、ヒンデミット、クーセヴィツキー、セルなどの薫陶を受け、指揮活動を本格化。1949年にリスボンでポルトガル国立放送交響楽団を指揮してデビュー。同年からポルトガル北部のポルトのポルト交響楽団の首席指揮者に就任。1962年から1964年までシュトゥットガルト・フィルの首席指揮者、1965年から1966年までパリ・オペラ座の指揮者、1969年から1971年までヒューストン交響楽団の首席客演指揮者、1971年から1978年までニース・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督、1993年から1997年に亡くなるまで、モスクワ交響楽団の音楽監督を務めるなど各地のオケの首席指揮者を歴任しました。オッフェンバックの研究で知られる他、1968年からロビンス・ランドンと共にハイドン協会の音楽監督を務めたとのこと。

ということで、現在ではハイドンの交響曲といえばドラティ以後の録音が知られる存在ですが、マックス・ゴバーマン、デニス・ヴォーン、そしてこのアントニオ・デ・アルメイダがドラティ以前にロビンス・ランドンと共に果たした役割は非常に大きかったに違いありませんね。

このアルバム、針を下ろしてみると、なんとも素晴らしい響きが流れ出します。国内盤なので音質はさして期待していませんでしたが、部屋中に優美な響きが轟く素晴らしい録音です。

Hob.I:67 Symphony No.67 [F] (before 1779)
いきなり彫りの深い、LPならではの彫刻的なオケの響きに引き込まれます。この時期のハイドンの曲はメロディーの適度に晴朗な面白さと巧みな構成がバランスよくまとまったもの。それをわかりやすく表現するようにテンポはややゆっくり目ながら、テーマを適度な推進力で牽引していきます。オケも弦楽器を中心に潤いのある音色がピシッと揃ってなかなかのもの。特に弦楽器の深い響き、木管楽器の軽やかな響きはかなりのレベルです。
続くアダージョは弱音器付きのヴァイオリンによる甘美なメロディーが印象的な曲。曲が滔々と流れゆく感じがよく表現されていて、非常に自然な佇まい。時間がゆったりと流れていく感じが心地よい音楽。最後にコル・レーニョ奏法でコミカルな余韻を残します。
メヌエットは壮大な構えの音楽。非常に雄大な響きを聴かせたかと思うと、中間部のトリオは、ヴァイオリン2本のみの繊細な響きではっとさせられます。
そしてフィナーレは、予想とは異なるかなり遅めのテンポ。まさに壮大さが滲み出てくるよう。これぞオーソドックスなスタイルと言わんばかりの確信犯的アプローチでしょう。ちょっと歴史を感じてしまいますね。フィナーレにもゆったりとした中間部が挟まれ、今度は2本のヴァイオリンとチェロによる三重奏。これがしんみりと聴かせる聴かせる。一貫してゆったりとしたテンポなので徐々に音楽がとろけるように聞こえてきます。途中慟哭のような強奏が挟まり、まるでロマン派の音楽のような展開を経て、冒頭のメロディーを再現します。いつもながら、尽きないハイドンのアイデアに驚くばかり。なかなか壮大な名演です。

Hob.I:69 Symphony No.69 "Laudon" 「ラウドン将軍」 [C] (before 1779)
こちらもゆったりとしたテンポでの入りですが、オケには最初から力が漲り、一筆一筆しっかりとした筆致で筆を進めていきます。一音一音にエネルギーが満ちて、しかも確信に満ちた説得力というかオーラを感じる演奏。現代ではこのようなスタイルの演奏はもう聴かれてなくなってしまったのかもと、余計なことを考えてしまいます。若干古さを感じさせながらも、圧倒的な存在感が印象的な演奏です。
続く2楽章は、前曲同様、弱音器付きのヴァイオリンなどによるハイドンらしい音楽が展開します。仄暗い感じがよく出ていて、メロディーがその印象にからまり合いながらも、こちらの期待を上回る展開力を見せ、追いかけて聞くだけでも刺激的。
メヌエットの威風堂々とした様子も前曲同様。日頃メヌエットの演奏には厳しいのですが、このアントニオ・デ・アルメイダ盤の演奏はそうした聴き方を跳ね返すだけの伝統というか一貫して堅固なものがあるような気がします。
そして壮麗なフィナーレへ突入。遅めなテンポ設定なのも変わらず、適度にしなやかに流れながらも筋骨隆々とした力感にあふれた演奏は痛快そのもの。大宮真琴さんの曲目解説によれば、ランドンはハイドンのこのフィナーレを「想像力が貧困で霊感に欠如している」と評していますが、オーソドックスながら起伏に富んだアルメイダの棒によって均整のとれたハイドンらしい古典的な見事なフォルムに仕上がっています。これはこれで一本筋の通った演奏に違いありません。

アントニオ・デ・アルメイダがハイドン協会管を振って、当時ランドン版の楽譜が出版されたばかりのハイドンの60番から70番台の珍しかった曲を演奏した一連のアルバムの中の1枚。改めて所有盤リストをしげしげと眺めてみると、この60番台から70番台の曲は、ほとんどが1969年以降の録音であり、このアルメイダ盤が中でも一番古い録音であることが珍しくありません。こうした歴史の流れの中でこのアルバムを捉えると、演奏史的な視点での価値もあることがわかります。この直後に録音されたドラティの素晴らしい偉業もあり、アルメイダの演奏はドラティ以前の演奏スタイルを知るための貴重なものでしょう。私はこのおおらかながら険しさも感じさせるアルメイダのハイドンは気に入りました。ということで両曲とも[+++++]とします。

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tag : 交響曲67番 ラウドン将軍 LP

トーマス・ファイの69番、86番、87番

8月最初の記事は、トーマス・ファイのハイドンの交響曲集を取り上げましょう。

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トーマス・ファイのハイドンの交響曲はhänsslerから、たしか12枚目までリリースされいますが、これは7枚目にあたるもの。収録は2006年3月、7月。収録曲は69番ラウドン、86番、87番の3曲。ジャケットには”Joseph Haydn Complete Symphonies”との看板が掲げられていますので、ハイドンの大山脈、交響曲全集を目指した壮大な企画です。完成すればドラティ、アダム・フィッシャー、デニス・ラッセル・ディヴィスに続いて4番目の全集(多数の演奏家の合作であるNAXOS盤を含めると5番目)となるわけですが、今までの録音ペースからすると完成するのはだいぶ先になるんでしょうね。

手元にもファイのシリーズはこのアルバムを含めて9枚のアルバムがありますが、このアルバムを最初に紹介するのは好きな86番が含まれているため。

トーマス・ファイはライナーノーツによれば、ハイデルベルク-マンハイム音楽学校でピアノと指揮を学び、その後古楽器奏法をザルツブルクのモーツァルテウムでアーノンクールに学んだとのこと。また、バーンスタインの指揮コースにも参加しているということで、一聴してわかる激しい表現はアーノンクールとバーンスタインに学んだことに端を発している訳ですね。

指揮者としての活動も精力的で、このアルバムのオケであるハイデルベルク交響楽団も彼自身が立ち上げ1994年にデビューしたオケとのこと。金管楽器のみ古楽器で、ピッチは現代楽器にあわせているそうです。前身は自ら学生時代の87年に古楽を主に演奏するために組織したシュリアバッハ室内管弦楽団。最近も2003年にアンサンブル・ラ・パッショーネというバロックオーケストラ、マンハイム・モーツァルト・オーケストラというオケなどを立ち上げ、演奏活動をしているということで有名楽団のポストにおさまるということではなく、次々と自身でオケを作っているあたり、既存の枠には収まらないというか、音楽は創造だとの意気込みも感じます。

ハイデルベルク交響楽団HP(英文)

肝心のこのアルバムの演奏ですが、ハイドンの創意をファイの創意溢れる演奏で浮き彫りにした見事なもの。

冒頭の69番ラウドン。いきなりアーノンクールばりのメリハリの利いた音響が眼前に広がります。音色はアーノンクールに近いものがありますが、メリハリの付け方が違います。アーノンクールは灰汁の強い溜の利いたアクセントが特徴ですが、ファイの場合、変化はフレーズ単位というより音単位でときおりレガートを利かせたり千変万化する多彩さ。速めのテンポのせいかフレーズのつながりはアーノンクールより滑らかで、構成感は緊密さを保ってます。フィニッシュのティパニや金管のアクセントはアーノンクール直系のキレを感じます。
2楽章は意外に穏やかさが引き立ちます。静けさの中に浮かび上がる弦と木管系の音色の変化にスポットライトを当ててつぶやくようなフレージング。3楽章のメヌエットは一転して端正。
フィナーレは期待通りファイの持ち味炸裂。インテンポで畳み掛けるように盛り上げ、びしっと終わります。

続いて、作曲順に87番。87番は序奏なしにいきなり主旋律から始まるちょっと変わった曲。この主旋律の表情づけがきわめて面白い。主旋律の変奏がつづきますが、ファイの千変万化する表情づけが非常に効果的。メロディーラインの面白さがこれだけ表現されている演奏はないでしょう。
2楽章はここでも木管楽器の美しさが引き立ちますね。メヌエットとフィナーレもラウドンと同様の傾向ですが、完成度はこの曲の方が上。特にフィナーレの素晴らしさは息をのむほど。87番は名演です。

そして、お目当ての86番。基本的な構成は前2曲と同様すばらしい完成度ですが、先人の演奏によるこの曲の純音楽的な偉大な側面が刷り込まれているせいか、どうにも表現が小手先に聴こえてしまう印象が否めません。これは私の個人的な好みによるものだと思いますが、86番というパリセットのなかでは群を抜いた非常に純音楽的な構成を持った曲であることに起因しているかもしれません。
そんな中、ファイの表現が効果的なのが3楽章のメヌエット。今までの演奏では聴いたことがない装飾音が効果的に配され、新鮮な響き造り出しています。
そしてフィナーレはやはりファイの独壇場。

ファイの演奏をまとめると、古楽器風のノンヴィブラートの弦と古楽器風の奏法による一見アーノンクール風の祝祭的演奏ながら、音色とフレージングを千変万化させることで曲の本質に達しようという表現意欲漲る演奏ということでしょう。ハイドンの古楽器演奏による新次元を切り開いている演奏です。この感じはラトルがウィーンフィルでベートーヴェンの全集を入れた時、そして最近ではパーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェンを聴いたときとおなじ感触ですね。

評価は87番が最高評価の[+++++]、69番ラウドンと名演ひしめく86番が[++++]としました。86番目当てでこのアルバムを取り上げましたが、意外にもこのアルバムの聴き所は87番でした。

古楽器系の演奏ではホグウッド、グッドマン、ブリュッヘンと何れもハイドンの交響曲全集の完成を見ていません。このすばらしいファイの企画が完成を見ることを祈らんばかりです。
全集が完成したときのファイのジャケット写真は、アダム・フィッシャーのアルバムに含まれる着手時の若々しい写真と完成時の老いた姿と同様な時の流れを感じさせるのでしょうね。

第4のハイドンの交響曲全集が完成にいたるよう、ファイのアルバムの売上げを支えなくてはいけませんね(笑)
私も未入手のアルバムを注文することにしましょうかね。

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アーノンクールの初期交響曲集

先日ブリュッヘンの交響曲集の記事で、古楽器のなかでも個性的なものだと紹介したんですが、個性的という意味では触れなくてはならないものがあることにアップ直後に気づきました。もちろんアーノンクールです。

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アーノンクールのハイドンはアムステルダムコンセルトヘボウとのザロモンセットをはじめとして、ミサ曲集などいろいろでていますが、最も特徴的なのは初期交響曲集じゃないかと思います。

上に取り上げたのは、31番ホルン信号、59番火事、73番狩を収めた1枚と、30番アレルヤ、53番帝国、69番ラウドン将軍を収めた1枚です。他に、45番告別、60番迂闊もの、そして6番朝、7番昼、8番晩を収めたものなど計4枚がリリースされてます。

久しぶりに取り出して、アーノンクール独特の金管のアクセントを効かせた祝祭的演奏を楽しみましたが、ここで気づくべきは選曲なんじゃないかと思ったわけです。ザロモンセットやパリセットは多くの指揮者が録音していますが、ハイドンの初期の交響曲のなかからここにあげた曲を選ぶというところからアーノンクールの好みが色濃く反映されていると思わざるを得ません。このあたりの曲を録音するときには、受難とか悲しみ、マリアテレジアなんかを選んでくるのが一般的だと思いますが、そうではなく、ある意味アーノンクールのアプローチが映える曲を並べてアルバムとしているのが面白いところ。

おそらく最もアーノンクールのアプローチが効果的なのはホルン信号で、冒頭のホルンの号砲から金管がはじけきってます。帝国や狩は終楽章のみが単独で取り上げられるほど盛り上がる曲ですし、告別や火事など残りの曲もハイドンの中ではユニークな曲想を持つ曲です。これらの曲をギョロ目をひんむいて、これでもかと言わんばかりにメリハリをつけて振られれば、個性的と言わざるを得ない演奏となります。

これらの曲をアーノンクールで最初に聴いてしまうと、強烈な印象が刷り込まれて普通の演奏では満足できない体になってしまうこと確実です(笑)
私自身はハイドンではいろんな演奏を聴いてからアーノンクールに至ったため、アーノンクールの呪縛にはまることはありませんでしたが、何を隠そうモーツァルトでは、どうしても20番の交響曲の強烈な印象があり、20番はアルーンクール以外の演奏を受け付けない体になっちゃってます(笑)
嘘だと思ったら一度モーツァルトの20番のアーノンクール盤を是非聴いてみてください。20番といわれてピンとくる方は少ないかもしれませんが、なかなか突き抜けた曲です。ちなみに同様の呪縛に23番のコープマンというのもあって、こちらはワクワク呪縛タイプの演奏です(モーツァルトねたばかりでスミマセン)

ハイドンの曲をいろいろな指揮者で聴いて20年くらいになりますが、まだまだ聴き飽きることはありません。自分だったらどう振るかなんて想像しながら聴くのは至福のひと時です。
今日はアーノンクールをつまみに、ラガヴーリンの16年を少々いただいてます。(ほんとはモルトで至福なだけです、、、、)

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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