ファビオ・ルイージ/読響の熊、英雄の生涯(東京芸術劇場)

最近都響や東響のコンサートが多く、ちょっとご無沙汰していた読響ですが、気になるコンサートがありましたので行ってきました。

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読売日本交響楽団:読響サマーフェスティバル2017 ルイージ特別演奏会

テレビのコンサートの放送でしかご縁のなかったファビオ・ルイージが来日し、それもハイドンの熊もプログラムに含まれると知ってチケットを取ってあったもの。放送での印象はかなりアクティブな指揮ぶりで、音楽も少々くどい印象がありましたが、今をときめく一流どころの一人ということで、ハイドンを如何に料理するのか興味津々といったところ。このコンサートの直前には松本で毎年開催されるセイジオザワ松本フェスティバルでマーラーの9番を振っており、ネットなどの評判を見るとなかなか良かったようです。

ファビオ・ルイージは1959年イタリア、ジェノヴァの生まれ。地元のパガニーニ音楽院でピアノを学んだのちオーストリアのグラーツ国立音楽大学で指揮を学びます。指揮者として最初のキャリアはグラーツ歌劇場。1990年に自ら創設したグラーツ交響楽団を皮切りに、ウィーン・トーンキュンストラー管、スイス・ロマンド管、ライプツィヒ放送響、ウィーン交響楽団、ドレンデン・シュターツカペレなどの首席指揮者、音楽監督を歴任。その後も世界の著名なオケに客演し活躍しています。現在はチューリッヒ歌劇場、デンマーク放送響を率い、2018年からはフィレンツェ歌劇場の音楽監督も務める予定とのこと。今が旬の指揮者の一人でしょう。

ルイージは小澤征爾の招きで2014年に前身のサイトウキネンフェスティバルに来ており、2016年にも来日していますが、読響を振るのは今回のコンサートが初めてとのことです。

この日のプログラムは下記の通り。

R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
ハイドン:交響曲第82番「熊」
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

世紀末に生み出されてた管弦楽の極北の姿であるリヒャルト・シュトラウスの2曲に、古典期に交響曲というジャンルを創り上げたハイドンの曲が挟まれる構成。このプログラム構成の意図はメインディッシュたるシュトラウスに対しハイドンを粋な箸休めとする意図でしょうか。まあ、ハイドンが得意でなければこのような構成はとれないでしょうからよしとしましょう。

この日は早めに仕事を切り上げられたので、前回東京芸術劇場でインバルの大地の歌を聴いた時に発掘した芸術劇場の長いエスカレーターの下にあるベルギービールカフェで腹ごしらえしてコンサートに臨みます。

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食べログ:ベルギービール カフェ ベル・オーブ 東京芸術劇場

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頼んだのは海老とアボカドとフレッシュトマトのサンドイッチなどと、酸味の効いた甘口のレッドビール。ホール内のドリンクコーナーよりも落ち着けるので、早くホールに着いたときにはこちらがいいですね。



さて、この日の座席は2階席の右側。S席なのでステージがらさほど遠くなく、オケを軽く見下ろせるいい席。

最初の曲がハイドンではなくシュトラウスなので、ステージいっぱいに団員が並び、チューニングを終えるとファビオ・ルイージが颯爽と登壇。意外に小柄な人でした。ドン・ファンは最初からフルスロットルの曲ですが、ルイージがタクトを上げた途端、今まで読響から聴いたことのないような鮮明な響きが飛び出します。ルイージ、音色に関して非常に鋭敏な感覚を持っているようで、シュトラウスの楽譜に込められた音楽を、重厚なドイツ的響きではなく、超鮮明なハイレゾサウンドのような音にしてホールを満たします。テンポのキレの良さも重厚な響きになる余地をなくしているよう。全ての楽器に対してキューを出すように指揮台いっぱいに動き回って勢力的にタクトを振ります。指揮姿は全くは異なりますが、この指示の緻密さはマゼールを彷彿とさせます。重くなく鮮明、クリアな響きで、ドン・ファンを一気に聴かせ、読響も完璧にそれに応じた演奏。読響がルイージのマジックに完全に制圧された感じ。もちろん、観客は読響のきりりと引き締まったただならぬ熱演に拍手喝采。

2曲目はお目当のハイドンの交響曲82番「熊」。一旦団員が下がっている間にステージが小編成オケ用に配置換えされます。中央奥に据えられたティンパニは4台から2台に減らされ、指揮者に近い方に一段移動。オケの規模は4分の1くらいでしょうか。再びルイージが登壇してタクトを振り下ろすと、今度はしなやかで透明感溢れる響きで満たされます。このハイドンは良かった。クッキリとした筋の通った構成で、所々に多彩なアクセントやルバートが散りばめられ、爽快感と規律、イタリア人らしいスタイリッシュさもある見事な演奏。指揮ぶりはあいかわらす非常に細かく指揮台いっぱいに動き回りますが、音楽に力みはなく、流石にシュトラウスの大編成の曲の間に挟んだ甲斐のあるもの。1楽章の規律ある構成感、2楽章のメロディーをさらりとユーモラスにこなす余裕、そしてメヌエットでオケを伸びやかに響かせてフィナーレは適度に緊密なまとまりを聴かせるなど、ハイドンの面白さを見事に演出。ドン・ファンの大音響とは異なる音楽の面白さを印象付けました。

休憩を挟んで、後半は大曲「英雄の生涯」。少し前にミューザ川崎でマリス・ヤンソンスの振るバイエルン放送響で素晴らしいアルプス交響曲を聴いたばかりでしたが、この日のルイージの英雄の生涯もそれに劣らず素晴らしいものでした。いきなり圧巻だったのは最初の一音。かっちりとエッジの効いた低音弦の伸びやかな響き。ルイージのタクトの一振りで読響から聴いたことのないような引き締まった響きがまたまた引き出され、いきなりルイージのコントロール力を見せつけられます。ヤンソンスの演奏はいつもしなやかさを保ちますが、ルイージはドン・ファン同様、超鮮明ハイレゾサウンドとかっちりとした構成の見通しの良さを武器に、ハイドンとは比較にならない複雑怪奇奇妙奇天烈なシュトラウスの音楽を見事にコントロール。読響もこれまで聴いたどのコンサートの時よりも精緻。このコントロール力はすごいものですね。この日は聴き慣れた版ではなく静かに終わる初稿による演奏。最後の一音が消え入ると、もちろん場内から嵐のような拍手が降り注ぎました。横で聴いていた嫁さんも、「リヒャルト・シュトラウスってやはり変態だったのね」と激賞(笑)。ルイージの統率と読響の力演に拍手は鳴り止まず、ルイージも団員を讃えていました。

いやいや、事前の想定とは異なるルイージの魅力を見せつけられた感じ。リヒャルト・シュトラウスは言うに及ばず、ハイドンも見事にこなすところは流石なところ。現代物を振った時のカンブルランも素晴らしいのですが、ちょっと格が違う感じでした。またの共演の機会があれば、聴いてみたいですね。前回インバルの大地の歌を3階席で聴いた時はそれほど悪いとは思わなかった東京芸術劇場の音響ですが、今回よりオケに近い2階席の前位の方では、オケの残響にちょっと癖を感じ、響きも硬い感じ。席によって結構印象が変わることがわかりました。今度は芸劇ではなく、新装サントリーホールで聴いてみたいところです。

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マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響の「軍隊」(ミューザ川崎)

11月26日土曜は、午前中は歯医者さんの定期健診、午後はチケットをとってあったコンサートに出かけました。

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ミューザ川崎シンフォニーホール:マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送交響楽団

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のバイエルン放送交響楽団の来日公演で、プログラムはハイドンの交響曲100番「軍隊」とリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」の2曲。メインディッシュはアルプス交響曲ですが、私のお目当てはもちろん軍隊です(笑)。

マリス・ヤンソンスはウィーンフィルのニューイヤーコンサートを3度も振っている人ですので当ブログの読者の皆さまはよくご存知でしょう。ヤンソンスはこれまでにもコンサートでもハイドンを取り上げていて、ハイドンのアルバムも2枚ほどリリースされていますので、得意としているのでしょう。2枚とも当ブログでもレビューしています。

2013/05/11 : ハイドン–交響曲 : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響のロンドン、軍隊
2011/08/11 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

レビューを読んでいただければわかるとおり、軍隊は素晴らしい演奏だったわけですが、それゆえ今回の来日時に軍隊を振ると知り、ウィーンフィルもベルリンフィルも来日するなか、あえてこのコンサートのチケットをとったわけです。そもそもウィーンフィルはウィーンで聴いてますし、ベルリンフィルもはるか昔ですが、カラヤン時代の来日公演を聴いていますが、バイエルン放送響は一度も生できいたことがないということもこのコンサートのチケットをとった理由の一つ。そして、響きのいいミューザ川崎が会場だったのもありますね。

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ということで期待のコンサート。この日は土曜ゆえ、開演時間に駆けつけるという必要もなく、ゆったり出かけて、開演の1時間前にはホールに到着。

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都心の平日のコンサートは開演30分前に開場が定番ですが、1時間前に開場ということで、ホールに入ってのんびりすることにしました。

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土曜日ということで皆さん早めに到着しているようで、すでにホワイエではコーヒーやビールなどを楽しんで談笑している方多数。こちらはいつものように、ワインとサンドウィッチなどで軽く腹ごしらえ。

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この日の席は指揮者の正面、パイプオルガンの真下の席。オケに近い割には安い席です。日本のオケとはチケット代が違いますので座席も重要です(笑)。 ミューザ川崎はステージのまわりを客席が取り囲むヴィンヤード型ですが、音響効果を狙ってか、左右非対称に渦巻きのように客席が取り囲む構造。ステージ正面の席は席数が少なく、ステージがほぼホールの中央にある感じがよくわかります。これがこのホールの響きが良いことのに繋がっているのでしょう。ステージ上には後半のアルプス交響曲用の大編成のオーケストラ用の打楽器やオルガンなどがところ狭しと並べられていますが、前半のハイドン用に多くがステージ脇に寄せられているのが微笑ましいところ。ホールの入りは9割くらいでしょうか。チケット代が高いせいか1階席の空きが目立ちました。

やがて定刻になり、オケのメンバーが登場。照明がゆっくり落ちて、ヤンソンスが登壇すると期待の大きさからか、盛大な拍手が降り注ぎます。

予想通り、軍隊の序奏はヤンソンスらしくビロードのような響き。フレーズが丁寧に面取りされて実に柔らかに響きます。主題に入るとギアチェンジして抜群の推進力。流石なのは木管陣。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットそれぞれ実にイキイキとした演奏。フレーズの躍動感が違います。皆大きくを体を揺らしながらイキイキとメロディーを奏でていきます。ヤンソンスの指揮はハイドンを得意としているらしく、フレーズごとに巧みに変化をつけ、特にアゴーギグの変化をかなり大きくとりながらもしっとりと音楽が流れるロマンティックなコントロール。しかも、力まず、全体の流れも見通しよく、気品を保っているので古典派のハイドンの演奏としても何ら違和感はありません。1楽章はハイドンの構成感の緊密さと、次々と繰り出される響きの多彩さがバランス良くまとまって流石のまとまり。
続く2楽章のアンダンテは、周到に磨かれた入り。美しいメロディーが一通り奏でられたあと、中盤から、ティパニ、トライアングル、シンバル、グランカッサが加わりますが、グランカッサはただ叩くだけではなく、中華鍋を洗うササラのようなもので、太鼓の胴をパシパシ叩いてリズムをとるんですね。コンサートで軍隊を聴くのは初めてのことなので、このあたりは視覚情報が重要です。クライマックスではやおら打楽器陣が炸裂するかと思いきや、意外に節度ある範囲での演奏。やはりここでもヤンソンス流の上品さが漂います。メヌエットに入る前にグランカッサなどを担当していた打楽器陣が上手のドアから撤収してしまいます。確か終楽章にも登場するはずだったのですが、、、
メヌエットはヤンソンスの緻密なコントロールの真骨頂。柔らかなのに起伏に富んだ表情で軽快に進みます。時折りレガートでアクセントをつけたり、ハイドンが書いたメロディーに仕込まれた機知に鋭敏に反応したコントロールで聴かせます。中間部の木管の色彩感豊かな演奏も絶品。ヤンソンスの棒に機敏に反応するオケの吹き上がりが見事。
そして、このクライマックスのフィナーレではオケの吹き上がりがさらに鮮やかになり、ヤンソンスの細かい指示にしたがってオケが俊敏に反応します。ティンパニのリズムがもう少しキレていればと思わせなくはありませんでしたが、オケのパート間をリレーしながら流れるメロディーの視覚的な面白さはアルバムではわからないもの。びっくりしたのはフィナーレの終盤、先ほど袖に下がってしまった打楽器陣が上手の客席のドアから行進してきて入場。ステージ前の客席最前列を行進しながらグランカッサとトライアングルなどを熱演するという粋な演出。この演出、ヤンソンス独自のものかハイドンの時代からのものかわかりませんが、打楽器陣の活躍に終演後場内は拍手喝采。なんとなくロンドンで初演された時も、ハイドンの粋な音楽に聴衆が沸き返ったとの情景が想像されるようでした。音楽とは楽しむものというハイドンの音楽の真髄を踏まえた見事な演出でした。

オケは精度で言えば日本のオケよりも劣るように感じるところもなくはありませんが、ハーモニーに宿るしなやかさや歌う表現力がやはり違いました。嫁さんも日本のオケの直裁な印象とは全く違うと感じ入っていました。おそらくそれもこれもヤンソンスの棒が豊かな音楽を引き出していたからに他なりません。

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休憩を挟んで後半は、アルプス交響曲。休憩中に先ほどまで脇にあった椅子や打楽器などを並べ直して、ステージが大オーケストラ用に生まれ変わります。開演前は気づかなかったのですが、ほとんどの椅子が、スタッキング用の椅子を2脚重ねていたこと。日本の椅子のシートハイは43〜44cm。海外のものは45〜46cm。おそらく体格の大きなオケの団員は椅子を重ねることでシートハイを上げていたのでしょう。

もちろん、アルプス交響曲は圧巻でした。前半のハイドンが古典の均整の範囲でのダイナミクスを聴かせたのとはことなり、今度は大規模オケがフルスロットルで炸裂します。この曲はベームの手綱を引き締めまくった辛口の演奏が刷り込み。他にもケンぺ、カラヤン、マゼールなどいろいろ聴いていますが、ヤンソンスの演奏は、色彩感豊かでダイナミックなもので、前半のアルプスの威容をスペクタクルに描くところの輝かしさは、ドイツ風の演奏とは異なり、純粋にダイナミック。ハイドンの音楽とは次元の異なる複雑なオーケストレイションを見事にコントロールしていましたし、中盤のメロディーが朗々と歌うところの圧倒的に流麗な感じもヤンソンスならでは。純ドイツ風の演奏ではなく、やはりヤンソンス流のしなやかさに包まれた演奏でした。

今回の席は指揮者の指示がよくわかるところで、またオケを上から俯瞰できたので、登山の場面での舞台裏のホルンの効果、カウベルやウィンドマシーン、サンダーマシーン、パイプオルガン、チェレスタなどの効果が手に取るようにわかりました。雷雨と嵐の場面でのウィンドマシーンはかなりの重労働。かなりの時間自転車のペダルのようなマシンの取手を変化をつけながら回しつづけなくてはなりません。

全22場面も終盤に至ると徐々に喧騒から耽美的な美しい描写に移り、オケが音量を落としながら静寂に吸い込まれるように終わります。ヤンソンスがタクトを下ろす前に拍手がフライングで、静寂が途切れてしまいますが、拍手は一旦途絶えて、ヤンソンスがタクトを下ろすと一斉にブラヴォー。やはり大オーケストラの迫力は生ならでは。そして響きのよいこのホールならではの素晴らしい響きを堪能できました。ヤンソンスも満足そうで、オケの奏者を代わる代わる讃え、何度も拍手に呼び戻されていました。

バイエルン放送響の来日公演で、どちらも独墺物の前半ハイドン、後半リヒャルト・シュトラウス。前半できりりとしたところを聴かせ、後半ではオケをフルに鳴らしきって実力を見せつけるなどなかなかよく考えられたプログラム。印象に残ったのはやはりヤンソンスのしなやかなコントロール力とそこから引き出されたオケの豊かな響き。日本のオケからここまで豊かなハーモニーが聴かれるかといえば、ことハイドンやリヒャルト・シュトラウスについて言えば、まだ少し差があるというのが正直なところでしょう。嫁さんも「やっぱり本場物は違うわね〜と関心しきりでした。



ミューザ川崎でのコンサート後の定番は、ホールの1階の牛タンやさん。

食べログ:杉作

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幸いすぐに入れて、まずはビール(笑) アルプス交響曲でアルプス登山を体験したような気分なので、ビールが沁みます。

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注文した牛タン定食はあっという間に出てきて、非常に回転がいいですね。仙台在住時には喜助の牛タンをよく食べたので、たまに牛タン定食が恋しくなります。このお店もテールスープに漬物、麦飯と本格仙台風で懐かしい味でした。オススメです!

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tag : 軍隊 リヒャルト・シュトラウス

ワシリー・シナイスキー/読響定期演奏会(サントリーホール)

昨日5月17日は読響の定期公演を聴きにサントリーホールへ。この日の指揮はワシリー・シナイスキーということでチケットをとった次第。学生時代にFM放送で聴いたプロコフィエフの5番の演奏があまりにも素晴しかったので覚えていた人ですが、そのシナイスキーが生で聴けると言う事に加えて、プログラムはプロコフィエフにリヒャルト・シュトラウスということで、ハイドンではないのにグッときたという次第。

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読売日本交響楽団:第537回定期演奏会

ワシリー・シナイスキー(Vassily Sinaisky)は1947年、ロシア東北部のコミ共和国生まれの指揮者。レニングラード音楽院出身で、卒業後、モスクワ・フィルハーモニー管弦楽団でキリル・コンドラシンの助手として指揮をはじめたとの事。1973年に西ベルリンで開催されたカラヤン・コンクールで金メダルを受賞し、その後、1991年から96年までモスクワフィルの音楽監督、2000年から2002年までロシア国立交響楽団(ソ連国立交響楽団の後身)の音楽監督、2007年から2011年までスウェーデンのマルメ交響楽団の首席指揮者、2010年から2013年までボリショイ劇場の音楽監督として活躍しています。読響には2007年、2011年と過去2回客演しているそうです。

協奏曲のヴァイオリンソロはワディム・グルズマン(Vadim Gluzman)という人。こちらははじめて聴く人。1973年、現在紛争地になってしまったウクライナ生まれのヴァイオリニスト。米ジュリアード音楽院の出身で、日本での評判は知りませんが、世界の有名オケとの共演歴は錚々たるものです。楽器はシカゴのストラディヴァリ協会から貸与された1690年製のストラディヴァリウスということでした。

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この日は土曜だったので開演は18:00。平日ではないので、早めにアークヒルズに到着し、向かいのオーバッカナルのテラス席で風を楽しみながら一杯。夕方の爽やかな風が気持ちよい時間帯です。程なくサントリーホールの開場を知らせるパイプオルゴールが鳴り、ホール前が賑わいます。

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人の流れが一段落したところで入場。席はお気に入りのRA席です。この日のプログラムは下記のとおり。

プロコフィエフ:交響曲第1番「古典」
プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番
リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
リヒャルト・シュトラウス:歌劇「ばらの騎士」組曲

今日は8割すこしくらいの席の埋まり具合でしょうか。日本での知名度は今ひとつなのでしょう。今日来られなかった方は惜しいことをしました!

1曲目のプロコフィエフの1番は好きな曲。父がよく聴いていたのを思い出します。前衛で知られたプロコフィエフが「もしもハイドンが今でも生きていたら書いたであろう作品」として作曲した曲。ワシリー・シナイスキーは、拍手に迎えられて入場すると、さっと手を上げ、指揮棒なしでさっと合図を出して入ります。この人がこれほど指揮が上手いとは知りませんでした。体全体をゆらして、次々と奏者に非常にわかりやすく指示を出していきます。特に第1ヴァイオリンへの指示は綿密。抑えるところをかなり明覚に指示してプロコフィエフの諧謔的なメロディーにクッキリとメリハリをつけていきます。ヴァイオリンの軽やかなフレーズはヴァイオリンパート全員がシナイスキーの指示に従って異次元の軽やかさで弓を運びます。遥か昔にFM放送で聴いた鮮烈なイメージそのままでした。実に巧みなオーケストラコントロール。読響も厳しい練習を経たのか、今日はいつもよりも精度が上がりリズムのキレは抜群。そしてロシア人らしくここぞというときの迫力は流石。1楽章の小気味良い展開、2楽章の穏やかな前衛、ハイドンがメヌエットを常用した3楽章はガヴォットも本質的に機転が利いて、古典的なものへのオマージュになってます。そしてハイドンが得意とした複雑にメロディーをからめたフィナーレは、その形骸を受け継ぎ、コミカルなメロディーをテクニカルにからめた面白さに昇華。最後の吹き上がるようなアタックのキレでホールが吹き飛ばんばかり。シナイスキーのクライバー張りの見事な指揮と、読響の見事な演奏でプロコフィエフ前衛がホールに充満。1曲目から、これからさらに盛り上がる素晴しいコンサートの幕開けにふさわしい興奮に酔います。

前半2曲目はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲2番。個人的にはほとんどなじみのない曲ゆえ、かなり新鮮に聴く事ができました。作曲は1935年。先の古典交響曲が1916~17年ということで、だいぶ後の作曲。
1楽章はいきなりソロから入る珍しい入り。ソロのワディム・グルズマンはシナイスキーが連れてきた人でしょうか、派手さはありませんが大きな体を目一杯使って、楽器を非常に良く響かせる人。彼の使っているストラディヴァリウスは素晴しい音色。サントリー・ホールに楽器全体から発散される美しい胴鳴りが響き渡り、ちょっと聴いたことがないくらいいい音。
曲は難解というより、プロコフィエフ独特の象徴的な美しいメロディーをキーにした展開ではなく、様々な要素が渾然一体となって迫ってくるような曲。グランカッサ、トライアングル、カスタネットなどが使われ、特にグランカッサはかなり活躍。3楽章の最後には不思議なメロディーがグランカッサに乗って繰り返されプロコフィエフらしい前衛的な響きをつくっていました。グルズマンはこの難曲を軽々と弾きこなし、万来の拍手を浴びていました。何度かのカーテンコールの後、アンコールにはバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ1番の冒頭のアダージョを披露。響きの渦のようなプロコフィエフの興奮から一転、静謐な空間にストラディヴァリウスの惚れ惚れするような響きが満ちます。楽器の響きを活かして、鋭さはほどほど、バッハのメロディーを淡々と奏でるスタイル。堅実な演奏に好感を持ちました。なかなかいい感覚の持ち主ですね。

休憩の間に、ステージ上はこれからはじまるリヒャルト・シュトラウスに備えて席が増やされ、サントリーホールのステージが奏者席で埋め尽くされます。

後半最初の「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は圧巻の出来でした。シナイスキーの巧みなコントロールで、細かいメロディーが複雑に交錯するこの変化に富んだ交響詩が一巻の絵巻物のような構築感でまとまりました。個々のフレーズのそれぞれ明解な表情を強弱硬軟織り交ぜながら組み上げていく手腕は見事というほかありません。そしてここぞというところでのティンパニの炸裂するような一撃が加わり大オーケストラから風圧のような大音響が轟き観客を圧倒しました。プロコフィエフ目当てで来たのですが、リヒャルト・シュトラウスは完全にそれを上回る出来。最後の爆発の風圧をブラヴォーがかき消します。いやいや、今まで聴いたどのアルバムのティルよりも見事な演奏。シナイスキーのオーケストラコントロールの腕前の見事さは素晴しいものがあります。

そして、ハープやチェレスタのメンバーが加わり、最後の薔薇の騎士組曲。前曲の興奮冷めやらぬ中、シナイスキーは登場の拍手が止まぬ前から、まるでカルロス・クライバーのようにいきなり曲をはじめます。バラの騎士はカルロス・クライバーのはじめの序曲から陶酔の絶頂にいきなり放り込まれる素晴しいDVDが刷り込みですが、めくるめく感じはクライバー以上。オケの精度も完璧で大オーケストラの迫力と相俟って、前曲を超える絢爛豪華な絵巻物のような陶酔感。前半のプロコフィエフ同様、抑えるところを効果的に使って力任せではない深い陰影と、ロシア人らしいヴァナキュラーな迫力、そして曲がもつ華やかさと陶酔感が高い次元でまとまった素晴しい演奏でした。ワシリー・シナイスキー、類いまれなバトンテクニックで大オーケストラを掌握して、ホールをびりつかせる弩迫力とリヒャルト・シュトラウスの陶酔で観客を魅了していました。もちろん最後はブラヴォーの嵐。気さくにカーテンコールに応じ、主だった奏者をにこやかに紹介する様も人柄がでているようで微笑ましかったです。気さくそうに見えて、読響をこれだけの精度でコントロールするあたり、そうとう練習には厳しいのではないかと想像しています。今日の読響は私の聴いた中ではオケの精度は最高の出来でした。シナイスキー、またの来日の際には行かねばなりませんね。



さてさて、コンサートも終わり、最近お気に入りのカジュアルなイタリアンで反省会です。

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食べログ:プレーツ アーク森ビル店

ここはサントリーホールの真向かいのお店。カジュアルなお店で、コンサートがはけたあとでもすぐに入れて、料理もすぐにでてきて、そこそこいい味。そのうえセットメニューはワインとコーヒーまでついてかなりカジュアルなお値段なので、コンサート後にぴったりなんですね。

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前菜盛り合わせ。鴨のハムがワインのつまみにいいですね。

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パスタはミートソースをチョイス。胡椒が利いてこれも悪くありません。

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ピッツァはマリナーラ。

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そして別に頼んだホエー豚のロースト。これは豚の旨味が濃厚で美味かった。

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そして嫁さんが頼んだデザートのプリンアラモード。ノックアウト(量)です(笑)

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ひとしきりのんびりと食事を楽しんで、サントリーホール前に戻ると、すでに人は捌け、静かな時間になっていました。いいコンサートにのんびりと食事を楽しんで、いい週末でした。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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