【新着】フランソワ・ルルーのリラ協奏曲、オーボエ協奏曲(ハイドン)

まだまだ新着アルバムが続きます。

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フランソワ・ルルー(François Leleux)のオーボエと指揮、ミュンヘン室内管弦楽団(Münchener Kammerorchester)の演奏で、 フンメルの序奏、主題と変奏(Op.102)、ハイドンのリラ協奏曲2曲(Hob.VIIh:4、VIIh:2)と伝ハイドンのオーボエ協奏曲の4曲を収めたアルバム。収録は2014年2月8日から10日にかけて、ミュンヘンのバイエルン放送第1スタジオでのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。

このところSONY CLASSICALより続々とハイドンの新録音がリリースされています。このアルバムもそのうちの1枚。オーボエ奏者のフランソワ・ルルーを看板にしたアルバムですが、不思議なのは彼よりネームバリューのありそうなエマニュエル・パユがフルート奏者として参加しているのに、まったく写真が露出していないこと。レーベル間の大人の事情によってこうなっているのでしょうか(笑)

フランソワ・ルルーはジャケット写真では貫禄ある姿に写っていますが、意外に若く、1971年、フランス北部のベルギー国境の街、クロワ(Croix)生まれのオーボエ奏者。パリ国立高等音楽舞踏学校でオーボエの名手、ピエール・ピエルロらに師事、18歳でパリオペラ座管弦楽団の主席オーボエ奏者となります。トゥーロン国際コンクール、ミュンヘン国際音楽コンクールで1位となり、1992年から2004年までバイエルン放送交響楽団の主席奏者を務め、現在はヨーロッパ室内感のソロ・オーボエ奏者とのこと。教育者としてはミュンヘン音楽演劇大学の教授として活躍しているとのこと。日本では東京都響、新日本フィル、大阪フィルなどと共演しているということでご存知の方もあるでしょう。

そのルルーが、ハイドンとその後任となったフンメルの曲を収めたアルバムということで、アルバムタイトルは「エステルハージ家の協奏曲」ということで、ハイドン、フンメルが仕えたエステルハージ家を軸にしたアルバム。

最初に置かれたフンメルの序奏、主題と変奏Op.102はもともと4手のピアノために1822年に書かれた曲を2年後にオーボエと管弦楽のために書き直されたものとのこと。劇的に始まりシューベルトのような穏やかなメロディーの美しさが特徴の曲。ルルーの表情豊かなオーボエによってフンメルのメロディーメーカーの才が浮かび上がります。流石にルルーのアルバムだけあって、オーボエの魅力が際立ちます。音階のデリケートな表現と鮮やかなキレが見事。

ハイドンのリラ・オルガニザータ協奏曲のリラ・オルガニザータはルルーのオーボエと、パユのフルートによって奏でられます。これまで取り上げたリラ・オルガニザータ協奏曲の演奏をリンクしておきましょう。

2012/01/11 : ハイドン–協奏曲 : シュツットガルト・ソロイスツのリラ・オルガニザータ協奏曲、オルガン協奏曲
2011/09/02 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲
2011/04/29 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

Hob.VIIh:4 Concerti per la lira organizzata [F] (No.2) (1786)
アレグロ、アンダンテ、フィナーレの3楽章構成。アレグロは手回しオルガンのようなおもちゃっぽい響き炸裂。オーボエとフルートのソロは神がかり的な精度でリラ・オルガニザータの音色を再現。ハイドンによるユーモラスなメロディーが次々と湧き出してくる快感に酔いしれます。ソロとオケの一体感。そして転調しながら陶酔の彼方へ。アンダンテはしっとりと落ち着いた演奏。中間部の静けささえ感じる瞬間が秀逸。そしてコミカルさが際立つフィナーレへ。フレーズ毎にテンポや表情を巧みに変化させながらこの曲の面白さを存分に表現しようとういうことでしょう。先日取り上げたノリントンのパリセットと同様鮮明な録音が演奏の面白さを引き立てます。

Hob.VIIh:2 Concerti per la lira organizzata [G] (No.3) (1786)
ヴィヴァーチェ・アッサイ、アダージョ・マ・ノン・トロッポ、ロンドの3楽章構成。いつもながらハイドンの同時期に作曲された曲の変化の巧みさに唸ります。リラ・オルガニザータの音色の面白さを推進力に昇華させて聴かせようということでしょうか。オケのノリノリの推進力とオーボエとフルートによるユーモラスな音色の対比の妙。ゾクゾクするような臨場感。音楽の持つ多彩な面白さを感じないわけにいきません。2楽章はざらついたオケの響きとリズムの溜めが意表をつきます。よく聴くとフルートのパユの音色の美しさを感じるのですが、意識的にか、裏方にまわってオーボエのルルーを引き立てるのに徹しています。結果的にルルーの美音が際立ちます。3楽章は意外にあっさりとした表情ですが、それによって音楽自体の面白さが浮かびあがります。ところどころに挟まれたオーボエの修飾音のキレのよさにハッとさせられます。

Concerto per il oboe [C] (Hob.VIIg.C1)
最後は伝ハイドン作のオーボエ協奏曲。最近何枚かアルバムを取り上げています。古典的な均整のとれた曲ゆえ、ハイドン作ということで長らく認識されてきた曲です。この演奏でもオケのキレの良さが印象的。小編成ながら、ゴリっとしたオケの低音の迫力を存分に活かした演奏が痛快。リラ・オルガニザータ協奏曲が曲をうまく生かした変化に富んだ演奏だったのに対し、こちらはややオーソドックスな入り。ただしオーボエもオケもキレキレで実に面白い。鮮やかに吹き上がるオケ、余裕たっぷりに間をとって入るオーボエの粋なソロ、そして物憂い翳りを感じさせるオーボエの表情の変化。ルルーの自在な指揮とソロの魅力に釘付けです。非常にレベルの高い演奏。古典的な曲の垢がはがされ鮮やかな姿が蘇ります。1楽章最後のカデンツァではオーボエの宇宙への交信的信号音のような音を聴かせてビックリさせます。
アンダンテはオーボエの美音の独壇場。オーボエの名手といえばホリガーが有名ですがホリガーが天上に昇るような透明感を感じさせるのに対し、ルルーのオーボエは豊かな音色と濃いめの起伏が特徴という感じでしょうか。このアンダンテでもオーボエの美音を色濃く感じさせる演奏で圧倒。
3楽章はオーボエのソロと吹き上がるオケの対比を変幻自在に繰り返し、陶酔感へ誘います。音階の滑らかさとキレに圧倒されます。やはりルルーのテクニックに釘付け。最後はゴリっと締まって終わります。

はじめて聴くフランソワ・ルルーによるハイドンのオーボエが主役の曲3曲を収めたアルバム。いかつい姿をジャケットに晒すだけあって、ルルーのテクニック、音色は素晴らしいものがあります。リラ・オルガニザータ協奏曲のコミカルな魅力、そして伝ハイドンのオーボエ協奏曲の力感漲る演奏も見事。ソリストしてもオケのコントローラーとしての指揮者としても見事な手腕でした。ハイドン(伝ハイドンを含む)の3曲はいずれも[+++++]としておきます。

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tag : リラ・オルガニザータ協奏曲 オーボエ協奏曲

【新着】コワン&アンサンブル・バロック・ド・リモージュのリラ協奏曲など

弦楽四重奏曲をちょっとお休みして、実に楽しい新着アルバム。このアルバム、ハイドン好きな方に是非聴いていただきたいですね。

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クリストフ・コワン(Christophe Coin)指揮のアンサンブル・バロック・デ・リモージュ(Ensemble Baroque de Limoges)の演奏で、リラ・オルガニザータのための曲を集めたアルバム。ハイドンのノットゥルノ2曲(Hob.II:25、II:26)、リラ・オルガニザータ協奏曲(Hob.VIIh:3)、モーツァルトの作とされてきた2つのリラ・オルガニザータのための協奏曲、ヴィンツェンツォ・オルジターノのシンフォニア第3番、イグナツ・プレイエルの2つのリラ・オルガニザータのためのノットゥルノなど6曲。収録は2008年10月、フランス中部のリモージュ近郊のラ・ボリ(la Borie)のスタジオ・ラ・ボリでのセッション録音。伝モーツァルトの曲は2009年9月13日、アイゼンシュタットのエステルハージ宮殿のハイドン・ザールでのハイドンフェスティバルのライヴです。レーベルはリモージュのLA BORIE。

アルバムにつけられたタイトルは「ナポリのリラ」。ナポリの王、フェルディナンドIV世が好んだリラ・オルガニザータという楽器のために、王がハイドンを含む同時代の作曲家に依頼して作曲させた曲を集めたアルバムです。リラ・オルガニザータという楽器の解説は、以前の記事をご参照ください。

2012/08/26 : ハイドン–室内楽曲 : ラルキブデッリ、モッツァフィアートによるナポリ王のための8つのノットゥルノ
2012/01/11 : ハイドン–協奏曲 : シュツットガルト・ソロイスツのリラ・オルガニザータ協奏曲、オルガン協奏曲
2011/09/02 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲
2011/04/29 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

珍しい曲にしては意外にいろいろ取りあげていますね。

リラ・オルガニザータの曲は、通例、ハイドン自身の編曲により、フルートとオーボエに置き換えた版で演奏されることが多いのですが、このアルバムでは、リラ・オルガニザータを復元して演奏しているようです。演奏の様子は上のHMV ONLINEのリンクをご覧ください。

実は手元には音楽の友社の「新版ハイドン」の著者としておなじみの大宮真琴さんの著した「ハイドン全集の現場から」という本があり、これはハイドンのリラ・オルガニザータ曲の研究書です。少し紐解いてみましたが、徐々に大森林のような情報と緻密な論考が展開され、とても日頃のレビューのために読めるような平易なものではありません。この本を紐解いたのは、「新版ハイドン」でもリラ・オルガニザータと言う楽器が弦楽器のような姿だと書かれているのが、先のHMV ONLINEの写真では四脚の据え置き型の楽器のように見えることに疑問をもったから。大宮さんの研究書を読んでも四脚のリラ・オルガニザータは出てきません。リラ・オルガニザータは農民や女性が弾くための楽器として、奇行で知られたナポリ王フェルディナンドIV世が好んだということで、元は弦楽器のような姿の楽器を、演奏が容易なように四脚の形に復元したということでしょうか、、、

素人があまり専門的な領域に踏み込んでケガをしてもいけませんので(笑)、純粋に音楽として楽しむ事に致しましょう。

Hob.II:25 / Notturno No.1 [C] (1789/90)
行進曲 - アレグロ - アダージョ - フィナーレという4楽章構成。まさに行進曲のリズムから入ります。フレーズをかなり細切れにして楽器間でつないでいきます。リラ・オルガニザータはまさに手回しオルガンのようなコミカルな音色。ハイドンの協奏曲のソロパートは楽器の音色に対する鋭敏な感覚にうらづけられたメロディーの面白さがあることが知られていますが、まさに、この曲はリラ・オルガニザータの音色を知って書かれたとよくわかる曲。リラ・オルガニザータのおとぎの国のような音色に耳を奪われます。
アレグロに入ると少し落ち着いて聴けるようになります。楽しげな演奏のためかどうか、リズムのキレはさほどではなく、手作りの音楽風の演奏。まさに仲間内で演奏者同士が楽しんでいるような風情です。アダージョに入ると一層その感を強くします。フィナーレの早いパッセージではリラ・オルガニザータの不思議な音色の面白さが際立ちます。楽器の構造からか、音階を奏でるたびに何かパタパタ鳴っているのが微笑ましいですね。このフィナーレはハイドンの複雑な音階が絡み合う成熟した筆致。なかなか充実した曲ですね。

Hob.II:26 / Notturno No.2 [F] (1789/90)
伝モーツァルトの曲を挟んで2曲目のノットゥルノ。今度は3楽章構成。リラ・オルガニザータによる静かな序奏に続いてすぐに軽快なディヴェルティメント風の曲。やはり木管楽器ではなくリラ・オルガニザータ自体の手回しオルガンのような音色だからこそ醸し出される独特の雰囲気が楽しいですね。
2楽章のアダージョは2台のリラ・オルガニザータがまるでリコーダーのアンサンブルのよう。つづくフィナーレはリラ・オルガニザータの軽快なパッセージを主体とした短い曲ですが、終盤のハッとするような転調が効果的。

この後置かれたヴィンツェンツォ・オルジターノのシンフォニアが実に面白い。こればかりは聴いていただかなくてはわからないですね。曲想はさほど複雑でないのですが、センスがいいというか、聴いていて楽しい曲。終楽章はトルコ趣味のような曲。この曲もリラ・オルガニザータの面白さをかなり活かした曲。

Hob.VIIh:3 / Concerti per la lira organizzata [G] (No.5) (1786/7)
このアルバムの目玉、リラ・オルガニザータ協奏曲。やはりノットゥルノとはソロの引き立てかたが違います。リラ・オルガニザータのユニークな音色からかなりのインスピーレーションを得ています。途中宇宙との交信のような不思議なメロディーが現れたり、音程の上がりきらないところを逆に面白く聴かせたりと、聴かせどころがふんだんにちりばめられています。
2楽章は軍隊の2楽章と同じメロディー。本来ならば打楽器炸裂なところですが、逆にリラ・オルガニザータのコミカルな音色で奏でられると、紙芝居で戦争の物語を見ているような気分になります。ナポリ王を喜ばせようと仕込んだネタでしょうか。
フィナーレは穏やかでしっとっりとしたリラ・オルガニザータの音色に吸い込まれるような曲。そこそこの構成感と華やぎがある曲。1楽章からの展開を考えると、ちょっと不思議な締め方ですね。

このあとプレイエルの曲でアルバムが終わりますが、これも楽しげな曲。

このアルバム、ナポリ王フェルディナンドIV世が当時の何人かの作曲家に自分の好きなリラ・オルガニザータのための曲を作曲してもらったものを収めるという企画もの。このアルバムからつたわるのは、農民の楽器、リラ・オルガニザータを愛したナポリ王の趣味に合わせたのか、ハイドン以外の作曲家の作品も、非常に楽しげで、音楽を演奏する悦びを感じられるような曲ばかりであること。演奏のほうもそれを狙ったのか、精緻というより、かなりカジュアルな印象。この企画にしてこの演奏ということでしょう。評価は全曲[++++]としますが、アーティスティックという視点では捕らえきれない面白さがあるアルバムです。ハイドン好きな皆さんは気に入ってくださると思います。

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シュツットガルト・ソロイスツのリラ・オルガニザータ協奏曲、オルガン協奏曲

マイナー盤が続きますがご容赦を。やはり未知のアルバムを聴くのはワクワクします。

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フランツ・レールンドルファー(Franz Lehrndorfer)のオルガン、ヒューゴ・ルフ(Hugo Ruf)のリラ・オルガニザータ、シュツットガルト・ソロイスツの演奏で、ハイドンのリラ・オルガニザータ協奏曲2曲(Hob.VIIh:2、VIIh:4)とオルガン協奏曲(Hob.XVIII:1)を収めたアルバム。収録は1970年とだけ記載されています。レーベルはTUXEDO MUSIC。

このアルバムはかなり以前にディスクユニオンで手に入れたもの。未聴盤ボックスに長らく入ってましたが、正月休みに聴いたところ、癖はありますが、なかなか面白い演奏ということで取りあげるに至った次第。

オルガンのフランツ・レールンドルファーは1928年ザルツブルク生まれのオルガニスト。ミュンヘン州立大学で教会音楽とオルガンを学び、その後ドイツのレーゲンスブルク大聖堂少年合唱団の指導者となり、その後母校のミュンヘン州立大学の教職につき1993年の定年まで働いたとの事。

リラ・オルガニザータを担当したヒューゴ・ルフは1925年ドイツ生まれのハープシコード奏者。フライブルク音楽大学でハープシコードを学び、その後ケルン音楽学校で生涯教職にあったとのこと。私も知りませんでしたがヘルムート・コッホとともにC. P. E. バッハの20世紀における復興に貢献した事で知られた存在との事。1999年に亡くなっています。

リラ・オルガニザータ協奏曲は前に取りあげていますので曲の解説、楽器の解説などはリンク先をご覧ください。

2011/09/02 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲
2011/04/29 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

Hob.VIIh:2 / Concerti per la lira organizzata [G] (No.3) (1786)
冒頭からリラ・オルガニザータのサーカスの手回しオルガンのような音色とそれにマッチしたコミカルなメロディが独特の雰囲気にいきなり引き込みます。ただし、このアルバム録音が非常に変わっていて、古びてちょっと刺激が強く、位相がズレているような不思議な音。昔の機械でわざと安っぽい音を狙って録ったのかもと思わせる不思議なもの。音のエッジは感じるんですが、ざらつき気味でお世辞にも良い音とは言えません。ただし、それだけならこのアルバムは取りあげていません。なぜかこの安っぽい音が曲に非常にマッチして、えも言われぬ雰囲気を醸し出しているんですね。特にリラ・オルガニザータの音が実に安っぽくていい(笑) 弦楽器の演奏の精度も格別いい訳ではありませんが、こちらも安っぽさがいい。強いて言えばおとぎの国の音楽のような感じ。リズム感をわざと強調したようなメリハリのある演奏。
2楽章のアダージョは穏やかな気分になるというよりは、骨っぽい音に引っ張られおもちゃ箱の中身のような不思議な印象。
フィナーレはプレストからですが、遅めのテンポでリラの不思議な音色。孤高な感じがして、なぜか魅力ある演奏。この印象は言葉で説明するのは難しいですね。

Hob.VIIh:4 / Concerti per la lira organizzata [F] (No.2) (1786)
前曲より気持ち音質が改善していますが、基本的な傾向は同様、おとぎの国系です(笑) 以前の記事でも触れましたが、ゆっくりとメリハリをつけて弾くので、学校の練習曲のように聴こえます。作曲を依頼したナポリ王フェルディナンド4世が演奏を楽しむ姿が想像できますね。
2楽章のアンダンテはようやく詩的な雰囲気がでてきて本格的な曲の感じが出てきました。ヴァイオリンとリラの掛け合いと間の手を入れるホルンの響きの妙が楽しめます。ヴァイオリンの音色はヨゼフ・シゲティのようなテンションの強いもの。
フィナーレはキリッとしたテンポで非常に安定した演奏。前曲でざらついたりばらついた演奏がうそのように、落ち着いて精度の高い演奏。安定感のあるいい演奏になりました。最後はこれぞフィナーレと言う演奏で終了。

Hob.XVIII:1 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [C] (1756)
ホグウッドの名演が耳に残るオルガン協奏曲。この曲もまた録音が変わってます。前曲で一旦持ち直した録音ですが、少し歪み感のある音で、高音のキレはあるんですが、鋭く薄い音。オルガンのメロディが鮮明に録られているんですが、実体感が希薄な音。実に不思議なアルバムです。オルガンの演奏はこうした録音を通して聴く事を脳内補正してみると、意外といい演奏。レールンドルファー、指導者として長年働いてきただけに非常に安定感のある演奏。ただ、オケとのスリリングが掛け合い等、この曲の魅力がうまく弾き出せているかというと、そうでもありません。どちらかというと手堅く安定感のある演奏。やはりホグウッドの名演を基準に聴いてしまっているのかもしれません。
2楽章のラルゴにはいるとオルガンの音階の部分でオルガンの弁の音でしょうか、フリクション音まで聴こえる鮮明さ。どんな楽器でどう弾いているのか非常に気になる録音。このアルバム、ズバリ不思議な録音が聴き所です。演奏は前楽章同様安定感あるものですが、変なところが気になって今一音楽に集中できません(笑) カデンツァは未知との遭遇の宇宙人との交信の場面のような不思議さも漂うもの。
そしてフィナーレはオルガンの音色が変わり、オルガンのソロパートは非常に聴き応えのあるもの。オケの人数が極端に少ない事がダイナミクスが感じられない理由でしょう。かえってオルガンの鮮明さを際立たせることになっています。まさにオルガン自体を聴くべき演奏ですね。

このアルバムは所謂珍盤に属するものでしょう。リラ・オルガニザータ協奏曲のある意味このアルバムでしか聴けない不思議なサウンドは非常にユニークなもの。そしてオルガン協奏曲の演奏もどことなくリラ・オルガニザータ協奏曲とのカップリングを意識して弾かれているように感じます。評価はリラ・オルガニザータ協奏曲の2曲目が[++++]、1曲目とオルガン協奏曲は[+++]とします。このレビュー記事を読んで、この演奏を聴いて見たいと思う人は、相当なハイドンマニアの方でしょう(笑)

最後にホグウッドのオルガン協奏曲の記事のリンクを張っておきましょう。題名はトランペット協奏曲ですが、ちゃんとオルガン協奏曲にも触れています。

2010/09/21 : ハイドン–協奏曲 : ホグウッドのトランペット協奏曲

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tag : オルガン協奏曲 リラ・オルガニザータ協奏曲 珍盤

【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲

9月最初のアルバム。

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ウォルフガング・シュルツ(Wolfgang Schulz)のフルートとトーマス・インデアミューレ(Thomas Indermühle)のオーボエによって再現されたリラ・オルガニザータという楽器のための協奏曲5曲と同楽器のためにかかれたノットゥルノ8曲を収めた3枚組のアルバム。演奏はカメラータ・シュルツ(Camerata Schulz)。収録は協奏曲のほうが2009年10月7日~11日ウィーンのプファール・ホール、ノットゥルノのほうが2009年2月14日、16日、おなじくウィーンのスタジオ・バウムガルテン。レーベルはハイドンのマイナーな室内楽の収録に執念を感じる日本のcamerata。今日はこの中からリラ・オルガニザータ協奏曲を取りあげます。

ウォルフガング・シュルツはウィーンフィルの首席フルート奏者として知られた人。ウィーンフィルでの活動の他、ソリストとしてや室内楽のメンバーとしても活躍。1979年からはウィーン国立音楽演劇大学の教授を務めているそう。皆さん顔をみればすぐわかる人だと思います。いつものようにウェブサイトへのリンクを張っておきましょう。

Official Homepage - Wolfgang Schulz(独英文)

オーボエのトーマス・インデアミューレは1951年スイスのベルン生まれ。フライブルク音楽大学でオーボエの神様ハインツ・ホリガーに師事、その後オランダ室内管弦楽団、ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団のオーボエ奏者を務めた。その後各地のコンクールで入賞するなどして有名になり、ソリストとして活動するように。1984からチューリッヒ音楽大学、1989年からカールスルーエ国立音楽大学で教鞭をとっている。

カメラータ・シュルツは2002年、ウォルフガング・シュルツによって創設された室内楽団。シュルツ一族、シュルツ門下の奏者がメンバー。フランスのボヌール音楽祭の常連メンバーであり、ヨーロッパの各都市でコンサートを開いている。今年の10月に来日予定とのこと。

リラ・オルガニザータと言う楽器とこの協奏曲について、ライナーノーツの記事を要約して紹介しておきましょう。リラ・オルガニザータはハンドルをまわすことで回転板が動に張った弦を擦って音を出す手回しヴァイオリンとシンプルな小型パイプオルガンを組み合わせたユニークな構造の楽器。音色はフルートとヴァイオリンが同時に音を出しているような音とのこと。ハイドンはこの楽器の演奏を得意としていたナポリ王フェルディナンド4世からこの楽器を使った曲の作曲の依頼を1786年に受けて書いたのが今日取り上げるリラ・オルガニザータ協奏曲5曲。ただし、その特殊性ゆえか楽器自体はすぐに廃れてしまったとのこと。

ナポリ王フェルディナンド4世は国王であるにも関わらず浮浪者とつきあうなどの奇行で知られた人。大衆楽器であった手回しヴァイオリンとパイプオルガンを組み合わせたこの楽器に興味をもったわけでしょう。国王はこの楽器の奏法をノルベルト・ハドラヴァという人に教わり、国王がハラドヴァと一緒に演奏できるように様々な作曲家に2台のリラ・オルガニザータのため協奏曲の作曲を委嘱。この5曲もこのような経緯で作曲されたと推定されるとのこと。

ハイドンはご存知のようにバリトンなど変わった楽器のための曲もずいぶん書いていますが、それらの曲の素晴らしさを伝えるため、最近様々な再現の取り組みがされているようです。リラ・オルガニザータのためのノットゥルノではリラ・オルガニザータパートをハイドン自身によってフルートとオーボエに置き換えた版が存在し、この協奏曲もその例に習ってフルートとオーボエによって再現したもの。リラ・オルガニザータという楽器自体は音の強弱の変化をつけにくいようで、フルートとオーボエによる演奏の方が聴き映えがするとの指摘もあります。

Hob.VIIh:1 / Concerti per la lira organizzata [C] (No.1) (1786)
1楽章はハ長調で晴朗な愉悦感の塊のような曲。リラ・オルガニザータの入門曲として注文された曲と捉えると、他の目的で書かれた曲とは異なり、楽しく演奏できる曲というのが狙いであり、この楽しげなメロディーは合点がいきます。2楽章にアンダンテ、フィナーレは再び愉悦感溢れる快活な曲。フルートのシュルツとオーボエのインデアミューレは癖のない自在な演奏。camerataのアルバムにおおい自然なプレゼンスの録音。練習曲とまではいきませんがそれに近い素朴な曲。

Hob.VIIh:2 / Concerti per la lira organizzata [G] (No.3) (1786)
2番はすこし音符が入り組んでいるのでしょうか、国王と先生の掛け合う姿想像できるような楽しげな演奏。演奏も無欲な非常に自然なもの。

Hob.VIIh:3 / Concerti per la lira organizzata [G] (No.5) (1786/7)
3番は以前ブリュッヘンとモーツァルテウム管の演奏を取りあげました。1番に非常に近い曲想。2楽章は聴き慣れた軍隊交響曲の2楽章をもとにしたもの。脳内では軍隊の行進の響き渡るパーカッションを補って聞きます(笑)

Hob.VIIh:4 / Concerti per la lira organizzata [F] (No.2) (1786)
4番はこれまでの中で最も快活な推進力を感じる演奏。国王が演奏に興じる姿が目に浮かぶよう。

Hob.VIIh:5 / Concerti per la lira organizzata [F] (No.4) (1786/7)
これまでの中で一番曲想の変化が巧み。やはりすこし後の曲だけ合って最初のころのものとは少し異なり成熟を感じます。この曲の2楽章、3楽章は交響曲89番の2楽章と4楽章に転用されたとのこ。

以上5曲を通して聴くと一般のハイドンの曲よりも国王のための練習曲という雰囲気がひしひしと伝わってきます。シュルツとインデアミューレの自在な楽器さばき、バックのオケとの掛け合いなど室内楽の素朴な楽しみを存分に堪能できます。評価は全曲[++++]としておきます。それなりに素晴らしい演奏ですが、演奏が突き抜けているというものでもありませんので、この評価としました。

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ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

今日はブリュッヘンのライヴ。

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フランス・ブリュッヘン(Frans Brüggen)指揮のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の演奏によるハイドンのリラ・オルガニザータ協奏曲(Hob.VIIh:3)、交響曲84番、そしてモーツァルトの交響曲38番「プラハ」の3曲を収めたアルバム。収録は1995年8月20日、ザルツブルクのモーツァルテウム大ホールでのライヴ。

このうち冒頭のリラ・オルガニザータ協奏曲について。いつもの大宮真琴さんの「新版ハイドン」を紐解いてみると、当時のナポリ王フェルディナンド四世が、自ら得意としていたリラ・オルガニザータのための協奏曲の作曲をハイドンに依頼したのに対しハイドンが1786年に作曲したもの。現在5曲が残され、このアルバムに含まれる曲はそのうちの1曲。そもそもリラ・オルガニザータとは、大型のヴィオラに似た形状で、内側に把手でまわす気の輪車があり、この輪車が下から現に接触して振動させる仕組み。弦は直接指で押さえず、反対側から鍵(キー)で操作されれう木製のブリッジで抑えるようになっている。鍵はこの役割だけでなくオルガンのふいごのような役割をもつ。要は弦楽器とオルガンの間の子のようなものでしょう。

滅多に演奏されることがなさそうなこの曲ですが、ライナーノーツによれば通常はフルートとオーボエで演奏されることが多いとのことですが、ブリュッヘンはこの演奏にあたり、本物のリラ・オルガニザータにより近づけるためブロックフルーテとガンバを選んだとのこと。ということでこのアルバムでは2台のブロックフルーテと2台のガンバによってリラオルガニザータが再現されています。

リラ・オルガニザータ協奏曲(Hob.VIIh:3)1786年作曲
録音は適度にライヴ感のある会場の広さを感じさせる良い録音。冒頭から不思議な響き炸裂です。バリトンもそうですが、リラ・オルガニザータもえも言われぬ不思議な響きだったことが推察されます。小さなオルガンと弦の組み合わせの実に不思議な音色。曲は晴朗な明るい曲。この協奏曲もハイドンの楽器の音色に対する鋭敏な感覚にもとづいて書かれているように感じます。リラ・オルガニザータの響きからインスピレーションを得てメロディーが書かれているように感じます。オケはいつもの18世紀オーケストラではなく、現代楽器のモーツァルテウム管ですので、いつもの不気味な迫力の宿るオケではなくわりと正統派の演奏。節を強調する感じはいつものブリュッヘンですが、オケの響きは極めてニュートラル。
2楽章は聴いたことのある旋律。交響曲100番「軍隊」の2楽章と同じメロディーですね。ただしソロがリラ・オルガニザータとなり、打楽器の炸裂はありません。軍隊の2楽章のメロディーライン飲みを残した不思議な曲。リラ・オルガニザータのような響きのソロにあわせているところで、オケがちょっと鈍重になってしまっているのが惜しいところ。もう少し生気というかキビキビ感が欲しいところ。
3楽章もゆったりしたテンポの楽章。ちょっと締まらない感じを残してしまいますが、協奏曲としての締まりよりもりら・オルガニザータの音色を想像しながら不思議な響きを楽しむべき演奏ということでしょう。
最後は暖かい拍手に包まれます。

交響曲84番(Hob.I:84)1786年作曲
かわって84番。こちらはブリュッヘンの演奏と知らずに聴いたら、まずブリュッヘンの演奏とは当てられないでしょう。極めてニュートラルで純度の高い自然な演奏。ブリュッヘンの演奏で時折感じるリズムの重さなどもなく、非常にリラックスして振っている感じがよく伝わります。迫力でも音色でもなく、達観したような自然さが心を打つ演奏。これはいい。1楽章の流れは見事の一言。
2楽章のアンダンテも良い流れがつづき、適度にキレよく、練りもせず、さっぱりと美しいメロディーを刻んでいきます。オケの自然な響きとそれをうまく捉えた録音も見事。会場ノイズもほとんど目立たず、ライヴでのノイズ除去をした録音によくある生気が抜けててしまったような薄い響きにもなっておらず、録音は理想的でしょう。適度なリアリティと潤いのある響きが楽しめます。まるでコンサート会場にいるような素晴らしいリアリティ。
3楽章のメヌエットは美しい響きのなか、やはり力まず、自然な演奏。良く聴くと自然と言ってもフレーズに微妙にアクセントがつけられ、凡庸な響きにならないようしっかりコントロールしていることがわかります。自然で聴き応えのある素晴らしい演奏です。
フィナーレの入りは羽毛をさわるようなデリケートな入り。すぐに力感が漲りノリがよくなります。スピードも適度なところがかえって良い感じ。後半テンポをゆったりと落とし力を極端にぬいて再び繰り返しに入るあたりのコントロールも非常に効果的。じっくりと84番の堪能できる名演奏ですね。素晴らしい演奏に会場から、耳の肥えた聴衆のリスペクトを感じる拍手。良い演奏です。

そして、最後はプラハ。これがまた素晴らしい演奏。基本的に84番の特徴そのままにモーツァルトの名曲をよりじっくり料理した感じで、このアルバムの聴き所ですね。久しぶりにプラハの名演奏を堪能。心はザルツブルクに飛んでいます(笑)

ブリュッヘンの手兵18世紀オーケストラではなく現代楽器のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団とのライヴは、手兵との演奏とは違った魅力に溢れた素晴らしい演奏でした。評価はリラ・オルガニザータ協奏曲が[+++]、84番は[+++++]です。特に84番とプラハはいろいろな演奏を聴いている耳の肥えた方ほど良さがわかってもらえるような、実に良い演奏。はったりもこけおどしもなく、普通の演奏なんですが、実に慈しみ深い。ブリュッヘンの違う魅力を発見した感じです。いや、ライヴはいいですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : リラ・オルガニザータ協奏曲 交響曲84番 ライヴ録音 おすすめ盤

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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