【新着】ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの102番、太鼓連打、ロンドン(ハイドン)

室内楽にどっぷりとはまろうと思っていた矢先に届いたアルバム。

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ブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil)指揮のカペラ・コロニエンシス(Cappella Coloniensis)の演奏で、ハイドンの交響曲102番、103番「太鼓連打」、104番「ロンドン」の3曲を収めたSACD。収録は2013年2月16日、2014年3月23日の両日、ドイツ、エッセンにあるエッセン・フィルハーモニーのアルフレッド・クルップホールでのライヴ。レーベルは独Ars Production。

ブルーノ・ヴァイルとカペラ・コロニエンシスによるハイドンのザロモンセットの録音の4枚目、このシリーズの最後を飾る1枚です。ブルーノ・ヴァイルは手兵、ターフェル・ムジークとの交響曲やミサ曲、天地創造の録音があり、ハイドンの作品を古楽器オケで演奏したアルバムでは注目すべき存在でした。ターフェル・ムジークとの演奏はヴァイルの闊達なコントロールが聴きどころで、私もかなり高く評価していますが、その後、カペラ・コロニエンシスと組んでのこのザロモンセットのシリーズは、ターフェル・ムジークとの演奏と比べてしまっているからか、いまひとつキレを期待してしまうところがあり、ちょっとふっ切れない印象のものが多かったのが正直なところ。そのあたりは、過去の記事をご参照いただければわかるとおりです。

2013/12/17 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの交響曲99番、時計、軍隊(ハイドン)
2013/05/09 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ヴァイル/ターフェルムジークの86番
2012/08/11 : ハイドン–管弦楽曲 : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」
2012/01/24 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの四季
2011/08/14 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番4】ブルーノ・ヴァイルのテレジアミサ、ネルソンミサ
2011/01/10 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイルの天地創造
2010/12/25 : ハイドン–交響曲 : 【年末企画】ブルーノ・ヴァイルの交響曲50番、64番、65番
2010/03/08 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへ

そのヴァイルのザロモンセットの締めくくりとなるアルバムがリリースされ、届いたということで、期待を込めて取り上げる次第。軍隊などを含む前のアルバムを取り上げたのが2013年の12月と2年前。久々のリリースでようやく完結しました。

ヴァイルの演奏に対する私の視点はこのシリーズの1枚目を取り上げた一番最後のブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへという記事に触れてあります。ハイドンの交響曲録音では、トーマス・ファイ、ギィ・ヴァン・ワース、ジョヴァンニ・アントニーニや、ニコラス・マギーガン、先日取り上げたロビン・ティチアーティらによる斬新な解釈による興味深いアルバムが次々とリリースされており、昔は斬新だったヴァイルも、ちょっと古めかしく感じられなくもありません。

Hob.I:102 Symphony No.102 [B flat] (1794)
非常に落ち着いた入り。古楽器ながら分厚い響きとスタティックな印象はブリュッヘンを思わせるもの。弦楽器群は地を這うような迫力を伴い、金管群は古楽器特有の鋭い音色ながら、こちらも分厚い響きで全般に迫力重視のコントロール。リズムはどっしりと安定し、最近の演奏の中ではかなり伝統的な部類の演奏。ただし、この102番の1楽章を堅実にがっちりと演奏することで、良い意味でこの曲の堅実な魅力が引き立ちます。
美しい響きが印象的なアダージョも、抜群の安定感でじんわりと曲の魅力がにじみ出てきます。どこかで斬新さを求めてしまう気持ちがある一方、このしなやかな迫力を帯びた堅実な演奏の魅力も捨てがたいと思う気持ちもあります。これまでヴァイルが切り開いてきた、古楽器によるハイドン演奏の角度がそういった気持ちにさせるのでしょうが、当の本人は我関せず、ハイドンの交響曲の魅力を虚心坦懐に表現しているだけかもしれませんね。
メヌエットでもスタイルは変えず、図太い響きと抜群の安定感で圧倒します。最近の多くの演奏が、鮮やかなリズムや、フレーズ毎の変化で楽しませてくれるので、メヌエットは若干単調に感じなくもありません。
そしてフィナーレに入ると、若干軽やかさに振れたあと、オケがフルパワーで炸裂。音楽のスタイルは終始一貫して、楽章ごとに力感のスロットルをコントロールしていきます。終楽章の迫力はかなりのもので102番の質実な起伏の変化を十分楽しめますが、ハイドンの交響曲にはもう少し違った楽しみもあるはずとの印象も残します。

Hob.I:103 Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
そんなに遠くないところで雷が鳴るような冒頭の太鼓。基本的にヴァイルのスタンスは変わらず、迫力重視の質実な演奏ですが、102番の時よりオケに色彩感があり、表現がしなやかに聴こえます。ほんの僅かなニュアンスの違いなんですが、この太鼓連打では、ソロとオケの対比の面白さ、ゆったりと落ち着いた曲の運び、パート間の音色の違いの面白さなどが印象的。前曲がモノクロのすこしラチュードの狭い写真だったのが、こちらは鮮やかとまでいかないまでもナチュラルなカラー写真のような印象。ほんの僅かな違いなのに不思議なものです。力の抜けた部分の存在がそう感じさせるような気がします。ヴァイルも演奏を楽しんでいるような余裕があるのがいいですね。
2楽章に入るとオケ全体に軽やかさが宿り、ライヴらしいノリも感じられます。フレーズごとの曲の描き分けも巧みでテンポも比較的速めに進めることで曲の面白さが際立ち、要所で迫力ある分厚いオケが威力を発揮するので、前曲の剛直な印象は皆無。これはいい。
このスタンスがメヌエットでも活きて、オケが反応よく響きます。結果的にオーソドックスなメヌエットの魅力が際立ち、適度な起伏とリズム感の面白さが前に出てきました。
フィナーレも入りの軽さから徐々に力感が漲っていくダイナミクスの変化は見事。軽さがあるから力感が際立つ好例。オケが軽やかに吹き上がる快感。適度に粗さもあるのがかえってライヴらしくていいですね。古楽器らしいホルンの音がなんとも言えずいい雰囲気。そしてティンパニ奏者が要所で煽る煽る。なかなか見事な演奏。これまで聴いたヴァイルのザロモンセットでは一番の出来です。

Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
最後のロンドン。102番のイメージの延長からもう少し堂々と来るかと思いきや、意外とあっさりとした序奏。これはこれで悪くありません。古楽器演奏らしいさっぱりとしたフレージングですが、響きは重厚で迫力十分。ロンドンの聴きなれたメロディーの垢が落とされて、新鮮に響きます。オケの吹き上がりはこのオケならでは。図太い低音をベースにしながら、次々とメロディーが展開していく面白さ。ヴァイルのスロットルコントロールがピタリとハマって、この名曲が実に新鮮に響きます。
アンダンテはかなり軽さを意識した入り。サラサラと進みます。1楽章の雄大さも抑え気味だっただけにこのサラサラ感で丁度いい対比がつきます。中間部はテンポを落とさずぐっと力を込めることで起伏を印象付けます。続くメヌエットも速めで非常に見通しの良い設計。オケもかなりリラックスして軽々とこなします。時折りキレの良い吹き上がりを見せ、聴きどころを作ります。中間の2つの楽章をかなりあっさりと流すことで、1楽章とフィナーレの面白さを際立たせようということでしょうか。
そしてフィナーレもさらりと入るのですが、なんとなく緊張感が違います。このあとの盛り上がりへの期待を煽るような気配があり、案の定、オケが徐々に迫力を帯びていきます。演奏によってはくどさを感じさせる終楽章ですが、そんな気配は微塵もなく、この堂々とした名曲を古楽器オケのオーセンティックな魅力でさらりとまとめ上げる手腕の見事さが印象的。人によってはちょっと物足りない印象を持つかもしれませんが、私にはこの響きと展開は新鮮で魅力的でした。最後はヴァイルが煽ってオケもそれに応えて爆発。拍手が入ってないのが惜しいところ。

ブルーノ・ヴァイルとカペラ・コロニエンシスによるハイドンのザロモンセットの締めくくりの1枚。冒頭の102番が固かったので、最初はあまりいい印象を持ちませんでしたが、続く太鼓連打は名演。そして最後のロンドンもこの曲の雄大さを新鮮に表現するこちらも名演ということで、締めくくりにふさわしい出来でした。ターフェル・ムジークとの闊達な魅力の印象が強かったヴァイルですが、カペラ・コロニエンシスとのこの1枚で新たな魅力がわかった気がします。評価は102番が[++++]、他2曲は[+++++]とします。

さて、ヴァイルは昨今のハイドンの新録音ブームの中、今後何をリリースしてくるでしょうか。パリセットの再録などはどうでしょうかね!

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クーベリック/ケルン放送響の時計、102番(ハイドン)

東京は先週末に一気に染井吉野が開花しました。天気にも恵まれたので昼休みには多くの人が近くの公園などで暖かな陽射しのもと桜の花を見上げて楽しんでいました。夜の花見のためにブルーシートを敷いて新入社員が場所取りをしながらノートパソコンで仕事をしているのが微笑ましいですね。これから桜吹雪を楽しむと、程なく木々が芽吹き、一気に新緑の季節になります。街路樹の欅など、何も葉のない枝からあっという間に新緑の葉が吹き出してくるのは毎年ながら自然の力を感じます。

桜は楽しんでいるのですが、新年度に入って仕事もバタバタしており、なかなか音楽をゆっくり楽しめません(涙)。ということでちょっと間が空いてのレビューです。今日は新着アルバム。

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ラファエル・クーベリック(Rafael Kibelík)指揮のケルン放送交響楽団(Kölner Rundfunk-Sinfonie-Orchester 現WDR Sinfonieorchester Köln)の演奏で、ハイドンの交響曲101番「時計」、102番などを収めた3枚組のアルバム。ハイドンの収録は時計が1963年5月31日、102番が1961年4月10日のライヴで、ケルン放送センターの第1ホールでのライヴ。咳払いなどが入っていないので放送用の収録ということでしょうか。レーベルはORFEO D'OR。

クーベリックのハイドンは気になる存在ゆえ、わりと取り上げています。これまでのレビューは下記のとおり。

2013/12/27 : ハイドン–交響曲 : クーベリック/バイエルン放送響の時計1970年10月ライヴ(ハイドン)
2012/07/24 : ハイドン–交響曲 : クーベリック/バイエルン放送響の99番1982年9月7日ライヴ
2012/01/27 : ハイドン–声楽曲 : クーベリック/バイエルン放送響の「戦時のミサ」
2010/10/11 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/クーベリックのチェロ協奏曲2番
2010/05/24 : ハイドン–オラトリオ : クーベリックの天地創造

今日取り上げるアルバムは最近リリースされたもので、ハイドンの曲が入っているのに最近気づいて慌てて注文したものです。クーベリックのハイドンの交響曲の録音はライヴを中心に99番、時計、102番が残されており、この3曲がお気に入りだったものと推察されます。その録音のなかでも最初期の録音です。

アルバム自体は1960年から63年にかけてケルン放送交響楽団との録音を集めたもので、残念ながら録音はすべてモノラルですが、ジャケットの写真のとおり、晩年の温厚な姿とは異なる、ギラつく視線とアーティスティックな雰囲気がにじみ出る若きクーベリックの覇気あふれる時代の録音です。上のバイエルン放送響との99番の記事に記したとおり、クーベリックは1961年からバイエルン放送響の首席指揮者に就任しており、まさに脂の乗りきった時代。晩年は中庸の美学で聴かせたクーベリックの覇気が聴かれるのでしょうか。

Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
緊張感を帯びた入り。テンポはゆったりながら、ビンと張り詰めた序奏。録音はモノラルでわずかながら金属っぽい響きを感じますが鮮明さもほどほどあり悪くありません。低音がちょっとボンつき気味でピークが抑えられていますが、音量を上げていくとかなりのリアリティ。後年のクーベリックが聴かせる絶妙のバランス感覚はすでに健在。ザクザクと音楽を刻みますが、迫力だけではなく折り目正しさもあり、ハイドンが仕組んだ1楽章の構成感を見事に描いていきます。
見事なのは2楽章。時計のリズムを正確に刻みながら、イキイキとメロディーが浮かび上がり、各パートが代わる代わるヴァイオリンの奏でるメロディーにからみ、聴き進むうちに至福の心境に。中盤の盛り上がりも実に心地よい吹き上がり。オケの精度も高く、キリリと引き締まった表情で音楽が流れます。終盤は枯淡の境地。静寂の中にリズムが打たれ、彫りの深い表情で凛と迫ります。時計の2楽章でこれほど迫ってくるとは。
メヌエットはまさにクーベリックの美点が活きる楽章。バランスを保ちながらも、ザクザクと迫ってくる音塊。LPのモノラル盤の迫力のような引き締まった響きに鳥肌が立ちそう。中間部のフルートソロが実に心に沁みます。
そしてフィナーレ。落ち着いた入りから徐々にスロットルが開き、オケが分厚く鳴り響きます。最後にゆったりとした印象を残しながらのスロットルコントロール。徐々にクライマックスに昇りつめていきますが、音量を落とす部分は騒めくような気配を残して対比をつけます。最後は落ち着いてフィニッシュ。これはこれまでのクーベリックのベストのハイドンかもしれません。

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
続く102番。先ほどよりも録音は2年ほど古いですが、コンディションはこちらの方が上で、鮮明度は上がります。低音のボンつきはおさまり、金属っぽい残響もなくなります。モノラルながらタイトないい録音。102番独特の穏やかなメロディーですが、前曲同様ザクザクと切り込み、迫力は十分。一貫してタイトな表情。オケは前曲よりもすこし荒く、力感重視な演奏。前曲での演奏がスロットルコントロールの面白さで聴かせたのに対し、この曲1楽章では力で押す感じでしょうか。
好きな2楽章ですが、この曲独特の穏やかな起伏を柔らかく描くのではなく、タイトに描いていきます。やはりこの時代の空気なのでしょうか、ザクザクとしたオケの表情が時折顔を覗かせます。
その表情はつづくメヌエットへの伏線だったのでしょう、メヌエットはキレのいいオケが楔を打ち込むように実に気持ち良く鳴ります。ゆったりとアダージョを聴かせるところではなく、ザクザクと鳴りまくるメヌエットに焦点をあてた設計。そのキレと迫力が効いているので中間部の木管陣によるメロディーが実に柔らかく響きます。
フィナーレはクーベリックの真骨頂、バランスと迫力が拮抗した素晴らしい演奏。オケのキレも最高潮。冴え冴えとしたヴァイオリンに分厚く迫る低音弦。そして特に音量をすっと下げるスロットルワークの巧みさが神々しいほど。最後はオケが研ぎ澄まされたように純度が上がり、フィニッシュ。出だしの1楽章が若干力み気味な印象を残したものの、聴き進むうちにオケが覚醒、最後は冴えまくって終わりました。

ラファエル・クーベリック指揮のケルン放送響による1960年代初頭のハイドンの名曲2曲の演奏。やはりクーベリックが飛ぶ鳥を落とす勢いで名声を得ていったころの覇気があふれる素晴らしい演奏でした。録音はモノラルですが、かえってモノラルならではの迫力が楽しめるという見方もできるでしょう。時計は緩急自在の演奏、102番は冴えまくるオケに圧倒される演奏でした。これまで聴いたクーベリックのハイドンでは両曲ともベストでしょう。評価は両曲とも[+++++]とします。

山梨では桃の花が盛りとの情報! 明日は山梨に桃の花を愛でにいってみましょうか、、、

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tag : 時計 交響曲102番 ライヴ録音 ヒストリカル

【新着】チェリビダッケ/フランス国立放送管の102番ライヴ(ハイドン)

チェリビダッケの102番のライヴと聞けばちょっと気になります。早速入手してレビュー。

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セルジュ・チェリビダッケ(Sergiu Celibidache)指揮のフランス国立放送管弦楽団(Orchestre National de l'ORTF)の演奏で、ウェーバーの「魔弾の射手」序曲、ハイドンの交響曲102番、シューマンの交響曲2番の3曲を収めたアルバム。収録は1974年2月27日、パリのシャンゼリゼ劇場でのライヴ。

チェリビダッケはハイドンを得意としていたわけではなさそうですが、手元にはいろいろ録音があり、これまでもライヴを中心に3度取り上げています。

2012/07/23 : ハイドン–交響曲 : チェリビダッケ/ミュンヘンフィルの「ロンドン」1983年7月3日ライヴ
2010/11/11 : ハイドン–交響曲 : チェリビダッケ、RAIナポリの102番、ロンドンライヴ
2010/05/04 : ハイドン–交響曲 : 磨き抜かれた逸品、チェリのロンドン

ザロモンセットについては、ロンドン、太鼓連打、驚愕などの有名曲とこの102番に複数の録音があります。やはり遅いテンポで雄大な演奏をする人との印象があり、怖いもの見たさというところもあり気になる存在です。この102番についても1955年のライブと1971年の録音がすでに手元にありますが、演奏、録音ともにベストのものとは言えないものゆえ、この1974年のシャンゼリゼ劇場のライヴに期待が集まります。しかもAltusのリリースということで、クォリティの高い復刻を期待するところです。

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
期待通り、録音はそれなりに自然なもの。手に入れたのはCDですが、他にSACDシングルレイヤーもリリースされているということで、録音の質が悪かろうはずがありません。予想通り序奏は実にしなやかに荘重なもの。弦楽器のシルキーな感じと管楽器のクリアな音色がフランスのオケであることを物語ります。やはりチェリビダッケのコントロールは壮大かつ壮麗なもの。音量を上げて聴くと、特に弦楽器の緊張感ある伸びやかさがチェリビダッケならでは。アクセントはかなり抑えて壮麗さを意識したコントロール。録音のせいか重厚さはあまり感じず、低音弦はかなり抑え気味で、弦も高域重視で鮮やかな印象。ホールに響く弦の余韻を楽しむように気持ち良く弓を操ります。
つづくアダージョでも極度にしなやかな弦楽器が印象的。かなりゆったりとしたフレージングで弦の魅力を嫌という程聴かせます。この極端なバランスがチェリビダッケの個性でしょう。管楽器もかなり抑えて、まるで弦楽器の響きの調味料程度に音色をブレンドしているよう。この滔々たる弦楽器による大波のようなメロディーが音楽の核になっています。終盤のもりあがりでようやく低音弦や管楽器が存在感をアピールします。非常に大きなつくりの音楽。
メヌエットもチェリビダッケの手にかかるとかなり壮麗な音楽に聴こえます。やはり弦楽器群のエキセントリックな響きが全体の音楽のポイントになっています。揺るぎない信念にみちたゆったりとした進行。確信にみちた音楽がホールに響き渡ります。オケの音色が脳の官能中枢に直接作用するような独特の快感に浸ります。スタティックなのに恐ろしく艶やかな音楽が続きます。メロディーには躍動感がともないますが、響き自体はブルックナーのような壮麗さを感じるのが不思議なところです。
フィナーレは、その壮麗な響きはそのまま、コミカルな表情を加え、オケが気持ち良く反応し、クライマックスの爆発の予感を感じさせます。奏者の感覚も鋭敏になり、アンサンブルもタイトに引き締まっていきます。オケは異次元の集中を聴かせ、実に心地良い響きでチェリビダッケの指示に従います。最後はさっと力を抜いて粋なところを見せて終わります。じんわりと拍手に包まれるところにこのコンサートの聴衆の満足度合いが表れているよう。

この102番に関しては手元の3種の中ではベストなもの。神がかった迫力が聴かれるかと思いましたがさにあらず。落ち着いたコントロールによって、ハイドンの交響曲の面白さのツボを押さえた理想的な演奏となっています。ちょっとチェリビダッケの演奏ということで事前期待が大きすぎましたでしょうか。ただ、そうしたこちらの想いを良い意味で裏切る堅実な名演奏というところでしょう。落ち着いた入りに対して、曲の終盤にはこの曲の面白さを完全に把握した見事なコントロールを聴かせました。聴き始めた時は無難な演奏との印象もありましたが、やはり流石はチェリビダッケ。これは名演ですね。評価は[+++++]とすることにいたしました。

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tag : 交響曲102番 ライヴ録音 SACD

【新着】パウル・クレツキ/フランス国立管の102番

いやいや、暑い日がつづきますね。今日は新着アルバム。

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パウル・クレツキ(Paul Kretzki)指揮のフランス国立管弦楽団の演奏で、ショパンのピアノ協奏曲1番、ハイドンの交響曲102番の2曲を収めたアルバム。ショパンのピアノはマリツィオ・ポリーニです。ハイドンの収録は1952年10月30日、パリでのライヴ。会場の表記はありません。レーベルはヒストリカル復刻の雄ARCHIPEL。

ジャケットには若きポリーニの眼光鋭い姿が見えますが、ポリーニが加わっているのはショパンだけなので、今日のレビューは純粋にクレツキとパリ国立管のハイドンの102番の演奏のみとなります。

パウル・クレツキは1900年、ポーランド中央部のウッチ(Łódź)の生まれ。地元のオケに15歳で入った後、第一次世界大戦に出兵。その後ワルシャワ大学で哲学などを学び1921年にベルリンに移ります。1920年代に彼が作曲した作品は当時トスカニーニやフルトヴェングラーに評価され、フルトヴェングラーは1925年に彼をベルリンフィルに招いて、指揮する機会を提供しました。ユダヤ人だったため、1933年にはドイツを離れますが、イタリアでもファシスト政権の反ユダヤ主義的政策の苦労したため、1936年にソ連に逃れます。今度はスターリンの大粛正のため、結局スイスに亡命します。彼の代表作である交響曲3番「イン・メモリアム」はナチスの犠牲者のための墓碑として1939年に作曲されたとのこと。両親や姉妹を含む肉親をホロコーストによって殺害され、精神を破壊されたということで、1942年以降作曲することはなくなりました。戦後は指揮者として活動し、ベートーヴェンとマーラーを得意としていました。1954年から55年までロイヤル・リヴァプール・フィルの音楽監督、1958年から61年までダラス交響楽団の首席指揮者、1966年から亡くなる1973年までスイス・ロマンド管の音楽監督を務めました。来日もしていて日本フィルハーモニー交響楽団を振ったこともあるようです。2度の大戦に翻弄されながらも、多くの録音を残した偉大な指揮者だったのですね。

今日取り上げるクレツキの102番、終戦からしばらく経ってからのパリでのライヴ。彼の経歴を知って聴くと、重みも増すのでしょうか。

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
録音は時代なり。ヒストリカルなライブ独特の饐えた感じが少々ありますが、音像は鮮明。残響はそれなりにあるホールですが、かなりオンマイクな録音なので、実体感は抜群。幽玄な序奏につづいて、速めのテンポによる畳み掛けるように主題に入ります。クレツキがオケを煽っているのでしょう、オケは足並みが乱れるところもありますが、細かいところは気にせず、グイグイドライブをかけて怒濤の迫力。ハイドンの交響曲の1楽章の類いまれな構成感を良く理解して、もの凄く緊密な演奏。入魂の演奏とはこのことでしょう。
2楽章のアダージョはオケの粗さはそのままに、穏やかなこの曲ではありますが、彫りの深い彫刻的な演奏。噛み締めるようにフレーズ毎に険しい表情で鉈で木を荒々しく削りこんでいくよう。癒しを感じる演奏が多い楽章ですが、クレツキの演奏には張りつめたものがあり、真剣勝負な気迫が漲っています。荒々しい響きがかえって迫力につながっています。
メヌエットはざらついたオケの迫力が尋常ではありません。微妙にテンポを落として迫力を感じさせたり、テンポをちょっと上げたり、意外とデリケートなクレツキのコントロールが行き渡ってます。途中テープの伸びでしょうか、一瞬音程が揺らぎますが、一カ所だけ。木管陣はヴィブラートをほとんどかけず、持続音をきっちりふききりメロディーを重ねていくことで、剛直な感じを演出。さらりとした荒々しさが次のフィナーレの爆発を予感させます。
入りから、気合いが漲っているのがわかります。冒頭はヴァイオリンの音階さらりとこなし、盛り上がってからは、各パートがしのぎを削って畳み掛けます。ゴリゴリザクザクメロディーラインが展開するうちにエネルギーが集まり始めます。音量を上げて聴くと素晴しい迫力。最後のリズムの面白さを聴かせる部分もなかなかの演出。楽章間の咳払いなどはすべて録られているのに最後の一音が鳴ったあとはさっと絞って拍手はカットです。不思議なライヴ収録。

パウル・クレツキ入魂のハイドン。時代なりの粗い録音から、当時のホールの様子がリアルに伝わります。手に汗握る迫力の演奏。ライヴ独特の粗さはありますが、手綱を締め上げながらオケをコントロールするクレツキの様子がよくわかる録音です。ヒストリカル、ライヴ好きの方には是非聴いていただきたい演奏です。わたしはクレツキの略歴を調べているうちに、苦難の人生を送ったパウル・クレツキと言う人にちょっと興味をもちました。戦争が終わり、家族を失っても指揮台に立ち、実に彫りの深い音楽を奏でる不屈の人と言うイメージをもちました。音楽とは心で感じるもの。このアルバムから流れる響き以上に何か深いものを感じざるを得ません。心に残る良い演奏でした。評価は[+++++]とします。クレツキの交響曲3番、手に入れて聴いてみたいと思います。

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アダム・フィッシャー/ハイドン・フィルの97番、102番

今日はハイドンといえばこの人、アダム・フィッシャーのアルバム。

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アダム・フィッシャー(Adam Fischer)指揮のオーストリア・ハンガリー・ハイドン・フィルハーモニー(Österreisch-Ungarische Haydn-Philharmonie)の演奏でハイドンの交響曲97番、序曲「哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ」、交響曲102番の3曲を収めたアルバム。収録は2006年9月14日から17日、アイゼンシュタットのハイドンザールでのセッション録音。レーベルはmDG。

このアルバムのライナーノーツにはハイドンザールのステージに立つアダム・フィッシャーとハイドンフィルのメンバーの素晴しい写真が収められているので、こちらも紹介しておきましょう。

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アダム・フィッシャーと言えばこのウェブサイト。

アダム・フィッシャー&ハイドンフィルハーモニーファンクラブ

こちらはご存知の方も多いでしょう。

もちろん、当ブログでもアダム・フィッシャーのハイドンは何度が取りあげています。ドラティに次いでハイドンの交響曲全集を完成させた人として、ハイドンファンの皆様はおなじみの人でしょう。

2012/12/26 : ハイドン–交響曲 : アダム・フィッシャー/オーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団の哲学者、24番
2011/01/23 : ハイドン–交響曲 : アダム・フィッシャーのマーキュリー、悲しみ、告別
2010/01/24 : ハイドン–交響曲 : アダム・フィッシャー全集その後

アダム・フィッシャーといえば、当初Nimbus Recordsで全集の録音をはじめ、途中でNimbusの活動休止に伴い断念したかと思いきや、廉価盤勃興の祖、BRILLIANT CLASSICSからいきなりNimbus未発表の録音もまとめて全集として発売されビックリしたのが懐かしいですね。その全集後、今度はmDGレーベルからザロモンセットと序曲等をあしらったアルバムがSACDとしてリリースされ、ザロモンセットを再録音かと思いきや、今日取り上げる3枚目がリリースされた以降、次が出ていない状態かと思います。

上の哲学者と24番の記事で触れた通り、アダム・フィッシャーのハイドンの交響曲では、全集の完成にかなりの年数を要しており、録音年の古い曲では躍動感漲る素晴しい演奏が多いのに対し、後年になるほど、冷静さが目立つようになっていく傾向があります。今日取り上げるアルバムは2006年とかなり最近の録音で、しかもハイドンザールで収録したSACDということで、あらためてフィッシャーの最近のハイドン演奏を知る上では重要なものでしょう。

Hob.I:97 / Symphony No.97 [C] (1792)
SACDだけに録音は万全。ハイドンザールに響きわたる小編成オケの響きが鮮明にとらえられています。アダム・フィッシャーのコントロールは速めのテンポでキビキビした非常に精度の高いもの。前記事で聴いたマリス・ヤンソンスの演奏とは異なり、ハイドン演奏の伝統の延長にある演奏。アタックの力感をカッチリと出して、97番の楽興を畳み掛けるように実に上手く表現していきます。1楽章は見事な構築感。
続くアダージョはサラサラと軽めの表現と中間部の爆発の対比の構図を鮮明に表す事を狙ったのでしょう。ハイドンが仕組んだ機知を汲み取って、ホールにいるハイドンに伝えているよう。ハイドンの音楽を知り尽くしたフィッシャーならではの自在な表現。2楽章の終わり方一つとっても、かなりのこだわりがあるようです。
メヌエットも実に痛快。ティンパニの響かせ方が最高。メロディに潜んでいる遊び心がそこここに芽吹いてくるようすがよくわかります。鮮明な録音で各楽器の重なりも鮮明に分解され、フレーズひとつひとつが鮮明に浮かび上がります。録音の威力ですね。
フィナーレも機敏な演奏。リズムがキレて、フレーズのクッキリ度がさら上がります。ハイドンの書いた楽譜に仕込まれたリズムとメロディ、ウィット、演奏者や聴衆を驚かせようとした機知が鮮明に浮かび上がります。これぞハイドン。素晴しすぎます。97番のベスト。

Hob.XXVIII:13 / "L'anima del filosofo, ossia Orfeo ed Euridice" 「オルフェオとエウリディーチェ,または哲学者の魂」序曲 (1791)
劇的な序奏からはじまる曲。オペラの幕が上がる前の興奮をそのまま伝える演奏。まるでライヴを聴いているような素晴しい迫力と躍動感。これまた素晴しい。

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
そして名曲102番。おだやかな曲想を踏まえてか、アダム・フィッシャーは97番ほどのキレを見せず、むしろニュートラルな表情を意識しているよう。アクセントとは逆に音を印象的に抑えるところを上手くつかって変化をつけていきます。ただ、徐々に盛り上がっていくのがこの曲の面白さ。そこを十分にふまえて徐々にアクセルを踏んでいくのがよくわかります。1楽章のフィニッシュに至ってオケがフルスロットルに。
2楽章のアダージョはハイドンの交響曲のアダージョの中でも穏やかな美しさが印象的な曲。古い演奏の中にもメロディーの美しさが印象的なものが多い名曲です。フィッシャーはメロディーの美しさを適度に表しながらも、終盤の爆発との対比を鮮明に演出して、メロディーの表現は抑え気味にします。これもハイドンを熟知したフィッシャーならではの表現。
メヌエットではハイドンフィルの意外に迫力のある音色が実に効果的。少し溜めて迫力を演出。中間部ののどかな響きをあえて室内楽的な手作り感あふれる雰囲気にまとめるあたり、ハイドンのディヴェルティメントを聴いているよう。
期待のフィナーレは、コミカルな導入からにクライマックスまでの躍動感溢れる盛り上げ方が聴き所。フレーズごとの表情付けの多彩な変化はアダム・フィッシャーならでは。流石に交響曲全集の録音を成し遂げている人ならではの経験が活きています。ハイドンの交響曲の面白さが詰まった曲であることがこの演奏でよくわかります。最後のテンポとトーンを落とすところは見事の一言。

アダム・フィッシャーのハイドンの交響曲の最新録音。ハイドンを知り尽くしたアダム・フィッシャーによって、ハイドンの交響曲の最高の演奏がハイドンザールでの素晴しい響きとともに鮮明な録音で収められた素晴しいプロダクション。久しぶりに取り出して聴いてみて、その素晴らしさにあらためて打たれました。3曲とも素晴しいのですが、特に97番はこの曲のベストと断定します。97番の面白さを最も上手く表現した演奏でしょう。評価は全曲[+++++]とします。ハイドンの交響曲の面白さを堪能です。

この続き、是非リリースしてほしいものです。

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tag : 交響曲97番 交響曲102番 哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ SACD

【新着】アイヴァー・ボルトンの102番、太鼓連打

久しぶりの新着アルバムの紹介。HMV ONLINEに他のアルバムと一緒に注文してあった物が今日着きました。

bolton102103.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

アイヴァー・ボルトン(Ivor Bolton)指揮のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の演奏による、ハイドンの交響曲102番、103番「太鼓連打」の2曲を収めたアルバム。収録は2011年5月17日から19日、ザルツブルクの文化フォーラム、ドロテア・ポルシェ・ホールでのセッション録音。レーベルはOEHMS CLASSICS。

アイヴァー・ボルトンのハイドンはこれまで、3回取りあげています。おそらくこれがボルトンのハイドンの全録音。ボルトンの紹介は天地創造の記事をご覧ください。

2011/05/14 : ハイドン–オラトリオ : アイヴァー・ボルトンの天地創造
2011/05/09 : ハイドン–交響曲 : アイヴァー・ボルトンの奇跡、88番、迂闊者
2010/12/13 : ハイドン–オラトリオ : アイヴァー・ボルトン/モーツァルテウム管弦楽団の四季ライヴ

ボルトンの交響曲がこれが2枚目。記事を読んでいただければわかるとおり、奇跡、88番、迂闊者を収めたアルバムは極上の演奏でした。現代楽器に金管や打楽器は古楽器というザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団との演奏はトーマス・ファイほどエキセントリックではないものの、ハイドンの交響曲の響きの変化とキレを見事に表現して、ハイドンマニアを唸らせる演奏でした。四季も同様、非常に充実したライヴでしたが、天地創造が録音が少し災いしてちょっと評価を下げています。

ボルトンがハイドンの交響曲の2枚目にザロモン・セットのなかでは地味ながら音楽的に充実した102番と太鼓連打を選んでいるところがボルトンのハイドンに対する造詣の深さを物語っています。

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
最新の録音らしく鮮明な音像。ヴィブラートの少ない現代風の演奏ながらフレージングに滑らかさ、デリケートさもあり、しかも迫力もあるという理想的な演奏。102番の曲想を踏まえた物でしょうか。テンポは中庸。ことさらキレに走らない落ち着いた音楽がボルトンらしいところでしょう。ただ、ここぞという時にもあらぶる事なく響きのバランスに集中しているように感じるところは、多少踏み込み不足感を残してしまいます。
美しい旋律が有名なアダージョは現代風のあっさりとしたフレージングですが、大きなうねりの表現は緻密で、分厚い弦楽器の音響に打たれる演奏。
メヌエットもオケが良くそろって、躍動感もありますが、ボルトンは響きとフレージングのバランスに神経が集中しているようで、冷静に盛り上げてくる感じ。ハイドンのメヌエットの面白さを知的に処理している感じ。音響的には完璧な仕上がり。響きの変化やノリの良さを感じさせるミンコフスキよりも理性的に聴こえます。
フィナーレは予想通り、抑えた部分のに神経が張り巡らされた良くコントロールされた演奏。一貫したリズムのなかでダイナミクスのコントロールに変化をつけて小気味好い感じを上手く出し、振り切れる事はないのですが、迫力も緻密に演出。フィナーレも完璧な演奏。完璧すぎてちょっと没入しきれないという余韻も残します。

Hob.I:103 / Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
大相撲の櫓太鼓を思わせる太鼓連打。ティンパニ、なかなかいいです。前曲同様、ボルトンの緻密なコントロールに耳を奪われます。ただなぜか前曲よりもすこしノリがよくなり、フレージングにも勢いを感じます。ヴォリューム感の表現が秀逸で、タイトながら迫力ある響きの波が次々と襲ってきます。最後の太鼓連打はドラムソロのような自在な表現で曲を引き締めます。気づいてみると金管の響きがかなり抑えられた録音故、塊のようなオケの一体感ある響きにつながっているようです。
2楽章のアンダンテはあっさりしながらもヴァイオリンの表情が前曲より豊かに聴こえます。奏者の音楽性を優先させたのでしょうか。リズムが弾み、メロディーも活き活きしています。やはり抑えた部分の表情のコントロールは上手い。中間部の図太い響きと木管楽器の軽やかの旋律の掛け合いよくコントロールされて、一貫したボルトンの音楽になっています。
壮麗典雅なメヌエットの入り。速めのテンポによって華やかさが増し、オケは相変わらず良く引き締まった響きを奏でます。中間部は音量をかなり抑えて、繊細な印象で両端部との対比を鮮明にします。終盤は惰性に流される印象をもつ演奏が多い中、緊張感を保ち続けます。
フィナーレは流麗な入りから響きのカオスのような盛り上がりに突入し、オケのエネルギーも高まります。力任せではなく、やはり緩急降りまぜた手綱捌きによって非常に引き締まった演奏になります。終盤ギアがトップに入り、このアルバム一番の盛り上がりを聴かせて終了します。ティンパニが腹にきくような迫力。

アイヴァー・ボルトンとザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団による最新録音のこのアルバム。ボルトンらしい現代風のコントロールの行き届いた完璧な演奏でした。太鼓連打の方はボルトンもオケも演奏を楽しんでいるような印象だったのに対し、102番の方は響きのコントロールに神経が集中しているようで、もう一段の生気を求めたいところです。両曲とも質の高いいい演奏であるのは書いた通り。ボルトンはおそらくライヴをアルバムにした方がいいような印象を持ちました。ということで評価は102番が[++++]、太鼓連打は[+++++]とします。

今日から年末のお休み。音楽を聴く環境も引越し後調整等特にしていませんでしたが、時間が出来たので少し調整しました。引越し前はスピーカーとアンプが少し離れていたので、スピーカーケーブルは長かったのですが、引越し後もそまま長めに使っていました。今日は一念発起して、新しい部屋に合わせてケーブルを切り縮めたところ響きと定位感が一段鮮明になりました。どうやら余った長さを巻いていたのが良くなかったようです。こうしたちょっとした事の積み重ねで、少しづつ音がなじんでいくんですね。鮮明な音響となって、ボルトン盤の鮮明な響きの魅力がいっそう高まりました。

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tag : 交響曲102番 太鼓連打

バーンスタイン/ウィーンフィルの102番1971年ライヴ

交響曲が続きます。

Bernstein102.jpg

レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)指揮のウィーンフィルの演奏による、ハイドンの交響曲102番、ラヴェルのピアノ協奏曲(ピアノはバーンスタイン自身!)の2曲を収めたアルバム。収録は1971年2月21日、ウィーンのムジークフェライン・ザールの大ホールでのライヴ。レーベルはDeutsche Grammophone。

このアルバムを見て懐かしいと思った方も多いのではないでしょうか。1992年にウィーンフィル創立150周年を記念してリリースされたDGのシリーズ。ウィーンフィルの創立は1842年です。モーツァルト没後200年の喧噪がさめやらぬ頃ですね。その中の1枚がこのアルバム。

実はこのアルバム、あんまりちゃんと聴いた覚えがありません。ご存知のとおり、私はバーンスタインのハイドン、特に後年のものはあまり好きなタイプの演奏ではないため、このアルバムも食わず嫌いだったのかもしれません。バーンスタインは調べてみると1969年のシーズンを最後にニューヨークフィルを離れて、活動の場をヨーロッパに移します。このアルバムの録音はそのニューヨークフィル最後のシーズンの翌シーズンの録音。ということで、バーンスタインの覇気がウィーンフィルに出会って、ヨーロッパの響きが加わったばかりの演奏でしょう。

そうこういっても、バーンスタインの演奏はこれまでに結構な数、取りあげています。当ブログとしては多い方でしょう。

2011/09/15 : ハイドン–声楽曲 : バーンスタイン/ロンドン交響楽団のテレジアミサ
2011/08/15 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番5】バーンスタイン/ウィーンフィルのテレジアミサライヴ!
2011/05/08 : ハイドン–交響曲 : バーンスタイン/ウィーンフィルの88番、オックスフォード
2010/12/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】バーンスタイン/NYPの97番、98番DVD
2010/09/11 : ハイドン–オラトリオ : バーンスタインの天地創造DVD

なんとなくバーンスタインを取りあげた時はブログのアクセス数も伸びるような印象があります。カラヤンやショルティなどとならぶ巨匠の一人ということで、ファンの方も多いのでしょうね。

ウィーンフィルに客演し始めたころのバーンスタインが、名曲102番をどう料理するか、なぜか非常に新鮮な気分(笑)

Hob.I:102 / Symphony No.102 [B flat] (1794)
おどろおどろしい序奏。録音はあまり良くありません。会場ノイズが入るのは嫌いではありませんが、ちょっと高音にチリチリする雑音が入るのが今一。響きはムジークフェラインならではですが、高音が薄く饐えた感じ。コンディションはそれほど良くありません。しかし、問題はその演奏。バーンスタイン特有のじっくりと息の長いフレーズを奏でて進みますが、主題に入った途端、ムジークフェラインを吹き飛ばさんばかりの凄まじいエネルギーがホール充満。ゴトゴト音がするのはバーンスタインが飛び跳ねているからでしょうか。筋肉が浮かび上がるようにデヴォルメされたミケランジェロのダビデ像のような素晴らしい立体感。録音のハンディをものともしない素晴らしい充実した響き。一音一音に力が漲り、有機的に連なる音符が生き物のようにうねります。展開部ではちょっと音が飽和気味ですが、そんなことは気になりません。名手ぞろいのウィーンフィルが髪を振り乱して演奏しているような素晴らしい力感。バーンスタイン特有の表情の濃さは感じるものの、過度な感じはありません。
102番の白眉、2楽章のアダージョはウィーンフィルならではの豊かな響きに包まれます。じっくりこってりと音符を料理していきますが、間を上手く取っているので詩的な印象もあり、くどすぎることはありません。非常にロマンティックな演奏です。2楽章のこの盛り上がりはベートーヴェンを超えるような大山脈のような圧巻の迫力。
メヌエットもタクトがバックスイングを伴って振りおろされるようすを音にしたような、一音一音を慈しむような演奏。ただ迫力がある演奏とは異なり、音がホールに響き渡るようすを奏者が克明に聴きながら演奏しているよう。テンポは揺るぎなく、音塊が次々と飛んでくる感じ。ゆったりした部分の滑らかさはビロードのよう。それでいてウィーンらしい弦楽器の柔らかな響きが相俟って、まさに極上のひと時。
そしてフィナーレは嵐の予感。入りは意外と落ち着いたものでしたが、主題に入ると徐々にオケにエネルギーが満ち始め、爆発の時を待ちます。最後にウィーンフィルのヴァイオリンセクションが牙を剥きます。鬼気迫るフィニッシュ。もちろん会場から爆発のような拍手が降り注ぎます。

録音が悪いのが欠点ではありますが、おそらくこの演奏はバーンスタイン最上のハイドンの交響曲演奏の一つでしょう。後年のくどさはなく、またニューヨークフィルを自在に操っていたころの覇気があり、オケはウィーンフィルの極上の響き。言う事ありません。バーンスタインがこのコンサートに102番という傑作を選んだのも酔眼。評価はもちろん[+++++]とします。惜しむらくはこのアルバムが現役盤ではないこと。数は出たアルバムだと思いますので中古で丹念に探せば出会えるでしょう。

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爆演、ショルティの指揮者デビュー録音、ロンドンフィルとの太鼓連打他

昨日、ディスクユニオン手に入れたアルバムから珍しいものを。連日の「太鼓連打」。

SoltiOld103.jpg
HMV ONLINEicon(完売)

サー・ゲオルク・ショルティ(Sir Georg Solti)指揮のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲103番「太鼓連打」、102番、100番「軍隊」の3曲を収めたアルバム。ショルティ、ロンドンフィルのハイドンは1981年から89年にかけてのザロモン・セットの録音があるんですが、これはその遥か以前、1949年から54年にかけての録音。収録は「太鼓連打」が1949年8月、102番が1951年11月、「軍隊」が1954年4月の録音。手に入れたアルバムは日本盤、ポリドールで非売品との記載が。販促物でしょうか。このアルバムとほぼ同じジャケットのシリーズがユニバーサル・クラシクスになってから1997年3月28日に発売されていますので、その時のシリーズの情報を張っておきましょう。

20世紀の巨匠シリーズ/サー・ゲオルク・ショルティ(1912-1997)の芸術/アーリー・イヤーズ(1947-1966)

私の手に入れたアルバムは、全体のデザインは上のジャケット写真と同じなんですがロゴが異なり、右上の赤青DECCAのロゴではなく、左上に赤青LONDON、右上には白黒の古風なLONDON RECORDSのロゴが配されたものですので、1997年3月にリリースされたアルバムの販促物よりも古そうな印象。アルバムのどこにも制作年が記載されていませんので詳細は不明のままです。

このアルバムの録音については、もう一つ情報があります。プロデューサーのジョン・カルショーの著書「レコードはまっすぐに(Putting the Record Straight)」にこのアルバムの中の「太鼓連打」の録音が1949年8月29日にされたとの記載があります。また、ショルティがイギリスのオーケストラとはじめて録音を行ったとのこと(110ページ)。
また、本アルバムの藤田由之氏のライナーノーツによれば、それまでショルティは主にピアニストとして1947年頃から録音をするようにり、この録音の前にチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団を指揮したベートーヴェンのエグモント序曲を収録していたが英DECCAで発売されたのみで、日本では発売されなかったとのこと。ということで、本アルバムの「太鼓連打」がショルティの日本での指揮者デビュー盤ということになります。上のユニバーサルクラシクスのリンクに記載された情報には1997年3月の時点で世界初CD化と触れられていいますので、それ以前にCDとして正式にリリースされたことはなかったのでしょう。

ショルティのハイドンは同じロンドンフィルとのザロモンセットが有名ですが、この中から以前も102番と太鼓連打を取り上げていますので記事のリンクを張っておきましょう。

2010/12/03 : ハイドン–交響曲 : ショルティ/ロンドンフィルによる102番、103番「太鼓連打」2
2010/12/02 : ハイドン–交響曲 : ショルティ/ロンドンフィルによる102番、103番「太鼓連打」

後年のロンドンフィルとのショルティのハイドンは速めのテンポでオケを良く鳴らしたキリッとしたハイドンですが、指揮者としての実質デビュー盤となるこの演奏の太鼓連打はどのような演奏でしょう。

交響曲103番「太鼓連打」1795年作曲
SPから起こしたものか、スクラッチノイズがすこし混ざっていますが、冒頭から遠雷タイプのティンパニのトレモロに続き素晴らしく瑞々しいオーケストラの音色に打たれます。真空管の録音機器で最高のコンディションで録音されたような音色の素晴らしい音響。当時37歳のショルティの溢れんばかりのエネルギーが乗り移ったロンドンフィルのキレのある響き。当時カルショーは前掲書で「ショルティは指揮者としては未熟なところもあったが、演奏には切迫感と緊張感があった。それらはハイドンにはふさわしくないものだったかもしれないが、注目すべき将来性を予感させた」と語っています(山崎浩太郎訳)。当時のハイドンの演奏スタイルから違和感も合ったかもしれませんが、このキレとエネルギーはショルティの巨匠としての存在を決定づけるエネルギーをすでに放出しているように聴こえます。
2楽章のアンダンテ。ゆったりしたテンポなのにオケに殺気が宿ったようなキレ。見事な緊張感。ふと力を抜く部分をはさんだり、良く聴くともの凄くオケを制御していることがわかります。セルにしろショルティにしろハンガリー出身の指揮者のこの見事なコントロールは素晴らしいものがあります。途中のヴァイオリンソロもショルティの意を汲んでか流麗さよりもキレを狙った演奏。オケの強奏部分の迫力はショルティならではの素晴らしいものがあります。
3楽章のメヌエットはショルティの迫力あるエネルギー感がさらに見事。オケのキレも良く音が尖ってます。
フィナーレは速めながらオケを抑えながら入り終盤にいたるまで抑えが見事に効いています。ショルティの素晴らしいコントロール、最後の爆発に備えます。なんでしょう、この素晴らしい生気は。抑えながらもふつふつと沸き上がる巨大なエネルギーが垣間見えます。最後は録音会場はショルティのコントロールするオケの爆発の渦に巻き込まれていたことでしょう。圧倒的なエネルギー。当時の録音装置にはもちろんおさまりきらないダイナミックレンジでしたでしょうが、そのエネルギーは60年以上経た今にもしっかり伝わります。

交響曲102番 1794年作曲
太鼓連打より2年後の録音。今度はスクラッチノイズは聴こえませんのでテープから起こしたものでしょうか。序奏はゆったり入りますが、主題に入ると同時に快速テンポにギアチェンジ。素晴らしい推進力。音自体はなんとなく古い太鼓連打のほうが鮮度があったように聴こえますが、こちらもキレと鮮明度はそこそこあり、十分良い録音。速いテンポながら、フレーズごとにかっちりアクセントがつけられ、またデュナーミクの制御が行き渡っているせいで、前曲同様すばらしい緊張感。コントラバスの弓から松ヤニが飛び散らんばかりの激しいアクセントなどもあり、未曾有の畳み掛け。痺れるような迫力。
2楽章の入りは完璧にギアチェンジ。有名なメロディーが極端にゆったりと流れ至福のひととき。テープのつなぎらしき一瞬の音飛び等の傷もありますが、演奏の価値に全く影響なし。若きショルティの機転がピタリと決まります。豪腕で知られたショルティのオリジンを感じさせる、迫力と抑制の渾然一体となったコントロールの魅力をたっぷり味わえる楽章。大波が来るように起伏をつけ、至福のアダージョを演出。まいりました。
3楽章のメヌエットは完全に意表をつかれました。なんとスローテンポでザクザク入ります。102番の曲想を深く読み取った結果でしょうが、曲の後半に表現のポイントをおいた素晴らしい演出。これまでのショルティのオーケストラを鳴らし切ることに主眼を置く人ととの認識を刷新するような本質的な解釈。木管楽器の奏でる穏やかなメロディーが嵐の前の静けさのように不気味さを伴って鳴り響きます。
フィナーレの入りは快速になると確信して曲間の静寂に異様な緊張が走ります。もちろん速いテンポで、抑えた入り。いつ大噴火するか手ぐすねひいて待つドキドキ感。次第にオケが鋼のような強さを帯びてきます。102番のフィナーレでこれだけの緊張が走るのははじめてのこと。コミカルなメロディーラインなのに、なにごとがおこるのかという異様な雰囲気。最後は静寂の迫力も相俟って素晴らしい盛り上がり。恐ろしいほどに気合いのこもった素晴らしい102番! 聴き終えてくたくた。

交響曲100番「軍隊」1793年~94年作曲
最後の軍隊。102番より3年後の1954年の録音。もうくたくたですが、冒頭から恐ろしいキレで軍隊の聴き慣れたメロディーラインがザクザク進みます。テンポは速め、弦はキレまくり、木管はとろけ、ショルティのコントロールもキレまくり。恐ろしい集中力です。ハイドンにこの素晴らしい演奏を聴かせてあげたいです。沸き上がるオケのエネルギー。この演奏がいままでCD化されなかった理由が知りたいですね。
2楽章は中庸なテンポで静かにはいり、軍隊の更新の興奮を待ちます。タイトに引き締まった、というかショルティに引き締められたロンドンフィルが軍隊の特徴的なメロディーをもの凄い気合いで弾きまくります。ロンドンフィルの特に低音弦セクション、これほどの切れとエネルギーは聴いたことがありません。恐ろしいほどに鍛え上げられたのでしょう。ショルティのハイドンの交響曲の演奏にかける想いが乗り移ったような爆演。2楽章最後のトランペットのソロ以降のエネルギーは凄まじいですね。これは軍隊の過去の演奏でも指折りの名演と言っていいでしょう。
3楽章も中庸なテンポによる堂々としたメヌエット。非常に正統的なメヌエット。聴く方もすこし落ち着きました。1949年の太鼓連打の録音からはじまって、この軍隊の録音までの間にショルティも経験をつみ、演奏の完成度も上がってきたんでしょう。ただし、前の太鼓連打、102番の荒削りながら素晴らしいエネルギーも捨て難いのが正直なところ。
フィナーレも聴いていて安心できる、名演。なぜか打楽器を強調せず弦楽器と木管楽器のメロディーに明らかに焦点を合わせた演奏と録音。打楽器による畳み掛ける迫力ではなく、メロディーの面白さに焦点をあてたかったんでしょうか。それでも最後は怒濤の迫力で終了。最後の軍隊はいろいろなことを考えさせる名演でしたね。

ディスクユニオンの店頭でふと見つけた、ショルティのデビューの頃のハイドンの交響曲3曲を収めたこのアルバム。あまりの素晴らしさに脱帽です。完全に見直しました、ショルティを。評価はもちろん全曲[+++++]。このアルバム人類の至宝レベルの出来です。古い録音でモノラルなのは致し方ありませんが、そのエネルギーは凄まじいもの。ショルティがなぜあれだけ多くの録音を残す名指揮者になったのか、この1枚を聴くだけでよくわかります。

このアルバムが常時手に入らない状態な理由がわかりません。ユニバーサルの方、是非再発売をお願いします!

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シャルル・ミュンシュの102番爆演

最近室内楽つづきでしたので、今日2組目のアルバムは濃いヒストリカル系の交響曲を。

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シャルル・ミュンシュ(Charles Munch)指揮のボストン交響楽団のライヴでハイドンの交響曲102番とモーツァルトの交響曲41番ジュピターを収めたCD-R盤。ハイドンの演奏は1956年9月、モーツァルトは1960年10月22日でどちらもラジオ放送をソースとしたもののようです。

シャルル・ミュンシュは小沢征爾の師として皆さんよくご存知の指揮者だと思います。日本ではベルリオーズの幻想交響曲やブラームスの交響曲1番はミュンシュで育った人も多いのではないでしょうか。フランスもののイメージがつきまとうミュンシュですが、ハイドンの録音はあまり記憶はありません。今回このアルバムを取り上げるにあたって調べてみるといろいろ新たなことがわかりました。ミュンシュの情報を少し取り上げてみましょう。

シャルル・ミュンシュは1891年、その当時はドイツ領だったストラスブールの生まれ。家はドイツ系だったとのことで、第一次世界大戦後にドイツ国籍を選択。後にナチスの台頭によりフランスに帰化したとのことです。1929年にパリで指揮者としてデビューし、その後パリ音楽院管弦楽団、ボストン交響楽団などの常任指揮者を歴任。このアルバムのオケであるボストン交響楽団には1949年から1962年まで在位。1967年にパリ管弦楽団が組織され、初代音楽監督に就任するも翌年のアメリカツアー中に東海岸バージニア州リッチモンドで急逝したとのこと。

ミュンシュと言えば畳み掛けるような迫真の演奏との印象が強いんですが、ウィキペディアの情報などによれば、練習をきらい、即興を好んだとのこと。ミュンシュ独特の迫力溢れる演奏は練習の賜物ではなく、閃きに合ったということなんでしょう。

このアルバムに含まれるハイドンの交響曲102番。ザロモンセットのなかでは大人しい曲調なんですが、ミュンシュがどうドライブするかが聴き所だと思います。

1楽章は厳かな序奏から入ります。ヴァイオリンの透明感溢れるクッキリとしたメロディーがいきなりの存在感。比較的遅めのテンポで入ります。音響的には会場の咳払いなどライヴの雰囲気をつたえる音で、古さはそれほど感じない良い録音です。高音域の鮮明さと比較すると厚みと言うか低音部のボリューム感は薄い感じ。1楽章はテンポは落ち着いているまま、一音一音の迫力はミュンシュの特徴がよくでた迫力ある演奏。とくに強奏部分のキレが演奏がすすむにつれ迫力を増し、1楽章の終盤にはキレも本格的になります。特にヴァイオリンのキレ方は尋常ではありません。
2楽章のアダージョは意外と平板なはじまり。あえて表情付けを抑え気味にしているようですね。徐々にメリハリの振幅が大きくなってきますが、抑えは効いて、それなりのレベルまででおさまります。後半のピークにミュンシュの牙がちらりと垣間見えます。終盤の盛り上がりは溜を効かせてそろそろエンジンがかかってきた模様。
3楽章のメヌエット。推進力が素晴らしいメヌエット。明らかにギアチェンジしてオケにムチが入っているよう。メリハリが非常に鮮明になり鋭角的なフォルティッシモの刻みの波が次々と襲ってきます。ミュンシュの真骨頂ですね。CD-R盤ゆえ、ちょっと音が途切れ気味に聴こえるキズがあります。
そしてフィナーレ。聴く方が既に身を乗り出してます(笑)。ほどなくすばらしいエネルギーが噴出。曲想は冷静なままなんですが音は高炉から流れ出すマグマのごとき溶けた鉄といった風情。最後はさっぱりとした迫力で終わり、拍手に迎えられます。

演奏自体はなかなかの迫力で、ミュンシュならでは畳み掛けるような迫力もあるんですが、ちょっと録音の傷が惜しいところ。評価は[++++]とします。

最近ミュンシュの古い録音のアルバムもいろいろ店頭で多く見かけるようになってきたところを見ると人気もそこそこでしょう。ハイドンの紹介もままならないほど仕事が忙しいので、最近あんまりハイドン以外に手を出せていません。肝心のハイドンも、未整理盤を入れた箱が溢れそうです(笑)

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ショルティ/ロンドンフィルによる102番、103番「太鼓連打」

今日は大御所、ショルティをはじめて取り上げます。

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こちらはだいぶ前にボックスで買いましたが、6枚の単独のアルバムをボックスに入れただけの、所謂なんちゃってボックス。102番と103番を収めたこのアルバムを今手に入れようとすると下記のセットになりますでしょうか。

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HMV ONLINEicon

こちらがザロモンセットを4枚にまとめたボックスセットの現行盤。今日取り上げるのは手元に所有する上の写真の方のアルバムです。

サー・ゲオルク・ショルティ(Sir Georg Solti)指揮のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲102番、103番「太鼓連打」の演奏。レコーディングは1981年12月にロンドンのキングスウェイ・ホールでのセッション録音です。

ショルティはもうおなじみでしょう。70~80年代にはDeutsche Grammophoneのカラヤン、バーンスタインなどと並んでDECCAのショルティという大手レーベルのイメージリーダー的存在として多くの録音をリリースしていました。中でもワーグナーのリングの録音などで知られていますが、私自身のショルティの演奏で最も印象に残っているのは、ドイテコムが夜の女王を歌ったウィーンフィルとのモーツァルトの「魔笛」のアルバム。その演奏を聞くまで私自身ショルティには豪腕というか音楽性よりもオケを豪快に鳴らすショーマン的印象を持っていました。当時通い詰めていた代々木のジュピター・レコードのおご主人からの勧めで手に入れたのがショルティの魔笛。ドイテコムの圧倒的な歌とともに、ショルティのそれまでの印象と全く違う、ウィーンフィルから引き出された自然な響きの驚きが今でも鮮烈に印象に残っています。

このアルバムは81年の録音で、オケはシカゴ響ではなくロンドンフィルということで、オケの機能美のショーピースのような印象となるというよりは、他の指揮者で聞くとかなりぼやけた音も多いロンドンフィルをどのようにコントロールしてハイドンの機知とオケの響きを表現するかがテーマになる演奏でしょうか。

1曲目は102番。先日もヴェーグの素晴しい演奏の息吹にに触れたばかりのハイドンの傑作交響曲。1楽章はショルティらしく、冒頭からいきなり軽々とオケをコントロールした抜けのいい響き。霧のロンドンや、ヨーロッパの伝統というより、純粋にオーケストラを抜けよく鳴らすと言う意図を感じる序奏。主題に入ると速めのスピードで痛快さに重点をおいたようなコントロールで、素晴しい推進力で曲を進めます。オケの音色はシカゴ響ほど鮮明ではありません。録音を通して聴くと厚みと言うか重量感がすこし欠ける印象の音。所々低音弦がインテンポで畳み掛ける部分があるものの、休符の間など意識的に短めにしているようで、スピーディな曲のまとまりを重視した演奏ですね。
続くアダージョは、練らないがゆったり感たっぷりのショルティの特徴が出た良い演奏。不思議にとてもリラックスできる演奏。このアルバムの聴き所の一つでしょう。おじさんの優しさという範疇でしょうか(笑)
3楽章のメヌエット。絹の布のようなデリケートな弦の響きが特徴的なうまく力の抜けたメヌエット。ショルティの豪腕のイメージが先行して鋼のようなメヌエットを予想しますが、完全に良い方に裏切られる演奏。賢明なコントロールですね。オケを自由に鳴らして、非常に自然な響きになってます。映像で見るショルティの指揮姿はくどいほどにアクセントを強調する軍隊のパレードのような印象があり、それもショルティの先入観に悪い影響を与えていますが、この楽章やウィーンフィルとの魔笛の演奏は非常に自然な曲のコントロール。先入観なしに聴けば、オケから自然なフレージングを引き出す名手の演奏ですね。こちらがショルティの真価かもしれません。
フィナーレは1楽章同様軽々とオケをコントロールして、ハイドンのフィナーレの面白さを純音楽的に表現。流麗なフィナーレ。最後は迫力を増してフィニッシュ。流石ショルティというところでしょう。

もちろんこの曲の評価は[+++++]です。若干惜しいのは1楽章の構築感がもうすこしあればというところです。

今日はなぜかここまで。ついさっきまで近くの韓国料理屋さんで一杯やってました(笑) ショルティの演奏とお酒に酔ったので、太鼓連打は明日に!

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲102番 おすすめ盤

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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