デレク・ソロモンス/レストロ・アルモニコの交響曲集第1巻 その2(ハイドン)

珍しく深追い(笑)。前記事の演奏が実に面白かったので続きもレビューしてみたくなりました。

LestroArmonicoVol1.jpg

デレク・ソロモンス(Derek Solomons)指揮のレストロ・アルモニコ(L'Estro Armonico)の演奏で、ハイドンの初期交響曲7曲(Hob.I:1、I:37、I:18、I:2、I:15、I:4、I:10)を収めたLP。題して「モルツィン時代の交響曲集第1巻」。収録は1980年8月19日から24日にかけて、ロンドン、ウッドサイドパークの聖バルナバ教会でのセッション録音。レーベルは英SAGA。

今日は前記事で取り上げた3曲以降の4曲目から7曲目までを取り上げます。前記事で聴いた中では1番がちょっと固かっただけで、その後の2曲は絶品でした。こうなると残りもしっかり聴かざるを得ません。

2017/10/03 : ハイドン–交響曲 : デレク・ソロモンス/レストロ・アルモニコの交響曲集第1巻(ハイドン)

奏者やアルバムについては前記事をご覧ください。

Hob.I:2 Symphony No.2 [C] (before 1764)
リズムの面白さは変わらず躍動感満点。丁寧に演奏していながらキリリとアクセントが効いて、古楽器の爽やかな音色でハイドンのユーモラスなメロディーの面白さが滲み出てきます。つづくアンダンテはさらりと流すような楽章ですがメロディーの重なりの奥に深い情感が宿る見事な展開。微妙な起伏をしっかりと描いていくことで得られる面白さ。フィナーレもフレーズをくっきりと描きまとめます。初期のハイドンの交響曲の面白さを実に自然に料理してワンプレートにバランスよく並べたような、普段から楽しめる、味わい深い音楽。

Hob.I:15 Symphony No.15 [D] (before 1764)
癒しに満ちたアダージョから入ります。ピチカートに乗って優雅なフレーズが漂います。ホルンのとろけるような響きが重なり、こちらもとろけそうになったところでプレストのキレのいいメロディーが癒しを断ち切ります。全てが必要十分。大げさなところはないのにキレ味は十分。再びアダージョにもどって1楽章を結びます。つづくメヌエットはもっともハイドンらしい楽章。ここでもゆったりとしながらも活き活きとしたオケの響きが素晴らしく、音楽が弾みます。そして3楽章のアンダンテの光と陰が交錯する透明感。フィナーレはコンパクトなキレの良さ。最後の一音のキレが耳に残ります。

IMG_9889.jpg

Hob.I:4 Symphony No.4 [D] (before 1762)
3枚組、6面中の5面目。前2曲のみが1面につめこまれていたのに対し、この曲を含む他の曲は1面1曲とゆったりカッティングされており、響きにも余裕が感じられます。リズムのキレは変わらず、軽やかさも十分で音楽がポンポン弾む快感を味わえます。続くアンダンテは弱音器付きのヴァイオリンによる実にユニークな美しいメロディーに驚きます。ソロモンスもこの翳りに満ちた美しい気配を見事に表現していきます。その静けさを断ち切る明るいメヌエットで曲を締めくくる見事な構成。1曲1曲の構成感をしっかり描いてきます。

Hob.I:10 Symphony No.10 [D] (before 1762)
このアルバム最後の曲。もう安心して身を任せていられます。必要十分な小気味好い展開の魅力にすっかりハマります。それもそのはず、メンバー表を見てみるとヴァイオリンにはモニカ・ハジェット、ロイ・グッドマン、チェロにはアンソニー・プリース、ホルンにはアンソニー・ハルステッドなど名手の名が並びます。印象的なのは2楽章のアンダンテの静けさに染み入るような演奏。古楽器の弦の透明感あふれる響きの美しさが際立ちます。フィナーレももちろん見事。言うことなし。

デレク・ソロモンスの振るレストロ・アルモニコによる交響曲集ですが、CBSからリリースされている3巻の印象が、ピノックやホグウッドなどを聴いた耳にはあまりぱっとした印象がなかったことからこれまであまり注目していませんでしたが、偶然手に入れた彼らの最初の交響曲集のLPを聴くと、流石に古楽器によるハイドンの交響曲の草分けたる見事な演奏であることがわかりました。名奏者集団による鮮やかな演奏であるばかりでなく、ハイドンの初期の交響曲の箱庭的な面白さをバランスよく表現した名演奏と言っていいでしょう。今回取り上げた4曲はいずれも[+++++]といたします。CBSの録音も今一度聞き直して見たくなりましたね。

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パトリック・ガロワ/シンフォニア・フィンランディアの初期交響曲集

今日は聴き散らかしたCDを片付けているときに気になったアルバムをチョイス。

Gallois1_5.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

パトリック・ガロワ(Patrick Gallois)指揮のシンフォニア・フィンランディアの演奏でハイドンの交響曲1番から5番までを収めたアルバム。収録は2004年5月26日から28日、フィンランド中部のユヴァスキュラ近郊の街、スオラハティにあるスオラハティホールでのセッション録音。レーベルは廉価盤の雄NAXOS。

パトリック・ガロワは昔はイケメンフルート奏者として知られていた人。1956年フランスのリール北部のランセルという街生まれ。ランセルはフランス北部というよりベルギー国境間際の街。パリ音楽院でフルートをピエール・ランパルに学び、リール・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を経て、1977年にフランス国立管弦楽団の首席フルート奏者となり一躍スター・フルーティストとなりました。1984年にフランス国立管弦楽団を退団してからはソリストして有名オケ、指揮者と共演しアルバムも多くリリースしています。2003年からはこのアルバムのオケであるシンフォニア・フィンランディアの音楽監督になり、ヨーロッパや日本にもツアーで訪れているようです。

シンフォニア・フィンランディアは正式名称はユヴァスキュラ・シンフォニア・フィンランディアというようです。ホームページがありますので紹介しておきましょう。

Sinfonia Finlandia Jyväskylä(英文)

Hob.I:1 / Symphony No.1 [D] (before 1759)
この曲の刷り込みはもちろん火の玉の塊のようなエネルギーに満ちたドラティ盤ですが、この演奏はそれに負けない生気をもったはじまり。非常に良く磨かれたオケの各楽器の演奏。ガロワのコントロールはアクセントの部分をかなりレガートを聴かせて、流麗さを強調したもの。デュナーミクのコントロールが緻密で、オーケストラの各楽器の織りなす音色の彩を楽しめます。オケのテクニックは素晴らしいものがあります。特に木管楽器の美しい音色が抜群。
2楽章のアンダンテは雄弁に鳴り響くハープシコードの通奏低音が雅な雰囲気を醸し出しています。オケは懐の深いフレージング。弦楽器も良くそろって清潔感のあるアンサンブル。さっぱりしているのに表現は薄くなく、じわりと心に響く音楽。ヴァイオリンパートの美しい音色は素晴らしいものがあります。非常に豊かな音楽。録音も新しいものらしく広い空間と適度な距離感を感じさせてオケが定位し、鮮明さ兼ね備えた素晴らしいもの。ハープシコードの音色も絶品。
フィナーレは鮮烈さを落ち着いて表現するような実に味わい深いもの。慌てたところは一切なく、楽譜どおりに音を置いていく感じ。テンポも落ち着いていて、プレストをじっくり表現するよう。ガロワ、指揮者としてもかなりの腕前と見ました。1曲目から素晴らしい出来。

Hob.I:2 / Symphony No.2 [C] (before 1764)
レガートはそのままに、この曲ではかなり主題をデフォルメして溜めた展開。冒頭からからかなり個性的なフレージング。かなりテンポを落としてメロディーラインをなぞっていきます。ここでもオーケストラの精度は抜群。ガロワの確信犯的アプローチですね。ただ、慣れると妙に心地よいものがあり、冒険は失敗ではありません。
2楽章のアンダンテはデリカシーあふれる演奏に戻り、これも対比と納得。やはり微妙な強弱をしっかり演出しながら特にヴァイオリンのパートが絶妙。なぜか最後の一音は消え入る隙もないほどの短さ。演奏の意図か編集ミスかわかりません。
フィナーレは全曲とは異なりテンポも含めて鮮度と生気を十分に反映したもの。中央奥から聴こえるホルンの響きが素晴らしい効果を挙げています。同じプレストでも前曲とは生気が違います。素晴らしい推進力。

Hob.I:3 / Symphony No.3 [G] (before 1762)
おそらく前2曲とは作曲年代が異なり少し後のものと推測されています。やはり生気あふれるいい入り。この曲は4楽章構成。ガロワの腕力を如実に表すのはフレーズの切れ目での休符の扱いと表情の変化のキレ。こうゆうところをきちんと処理するだけで演奏の浸透度はかなり異なります。この曲では推進力だけではなく曲の中での表情の切り替えが見事なので、曲がびしっと引き締まって聴こえる訳です。
2楽章は短調の素晴らしいメロディーラインを堪能できます。とろけるようなオケの響きから聴こえるシュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲にもひけをとらない素晴らしく美しいメロディー。ハープシコードがここでも雄弁すぎるくらいの活躍。テンポ感と情感のバランスが絶妙。
3楽章はメヌエット。後年の交響曲ほどの充実は望めませんが、音を切り気味に舞曲を進め、中間部はヴァイオリンとホルン、木管楽器、通奏低音の掛け合いの妙を楽しめます。
フィナーレはジュピター交響曲のフーガに似ています。基底になる旋律をいろいろな楽器に受け継ぎながら曲を進め、ここでも自然さは十分なもの。この曲では表現意欲は抑えられ、曲自体の感興の表現に徹するもの。

Hob.I:4 / Symphony No.4 [D] (before 1762)
最初の一撃のあと一拍置く感じが独特。ただ2番で見せた表現意欲は抑えられ、極めてオーソドックスな演奏。もはや手慣れたコントロールで曲をこなしていくようなそぶりが感じられなくはありませんが、凡庸な演奏ではありません。
2楽章はアンダンテ。これまでどおり、曲を生気あふれるコントロールでこなしていくと言う姿勢に変わりはありません。デリケートな音の重なり見事。
フィナーレは出だしからしっかりとした響きではじまります。もはや言葉で説明する必要がないほどの充実ぶりです。鮮度、フレージング、響きの美しさどれをとっても素晴らしいものです。

Hob.I:5 / Symphony No.5 [A] (before 1762)
1楽章がアダージョ。何と優しい響きの入り。ホルンと弦楽器、通奏低音の見事なアンサンブル。特にホルンの存在感は素晴らしいものがあります。のどかな旋律をじっくり味わえる見事な演奏。この自然さは至福の一時。じっくりじっくり曲を味わい尽くすような素晴らしい演奏。
2楽章はアレグロ。ここに来て攻める攻める。美しいオーケストラの響きはそのまま、ちょっとズレた拍子の面白さを十分に表現してハイドンの曲の意図通り素晴らしい感興を再現しています。この楽章のテンションは流石。
3楽章のメヌエットは徐々に後年の充実したメヌエットの片鱗を感じさせるようになります。ホルンからはじまり木管に受け継がれる中間部のメロディーはオケの奏者の素晴らしいテクニックを堪能できる部分。リズムのキレも曲のキレも素晴らしいですね。楽章の終わりがそうとはわからない程自然なのも特徴。ふつうもう少しメリハリをつけるところでしょうが、気づくか気づかないかのうちに楽章を閉じます。
フィナーレは1分少しの短いもの。吹き上がるオケ、レガートを多用しながら響きの織りなす彩で聴かせる素晴らしいコントロール。ハイドンのフィナーレの見事な音楽が眼前に素晴らしい立体感で表現され、このアルバムを閉じます。

パトリック・ガロワ指揮のシンフォニア・フィンランディアによるハイドンの初期交響曲集。オーケストラコントロールは素晴らしいもの。微妙なデュナーミクのコントロールは鳥肌レベル。そしてすこしレガートを効かせてアタックよりもメロディーラインの美しさを強調して素晴らしい効果を挙げています。フィンランドのローカルオケでしょうが演奏の技術と響きの美しさは国際級、というよりベストに近いもの。ガロワの表現も適度に個性的で、そして適度にオーソドックス。私の求めるハイドンの理想的な演奏です。評価は、ちょっと冒険しすぎた2番が[++++]、その他の4曲は[+++++]とします。

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プロフィール

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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