ベーラ・ドラホシュ/エステルハージ・シンフォニアのホルン信号他

なぜかNAXOSの交響曲全集巡りの勢いが止められず、次にいきます。

Drahos27.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

ベーラ・ドラホシュ(Béla Drahos)指揮のニコラウス・エステルハージ・シンフォニア(Nicholaus Estergázy Sinfonia)の演奏で、ハイドンの交響曲27番、28番、31番「ホルン信号」の3曲を収めたアルバム。収録は1998年2月、ハンガリーの首都ブダペストのフェニックス・スタジオでのセッション録音。

ドラホシュはNAXOSの全集では、Vol.11、12、13、14、15、21、23、25、27の9巻を担当。このアルバムはVol.23です。前記事で取りあげたヘルムート・ミュラー=ブリュールとともにNAXOSのハイドン交響曲全集の中核を担う指揮者です。ドラホシュはなんとNAXOSではベートーヴェンの交響曲全集を担当しており、NAXOSレーベルの信頼も厚い指揮者という事が出来るでしょう。

ドラホシュは1955年、ハンガリーの南西部にあるカポシュヴァール(Kaposvár)生まれの指揮者。1969年、ハンガリー北部のジェール(Györ)音楽院に入り、1971年プラハで行われた国際フルートコンクールで優勝、翌年行われたハンガリーテレビ主催のフルートコンクールでも優勝するなどフルート奏者として有名になりました。1978年、ブダペストのフランツ・リスト・アカデミーを優秀な成績で卒業し、その後プラハ、ブラチスラヴァなどで数多くのコンクールに入賞するなど、旧東欧圏ではフルート奏者として知られた存在だったでしょう。その後ハンガリー放送管楽五重奏団の創設メンバー、リーダーを務め、また1976年からはブダペスト交響楽団の首席フルート奏者として活躍しました。近年は指揮者としての活動が多くなり、1993年からはハンガリー国立交響楽団(現ハンガリー国立フィルハーモニー)の指揮者など指揮者としても有名に。現在はご存知のようにNAXOSの看板指揮者の一人として大活躍です。

ニコラウス・エステルハージ・シンフォニアは1992年、このアルバムの収録にも使われたブダペストのフェニックススタジオのレコーディング・プロデューサーにより設立された録音用のオーケストラ。奏者はハンガリー国内の主要なオケの奏者が中心。NAXOSの録音が中心ですが、コンサートも開くようです。指揮者はドラホシュが終身指揮者となっています。

初期のNAXOSの交響曲全集を支えた1人であるドラホシュの演奏、好きなホルン信号を含むアルバムを選びましたが、これがまた素晴らしいんですね。

Hob.I:27 / Symphony No.27 [G] (before 1766)
非常に自然なソノリティの導入。この初期の曲を流麗な雰囲気を万全に表現。フルート奏者出身と聞いて木管楽器であるオーボエのコントロールに耳を峙てると確かに非常に滑らかなフレージングであることがわかります。ハイドンの活気ある音楽を楽譜通りに演奏し、生気もなかなかのもの。癖のない演奏というのが印象ですが、無色透明な印象の薄い演奏ではなく、ハイドンの音楽が指揮者の個性よりも浮かび上がってくるような理想的な演奏と言えばいいでしょうか、NAXOSがドラホシュを重用する理由がわかります。
2楽章はアンダンテ。弱音器つきの弦楽器が奏でる郷愁を誘うようなメロディーをリズミカルにさらりとこなしていきます。ここでも自然さが際立ちます。
この曲は3楽章構成。初期の曲だけにフィナーレの構成はまだシンプルな曲想ですが、迫力は十分。録音もスタジオ録音ということで空間を感じるような録音ではありませんが、程よくバランスの良いもので鑑賞には十分です。

Hob.I:28 / Symphony No.28 [A] (1765)
少し時代が下って1765年の曲。1楽章は非常にユニークなメロディーラインが特徴。音階の絡み合う様子を楽しむ曲。やはり曲自体の面白さを際立たせる万全のコントロール。かなりメリハリをはっきりつけますが自然さは崩しません。オーボエとホルンが見事な腕前でメロディーを補います。
前曲同様弱音器付きの弦楽器が奏でるほの暗いメロディー。このあと訪れるシュトルム・ウント・ドラング期の沈み込む情感を予感させる素晴らしいメロディー。ドラホシュはこれ以上ないほどに忠実に美しいメロディーを描いていきます。この楽章、ドラホシュのあくまでも自然なソノリティを重視するスタンスがドンピシャ。
メヌエットは耳に残る印象的なメロディーをベースとして、その展開を楽しむもの。中間部のふと昔を思い出すような美しいメロディーはドラホシュのデリケートな扱いで絶品。再び最初のメロディーに戻ります。
フィナーレは何とも言えないじっくりとした楽章。抑えた入りのメロディーが想像しない方向に展開し、聴き手の想像力を超えるハイドンの創意に驚くような造り。ホルンの音色が素晴らしい効果。

Hob.I:31 / Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
そしてこのアルバムの目玉のホルン信号。なんと極上の響き。トスカニーニ盤の素晴らしい冒頭のエネルギーを彷彿とさせる音の塊。各奏者のテクニックは非常に安定感のあるもの。ハンガリーの主要オケの名だたる奏者が集まっている事が頷けます。ホルンを目立たせたり、メロディーラインを強調する演奏が多いものの、ドラホシュはあくまでも自然な音楽を作る事に集中しているようで、オケ全体の音色が溶け合うように絶妙なバランスを保ちながら、活き活きとした音楽を作り上げていきます。ホルンの正確なリズムが痛快。ヴァイオリンを主体とした弦楽器のキレもハンガリー風のキレのいいもの。フルートももちろんニュアンスに富んだ演奏。1楽章は圧巻の出来。
2楽章のアダージョはソロ活躍する曲ですが、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ホルンとも抜群の腕前。ベルリンフィルよりもソロの腕前は上といっていいくらいの出来。各奏者が虚心坦懐に全体と調和しているという点ではベルリンフィル以上でしょう。まとめるドラホシュの腕前も確かなもの。ここでもハイドンの美しい音楽だけが抜群の存在感で残ります。終盤はとろけるようにしっとりとした展開。10分を超える長い楽章ですが聴き手を惹き付けてあっという間と感じさせる素晴らしい出来。
メヌエットは前楽章を踏まえてか、ゆったりとした入り。オケ全体の力が抜けて素晴らしい感興。うっすら聴こえるハープシコードの響きが雅さも加えて、オケ全体がスタジオ録音とは思えないほど溶け合った響き。完璧な響き。この曲の落ち着いた流れの真髄をつく演奏。
フィナーレは再びソロが活躍。絶品のソロがメロディーを受け継いでいきます。ヴァイオリン、フルート、ホルンと続きますが、それぞれ不安定さは微塵もなく惚れ惚れするような出来。終盤にはコントラバスのソロまであり、一貫した音楽が続きます。最後は全奏で盛り上がって終了。

ベーラ・ドラホシュ指揮のニコラウス・エステルハージ・シンフォニアの演奏するハイドンの初期交響曲3曲を収めたアルバム。そのナチュラルな解釈は個性的かどうかという議論が意味がないほどハイドンの交響曲の真髄をついたもの。今回あらためて聴き直してみ直した次第。評価はホルン信号が「+++++」他の2曲が[++++]としたいと思います。

同じNAXOSではミューラー=ブリュールがキビキビとした爽快さ、ニコラス・ウォードがじっくりとした古典の均衡を、ケヴィン・マロンは古楽器による色彩感豊かさ、パトリック・ガロワがレガート効かせたデュナーミクのコントロールと様々な個性を聴かせながら全体として素晴らしい演奏で全集を構成しています。このなかではミュラー=ブリュールが少し画一的な印象をかんじさせるくらいで、それぞれ素晴らしい演奏です。

唯一取りあげていないVol.1から5を担当するバリー・ワーズワース指揮のカペラ・イストロポリターナがちょっと粗さが目立ち、しかもザロモンセットなど大曲を多く担当しているので、その印象がNAXOSの交響曲全集の印象に影響しているのかも知れません。こうして取りあげたワーズワース以外の交響曲の演奏はどの演奏も一級品。千変万化するハイドンの交響曲を6人の指揮者で構成した異色の全集ですが、特に初期、中期の交響曲の出来は素晴らしいものがありますので、まだ手に入れていない方は是非入手してみてください。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲27番 交響曲28番 ホルン信号 交響曲全集

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ベートーヴェン紀尾井ホールショスタコーヴィチストラヴィンスキードビュッシーラヴェルピアノ三重奏曲ミューザ川崎オーボエ協奏曲LP協奏交響曲日の出ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:20ピアノソナタXVI:38サントリーホールスタバト・マーテルピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:39マーラーブルックナーヒストリカル十字架上のキリストの最後の七つの言葉告別交響曲90番交響曲97番交響曲99番交響曲18番奇跡アレルヤひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番ラメンタチオーネ交響曲86番モーツァルトヴァイオリン協奏曲驚愕哲学者ニコライミサミサブレヴィス小オルガンミサ交響曲95番交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計軍隊ピアノソナタXVI:23王妃ピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹ライヴ録音SACDチェロ協奏曲交響曲19番交響曲81番古楽器交響曲80番交響曲全集交響曲21番マリア・テレジアクラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかり無人島騎士オルランドBlu-rayチェロ協奏曲1番東京オペラシティ交響曲9番交響曲11番交響曲10番交響曲12番太鼓連打ロンドン交響曲15番交響曲2番交響曲4番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:3天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:35ドニぜッティライヒャロッシーニピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3シェーンベルク東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26ピアノソナタXVI:31パレストリーナタリスモンテヴェルディアレグリバードすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6美人奏者四季交響曲70番迂闊者ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンシューベルト交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナード弦楽四重奏曲Op.76ピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオ交響曲88番オックスフォードオフェトリウムドイツ国歌カノンモテット弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生音楽時計曲ピアノソナタXVI:11ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bisカートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47読売日響第九オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャマリアテレジア交響曲56番交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲107番変わらぬまこと交響曲108番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティ声楽曲カンタータ戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
05 | 2018/06 | 07
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
当ブログが発掘した超名演盤
ViventeR.jpg
衝撃の爆演(記事1 記事2

PetersenQ.jpg
Op.1の超名演(記事

Destrube.jpg
美音の饗宴(記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック


クラシックの独自企画・復刻盤は要注目


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実
HMVジャパン
HMV & BOOKS ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV & BOOKS ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

おすすめ(音楽以外)





アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
112位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
12位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ