デレク・ソロモンス/レストロ・アルモニコの交響曲集第1巻 その2(ハイドン)

珍しく深追い(笑)。前記事の演奏が実に面白かったので続きもレビューしてみたくなりました。

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デレク・ソロモンス(Derek Solomons)指揮のレストロ・アルモニコ(L'Estro Armonico)の演奏で、ハイドンの初期交響曲7曲(Hob.I:1、I:37、I:18、I:2、I:15、I:4、I:10)を収めたLP。題して「モルツィン時代の交響曲集第1巻」。収録は1980年8月19日から24日にかけて、ロンドン、ウッドサイドパークの聖バルナバ教会でのセッション録音。レーベルは英SAGA。

今日は前記事で取り上げた3曲以降の4曲目から7曲目までを取り上げます。前記事で聴いた中では1番がちょっと固かっただけで、その後の2曲は絶品でした。こうなると残りもしっかり聴かざるを得ません。

2017/10/03 : ハイドン–交響曲 : デレク・ソロモンス/レストロ・アルモニコの交響曲集第1巻(ハイドン)

奏者やアルバムについては前記事をご覧ください。

Hob.I:2 Symphony No.2 [C] (before 1764)
リズムの面白さは変わらず躍動感満点。丁寧に演奏していながらキリリとアクセントが効いて、古楽器の爽やかな音色でハイドンのユーモラスなメロディーの面白さが滲み出てきます。つづくアンダンテはさらりと流すような楽章ですがメロディーの重なりの奥に深い情感が宿る見事な展開。微妙な起伏をしっかりと描いていくことで得られる面白さ。フィナーレもフレーズをくっきりと描きまとめます。初期のハイドンの交響曲の面白さを実に自然に料理してワンプレートにバランスよく並べたような、普段から楽しめる、味わい深い音楽。

Hob.I:15 Symphony No.15 [D] (before 1764)
癒しに満ちたアダージョから入ります。ピチカートに乗って優雅なフレーズが漂います。ホルンのとろけるような響きが重なり、こちらもとろけそうになったところでプレストのキレのいいメロディーが癒しを断ち切ります。全てが必要十分。大げさなところはないのにキレ味は十分。再びアダージョにもどって1楽章を結びます。つづくメヌエットはもっともハイドンらしい楽章。ここでもゆったりとしながらも活き活きとしたオケの響きが素晴らしく、音楽が弾みます。そして3楽章のアンダンテの光と陰が交錯する透明感。フィナーレはコンパクトなキレの良さ。最後の一音のキレが耳に残ります。

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Hob.I:4 Symphony No.4 [D] (before 1762)
3枚組、6面中の5面目。前2曲のみが1面につめこまれていたのに対し、この曲を含む他の曲は1面1曲とゆったりカッティングされており、響きにも余裕が感じられます。リズムのキレは変わらず、軽やかさも十分で音楽がポンポン弾む快感を味わえます。続くアンダンテは弱音器付きのヴァイオリンによる実にユニークな美しいメロディーに驚きます。ソロモンスもこの翳りに満ちた美しい気配を見事に表現していきます。その静けさを断ち切る明るいメヌエットで曲を締めくくる見事な構成。1曲1曲の構成感をしっかり描いてきます。

Hob.I:10 Symphony No.10 [D] (before 1762)
このアルバム最後の曲。もう安心して身を任せていられます。必要十分な小気味好い展開の魅力にすっかりハマります。それもそのはず、メンバー表を見てみるとヴァイオリンにはモニカ・ハジェット、ロイ・グッドマン、チェロにはアンソニー・プリース、ホルンにはアンソニー・ハルステッドなど名手の名が並びます。印象的なのは2楽章のアンダンテの静けさに染み入るような演奏。古楽器の弦の透明感あふれる響きの美しさが際立ちます。フィナーレももちろん見事。言うことなし。

デレク・ソロモンスの振るレストロ・アルモニコによる交響曲集ですが、CBSからリリースされている3巻の印象が、ピノックやホグウッドなどを聴いた耳にはあまりぱっとした印象がなかったことからこれまであまり注目していませんでしたが、偶然手に入れた彼らの最初の交響曲集のLPを聴くと、流石に古楽器によるハイドンの交響曲の草分けたる見事な演奏であることがわかりました。名奏者集団による鮮やかな演奏であるばかりでなく、ハイドンの初期の交響曲の箱庭的な面白さをバランスよく表現した名演奏と言っていいでしょう。今回取り上げた4曲はいずれも[+++++]といたします。CBSの録音も今一度聞き直して見たくなりましたね。

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tag : 交響曲2番 交響曲15番 交響曲4番 交響曲10番 古楽器

【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)

いよいよ第3巻まで来ました。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏で、ハイドンの交響曲42番、「無人島」序曲、交響曲64番「時の移ろい」、コンサートアリア「ひとり物思いに沈み」(Hob.XXIVb:20)、交響曲4番の5曲を収めたアルバム。収録は2015年11月18日から22日にかけて、ベルリンのテルデックス・スタジオでのセッション録音。レーベルはouthere MUSICグループのALPHA-CLASSICS。

このアルバムはご存知の通り、ジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドン交響曲全集の第3弾。このシリーズについては、膨大なハイドンの交響曲全集への挑戦ということで前2作もレビューに取り上げています。

2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

シリーズの企画についてや、演奏者については第1巻の記事をご参照ください。このシリーズ、いつも丁寧な日本語解説をつけて販売しているマーキュリーから国内盤がリリースされていて、いつもはそちらを手に入れるのですが、今回のアルバムはamazonで見かけてポチった際、あまり考えずに注文したため、輸入盤の方を入手してしまいました。

このシリーズ、ジャケットやアルバムの造りは非常に手が込んでいて、レーベルのこのシリーズにかける意欲が伝わって来ます。膨大なハイドンの交響曲全曲をハイドンの生誕300年のアニヴァーサリーイヤーである2032年までかけてリリースするという壮大な計画ゆえ、商業的に成り立つには演奏の出来が非常に重要です。レビューに書いた通り、第1巻はアントニーニの躍動感と全集を見据えた冷静さのバランスのとれた名演奏でしたが、第2巻はちょっと力みが感じられ、今後に不安を残しました。そしてこの第3巻ということで、今後を占う重要なリリースとなるわけです。

ということで期待の第3巻を聴いてみましょう。

Hob.I:42 Symphony No.42 [D] (1771)
シュトルム・ウント・ドラング期の交響曲。冒頭から俊敏な古楽器オケが躍動しますが、力む感じはなく、オケが一番キレた音を聴かせる範囲での演奏。やはり全集を見据えての落ち着きのようなものが感じられます。もちろんアントニーニらしいうねるような躍動感は健在ですので、いいバランス。古楽器らしいタイトな響きと凝縮したエネルギーを保った良い演奏。全集としては理想的な演奏に聴こえます。
1楽章のエネルギーを癒すように、極めて自然な2楽章の入り。このあたりの絶妙なセンスは流石です。聴きなれた2楽章のメロディーがすっと耳に入って来ます。作為を避けた虚心坦懐な演奏。仄暗いこの時期のハイドンの音楽の魅力が滲み出します。静寂に吸い込まれるような弱音のコントロールが見事。
メヌエットは鮮やかな弦楽器のキレが聴きどころ。ここでも弱音をしっかり抑えることで音楽にくっきりと陰影がつきます。アントニーニのコントロールが行き渡った素晴らしい精度。
間をおかずフィナーレに入りますが、このあたりの曲間のセンスは前記通り素晴らしいものがあります。ざわめくような絶妙の感覚。聴く方も聴覚を研ぎ澄ませて構えます。いつもながらフィナーレに仕込んだハイドンのアイデアのキレの良さを確認しながら聴きます。ブレーズごとに千変万化する音楽をアントニーニが完璧に汲み取り、アイデアのおもちゃ箱のように仕上げて来ます。第3巻の最初の曲はこれまで最高の出来と言っていいでしょう。

Hob.XXVIII:9 "L'isola disabitata" 「無人島」 (1779)
オペラの序曲を挟んで来ました。シュトルム・ウント・ドラング期の少し後の曲。序奏はぐっとテンポを落として深く沈みますが、主題に入るとエネルギー爆発。ここでも力みはなく、吹っ切れた開放感に満ちた演奏。ほんのわずかの違いですがこれが大きいんですね。この曲はアントニーニのいいところが非常によく出ています。次々に襲い来る打撃を見事にオケをコントロールしてエネルギーの波としてこなします。やはり抑えた部分をしっかりコントロール出来ているからこそのこの躍動感でしょう。見事。

Hob.I:64 Symphony No.64 "Tempora mutantur" 「時の移ろい」 [A] (before 1778)
この曲は告別同様シュトルム・ウント・ドラング期最盛期の作曲と分類されています。アントニーニはこの巻では非常に落ち着いていて、クライマックス以外の部分ではかなり冷静に音楽を制御しています。この曲の1楽章でも、時折キレの良いアクセントでアントニーニらしさを主張しますが、使いどころが適切なのでゴリ押し感は皆無。第3巻になってハイドンの音楽の真髄に近づいたのでしょう。さりげない部分の表現も非常に上手く、これまでの古楽器の演奏ではもっとも自然な表情豊かさを感じます。古楽器による演奏での決定盤を感じさせるオーラに包まれています。
42番同様、静寂からすっと入る絶妙な2楽章の入り。この楽章はアントニーニの抑えた表現が冴え渡って素晴らしい展開。静寂の中にそっと流れる厳かな音楽。そしてこの曲がこれほどまでに聴きごたえがあったのかと再認識。
メヌエットは鮮やかなキレの良さで聴かせるのは変わらず。しかも軽さを伴った見事なキレ。古楽器ならでは妙技と唸ります。
そしてフィナーレも穏やかな表情から湧き上がるエネルギーのスロットルコントロールが見事。途中からスイッチが入り、アントニーニ特有の炸裂感を楽しみます。ハイドンの交響曲の面白さが詰まった名演奏と言っていいでしょう。ここまでべた褒めですが、いいものはいいんですね。

Hob.XXIVb:20 Aria da "Il canzoniere" di Francesco Petrarca "Solo e Pensoso" 「ひとり物思いに沈み」 [E flat] (1798)
1798年と少し年代が降ったコンサート用アリアを挟んで来ました。ソプラノはフランチェスカ・アスプロモンテ(Francesca Aspromonte)という人。1991年生まれの若手。ザルツブルクのモーツァルテウム、ローマのセチェチーリア国立アカデミーのレナータ・スコットオペラスタジオなどで学んだ人。非常に透明感のある軽やかな歌声が素晴らしい人ですね。
しっとりとしながらも劇的な伴奏に乗って、透き通るような美声が轟きます。以前聴いた中ではヌリア・リアルに似た声質ですね。古楽器に合う声でしょう。アントニーニはこのアリアでも抑制が効いたコントロールでオケを制御。途中からオケにぐっと力が漲り、アントニーニの面目躍如。アスプロモンテも難しい高音の聴かせどころを難なくこなして実力のほどを見せつけます。交響曲の合間に歌曲が置かれるのも粋な選曲。

Hob.I:4 Symphony No.4 [D] (before 1762)
最後は初期の交響曲。冒頭からはち切れんばかりのエネルギー。この曲をアルバムの最後に持って来た理由がわかります。初期の小交響曲ですが、迫力満点。そしてアントニーニの振るこのオケのテンションの高さがもっともよく伝わる演奏。アクセントとメロディーの流れのバランスが良く、力みは感じません。ファイの演奏も似たキレキレの演奏ながら、ファイがフレーズ毎に創意を凝らして、即興的面白さを聴かせるの似たしアントニーニは周到に演奏プランを練ったキレという感じ。キレそのものを聴かせるアーノンクールとも異なる音楽的完成度を感じます。この1楽章はキレまくってますね。
極度に音量を落としたアンダンテが1楽章の鮮やかさを引き立てます。日向から暗い室内に入り、暗闇の中の微妙な濃淡に目が慣れて来てうっすらとフォルムを見通せた時のよう。ハイドンは創作の初期からこれほどの深い音楽を書いていたことに改めて驚きます。そして、この絶妙のコントラストでハイドンの意図を見抜いたアントニーニの才能にも驚きます。
この曲は3楽章構成で終楽章がメヌエット。曲は比較的シンプルなんですが、アントニーニの棒によって鮮烈なメヌエットが流れ、シンプルな曲のシンプルさに深い陰影がついて見事なフォルムに仕上がりました。最後は各パートのアクセントがせめぎあう饗宴のごとき音楽が痛快。最後の1フレーズの厳しいアクセントがアントニーニらしい余韻を残します。

ジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドンの交響曲全集の第3巻はこれまでで一番キレた素晴らしい演奏でした。アントニーニも第2巻で聴かれたちょっと空回りするような力みから抜け出し、抑えた部分をしっかり抑えて各曲にくっきりとコントラストをつけて来ました。ホグウッドに欠けていたエネルギーがあり、ピノックよりもクッキリとアクセントをつけ、ブリュッヘンよりもムラがなく、クイケンよりも踏み込んだ、古楽器による決定盤を予感させる素晴らしい出来でした。これは続くリリースが楽しみです。評価は全曲[+++++]とします。

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マックス・ゴーバーマン/ウィーン国立歌劇場管の交響曲集

今日は、湖国JHさんからお借りしたアルバム。

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マックス・ゴーバーマン(Max Goberman)指揮のウィーン国立歌劇場管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲48番「マリア・テレジア」、4番、17番、1番、そして歌劇「裏切られた誠実」序曲を収めたCD-R。収録年は不明ですが、このシリーズの録音がはじまったのが1960年、ゴーバマンが亡くなったのが1962年ということで、その間の録音。今回入手したCD-Rには録音会場の記載があり、ウィーンのコンツェルトハウスでのセッション録音。レーベルは米Haydn House。

皆様お気づきのこととは思いますが、マックス・ゴーバーマンの「マリア・テレジア」は以前LPで当ブログで紹介しました。ドラティの前にハイドンの交響曲全集の完成を目指した人。演奏も絶品でした。ゴーバーマンがもう少しだけ長生きしていれば、ハイドン演奏史が変わったかもしれない偉大な存在でしょう。今は知る人ぞ知るという存在です。

2013/04/15 : ハイドン–交響曲 : マックス・ゴーバーマン/ウィーン国立歌劇場管弦楽団のマリア・テレジア、56番

このLPは偶然手に入れたものだったんですが、上の記事で触れたHaydn Houseなるところで、CD化されていることを紹介しておりましたら、よくメールをいただく湖国JHさんが、果敢にも当記事を見て注文され、そして今回お借りした次第。私も注文しようかとは思っていたのですが、まごまごしているうちに、先に聴かれてその素晴らしさから、こちらに貸していただいたと言う流れです。Haydn Houseのリンクも再掲しておきましょう。

Haydn House - SDA

LPはゴーバーマンが興した予約販売のレーベルのものではなくCBSからリリースされているものでした。今回聴くHaydn HouseのCD-Rには「マリア・テレジア」が含まれているため、LPとの聴き比べもできます。音質が問題なければゴーバーマンの遺産を手に入れたくなってしまいますね。

Hob.I:48 / Symphony No.48 "Maria Theresia" 「マリア・テレジア」 [C] (before 1769?)
曲のレビューは前記事を参照いただくとして、ここではCBSのLPと、このCD-Rの音質の違いに触れておきましょう。ちなみにこのCD-R、ステレオLPからのいわゆる板起こしとのことですが、非常にいい音質。図太い音色で迫力十分。うちの再生環境(THORENS TD-320MkII/SME-3009 Series 2 Improved/SHURE V-15 TypeV)では余韻と奥行き、しなやかさはあるんですが音の太さはCD-Rに分があり、聴きやすい録音。LP独特の存在感はLPに分があります。CD-Rの方は途中、回転にちょっとムラがあるような部分があるようにも聴こえますが、基本的に良い録音。なにより素晴しいのはスクラッチノイズが皆無である事でしょう。要はこのCD-Rの存在価値は十分ありということです。

Hob.I:4 / Symphony No.4 [D] (before 1762)
音質がちょっと固めに変わります。古びてちょっと刺激的な成分を含む音色ですが、ザクザクと切れ込むヴァイオリンをはじめとする弦楽器の迫力は素晴しく、基本的にタイトな迫力で押し通す演奏。ヴァイオリンの弓と弦が赤熱してるのではと思わせる素晴しいテンション。ハープシコードもカッチリとした音色でオケを支えます。
2楽章のアンダンテに入ってもヴァイオリンの存在感は流石ウィーン国立歌劇場管。石のような芯のあるタイトな音色でじっくりとメロディーを奏でていきます。
フィナーレは逆に落ち着いたテンポでじっくりしたつくり。弦楽器の鋭い切れ込みが聴き所。やはり迫力はただならないものがあります。

Hob.I:17 / Symphony No.17 [F] (before 1766)
高域の混濁感が少し増しますが、これも迫力と聴こえなくはないので問題なしです。素晴しい推進力と迫力。ゴーバーマンの志の高さが乗り移ったよう。幾分ストイックに振った演奏ですが、その分曲に険しく迫る迫力と聴こえます。
2楽章のアンダンテは静かに盛り上がる情感で聴かせる演奏。なぜかハープシコードは前曲ほど目立ちません。というか前曲のみかなりはっきりハープシコードが録られていました。
フィナーレは勢いのある楷書のようにゴーバーマンがグイグイ煽ります。ハイドンの初期の交響曲としてはかなりハイテンションの演奏でしょう。一貫してテンションの高さが特徴ですね。

Hob.I:1 / Symphony No.1 [D] (before 1759)
交響曲1番は意外と皆さんおなじみでしょう。ドラティの筋骨隆々とした演奏の筋肉が鋼のような強さをもった感じ。ヴァイオリンが髪を振り乱して演奏している様子が見えるよう。オケは粗いものの一貫して怒濤の迫力で攻めて来ます。これほどのテンションの演奏は他にないでしょう。繰り返されるごとに心にザクザクと刺さっていくよう。1番は前2曲よりもしっとりとして演奏も丁寧に感じます。
アンダンテに入ると一層しっとり感が増しますが、立体感もかなりのもの。そして鮮烈なフィナーレに突入。この対比、ハイドンの仕組んだツボを押さえた見事なもの。いやいや見事な演奏。

Hob.XXVIII:5 / "L'infedeltà delusa" 「裏切られた誠実」 (1773)
最後はオペラの序曲。これがまた素晴しい高揚感。なぜかこの曲のみタイミング表示がありません。トラックが3つに切られ、アレグロ:ポコ・アダージョ:プレストと言う構成で交響曲のようにも聴こえます。これも見事。

マックス・ゴーバーマンのハイドンの交響曲の録音はこのほかにCD-Rで10枚、合計11枚もリリースされており、今日取りあげた1枚を聴くと、他のものも聴いてみたくなるのが正直なところ。11枚セットを注文することにしましょうか。演奏の評価は以前のLPの記事と同様、ゴーバーマンの見た夢を共有するような素晴しいもの。録音のコンディションは正直1962年頃のものとしては良くはありませんが、板起こしとしては優秀というところでしょう。評価は全曲[+++++]とすることと致します。

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tag : マリア・テレジア 交響曲4番 交響曲17番 交響曲1番 裏切られた誠実 ヒストリカル CD-R

【新着】トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団の交響曲1番他、爆速!

最近の古楽器による定番はファイ。リリースはされていましたが、先週手に入れたばかりのアルバム。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ご存知トーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のハイデルベルク交響楽団(Heidelberger Sinfoniker)のハイドンの交響曲1番、4番、5番、10番とハイドンの交響曲の最初期の作品。収録は2011年7月7日、13日から16日、ハイデルベルク近郊のヒルシュベルク=ロイタースハウゼンにあるユダヤ教旧会堂でのセッション録音。レーベルはもちろんhänssler CLASSIC。

このアルバムはファイによるハイドンの交響曲全集の第17巻。そろそろ終わりが見えてきましたでしょうか。最初は違和感もあったファイのかなり踏み込んだ表現も、最近は慣れたというより、すっかりハマり気味。これほど自在なコントロールは他に類を見ません。最近とりあげたものは、おしなべて良い評価をつけています。

2012/07/08 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団の90番、オックスフォード
2012/06/11 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/ハイデルベルグ交響楽団のマリア・テレジア、56番
2012/05/03 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/シュリアバッハ室内管の「時の移ろい」「告別」
2011/07/06 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの「帝国」、54番
2010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号
2010/08/01 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイの69番、86番、87番

Hob.I:1 / Symphony No.1 [D] (before 1759)
いやいや、あんまり速いテンポでびっくらこきました。ハイドンが本来どのように演奏してほしいと思ったかとは無縁の解釈でしょう。最初期の交響曲をどう料理しようかという解釈側の視点の強い演奏です。あまりの速さに面食らったものの、聴き進めるうちに面白く聴こえてくるから不思議なものです。これをライヴできいたらのけぞる事請け合いでしょう。1楽章は暴風のように吹き抜けます。
2楽章のアンダンテは一転普通のテンポと、ファイ特有の時折変化や修飾を利かせたフレージングに戻ります。音楽自体はシンプルなものですが、そこここに遊びを入れて曲を面白く聴かせようというファイの面目躍如。
フィナーレも速いですが、普通の速さの範囲。自在に炸裂する各楽器の中でホルンの裏返るような音がアクセントになっています。まさに疾風のように過ぎ去っていきました。アル・ディ・メオラの速弾きギターを彷彿させる面白さがあります。

Hob.I:4 / Symphony No.4 [D] (before 1762)
このアルバムは耳にも心にも刺激になります。この曲も速い(笑) ただし急激なテンポダウンというアクセントつき。聴き手の器を探るようなファイのいたずらに、勝負に応じてやろうという邪心が芽生えます。まさに音楽自体が演奏者の器を示しているような風情。これは痛快。刺激的な演奏に対しては、ハイドンに敬意を表して一貫して冷静な立場をとってきましたが、これは面白い。ファイのハイドンの交響曲集でもっとも刺激に富んだアルバムと言っていいでしょう。
アンダンテは暗闇のなかに微妙な陰影を表現したような曲。さらりとした表現の奥に、微妙に浮き上がる艶かしい立体感。ぞくっとするような洗練された解釈。この曲からこれほどの刺激を引き出すとは。
一転して晴朗なメヌエット。一音一音が生き物のように振る舞うまさに活きた音楽。落ち着いたメヌエットの表現も秀逸。意図的なリズムの重さな何とも心地よいではありませんか。これだけ自在に音楽を操るとは、やはりファイ、只者ではありません。

Hob.I:5 / Symphony No.5 [A] (before 1762)
またまた一転してテンポをかなり落とし、音楽の織り目をじっくり強調してデフォルメしたようなアダージョの入り。名場面をスローモーションで見るがごとき曲の構造を素っ裸にするような分析的演奏。ホルンの抜けるような音色とチェンバロの繊細な響き。古びたフレスコ画のような色の滲みが醸し出す極度にアーティスティックな時間。変幻自在とはこの事でしょう。
続くアレグロはファイだからこそできる、絶妙なアクセントのかかったメロディーラインが暴れまくり、額縁を飛び出さんばかりの筆の勢いを誰も止める事は出来ません。奏者もこれだけのメリハリをつけた演奏の痛快さに酔いしれるよう。途中にリズムの混濁を現すような場面がありますが、逆手にとって混濁を楽しむよう。この曲がこれほど刺激的だったとは。
メヌエットは、穏やかな表情に戻りますが、あまりに刺激的な楽章の箸休めのように聴こえてしまいます。
フィナーレは最盛期のザロモンセットのフィナーレにも劣らない素晴らしい興奮。まさに爆風が吹き抜けるような素晴らしい演奏。脳内のアドレナリンが全噴出!

Hob.I:10 / Symphony No.10 [D] (before 1762)
アドレナリン、まだ噴出を続けます。このアルバムの最後の曲ですが、入りからフルスロットル、超ハイテンション、オケ全開です。ホルン奏者のつばが飛んできそうなリアリティ。すでにファイの術中にはまり、金縛りにあったようになってます。
このアルバム唯一の癒し楽章。10分近い長い楽章ですが、レガートをきかせて穏やかに淡々と語っていく語り口は、前楽章からは想像できないほどの穏やかさ。この表現のコントラストこそファイの真骨頂の一つでしょう。安心して身を委ねられますが、このまま済むとは思えません。フィナーレの前の静けさといったところでしょうか。
そして爆発というより、冴え渡る覚醒のようなフィナーレ。異常に冴え渡る感覚。さっと風が吹き抜けるような楽章。脳内の感覚がこれまでの変化に鋭敏に反応してどうくるかと待ち構えるなか、やはり想像とは異なる角度で攻めて来ました。あっぱれ。

トーマス・ファイによるハイドンの最初期の交響曲集。刺激的な演奏であろうことは想像してはいましたが、その想像を遥かに超える、むせ返るような知的刺激に満ちた演奏。この演奏、ハイドン自身に聴かせたいと久々に思ったものです。ファイのアプローチにはもちろん慣れてはいますが、正直に言って、これまでのファイの演奏中、最高の出来と言っていいでしょう。素材としての最初期の交響曲をファイ流に再構成して、速度やアクセントの変化と装飾をちりばめ、しかもそれを実に面白く聴かせるという離れ業。有名曲ではありませんが、これもハイドンの真髄を突く演奏と言っていいでしょう。いや、脱帽です。素晴らしい。もちろん評価は前曲[+++++]です。

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橋本英二/18世紀音楽アンサンブルの初期交響曲集

前記事のパトリック・ガロワ初期交響曲集を聴いて、もう少し初期のものを聴きたくなった次第。最近手に入れた1枚ですが、これが驚きの出来。

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HMV ONLINEicon / amazon

橋本英二(Eiji Hashimoto)指揮の18世紀音楽アンサンブル(Ensemble for Eighteenth Century Music)の演奏で、ハイドンの交響曲4番、6番「朝」、9番、13番の4曲を収めたアルバム。収録は1997年5月23日から25日、アメリカ、オハイオ州のシンシナティにあるシンシナティ大学音楽院のコルベット・オーディトリウムでのセッション録音。レーベルは以前シェンクマンのピアノソナタで取りあげたアメリカ、ロスのCENTAUR。

橋本英二は日本人のハープシコード奏者、指揮者。本人のサイトがありますのでリンクを張っておきましょう。

EIJI HASHIMOTO(英文)

私はもちろん、はじめて聴く人。生年などはわかりませんが、1975年から2000年まで、このアルバムのオケである18世紀音楽アンサンブルの音楽監督の立場だったようですね。このオケは録音場所であるシンシナティ大学音楽院のオーケストラのようです。他に1991年から93年まで日本の津田コンソート、1996年から98年までイタリアのルッカ室内管弦楽団の音楽監督も務めていたとのこと。2001以降、現在までシンシナティ大学音楽院の名誉教授の地位にあるようです。なお、日本でもリサイタルを開いたり、「バロックから初期古典派までの音楽の奏法―当時の演奏習慣を知り、正しい解釈をするために」というような著書があったりと、本人のサイトは英語版しかないのですが日本でもご存知の方は、ご存知でしょうか。

このアルバム、はじめにバラしちゃいますが、久々に心に深く残る交響曲の演奏。絶品です。

Hob.I:4 / Symphony No.4 [D] (before 1762)
現代楽器のオケらしい引き締まった響きではじまります。若手中心のオケのようですが、溌剌とた生気にあふれてなかなかいい演奏。1楽章はかなり弾んだ感じがいいですね。ハイドンの交響曲に込められたエネルギー感が上手く出せています。抑えた部分の表現も上手く、曲が立体的に浮かび上がります。
絶品なのが2楽章のアンダンテ。シュトルム・ウント・ドラング期を彷彿とさせる素晴らしいうら悲しさを表現。いきなり濃い情感があふれます。ハイドンの時代にタイムスリップしたような素晴らしい響き。
フィナーレは一転して鮮度あふれる響き。清々しいリズムの繰り返し。ハイドンの曲の真髄をつく表現。

Hob.I:6 / Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
普通は「昼」と「晩」とセットで演奏されることが多いですが、ここでは「朝」のみでの演奏。ここでも清々しいリズムが基調となってハイドンの曲の晴朗な響きの魅力が溢れます。キレのいいオケに支えられた、何もしていないように聴こえるのに豊かな音楽。抜群のセンス。
2楽章のはじまりに意外に心にぐさっと刺さるアクセント。じつに味わい深い演奏。表現欲ではなく心からにじみ出る音楽の浸透力。最後のアダージョも絶品。
メヌエットはリズム感のよいこの演奏の特徴が良く出たもの。暖かみに溢れた弦楽器と各楽器が次々と繰り出す美しいメロディー。究極の自然さ。若々しい奏者が演奏する諦観すら感じさせる枯れたメロディー。
期待のフィナーレ。ここでも落ち着き払ったコントロール。アメリカのオケである事を忘れさせる、非常に慎み深い音楽。2曲聴いたところでこのアルバムの凄さがわかってきました。

Hob.I:9 / Symphony No.9 [C] (1762?)

10分ほどの短い曲。オケが木質系の実にいい響き。録音もオンマイク気味ながらオケの自然な楽器の音が良く録られて秀逸。この曲でもリズム感の良さは素晴らしいもの。オケのキレも抜群。
2楽章は癒しに満ちたシンプルなアンダンテ。こうゆう短い曲の美しさにハイドンの天才を感じてしまいます。何の外連味もなくすんなり進むアンダンテ。
3楽章構成の3楽章はメヌエット。この曲もシンプルそのもの。心を洗われるような純粋無垢な曲。

Hob.I:13 / Symphony No.13 [D] (1763)

何でしょう、この愉悦感に満ちた導入。これ以上弾む演奏はあり得ないほどの素晴らしいリズム。この曲のみティンパニが加わり、しかもそのティンパニが慎ましやかにそっとなでるだけのような絶妙な存在感。天才的なコントロール。素晴らしすぎて言葉になりません。展開部は音量はほどほどなのに転調とリズムで攻め込む感じを上手く演出。ホルンも強調しすぎる事なく絶妙のサポート。絶品!
2楽章はアダージョ・カンタービレ。チェロのソロがゆったりとメロディーを奏でる曲。ソロの自然さも素晴らしいもの。
3楽章のメヌエットは今までの曲よりも本格的なもの。リズムの面白さが際立ちます。中間部の静かな曲想も斬新なもの。そしてざっくりえぐるようなメロディーにもどってオケが鳴りきります。
フィナーレはモーツァルトのジュピターのようなメロディーが出現することで知られる曲。橋本英二のコントロールはここでも自然さを保ちながら、必要十分なメリハリと中庸の美学を地でいくもの。それにしても彫りの深い立体感溢れる音響は流石のもの。この曲も抜群でした。

正直存在も、名前も知らなかった橋本英二の指揮する18世紀音楽アンサンブルによるハイドンの初期交響曲集。これは絶品。初期交響曲の現代楽器による演奏の一押しのアルバムです。このような素晴らしいハイドンの演奏があったかと、今更知った次第。ハイドンはいろいろ聴いているつもりですが、まだまだ修行が足りません。評価はもちろん全曲[+++++]です。ハイドンの交響曲好きなすべての人に聴いていただきたい、じわりとくる名演奏です。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲4番 交響曲9番 交響曲13番 ハイドン入門者向け

パトリック・ガロワ/シンフォニア・フィンランディアの初期交響曲集

今日は聴き散らかしたCDを片付けているときに気になったアルバムをチョイス。

Gallois1_5.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

パトリック・ガロワ(Patrick Gallois)指揮のシンフォニア・フィンランディアの演奏でハイドンの交響曲1番から5番までを収めたアルバム。収録は2004年5月26日から28日、フィンランド中部のユヴァスキュラ近郊の街、スオラハティにあるスオラハティホールでのセッション録音。レーベルは廉価盤の雄NAXOS。

パトリック・ガロワは昔はイケメンフルート奏者として知られていた人。1956年フランスのリール北部のランセルという街生まれ。ランセルはフランス北部というよりベルギー国境間際の街。パリ音楽院でフルートをピエール・ランパルに学び、リール・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を経て、1977年にフランス国立管弦楽団の首席フルート奏者となり一躍スター・フルーティストとなりました。1984年にフランス国立管弦楽団を退団してからはソリストして有名オケ、指揮者と共演しアルバムも多くリリースしています。2003年からはこのアルバムのオケであるシンフォニア・フィンランディアの音楽監督になり、ヨーロッパや日本にもツアーで訪れているようです。

シンフォニア・フィンランディアは正式名称はユヴァスキュラ・シンフォニア・フィンランディアというようです。ホームページがありますので紹介しておきましょう。

Sinfonia Finlandia Jyväskylä(英文)

Hob.I:1 / Symphony No.1 [D] (before 1759)
この曲の刷り込みはもちろん火の玉の塊のようなエネルギーに満ちたドラティ盤ですが、この演奏はそれに負けない生気をもったはじまり。非常に良く磨かれたオケの各楽器の演奏。ガロワのコントロールはアクセントの部分をかなりレガートを聴かせて、流麗さを強調したもの。デュナーミクのコントロールが緻密で、オーケストラの各楽器の織りなす音色の彩を楽しめます。オケのテクニックは素晴らしいものがあります。特に木管楽器の美しい音色が抜群。
2楽章のアンダンテは雄弁に鳴り響くハープシコードの通奏低音が雅な雰囲気を醸し出しています。オケは懐の深いフレージング。弦楽器も良くそろって清潔感のあるアンサンブル。さっぱりしているのに表現は薄くなく、じわりと心に響く音楽。ヴァイオリンパートの美しい音色は素晴らしいものがあります。非常に豊かな音楽。録音も新しいものらしく広い空間と適度な距離感を感じさせてオケが定位し、鮮明さ兼ね備えた素晴らしいもの。ハープシコードの音色も絶品。
フィナーレは鮮烈さを落ち着いて表現するような実に味わい深いもの。慌てたところは一切なく、楽譜どおりに音を置いていく感じ。テンポも落ち着いていて、プレストをじっくり表現するよう。ガロワ、指揮者としてもかなりの腕前と見ました。1曲目から素晴らしい出来。

Hob.I:2 / Symphony No.2 [C] (before 1764)
レガートはそのままに、この曲ではかなり主題をデフォルメして溜めた展開。冒頭からからかなり個性的なフレージング。かなりテンポを落としてメロディーラインをなぞっていきます。ここでもオーケストラの精度は抜群。ガロワの確信犯的アプローチですね。ただ、慣れると妙に心地よいものがあり、冒険は失敗ではありません。
2楽章のアンダンテはデリカシーあふれる演奏に戻り、これも対比と納得。やはり微妙な強弱をしっかり演出しながら特にヴァイオリンのパートが絶妙。なぜか最後の一音は消え入る隙もないほどの短さ。演奏の意図か編集ミスかわかりません。
フィナーレは全曲とは異なりテンポも含めて鮮度と生気を十分に反映したもの。中央奥から聴こえるホルンの響きが素晴らしい効果を挙げています。同じプレストでも前曲とは生気が違います。素晴らしい推進力。

Hob.I:3 / Symphony No.3 [G] (before 1762)
おそらく前2曲とは作曲年代が異なり少し後のものと推測されています。やはり生気あふれるいい入り。この曲は4楽章構成。ガロワの腕力を如実に表すのはフレーズの切れ目での休符の扱いと表情の変化のキレ。こうゆうところをきちんと処理するだけで演奏の浸透度はかなり異なります。この曲では推進力だけではなく曲の中での表情の切り替えが見事なので、曲がびしっと引き締まって聴こえる訳です。
2楽章は短調の素晴らしいメロディーラインを堪能できます。とろけるようなオケの響きから聴こえるシュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲にもひけをとらない素晴らしく美しいメロディー。ハープシコードがここでも雄弁すぎるくらいの活躍。テンポ感と情感のバランスが絶妙。
3楽章はメヌエット。後年の交響曲ほどの充実は望めませんが、音を切り気味に舞曲を進め、中間部はヴァイオリンとホルン、木管楽器、通奏低音の掛け合いの妙を楽しめます。
フィナーレはジュピター交響曲のフーガに似ています。基底になる旋律をいろいろな楽器に受け継ぎながら曲を進め、ここでも自然さは十分なもの。この曲では表現意欲は抑えられ、曲自体の感興の表現に徹するもの。

Hob.I:4 / Symphony No.4 [D] (before 1762)
最初の一撃のあと一拍置く感じが独特。ただ2番で見せた表現意欲は抑えられ、極めてオーソドックスな演奏。もはや手慣れたコントロールで曲をこなしていくようなそぶりが感じられなくはありませんが、凡庸な演奏ではありません。
2楽章はアンダンテ。これまでどおり、曲を生気あふれるコントロールでこなしていくと言う姿勢に変わりはありません。デリケートな音の重なり見事。
フィナーレは出だしからしっかりとした響きではじまります。もはや言葉で説明する必要がないほどの充実ぶりです。鮮度、フレージング、響きの美しさどれをとっても素晴らしいものです。

Hob.I:5 / Symphony No.5 [A] (before 1762)
1楽章がアダージョ。何と優しい響きの入り。ホルンと弦楽器、通奏低音の見事なアンサンブル。特にホルンの存在感は素晴らしいものがあります。のどかな旋律をじっくり味わえる見事な演奏。この自然さは至福の一時。じっくりじっくり曲を味わい尽くすような素晴らしい演奏。
2楽章はアレグロ。ここに来て攻める攻める。美しいオーケストラの響きはそのまま、ちょっとズレた拍子の面白さを十分に表現してハイドンの曲の意図通り素晴らしい感興を再現しています。この楽章のテンションは流石。
3楽章のメヌエットは徐々に後年の充実したメヌエットの片鱗を感じさせるようになります。ホルンからはじまり木管に受け継がれる中間部のメロディーはオケの奏者の素晴らしいテクニックを堪能できる部分。リズムのキレも曲のキレも素晴らしいですね。楽章の終わりがそうとはわからない程自然なのも特徴。ふつうもう少しメリハリをつけるところでしょうが、気づくか気づかないかのうちに楽章を閉じます。
フィナーレは1分少しの短いもの。吹き上がるオケ、レガートを多用しながら響きの織りなす彩で聴かせる素晴らしいコントロール。ハイドンのフィナーレの見事な音楽が眼前に素晴らしい立体感で表現され、このアルバムを閉じます。

パトリック・ガロワ指揮のシンフォニア・フィンランディアによるハイドンの初期交響曲集。オーケストラコントロールは素晴らしいもの。微妙なデュナーミクのコントロールは鳥肌レベル。そしてすこしレガートを効かせてアタックよりもメロディーラインの美しさを強調して素晴らしい効果を挙げています。フィンランドのローカルオケでしょうが演奏の技術と響きの美しさは国際級、というよりベストに近いもの。ガロワの表現も適度に個性的で、そして適度にオーソドックス。私の求めるハイドンの理想的な演奏です。評価は、ちょっと冒険しすぎた2番が[++++]、その他の4曲は[+++++]とします。

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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