レイモン・レッパード/イギリス室内管の哲学者、47番(ハイドン)

はい、LPです(笑)

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レイモン・レッパード(Laymond Leppard)指揮のイギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲39番、22番「哲学者」、47番の3曲を収めたLP。収録に関する情報は記載されていませんが、別途リリースされているCDに含まれている47番が1968年12月の録音ということで、おそらく3曲とも1968年ころの録音だと思われます。レーベルは蘭PHILIPS。

このLPは先日開催した第2回ハイドンオフの当日、開催前の時間にディスクユニオンで仕入れたもの。レイモン・レッパードは地味な指揮者ですが、以前取り上げた演奏はなかなか良く、好きな指揮者の一人。そのレッパードのLPを見かけ、収録曲を所有盤リストで調べてみると、39番と47番は手許にCDがあるものの、哲学者については未所有音源だとわかり、手に入れたもの。しかも未所有の曲は好きな「哲学者」で、LPもオランダプレスのPHILIPS盤ということで、手に入れないわけには参りませんね。

2014/11/11 : ハイドン–交響曲 : レッパード、マッケラスの交響曲77番、34番、18番(ハイドン)
2014/03/27 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパード/イギリス室内管の交響曲39番(ハイドン)
2013/06/01 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・ジャンドロンのチェロ協奏曲1番、2番
2012/08/27 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパード/イギリス室内管のラメンタチオーネ
2011/02/20 : ハイドン–協奏曲 : アルテュール・グリュミオーのヴァイオリン協奏曲
2010/11/03 : ハイドン–オペラ : ベルガンサのオペラアリア集
2010/06/05 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパードのハイドン

レッパードの略歴などについてはラメンタチオーネの記事をごらんください。今日はこのアルバムに含まれている3曲のうち、冒頭の39番は米Haydn HouseのCD-Rを取り上げており、その原盤がこのLPということで、哲学者と47番を取り上げましょう。39番もCD-RとこのLPの音質比較などをする余地があるのですが、もともとHaydn HouseのCD-Rは湖国JHさんからお借りしていたものということで、手元にないため、比較は断念です。

Hob.I:22 Symphony No.22 "Philosopher" 「哲学者」 [E flat] (1764)
どうもこの曲は好みのツボがあるようで、冒頭から朴訥な音楽が流れると一瞬にしてハイドンの世界に引き込まれます。規則的に刻まれるリズムに乗って木管楽器と弦楽器によって奏でられるメロディーの心地よいこと。LPもミントコンディションで言うことなし。音量を絶妙にコントロールしながらゆったりとした起伏が描かれ、いきなりの味わい深さ。特に音量をスッとおとしながら弱音器つきの弦楽器が奏でるやさしい旋律に癒されます。何もしていないのですが、曲の真髄をえぐる演奏にアドレナリン噴出。
2楽章のプレストは実に落ち着いた演奏。キビキビとしているのですが、盤石の安定感で、オケも軽々と楽しみながら演奏しているよう。1楽章のアダージョでグッと聴かせたあとの爽快なプレスト。まさに展開の妙が味わえます。3曲入りのLPの2曲目ということで、2楽章の終わりでLPをひっくり返さねばなりません。

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3楽章のメヌエットも実に堂に入ったもので、コミカルかつ美しいメロディーの連続にハイドンの交響曲の楽しさが炸裂。適度にキレ良く、適度に弾み、適度に落ち着いたまさに名演奏。この自然さは素晴らしい。
そしてフィナーレに入るとここぞとばかりにオケが踊りだします。弾む弾む。これは演奏していたら楽しいですね。よくぞこれだけ曲に素直に楽しんで演奏できるものです。よく聴くとアクセントに独特なところもなくはないのですが、決して自己主張するようなことはなく、最後まで曲に素直な演奏で楽しませてくれます。これぞハイドン!

Hob.I:47 Symphony No.47 [g] (1772)
つづいて47番。この曲はマリナーの名前付き交響曲集に含まれているのでこのLPではじめて聴くわけではありません。後記するようにこの曲にもニックネームがついているために、マリナーの選集を補完す役割を担わされたということでしょう。演奏のスタイルは哲学者と変わらないものの、曲想にあわせて、冒頭からキレよく入ります。哲学者でもそうでしたが、ホルンの音色が実に美しい。オケの音色に華やぎが加わります。曲が速い分、オケの精度は哲学者より少し荒い気がしなくもありませんが、そんなことが気になるような演奏でもなく、冒頭から曲に引き込まれっぱなし。リズムがイキイキと弾み、弦のボウイングも鮮やか。
2楽章は流石に「告別」と同時期のシュトルム・ウント・ドラング期の最盛期に書かれた曲だけあって、仄暗い陰りと深みに溢れた名曲。レッパードは相変わらず安定感抜群で、邪念なくハイドンの曲に込められたこの時代の空気を再現することに集中しているよう。変に感傷的になることもなく、味わい深くもありながら淡々と曲を進め、曲自体の魅力を聴かせる役に徹します。次々と展開するメロディーの面白さに耳が釘付け。さらさらと筆が運ばれるしなやかな筆致。
3楽章のメヌエットは途中から逆行するためこの曲にはパリンドロウム(回文)というニックネームがついています。短い曲ながらハイドンの遊び心が込められた名旋律。
そしてフィナーレは1楽章のキレ味と呼応するようにオケが鮮やかさを取り戻します。曲の規模に対してフィナーレの充実度が勝るように感じるほどフィナーレは展開していきます。レッパードもここにきて畳み掛けるように攻めて終わります。

レイモン・レッパードと手兵イギリス室内管によるハイドンの交響曲集ですが、レッパードの無欲のコントロールがハイドンの交響曲の魅力を上手く引き出している感じ。録音も流石はオランダプレスのPHILIPSだけあって、1960年代としては十分瑞々しく、曲を存分に楽しむことができます。ちなみに哲学者はやはり一歩味わい深さが違いますね。47番の方はそれに比べると少し劣る感じがします。ということで評価は哲学者を[+++++]、47番を[++++]といたしましょう。

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tag : 哲学者 交響曲47番 ヒストリカル LP

【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)

なんとなく、このアルバムがリリースされているのは知ってましたが、手元に来たのはつい最近です。

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TOWER RECORDS / HMV ONLINEicon

ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコ(Il Giardino Armonico)の演奏で、ハイドンの交響曲46番、22番「哲学者」、ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの交響曲(BR C-2)、ハイドンの交響曲47番ののあわせて4曲を収めたアルバム。収録は2014年6月16日から20日、ベルリンのテルデクス・スタジオでのセッション録音。レーベルはAlpha Productions。

このアルバム、ジョヴァンニ・アントニーニ指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドンの交響曲全集の第2巻に当たるもの。第1巻については以前に記事にしております。

2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

全集の完成はハイドンの生誕300周年にあたる2032年と、東京オリンピックのさらに12年後という気の長い話ですが、ハイドンの全交響曲を演奏、録音するというプロジェクトの大きさを考えると妥当なものでしょう。デビュー盤の第1巻はなかなかの出来だっただけに、2枚目の出来は今後の全集の成否を占うものということで、これまた関心が集まるものです。世の中のハイドンファンもその出来に注目していることでしょう。また、現在全集の半ばまで来ているトーマス・ファイにとっては商業的なライバル出現ということで、うかうかしていられない存在ということかもしれません。

Hob.I:46 Symphony No.46 [B] (1772)
前作と同様、古楽器のざらついた音色による迫力あふれる演奏が特徴。冒頭から躍動感にあふれ、かなりオケに力が入り、アクセントを執拗につけていくスタイル。ヴィヴァルディを得意としているアントニーニの得意とするスタイルといっていいでしょう。曲はシュトルム・ウント・ドラング期の最高傑作45番「告別」交響曲と同じ頃の作品。演奏によっては構成の見事さに焦点を合わせてくるところですが、アントニーニは荒々しさと力感を強調してきます。前作でアントニーニのアプローチは新鮮に映りましたが、この曲で改めて聴くとハイドンのこの時期の交響曲の魅力の一面を強調しているものの、ちと迫力に焦点を合わせ過ぎというように聴く人もあるかもしれません。このあたりが古楽器演奏の難しいところ。
つづく2楽章のポコ・アダージョは、この時期のハイドン特有の仄暗い情感を味わうべき楽章ですが、アントニーニは表情と音量を抑えて逆にさらりとこなしてきます。1楽章の喧騒に対して、あえて抑えて対比を鮮明にしようということでしょう。
そしてメヌエットは、堂々としたというよりも、こちらも淡々とした表情で描きます。どうしてももう少し豊かな表情づけを期待してしまうのはこちらの聴き方の問題でしょうか。
そして、フィナーレは1楽章の迫力の再来を予感させ、音量を抑えて始まりますが、そここで炸裂を予感させるようなキレ味を垣間見せて、盛り上がり切らず、聴くものをじらすようなコミカルな展開。非常にユニークな構成の曲を力感ではなくユーモアで聴かせる器を見せます。フィナーレはいい仕上がり。

Hob.I:22 Symphony No.22 "Philosopher" 「哲学者」 [E flat] (1764)
なぜか惹きつけられるユニークなメロディーのこの曲。アントニーニはこのユーモラスな1楽章を古楽器独特のさらりとした表現でゆったりと描きます。音楽自体の愉悦感に加えて古楽器のちょっとしたフレージングの面白さを織り交ぜて遊び心を加えていきます。弦楽器による伴奏の音階の音量を極端に抑えて静けさのようなものを感じさせ、結果的にユニークなメロディーを引き立てるといった具合。このアプローチはいいですね。
2楽章のプレスト、よくコントロールされた躍動感が心地よい楽章。前曲1楽章のちょっと力任せなところは影を潜め、曲の面白さを踏まえた粋な表現。ところどころで聴かせるキレの良いアクセントが効果的。
前曲につづきこの曲でも、早めのテンポであえてあっさりとしたメヌエットの表現。この曲ではこの表現に一貫性を感じます。最後の一音をさっとたたむように鳴らすあたりにもそうしたアントニーニの意図が見えるよう。そしてフィナーレは快速な躍動感で一気に聴かせます。この哲学者はしっくりきました。

この後、なんとも独特なヴィルヘルム・フリーデマン・バッハの曲を挟みますが、この全集、ハイドン第1巻にもハイドンと同時代のグルックの曲を挟んでいるところをみると、時代の空気を他の作曲家の作品から呼び込もうという狙いでしょうか。私にはハイドンの引き立て役と感じられます(笑)

Hob.I:47 Symphony No.47 [g] (1772)
このアルバム最後の曲。このアルバムで一番力入ってます。素晴らしい迫力ですが、私にはちと力みすぎに聴こえてしまいます。いきなり耳をつんざくようなアクセントの連続。響きも少々濁って楽器が美しく鳴る範囲を超えているような印象。曲自体はとても美しいメロディーがちりばめられた曲ですが、アントニーニは完全にスロットル全開できます。抑えるところはもちろん抑えているのですが、やはり力みすぎて単調に聴こえてしまうような気がします。
2楽章はこれまで同様、さらりと表情を抑えた速めのアプローチ。あえて歌いすぎないところは古楽器による演奏としては珍しくありません。そしてさらりとしたメヌエットですが、この曲では1楽章からの力感重視のスタイルからか、かなりアクセントを明確につけてきます。そしてフィナーレは予想どおり嵐のような盛り上がり。強音の迫力は1楽章同様ですが、不思議とここでは1楽章ほどクドさを感じません。鮮やかなキレ味でたたみかけて終わります。

ジョヴァンニ・アントニーニ指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドンの交響曲全集の第2巻。名刺がわりの第1弾につづいて、アントニーニのやりたいことがより鮮明に表されたアルバムということでしょう。演奏評に書いたように、哲学者ではこの曲を面白さを踏まえて余裕あるコントロールで曲を表現しているのに対し、最後の47番ではフルスロットルで痛快という領域を超える灰汁の強い表現を聴かせます。聴く人によって評価が分かれる演奏かもしれません。私の評価は哲学者が[+++++]、冒頭の46番が[++++}、そして47番は[+++]としたいと思います。

膨大なハイドンの交響曲全集の2枚目ですが、力まかせの演奏はちょっと心配です。古楽器では全集に至らぬものの、ホグウッド、ピノック、グッドマンなどの先人の録音がありそれぞれ良さがあります。現代楽器でもファイの知的な解釈による全集がある中、アントニーニのこのシリーズがハイドンの交響曲全集に一石を投じることができるかは、今後のリリースにかかっているといっていいでしょう。

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tag : 交響曲全集 交響曲46番 交響曲47番 哲学者 古楽器

【珍盤】トヨタ・フィルハーモニック・マスター・プレイヤーズ・ベルリンの交響曲47番

今日は超珍盤です。非常に珍しいアルバム!

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トヨタ・フィルハーモニック・マスター・プレイヤーズ・ベルリン(Toyota Philharmonic Master Players, Berlin)の演奏で、バッハのブランデンブルク協奏曲第3番、ハイドンの交響曲47番、モーツァルトの交響曲40番の3曲を収めたアルバム。収録は1997年1月6日から8日にかけて、ベルリンのTELDECスタジオでのセッション録音。制作はトヨタ自動車でジャケットには「非売品」との記載があります。

ジャケット写真からわかるとおりトヨタの創立60周年を記念して制作されたもの。ライナーノーツを紐解いてみると、1997年の11月3日が創立60周年の日で、このために特別にベルリンフィルのOBによって編成されたオケによって、コンサートが開催され、合わせて記念CDが制作されたということです。この取り組みはウィーンの「ヘルベルト・フォン・カラヤン・センター」の賛同により実現したとの記載もあります。収録情報からわかる通り、収録はスタジオなので、この演奏とは別に、97年の7月に日本でツアーが行われたとの記載があります。もしかしたら、このツアーのコンサートを聴かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。

当ブログのマニアックな読者ならお気づきのこととおもいますが、この種の企画ものは以前に一度取りあげた事があります。

2010/11/15 : ハイドン–オラトリオ : サヴァリッシュ、N響の天地創造ライヴ

そう、バブル成熟期の1991年の日本で行われた、BMWジャパンによる天地創造のコンサートの模様を収めたBMWジャパンの創立10周年記念アルバムです。その91年から6年後に、今度は世界のトヨタが創立60周年を記念して、ベルリンフィルのOBを起用してこのアルバムを制作した訳ですが、サヴァリッシュとN響を起用したBMWを上回る覇気を見せつけようとの意図も見え隠れするような企画。トヨタの企画陣がBMWを意識したか、真偽のほどは定かではありませんが、私はなんとなくトヨタの企画サイドにはそんな意図があったのではと邪推しております(笑)

戯言はともかく、BMWがハイドンの天地創造を、トヨタもバッハ、モーツァルトに加えてハイドンの曲を記念アルバムに採用してきたことは、流石の見識と言うべきでしょう。

ライナーノーツにはオケのメンバー表が記載されており、26名の奏者で構成されています。音楽監督を務めたのはカラヤン時代のベルリンフィルを支えた名コントラバス奏者のライナー・ツェペリッツで、指揮者は置かれなかったようです。チェンバロはハンス・マルティン・シュナイトとの記載があります。

1曲目のブランデンブルク協奏曲3番は、ベルリンフィルOBらしい穏やかなキレを感じさせる演奏。指揮者なしということで、踏み込んだ表現は聴かれず、音楽自体に淡々と語らせる演奏。

Hob.I:47 / Symphony No.47 [g] (1772)
ブランデンブルク協奏曲の終了から間をほとんどとらずにはじまります。小規模オケの良さを感じさせるクリアな響き。テンポは一貫していて、やや速めに感じます。ところどころに明確にレガートを強調してカラヤン時代の名残りを感じさせる演奏。キビキビとした各楽器の粒立ちの良さは流石にベルリンフィル出身者揃いという感じです。シュトルム・ウント・ドラング期独特の濃密な雰囲気はあまり感じさせず、逆にさっぱりとした表情。ハイドンの音楽を純音楽的な透明感のある響きでまとめていこうというスタイルでしょうか。音楽が進んでくるとヴァイオリンのキレ、各楽器のアクセントのキレの良さがじわりと伝わってきます。
2楽章も速めのテンポで音楽の流れの見通しの良さを強調した展開。弱音器をつけた弦楽器が繰り出す音階が様々に交錯する綾を楽しみます。弦楽器のフレージングからは不思議と厚みとキレの両立した全盛期のベルリンフィルらしさがにじみ出てくるのが不思議なところ。これが伝統というものでしょうか。2楽章でこうした味わいが出てくるとは予想しませんでした。穏やかながら深みもある良い演奏。
メヌエットも前楽章同様速めのテンポで流れの良い演奏。音楽が進むのにつれてオケの一体感も上がり、1楽章で感じられた固さもほぐれてきます。淀みなく流れるハイドンの美しいメヌエットのフレーズ。
フィナーレに入ってもギアチェンジなし。穏やかに音楽が流れ、じわりと沸き上がってくる高揚感。楽章間のメリハリをあえて抑えているようですが、単調さはなく、逆に音楽が切れ目なく流れる一貫した良さを感じさせます。この辺が普通のオケとは違う所でしょう。音楽の非常にデリケートな部分できっちり表情をつけていける表現力があるということでしょう。良く聴くとフレーズにはしっかりとメリハリがついており、各奏者が深い部分で音楽を共有していることがわかります。この辺は、同じ指揮者なしでもオルフェウス室内管などとちょっと異なるところ。1楽章ではすこしギクシャクしていたところが、最後はしっかりまとまってくるのは流石というところでしょう。

続くモーツァルトの40番も同様の演奏スタイル。詩情が迸る劇的な演奏ではなく、きっちりとオケが響きを重ねながらじわりと味わいを感じさせる演奏。こちらも悪くありません。

今や世界を代表するトヨタ自動車の創立60周年を記念して16年前に制作されたアルバム。BMWジャパンが、サヴァリッシュとN響による天地創造のライヴという記念アルバムで、通なクラシックファンにも通じる入魂の企画で勝負してきたのに対し、トヨタはベルリンフィルというネームバリュー、指揮者なしのスタジオ録音という企画を当ててきたのは、なんとなく両者のブランドの狙いも反映しているようで非常に興味深いところです。アルバム作りについても、曲間が妙に短かったりして、制作がクラシックになじみのない人が担当していたような印象もありますが、肝心の演奏はきちんとしたクォリティを保っているあたり、流石トヨタというところでしょう。冒頭に非常に珍しいアルバムと記載しましたが、もしかしたらこの頃トヨタ車を買った方には大量に配られていたりすると、多くの人が聴いた演奏という可能性もありますが、この辺のところはちょっとわかりません。肝心の演奏は、トヨタ車同様隙のない仕上がりです。評価は[++++]としておきましょう。

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tag : 交響曲47番 ベルリンフィル

ダニエル・バレンボイム/ECOの交響曲46番、47番 - 燻し銀

まだまだLPいきます。先日ディスクユニオンで仕入れたアルバム。

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ダニエル・バレンボイム(Daniel Barenboim)指揮のイギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)の演奏でハイドンの交響曲46番、47番を収めたLP。収録の情報はLPには記載されていませんが、Pマークは1981年。レーベルは独Deutsche Grammophone。

ダニエル・バレンボイムは、ハイドンの没後200年の2009年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートで、ウィンナワルツの間に敢えてハイドンの交響曲45番「告別」の一人一人楽団員が退場していく有名なシーンを取りあげ、華やかなムジークフェラインに、ほの暗いシュトルム・ウント・ドラング期の陰りを持ち込み、マニア好みのこの曲を一躍メジャーに取りあげた功労者。ただし、ハイドンの録音は多くなく、デュ・プレのチェロ協奏曲の伴奏や、パリセット、そしてこのアルバムの他に告別やマリア・テレジアなどを入れたものくらい。私が知る限り、ピアニストとしてピアノソナタを入れたアルバムなどあっていいはずですが、こちらも未だ見た事もありません。

ピアニストに指揮者にと大活躍のバレンボイムですが、私自身バレンボイムの演奏のツボを知るほど聴き込んではいないため、むしろ未知の指揮者というところです。欧米での活躍と比べると日本でももっと着目されていい人だと思いますが、日本での人気は今ひとつということなのでしょうか。

ダニエル・バレンボイムは1942年、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれのピアニスト、指揮者。両親はロシア出身のユダヤ系移民とのこと。両親からピアノや音楽を学び、7歳でブエノスアイレスで公開演奏会を開き、ピアニストとしてデビューしました。1952年にイスラエルに移住し、1954年にはザルツブルクでイーゴリ・マルケヴィチの指揮のマスタークラスに参加し、またフルトヴェングラーに会っています。その他、アバドとともにフランコ・フェラーラの指揮クラスに参加したり、パリでナディア・ブーランジェの和声と作曲を習ったりと恵まれた教育を受けました。ヨーロッパでのピアニストデビューは1952年、ウィーンとローマで。つづいて1955年にパリで、1956年にロンドンで、1957年にはストコフスキーの指揮でニューヨークでデビュー。10代で世界中に知られる存在となったわけです。21歳のころにはベートーヴェンのピアノソナタの全曲公開演奏を行う等、才能に恵まれました。1966年からはこのアルバムのオケであるイギリス室内管弦楽団とモーツァルトの交響曲録音で指揮者デビューを果たし、以後ピアニストとしても指揮者としても膨大なレパートリーを誇ります。指揮者としては、パリ管弦楽団の首席指揮者、シカゴ交響楽団の音楽監督、ベルリン国立歌劇場の音楽総監督、ミラノ・スカラ座音楽監督など有名どころを歴任していますが、これぞバレンボイムという決定盤があるかといえば、なかなかそうゆうものがないのが正直なところでしょう。ハイドンではやはり、1967年、当時奥さんだったジャクリーヌ・デュ・プレとのチェロ協奏曲1番の指揮が印象に残るものでしょうか。

とらえどころのないバレンボイムの指揮するハイドンの交響曲の出来は如何なるものか、興味深く聴きます。

Hob.I:46 / Symphony No.46 [B] (1772)
もう少しキレのいい音を予想しましたが、LPとしては穏やかなサウンド。若干ハイ落ちなのがそのような印象につながっているのでしょう。LPのコンディションもすこし摺れている感じ故致し方ありません。バレンボイムのコントロールは至極オーソドックスなもの。曲のどこかにスポットライトを当てるというよりも、極力指揮者の個性を排除して楽譜通りに音楽を再現しようとしているような印象。ただ、徐々にオケの演奏に力が入り始め、高音弦のきれの良さが印象に残ります。
2楽章のポコ・アダージョは、逆にオーソドックスさが活きて、この時期のハイドン特有の陰りを、しっとりとさりげなく描き、曲自体の素朴な魅力を楽しめます。短いアダージョからメヌエットへの入りの転換は意外に効果的で、メヌエットの立体感がくっきりと浮かび上がります。演奏はオーソドックスですが、等身大のハイドンの魅力を上手く表現して、地味にいい楽章。
フィナーレも実にオーソドックスな入り。LPならではの音の厚みと実体感で音楽が弾み、実に味わい深いニュアンスが漂います。オーケストラの重なりあうそれぞれの楽器の醸し出す複雑なハーモニーがえも言われぬ雰囲気。最後の静けさのあとのフィニッシュは音楽を聴く悦びに溢れたものでした。地味ながら、地味なりに深い味わいがありますね。

Hob.I:47 / Symphony No.47 [g] (1772)
基本的に前曲と同様の響き。オケは前曲よりも心なしかリラックスして演奏しているように聴こえます。また曲想のせいか、弾む感じも良く出て、ハイドンの初期交響曲の魅力を上手く引き出しています。派手なところは一切なく、バレンボイムは実に誠実にオケをコントロールしています。
8分以上かかる長い2楽章ですが、主題の変奏が弱音器付きの弦楽器を中心に引き継がれていきながら、音楽が展開。低音弦が丁寧に描くメロディーラインの美しさは格別。静かな音楽が心に刺さります。作為のない大きな音楽の流れであることが徐々に明らかになり、少しずつメロディーがくっきりとしてきて素晴しい迫力に。終盤は逆に静寂の中に音楽が沈み込みます。この静寂の美しさはLPならではのデリカシー。
穏やかな短いメヌエットを経て、フィナーレはヴァイオリンの実に柔らかく力の抜けたメロディーと、オケの全奏のコントラストが見事。良く聴くとこの絶妙に力みのないフレージングには格別のこだわりがありそうです。ハイドンらしい柔らかい響きを得るためにかなりデリケートなコントロールが行き渡っているように感じます。気づいてみると、これまでも弱音の自然さを保ちながら絶妙の柔らかいコントロールがバレンボイムの特徴でしょうか。弱音よって強奏部分の活き活きとした表情も映えてくるというものです。実に玄人好みの音楽作りということでしょう。

ダニエル・バレンボイムの指揮によるハイドンの初期交響曲2曲でしたが、さほどコンディションのよくないLPにもかかわらず、ハーモニーの美しさ、静寂感、音の柔らかな表情はLPならではの美しさ。とらえどころのない人と思っていたバレンボイムのコントロールは、穏やかな表情の中に実に豊かな音楽が流れる、まさに燻し銀といった風情でした。評価は46番が[++++]、47番は[+++++]とします。

バレンボイムのハイドンは、手元にあるパリセットのCDもちょい聴きした程度であまり聴き込んでいませんし、また、今日取りあげた曲と同時期の録音と思われる、DG国内盤の「悲しみ」、「告別」、「マリア・テレジア」の高精度ルビジウム・クロック・カッティング盤も昨年リリースされ、こちらも未聴。これは手に入れなくてはなりませんね。

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tag : 交響曲46番 交響曲47番 LP

ジークハルトの中期交響曲、神降臨

今日はORFEOレーベルの良心の結晶。

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マルティン・ジークハルト指揮のシュトゥットガルト室内管弦楽団によるハイドン中期の交響曲集。収録曲目は交響曲47番、62番、75番と何れも名前のついていない中期の3曲。ハイドンの交響曲で全集を目指すということではないときにこの3曲を選んでくるとは、ただならないコンセプトです。一体狙いはどこにあるのでしょう。

まずは、レーベルの意向でしょうか。ハイドンの録音多い独墺圏のなかでも、 ORFEOレーベルはハイドンのマイナー曲の録音に熱心です。日本のレコード会社ではあり得ない企画だと思います。
もう一つは想像ですが、指揮者ジークハルトの純音楽的な好みを反映してのことじゃないかと思ってます。このアルバムを聴いてみて、ネタばらしですが、その演奏は極上のもの。どう極上かと問われれば、ハイドンの交響曲の有名曲ではない手あかのついていない曲のなかで、純音楽的に楽しめるものを選んで、その面白さに焦点をあわせたような演奏だからです。これは確信犯的選曲でしょう。

ジークハルトは本人のウェブサイトがありました。

マルティン・ジークハルト(独語)

最初の47番。1楽章からいきなり生き生きとしたオーケストラの魅力で聴かせる展開。ホルンと弦の溶け合いが見事。ハイドンの曲に潜むいたずらっぽいところ見事に表現していますね。ジークハルトのCDははじめてですが、「おぬし、できるな」とつぶやきそうないい出来。
2楽章は弱音器つきの弦の優しいフレーズが心をうちます。主題のメロディーの変奏がすすむにつれ呼吸が深くなり、曲の神髄に到達。
3楽章のメヌエット、楽器の重なりとメロディーの楽器感の引き継ぎが見事。ただ聴いているだけで幸せな気分になるメヌエット。これは素晴らしい。
4楽章の入りは気づかぬような滑らかな入り。弦の優しさと生気の高度な融合。力が入り過ぎがちな終楽章ですが、完璧な力の抜け具合。このフィナーレはただ者ではありません。弦の弓さばきに細心の気が配られた演奏。最後は勢いを緩やかに抜いて1曲目からノックアウトです。

つづく62番。決して名手ぞろいではないオケをたくみにコントロールして、1楽章冒頭の美しいフレーズの素晴らしいメリハリを表現。弦中心なのに素晴らしいメリハリでただならない迫力。展開部の入りの押さえた表現とアクセントの対比も見事。前曲につづき、奇跡的な美しさ。スタジオ録音なのに神様が降りてきています。素晴らしい生気とキレ。
続く2楽章のすばらしさは筆舌に尽くし難し。こちらも弱音器付きの弦楽器と木管,金管との絡みの妙。
3楽章のメヌエットはさっぱりとした展開。
そして終楽章。非常に滑らかな弱音の弦から快活なリズムに入るまでの素晴らしい展開。快速のテンポに乗ってオケの各楽器が乗り切ったキレまくりのメロディーライン。ヴァイオリンのアクセントの付け方がキリッとしていながらしつこくないのがジークハルトのセンスでしょうか。

そして最後の75番。荘重な序奏。短調の劇的な展開。主題が頭角を現したとたんにギアチェンジして快速テンポに。弦を中心としたキレも最高潮に。なんという生気、素晴らしい力感、緻密な静と動の対比、ハイドンの交響曲の素晴らしさを極限まで引き出した演奏とはこの演奏のことでしょう。
2楽章は素晴らしい抑制。ピキピキです(笑) なんたる間。細切れのメロディーをつぶやくように並べ、詩情豊かな楽章に。展開部までふくめて素晴らしい仕上がり。
3楽章のメヌエット。大きな構えで落ち着きはらった展開。音楽が満ちあふれたメヌエット。類いまれな出来。
フィナーレは荘重さをベースに、これまでの楽章の総決算。最後も決まりましたね。

もちろん、3曲とも[+++++]としました。このアルバムはハイドンの交響曲の特に中期の魅力を伝える名盤として文句なしのおすすめ盤。もしかすると中期に限定せず、ハイドンの交響曲の魅力を最もうまく表現した最高のアルバムという位置づけが相応しいかもしれません。ハイドンが好きなすべての人に聴いていただきたい名盤です。

ORFEOレーベルには首を傾げるような演奏が一つもありません。アルバムを出すにあたってプロデューサーの眼力が確かで、アルバムとしてリリースする甲斐のあるものをきちんと仕上げてくるということでしょう。
音楽ファンの味方として、これからも支えていかなくてはならないレーベルですね。今後もいいアルバムをリリースし続けていただきたいものです。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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