【新着】ハイデルベルク交響楽団の35番、46番、51番(ハイドン)

前記事で取り上げたトーマス・ファイとハイデルベルク交響楽団による交響曲全集の23巻ですが、今日はその続きでCD2を取り上げます。前記事はこちら。

2017/03/05 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの交響曲全集第23巻(ハイドン)

Fey23.jpg
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前記事の再掲になりますが、収録情報にも触れておきましょう。CD2はファイの名前はなく、ベンジャミン・シュピルナー(Benjamin Spillner)がコンサートマスターを務めるハイデルベルク交響楽団の演奏で、交響曲35番、46番、51番の3曲。収録は2016年6月、ハイデルベルクの西20kmくらいのところにあるバート・デュルクハイム(Bad Dürkheim)にあるナチュラルホルンアカデミーでのセッション録音。レーベルはhänssler CLASSIC。

CD1がファイの名前が冠されていただけに、素晴らしい演奏を期待してしまいましたが、ちょっと肩透かしのようになってしまいました。このCD2は、ファイの再起が難しいと判明した後、22巻まで到達した交響曲全集を、オケのみで完成させようと、ある意味開き直っての録音のように思われます。

Hob.I:35 Symphony No.35 [B flat] (1767)
冒頭から格別の覇気が宿っています。勢いだけはまるでファイが振っているように錯覚するほど。まさに開き直ったといわんばかりにオケも攻める攻める。この痛快さを待っていました。よく聴くとファイならもう少し意表をついてくると思わせなくはありませんが、CD1よりもずっとイキイキとした演奏に嬉しくなってしまいます。おそらくCD1がファイのコントロールを失った直後の演奏だったのに対し、こちらはファイの意思を受け継いで、ここまで到達した交響曲全集の完成を志すよう、あらためてファイならばどうしたかをオケ全員が考えて演奏しているようです。まるでファイの魂が乗り移ったようなオケの熱演。この鬼気迫るオケの熱演にちょっと込み上げてくるものを感じます。
驚いたのが2楽章のアンダンテ。まるでファイのようにさらりと来ました! これまでのファイの録音を聴いて研究しつくしたのでしょうか。このさりげなさこそファイの緩徐楽章。もちろん、ファイ自身が振っていたら、もっと閃いていたんでしょうが、CD1で感じたやるせなさとは別次元の仕上がり。
ファイの想像力を再現するのが最も難しいと思われるメヌエットは、若干物足りない印象もありますが、中間部をぐっと落とし込むことでなんとかレベルを保ちます。そしてフィナーレで再び痛快さを取り戻します。オケ全員が偉大な才能に追いつこうと決死の演奏で臨みます。オケの心意気が心を打ちます。

Hob.I:46 Symphony No.46 [B] (1772)
おそらく告別交響曲の後に書かれた曲。ここでもベンジャミン・シュピルナー率いるハイデルベルク交響楽団は、まるでファイが振っているがごとく振る舞い、起伏に富んだ1楽章聴き応え十分な彫りの深さと機知を織り交ぜていきます。これは素晴らしい。よく聴くとファイらしくもあり、ファイらしくなくもあり、ファイなきハイデルベルク響の新たな魅力といってもいいでしょう。指揮者の才能ではなくオケの意思でここまでの演奏に仕上げてくるあたり、気合十分と言っていいでしょう。
つづくポコ・アダージョに入ると表現の変化の幅も十分。ハイドンの音楽を完全に消化して自らの音楽として歌い、仄暗いシュトルム・ウント・ドラング期の静謐な気配まで表現しつくします。指揮者の個性に頼らぬ音楽に聴こえなくもありません。これは見事。
この曲のメヌエットは迷いが無くなり、音楽の説得力が上がります。完全にファイの演奏を真似から脱し、オケ自らの音楽になってきた感じ。フィナーレも絶品。

Hob.I:51 Symphony No.51 [B flat] (before 1774)
前曲同様、表現に迷いなく、素晴らしい演奏。この曲も絶品です。当ブログの読者の皆さんも是非この素晴らしい演奏を聴いていただきたいと思います。

前記事を書いた時に感じた、なんとなくやるせない気持ち、そして悲しい気持ち、そして改めてファイの才能の偉大さに気づいたという気持ち。記事にするかどうか、ちょっとためらい、そしてなんとなくそのまま記事にしてしまったわけですが、今日改めてCD2を聴いて、そうしたもやもやが吹っ切れました。このアルバムが2枚組としてリリースされた深い意味がようやくわかりました。ファイを失い、混乱した状態のCD1に対し、2年という時間をかけてそれを克服し、ファイの遺産に負けないレベルの演奏で残りの曲を演奏し、全集を完成させようとする力強いオケの意思を感じさせるCD2。それをあえてまとめてリリースすることがハイデルベルク交響楽団のやるべきことだと世に問うたのでしょう。私はファイなきハイデルベルク交響楽団の素晴らしい演奏に心から感動しました。評価は3曲とも[+++++]とします。

皆さん、このアルバムは買いです!

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tag : 交響曲35番 交響曲46番 交響曲51番

ベーラ・ドラホシュ/スウェーデン室内管の50番、51番、52番

そろそろNAXOSの交響曲全集から離れようかと思っていたんですが、またも気になる1枚。

Drahos50.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ベーラ・ドラホシュ(Béla Drahos)指揮のスウェーデン室内管弦楽団(Swedish Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲50番、51番、52番の3曲を収めたアルバム。収録は2000年8月23日から25日、スウェーデンのストックホルムから西方の内陸に100km以上入ったところにあるエーレブルー(Örebro)のコンサートホールでのセッション録音。

ベーラ・ドラホシュのNAXOSの交響曲全集のオケは前記事で取りあげたニコラウス・エステルハージ・シンフォニアが定番なんですが、なぜか最も新しい録音のこのVol.27のみ、スウェーデン室内管弦楽団の演奏。前記事のニコラウス・エステルハージ・シンフォニアが素晴らしい出来だっただけに、この最新の1枚の出来に、世の中のハイドンの交響曲ファンの方の注目が集まっているはず、、、 おそらく、だれも注目していなとは思いつつも、私自身が気になるので聴き直してみたくなった次第。

ドラホシュの紹介は前記事をご覧ください。

2012/03/25 : ハイドン–交響曲 : ベーラ・ドラホシュ/エステルハージ・シンフォニアのホルン信号他

オケのスウェーデン室内管は、このアルバムを録音した街のエーレブルーが本拠地。スカンジナビア半島で唯一の常設室内楽オーケストラとのこと。設立は1995年で、以降スウェーデン国内から北欧諸国、ヨーロッパ諸国にツアーを行ったとのこと。録音も活発でBIS、Hyperion、NAXOSなどのレーベルに35枚の録音があるとのことです。

ドラホシュが最後に担当したこのアルバムのみどうしてオケが変わったのかは定かではありませんが、これは比べてみたくなるのがハイドンマニアでしょう(笑)。今日はオケの違いを中心に簡単に。

Hob.I:50 / Symphony No.50 [C] (1773)
冒頭の音の鮮度を聴く限り、2000年録音ということで鮮度は十分。これまでのドラホシュの演奏よりはミュラー=ブリュールの落ち着いた運びながら鮮度感を大事にした演奏に近く聴こえます。低音弦の厚みはあるものの、フレージングはやはりニコラウス・エステルハージ・シンフォニアには敵いません。オケの腕はニコラウス・エステルハージ管に軍配でしょう。こちらは録音の鮮度と演奏自体のフレッシュさが印象的ですが、表現の柔らかさというか、各ソロが淡白な印象で、深みは今一歩。
2楽章のアンダンテ・モデラートもリズムのキレはいいんですが、若干フレージングの単調さを感じてしまいます。同じ指揮者のオケ違いの演奏を聴くと、やはりオケは重要だとわかります。
3楽章のメヌエットまでほぼ直裁な印象で通してきたこの曲。ここまでくると一本筋が通っているように聴こえるから不思議なもの。
フィナーレは正統的なオーケストレーションを堪能できます。低音弦の迫力あるあるアタックが迫ります。素直な音色に素直な響きでなかなかの迫力。ドラホシュのコントロールは前記事同様ナチュラルさを狙ったものですが、オケの味わいが少し薄い分、若干淡白な印象を残してしまいました。

Hob.I:51 / Symphony No.51 [B flat] (before 1774)
傾向は前曲の印象に似ていますが、踏み込みが少し深くなり、迫力も増して来ているように聴こえます。曲想も変則的なメロディーをベースとしたもので、オケとの関係がすこし打ち解けてきたのでしょうか。録音順がわからないので、あくまでも勘ですが、オケの緊張がとけ、表現の幅が少し大きくなったようです。
2楽章はホルンのソロがコンチェルト並みに目立ちます。ソロのそれぞれは上手いんですが、フレーズの受け渡しなどの安定感と音楽性はやはりニコラウス・エステルハージ・シンフォニアの方が一枚上手ですね。
メヌエットは力感とキレは文句なし。やはり音楽性の部分ではオケの柔らかな手触りやフレーズのつなぎ等、前記事の演奏とは差があるのは仕方ありません。
フィナーレは迫力はそこそこ、ただしリズムが少々重くなり、推進力にやや難ありといったところでしょう。

Hob.I:52 / Symphony No.52 [c] (before 1774)
このアルバム最後の曲。短調でシュトルム・ウント・ドラング期の余韻の残る曲。ようやくドラホシュの本領発揮。スイッチが入ってきました。ハイドンの深い情感が顔を出し始め、曲の推進力も本格的に。
2楽章のアンダンテも抑えがよく効いて沈み込む曲想をじっくり描いていく感じが良く出ています。
3楽章は非常に変わったメヌエット。ハイドンの創意ここに極まる感じ。このメロディを良く思いつくものです。モーツァルトとは全く違う意味でメロディを自在に操る才能を感じます。交響曲1曲1曲に込められた素晴らしい創意に脱帽。このメロディは浮かんでは来ません、凡人には。
フィナーレもビックリの展開。抑えた入りからメロディが育って知らぬ間に晴朗な青空が見えているような流れ。この曲を久しぶりに聴いて、その音楽の冴え渡る創意にあらためて圧倒されました。

ベーラ・ドラホシュの素晴らしいハイドンの演奏が、オケが変わるとどうなるのかという興味で聴き直したこのアルバム。ドラホシュのナチュラルなコントロールは健在ながら、オケの力量の差はやはり小さくないとあらためて感じたこのアルバム。評価は最後の52番が[++++]、その他は[+++]としたいと思います。推測にしか過ぎませんが、このアルバムは収録順に録音されたような気がします。徐々にオケが慣れて表現の幅が大きくなっているように聴こえます。やはり豊かな音楽は優秀なオケがあっての事とあらためて感じました。このスウェーデン室内管が悪いと言っているのではなく、いつものニコラウス・エステルハージ・シンフォニアが如何に素晴らしいかということが言いたい訳です。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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