【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第4巻(ハイドン)

待ってました!

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ジョヴァンニ・アントニーニ (Giovanni Antonini)指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコ(Il Giardiono Armonico)の演奏で、ハイドンの交響曲全集の第4巻としてリリースされたアルバム。ハイドンの交響曲60番「迂闊者」、70番、12番と、チマローザのカンタータ「宮廷楽長」の4曲が収められています。収録は2016年3月13日から17日にかけて、ベルリンのテルデクス・スタジオでのセッション録音。レーベルはouthereグループのALPHA-CLASSICS。

このアルバム、リリースされたのは先月ですが、注文するのが漏れており、先日はっと気づいて慌てて注文したもの。ハイドンの交響曲全集を目指したプロジェクトゆえ私も特に注視しているわけですね。もちろん、これまでリリースされた3巻は全て取り上げております。

2016/10/09 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)
2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

当ブログの読者の方ならこのシリーズの企画についてはご存知だと思いますが、ご存知ない方は第1巻の記事をご参照ください。このシリーズ、第2巻でちょっと力みが見られましたが、第3巻では見事にそれを修正してきて、非常にいい仕上がりを予感させます。果たしてこの巻は如何なものでしょう?

選曲はこれまでの3巻はシュトルム・ウント・ドラング期の曲を軸に構成されていましたが、この巻ではシュトルム・ウント・ドラング期以後の曲を軸においた構成となり、本格的に全集を企てないと録音しない曲に手を伸ばしてきました。そして、中でもリズムの面白さが際立つ曲を集めてきました。選曲に攻めの姿勢を感じるのは私だけでしょうか。

また、アルバムの造りはこれまで通り非常に手のかかった美しいもので、コレクション欲を満たすもの。1巻ずつレギュラープライスで集めるのは値が張りますが、リリースも長期間にわたるため、それほど負担感もありませんね。

Hob.I:60 Symphony No.60 "Il disrratto" 「迂闊者」 [C] (before 1774)
冒頭の力漲る響きがスカーッと響き渡り、この巻の出来も安心できそうです。もともと喜劇のための劇音楽として書かれた音楽を交響曲にまとめた曲。序奏が終わると喜劇のための音楽とは思えないほどの怒涛のキレ味鋭い響きが襲いかかってきます。まるで竜がのたうちまわるがごとき躍動感。ファイのように一音一音の変化で機知を聴かせるのではなくあくまでも正攻法でグイグイ攻めてくる快感。アクセントの鋭さと迫力はかなりのもの。1楽章は、もはや喜劇の域は完全に超え、神々しささえ感じるほど。
続く2楽章のアンダンテは快速かつ滑らかに行きます。6楽章構成のこの曲の展開上、速めのテンポによる見通しの良さを狙っているのでしょう。オケの各パートの反応の良さもあって多彩な響きを楽しめます。アクセントのキレ、クッキリとした構成感は流石なところ。
メヌエットも速めで通します。舞曲であることを忘れてしまいそうな迫力と展開の面白さ。中間部で漂う異国情緒で一息入れて、再び舞曲に戻ります。
通常はフィナーレとなりますが、フィナーレのような曲調なのに終わりません。嵐の到来を告げるような騒がしさと躍動感の入り混じった楽章。唸る低音弦にジプシー風の旋律が絡まりユニークにまとまっていきます。
この曲の聴かせどころであるアダージョからアレグロへ変化する5楽章。いつもながら入りのメロディーの黄昏た印象からファンファーレに入る予想外の展開に驚きます。ハイドンマジック。
そして本当の終楽章。冒頭ヴァイオリンが音程を外してあえて調弦する様子が盛り込まれていますが、これぞハイドンの遊び心でしょう。こけおどしの面白さ半分、真面目に追い込むのが半分といったところでしょう。

Hob.I:70 Symphony No.70 [D] (before 1779)
この曲もリズムの面白さが聞きどころ。冒頭からリズムの面白さで遊びまくるよう。一つのテーマで曲をまとめるハイドンのユーモアが元になっていますが、演奏の方は攻めの構成で、緊張感を持続します。もう少し遊び心があってもいい気がしなくもありませんが、オケを精緻にコントロールして大迫力で仕上げてきますので、聴き応え十分。
続くアンダンテは弱音器付きの弦楽器の緊密なアンサンブルが聴きどころ。メロディーを様々な楽器が受け継いで進めていく地味ながらなかなか深みのある演奏。
メヌエットはオケがスタジオ中に響き渡る快感に満ちた演奏。非常にしなやかな中間部がうまくエネルギーを中和して一旦落ち着きますが、再び響きのエネルギーが戻り、その対比の面白さを印象付けます。
フィナーレはフーガ風の展開で無限の広がりを感じさせる構成。ここでフーガを持ってくるところにハイドンの冴えたアイデアがあるわけです。メロディーのアイデアも展開もユニーク。

Hob.I:12 Symphony No.12 [E] (1763)
最後に初期の交響曲を持ってきました。素直に爽やかな響きに耳を奪われます。音色の多彩さ、リズムのキレの良さを併せ持つ正統派の古楽器の演奏と言っていいでしょう。欠点らいしいものを見つけるのが難しいバランスの良い演奏。そして迫力やエネルギーも申し分ありません。
短調のアダージョはしっかりと陰りを纏い、落ち着いてじっくりと進めます。この先に到達するシュトルム・ウント・ドラング期の仄暗い雰囲気を先取りするような曲。低音弦の分厚い響きが迫力十分。古楽器とはいえ迫力面で現代楽器に負けている感じはしません。
フィナーレは再び晴朗な空のような明るさを取り戻します。隙のない緊密な演奏が産む充実感。冒頭の主題が次々に展開する面白さ、徐々に迫力を帯びてくる構成の面白さを存分に味わえます。

このあとチマローザの祝祭的なカンタータが置かれています。初めて聴く曲です。悪く言えばどんちゃん騒ぎのような曲ですが、これがめくるめくように展開して意外に面白い。序曲にレチタティーヴォを挟んでバリトンによるアリア2曲が聴きどころ、と書きかけたら、実はアリアよりもレチタティーヴォの方が面白い。こればかりは聴いていただかなくてはわかりませんね。ハイドンの交響曲を聴き終えてちょっとくつろいで聴けるという構成を意図したものでしょう。アントニーニも思いっきりくつろいだコントロール。このノリがハイドンでも欲しいところです(笑)

ジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドンの交響曲第4巻ですが、すでに安定期に入りましたでしょうか。古楽器にしては十分な力感を表現できるオケによるキレの良い演奏が揃っています。このアルバムの曲だともう少し遊びがあってもいい気もしますが、アントニーニの狙いはあくまで正攻法によるタイトな演奏ということでしょう。演奏のレベルは非常に高く、鮮度の高い録音も手伝って、ハイドンの交響曲全集の企画にふさわしい安定感もあります。これだけの演奏を揃えられたら、やはりリリースされるごとに揃えたくなってしますね。そういう意味で全集企画は成り立ちそうですね。評価は全曲[+++++]とします。

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tag : 迂闊者 交響曲70番 交響曲12番 古楽器

【新着】ロビン・ティチアーティ/スコットランド室内管のホルン信号、70番、時計(ハイドン)

今日は最近リリースされたばかりのアルバム。

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ロビン・ティチアーティ(Robin Ticciati)指揮のスコットランド室内管弦楽団(Scottish Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲31番「ホルン信号」、70番、101番「時計」の3曲を収めたアルバム。収録は2015年1月31日、2月1日~2日、7日~8日、エジンバラのアッシャーホールでのセッション録音。レーベルはオーディオメーカーでもあるLINN。

スコットランド室内管といえば、チャールズ・マッケラスとのモーツァルトの交響曲全集で聴かれる、クッキリと筋の通った透明感あふれる響きが印象に残っています。このオケの現在の首席指揮者がロビン・ティチアーティ。2009年からこの地位にあります。いつものようにティチアーティについてちょっと調べてみます。

ロビン・ティチアーティは1983年ロンドン生まれ。名前からわかる通りイタリア系です。子供の時からヴァイオリン、ピアノ、パーカッションを学び、英国ナショナル・ユース・オーケストラのメンバーとなります。15歳でセント・ポールズ・スクールに通いながら指揮をはじめ、ケンブリッジ大学クレア・カレッジで音楽を専攻することになりますが、正式な指揮教育は受けていないとのこと。その後サイモン・ラトル、コリン・デイヴィスに師事して指揮の腕を磨き、2005年、オーロラ室内管弦楽団を創設し、最初のコンサートを開きます。同年ムーティの招きでミラノ・スカラ座に最年少でデビュー。2008年にスコットランド室内管をはじめて振りますが、翌年には首席指揮者となり現在に至り、またグラインドボーン音楽祭の音楽監督、バンベルク響の首席客演指揮者も務めるなど近年は飛ぶ鳥を落とす勢い。私もはじめて聴く人ですが、すでにLINNからはスコットランド室内管とのアルバムが何枚からリリースされているほか、オペラの映像、バンベルク響を振ったアルバムなどいろいろリリースされており今後が楽しみな人です。ムーティが見初めたということで、なんとなく音楽に独特の輝きをもった人という印象です。

オペラを得意とするティチアーティが切れ味鋭いスコットランド室内管と録音したハイドンということで、ハイドンの交響曲演奏史に一石を投ずることになるのでしょうか。

Hob.I:31 Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
このアルバム、一聴して録音がいい。流石にLINNというところ。空間にオケがきっちり定位して響きも精緻。SACDマルチチャネルにも対応しているので環境がある方には録音面でも魅力のあるものでしょう。冒頭からテンポよく爽快な入り。オケがイキイキとして音楽が弾みます。フルートに印象的にレガートを効かせたりして遊び心もありそう。オケが実に楽しそうに演奏しており、オーケストラコントロールの腕は確かですね。1楽章から見事な演奏に惹きつけられます。
ホルン信号の目立ちはしませんが聴きどころのアダージョ。じんわりと心に響く音楽。ティチアーテはここでちょっと牙を剥いてきました。引き締まった表情でゆったりと音楽を進めますが、途中で入るアクセントが鋭い。途中ソロ楽器に修飾音をつけて遊び心を忘れないあたりは前楽章そのままですが、オケの切れ味をチラ見せすることで、ゆったりした部分を際だたせようということでしょう。そのゆったりした部分は弱音のデリケートなコントロールが効果的でホルンも上手い。
そして鮮やかさが際立つのがメヌエット。明るく屈託のない響きが実に爽やか。ヴィブラートを抑えた透明感が素晴らしい。
フィナーレの前半はソロ楽器の織りなす音の綾を楽しむよう表情の変化を抑えて、純粋に音符に音楽を語らせるようですが、変奏最後のコントラバスがちょっと自己主張(笑) 最後のプレストでオケが吹き上がり終了。1曲目からティチアーティの鮮やかな手腕が印象的。

Hob.I:70 Symphony No.70 [D] (before 1779)
珍しい曲を選んできました。リズムの面白さが際立つ曲。ハイドンの音楽に潜む諧謔性が炸裂。畳み掛けるようなクレッシェンド。ティチアーティはときおりレガートを織り交ぜリズムの切れ味を強調。特にティンパニが鮮やか。オケが軽々と吹き上がる快感。
アンダンテでは仄暗い旋律を穏やかに刻んで、またも音符自体に音楽を語らせるように表現を抑え気味に進めます。そしてメヌエットの自然で鮮やかなところは変わらず。メヌエットの終盤にじわじわとオケに力が漲ってくるようになりますが、このやりすぎないのにオケの鮮やかさが際立つというところがティチアーティの優れたところでしょう。
フィナーレはフーガ。ハイドンなのにバッハを思わせる緻密な展開と感じさせるのはティチアーティがきりりと表情をオケを引き締めているからに他なりません。緻密にコントロールされたオケからは神々しいオーラが発せられています。

Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
締めは時計。2楽章ばかりが有名ですが、時計も驚愕も緊密な1楽章が聴きどころ。タイトでクリア、引き締まった序奏から、落ついて主題に入ります。流れよりもゴツゴツしたリズムの面白さを強調して進みますが、それがだんだん流麗さを帯びてくる展開。この1楽章の古典的な演奏の高揚感をあえて避けるように、冷静さを保ちながらオケのスロットルをコントロール。やはりオケの俊敏さ、切れ味の良さが持ち味。1楽章の終結部の力の漲りようにはビックリ。
2楽章のアンダンテは予想どおり速めの展開。カチカチ刻む秒針に合わせて音楽も軽やか。なぜかオーボエの響きが実に美しい。展開部に入っての盛り上がりもキレキレ。ティンパニの鋭いバチさばきにうっとり。テーマ音楽としてのわかりやすさではなく、交響曲としてのアーティスティックな魅力をきちんと伝えるという姿勢が素晴らしいですね。
ティチアーティのメヌエットは俊敏なオケが鮮やかに響き、実に爽快。これが3楽章に挟まって交響曲の展開を多彩にしているという意味がよくわかります。クリアな録音で際立つ響きの鮮やかさ。全奏でも各パートの音色が鮮明にわかります。
そしてフィナーレは俊敏なオケの機能美のショーケースのような風情。全編にオケの力が漲り、展開部のフーガはあえて音量をかなり落として繊細さを印象付け、最後は室内オケとは思えないほどの力感を表してフィニッシュ。

新進気鋭のロビン・ティチアーティ率いるスコットランド室内管によるハイドンの交響曲集。若手の指揮者がハイドンを取り上げると有り余る創意を出しすぎて、くどくなったり強引さが目立ったりするのですが、ティチアーティはその辺がわかっているのか、実に落ち着いて、必要十分な創意で十分な効果を挙げています。室内管弦楽団の透明感あふれる響きを武器に、俊敏なところ、力漲るところを見せつつも遊び心も忘れず、ハイドンとはこうして演奏するものと言わんばかりのスマートさ。このセンスこそムーティの目に止まったところではないかと想像しています。選曲のセンスもよく、今後のハイドンの録音が期待されるところ。今回の3曲、すべて[+++++]とします。

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tag : ホルン信号 交響曲70番 時計 SACD

デヴィッド・ブラムの交響曲39番、70番、73番、75番(ハイドン)

ちょっと間が空いてしまいました。年度末で仕事も飲みもあって今週はヘロヘロ。遅く帰るとなかなか思うように記事が書けませんでした。

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デヴィッド・ブラム(David Blum)指揮のエステルハージ管弦楽団(Esterhazy Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲39番、70番、73番「狩」、75番の4曲を収めたアルバム。収録年、収録場所の記載はありませんが、Pマークは1966年とありますので、録音は1960年代中頃までだと想像できます。レーベルは優秀録音の多いVANGUARD CLASSICS。

デヴィッド・ブラムの交響曲集は以前に別のアルバムを取りあげています。

2010/10/24 : ハイドン–交響曲 : デヴィッド・ブラムの交響曲集

この記事を読まれた湖国JHさんにアルバムを貸したところ、それが良かったのか、今日取り上げるアルバムを湖国JHさんが手に入れ、逆に貸していただいたというもの。ニッチなハイドンの演奏の激ニッチなアルバムをいろいろ聴こうと思うと、こうした地道なやり取りが非常に重要になってくる訳です(笑)

さて、ブラムの情報は前記事にゆずるとして、今日取り上げるアルバムの収録曲は4曲で、そのうち交響曲70番は前に取りあげたアルバムにも収録されていますので、新たに聴くのは3曲と言うことになります。念のため両方のアルバムの交響曲70番を聴き比べてみましたが、アルバムのリリースも1990年と92年ということで近い時期であることもあって、録音の鮮度は変わりませんでした。

ジャケットは黒地にボタニカルアートが配されたシックなもの。以前のアルバムの出来から察するに、素晴しい音楽が流れてきそうな予感です。

Hob.I:39 / Symphony No.39 [g] (before 1770)
直接音重視のほどよく鮮明な録音。シュトルム・ウント・ドラング期独特のほの暗い陰りがある曲調ですが、全体にキビキビとしたブラムのコントロールで程よい緊張感を帯びています。録音のせいか、力感よりも軽さで聴かせ、短調の曲なのに爽やかさを感じる入り。アンダンテに入ってもこのキビキビ感は変わらず、ハイドンのこの時期の交響曲のキリリと引き締まった等身大の良さが滲み出てきます。弱音器つきの弦楽器が奏でる軽やかなメロディーが心地よく漂い、時折ハープシコードの雅な音色が華やぎを加えます。メヌエットはどちらかというとリズムよりも流麗さを意識したもの。滑るように滑らかな弦楽器のボウイングによる入りと、小気味好い中間部と、表現を明確にわけて表現の幅をつけていきます。フィナーレはほどほどの力感ながら、勢いは畳み掛ける印象を与える、こちらも適度な緊張感。曲に没入せず、どこかに冷静に俯瞰する視点を保ちながら、程よく主観的に音楽に乗っていく感じ。ブラム自身が曲に程よく浸る快感を味わっているよう。この時期の小交響曲の演奏としては完璧でしょう。

Hob.I:73 / Symphony No.73 "La Chasse" 「狩」 [D] (before 1782)
以前取りあげたアルバムにも含まれている70番を飛ばして、次の「狩」。響きの軽さはこのアルバムの特徴でしょう。定位感を含めて鮮明さはあるのですが、迫力と言うより響きの厚みがもう少しあればと思わせます。前曲ではそれが曲の規模と演奏スタイルに合っていたんですが、どうゆう訳かこの曲では少し迫力不足に聴こえてしまいます。入りは実にゆったりとした序奏から。主題に入ると前曲のキビキビ感は影をひそめ、落ち着いた表情を出そうとしているのか、リズムもすこし鈍く聴こえます。曲をじっくりと描いていこうということでしょう。終楽章の噴き上がりへの対比を意図しているのでしょうか。演奏によっては躍動感溢れる感じになる曲ですが、かなり抑えた演奏。つづくアンダンテも同じ調子を保ちます。起伏はほどほど。アンダンテは1楽章ほどの違和感はありません。さざめく弦の魅力がよく出ています。なぜかメヌエットとフィナーレが一緒のトラック。メヌエットはささっと済ませるように片付け、いざフィナーレ! と思いきや、噴き上がりません。1楽章と同様、落ち着いて曲を丹念に描いて行くアプローチ。1楽章のスタンスからこのフィナーレの展開は読めませんでした。ある意味知的刺激を含む演奏ということでしょう。

Hob.I:75 / Symphony No.75 [D] (before 1781)
最後の曲。一転今度は荘重な序奏に続きキビキビとした展開。39番同様のスタイルの予感です。鮮やかに吹き上がるヴァイオリンの音階。1楽章は一貫してタイトな期待通りの名演でした。つづくポコ・アダージョはゆったりゆったりと実に慈しみ深い音楽。このアルバム一番の聴きどころでもあります。深い呼吸と大きな起伏、そして各奏者の息がピタリとあってうねるように音楽が流れます。癒しのシャワーを浴びているよう。75番のアダージョがこれほど素晴らしかったとは。メヌエットはこのアルバムで最もバランスの良いもの。小気味良いとはこのことでしょう。ヴァイオリンソロの軽やかさが印象的。フィナーレは軽やかさを引き継ぎながら次々にメロディーが展開して、落ち着いて終わります。

デヴィッド・ブラムとエステルハージ管弦楽団による2枚目の交響曲集ですが、前回取り上げたアルバム同様、ハイドンの交響曲に対する深い理解を感じる演奏でした。オケも流石にエステルハージ管弦楽団を名乗ることだけあり素晴しい腕前。このアルバムの中では「狩」だけがちょっと異色な演奏。終楽章が有名な曲ですが、盛り上げるばかりがこの曲の解釈ではないとでも言いたげな演奏。もともとこの曲のみ録音日が別なのかもしれませんね。評価は「狩」が[++++]、他2曲が[+++++]とします。

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tag : 交響曲39番 交響曲70番 交響曲75番

エルネスト・ブールの70番

今日は珍しいアルバムを紹介。

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エルネスト・ブール(Ernest Bour)指揮のSWR交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲70番とメンデルスゾーンの交響曲5番「宗教改革」の2曲を収めたCD-R。こちらもディスクユニオンで見つけたもの。レーベルはSounds Supremeというアメリカのレーベル。例によってプリントした簡単なジャケットのみのアルバム。録音は1970年代としか記載がありません。会場ノイズや拍手がないことを考慮するとセッション録音か放送用の録音だと想像されます。

このアルバムを取り上げたのはひとえにその演奏のすばらしさから。エルネスト・ブールの名前は知っていましたがちゃんと演奏を聴いたことはありませんでした。このアルバムも未聴の演奏だからという軽いノリで入手。CDプレイヤーにかけてみたところその素晴らしい音楽に引き込まれました。

いつものようにWikipediaなどを調べてみました。エルネストブールは1913年フランス北東部、ドイツ国境すぐそばのティオンヴィル生まれの指揮者。近くのストラスブール音楽学校などで学び、指揮はなんとヘルマン・シェルヘンから学んだそう。1941年にはストラスブール近郊の街、ミュールーズのオーケストラの指揮者に、1950年にはストラスブール・フィル、1955年にはストラスブール歌劇場の指揮者となります。そして1964年から1979年までこのアルバムのオケであるバーデン・バーデンのSWF交響楽団の首席指揮者を勤めました。このアルバムはこの時代のものでしょう。1976年から1987年まではオランダのヒルヴェルサムのオランダ放送室内管弦楽団の終身客演指揮者に。そして2001年に亡くなっています。
レパートリーは現代音楽が中心でリゲゲィ、クセナキス、リーム、シュトックハウゼンなどの作品の初演などを手がけたとのこと。
エルネスト・ブールの録音のうち最も聴かれているのはキューブリックの「2001年宇宙の旅」に使われたリゲティの「アトモスフィア」の演奏。以前触れたように「2001年宇宙の旅」は最近も映画館で見ていますし、DVDも持っていますので意外なところでブールの演奏を聴いていたことになります。

さて、そうした現代音楽のスペシャリストのブールのハイドンはどのような素晴らしさなのでしょう。

交響曲70番(Hob.I:70)1779年以前の作曲
冒頭からちょっと低音がボンつき高域がかなり減衰した録音。ただその万全ではない録音の向こうから聴こえてくるのはハイドンの晴朗な70番台の交響曲の端正かつ力強い響き。リズミカルな開始部から堂々とした揺るぎない響き。以前聴いたギュンター・ヴァントの76番のDVDにも似た、現代楽器による流麗かつダイナミックな響き。1楽章は陽光に照らされた大理石のギリシャ神殿のような古典的均整。大理石の大きなヴォリューム感と細部の彫り込みの陰影の織りなすコントラスト、大理石の透明な質感までつたわるようなリアリティ。この圧倒的な存在感は見事。
2楽章のアンダンテは柔らかな光の陰を表すような、悲しげなメロディをあえてあっさり描くことで情感が色濃く浮かび上がります。幾重にも重なる陰の微妙な陰影の変化がモノトーンなのに豊かな表情を呈するような趣。確信犯的なこのあっさりとした表現は現代音楽のスペシャリストならではと思わせます。
3楽章はメヌエット。再び陽の光を浴びる神殿のファサード。メヌエットのツボを抑えた素晴らしい構築感。この揺るぎない響きはブールの緻密なコントロールの成果でしょう。鉈を振ったような強音と流麗を極める間奏部。
フィナーレは非常に抑えたヴァイオリンのフレーズが極めて印象的。ハイドンの曲の演奏としては異例のダイナミックレンジの幅をとった演奏。強奏部分の存在感は圧倒的なもの。録音がついていかず飽和してしまっている部分もありますが、演奏は強弱のコントラストのコントロールが見事。最後はキレよくフィニッシュ。圧倒的な印象を残します。

評価はと書きかけましたが、つづくメンデルスゾーンの「宗教改革」のニュアンスに富んだ響きに耳を奪われます。メンデルスゾーンは良く聴く方ではありませんが、こちらも圧倒的な存在感。なんという情感。劇的で端正でしなやかといったらいいでしょうか。普通はハイドンをつまんで聴くんですが、宗教改革のあまりの素晴らしい出来に最後まで聴いてしまいました。

ハイドンの70番ももちろん[+++++]としました。おそらく他にハイドンの録音を探すのは容易ではないとおもわれますが、この出来は他の曲を聴いてみたいと思わざるを得ません。

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tag : 交響曲70番 おすすめ盤 CD-R

デヴィッド・ブラムの交響曲集

週末に伊豆旅行に行っている間、音楽はあんまり聴かず。レビューを書いていつものペースに戻らなくては。

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今日は先日ディスク・ユニオンで手に入れた1枚。

デヴィッド・ブラム(David Blum)指揮のエステルハージ管弦楽団(Esterházy Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲60番「迂闊者」、70番、81番の3曲を収めたCD。レーベルはVANGUARD CLASSICS。録音は60番が1963年4月、70番が1966年8月、81番が1965年6月と1960年代の録音。すべてセッション録音のようです。

デヴィッド・ブラムのことを調べても、あんまり情報が出てきません。ニューヨークタイムズ紙の記事によれば、1998年4月17日にガンのため62歳で亡くなったとの記事が。ということは1936年頃の生まれ。
CDの解説によれば、ロスで生まれアメリカとヨーロッパで音楽教育を受け、1961年に自らエステルハージ管弦楽団を創立。このオーケストラはハイドンがエステルハージ家に仕えていたのにならって創ったとのこと。このオーケストラの毎年の全米、カナダでのツアーは、ハイドンや18世紀の作曲家の多くの作品を聴衆にはじめて聴くチャンスをもたらすなどの功績があったとのこと。1969年にはアンセルメのすすめでスイスに住居を移し、ローザンヌ交響楽団とジュネーブ交響楽団の音楽監督になり、ジュネーブ交響楽団の音楽監督の座には1977年から1989年までありました。彼はまた音楽記事のライターとして知られ、彼の著書は多くの国で翻訳されているようです。

私自身はブラムははじめて聴く人。録音年代を考えると私より上の世代のクラシックファンの方にはおなじみなのかもしれません。手に入れたのはもちろん「エステルハージ管弦楽団」とのオーケストラのただならぬ名前に反応して。この名前のオケということで、当ブログが無視する訳には行きませんね。

1曲目は交響曲60番「迂闊者」。この曲な古い筆写譜の中に「喜劇<迂闊者>のためのシンフォニア」という注記が見られるとのこと。迂闊者は1774年夏にエステルハーザ宮でカール・ヴァール座が上演したフランス喜劇で、その序曲と劇中音楽をハイドンが作曲。結婚式の当日、自分が花婿であることをすっかり忘れている迂闊者の紳士が、ネクタイを結んでいるときにやっとそのことを思い出すというフィナーレ。音楽のほうも奏でてしばらくしてから調弦をしていなかったことに気づき調弦を始める部分があるなど喜劇の演出を盛り上げるもの。この曲はハイドンの交響曲で唯一6楽章構成。この各楽章が序曲や幕間音楽、後奏音楽から成り立っていりことが後年確認されました。

CDをかけてビックリしたのは録音の鮮明さ。冒頭から鮮明なオケの音色が素晴しい。荘重な序奏から、速めのテンポに切り替わり、オケがリズムに乗ってはち切れます。エステルハージ管の名に恥じない素晴しい演奏。ちょっとざらついた音色ながら、鮮やかなテンポ感とふけ上がり、抜群のキレは流石です。途中コミカルにテンポを落とす部分などもあり、ハイドンらしさも十分ですね。
2楽章のアンダンテは落ち着いたリズムに乗って、柔らかい弦とホルンのアクセントの対比が面白い曲。いったいどうゆう場面のために書かれた曲でしょうか。
3楽章のメヌエットは大きな刻みとメリハリが効いて迫力十分。中間部のコミカルな表現もハイドンらしい演出ですね。
4楽章は快活なプレスト。通常のハイドンの交響曲の終楽章のような構成。素晴しい生気で盛り上げます。
5楽章はアダージョ。切々とした弦楽器の美しいメロディーが心に響きます。中間部は荘重なファンファーレのよう。再び最初のメロディーにもどり、美しい時間。
最後の6楽章は力強いオケの強奏から始まり、途中で調弦、ふたたび力強いオケの響き。
この曲は6楽章と特殊な構成ですが、ブラムのコントロールはハイドンの曲の本質をきちんと踏まえたもので、非常に楽しめますね。

続いて交響曲70番。この曲はあまり取り上げられることのないマイナーな曲。作曲は1779年頃で、交響曲53番「帝国」第1版や交響曲71番などと同じ頃の作曲。
この曲も60番と同様、快活さとキレに溢れた演奏。60年代の演奏ではありますが、1楽章を聴いた印象では最近の古楽器の演奏とも類似せいを感じるキレですね。
2楽章は淡々とアンダンテを奏でます。弱音器付きの弦楽器が典雅なのにうら悲しいメロディーを刻んでいきます。この曲の聴き所ですね。
3楽章のメヌエットは切れ味抜群。そしてフィナーレは意外と滑らかなフレージング。これは曲想を考慮してのことでしょうか。
このマイナーな交響曲を巧くまとめて聴かせていますね。

最後はパリセット直前の交響曲81番。この曲は1784年の作曲。
1楽章は快活さと流麗さがとても印象的。2楽章の滋味深いメロディーも最高。3楽章の不思議な曲想のメヌエット、4楽章の流麗なフィナーレと前2曲と同様の素晴しいハイドンです。

このアルバムは素晴しい出来ですね。1960年代という録音年代を録音でも演奏でも感じさせない素晴しいアルバム。自ら創設したオケにエステルハージ管弦楽団と名付けていることを見てもわかるようにハイドンのすばらしい理解者でもあり、その演奏も一級品。この演奏が埋もれていることは音楽界の損失ですね(大げさか!)
私の評価はもちろん全曲[+++++]としました。

このような掘り出し物が見つかるから、コレクションがやめられなくなる訳です。ブラムのハイドンは探せばまだ他の曲が見つかりそうですので、引き続き捜索にあたります。

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tag : 迂闊者 交響曲70番 交響曲81番 おすすめ盤 ヒストリカル

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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