レッパード、マッケラスの交響曲77番、34番、18番(ハイドン)

今日もマイナー盤。ウキウキ(笑)

LeppardMackerras.jpg

レイモン・レッパード(Laymond Leppard)指揮のイギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲77番、交響曲32番、チャールズ・マッケラス(Charles Mackerras)指揮のロンドン交響楽団のメンバーによるハイドンの交響曲18番のあわせて3曲を収めたCD-R。収録年代の表記はありません。レーベルは米Haydn House。

このアルバムも例によって湖国JHさんから送り込まれたもの。当方の所有盤にないアルバムを次々と送り込んでこられます。いつも含蓄に富んだアルバムゆえ、聴く方も気合が入ります。

これまで、当ブログでもレイモン・レッパードの演奏は交響曲ばかりではなく、協奏曲、歌曲の伴奏などを含めていろいろ取り上げています。

2014/03/27 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパード/イギリス室内管の交響曲39番(ハイドン)
2013/06/01 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・ジャンドロンのチェロ協奏曲1番、2番
2012/08/27 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパード/イギリス室内管のラメンタチオーネ
2011/02/20 : ハイドン–協奏曲 : アルテュール・グリュミオーのヴァイオリン協奏曲
2010/11/03 : ハイドン–オペラ : ベルガンサのオペラアリア集
2010/06/05 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパードのハイドン

直近にとりあげた交響曲39番についても湖国JHさんから貸していただいたもの。イギリス室内管とのアルバムはその他にもあり、いったいどれほどの曲数が録音されたのかは定かではありません。どの演奏も手堅い職人タイプの演奏ですが、それだけに素朴な味わいがある演奏という印象。このアルバムはどうでしょうか。

Hob.I:77 / Symphony No.77 [B flat] (1782?)
いつもながら、LP起こしとは思えないHaydn Houseの安定した音質。ちょっと高音がおとなしい感じですがそれがかえって聴きやすい印象。瑞々しい音質で、手堅いレッパードのコントロールによるイギリス室内管の響きにうっとり。奇をてらわず落ち着いた音楽が流れます。シュトルム・ウント・ドラング期と、後のパリセット以降のハイドンの創作の頂点の合間に生まれた穏やかな曲調の交響曲の魅力を実にさりげなく表現しています。素朴とは言っても、途中の抑えた部分の表現などは流石。穏やかに聴かせどころをこなします。
つづく2楽章もビロードのような肌触りの絶妙の柔らかな響きに夢見心地。このようなしっとりと自然な表現、意図してできるはずもなく、長年の経験から滲み出るような音楽です。メヌエットのキレのよい弦の響きも絶品。この屈託のない晴朗さも貴重なもの。ハイドンの真髄をよく捉えたもの。そしてフィナーレのコミカルなメロディーをしっかり地に足をつけて描いていくあたり、まさに熟練職人の技と唸るばかり。実に自然な演奏。ハイドンの交響曲から滲みでる愉悦感を万全にとらえた達人の技です。

Hob.I:34 / Symphony No.34 [d] (before 1767)
ハイドン初期の短調の交響曲。出だしのアダージョのこの時期特有のほの暗い響きから引き込まれます。レッパードは自然な表情のまま、音楽に強い推進力をみなぎらせ、一気に聴かせます。2楽章のアレグロに入ると、雲間から陽が差したように一気に晴朗な響きに変わります。この変化でもレッパードの力の抜けた自然な演出が功を奏し、説得力のある展開。この曲を存分に楽しめる名演奏です。おだやかな心境だからこそ、この曲の魅力が伝わるのでしょうか。弦の高音の純粋無垢な響きの美しさに惚れ惚れします。全曲同様メヌエットのキレは最高。音楽が弾み、素晴らしい躍動感。奏者全員の音楽がピタリと合って、全員が楽しんで演奏しています。よく聴くとホルンの伴奏が絶妙。これは難しそうです。フィナーレに入ると大胆な音階とほの暗さが相俟って素晴らしい音楽。もはやレッパード、オケが完全に一体化してハイドンになりきっているような完成度。ここまで見事だとは思いませんでした。

Hob.I:18 / Symphony No.18 [G] (before 1766)
3曲はレッパードではなくマッケラスの指揮。オケも変わります。マッケラスも職人タイプということで、アルバムのまとまりとしては悪くありません。レッパードに比べてキリッと締まった響きに感じますが、同じく自然な表情に語らせるタイプの演奏で、こちらも悪くありません。静かに進む1楽章のアンダンテの穏やかな表情をじっくり楽しめます。なんでしょう、この豊かな音楽は。この3曲のこの演奏を組み合わせてアルバムにしたのは酔眼といえるでしょう。聴いているうちに至福の境地に。この曲も2楽章に入ると雲間から陽が射すタイプ。響きに若干濁りを感じますがこれはLPの再生環境の問題でしょうか。レンジはこちらの方が広く、くっきりと粒立ちよくオケが定位します。ハープシコードの音色が典雅な印象を強めています。ホルンがマッケラスらしいアクセントをつけていきます。
この曲は3楽章構成で最後がメヌエットという変わった構成。レッパードのキレのいいメヌエットとは変わって、しっとりと歌うメヌエット。中盤以降の短調に変わってからの叙情的な音楽の濃さは流石。聴き進めるうちにすっかりこの曲の魅力にはまりました。

レイモン・レッパードにチャールズ・マッケラスという職人指揮者によるハイドンの交響曲集。このアルバム、最高です。ハイドンの交響曲の魅力がこれほどまでに自然に表現された演奏を詰め込んだ宝物のようなアルバム。レッパードの2曲はこれまで聴いたレッパードの交響曲の中ではピカイチ。個性的な演奏ではありませんが、よく聴くと、この曲の素晴らしさが完璧に表現されています。そしてマッケラスの18番!も同様。聴くと幸せな気分に満ち溢れてくる名盤です。評価は全曲[+++++]とします。

Haydn Houseのアルバムは今でも入手はむずかしくありませんので、ハイドンの交響曲好きな方は是非どうぞ。おすすめです!

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tag : 交響曲77番 交響曲34番 交響曲18番

ニコラス・ウォード/ノーザン室内管の77番、78番、79番

最近何枚か取りあげている、NAXOSの交響曲集。

Ward77.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ニコラス・ウォード(Nicholas Ward)指揮のノーザン室内管弦楽団(Northern Chamber Orchestra)の演奏でハイドンの交響曲77番、78番、79番と渋めの選曲。収録は1995年9月23日、24日、イギリス、マンチェスターの新放送センターのコンサートホールでのセッション録音。

ニコラス・ウォードはNAXOSの交響曲全集でも好きな指揮者の一人。以前26番「ラメンタチオーネ」を含むアルバムを当ブログで取り上げ、Haydn Disk of the Monthにも選定した名盤。その記事はこちら。

2010/12/14 : ハイドン–交響曲 : 【ブログ開設1周年記念】ニコラス・ウォードのラメンタチオーネ

ウォードの紹介は上のリンク先をご覧ください。ウォードの演奏は一言で言えばハイドンの現代楽器の演奏の原点の様な演奏。自然でハイドンの演奏の悦びに溢れていて、安心して身を任せて聴くことができる演奏。特段の踏み込みはないんですが、逆に音楽が吹き出してくるような実に慈しみ深い演奏。

今日このアルバムを選んだのは、NAXOSの交響曲全集の整理をしていると、ウォードが担当した1992年から93年にかけて録音された全集のVol.6からVol.10までの5枚からぽつんと離れて、1枚だけ1995年に録音されたこのアルバムがVol.20としてリリースされており、ちょっと聴き直してみたくなったから。

Hob.I:77 / Symphony No.77 [B flat] (1782?)
中野博詞さんの「ハイドン復活」などによると、ヴァントが得意とするこの前の76番交響曲とこの後の78番との3曲セットで1782年ごろに作曲されたもの。ハイドンがロンドン旅行を計画し、「イギリス紳士の音楽趣味をも考慮して作曲した」とされ、「美しく華やかで、しかも長すぎない三つの交響曲」として作曲されたとの事。ウォードの演奏はまさにこの言葉を地でいくようにイギリス趣味のさっぱりとしながらも気高い感じの演奏。中庸なテンポ、柔らかいオケの響き、そして自然な響きながら生気が満ちて幸福感満点。ホルンのとろけるような響きが加わりえも言われぬような気分。フレーズ間の間をたっぷり取る事で非常に落ち着いた展開。転調して展開するところも音楽の面白さのツボを抑えたコントロール。1曲目からウォードの術中にハマります。この中期の地味な曲の真髄をえぐる演奏。NAXOS交響曲全集の白眉と言っていいでしょう。ヴァントの76番に劣らぬ素晴らしい感興。
2楽章は弱音器付きのヴァイオリンの音色が美しいメロディーラインを奏でます。シュトルム・ウント・ドラング期のような濃い情感ではなく、どことなく爽やかさが漂うのがこの時期の特徴でしょうか。ウォードはここも自然さを保って、まさにこうしか演奏できないでしょうという説得力。
3楽章のメヌエットは弦のキレとアクセントの面白さがポイントの曲。
フィナーレは弾むメロディーを慌てずじっくり弾きこなしていきながら、徐々に興奮のピークを演出していきます。もはや曲を完全に掌握した上で自在にコントロールする感じ。フィナーレ盛り上げ方を聴いていると、まさに勝手知ったる自宅の庭を手入れするような完全にすべてを掌握して進める感じ。他のウォードのアルバムより録音が新しい分、多少明晰さもアップしています。NAXOSのアルバムの自然な録音は質が高いですね。これ以上の録音は必要ないと思わせる完成度があります。

Hob.I:78 / Symphony No.78 [c] (1782?)
短調の畳み掛けるメロディーラインからはじまる曲。冒頭からエネルギー感溢れる演奏。ツボははずしません。メロディーラインの美しさだけでなく、途中のアクセントの険しさはなかなかのもの。オケの秩序を乱しかねないくらいムチを入れているようで、オケもそれに応えて迫真の演奏。格別な生気が宿ります。
一転して慈しみ深い和音からはじまるアダージョ。前楽章の火照りを鎮めるような楽章。途中から短調に転調して、ハッとさせられますが、ウォードの演奏はその辺の変化を実に上手くコントロールして、やはり曲をこれ以上に上手く演出することは出来そうもないほどの説得力をもっています。かなりのダイナミックレンジにも関わらず、非常に自然な演奏。シンプルなメロディが様々に絡み合って非常に面白い効果をあげている様子が手に取るようにわかります。
前曲とはまた異なる面白い曲想のメヌエット。導入部も面白いのですが中間部が実にユニーク。ベースになるメロディーが変化して全く異なる曲想にからまれ、また戻るという感じ。
フィナーレも実にユニーク。いたずらっ子が走り回るような曲想。これは聴いていただかなくてはわかりませんね。78番は非常にユニークな曲。ここでもウォードは完璧な演奏。

Hob.I:79 / Symphony No.79 [F] (before 1784)
この曲は好きな曲。1784年頃の作品。ハイドンの交響曲の晴朗流麗な魅力が満ちた素晴らしい曲。ウォードは勘所をびしっと押さえてバランス感覚溢れる素晴らしい演奏。ハイドンファンの気持ちをぐっとたぐり寄せる演奏。演奏の美しさに鳥肌がたち動けなくなるような感覚に襲われるほどの素晴らしい演奏。晴朗さに脳内のアドレナリン噴出。後半様々に変化するメロディーがハイドンの筆の冴えを物語ります。
2楽章はヴァイオリンの奏でるメロディーと木管、ホルンの掛け合いによるくつろいだ曲。後半は速い曲になりますが、その変化と巧みなアクセントコントロールは室内オーケストラとしては最高のセンスとテクニックを聴かせます。
続いてどの曲にも似ていないメヌエット。フルートの奏でる旋律が弦に重なって響きに彩りを加えます。
フィナーレはイギリス趣味でしょうか、おさえて滑稽なメロディーを繰り返した入りから展開したところで、力をはじめて見せ、再び押さえたメロディーに戻り、その繰り返しで音楽が深まっていきます。ここでも間をしっかりとることで、音楽をキリッと引き締めます。この曲も名演。

ニコラス・ウォードによるハイドンの中期交響曲集。地味な存在の3曲ですが、それを極上の演奏で素晴らしく聴き応えのある曲として見事に演奏しています。やはりウォードの魅力はハイドンの曲の真髄をつく自然なコントロール。ただ自然なだけではなく、良く聴くと緻密なフレージングとメリハリのコントロール。技術に裏付けられた緻密さと言っていいでしょう。評価はもちろん3曲とも[+++++]につけ直します。やはりウォードのハイドンは絶品です。NAXOSでは先日とりあげた、パトリック・ガロワ、ケヴィン・マロンが透明感溢れる見事なコントロールで色彩感溢れる素晴らしい演奏を聴かせていますが、ウォードはこれとは異なり、オーソドックスなアプローチです。オーソドックスとはいえ、類いまれな説得力を持ち、ドラティやヴァントなどとならぶ素晴らしい演奏になっています。まだ聴かれていない方、必聴です。

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tag : 交響曲77番 交響曲78番 交響曲79番 ハイドン入門者向け 交響曲全集

散歩の収穫、ホグウッド未発売盤

今日は東京は散歩日和というより、肌寒い一日でした。散歩はあきらめスポーツクラブで泳いだあと、近所に買い物に。
府中の街は、いつもの賑わいというより、ダービーの波乱の結果と寒空でどことなく沈みがちだったかしら。

さて、散歩ついでによく立ち寄るポポロへ。よくある街の中古レコード/CD屋さんです。
在庫があまり動かないので、大発見はあんまりないんですが、今日は珍しい盤を発見。

HogwoodBBC.jpg

ホグウッドのハイドン交響曲全集が途中で頓挫し、残った録音をBBC musicマガジンの付録としてリリースされたものと思われます。

曲は交響曲76番と77番。録音は1996年の3月。
オワゾリールからリリースされた最後のボックスが第10巻で交響曲62番から75番の7曲で録音は95年の3月から9月ということで、この第10巻のための録音後の録音であることがわかります。

演奏はホグウッドの特徴である典雅な古楽器を生かしたきびきびとしたもの。
ご存知の通り、私自身はホグウッドの交響曲はあまり高く評価しておりませんが、この演奏もその延長のもの。交響曲には今一歩の生気が欲しいと思います。
ただし、あまり出回っていない盤ということで、コレクション価値はそこそこのもの。

お店に顔を出すと、出会いがあるものですね。
邂逅というかserendipityというか、、、

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tag : 府中 交響曲76番 交響曲77番

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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