【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティのラメンタチオーネ、86番など(ハイドン)

ちょっと仕事が忙しくて間が空いてしまいました。今日は新着CD。

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ハリー・クリストファーズ(Harry Christophers)指揮のヘンデル&ハイドン・ソサエティ(Handel and Haydn Society)の演奏で、ハイドンの交響曲26番「ラメンタチオーネ」、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲3番、ハイドンの交響曲86番の3曲を収めたアルバム。ヴァイオリン協奏曲のソロはアイスリン・ノスキー(Aisslinn Nosky)。収録は2017年1月27日、29日、ボストンのシンフォニーホールでのセッション録音。レーベルはCORO。

ハリー・クリストファーズとヘンデル&ハイドン・ソサエティはこのところハイドンの初期の交響曲とパリセットの交響曲をセットにしたアルバムをシリーズ物としてリリースし続けています。その最新盤が今日取り上げるアルバム。このシリーズはこれまで2度ほど取り上げています。

2016/05/01 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの昼、雌鶏など(ハイドン)
2013/09/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの朝、熊など(ハイドン)

それぞれアメリカの古楽器によるハイドンの交響曲の演奏の現在を伝えるなかなかのものでした。このシリーズ、プログラミングについては明確な企画意図がありそうですね。これまでの演奏から今回のアルバムまでの曲構成を整理してみましょう。

交響曲6番「朝」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:4、交響曲82番「熊」(2013年)
交響曲7番「昼」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:1、交響曲83番「雌鶏」(2016年)
交響曲8番「晩」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:3、交響曲84番(2017年)

そして今回のアルバムが、

交響曲26番「ラメンタチオーネ」、モーツァルトヴァイオリン協奏曲3番、交響曲86番(2017年)

ということで、この後パリセットの85番「王妃」、87番が来るのは確実でしょう。組み合わされる初期交響曲の方は44番「悲しみ」、49番「受難」と来るか、22番「哲学者」、31番「ホルン信号」と来るのか何となく楽しみです。間に挟まれる協奏曲はオケのヘンデル&ハイドン・ソサエティのコンサート・ミストレスのアイスリン・ノスキーがソロを担当するヴァイオリン協奏曲が続いていますので、こちらはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲4番、5番というのが順当なところでしょう。このような企画ものの面白さを味合わせてくれる好企画ですね。

演奏の方も最初の方は硬さを感じさせるところもあったんですが、ここにきて響きの自然さが際立つようになり、いい感じになってきました。

Hob.I:26 Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
この曲の刷り込みはハイドンにのめり込むきっかけとなったピノック盤ですが、ピノック盤に近い颯爽とした入りが好印象。速めのテンポで爽快感あふれる演奏。響きはピノックよりしなやかで、ファイやアントニーニらのようなキレキレな弾けた感じはなく、古楽器の響きの自然な美しさを生かした演奏。これまでリリースされた4枚の中では力が抜けて自然な美しさが聴きどころとなるまでの洗練を感じさせてきました。程よいしなやかさに、程よいアクセント。単調さはなく音楽がしっかり脈打ってハイドンの曲の面白さがいきいきと描かれます。
独特の美しいメロディーで知られるアダージョは、クリストファーズの自然なデュナーミクのコントロールによって淡々と演奏されることで、かえって深い情感を感じさせる秀演。このアダージョや哲学者の1楽章はシンプルな音形だからこそか、淡々とした演奏が深みを感じさせます。よく聴くとオケのパート間の音量バランスや溶け合うような響きが緻密なコントロールによって生まれていることがわかります。凛とした美しいいメロディーから時代の気配が立ち上ります。まさに至福のひととき。
意外に良かったのが終楽章のメヌエット。仄暗い短調のメロディーを適度な緊張感と透明感の心地よいバランスでまとめた演奏。そしてトリオではセンス良く力を抜いてメリハリをつけます。流れの良さと響きの自然さが際立つ見事なコントロールで曲をまとめました。

続くモーツァルトも基本的に外連味なく素直にまとめた演奏ですが、同様にバランスよくしなやかさで聴かせる演奏ですが、古楽器の響きの美しさが抜きん出ているので聴きごたえ十分。アイスリン・ノスキーのヴァイオリンも流石にこのオケのコンサート・ミストレスだけあって見事な調和。協奏曲のソロとしてはもう少し踏み込みを期待したいところもありますが、ソロの存在感ではなくアンサンブルの楽興で聴かせるという珍しい例として悪くありません。ライナーノーツに写るノスキーの姿はちょっとパンクロッカー風ですが、その姿でオーセンティックな響きの魅力を繰り出すという存在がパンクなのでしょう(笑) これはこれで楽しめる演奏でした。

Hob.I:86 Symphony No.86 [D] (1786)
さて、期待の86番。ラメンタチオーネの演奏から想像するに、悪かろうはずはありません。序奏はアッサリした感じも残しながら、響きの美しさで聴かせる演奏。主題に入ると予想通り速めのテンポで畳み掛けるようにグイグイいきます。やはりこの曲はリズムのキレが最もインパクトがありますね。起伏も見事について素晴らしい躍動感に包まれます。速めでキレのあるリズムの連続による血湧き肉躍る陶酔感。この曲に仕込まれたハイドンの機知を見事に汲み取り、様々な楽器が代わる代わるにリズムを打っていく見事な連携。ディティールも何気に凝ったところも散りばめられ、一筋縄では行かないところを印象付けます。1楽章の見事さにすっかり呑まれました。
続くラルゴもアッサリしなやかながら濃い情感をまといます。速めのテンポによる見通しの良さも併せ持ち、続くメヌエットでは、その見通しの良さを保ちながらダイナミックに弾みます。響きの余韻を味わいながらの重なる響きとのコントラストを楽しむ余裕があります。そしてトリオでのコミカルな展開でスッと力を抜いて再びダイナミクスに圧倒される見事な構成。一貫した推進力。
このアルバムの最後を飾るフィナーレはこのオケの機能美を見せつける素晴らしい展開。ハイドンのフィナーレはこうでなくては! 各パートのソロのふわりとした軽さとオケの全奏部の重厚感の対比をくっきりと浮かび上がらせながら頂点に向けて盛り上がっていく快感。強奏部分でもフォルムの美しさを保っているのが完成度の高さを印象付けます。最後は見事にフィニッシュ。これは名演ですね。

ハリー・クリストファーズと手兵、ヘンデル&ハイドン・ソサエティによる交響曲集の4枚目ですが、ここにきて演奏レベルが上がって、これまでの4枚の中では一番の出来。昨今古楽器、あるいは古楽器風の演奏も少なくありませんが、アントニーニやファイやアーノンクール、ピノックなどそれぞれに個性的な響きを持つ中、このアルバムの録音会場となったボストンのシンフォニーホールの響きの良さも手伝って、オーソドックスなタイプの演奏の中でも、最も聴きやすい録音の名演奏盤というのがこのアルバムの位置づけでしょう。もちろんファイやアントニーニもいいんですが、この演奏を聴くとハイドンの曲の純粋な良さを味わえる気がします。評価はハイドンの良曲とも[+++++]とします。

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tag : ラメンタチオーネ 交響曲86番 モーツァルト

ジョナサン・ノット/東響の86番、チェロ協奏曲1番(東京オペラシティ)

10月15日日曜は以前からチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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東京交響楽団:東京オペラシティシリーズ 第100回

最近、ちょっとお気に入りのジョナサン・ノット。昨年末に聴いた演奏会形式の「コジ・ファン・トゥッテ」があまりに素晴らしかったので、その後も何回かコンサートに通っています。

2017/07/23 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「浄められた夜」、「春の祭典」(ミューザ川崎)
2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)
2016/12/12 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「コジ・ファン・トゥッテ」(東京芸術劇場)

コジ・ファン・トゥッテはキビキビとした進行に実に多彩な表情をつけて長いオペラを一気に聴かせる素晴らしい演奏でしたし、復活はオケを鳴らしきるど迫力の演奏。そして「浄められた夜」の精緻な透明感と曲ごとに多彩な表情を見せる人。そのノットがハイドンを振る、それも好きな86番にチェロ協奏曲ということでチケットを取ったもの。プログラムは下記の通り。

ハイドン:交響曲第86番 ニ長調 Hob.I:86
ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.VIIb:1 チェロ独奏:イェンス=ペーター・マインツ(Jens Peter Maintz)
モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 K.543

ハイドンを振るのにいきなり玄人好みの86番を取り上げるあたりが流石のプログラミングセンス。ハイドンとモーツァルトという2人の作曲家の代表曲の影の傑作交響曲を並べるという趣向でしょう。そして協奏曲にはチェロ協奏曲1番ということで完璧に私好みのプログラムなんですね。



さて、日曜のコンサートということで、少し早めにオペラシティについて、こちらもお気に入りのお店で腹ごしらえ。

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食べログ:HUB 東京オペラシティ店

東京オペラシティの地下1階にある英国風パブチェーンのHUB。コンサート前の腹ごしらえはここです。

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ギネスにレッドアイを頼んで、まずは喉を潤します。

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そして、なぜかいつも頼むザ・フィッシュ&チップス。ビールのつまみになります。のんびりとビールを楽しんでいるうちに開場時刻となり、ホールに向かいます。

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この日の席は2階席のステージ右の一番奥の方。オケを上から眺める席です。しかも指揮者の指示が非常によく見える席。ステージ上は小規模オケということで余白たっぷり。ステージの真ん中だけ使うくらいで、マーラーやブルックナーの時のステージいっぱいに席が並ぶのとは異なりスッキリした感じ。客席の入りは5〜6割とあまりぱっとしません。やはりこのプログラムではお客さんが入らないのでしょうか。

定刻になりオケが入場し、ジョナサン・ノットもいつものようにステージに勢いよく駆け出てきて、注目の86番。ノットがタクトを下ろすと聴き慣れた序奏のメロディーが響きますが、最初はオケがまだ硬い感じなのに加えて、オケの直上の直接音主体の響きも手伝って、奏者の微妙な入りのタイミングの差が少々気になります。ノットのコントロールはフレーズごとにかなり表情をはっきりつけながらも、古楽器風の清透な響きを意識したもの。主題に入って86番独特の規則的なリズムを刻んでいく部分もちょっとリズムを重くしたり、軽くしたりと念入りな表情づけ。ノットの指揮も特に強音部ではかなり細かくタクトを振り回すので忙しい印象を与えます。なんとなくリズミカルなこの曲の魅力が、演出過剰でゴテゴテした印象もついてしまった感じ。ただし聴き進むうちにオケも徐々にこなれて、音楽の流れも良くなっていきます。1楽章も終盤になるとノットの激しい煽りでライブらしい高揚感に包まれます。
続く2楽章のカプリッチョは、古楽器風に少し速めのテンポで、この楽章もノット風のテンポを微妙に細かく変えながらの演奏。アクセントをかなり明確につけるので、メリハリは十分。そしてメヌエットは覇気十分で活気ある舞曲。今少し優雅さがあればとも思いますが、このゴツゴツとした感触を感じるデフォルメがノットの特徴でしょう。そして終楽章は渾身の力演。これは生ならではの盛り上がりを感じさせます。最後はノットの煽りで小規模なオケといってもホールに轟く大音響で終わり、盛大な拍手に迎えられました。

ステージ上にチェリストが乗る台が運ばれ、一部の奏者が入れ替わって、次のチェロ協奏曲。チェロのイェンス=ペーター・マインツとノットが登壇。マインツは長身ですね。チェロ協奏曲の伴奏は86番同様、ノット風に小刻みな表情づけが行われますが、協奏曲ゆえ基本的に流れの良い演奏なので、86番ほどノットの表情づけが気になることはありません。チェロのマインツは非常にキレの良いボウイングでいきなり観客の耳を釘付けにします。特に早いパッセージの鮮やかさは目もくらむほど。テンポよくキレの良いチェロでハ長調のこの曲の明るい推進力あるメロディーを先導します。1楽章のカデンツァはマインツの美音とボウイングの鮮やかさを印象付けるもの。オケも86番よりも流れが良くなり、マインツのキレの良さがノットの鮮やかな面を引き出し、掛け合いの面白さも活きる演奏でした。
続く2楽章のアダージョはマインツの美音の鮮やかさが際立ちました。大柄なマインツが弾くとチェロが小さく見えるほどで、楽器をコントロールし尽くしている感じ。2楽章のカデンツァは現代音楽風の不協和音をも織り交ぜ静寂を印象付ける踏み込んだもの。マインツが完全に観客をのんでいました。フィナーレはチェロの超絶テクニックの聴かせどころ。特に速いパッセージのボウイングの鮮やかさは素晴らしいものがありました。あまりの鮮やかさに聴衆からは嵐のような拍手が降り注ぎました。やはりソロがキレると協奏曲はいいですね。何度かのカーテンコールで、マインツが平台からノットを指揮台に乗せる場面があり、指揮台に乗ったノットがようやくマインツに背が届くとわかって会場は笑いに包まれました。アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲3番からサラバンド。チェロの豊かな低音の唸りを祈りに昇華させるようなアーティスティックな演奏に聴き惚れました。

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休憩を挟んで後半はモーツァルトの39番。オケの編成はほぼ変わらず、コントラバスが2本から3本に増えたくらい。このモーツァルトはハイドンとはまたスタイルを大きく変えてきました。ほぼ古楽器の演奏と思わせるようなリズムの早打ちに、ほぼノンヴィブラートで澄み切った音色を強調するヴァイオリン、そして細かい表情づけは少し後退して優雅さを感じさせるような大らかさも持ち合わせた演奏。1楽章の美しいメロディーの繰り返しにうっとり。ハイドンではあれだけ緻密に表情づけをしていたのに対し、モーツァルトの天真爛漫なメロディーに触発されたのか、流れの良さはだいぶ上がってきています。演奏のテイストは一貫して、2楽章、3楽章、フィナーレと安心して身を任せられる演奏でした。もちろん観客は大満足の演奏だったようで、最後も盛大な拍手に包まれました。



これで4回目のジョナサン・ノットのコンサート。今回は私好みのハイドンの曲中心のプログラムでしたが、このハイドンが演奏の難しさを感じさせるものでもありました。期待の86番はノットのせわしない指揮が曲のシンプルな魅力を表現しきれていない印象も残してしまいました。チェロ協奏曲はソロも含めてなかなかいい演奏、そして後半のモーツァルトは期待以上の素晴らしさでした。86番については好意的に聴いた人も多かったかと思いますが、日頃ハイドンばかり聴いている私ゆえの辛口コメントということでお許しください。

さて、次のノットはドン・ジョバンニです。昨年のコジ・ファン・トゥッテは名歌手トーマス・アレンの魅力もあり素晴らしい舞台でしたが、ドン・ジョバンニは如何に仕上がってくるでしょうか。今から楽しみです。

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tag : 交響曲86番 チェロ協奏曲1番 モーツァルト 東京オペラシティ

絶品! ギュンター・ヴィッヒ/南ドイツ室内フィルのパリセット後半(ハイドン)

以前取り上げてとても良かったギュンター・ヴィッヒのパリセット前半3曲。探していた後半3曲が手に入りました。

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ギュンター・ヴィッヒ(Günther Wich)指揮の南ドイツ室内フィルハーモニー(Süddeutsche Kammerphilharmonie)によるハイドンの交響曲85番「王妃」、86番、87番のパリセット後半3曲を収めたアルバム。収録はPマークが1974年。レーベルは前半3曲のINTERCORDではなく、VIENNA Classicsという怪しい廉価盤レーベル。

このアルバム、先日のオフ会の後、小鳥遊さんからの情報で注文したもの。もともと前半3曲と同じ体裁のINTERCORDレーベルの後半3曲のアルバムを探していたのですが、手に入れることができず、同じくINTERCORDレーベルの2枚組のLPを手に入れたところ、これは82番から85番の4曲のみ。肝心の86番、87番が含まれていませんでした。諦めかけていたところ、小鳥遊さんからの情報でこのアルバムに辿りつきました。そもそもこのアルバム、ジャケット表面には奏者の表記はなく、amazonの商品情報にも演奏者の表記はないので、検索にも引っかかりません。小鳥遊さんの情報で、ほぼ情報ゼロの状態で注文して海外からの到着を待ち、手元に来て初めて演奏者が確認できた次第。いやいや、世の中口コミほど頼りになる情報はありません。

また、このアルバムの指揮者ですが、以前のレビューの際は、「ギュンター・ウィッチ」と表記していましたが、ドイツ語読みだと、やはり「ギュンター・ヴィッヒ」なのでしょう。以前の表記はNAXOS Music Libraryの呼称を参考にしたんですが、以前N響に何度か客演しており、その時の呼称は「ギュンター・ヴィッヒ」。準国営放送の信頼性を参考にして、以前のレビューにもギュンター・ヴィッヒとの呼称を付記しました。ということで、以前のレビューはこちら。

2015/07/07 : ハイドン–交響曲 : ギュンター・ヴィッヒ(ウィッチ)/南ドイツ室内フィルのパリセット(ハイドン)

到着してCDプレイヤーにかけてみると、あの素晴らしい響きが眼前に広がるではありませんか! これはレビューに取り上げないわけにはいきませんね。

Hob.I:85 Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
以前のアルバムと同じ、堂々とした序奏の響きに冒頭から圧倒されます。もちろんオーソドックスな演奏なんですが、オケが非常によく響いて、凡庸な演奏とは全く異なる充実した響きに包まれます。Apple Musicなどにも登録されていて、ネットでも聴けるのですが、響きの充実度はCDの方に軍配が上がります。このわずかな違いが演奏の印象を大きく左右します。以前はApple Musicの85番はかなり歪んだ音のソースでしたが今は改善されており、それでもCDとの差は小さくありません。聴き進むうちに適度な推進力とヴィッヒの落ち着いたコントロールでこの交響曲の構成感とハーモニーの美しさ、自然な造形の魅力が沁みてきます。
自然な流れそのままにふわっと2楽章に移ります。これ以上自然な演奏はあり得ないほどしなやかな流れにうっとり。特にフルートがなぞるメロディーの美しさにさらにうっとり。耳を澄ますと弦楽器のメロディーはかなり前のめりで勢いのあるボウイング。ハイドンの書いたメロディーの内面をえぐるような演奏。こうしたさりげない部分の表現の深さが演奏の味わいを深くしていることがわかります。前記事のテミルカーノフの「昼」の2楽章もそうでしたが、ハイドンのメロディーの真髄に触れるさりげない解釈に唸ります。終盤もフルートの美技に唸るばかり。華麗な音色でメロディーに華やかさを加えていきます。完璧。素晴らしい音楽性。
メヌエットもオーソドックスそのもの。素朴な演奏からにじみ出る味わい。こうした地味ながら素晴らしい演奏こそ、ハイドンの音楽を最も引き立てます。中間部に入るところのちょっとした溜めも絶妙なセンス。ふと歩みをゆるめて音楽の転換を鮮烈に印象づける匠の技。そして再び冒頭のメロディーに戻る時の安心感。至福。木管陣の名演奏にも唸ります。
88番の転がり堕ちるようなフィナーレを予感させるフィナーレもしっとりと美しく輝き、ただただ美しい響きに酔いしれます。ハイドンのフィナーレでこれほどまでに磨き抜かれた美しさを表現する演奏ななかなかありません。もちろんフィナーレなりの展開の面白さはあるのですが、それに増してメロディーラインの軽やかな展開の美しさが印象に残ります。ヴィッヒの確信犯的アプローチにやられた感満点。ブラヴォー。

Hob.I:86 Symphony No.86 [D] (1786)
偏愛する86番。前曲の素晴らしい余韻が残るなか、軽やかで華やかささえ感じる序奏にまずはうっとり。絶妙なバランス、透明感すら漂う大理石の建物のような優美なフォルム。主題に入るとこの曲独特のリズムに乗ったメロディーラインが心地よく響きます。肩の力は完全に抜けて、この曲のツボを押さえて穏やかに展開します。ヴァイオリンによるメロディーはキレ良く、リズムも心地良いキレ。音楽が進むにつれて明るさと陰りの織りなす綾に包まれます。ここでもフルートが絶品の響きで華やかさを加えます。この曲独特の感興を落ち着いて構築します。
やはりすっと自然にラルゴに入ります。完全にギュンター・ヴィッヒの音楽に浸ります。こちらの想像というか期待に完全に一致した音楽が流れてくる快感。脳内にアドレナリンの大河がゴーッと流れているよう。ところどころでテンポをぐっと落としたりする聴かせどころ配置して変化をつけるセンスも抜群。これほど豊かな音楽が流れる演奏があったでしょうか。全盛期のスイトナーのモーツァルトも絶品でしたが、それを遥かに上回る神がかったような美しさ。
メヌエットに入ってもアドレナリンの大河が流れ続けています。ハイドンの音楽の自然な美しさを完璧にこなしてくるので、すっと耳になじみます。ここにメヌエットが配置され、優雅な音楽が流れるとわかっていて、その通り音楽が流れる快感。そして中間部への展開の巧みさに耳を澄ましているところに、期待通りの展開。演奏とこちらのイメージがシンクロして脳の音楽中枢が非常に鋭敏な状態に維持されます。
そしてフィナーレも前曲同様完璧な美しさ。これほど美しく、余裕たっぷりのフィナーレはなかなかありません。しっかり盛り上がり感も演出しますが、力みは皆無。不思議と軽やかな雰囲気を保ったクライマックスにこれまた酔いしれます。溺愛する86番のベストです。

Hob.I:87 Symphony No.87 [A] (1785)
最後の87番は、ぐっと力が入る導入に軽い驚き。もちろん力んだ感じはありませんが、この交響曲のユニークな入りの真意を見切ったのか、冒頭からフルスロットルでオケが気持ち良く鳴り響きます。グイグイ推進する感じこそこの曲の真骨頂とばかりにオケを煽ります。ギュンター・ヴィッヒにはハイドンの意図が見えているのですね。ただ力が入っているだけでなく、抑えた部分をしっかり抑えきっているので抜群の立体感。ヴァイオリンのキレも尋常ではありません。あまりの表現の切れ味に鳥肌が立つほど。なんでしょう、この冴えに冴えた音楽は。力でも踏み込んだ解釈でもなくオーソドックスな解釈の冴えでこれほどまでにインパクトがあるとは、、、尋常ではありません。
アダージョはもはや至高の音楽。フルートを始めとした木管楽器の響きの美しさは例えようがないほど。オケの出来はあまりに素晴らしく、ウィーンフィルやベルリンフィルもここまで音楽に没入した演奏はできないでしょう。完全にギュンター・ヴィッヒのコントロールが行き渡っています。ハイドンの音楽の暖かさに包まれる至福。
メヌエットももちろんこれまで通り素晴らしい演奏。この曲では時折ハッとするような図太さ、羽毛のような軽さ、癒しに満ちた優しさが顔を出し、音楽の表現できる幅も広がっています。メヌエットからここまでの音楽を引き出せるとは。
最後のフィナーレはもともと流麗な曲想を噛み砕いてフレーズごとに微妙に表情を変化させながら音楽をまとめます。ハイドンのフィナーレの魅力がすべて詰まった素晴らしい演奏。躍動感、輝き、陰り、機知、ハーモニー。すべての最高の演奏としてまとまった素晴らしいフィナーレ。

聴き方によってはオーソドックスな演奏ですが、単なる凡庸な演奏ではなく、ハイドンの交響曲の最高のエッセンスが詰まった見事な、見事すぎる演奏でした。前半3曲も素晴らしかったんですが、こちらはさらに素晴らしい。パリセットの1推し盤と言っていいでしょう。1970年代の録音ながら、古さを感じさせず、またLPと聴き比べてもむしろCDの方がいいくらい。そして演奏も古びた印象は皆無。むしろ時代を超えて聴き続けられるべき普遍性を持った演奏と言えるでしょう。これほどの名演奏ですが、現在はCDとしては入手しやすい状態ではなく、Apple Musicなどネット配信がメインとなります。こうした名盤がいつまでも手に入るよう切に願うばかりです。評価はもちろん[+++++]とします。

小鳥遊さん、貴重な情報ありがとうございました!

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tag : 王妃 交響曲86番 交響曲87番

ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)

最近ディスクユニオンで手に入れたCD-R。

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ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のクリーヴランド管弦楽団(Cleveland Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲86番、マーラーの交響曲9番!の2曲を収めたCD-R、ハイドンの収録は1976年2月27日、クリーヴランド管の本拠地、セヴェランスホールでのライヴとありますが、裏面では何と2月11日とあります。どちらが本当かわかりません。レーベルははじめて手にする米Don Industrialeとしゃれた名前のCD-Rレーベル。

ハイティンクはハイドンの録音をほとんど残していませんが、おそらく専属契約だったPHILIPSではネヴィル・マリナーとコリン・ディヴィスの録音が大量にあり、レパートリーが重なっていたからでしょう。ただし、コンサートのライヴを記録したCD-Rはいろいろリリースされており、コンサートではハイドンをよく取りあげていた可能性があります。当ブログでも見かける度に手に入れたり借りたりしてレビューしています。

2011/07/21 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ベルリンフィルの95番ライヴ
2011/06/28 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!
2011/05/12 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ

これまで、取りあげた演奏は1989年が最も古く、あとは2000年代に入ってからのもの。今日取り上げる86番は1976年でしかもアメリカのオケということで、ハイティンクの若々しい指揮振りが聴かれるかどうかといったところがポイントでしょう。

以前の記事でもハイティンクの略歴などにふれていなかったため、少し調べてみましょう。

1929年、オランダ、アムステルダム生まれの指揮者。アムステルダム音楽院で学び、最初はヴァイオリニストとしてオーケストラに加わっていたが、1954年から55年にかけてフェルディナント・ライトナーに師事し指揮を学んだそう。デビューは1954年、オランダ放送組合管弦楽団(現オランダ放送フィル)のコンサートで、1955年には副指揮者、1957年には首席指揮者となりました。そして、その後長年つれそうことになるアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の指揮をはじめてまかされたのがジュリーニの代役として1956年のこと。その後1959年にエドゥアルト・ファン・ベイヌムの急死により、名門アムステルダム・コンセルトヘボウの第1指揮者に名をつらね、1961年には首席指揮者となりました。このときハイティンク32歳ということで異例の大抜擢でしょう。コンセルトヘボウとは1988年まで、その後1967年から79年までロンドンフィルの首席指揮者、1978年から88年までグラインドボーン音楽祭の音楽監督、1987年から2002年までロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督など著名なポストを歴任しました。2006年からはシカゴ交響楽団の首席指揮者を務めています。

このアルバムの演奏当時はアムステルダム・コンセルトヘボウ管の首席指揮者時代。一方オケのクリーヴランド管は黄金期を築いたセルが1970年に亡くなり、1972年からはマゼール時代に入り、第二の繁栄期でした。アメリカでも指折りのオケに実力派ハイティンクが客演した期待のコンサートということでしょう。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
録音はそこそこ鮮明ですが、時代なりの粗さもあります。テープヒスノイズがちょっと目立ちますでしょうか。会場の物音も程よく聴こえる臨場感を感じる録音。冒頭からハイティンクらしい筋骨隆々とした演奏。音楽の骨格をきっちり描くハイティンクならでは引き締まった音楽。オケの隅々までハイティンクのコントロールが行き届いて、音のキレは抜群。弦楽器陣のボウイングが全員きれいにそろって、統率が行き届いています。音量を上げると引き締まったリズムの刻みが痛快。巨木から鋭い鉈で彫像が一気に掘り出される瞬間を見るよう。背筋がピンと伸びる緊張感が漲ります。鉈を次々に打ち込み、彫像があらわになります。見事すぎる1楽章。50歳を前にした全盛期のハイティンクの覇気がスピーカーから伝わってきます。
つづくラルゴは緊張感を保ちながら、引き締まった音楽が続きます。ゆったりとした雰囲気はなく、一音一音に緊張感が漲ります。音量をかなり緻密にコントロールして、ダイナミクスは抑えながら、それでもなぜか彫りの深い険しい表情をつくっていきます。テンポは落としているのに、ゆったりとした音楽とは対極にある緊張感。
楽章間の咳払いと調弦のようすが、会場の緊張感をつたえます。
メヌエットもハイティンクらしい、純音楽的なもの。よく鍛えられたオケが楔を打つように音を刻んでいきます。この響きの純度の高さこそがハイティンクのもとめる音楽の骨格なんでしょう。
やはりクライマックスはフィナーレにありました。これまでの演奏も筋骨隆々としたものでしたが、フィナーレは力感が2段上がり、水際立った迫力で音塊が飛んできます。徐々にドライブがかかり、荒々しいほどのエネルギーが噴出。ハイティンクはここでも冷静沈着にオケをコントロールして、オケが乱れることもありません。クライマックスに向けて、オケは恐ろしいばかりの覚醒したようなキレを聴かせます。最後はまだ力感を増す余地があったかと驚くほどエネルギーが集中。恍惚とするほどのクライマックス。ブラヴォー!

やはりハイティンクはオケを鳴らすツボを押さえていますね。華やかさはないのですが、聴くものをグイグイと引き込む迫力ある響きを巧みに造っていきます。特にこの86番はハイティンクも得意としていたのでしょう、ハイティンクの芸風がビシッと決まる曲です。以前取りあげたドレスデン・シュターツカペレとの2004年のライヴもよかったんですが、このクリーヴランド管との76年のライヴはそれを上回る純粋な力感が楽しめます。いやいや、こうゆう86番を聴いてしまうと、古楽器や最近のオケは力感では太刀打ちできませんね。もちろん評価は[+++++]です。

ハイティンクには「悲しみ」のライヴもあるようなので、気長に探してみたいと思います。

なお、このアルバムの後半以降はマーラーの9番。これもまた鬼気迫るスゴイ演奏です。アルバムのメインはマーラーですよね、普通(笑)

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tag : 交響曲86番 ライヴ録音 CD-R

フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラの86番(旧盤)

今日はフランス・ブリュッヘンのハイドン。

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フランス・ブリュッヘン(Frans Brüggen)指揮の18世紀オーケストラの演奏による、ハイドンの交響曲86番、88番の2曲を収めたアルバム。収録は1988年11月、オランダ、ユトレヒトのフレーデンブルク音楽ホールでのライヴ。レーベルは蘭PHILIPS。

ブリュッヘンはパリセット以降の交響曲は18世紀オーケストラとライヴを中心に録音していますが、なぜかこの86番のみ2種の録音があります。今日取り上げるのは1988年のライヴで88番とセットのもの。もう1種は1996年11月パリでのライヴで、こちらは82番から87番までのパリセットとしてまとめてリリースされたもの。この曲のみ2階録音している理由は定かではありませんが、双方聴くと、今日取り上げる旧盤の方が音響も演奏もメリハリしっかりついて、一般受けする演奏に仕上がっている事がわかります。

ブリュッヘンのハイドンはこれまでいろいろ取りあげていますが、曲によって仕上がりのムラがあると言うのが正直なところ。全般に力感に富んだ古楽器オケの迫力をベースにしたタイトな演奏なんですが、ちょっとスタティックな印象となっている演奏も多く、その辺が評価の分かれ目になっています。

2012/10/23 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/エイジ・オブ・エンライトメント管の42番
2011/04/29 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番
2011/03/01 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘンの90番、91番、オックスフォード
2010/11/01 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘンの88番、89番、協奏交響曲
2010/10/20 : ハイドン–管弦楽曲 : ブリュッヘンの十字架上のキリストの最後の七つの言葉
2010/04/04 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘンのザロモンセット

今日取り上げるアルバムのうち88番は、以前、別のアルバムに収録された同じ演奏をレビューしていますので、今日は86番のみ取りあげます。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
ブリュッヘンと18世紀オーケストラの、独特のざらついた音色がいきなり印象的。キレている時のブリュッヘンの静かに迫ってくる迫力が感じられます。かなり拍子を強調してこの曲のリズムの面白さを際立たせます。鋼のような固さと、ちょっと重めのリズムが独特の迫力を醸し出します。ヴァイオリンが鮮明に浮かび上がり、メロディーをかなりくっきりと描いていきます。不思議と色彩感は抑え気味で強弱のデュナーミクの変化を主体に曲を構成していき、先日聴いたパイヤールの華やかな色彩感とは真逆の印象を残します。1楽章はブリュッヘンらしいがっちりとした構成感が聴き所。
2楽章のラルゴは、抑えたヴィブラートの直裁な響きを活かしながら、淡々とした進行。間を十分にとって詩的な印象もあたえます。
メヌエットは再びキレのいいフレーズが戻ります。ここまで、非常にしっくり来る展開。ブリュッヘンは同じ曲を各地でツアーで演奏して回るスタイルだったとのことで、この86番もこのアルバムが録音された当時は各地で演奏していた事でしょう。破綻がないと言うか、筋書き通りというか、ちょっと悪く見るとスリリングではないという見方も出来てしまいます。同じ曲を何度も弾いているような安定感がこの演奏も特徴。
フィナーレは流石の盛り上がり。ダイナミックさも戻り、軽やかなヴァイオリンに導かれて分厚いオケの響きが繰り返し襲ってきます。ちょっと重めのリズムに乗ってグイグイ攻め込み、軽さと力感の塊のようなオケの響きの対比の面白さが伝わります。一貫してブリュッヘン流のハイドン。

ブリュッヘンのコントロールする18世紀オーケストラは古楽器オケの中でも独特の迫力をもち、オケが発散するエネルギー感において、他のオケとは一線を画するものがあります。この86番もそうしたブリュッヘン流のオケの響きの特徴をベースに、曲としては無難にまとめてきた印象。ライヴらしくもう一段の高揚を望みたいところですが、規律を優先した演奏というところでしょう。前に取りあげた88番は、そういった意味で、踏み込んだなかなか良い演奏でした。86番の評価は[++++]としておきます。

明日は出張にて東京におりませんので、おそらく更新は出来ません。ということで、つぎは月末ですね。

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tag : 交響曲86番 古楽器

ブルーノ・ヴァイル/ターフェルムジークの86番

そろそろ5月のテーマを決めようかと思っていました。4月はLPを中心に聴きましたが、聴く方はいいもののマイナー感満点で、少しメジャーなものも取りあげた方がいいのではとの軌道修正。ということで、5月は交響曲のメジャーな演奏を取りあげることに。当ブログのアクセス解析のキーワードでなぜかヴァイルの出現回数が多いため、まずはブルーノ・ヴァイルを取りあげます。

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ブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil)指揮のターフェルムジーク(Tafelmusik)の演奏による、ハイドンの交響曲85番「王妃」、86番、87番の3曲を収めたアルバム。収録は1994年2月15日から19日まで、カナダ、トロントのグレン・グールドスタジオでのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。

このバラのアルバムはもう流通していないようで、こちらが現役盤のターフェルムジークのハイドンの交響曲の録音7枚をまとめたもの。

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今手に入れるなら、もちろんこちらでしょう。今日はこのなかから、好きな86番を取りあげましょう。

ブルーノ・ヴァイルのハイドンは今までいろいろ取りあげています。

2012/08/11 : ハイドン–管弦楽曲 : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」
2012/01/24 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの四季
2011/08/14 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番4】ブルーノ・ヴァイルのテレジアミサ、ネルソンミサ
2011/01/10 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイルの天地創造
2010/12/25 : ハイドン–交響曲 : 【年末企画】ブルーノ・ヴァイルの交響曲50番、64番、65番
2010/03/08 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへ

ヴァイルの紹介は交響曲50番などのアルバムの記事をご覧ください。私は古楽器によるハイドンの交響曲の演奏のなかでは力感と鮮度のバランスのよさからヴァイルをお薦めしています。ピノックほどカッチリ形式的ではなく、アーノンクールほど尖っていず、ホグウッドよりも力感があり、時にスタティックすぎるブリュッヘンよりも自在で、ハイドンの曲のもつポテンシャルに対してバランス良くいい演奏が多いのがヴァイルの特徴でしょうか。
最近ではトーマス・ファイなんでしょうけれども、ファイのものは純粋に古楽器による演奏ではなく金管楽器など一部を古楽器という形態でした。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
昔はずいぶん聴いた愛聴盤だけに、久しぶりにCDプレイヤーにかけると、脳裏に焼き付いた古楽器独特の鮮明な響きが蘇ります。比較的速めのテンポで、さらりとした入り。古楽器独特の練らない序奏は、昔はは違和感がありましたが、今ではごく当たり前。推進力抜群の主題に入るとヴァイル独特のさっぱりと爽やかな演奏にすぐに耳を奪われます。この曲独特のリズムの響宴。キレのいいオーケストラのアタックの連続による楽興に痺れます。音ごとに楽器の重なりが変化し、リズミカルに寄せては返す波に身を任せるような極上のひと時。高音弦のキレの良さとティンパニをはじめとするリズムセクション、時折色っぽい音色で花を添える木管楽器とオーケストラの色彩感あふれる音色に魅了されます。まさにハイドンの傑作たらん素晴しい出来を堪能できます。
2楽章に入ると微妙にテンポと力感を変えながらそれぞれの楽器が絶妙の一体感でハイドンの美しい曲にクッキリと表情をつけていきます。良く聴くとかなり大胆にテンポを変えてきますが、不思議と流れがよく、曲に多彩な表情を与えています。このへんがヴァイルの上手いところ。ヴォリュームを上げていくと、スタジオ録音ながら響きの良さが際立ちます。録音もなかなかいいです。
そしてメヌエットに入りますが、このラルゴからメヌエットへの入りの呼吸の見事さはいつ聴いても痛快。メヌエットにハイドンが込めた推進力を実に上手く表現しています。実に自然で、実に印象的。ハイドンのメヌエットの豊かな表情を古楽器でこれだけ華やかに表現できるのはよほどの音楽性が必要でしょう。ヴァイル独特のセンスの良さが際立ちます。メヌエットの幸福感に浸ります。
敢えて間をとって静寂を印象的に表現した上で、フィナーレに入ります。迫力重視の演奏が多い中、ヴァイルはあくまでもバランス重視。力まず、適度な力感をベースに、抜群の推進力でグイグイ弾んでいきます。金管群はもの凄い精度で全く乱れず音を重ねていきます。聴き慣れているせいもありますが、予定調和のようにすべての音が、そこで鳴るべくして鳴る完璧な演奏。ここにハイドンの音楽の理想の演奏があります。最後もピカイチの決め球をキャッチャーの構えたミットに煙をたてて吸い込まれるように投げたピッチャーの満足感のような余韻が残るフィニッシュ。実に爽快な演奏です。

続く87番の出だしの音を聴いただけでアドレナリン大噴出。やはりこの曲の刷り込み盤だけに言うことなしですね。

久々に聴き直しましたがヴァイルのハイドン、特にこのアルバムのパリセットあたりの録音は素晴しい演奏であり、ハイドンの交響曲の古楽器による演奏の定番として、多くの人にお勧めできるものです。今更ですが評価は[+++++]とします。

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tag : 交響曲86番 古楽器 ハイドン入門者向け

クルト・ザンデルリンク/ベルリン交響楽団の王妃、86番

今日も名盤。これまでの個人的な趣味によるマイナー盤路線から、11月は有名盤を取りあげていこうという趣向。と突然決めました(笑)

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クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のベルリン交響楽団の演奏で、ハイドンのパリセット6曲を収めたアルバムから、今日は交響曲85番「王妃」、86番を取りあげます。収録は1971年とだけ記載があります。レーベルはRCA RED SEAL。

クルト・ザンデルリンクのパリセットはまさに定番中の定番。ハイドンの名曲を安心して楽しめるアルバムとして、昔から愛聴してきました。これまでザンデルリンクのアルバムは何枚か取りあげてきたものの、大本命のこのアルバムまで至っていませんでした。基本的にマイナー盤が好きということが根本原因ですが、ハイドン啓蒙の一翼を担う当ブログとして、このままではいけないと思った次第。

2012/06/30 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ザンデルリンク/スウェーデン放送交響楽団の39番ライヴ
2010/11/04 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン・フィルの熊ライヴ
2010/06/18 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンクの86番

ザンデルリンクの紹介はスウェーデン放送交響楽団との39番ライヴの記事をご参照ください。

Hob.I:85 / Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
本当は86番のみを取りあげようとして、このアルバムをかけたところ、85番の「王妃」が記憶の演奏よりも断然素晴らしいので、あらためて取りあげた次第。
冒頭からハイドンの交響曲の演奏の理想像と言っていい程の安定感。落ち着き払ったザンデルリンクの棒から繰り出される音楽は、堅実なテンポに乗って、適度以上の覇気と、適度のなメリハリ、そして揺るぎない古典の秩序を感じさせるもの。一音一音がこのタイミングで奏でられる説得力をともない、どう変化させてもバランスを失いかねない完璧なプロポーション。まさに完璧なプロポーションの肉体を描いたダ・ヴィンチのデッサンのようなリアリティがあるのに芸術的な雰囲気漂う演奏。この演奏で多くの人がハイドンの交響曲の素晴らしさを味わったことでしょう。2楽章以降も揺るぎない安定感と鮮度の高い響きは健在。ただ演奏されるだけで深い詩情が漂う秀演とはこの演奏の事でしょう。雄大な構えのメヌエットに、優雅なのに彫りの深いフィナーレと続き、まさに色気漂う端正な美人のような演奏。録音が少々古さを感じさせる以外にケチのつけようがありません。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
そして本命86番。前曲で言い尽くした感はありますが、全く曲想が異なり、1楽章はリズムとメロディーの遊戯のようなこの曲の真髄を突く演奏。前曲で感じた覇気はすこし鎮まり、オーソドックスな面が強い演奏に感じますが、この曲をこれだけ完璧なバランスでコントロールすることで生まれる感興は得難いもの。弦楽器の良く磨かれたメロディーラインが曲の美しさを引き立てるようです。おそらくハイドンにしては大きな編成のオーケストラが良く鳴り、まさに端正なリズムが踊る感じ。
2楽章のラルゴが若干イメージより速いテンポで爽快感を引き立てるのに対し、3楽章のメヌエットはアクセントの踏み込みのよさでしっかりとコントラストをつけ、フィナーレでは落ち着きながらもクライマックスをしっかりと描く演出。すべてほどよく適度な表情ゆえ、曲自体の面白さが浮かび上がるよう。演奏でよけいな事をしないだけ曲の構造がよくわかる玄人好みの面白さと言えばいいでしょうか。どこか飛び抜けたところもない代わりに絶妙のバランス感覚が光るということでしょう。

久しぶりに取り出して聴いたパリセットの定番、クルト・ザンデルリンクとベルリン交響楽団の名盤ですが、あらためてこのアルバムの良さを再認識した次第。パリセットにはマリナーやリボール・ペシェク、ヒュー・ウルフなど爽快な良さを持つ現代楽器の名盤がひしめいていますが、このザンデルリンク盤の定番の位置は揺るがないでしょう。もちろん評価は両曲とも[+++++]とします。派手さはありませんが、ハイドンをお好きな方には是非聴いていただきたい、燻し銀の名盤だと思います。

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tag : 王妃 交響曲86番

マリナー/アカデミー室内管の86番

今日は散々迷ったあげくに、大御所マリナー。

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サー・ネヴィル・マリナー(Sir Neville Marriner)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St Martin in the Fields)の演奏で、ハイドンの交響曲82番から87番までの6曲、所謂パリセットを収めた2枚組のアルバム。今日はこの中から好きな交響曲86番を取りあげます。86番の収録は1981年3月、ロンドンとだけ記されています。レーベルは今は亡き蘭PHILIPS。

マリナーのハイドンはずいぶん取りあげていますが、意外と交響曲を取りあげるのははじめての事。

2011/08/10 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番1】マリナー/ドレスデン・シュターツカペレのネルソンミサ
2011/04/24 : ハイドン–協奏曲 : バリー・タックウェル/マリナーのホルン協奏曲
2011/03/03 : ハイドン–協奏曲 : ハーデンベルガー、マリナー/ASMFのトランペット協奏曲
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造-2
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造
2010/12/06 : ハイドン–声楽曲 : マリナー/ドレスデン・シュターツカペレの戦時のミサ
2010/10/14 : ハイドン以外のレビュー : ホリガーのモーツァルトのオーボエ協奏曲
2010/10/03 : ハイドン–協奏曲 : リン・ハレルのチェロ協奏曲集

今日取り上げるアカデミー室内管とは協奏曲の伴奏などいい演奏が多いのですが、なんといっても素晴らしいのがドレスデン・シュターツカペレとのミサ曲。分厚いオケとコーラスが怒濤の迫力で攻めて来る素晴らしい演奏。このミサ曲でマリナーのハイドンの素晴らしさを知ったというのが正直なところ。

マリナーの交響曲は同じくPHILIPSから名前つき交響曲集がリリースされており、こちらもオススメのいいアルバムですが、10枚組と枚数が多いことから、なかなか取りあげるタイミングがなく、ここまで来てしまいました。その他にこのパリセットがありますが、この2枚組は廉価盤ながら、マリナーの良さがよく出ているオススメ盤です。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
このパリセットの特徴は速めのテンポによる現代楽器のオーソドックスな演奏である事。速めのテンポというだけでなく、小気味好い痛快さを伴うところがハイドンの真髄を捉えた見事な演奏です。
1楽章はまさに練る事もなく、序奏から速めのテンポでグイグイ行きます。主題に入ってからのテンポはまさに快速。リズムの躍動を音符にしたようなこの曲の、まさに真髄をつくような演奏。リズミカルはずむ低音弦とさりげなくキレの良いヴァイオリンの織りなす素晴らしい推進力。まさに快刀乱麻の勢い。必要十分なキレ。力が抜けてるのにキレまくった秀演。1楽章だけで感極まります。PHILIPSらしく空気感と実体感の両立した録音。
2楽章のラルゴは、一転してさりげなく、そしてしなやかさを追求した演奏。この柔らかさはなかなかなもの。なだらかな草原を散歩するような穏やかな気持ちになるラルゴ。
メヌエットは柔らかな表情のまま、少し力感が増して、肌合いが同じなのにすこし筋肉質になったような演奏。ポイントは非常にきめ細やかな肌合いの方でしょう。丹念なフレージングと絶妙の力加減から生まれる、コントロールされた力感。テンポ感は相変わらずキレのいいもの。重いメヌエットは好みませんので、まさに理想的なもの。
そしてフィナーレは、予想よりも少し落ち着いたもの。メヌエットのきめ細やかな肌合いの余韻の残る中、フルスロットルにはならずに、八分の力でキレよく進めます。ここまで磨きこまれたフィナーレも珍しいもの。それだけの余裕があります。流石マリナーと唸るばかり。最後まで余裕溢れるダンディズム。ブラヴォー。

久々に聴いたマリナーの交響曲。パリセットの小気味良い曲想を理想的に磨き込んだ秀演です。オケのテクニックと緻密なアンサンブルが非常に魅力的な演奏。一聴してオーソドックスな演奏ですが、良く聴くと非常に緻密さを感じる演奏。ただし緻密に表現された自然さという感じで、それが醸し出す余裕が演奏の質を物語ってます。レビューのために何度かかけ直したのですが、聴く度に魅力が増していくようでした。評価は[+++++]とします。以前より一つアップしました。

さて、以前から地道に登録してきた、Brilliant Classicsのスコットランド歌曲集、全18枚の所有盤リストへの登録が一応完了しました。実に地道な作業でしたが、ちょっと達成感もあります(笑)

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tag : 交響曲86番

カラヤン/ベルリンフィルの86番

今日は予告通りカラヤンのパリセットから。

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ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲82番から87番、所謂「パリ・セット」を収めたアルバム。収録は1980年6月から9月にかけて、本拠地、ベルリン・フィルハーモニーでのセッション録音。レーベルはもちろん天下のDGです。

手元のアルバムは上のジャケット写真どおりのオリジナルのCD。

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こちらは比較的最近リリースされたパリセットの6曲とザロモンセットの12曲を合わせた7枚組。今手に入れるならこちらでしょう。

カラヤンのハイドンの交響曲は、当ブログの初期の記事でちょっと触れた事があります。

2010/02/10 : ハイドン–交響曲 : カラヤンのハイドン再考

カラヤンは嫌いではなく、ハイドンでも天地創造のヴンダーリヒとのセッション録音では、その類いまれなコントロールにより、素晴らしい盛り上がりを聴かせ、ベスト盤の一枚であることは多くの人も認めるところでしょう。また、カラヤンの演奏は若い時のものの方が飛ぶ鳥を落とす勢いすら感じさせる覇気が前面に出ていて、お薦めできるものが多いですね。ハイドンではウィーンフィルとのロンドン、太鼓連打などこの例でしょう。

ところが、このベルリンフィルとのパリセット、ザロモンセットは、カラヤン晩年のレガートを効かせたカラヤンスタイルの演奏がちょっと鼻につくのと、デッドな(デッドすぎる?)録音が災いして、ハイドンの楽しさよりも、力づくでの演奏との印象が強いアルバム。確かに良く聴くと磨き抜かれたベルリンフィルの重量級の演奏は素晴らしいものの、それがハイドンの交響曲のいい演奏かと問われると、手放しでそうだとは言い難いというところ。

ま、こんな風に思ってきた訳です。昨日なぜか弾みで、このパリセットのアルバムを手に取り、パリセットでは最も好きな86番の演奏をかなり久しぶりに聴いてみた次第です。この印象は変わるでしょうか?

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
以前聴いた時とはオーディオセットのセッティングも実は変わっていて、以前ほどデッドな録音が気にはならなくなっています。デッドには変わりありませんが、不自然とまでは言えないでしょう。艶やかな序奏は流石ベルリンフィル。主題に入ってからの迫力もベルリンフィルならでは。ただ、直球過ぎてフレーズに遊びがなく、少々堅苦しさを感じてしまうところもあります。弦楽器の分厚い響き、特に低音楽器の響きはカラヤン時代のベルリンフィルのトレードマークでしたでしょう。響きは厚いながらも研ぎすまされて室内楽的な純粋さも併せ持っています。
機知を語るというよりはストイックに攻めるハイドン。正攻法、正面突破、全力投球の真面目な演奏です。全盛期の余裕を感じさせる覇気溢れるカラヤンの姿は見られず、一心不乱に自身の理想とする音響美の宮殿を構築しようとする建築家の視点のようです。
2楽章はカラヤンならではの楽章を立体的に聴かせようとする、入りから終わりまでの起伏を、俯瞰したような客観的な語り口で描いていきます。フレーズをじっくり描いていく事で重厚感もあり、1楽章同様室内楽的な透明感もある演奏。テンポが揺るぎだにしないのが流石カラヤンのタクト。
メヌエットはこの曲の中でももっとも力が抜けた楽章。力感溢れていて、力こぶもあるのですが、聴いていて一番楽天的に聴こえる楽章。これで良く響くホールでの録音だったら、だいぶ違って聴こえたに違いありません。やはりデッドな録音が弱点になっているような気がします。オケの厚みがデッドな響きのせいで単調に響いてしまいます。
フィナーレはベルリンフィルの威力炸裂。テンポの安定感は流石で各楽器がうなりをあげて鬩ぎあっているのでしょうが、響きはデッドなので、真空での演奏のように聴こえ、迫力ある響きは脳内で補います。おそらくワンポイント的なマイクはなく、各楽器をオンマイクで拾ったマルチチャネル録音のように聴こえます。定位感はかなり不鮮明なのに響きはクッキリしたものです。各楽器の位置関係も判然としません。最後分厚いオーケストラの響きと想像される音響によるクライマックス。

カラヤンの演奏スタイルは一貫したカラヤンスタイルですが、これだけデッドな録音で聴くと、迫力がちょっとくどく感じたり、単調な響きになってしまいます。冒頭でデッドな録音が以前より気にならなくなったと言っておきながら、やはり最後は録音の問題が印象に大きく影響している感は否めません。おそらくこの演奏をサントリーホールで演奏して生で聴いたらさぞかし素晴らしかったのではなかったかと想像しています。物理特性という意味ではなく、響きとしての録音はアルバムの印象に大きな影響があるのは明らかなところ。評価は[+++]としておきます。

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tag : 交響曲86番

ロイ・グッドマン/ハノーヴァー・バンドの86番

今日はハイドンの交響曲をこのところ集中的に取りあげているmichaelさんのブログ呼応企画。

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ロイ・グッドマン(Roy Goodman)指揮のハノーヴァー・バンド(The Hanover Band)の演奏でハイドンの交響曲85番「王妃」、86番、87番の3曲を収めたアルバム。収録は1993年11月29日、30日、12月1日で録音場所の記載はありません。hyperionレーベルのプロダクツ。

ロイ・グッドマンはハイドンの交響曲をhyperionからかなりの枚数出していますが、全集には至っていません。先日来、ハイドンの交響曲のうち102番や、86番など通好みの曲を集中的に取りあげているmichaelさんのブログの最新記事がこのグッドマンの86番。私自身グッドマンは、かなりあっさりとした表情が耳に残ってあまり聴き込んでいないのが正直なところ。michaelさんのブログを見て、ちょっと聴きたくなってきました。記事はこちら。

Micha Lute ブログⅡ:R.グッドマンの86番

また、グッドマンの演奏は当ブログでは、ホルン協奏曲とホルン信号を以前に取りあげています。

2011/11/29 : ハイドン–協奏曲 : アンソニー・ホールステッド/グッドマン/ハノーヴァーバンドのホルン協奏曲

今日はこのアルバムから86番を取りあげましょう。

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
古楽器の演奏ながらエネルギー感を感じさせる音響。透明感もあり、クイケンとラ・プティット・バンドのしなやかさとブルーノ・ヴァイルとターフェル・ムジークの力感の間をいく感じ。表情付けがあっさりしているせいか、直裁な感じもあり、和風にも聴こえます。リズムと力感がポイントのこの曲の1楽章としてはなかなかの演奏。徐々に満ちてくる力感の面白さがうまく表現できています。惜しいのは単調さを若干感じさせなくはないところ。このへんがハイドン演奏の難しいところでしょう。前記事のスラットキンなどではかなりの表情付けとキレのいいアクセントが効果的に働いて音楽を豊かにしていたところ。リズムと力感をプレーンに表してはいるのですが、あと一歩の踏み込みも欲しい印象を残してしまいます。録音は非常に良く、ティンパニのドロドロした迫力ある響きも特徴的。これも優等生的ないい演奏でしょう。1楽章の終わりはテンポを落とすタイプ。
2楽章はラルゴ。演奏の特質は変わらず、あっさりとした表情の良さを保ったもの。意外にメリハリは1楽章の演奏から想像されるよりしっかりつけてきます。なんとなく鉋をきっちりかけた白木の柱の表情のように清潔感のある印象。もう少し木目の表情を濃く感じさせる仕上げも欲しくなってしまいますが、削り込んだ白木にはその良さがあるという感じ。上質丁寧な仕事に違いはありません。
メヌエットは意外にもダイナミックな感じ。リズムが少し踊り、これまでのスタティックな印象が少し和らぎます。
そしてこの曲のクライマックスのフィナーレ。演奏によっては暴力的なまでの迫力を感じさせるものがありますが、グッドマンのコントロールは上品さを残した、整然とした演奏の範囲でのダイナミクス。グッドマンの音楽の中には非常に誠実な秩序のようなものが一貫して流れている事がわかります。良くも悪くも、その秩序を超えないところに特徴がある感じです。最後はやはりテンポを落として迫力あるフィニッシュ。

久しぶりに聴いたロイ・グッドマンのハイドンですが、michaelさんのコメントの「グッドマンはハイドンのウマさを漏らさず聴かせてくれる、名シェフ、ヤボったい響きはひとつも聴かれません。」というところはまさにそのとおり。音楽の本質的な部分で綺麗に聴かせようとするところがあり、古楽器ということも相俟って透明感のある表情につながっています。やはり音楽の造りはクイケンの方が大きさを感じさせるところがあります。評価は[++++]としたいと思います。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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