ウルフ・ビョルリン/カペラ・コロニエンシスの交響曲集(ハイドン)

今日は交響曲のマイナー盤。

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ウルフ・ビョルリン(Ulf Björlin)指揮のカペラ・コロニエンシス(Cappella Coloniensis)の演奏で、ハイドンの交響曲50番、87番、89番の3曲を収めたアルバム。収録は1983年、85年、ドイツのケルン東方の街、リンドラー(Lindlar)の教育センター(Schulzentrum)でのセッション録音。レーベルは廉価盤のLASERLIGHT。

このアルバム、桜のたよりと共に湖国JHさんから届いたもの。いつもながら誰も知らないようなマイナー盤が届き、聴く前から過呼吸になりそうです(笑)。カペラ・コロニエンシスといえば、最近ではブルーノ・ヴァイルとの録音でハイドンファンにも知られて存在でしょうが、当ブログの読者のようなコアなハイドンファンの方にはハンス=マルティン・リンデによる名演が記憶に残っていることでしょう。

2014/04/27 : ハイドン–交響曲 : ハンス=マルティン・リンデ/カペラ・コロニエンシスの交響曲36番(ハイドン)
2014/03/10 : ハイドン–交響曲 : リンデ/カペラ・コロニエンシスの交響曲66番、90番、91番(ハイドン)
2013/12/17 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの交響曲99番、時計、軍隊(ハイドン)
2012/08/11 : ハイドン–管弦楽曲 : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」
2012/01/29 : ハイドン–協奏曲 : ハンス=マルティン・リンデ/カペラ・コロニエンシスのカンタータ、ヴァイオリン協奏曲
2012/01/24 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの四季
2011/05/24 : ハイドン–交響曲 : ジョシュア・リフキン指揮カペラ・コロニエンシスのホルン信号、72番

その、カペラ・コロニエンシスの演奏ながら、リンデではなく、ウルフ・ビョルリンという未知の人が指揮する交響曲集。しかも50番、87番、89番と陽のあたらない曲ばかり集めたような、普通はあり得ない組み合わせ。普通は1曲ぐらい有名曲を入れ込んでくるはずですが、まったくそうゆう志向がなかったのでしょうか。

調べてみると指揮者のウルフ・ビョルリンは、スウェーデンの作曲家、指揮者として知られた人ということ。1933年に生まれ、1993年に亡くなっています。19歳でザルツブルクにおいてイーゴリ・マルケヴィチに指揮を師事し、またパリ音楽院ではナディア・ブーランジェに師事します。兵役を終えると、ストックホルムのスウェーデン王立歌劇場、スウェーデンのマルメ音楽大学で働き始め、1962年からはスウェーデン放送で映画やテレビ番組のための音楽を作曲する仕事を始めます。彼はまた映画監督のイングマール・ベルイマンのもとで映画の音楽監督の仕事も受け持ちました。晩年はフロリダでフロリダフィル、フロリダ祝祭管、パーム・ピーチ交響楽団などを振って過ごしました。また最後は20世紀で最も活躍したオペラ作曲家とみなされていたということです。

今回調べて始めて知った人ですが、いろいろ他にアルバムも残る中、この録音がどうして企画されたのかを示す情報には出会えませんでした。それだけ不思議なアルバムですが、演奏は心を打つものでした。

Hob.I:50 / Symphony No.50 [C] (1773)
実にしなやかで柔らかな音色のオケが渾身の力で入ります。自身が作曲家でもあるウルフ・ビョルリンは、ハイドンの真価を知っているからなのか、ハイドンの意のままに振ろうというのか、じつに自然なコントロール。オケが一体となってまとまり、音楽が躍動します。パートごとのバランスなどは精緻にコントロールしているのでしょう、それだからこその自然さ。しかも躍動感は並のものではありません。私の好みのど真ん中を突く素晴らしい演奏。この曲独特の力強さがみなぎります。ドラティをもう少ししなやかにしたような音楽。迫力は十分。テンポが速めなのであっという間に終結します。
続くアンダーテ・モデラートはゆったりとした音楽ですが、ビョルリン独特のタイトさを帯びて、緩徐楽章ながら活き活きと弾みます。そしてメヌエットも弾みます。演奏者自身が演奏を目一杯楽しんでいるような音楽。それにしてもオケの一体感は見事。フィナーレもピタリと揃った秀演。低音弦の図太い響きが躍動感の秘訣でしょうか、いずれにせよカペラ・コロニエンシスのゆったりとしながら迫力もある演奏が見事と言うほかありません。

Hob.I:87 / Symphony No.87 [A] (1785)
パリセットの中でも最も地味な存在の87番ですが、ビョルリンの手にかかると、活き活きとした本来の音楽が際立ちます。意外に低音弦の図太さがこの曲のポイントであると気づきます。冒頭から躍動感の塊のような演奏が続きます。1楽章の終盤にかけて繰り返される主題をくっきりと浮かび上がらせたり、テンポの手綱は緩めず、この曲の面白さのツボを押さえたコントロール。よほどにハイドンの楽譜の真髄を読みきっているものと推察されます。この曲も表現過多となるとまとまらない演奏もありますので、この演奏の類稀れなところがわかります。
素晴らしいのが続くアダージョ。ホルンと弦楽器陣がとろけそうな響きを作り、そこにフルートが野に遊ぶ蝶のように舞いながら入ります。そしてオーボエ、ヴァイオリンがメロディーを引き継いでいきます。まさに孤高のひと時。この癒しの音楽をゆるぎない表現にまとめ上げる手腕、並みのものではありません。これは見事。
そして躍動するメヌエットに、軽々と吹き上がるフィナーレ。ハイドンの交響曲のフィナーレの中でも流麗さでは1、2を争う名曲ですが、それを知ってかじっくりと腰を据えて、流麗さを磨く感じ。フルートの装飾がかなり踏み込んで新鮮な響きを作っています。

Hob.I:89 / Symphony No.89 [F] (1787)
最後は「しょ、しょ、しょじょじ」で有名な曲。なぜかメロディーが非常にしっとりとしみてきます。ビョルリンの指揮は、音楽のまとまりと推進力を非常にうまくまとめてきます。聴いている私たちの方が小躍りしてしまいそうなほど。この曲でもメロディーの面白さを際立たせます。躍動感のスロットルを自在にコントロールしておけをわかりやすく操ります。途中の短調への転調と復帰のあたりの演出も実にセンスの良いもの。次々と繰り出されるメロディー面白さに釘付け。
2楽章のアンダンテ・コン・モートは今まででは一番抑え気味にして音楽の宿る静けさに応じます。逆に続くメヌエットはキレのよい鉈を振るうように鋭さを目立たせます。木管陣が時折り鳥の鳴き声のような音色を加えるあたり、なかなか面白い演出です。そしてフィナーレでもビョルリンのハイドンの機知のここぞとばかりに応じた巧みなコントロールは変わらず、最後までハイドンの音楽を楽しめました。

これだからマイナー盤はあなどれません。数多あるレギュラー盤よりよほどハイドンの音楽の真髄を楽しめる名演奏でした。指揮者のウルフ・ビョルリン、かなりの実力者と見ましたが、おそらくハイドンの録音はこれ以外には知られていないのではないのでしょうか。これは名盤です。カペラ・コロニエンシスも抜群の演奏で応えています。ハイドンの交響曲好きの方、必聴です。このマイナーな曲のなかにハイドンの機知と微笑みが詰まっています。評価は3曲とも[+++++]です。手に入るうちにどうぞ!

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ラースロー・ショモギー/ウィーン響の89番、90番(ハイドン)

最近ディスクユニオンで仕入れたLPです。

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ラースロー・ショモギー(László Somogyi)指揮のウィーン交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲89番、90番の2曲を収めたLP。収録は1963年6月、ウィーンのコンツェルトハウスの中にある中規模のモーツァルトホールでのセッション録音。レーベルはHIS MASTER'S VOICE。

ラースロー・ショモギーは1908年、ハンガリーのブダペスト生まれの指揮者。ブダペストのフランツ・リスト・アカデミーでコダーイらに音楽を学び、のちにショモギー自身が後年この音楽院の指揮クラスの教授となっています。ハンガリーにいた時代には彼自身のオーケストラを創設したり、ハンガリー放送の指揮者を務めたり、ハンガリー国立歌劇場に客演したりしていましたが、その後、ポーランド、東独、ルーマニア、ユーゴスラビア、ブルガリアなどの主要なオケを指揮するようになります。1956年には母国を離れて、イギリス、フランス、イタリア、スイス、スペイン、イスラエルなどで活躍するようになり、南アフリカにも遠征しています。アメリカデビューは1961年、ヒューストン交響楽団とのこと。以後世界的に活躍していたということです。亡くなったのは1988年スイスのジュネーブにて。

ショモギーはこのアルバムではじめて聴く人。恥ずかしながら今までまったく知りませんでした。ディスクユニオンの店頭でこのアルバムに出会った時、油彩風のショモギーの肖像と目が合い、いつものように不思議なオーラを感じたため、迷わずゲット。帰ってプレイヤーにかけると、盤のコンディションもほどほど良く、いきなりキレの良い音楽が吹き出してくるではありませんか。やはりLPには独特のリアリティがあっていいですね。

Hob.I:89 / Symphony No.89 [F] (1787)
おなじみの証城寺のメロディから入りますが、いきなり覇気が満ちあふれる充実の響き。テンポは中庸ですが、音に宿る力感が凄い。ウィーン交響楽団の最良の響き。筋肉が黒光りして浮き出るボディービルダーの均整のとれた肉体の如き立体感。録音も1963年とは思えない鮮明さで、眼前にオケがリアルに定位します。演奏のキレは素晴らしく、まるでハイドンの交響曲の理想像のような出来。1楽章からあまりの素晴らしさに息を飲まんばかり。
続くアンダンテ・コン・モートはテンポを落として、味わい深い響きに変わります。ダイレクトな響きのまま、オケが落ち着いてゆったりとした音楽が流れます。中間部の壮大な展開を挟んで、再びゆったりとした音楽に戻り、彫りの深い表情の魅力で聴かせます。特に木管陣の引き締まった演奏が印象的。非常に造りの大きなアンダンテ。
メヌエットに入ると、一層彫りが深くなり、音楽の立体感は尋常ではありません。確信犯的にキリリと引き締まった音楽にただただ圧倒されるよう。もちろん時代がかった表現ではありますが、時代を超えた説得力があるように感じるのも正直なところ。音楽の気迫に押されっぱなし。
フィナーレはむしろ、これまでの緊張感からすこし解放されるようにのびのびとした印象を醸し出します。力づくのフィナーレではなく、ここに来て流麗さを感じさせるあたり、並の力量ではありませんね。まるで見事な楷書の書を見せられているよう。楽章事の力加減のバランスに静かな美しさが宿ります。中盤以降の力を入れながらも、メロディーの重なりを表すようなところでは、溜めを効かせて音楽の面白さを際立たせます。見事!

Hob.I:90 / Symphony No.90 [C] (1788)
序奏からすでに迫力満点。前曲の素晴しい演奏で、力量はわかっていますので、耳を峙てますが、序奏は軽いタッチでまだ牙は剥きません。主題に入ると、力は八分ですが、殺気のようなものを感じさせながらの演奏。メロディーのキレが尋常ではないので、そのように聴こえるのでしょう、音楽は平常なのに、どこからか狙われているような気分。この不思議な高揚感がハイドンの音楽を際立たせます。メロディーのひとつひとつはユーモラスなのに音楽は素晴しい緊張感に包まれます。奏者がボウイングに全神経を集中させているよう。
つづくアンダンテも前曲同様、非常に落ち着いた表情ながら、大きな起伏をつけて壮大な造り。メロディーにハイドンが込めたニュアンス以上に彫刻的な表現が素晴しい効果を生んでいます。ドラティも険しい表情づくりは上手いのですが、ドラティ以上に引き締まり、また隈取りがクッキリとしたフォーマルな表情を作ります。録音の優秀さも手伝って素晴しい迫力が味わえます。
メヌエットでは、曲調をうまく捉えて、逆に力を緩めて流すような表現に変化します。この微妙なテンションのコントロールが生み出すデリケートな表情こそが音楽を活き活きとさせるポイントに違いありません。
フィナーレはラトルが終わりそうで終わらないという部分をコミカルな演出で聴かせる曲。ショモギーはコミカルなのではなくアーティスティックに仕上げ、クライマックスにふさわしく白亜の大神殿のごとき完成度で磨き込んで攻めてきます。フレーズの陰影の深さはショモギーならでは。テンポも上がり、素晴しい盛り上がりで一旦終わったような表情を見せた後は、非常に柔らかに表情を変えて入りなおしますが、この辺りの洗練された演出はこれまで聴いた中では一番のもの。クッキリと陰影のついた正統派の交響曲演奏というばかりではなく、こうした演出の上手さも一流でした。

はじめて聴くラースロー・ショモギーのハイドンは予想を遥かに超える圧倒的な名演でした。パリセットとザロモンセットの間の交響曲2曲をこれだけ見事に演出して聴かせるとは思いませんでした。ドラティ以上にタイトで、ドラティ以上にユーモラスな部分の演出も上手く、そして録音も鮮明。3拍子そろった名演とはこのことでしょう。検索してみてもこの演奏はCD化はされていないようです。これだけの名演奏が現在流通していないのはやはり痛恨事。是非良好な音質でのCD化を望みたいものです。評価は両曲とも[+++++]、というより両曲のベスト盤といってもいいでしょう。

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カール・ベーム/ウィーンフィルの交響曲集-2

昨日のベームの交響曲集の続き。

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さて、前記事に続いてCD-1の2曲目の89番。例の「しょ、しょ、しょじょじ」です。88番と同時期の録音だけに気合いの充実は同レベル。1楽章はゆったりしたテンポで入り、いきなり主旋律のメロディーとアクセントの面白さを見せつけられます。オケの集中力とキレともに素晴しいもの。木管楽器のソロなどもそれぞれすばらしい腕前。響きの豊かさとソロのキレは流石ウィーンフィルですね。
2楽章は1楽章からさして変化のないテンポで自然に入ります。奇を衒ったところは一切なくメロディーを自然に奏でるだけでこの楽章の素晴しさが伝わります。
3楽章のメヌエットは力を抜いた良さが味わえます。88番の気迫漲るメヌエットとは異なり、素朴な響きが特徴。
フィナーレはすこし溜の効いたフレージング。弦楽器の響きの美しさで一気に聴かせます。
この曲は88番同様鮮度の高いオーケストレーションと自然な響きの結晶のような演奏ですね。

続いて、90番。ラトルが得意としてよく取り上げている曲ですね。この曲は前2曲の翌年1973年5月の録音。1楽章は冒頭の一音から迫力の音響。非常に遅いテンポの序奏。主題に入り一気にテンポが上がりフルスロットルに。調律の関係かオケの音色が前2曲より若干濁ってます。迫力は今までで一番。オケに力が漲ってます。
2楽章は前曲同様、ベームの自然なコントロールが美しい演奏。途中のフルートのソロが非常に美しいですね。
3楽章のメヌエットは力みがちょっと目立ちますでしょうか。
フィナーレは非常に明確なメリハリをつけて迫力も十分ですが、ちょっと型にはまった印象もあり、生気と言う意味では後退でしょうか。
90番は迫力十分なんですが、ちょっと固さ気になる演奏です。

CD-2に移って91番。私の好きな曲。1楽章は非常にゆったりしたテンポで入ります。幸せに満ちる時間。素晴しい序奏。ゆったりとした演奏が曲想に合ってます。ベームのコントロールはこの交響曲集の中ではオケに任せている部分が多いように聴こえます。わりと自然なフレージングが多く、流れるような演奏。
2楽章は極上。作為のない自然な流れで曲の盛り上がりを表現。
3楽章は大きな構えで、小節を効かせながらも力みはなく、雄大なオケと中間部の押さえた表現の対比が見事。
フィナーレも自然な流れで徐々にクライマックスにむけて盛り上げていき、最後は秩序と混沌の坩堝のような複雑な音符を見事に表現して終了。やはり91番は名曲です。

続いて92番「オックスフォード」。入りは超スローに非常に押さえた入り。主題に入りフルスロットル。フレージングがちょっと固いところがあるのは前曲同様。ほんのちょっと小節を押さえればいい感じなんですが、この辺は紙一重のちがいといったところでしょう。迫力は素晴しいんですが、力んでオケを鳴らしすぎている感じもしないでもありません。フレーズ全体の有機的なつながりがちょっと弱い感じです。
2楽章は超滑らかな開始で、1楽章の力みが消え、柔らかいウィーンフィルの響きを楽しめる楽章。
続く3楽章も自然さを保ちます。途中のホルンの印象的な響きがムジークフェラインにこだまする美しさ。
やはり「オックスフォード」聴き所は4楽章です。入りのリズムは何と速めで、いきなりフルオケで畳み掛ける素晴しい迫力。大編成オケらしいふけ上がりが見事。音量の対比がこれだけの幅にもてるとフィナーレの盛り上がりも素晴しい迫力。途中の押さえた部分にもピンとはりつめた緊張感。最後は振り切れて終了。
「オックスフォード」は1楽章がちょっとくどいのが欠点。これがなければ良い演奏なんですが。

最後は協奏交響曲。これは90番と同時期の録音。ソロはウィーンフィルのメンバーでしょう。ヴァイオリンはおなじみライナー・キュヒル(Reiner Küchl)、チェロはロベルト・シャイヴァイン(Robert Scheiwein)、オーボエはカール・マイヤーホーファー(Karl Mayrhofer)、ファゴットはディートマール・ツェーマン(Dietmar Zeman)。1楽章はゆったりとした入り。ウィーンフィルの弦楽セクションの素晴しい響きをゆったり楽しめます。すぐにソロが一通り顔を出しますが、まずはキュッヒルの艶やかなヴァイオリンの音色に圧倒されます。それからシャイヴァインの極上のチェロの響き。ソロの巧さは流石ウィーンフィルですね。ゆったりとした時の流れに乗ってソロが自由に歌う感じです。オケの方も特にヴァイオリンの弓さばきがキリッとエッジがついて鮮明なオケの響きを特徴づけています。1楽章の最後のカデンツァはクアルテットのような緊密な掛け合いを楽しめます。素晴しい1楽章です。
つづく2楽章は、いきなりソロの魅力炸裂。オーボエとチェロの響きにうっとり。これだけソロが楽しめるこの曲も珍しいですね。ウィーンフィルの名人芸堪能楽章とも言えるでしょう。チェロのシャイヴァインが時折流れるような滑らかな音階で聴かせどころ作ります。時折押し寄せるオケの波が心地よいですね。
3楽章はオケの柔らかく分厚い響きとソロの対比が見事。途中のチェロの鳴きが印象的。極上のウィーンフィルの響きとソロの名人芸による至福の瞬間。

このアルバムの前記事で取り上げた88番以外の評価は89番、90番、92番「オックスフォード」が[++++]、90番が[+++]、91番と協奏交響曲は[+++++]ということに。このアルバムの聴き所は88番、91番と協奏交響曲です。

ベームの交響曲はパリセットもザロモンセットもなく、その間をつなぐこのセットのみ。コンサートではどうだったのでしょうか。このセットではベームの全盛期の覇気と極上のウィーンフィルの響きを堪能できる名盤ということができるでしょう。今まであんまりちゃんと聴いてこなかったアルバムゆえ、いまさら感がありますが、皆さんにお薦めしたい名盤と言うことが出来るでしょう。

さて、今日もこれからスポーツクラブでひと泳ぎして、昨夜の焼酎を流してきます(笑) 今日はラックの掃除でもしましょうか。テレビでは東京競馬場のジャパンカップが。ブエナビスタ強いですね。府中は道が混みますね(笑)

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ブリュッヘンの88番、89番、協奏交響曲

今日のアルバムは、先月末に取り上げたライナーの88番が度肝を抜く素晴しさだったとの、アーノンクールのコンサートで古楽器のオケの響きの良さを再認識したので、古楽器の交響曲をラックで物色した際に手にとったもの。

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HMV ONLINEicon(同パッケージの国内盤)

フランス・ブリュッヘン(Frans Brüggen)指揮の18世紀オーケストラの演奏で、収録順にハイドンの交響曲89番、88番、協奏交響曲の3曲を収めたもの。私の手元にあるのは上の写真のジャケットの輸入盤。最近の国内盤はジャケットの左下のロゴがPHILIPSではなくDECCAマークに変わっているようですね。
録音は88番が1988年11月、協奏交響曲が1996年6月6、7日、89番が1997年の2月20、21日、何れもオランダのユトレヒトにあるVredenburgというホールでの録音。

ブリュッヘンのハイドンの交響曲はこれまでのPHILIPSへの録音をまとめたボックスもリリースされたんですが、ほとんどバラで手に入れて、未入手盤はこの盤と90番、91番を収めた1枚のみだったので、ボックスには手を出しにくい状況なんですね(笑) ボックスにするとスペースは減るためいいんですが、、、

収録順にレビューを。

1曲目はこのアルバムで最もマイナーな89番。最も新しい録音だから最初に置かれたのか、はたまた出来が良かったから最初に置かれたのかは判然としませんが、アルバムの冒頭に置かれるべき特徴的な出だし。冒頭のメロディーが「しょ、しょ、しょじょじ」と聴こえるのは私だけでしょうか。冒頭から心地よい古楽器の響き。ブリュッヘンのハイドンはデモーニッシュとも言えるような図太いおどろおどろしい古楽器の迫力ある音色を特徴にした演奏も多いんですが、この曲では録音が他の曲よりも比較的新しいせいか、響きの美しさを感じさせるもの。テンポはあまり動かさず、淡々と進めますが、迫力ある音色はブリュッヘンと18世紀オーケストラならでは。
2楽章も淡々と。現代楽器の演奏ならもう少しレガートを利かせるところでしょうが、音を短く切りながら進めるアンダンテは古楽器ならでは。古楽器の音色で聴かせきってしまいます。
3楽章のメヌエットはちょっと腰高な始まりで、中間部に入りようやくゆったりした流れに。
フィナーレは勢い良く始まりますが、繰り返しの部分を意図的にかなりテンポを落としたり、ブリュッヘンにしては踏み込んだ表情付け。同じような曲調がつづくと、ちょっと単調に聴こえてしまうきらいがあるところを巧く処理していますね。展開部以降はヴァイオリンがちょっとべたつくような弾き方が面白いんですが、曲の解釈としてもうすこし別の解釈もありそうですね。最後はオケの迫力を取り戻してフィニッシュ。

続いて88番。冒頭は力漲るオケ。非常にいい響き。ホールに厚みのある弦の響きの余韻が消え入るところまで聴こえるいい録音。フレーズのメリハリも曲の構造をよくとらえて流麗さもあります。ブリュッヘンの迫力の音色に流麗さが加わり、次元が上がりますね。この曲はブリュッヘンに合ってます。途中に音量、アクセント,テンポそれぞれメリハリを付ける部分があり、変化に富んだいいコントロール。最後もばしっとキレよくまとめます。
2楽章はすこし速めのテンポが心地いい流れ。控えめなレガートと速めのテンポが爽やかな叙情を醸し出します。途中の強奏はブリュッヘンの面目躍如。さりげない木管のメロディーの美しさも演奏を引き立てます。
3楽章のメヌエットは前曲とはことなり、メヌエットらしいメヌエット。音色がブリュッヘンらしい以外は特に作為はありません。嵐の前の静けさでしょうか。
そしてこの曲の最も面白さが出たフィナーレ。リズムのキレがよく、フレーズごとの演出も丹念でいいですね。途中から嵐のような怒濤の迫力に、、、と思って身構えていると、意外とあっさり進めます。最後にちょっとギアチェンジしてスピードを上げますが、きわめてオーソドックスな演奏でした。これは気に入りました。

最後は協奏交響曲。少し録音が眠く、テンポもゆるい感じです。ルーシー・ファン・ダールのヴァイオリン他ソロ陣は火を吹くというよりはオケと一体化した安定した演奏。前2曲と比べるとちょっとテンションが下がってしまうのが惜しいところ。

評価は、89番が[++++]、88番が[+++++]、協奏交響曲が[+++]としました。このアルバムでも一番の出来はやはり88番。古くから録音の多い曲ですが、最近この曲の面白さがようやくわかってきたような気がします。

ブリュッヘンの録音は、以前取り上げたザロモン・セットもそうでしたが、曲ごとのムラが結構あるため、気合い乗ったブリュッヘンの大迫力の演奏にはたまにしか出会えません(笑) それも聴く楽しみのひとつでもあります。

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ラトル/ベルリンフィルの交響曲集-1

今日はサイモン・ラトルがベルリンフィルと入れた交響曲集。2枚組で全部をレビューできそうもありませんので、その1です。

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HMV ONLINEicon

今をときめくラトルとベルリンフィルのハイドン。世界最高峰の組み合わせであることは論を俟たないでしょう。
この世界最高峰の組み合わせによるハイドンの交響曲。しかもドイツ国歌の作曲者であるハイドンの交響曲です。レコード会社としては山口百恵のいい日旅立ちくらいの力が入ることは想像に難くありません(笑)

ラトルはベルリンフィルの音楽監督に就任以前にその主席指揮者・音楽監督であったバーミンガム市交響楽団とハイドンの交響曲を録音していましたが、ハイドンの曲に対するスタンスが非常に明確で、その諧謔性というかユーモラスな側面にスポットライトを当てるべく、テンポの設定やフレーズごとの演出のうまさが印象に残っています。

私がラトルの演奏でラトルがどんな音楽を生み出すのかを最も感じられたのは、何を隠そうハイドンの交響曲です。逆に、ハイドン以外の演奏でラトルの真価を感じられるような演奏に出会ったかというと、実はちょっととらえどころがないという印象も否定できません。あえて挙げればだいぶ前に放送された現代音楽のシリーズでしょうか。自身の解説付きでつくられた番組でしたが、現代音楽を指揮する立場、同時代の音楽を語る視点にラトルの狙いを感じたのが新鮮でもありました。

同じくベルリンフィルを率いる立場であったカラヤンは強烈すぎるぐらい自身の音楽の鮮明なスタイルを追求し、幅い広いレパートリーのすべてにカラヤンのスタイルで録音を残してきました。後を継いだアバドについてもこれまでの垢をすっかり削ぎ落とした純粋な世界、純音楽的な歌と緻密な壮大さへの憧憬といった狙いは演奏の基底に色濃く感じさせ、こちらも幅広いレパートリーの録音を残し続けています。アイーダといえばカラヤン、リヒャルト・シュトラウスといえばカラヤン、そして天地創造といえば真っ先にカラヤンです。そしてマーラーといえばアバド(私は)、夢のようなメンデルスゾーンと言えばアバドな訳です。

ラトルについては、もともと八方美人というか器用さが先に立って、音楽の狙いがいまいち見えにくいところがありますが、あえて挙げれば純粋な響きの変化による音響の快楽といったようなところが核にあるように見受けられます。ただ、この曲と言えばまずラトルという鮮明な印象は実はあまりありません。

まさにこの点がラトルのハイドンの演奏の特徴を浮き彫りにしていると言えなくもありません。このアルバムの演奏も最高のオケによるハイドンの交響曲の響きの変化を楽しむというのが消去法的に浮かぶテーマでしょう。

収録曲目はハイドンの交響曲88番から92番までの5曲と協奏交響曲の6曲。録音は2007年の2月のベルリンフィルハーモニーでのコンサートのライヴ。ラトルのベルリンフィルの音楽監督への就任は2002年ですから、就任5年目の演奏ということになります。

冒頭の88番V字は昨日、セルの演奏を取り上げたばかりで、セルの剛演が耳に残っている状態でのレビュー。
セルの鮮明なスタイルと比較するとラトルはオケの各楽器の巧さ、合奏精度の見事さは流石ですが、音楽づくりという意味ではオーソドックスなものといえるでしょう。あえてあげればやはりハイドンの機知を啓蒙的に紹介して音楽を楽しんでもらおうといったところでしょうか。

演奏はゆっくり目なテンポで、フレーズの構造をわかりやすく噛み砕いていくようなスタイル。ベルリンフィルハーモニーでの多くの録音と同様、デッド気味な実体感のある弦楽器の音響が印象的な録音。各楽章の演奏スタイルは対比で聴かせるというよりは全楽章一貫した流れ。終楽章はところどころレガートを象徴的に織り込み、個性的なフレーズをちりばめていますが、響きの面白さを引き立てることを目的とした小技という印象。
一流オケで直球を投げるというよりは、一流オケなのに遊び心をちりばめた8分の力での演奏といところでしょう。

つづく89番は、勝手に「証城寺」という名前をつけています。冒頭のメロディーが「しょ、しょ、しょじょじ」と聴こえるからです(笑)
歴代の名演がひしめく88番とくらべて気軽に聴ける分、こちらの曲のほうがラトルの演奏を素直に楽しめます。こういった素朴な曲の演奏のほうがラトルの魅力が伝わるような気がします。この曲は力が抜けていい演奏。

ということで、今日はここまでで時間切れです。
評価は88番は[+++]、89番は[++++]といったところでしょうか。この続きは明日。90番はコンサートのでのユニークな演出付きバージョンも含まれています。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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