オイゲン・ヨッフム/ウィーン響の驚愕、95番ライヴ

今日はライヴのCD-R。

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オイゲン・ヨッフム(Eugen Jochum)指揮のウィーン交響楽団(Wienna Symphony Orchestra)の演奏でハイドンの交響曲94番「驚愕」と交響曲95番の2曲を収めたCD-R。収録は1982年5月20日のライヴ。収録場所等の情報は記載がありません。レーベルはCD-Rではおなじみのアメリカのsardana records。

ヨッフムのハイドンは当ブログでも何度か取りあげています。

2011/12/30 : ハイドン–交響曲 : 【600記事記念】オイゲン・ヨッフム/ロンドンフィルの「ロンドン」
2011/06/07 : ハイドン–交響曲 : オイゲン・ヨッフム/ロンドンフィルの93番
2011/05/28 : ハイドン–交響曲 : オイゲン・ヨッフム/ドレスデン・シュターツカペレの93番
2010/12/29 : ハイドン–交響曲 : オイゲン・ヨッフム/ロンドン・フィルの軍隊、時計ライヴ

ヨッフムにはロンドン・フィルとのDeutsche Grammophoneへの録音の他に、ドレスデン・シュターツカペレへの録音やいくつかのライヴ盤がありますが、このCD-Rはその中でも最も最近の1982年5月の録音。ヨッフムが亡くなったのは1987年ですので、晩年の録音ということになります。
ヨッフムの晩年のモーツァルトやブルックナーの素晴らしい録音に近い達観と透明感が聴かれるでしょうか。

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlagk" 「驚愕」 [G] (1791)
出だしはゆったりとした響き。ムジークフェラインでしょうか、ゆったりしてはいても覇気は失われていません。録音はリアリティがあり十分。ヴァイオリンの音がちょっと乾き気味な感じがするものの十分以上な鮮明さ。低音弦の迫力はかなりのもの。オケはライヴらしく気合いのこもった響き。リズムがヨッフムにしては重めですがじっくり噛み締めるようで逆に鬼気迫るようなな1楽章の展開。いやいや、これはヨッフムのベストな演奏な予感。流麗なロンドンフィルとの演奏とは異なり、渾身の迫力のライヴ。コンディションもかなりのものです。堂々たる1楽章。
2楽章のビックリはじわりとこころに響く強音。オーソドックスな演奏の中に、長年ハイドンを演奏をし続けた巨匠のこだわりが聴こえてくるよう。ビックリのメロディーを発展させた変奏ではそこここにメリハリをつけて聴衆の期待に応えようとするヨッフムの鋭い眼光が見えるよう。後半の激しい部分もゆったりとしたテンポながら迫力は素晴らしいものがあります。
メヌエットはざっくりしたオケの感触が最高。リズムの刻みの深さが音楽の深さに直結。流石ウィーン交響楽団といえるまろやかなオケの響きがあってのゆったりしながらも迫力を感じる演奏。
フィナーレはテンポが上がって入りから畳み掛けるような素晴らしい感興が見事。ハイドン演奏のツボを押さえたヨッフムの素晴らしいコントロール。極上のコンサートを聴いているような素晴らしい録音。オケの息吹がスピーカーをつたって部屋に噴出するようです。最後にテンポを落として粋な演出。そのご荒れ狂うティンパ二とオケを聴かせて終了。会場の割れんばかりの拍手とブラヴォーに包まれます。

Hob.I:95 / Symphony No.95 [c] (1791)
短調の険しいメロディーからはじまるこの曲。レガートを効かせてフレーズに変化をつけて入ります。録音は変わらずリアリティの高いライヴとしては十分なクオリティ。この曲でもヨッフムのスタンスは変わらず、ハイドンのザロモンセット演奏の王道を行くような堂々としたもの。墨をたっぷりと含んだ極太の筆、流れるように濃淡をつけて各達筆の書の様な演奏。短調のこの曲での険しい表情はヨッフム渾身のコントロールでしょう。
2楽章のアンダンテ・カンタービレはこんどはやさしい素朴な表情。弦楽器の奏でるメロディーラインは素朴そのもの。あえて楽器の音が溶け合わないようにさらりとした演奏を意図しているよう。後半の展開部に至り、ザクザクと各パートが鬩ぎあって盛り上げます。
メヌエットも渾身の演奏。気合い入りまくってます。奏者が一つになってハイドンの名旋律を演奏している姿が目に浮かびます。響きのひとつひとつに宿るエネルギーが伝わります。間奏部は逆にチェロが訥々とピチカートに乗って逆に火照りを鎮めるような演奏。再びエネルギーが勃興。
フィナーレは吹き上がるオーケストラの魅力炸裂。この曲のフィナーレはハイドンの交響曲のフィナーレの中でも最も盛り上がりの見事なもの。ヨッフムはやはり勘所を押さえて素晴らしい吹き上がりを演出。ライヴだけあって素晴らしい感興。最後はあまりの迫力にフライング気味で拍手が降り注ぎます。

ようやく出会えたヨッフム渾身のハイドン。以前から何度か取りあげている記事で触れているように、ヨッフムののハイドンの交響曲の演奏は、晩年のブルックナーやモーツァルトの澄み切った心境と比べると一歩及ばないものが多かったんですが、このライヴは素晴らしい。ハイドンを知り尽くしたヨッフムが大胆に振ったハイドンのライヴをそのまま記録した理想的なライヴ盤です。評価は両曲とも[+++++]とします。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 驚愕 交響曲95番 ライヴ録音 CD-R

ベルナルド・ハイティンク/ベルリンフィルの95番ライヴ

今日はハイティンクのCD-R。

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ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のベルリンフィルの演奏で、リヒャルト・シュトラウスのドン・キホーテ、ブラームスの交響曲3番、ハイドンの交響曲95番の3曲を収めた2枚組のCD-R。ハイドンの収録は1989年12月12日、ベルリンフィルハーモニー大ホールでのライヴ。CD-Rには日付しか記載されていませんが、ベルリンフィルの公式サイトのコンサート・アーカイヴで調べたところ、大ホールでハイドンのこの曲とブルックナーの交響曲を演奏していることになっています。レーベルは以前ウィーンフィルとの時計のライヴのCD-Rと同様GNPというアメリカのレーベル。

ハイティンクのハイドンは過去2回取りあげていますので、いつも通り記事のリンクを張っておきましょう。

2011/06/28 : ハイドン?交響曲 : ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!
2011/05/12 : ハイドン?交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ

ウィーンフィルの時計はすこし大人しい演奏、そしてドレスデン・シュターツカペレの86番は力感溢れる演奏。たまたまライヴが残っているだけかもしれませんが、オケの音色と選曲の取り合わせが見事。とくに86番とドレスデン・シュターツカペレという組み合わせはハイドン好きの方からすると、垂涎の組み合わせ。聴かずとも脳内に86番の燻し銀の響きが満ちあふれます。そして、今日のこのアルバム。鋼のようなベルリンフィルのタイトな響きで95番。再び脳内にイメージが浮かびます。はたして期待通りの演奏でしょうか。

実は結構前に手に入れて聴いているんですが、前説で盛り上げるのが当ブログのスタイルですので(笑)

Hob.I:95 / Symphony No.95 [c] (1791)
1楽章は期待通りのベルリンフィルのしかもフィルハーモニーの聴き慣れた響き。タイトです。弦の少々デッドな、しかし力強い響きはフィルハーモニーのベルリンフィルならではの音。開始から徐々にオケの焦点が合ってきて、じわりじわりと迫力が増していきます。華美に傾かないのがハイティンクの美点。ハイティンクの筋肉質なコントロールとベルリンフィルの音色が相俟って、しかも短調の95番の曲想も手伝って不気味な迫力が増します。1楽章の終わり頃にはかなりの熱気。
2楽章のアンダンテはハイティンクならではの地味さ。小細工なし、飾りなし、ひねりなし。淡々と、最初はあっさり、徐々に力を増しながら響きを厚くしていきます。ヴァイオリンパートはざっくりした響き。弦楽セクションの基本的な優秀さが素直に感じられる素晴らしい響き。
メヌエットは最初からもの凄い気合い。ちょっとヴォリュームを上げるとスピーカーの向こうから響きの塊が押し寄せてくるような迫力。録音に触れてませんでしたが、この年代なりの録音ゆえ鮮明さはほどほど。やはりデッドな響きでレンジも広くないもののそこそこ自然で、低音の厚みのある録音。会場ノイズはかなり抑えられているので聴きやすいです。
この曲一番の聴き所はフィナーレ。あえてさっぱりとした導入から、徐々に力が漲りはじめて、フーガのような幽玄なフレーズを繰り返します。聴き方によっては何気ない演奏ですが、ハイティンクならではの力感と、良く聴くと非常に磨き込まれたフレージング。派手さや華美さとは無縁のいつもながらの質実剛健さ。ベルリンフィルのタイトな響きを得て、最後は渾身の盛り上がり。玄人好みではありますが、充実の95番でした。最後は拍手に包まれます。

この地味な感じがえも言われぬハイティンクらしさということでしょう。そういった意味ではいつもながら一貫したスタイルです。評価は86番を聴いてからハイティンク贔屓となったので[+++++]です。

昨夜は愛用のMacbookのOSをリリースされたばかりのLIONにアップデート。もはやOSすらインターネットでアップデートできる時代となりました。光ファイバーに無線LANでつないでますが、30分ほどでダウンロード、同様30分ほどでインストール、特段設定に苦労することもなく使えるようになりました。今回は使用感が結構変わってますが、慣れで解決できるでしょう。ブラウザのサファリがマウスの横スクロールで戻るインターフェースが秀逸。MacはSystem6の頃から使ってますのでかれこれ20年でしょうか。最初にMacでハイバーカードやマック書道、エクセル4.0を使った時の感動からずいぶん経ちました。いまだにイノヴェーションが続いて、更なる洗練を感じさせるあたりは、やはりジョブスあってのことでしょう。ちょっとわくわくしました。いまやパソコンは誰でも使う道具ですが、道具も気に入ったものを使いたいですね。

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tag : 交響曲95番 ライヴ録音 CD-R ベルリンフィル

【新着】ジョージ・セルのハイドン交響曲ボックス

今日は昨夜の予告通り着いたばかりのセルのボックスを開封。

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ジョージ・セル(George Szell)指揮の手兵クリーヴランド管弦楽団の演奏によるハイドンの交響曲11曲を集めた4枚組。収録曲目は下記の通り。

CD-1
交響曲第93番(Hob.I:93)1968年4月18日収録
交響曲第94番「驚愕」(Hob.I:94)1967年5月5日収録
交響曲第95番(Hob.I:95)1969年1月17日、18日収録
CD-2
交響曲第96番「奇跡」(Hob.I:96)1968年10月11日収録
交響曲第97番(Hob.I:97)1969年10月3日、6日、10日収録
交響曲第98番(Hob.I:98)1969年10月10日収録
CD-3
交響曲第92番「オックスフォード」(Hob.I:92)1961年10月20日収録
交響曲第99番(Hob.I:99)1957年10月25日、26日収録
CD-4
交響曲第88番(Hob.I:88)1954年4月9日収録(MONO)
交響曲第104番「ロンドン」(Hob.I:104)1954年4月9日収録(MONO)
交響曲第97番(Hob.I:97)1957年10月25日、26日収録

ザロモンセットがそろっている訳ではなく、100番「軍隊」、101番「時計」、102番、103番「太鼓連打」が抜けており、その代わりに88番、92番「オックスフォード」が含まれ、97番については2種の演奏が含まれているということです。録音はすべてクリーヴランドのセヴァランス・ホールでのセッション録音。1954年収録の88番と104番「ロンドン」のみモノラルで他はステレオ。

セルのハイドンについてはライヴを中心にこれまで何度か取り上げていますので、過去のレビューをご覧ください。

2011/01/03 : ハイドン–交響曲 : セル/クリーヴランド管の99番(1966年2月ライヴ)
2010/08/26 : ハイドン–交響曲 : セル/クリーヴランド管の93番、驚愕
2010/08/25 : ハイドン–交響曲 : セル1954年の93番ライヴ録音2種
2010/08/17 : ハイドン–交響曲 : セル/クリーヴランド管のロンドン他
2010/08/16 : ハイドン–交響曲 : セルの1959年ザルツブルク音楽祭ライヴ

これまで聴いたセルの印象は録音年代が古いほど覇気があり、新しいものは均整のとれた高潔なセルの魅力は素晴らしいものの、古い時代の素晴らしい迫力とキレは少々後退してしまった印象があります。またライヴはムラはありますが、ライヴならではの迫力を感じられる演奏もあります。

このアルバムによって、セル/クリーヴランド管の未入手の演奏も一気に手に入りました。これまで未入手だったのは、92番「オックスフォード」の1961年の演奏、95番、96番「奇跡」97番の1969年の演奏ということになります。オックスフォードと97番についてはクリーヴランド管とのセッション録音が複数あったんですね。ということで、今日は未入手の演奏から95番と96番「奇跡」を取り上げようと思います。

交響曲95番(1791年作曲)
セルの最晩年の録音のひとつ。1969年1月17日、18日の録音。他の曲よりもオーケストラの響きがちょっとざらついて聴こえます。コントロールが甘いという感じというよりは録音の影響のようにも感じます。冒頭の短調の序奏から力強い響き。良い意味でザクザクした感じと勢いが感じられ、1楽章はなかなかの迫力。
2楽章に入ると艶やかな弦の響き。ただし枯れた表情が強くなります。往年のセルとは明らかに異なる表情。コントロールが行き届いているというよりはオケに任せている感じも強いですね。
3楽章のメヌエットは再びセルの覇気を感じさせるキレが見られます。オケにも火がついたのか2楽章とは明らかに異なるエネルギー感。ふたたびザクザクと刻まれる音。
そして、95番の聴き所、沸き上がるエネルギーが炸裂するフィナーレ。オケもアンサンブルは粗いものの素晴らしい吹き上がり。セルのやや冷たさを感じさせなくもない高潔な表情とは異なる、晩年のエネルギー感が素晴らしい演奏です。95番のフィナーレはこうでなくては。

交響曲96番「奇跡」(1791年作曲)
奇跡は95番の前年1968年10月11日の録音。おそらくセルの良さが最も合うと思われる曲。こちらは95番よりもまとまりのある音質で、オケも精度が少し上がります。1楽章はセルの真骨頂であるカッチリとクリアな音が印象的。序奏は意外と有機的な響き。オケの各楽器のバランスが絶妙。主題に入るとコミカルなこの曲独特なメロディーをカッチリと折り目正しく描いていきます。曲の創意と指揮者の覚醒したようなコントロールの絶妙なバランス。オケ全体に行き渡る軍隊の規律のような張りつめた緊張感。終盤のオケの力感は見事。
2楽章は艶やかなメロディーとフレージング。艶やかながら基本的には規律に従ったキリッとした面もあります。ゆったりしたメロディーがきっちり進みます。
3楽章のメヌエットは落ち着いた入り。若干溜を効かせてメリハリを強調します。一貫したリズムでメロディーを刻み、若干形式的な印象を与えてしまいます。
前曲同様盛り上がりを期待するフィナーレ。最初は力を抜いて入りますが、たびたび襲ってくる低音弦の波に刺激されるように、オケに力が漲ります。ただ、前楽章から感じられる型にハマった感はちょっとぬぐい去れず、爆発というところまでには至りません。安定感は見事故、この奇跡はセルのキリッとした折り目正しい演奏を楽しむ演奏と位置づけられると思います。

さて、まずは未聴の95番と96番「奇跡」を聴きましたが、良かったのは95番。荒々しい音色と終楽章の炸裂感が見事。それでもセルの全盛期の恐ろしいばかりの覇気とはちょっとレベルに差があります。評価は[++++]とします。奇跡の方はバランスの良い演奏ながら、生気と言うかエネルギーの面での期待とはちょっとギャップがあるところです。この辺は最初期の88番とか104番との差は大きいと思います。評価はこちらも[++++]とします。

さて、いわば晩年の演奏として、ある意味予想通りの演奏だったんですが、最初期の演奏のこれまでリリースされてきたアルバムとの差なども気になるところ。つづいて、その辺に切り込みます。

が、その前に食事です。

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ジャンル : 音楽

tag : 交響曲95番 奇跡

パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別-2

今日は昨日のつづきです。

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TOWER RECORDS

昨日の記事はこちらをご覧ください。

ハイドン音盤倉庫:パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別

1曲目にもどって、交響曲94番「驚愕」。

こちらはマールボロ音楽祭でのが1967年7月9日の録音。告別の8年後の録音です。1楽章は響きの本質は告別と変わらないものの、オケの精度と録音の鮮明さが段違いにアップ。冒頭からオケにエネルギーが満ちあふれてます。以前取り上げたシャーンドル・ヴェーグの演奏も素晴らしいエネルギー感でしたが、ベクトルがだいぶ違って、タイトさよりも筋骨隆々系。セピア調の写真でみる昔のボディービルダーのよう。返す返すこれが91歳の指揮者のコントロールする音楽というのが信じ難いもの。
2楽章のビックリメロディー。テンポは中庸で、落ち着いた入りですが、ビックリ部分のオケの響きの分厚いこと。その後の変奏は力感たっぷりに進めます。特に力強いのが低音弦。弦楽器のコントロールは基本的ににじみのないすべての奏者のボウイングが合っているような統率のとれたもの。流石カザルスと言う部分でしょう。
3楽章のメヌエット。こちらは告別とは異なり一般的な範囲のテンポで推進力抜群の展開。というかまたもエネルギーが飛び散ってます。力感一方ではなく中間部の抑えた部分の抑え具合も秀逸故、繰り返し部分の力感がまた引き立ちます。
フィナーレは期待通り、主題に入り再度オケの力感が大爆発。序奏のメロディーの浮き立たせ方が巧いのでオケの強奏に入った時の対比効果が抜群。力まかせではないんですね。最後はエネルギーの坩堝。万来の拍手に迎えられます。驚愕はまさに驚愕の演奏。

2曲目は交響曲95番。1曲目の驚愕の前日の1967年7月8日の録音ゆえ似た傾向の演奏かと思いきや、1楽章の入りはかなりの溜めのきついフレージング。ちょっとくどいかなと思う寸前の溜め。力感も前曲ゆずりゆえかなり濃い口の演出に聴こえます。
2楽章のアダージョは一転、穏やかな表情の演奏。前半はソフトタッチの演奏で、展開部に入ると若干オケのテンションが上がりますが、ふたたび穏やかな表情に戻ります。
3楽章のメヌエットはタイトなオケの魅力が少しずつ顔をのぞかせます。カザルス独特の素晴らしいエネルギー感が徐々に現れ、オケも牙をむき始めます。
95番最大の聴き所のフィナーレ。沸き上がるエネルギーが突き抜けるでしょうか。演奏自体は素晴らしいエネルギー感ですが、テープの老朽化からか、この楽章のみ音が少々歪みっぽく、音程もほんのちょっと不安定な印象がのこってしまうのが惜しいところ。中盤以降の吹き上がる部分の演奏は最高なんですが、音響上の傷が惜しいところ。最後は前曲同様万来の拍手に迎えられます。LP時代にはこの曲がリリースされていたのにCDでは今回初リリースとのことですが、その理由がなんとなく解るような気がします。

カザルスによる素晴らしいハイドンの演奏ですが、評価は驚愕は文句なしに[+++++]、95番は1楽章のくどさと終楽章の歪みを考慮すると[+++]というところでしょうか。

やはり驚愕と告別をセットにして売り出したくなる気持ちはよくわかります。ちょっとした欠点はあるものの、このアルバムの聴き所は人間が91歳にもなって奏でる音楽の信じられないほどのエネルギーにあると思います。バッハの無伴奏チェロソナタを再発見したり、ピカソとならぶスペインを代表する芸術家という立場にあったりする20世紀の偉人カザルスがハイドンの名曲に正面から取り組んだ素晴らしいアルバムであることは間違いないですね。

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フリッツ・ライナーの交響曲集

このところ交響曲に戻ってます。今日はクレンペラーの時計つながりでライナーの時計など。

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フリッツ・ライナー(Fritz Reiner)指揮のシカゴ交響楽団とフリッツ・ライナー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲88番、95番、101番「時計」の3曲。もともとはRCAが録ったものをTESTAMENTレーベルが再発したものでしょう。録音は88番のみがシカゴ交響楽団の演奏で、1960年2月6日、シカゴオーケストラホールでの録音。その他が1963年9月13、16、18、29日、ニューヨークのマンハッタンセンターでの録音。何れもセッション録音です。

フリッツ・ライナーは1888年12月19日ハンガリーのブダペストに生まれたユダヤ系の指揮者。このところ取り上げているクレンペラーやアンセルメと同世代ですが、クレンペラーより3つ下ということになります。この演奏のころは70歳代ですが、亡くなったのが1963年の11月15日ですので、95番と時計は亡くなる2ヶ月前の最晩年の録音ということになります。Wikipediaなどによればライナーは88番を録音した1960年に心臓発作で一度たおれており、その後95番と時計を録音した1963年にニューヨークのメトロポリタン歌劇場で「神々の黄昏」の公演準備中に亡くなったので、ハイドンの演奏はライナーにとって鬼門だったのかも知れませんね。

1曲目のシカゴ交響楽団との88番。入るや否や分厚いシカゴ響の素晴しい精度の音響! 流石魔術師ライナー、いきなり全力投球ですね。元の録音もいいのでしょうが、TESTAMENTの復刻した音響も素晴しい。とても1960年の録音とは思えません。若干デッドで低音が薄い感じがしますが、クッキリ感を際立たせる方向の調整だと思います。1楽章の弦の速いパッセージの充実ぶりは素晴しいものがあります。インテンポでザクザク切り込む感じですが、ライナーらしく流線型のスタイリッシュさも兼ね備えています。
2楽章のラルゴは一転、クッキリさをたもちながらゆったり感も十分な展開。途中から楔のようにはいる強音は迫力満点で楽章を引き締めます。後半の鳥の鳴き声のように入るオーボエ?をちょっと遅らせて鳴らすなどの粋な演出も効いて、なかなかの出来。
3楽章のメヌエットはあえて小節をきかせて舞曲のリズムの面白さを浮き彫りに。曲の本質を良くふまえた考えられたアプローチですね。太い筆なのに非常に繊細な輪郭を描いているところが常人とは異なるレベル。
フィナーレは、非常に優しく入る開始の部分が鳥肌が立つような秀逸な解釈。いきなり引き込まれます。クレッシェンドして勢いをましたり、引いたりの波のような緻密な演出。途中、フレーズの終わりを荒々しく強調したり、テンションを落としたり、ライナーによってハイドンの楽譜がなんと豊かな表情を魅せるのでしょう。素晴しいフィナーレですね。88番は群を抜いた出来です。

つづく95番。オケが変わってフリッツ・ライナー交響楽団。収録場所もニューヨークにかわり、音響は残響豊かなゆったりした響きになり、低音も豊かに。88番の鋼のようなテンションから、力のぬけた開放的な演奏に変わりました。冒頭からの流れはライナー流の流麗さを感じさせますが、前曲で見せた緻密なコントロールというよりは、手綱を少し緩めてオケに任せて鳴らしているという印象。テンポは若干遅めでオーソドックスな解釈ですが、1楽章の最後の1フレーズを極端にテンポを落として起承転結を鮮明に表現するようなアクセントをつけます。
2楽章のアンダンテ・カンタービレはかなり遅めのテンポ。柔らかいフレージングで進めますが、とはいってもライナーのコントロールは行き渡っていて、所々に閃きを感じるアクセントがつけられて、やはり普通の演奏とは違います。
3楽章のメヌエットは音を短く切ったような表現を基調に、レガートを強調したり、細かい表現の対比で聴かせる玄人向けの演奏。これは面白いですね。途中で入るピチカートに乗ったチェロのソロも聴かせ上手。分厚い強奏の魅力をたっぷり楽しめます。
フィナーレは88番と同様、力をぬいた爽やかな入りの演出が巧み。絶妙の入りですね。ハイドンもこれほど爽やかなフレージングを想像だにしなかったでしょう。意外と速くないテンポでじっくり複雑に入り組んだ楽譜を鮮明に描き出している感じです。最後はライナー流にテンポをぐっと落として終わります。

最後は時計。1楽章の序奏は遅めのテンポでじっくり描き出していきます。主題の提示以降は素晴しい覇気溢れるオケのショーケースのような展開。この曲本来の素晴しい構成感を3Dテレビで見るような見通しのよい演奏。オケの精度は88番の手兵シカゴ響には及びませんが、ライナーのコントロールによる構成感の表現は見事の一言。盛り上がりますね。
2楽章はかなりゆっくりとしたテンポの設定。時計という曲のモチーフからすると遅すぎるきらいはありますが、ライナーが表現しようとしたのはヴァイオリンによって奏でられる旋律のとびきりの美しさでしょう。途中からの展開部も遅めのテンポでじっくり描きます。
3楽章のメヌエット。これまでの2曲とくらべると演出は若干あっさりしたものと感じます。溜やコントラスト、アクセントをあしらって創意を尽くすというより、楽譜に忠実に演奏することを優先しているよう。このアルバムの中では最もポピュラーなハイドンの交響曲故、小細工無用との判断なんでしょうか。
フィナーレはライナー特有のデリケートにおさえた優しい入りですが、ほどなく3D映像のような見事な構成感が浮き彫りになります。アルプスの雄大な山脈を空撮で眺めるがごとき素晴しい気分になりますね。これがシカゴ響の覇気溢れる音響で聴けたら卒倒確実ですね! いやいや、素晴しいフィナーレです。

評価はもちろん3曲とも[+++++]。正直88番は[++++++]を進呈すべき出来だと思います。ライナー/シカゴ響の金字塔といっても過言ではないでしょう。クレンペラーやセルなど名実ともにハイドンの名演奏とされているアルバムと比べるとライナーのハイドンはあまり知名度がある訳ではありませんが、これは素晴しい演奏ですね。ブログで取り上げるときには背景や情報を調べた上で何度か聴いた上で記事にしますが、今回あらためて聴き直して、ライナーのハイドンの素晴しさを再発見。

さて、本日は台風が関東直撃コースで北東にコースをとるなか、これからサントリーホールにアーノンクールの天地創造を聴きに出かけます。室内のコンサートゆえ中止とはならないでしょうが、帰りの電車が止まらないか若干心配でもありますね。コンサートレポートは今夜か明日にでも記事にする予定です。

それから明日で10月も終わりですので、先月より始めたHaydn Disk of the Monthの2回目の選考もしなくてはなりません。今月はどの盤が栄光に輝きますでしょうか!

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古楽器新世代、弾む機知

昨日到着をおしらせしたミンコフスキのハイドン、まずははDisc1と2の前半6曲を聴いています。

ミンコフスキのハイドンの特徴はなんといってもこれまでの古楽器での演奏とは逆のベクトルの動的な曲想表現にあると思います。
傾向としては、コープマンやノリントンに近いのかもしれません。ただし、コープマンの動的な演奏には流麗というか美しく響かせようとする秩序を感じさせ、ノリントンの動的な部分の根底には奇抜な発想と既成概念の破壊のような意図を感じさせるのに対し、ミンコフスキの方は純粋に弾むエネルギーの表現を志向し、ハイドンの機知を即興性で表現しようとする方向性の違いがあります。

このような演奏スタイルがライヴで非常に評判がいいことにつながっているよのでしょう。実際、このアルバムでも、奇跡や95番のフィナーレの盛り上がりはなかなかの盛り上がり具合で、フィニッシュまでのスペクタクルが楽しめます。
逆に、アダージョ楽章は意外とあっさりとした表現で、もしかしたら、もうすこしゆったりと演奏することでハイドンの曲のメリハリをもう少し生かせるんじゃないかと思う部分もあります。

オケの音響は録音の影響もあるかもしれませんが、低音弦が強いようで、怒濤のごとく畳み掛けるような部分はブリュッヘンに近いかもしれません。

前半6曲での私のおすすめは、96番奇跡、95番、98番といったところでしょうか。
ネット等であまり評判のよろしくない、驚愕の2楽章びっくりの部分は、むしろ悪い印象はなく、許される遊びというような印象です。

明日は、後半6曲を。
こちらも話題のドラムロールは如何に!

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歌の人、テイト

今日はジェフリー・テイトのザロモンセットを。

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これまでノーマークだったテイトのハイドン。HMV ONLINEでポイントがたまっていたので、すかさずバラザロモンセットすべてとなる5枚を注文。在庫盤だったのであっという間に到着です。
今日はそのうち前半の2枚、6曲を紹介。

オケはイギリス室内管弦楽団。91年の録音で、録音はイギリスのアビーロードスタジオ。(以前クイケンのパリセットを紹介したときに触れましたね)

一聴して、現代オケの非常にオーソドックスな演奏ですが、一枚目の96番、98番ときいていくうちに、だんだんテイトの意図がわかってきました。テンポの揺らしはほとんどなく、コントラストもあえて押さえ気味、そして弦のフレージングを非常に丁寧に追い込んでいった暁に見えてきたのは歌です。小規模なオーケストラの演奏からハイドンのメロディーの美しさが浮かび上がっているではありませんか。
98番の各楽章のメロディーの美しいこと。これはこれで非常に完成度が高い演奏です。
そして93番、出だしのアダージョから惹き付けられます。

そして2枚目。94番驚愕、95番、97番とも、同様のいい出来。94番のフィナーレの折り目正しい爽快さ。97番も曲の面白さを満喫できます。

テイトはモーツアルトの交響曲集を聴いて、あまりにオーソドックスすぎて興味をもてずにいたため、長らく手を出さずにいたのですが、ハイドンは打って変わって、気に入りました。
小規模オケの良さを生かしたザロモンセットのおすすめ盤と言えるでしょう。
週末にシェルヘンのハイドンにどっぷりつかって、コンセプチュアルなアプローチに打ちのめされたあとの清涼剤のようなテイトのハイドンでした。

ちなみに、一緒にシェルヘンの未入手だった1953年の104番ロンドンのライヴ盤(TAHRA)も一緒に入手。こちらもライヴならではの迫力。懲りてません(笑)

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ブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへ

今日の一枚はブルーノ・ヴァイルのザロモンセットのライヴ録音集。

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HMV ONLINEicon

ブルーノ・ヴァイルはターフェルムジークという古楽器オケでハイドンのパリセットや疾風怒濤期の交響曲やミサ曲集などの録音があり、これらの録音はハイドンの古楽器による演奏で、私が最も好んで聴いている演奏です。
既に古楽器の演奏で幾多の演奏があるハイドンの交響曲ですが、演奏に生気があるという意味ではヴァイルが最右翼ではないかと思います。ピノックの演奏にも同様のエネルギーを感じますが、やや型にはまったところがあり、ブリュッヘンでは鬼気迫る分厚い音響の迫力を感じるものの生気と言うか生き生きとした感じが後退してしまってます。ホグウッドは典雅に傾き、グッドマンはコントラストをつけすぎて固さが目立ち、鈴木秀美は指揮者の過剰コントロールで生気が抜けてしまっているようにきこえてしまいます。
そう、わたしにはヴァイルがとてもバランスよくハイドンの曲を楽しめる演奏なんです。

以前、熱心に集め、よく聴いたヴァイルがザロモンセットの録音に突入していることは、このブログを始める頃まで気づいていませんでした。HMV ONLINEで見つけてようやく最近入手しました。
曲目はザロモンセットの作曲順?の最初の3曲である96番奇跡、95番、93番。2枚組で2枚目はヴァイルによるオケを使った演奏をともなった解説が含まれています。SACDハイブリッドです。

肝心の演奏は、期待が大きかった分、思ったよりおとなしいものと感じました。コンサートライヴの録音で、以前の録音より編成が大きい分スケールは大きくなりましたが、きびきびとしたタイトな感じよりは、かなり自然な節回し。オケも響きの反射音を楽しんでいるような演奏です。中では冒頭の奇跡がいちばん乗っている感じです。
2枚目の解説はドイツ語なので私もわかりませんが、この解説の所々に差し込まれる断片の演奏が、1枚目の演奏より生々しくて、意外と面白いです。

これから、ザロモンセットのこりの9曲がリリースされるのを楽しみに待ちましょう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲93番 交響曲95番 奇跡 ライヴ録音 SACD

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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