【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第3巻(ハイドン)

飯森範親と日本センチュリー交響楽団が取り組むハイドンマラソン。第3巻がリリースされました。

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飯森範親指揮の日本センチュリー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲96番「奇跡」、18番、99番、30番「アレルヤ」の4曲を収めたSACD。収録は99番とアレルヤが2015年11月20日、その他2曲が2016年2月26日、大阪のいずみほホールでのライヴ。レーベルは日本のEXTON。

ハイドンマラソンと名付けられた日本センチュリー交響楽団のいずみ定期演奏会の第3回、第4回のコンサートのライブ収録。ハイドンの全交響曲を演奏するというプロジェクトの壮大さと、アルバムにはどこにも全集を目指すと書かれていないスリリングさ(笑)から注目を集める本シリーズも、無事第3巻までリリースにこぎつけました。もちろん当ブログはこれまでの2巻同様注目のプロジェクトゆえ、重大な関心を持って取り上げます。

2017/07/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第2巻(ハイドン)
2016/11/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第1巻(ハイドン)

そしてもちろん、当ブログの読者の皆さんにとっても関心は高かろうということで、その出来が気になるところでしょう。前2巻については、記事に書いた通り、手放しで賞賛したわけではありません。第1巻ではライブらしくはありますが、かなり力みを感じる演奏もあり、第2巻では肝心の時計が若干一本調子な印象がありました。そして注目の第3巻ですが、ここにきて、飯森範親と日本センチュリー響の精緻なコントロールが素直に楽しめる演奏を揃えてきました。ライヴ収録という面と全集の記録という両面からのバランスが取れてきたと言っていいでしょうか。

Hob.I:96 Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
比較的残響をたっぷりと残した録音。会場ノイズは全くといっていいほど聴こえません。演奏の方は肩の力が抜けて、このコミカルな交響曲のメロディーをキレ良く演奏することを楽しむような余裕があります。適度な推進力に乗って小気味好く吹け上がるオケが心地良いですね。一糸乱れぬオケの精度もなかなかのもの。
続くアンダンテもキビキビとした歩みを重視した引き締まった演奏。キビキビしたところと少し手綱を緩めるところ、そして全奏部分の対比の面白さを上手くまとめてきます。ハイドンの面白さをしっかりと踏まえた見事な構成。
さり気なく堂々とした響きの迫力を聴かせるメヌエット。トリオのオーボエのソロの愉悦感溢れる演奏も見事。
そして、この曲の最大の聴きどころであるミラクルなフィナーレ。オケはここぞとばかりに前のめりで攻めに入りますが、均整を保ちながらのキレ味充分なクライマックスは素晴らしい出来。拍手が来ないのが不思議なくらい。

Hob.I:18 Symphony No.18 [G] (before 1766)
打って変わってハイドンのごく初期の交響曲。理知的というか冷静にリズムを刻む面白さを味わえと言われているような曲。ヴァイオリンのフレージングが活き活きとしていてリズムの面白さが際立ちます。この曲でも実にリラックスしての演奏だとすぐにわかります。指揮者も奏者もハイドンのユーモラスな曲の演奏を楽しんでいるよう。
快活な2楽章はやはりキレ味充分。ヴァイオリンパートの鮮やかなボウイングにホルンのタンギンングの鮮やかさがワクワクするような音楽のキレをもたらします。これは見事。
終楽章のメヌエットも鮮度の高いキレ味を聴かせます。短調の中間部の可憐な美しさが音楽に深みをもたらします。両端部の鮮度の高さとの組み合わせがこれも見事。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
とろけるような柔らかな音色を狙ってくる演奏が多い中、ざっくりとした響きをベースにオーボエが一際鮮やかに彩りを加える序奏。主題に入るとキビキビとしたリズムに乗って推進力は充分。非常に引き締まったいい響きに身をゆだねます。アクセントがしっかり効いているので立体感も見事な本格派の演奏。この曲をこれだけ引き締めた表現でまとめてくるとは思いませんでした。
美しいメロディーの宝庫たるアダージョでも感傷的になることなく、冷静にオーケストラをコントロールして音楽のフォルムの美しさを淡々と描いていきます。この楽章の穏やかな起伏を鮮明なライティングで見事な陰影をつけて描き切る匠の技。
メヌエットは俊敏なオケの反応を試すように吹き上がり、オケも俊敏な反応の聴かせどころとばかりに軽々と演奏。そしてフィナーレの最初はかなり抑えて入りますが、すぐに堂々としたピラミッドバランスのオケの迫力に圧倒されるようになります。最後にふっと力を抜いて余裕を見せて終わります。この曲も見事。

Hob.I:30 Symphony No.30 "Alleluja" 「アレルヤ」 [C] (1765)
最後に軽めの曲を持ってきました。18番同様、演奏するオケのメンバーがリラックスして弾いているのが良くわかる演奏。まさにハイドン初期の交響曲の見本のような愉悦感満点の楽しい指揮ぶり。美しいメロディーと美しい響きに包まれる幸せ。ここでも曲の美しさを信じて淡々とコントロールして、適度なメリハリと適度な起伏の面白さが充分に味わえる演奏に仕立てます。
中間楽章のアンダンテではキーになるメロディを即興的な装飾をちりばめながら繰り返していくことで実に楽しげな雰囲気を重ねていきます。終楽章は力をかなり抜いて流すように入りますが、次々と変化するメロディに合わせて表情を変える見事な技でまとめました。

飯森範親指揮の日本センチュリー交響楽団によるハイドンの交響曲集も第3巻になって、ようやく本領発揮といったところでしょう。やはりハイドンに力みは禁物。この巻に収録された4曲はどの曲もリラックスして曲の面白さを的確に捉えた名演奏。ハイドンの交響曲に仕込まれたユーモアや美しいメロディーをしっかりと拾ってイキイキと楽しくまとめ、しかもしっかりとメリハリがついたフォーマル感もある理想的な演奏と言っていいでしょう。これはこの先のリリースが楽しみになりましたね。評価は全曲[+++++]といたします。

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tag : 奇跡 交響曲18番 交響曲99番 アレルヤ

マリナー/アカデミー室内管の99番、102番(ハイドン)

今日は珍しいCD。

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サー・ネヴィル・マリナー(Sir Neville Marriner)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St Martin in the Fields)の演奏で、ハイドンの交響曲99番、102番の2曲を収めたアルバム。収録は1990年10月、ロンドンのウォルサムストウ・アッセンブリーホールでのセッション録音。レーベルはPHILIPS。

このアルバムは私も最近までその存在を知らなかったもの。マリナーはPHILIPSにハイドンの交響曲を大量に録音していますが、代表的なものあ名前付き交響曲集としてLPならびにCDでリリースされているものと、パリ交響曲集の6曲。ちなみに名前付き交響曲集は手元のCDを確認すると1968年から1981年までの録音。そしてパリセットの方は1976年から1982年にかけての録音。

ちなみにPHILIPSレーベルのハイドンの交響曲録音にはもちろんコリン・デイヴィスがコンセルトヘボウ管を振ったザロモンセットやパリセットもあり、そちらは1975年から1981年にかけての録音。さらに1986年以降90年代はブリュッヘンと18世紀オーケストラによる録音が本格化し、こちらもザロモンセットやパリセット、加えて初期の交響曲まで録音されている状況なんですね。

このようにPHILIPSレーベルではマリナー以降も2人の名指揮者によるハイドンの交響曲のまとまった録音シリーズが進行していた中、一旦一区切りついていたマリナーのシリーズに、1990年に99番と102番が録音されているという、ちょっといわくありげな状況なわけです。このような流れの中で名前のない99番と102番というザロモンセットでも指折りの傑作交響曲が録音されたということは、おそらく直前のコンサートで取り上げた演奏が評判になったので録音されたというのが最もありそうな流れですね。

ということで、このアルバム、まずは所有盤リストに登録するためにCDプレイヤーにかけてみると、いつものマリナーとは異なり、いきなり渾身の響きが流れ出してきます。しかもオケの響きはコンセルトヘボウよりも味わい深さ! もちろんすぐに演奏に惹きつけられたのは言うまでもありません。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
分厚くしなやかな序奏から惚れ惚れとする響きが広がります。まるでコンセルトヘボウでの録音のような響きの美しさ。しかも低音の厚みがあるピラミッドバランス! 主題に入るとここはマリナーらしい愉悦感が広がります。しなやかつ流麗なメロディーの美しさが最大限に活かされた演奏。徐々に力感も満ちてくると同時にイキイキとした推進力に満ち溢れます。ハイドンらしい古典の均衡を踏まえた見事な構成。展開部に差し掛かると曲想の変化をさらりとこなして、推進力はそのまま。このさりげないセンスもハイドンの演奏では非常に重要な要素。1楽章のあまりの完成度に驚きます。
続くアダージョはハイドンの美しいメロディーの見本帳のような楽章。ここでもさらりとした表情の中からジワリと湧き上がる暖かな音楽が絶品。オケの響きの美しさと録音の素晴らしさに圧倒されます。一貫して淀みなく流れる音楽。内声部が実に雄弁で何気に起伏がしっかりとついているので聴きごたえ充分。
メヌエットはオケの吹き上がりの良さを楽しむよう。パート間のバランスも音の溶け合いも完璧。これぞハイドンのメヌエット。トリオはそよ風が吹き抜けるように爽やかにこなし、再びオケが活躍してキレ味抜群な演奏で結びます。
ここまで完璧なオーケストラコントロールを聴かされると嫌が応にもフィナーレに期待が集まります。力むことなく実に軽快にオケがマリナーの指示に応えます。木管陣の軽やかさといったら並ではありません。終盤すっと力を抜くところのセンスも抜群。これぞ最上の演奏と言っていいでしょう。見事。

Hob.I:102 Symphony No.102 [B flat] (1794)
99番の出来の良さに惚れ惚れとしていたんですが、続く102番はそれを上回る素晴らしさ。力感の表現が図抜けています。冒頭から不気味な迫力に溢れ、序奏は見事な緊張感に包まれたまま進行します。徐々に力感を増していく件の素晴らしさは他に類を見ないほど。まさに白亜の大神殿が眼前に聳えているような迫力。1楽章だけでもこの曲の真髄をえぐるように押し寄せてきます。
この曲のアダージョも前曲同様美しいメロディーの宝庫です。表現の幅が広がり、奏者もリラックスしての演奏だけに、ゾーンに入って音楽に類希れな一体感が宿ります。メヌエットにも何かが宿ってこちらも類希れな迫力。あえて力を抜いて柔らかくまとめたトリオとの対比も見事。オケも絶好調。フィナーレはオケが指示を待つまでもなくどんどん展開しながらクライマックスに近づいていきます。低音弦の迫力に支えられながら、木管群が響きを乗せていき、最後までセンス良く遊び心を散りばめて終わります。

いやいや、これは素晴らしい。オーソドックスなハイドンの交響曲の演奏を極めた録音と言っていいでしょう。選曲も99番と102番と言うことで問題なし。もしかしたらマリナーは名前のないザロモンセットの録音をすることで、パリセットに続いてザロモンセットの完成を目指していたのかもしれません。このレベルの演奏が補完されればさぞかし素晴らしいザロモンセットが完成していたでしょうね。と言うことでこのアルバム、評価は両曲とも[+++++]を進呈です。未聴の方、是非聴いてみてください!

(参考:これまで取り上げたマリナーの演奏)
2012/10/26 : ハイドン–交響曲 : ネヴィル・マリナー/アカデミー室内管の「悲しみ」
2012/08/21 : ハイドン–交響曲 : マリナー/アカデミー室内管の86番
2011/08/10 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番1】マリナー/ドレスデン・シュターツカペレのネルソンミサ
2011/04/24 : ハイドン–協奏曲 : バリー・タックウェル/マリナーのホルン協奏曲
2011/03/03 : ハイドン–協奏曲 : ハーデンベルガー、マリナー/ASMFのトランペット協奏曲
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造-2
2011/02/27 : ハイドン–オラトリオ : フィッシャー=ディースカウフル登場、マリナー/ASMFの天地創造
2010/12/06 : ハイドン–声楽曲 : マリナー/ドレスデン・シュターツカペレの戦時のミサ

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tag : 交響曲99番 交響曲102番

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の99番、軍隊(ハイドン)

LPが続きます。

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ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy)指揮のフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)による、ハイドンの交響曲99番、100番「軍隊」を収めたLP。LPに収録情報は記載されておりませんが、ネットを調べると99番は1954年4月15日、軍隊は1953年12月23日の録音であるとのこと。レーベルはCOLUMBIA。

このLPは旅行前の昨年11月にオークションで落札したんですが、すぐに発送されたという連絡があったものの、1週間経っても到着せず、出品者に確認しても発送したとのこと。旅行から帰って郵送事故かと思って出品者とこちらで事故照会をしたところ年末ギリギリになって中継局で宛名が剥がれた状態で保管されているのが見つかり、年末にあらためて到着した次第。私は仕入れにオークションをよく使いますが、ゆうメールでの未着トラブルは初めて。照会すると見つかるあたり、日本の郵便も捨てたものではありませんね。なんとなく運命を感じたアルバムゆえ取り上げる次第。

オーマンディは若い頃はほとんど聴いたことがありませんでしたし、ハイドンを振る人という印象もありませんでしたが、いくつか録音があり、これまでに3度ほど取り上げています。

2013/06/03 : ハイドン–交響曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の時計旧盤
2012/05/24 : ハイドン–協奏曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管のトランペット協奏曲、協奏交響曲
2011/03/28 : ハイドン–交響曲 : オーマンディ/フィラデルフィア管の88番1958年モスクワライヴ

豪華絢爛ながらちょっと型にはまった印象のあるオーマンディですが、昔はそれゆえあまり興味を持たなかったものの、最近はハイドンの演奏には向いているのではないかと思うようになり、見かける度にアルバムを集めているといったところ。このアルバムも手元にない99番と軍隊ということでなんとなく良さそうな予感がしておりました。到着して調べてみると録音も上記の通り、1950年代とオーマンディ〜全盛期のもの。もちろん録音はモノラルということで、年末の大掃除でサブのプレーヤーをサブのラックの一番上にセットし直してモノラル専用の環境を作りましたので。いつものようにVPIのレコードクリーナーで綺麗にクリーニングして、モノラル用のプレーヤーに載せ、モノラルカートリッジの針を落とします。

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Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
古いアルバムゆえ若干のノイズが残りますが、オケの響きはキレキレで分厚いく瑞々しいもの。ヴァイオリンパートのクッキリとした隈取りはフィラデルフィアサウンドそのもの。重厚な序奏から一気にテンポを上げて軽快な主題に入ると素晴らしい推進力でグイグイとオケを煽っていきます。フレーズごとに明確にテンポと勢いに区切りをつけながらハイドンの書いたメロディーを次々に繰り出していく快感に浸れる演奏。1楽章は速めのテンポで一気にまとめます。
驚いたのがアダージョ楽章の味わい深さ。1楽章の物凄い勢いから一転、実に深い音楽が流れます。おそらく録音会場の外を走る車の音でしょうがわずかに低音のノイズが聴こえるのが微笑ましいところ。このアダージョは絶品です。
深いアダージョの音楽が終わり、メヌエットに入ると規律正しいオーマンディらしい抜群の安定感でオケが見事なアンサンブルを聴かせます。この精緻なメヌエットの演奏は鍛え抜かれたオケとの信頼関係があればこそ。名書家による達筆の楷書のようにどこから見てもバランスを崩さない均整のとれた音楽。ディティールもキレまくっていて冴え冴えとしています。
そしてフィナーレは完璧なるオーマンディのコントロールが行き渡りながら曲が進むにつれて徐々にエネルギーを帯びていきます。見事な起伏に赤熱する鉄の塊のようなエネルギーが加わり、終盤ふっと息を抜いてから、最後のクライマックスをキレキレで結びます。

Hob.I:100 Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
LPを裏返して軍隊です。なんと艶やかなヴァイオリンの響き! 全てのパートの音量がきちんとコントロールされ、まさにフィラデルフィアサウンド! すぐに先の爆発を予感させる響きが聴こえ迫力十分。この曲でも主題に入ると快速テンポに切り替わりオケが見事追随。フレーズの節々のアクセンとが実にキレよく響くので軍隊という曲が非常に軽快かつスペクタクルに鳴り響きます。重厚というより痛快な1楽章でした。
続くアンダンテはくっきりと表情をつけるオーマンディならではのキレの良い行進曲。もちろん迫力は十分ですが、音量ではなくキレで聴かせるアンダンテ。ここでも若干速めのテンポで見通しよくまとめる手腕は健在。箱庭的面白さを感じさせます。
前曲同様見事なのはこのメヌエット。実にくっきりとメヌエットの面白さを描いていき、アンダンテ同様迫力よりも見通しの良さにこだわっているようです。この余裕たっぷりの軽やかさは見事ですね。
そしてオケの機能美が堪能できるフィナーレですが、入りは軽めで徐々にエネルギーが宿り、特にキリリと締め上げるような要所のアクセントが効いてきます。軍隊にありがちな高揚感を煽るのではなく、引き締まりまくったオーケストラとパーカッションの乱打のキレで聴かせる見事なフィナーレでした。

オーマンディが亡くなったのは1985年。1980年に勇退するまで42年にわたりフィラデルフィア管の音楽監督を務め、後任をやはりくっきりとした響きを造るリッカルド・ムーティに譲るなど最後まで美学を貫いた人。たまたまとはいえ今年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートに久々に登壇したムーティの繰り出す優雅でキリリとした響きを聴いて、オーマンディのDNAを継いでいると感じたのは私だけでしょうか。このアルバムのハイドンもオーマンディの美学が貫かれています。特に99番は見事な演奏。先日Best Choice of Worksとしてザロモンセットの各曲のベスト盤として99番はパーヴォ・ベルグルンド盤を選びましたが、このアルバムを聴いていたらこちらを選んだでしょう。評価は両曲とも[+++++]とします。

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tag : 交響曲99番 軍隊

【ハイドン音盤倉庫特選】ザロモンセットの名演奏(後編)

前記事で突然始めた新企画。一部では「俗な企画」と核心をついた突っ込みをいただきましたが(笑)、乗りかかった船ということでとりあえず継続します。

2017/08/17 : Best Choice of Works : 【ハイドン音盤倉庫特選】ザロモンセットの名演奏(前編)

前記事を書くために色々なアルバムを掘り起こして短期間に聴き比べてみると、それはそれで意外な発見があるもの。ただし、どうしても比較して聴くようになってしまうため、聴き方が浅くなるような気がしなくもありません。普段のレビューではそのアルバムの背景を色々調べて奏者の気持ちになって聴いていますので演奏に深く触れているような気持ちになるんですね。ということで普段のレビューを続けながら、たまにこうした記事を書くのが良かろうということにしました。勢いに乗って、間をおかずハイドンの交響曲の最高峰であるザロモンセットの後編に突入です!



Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)

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2012/02/14 : ハイドン–交響曲 : 【追悼】パーヴォ・ベルグルンドのオックスフォード、99番

ハイドンが1791年から92年にかけて訪れたロンドンの旅行が大成功に終わり、再び2回目のロンドン旅行に出かける際、ロンドンでの演奏のためにウィーンで作曲した曲。ザロモンセットの中でも一際優美な曲として知られています。手元の56種の演奏から私が選んだのは、パーヴォ・ベルグルンド指揮のフィンランド室内管の1992年の演奏。ベルグルンドといえばシベリウスなんでしょうが、おそらく唯一だと思われるこのハイドンの録音は純粋無垢な透明感に満たされた素晴らしい演奏。99番の優美な演奏といえばモーゲンス・ヴェルディケ/ウィーン国立歌劇場管の燻し銀の演奏が最有力候補なんですが、このベルグルンド盤は純粋さを極めた透明感というか、凛とした美しさに包まれた隠れた名演奏。他にコリン・デイヴィスのコンセルトヘボウとロンドン響の新旧両盤、ハイティンクの振るコンセルトヘボウのLP、そして意外にファイのハイデルベルク交響楽団との演奏も素晴らしいんですが、ベルグルンドの演奏がそれらよりも心に響きました。


Hob.I:100 Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)

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2012/04/28 : ハイドン–交響曲 : モーゲンス・ヴェルディケ/ウィーン国立歌劇場管弦楽団の99番、「軍隊」

ハイドンの交響曲の中でも一際派手な演出を伴う曲。軍隊というニックネームは初演前からつけらていたようで、ロンドンでの初演を予告する新聞にも掲載されていたそう。手元には92種もの演奏があり、その中でもこの軍隊交響曲の迫力を最も理想的に表現した演奏は、モーゲンス・ヴェルディケがウィーン国立歌劇場管弦楽団を1956年に振った演奏。このアルバムに収められたザロモンセットの後半6曲はどれも素晴らしい演奏なんですが、中でもこの軍隊は見事。1楽章の序奏から力感に満ち、しかも1956年とは信じられない鮮明かつ優秀な録音により素晴らしい響きが味わえます。2楽章で打ち鳴らされるグランカッサの重低音がズドンと決まりながら音楽は流麗に流れ、力任せに過ぎない品位を保ちます。ジャケットに写る眼光鋭いヴェルディケのコントロールが行き渡って素晴らしい音楽に仕上がっています。オケも流石に絶妙な巧さ!


Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)

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2013/01/07 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルトの驚愕、軍隊、時計

ご存知チクタクでで有名な2楽章が広く知られた曲ですが、驚愕同様、2楽章のみならず全4楽章素晴らしい曲。特に1楽章の迫力に満ちた緊密な構成と美しい目眩くようなメロディーはハイドンの交響曲の白眉と言っていいもの。この迫力と美しさをバランスよく兼ね備えることが時計の演奏のポイントでしょう。手元には98種の録音がありヒストリカルな演奏から古楽器による演奏まで名盤目白押しですが、私が選んだのは知る人ぞ知る、カール・リステンパルトがザール室内管弦楽団を振った1966年の録音。見事に溶け合うオーケストラの響きでこの時計の1楽章をまるで夢の国のような美しい演奏に仕上げていきます。肝心の時計のアンダンテのリズムの軽やかさも最高。時計とはこう演奏するものだとの確信に満ちた王道をゆく演奏。そして覇気に満ちながらも味わい深いメヌエットに淀みないフィナーレとこの曲の理想的な演奏。古い演奏ですが録音も絶妙で少しも古さを感じさせません。時計の普遍的名演と言っていいでしょう。


Hob.I:102 Symphony No.102 [B flat] (1794)

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2010/04/04 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘンのザロモンセット

ザロモンセットも終盤。第2回ロンドン旅行の2年目である1795年のコンサートのために前年に書いた曲。ニックネームがついていないことから地味な存在ではあるが、曲の構成は円熟を極め、ハイドンの交響曲の最高傑作の一つ。特に2楽章のアダージョのメロディーの温かみのある美しさは素晴らしいもの。手元にある63種の演奏から私が選んだのはフランス・ブリュッヘンの振る18世紀オーケストラによる1991年のライヴ。ブリュッヘンのザロモンセットは古楽器オケらしからぬど迫力のライヴ中心で構成され、中でもこの102番は全編にみなぎる力感とブリュッヘンにしては流れの良さも併せ持つ秀演。メヌエットにブリュッヘンらしいゴリッとした響きでアクセントをつけてきますが、終楽章はしなやかにオケを響かせて響きのコントラストつけ、最後は湧き上がるように盛り上がる見事な演奏。古楽器でのハイドンの演奏の新境地を聴かせたブリュッヘンの面目躍如な演奏です。この曲にはギュンター・ヘルビッヒの振るドレスデンフィルの流れの美しさを極めた演奏もあり、そちらもこの曲の全く別の姿を印象的に描いています。


Hob.I:103 Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)

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2012/04/04 : ハイドン–交響曲 : ロヴロ・フォン・マタチッチ/ザグレブ・フィルの「太鼓連打」

冒頭のティンパニの独奏から太鼓連打の愛称で知られる曲。ハイドンの第2回のロンドン旅行の最後の年である1795年に作曲された曲。冒頭の太鼓も昔は遠雷のようにドロドロと鳴らすのが常でしたが最近はティンパニのカデンツァのごとき外連味たっぷりの演奏もあり、多彩です。手元の74種の演奏から私が最も好きな演奏は、日本でもお馴染み、ロヴロ・フォン・マタチッチの振るザグレブ・フィルの1979年10月29日のクロアチアの首都ザグレブでのライヴ。冒頭の太鼓のせいかこの曲には畳み掛けるような迫力ある演奏が目白押し。シャーンドル・ヴェーグがカメラータ・アカデミカ伴ってブダペストで行った1995年の感動的なライヴなど素晴らしい演奏がありますが、中でも一番のお気に入りがマタチッチ。全編にみなぎる力感とものすごい推進力。ハイドンのこの曲に込められたエネルギーを最も上手く引き出した演奏。どうもこの曲に込められたエネルギーを十分に発揮するには独墺系以外の指揮者の野性味が必要な気がします。


Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)

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2011/02/10 : ハイドン–交響曲 : カラヤン/ベルリンフィルのロンドン旧録

ハイドン最後の交響曲。ハイドンが2回目のロンドン旅行で行われた一連のコンサートのために最後に書いた総決算たる曲で、言うまでもなくハイドンの交響曲の最高傑作です。最後の作にふさわしく冒頭から壮大な曲想が続き堂々として覇気にあふれ、ハイドンの作曲技法の粋を尽くした見事な構成の曲。このハイドンの最高傑作の演奏には古典の曲としての壮大さの表現がポイントになります。手元の122種の演奏から今回色々聴き直して選んだのが、カラヤンの振るベルリンフィルとの1975年の今はなきEMIの録音。従来私はカラヤンでは1959年のウィーンフィルとのDECCA盤を推していたんですが、今回改めて聴き直すと、全盛期のベルリンフィルの特に弦楽陣の怒涛の迫力の素晴らしさに圧倒されました。カラヤンも大局的な視点でオケをコントロール。特にクライマックスの迫力はさすがにベルリンフィル。ベルリンのフィルハーモニーに響き渡る大音響と全盛期の帝王カラヤンの覇気は、最近の機知に富んだ古楽器の演奏や並み居る名指揮者の名演奏に勝りました。



突然始めた新企画ですが、これまで聴いたザロモンセットの名演奏を取っ替え引っ替え聴き直し、久しぶりに聴いた演奏も多く色々な発見もありました。自分でも意外でしたが、全12曲中古い演奏をかなり多く選んだことになりますね。選んだ演奏は、ハイドンの曲に込められた音楽をしっかりと汲み取った演奏で、やはり歴史の波を経て揉まれて来ただけに、それぞれ説得力のある演奏です。近年話題のファイもミンコフスキも結局選びませんでしたが、しっかり聴きなおした上での選択です。古楽器ではクイケンとブリュッヘンを選びましたが、どちらもハイドンの演奏に一石を投じたものだけに、それ以前の多くの名演奏を上回る説得力を持ったと言うことですね。前記事の冒頭に触れた通り、全ての盤が入手しやすいわけではありませんが、中古やオークションを探せば入手できないわけではありませんので、興味のある盤がある方はぜひ手に入れて楽しんでください。

夏休みの宿題的に時間をかけて記事を書きましたが、普段はこれほど時間をかけられませんので、しばらく通常のレビューに戻ることにいたします。

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tag : 交響曲99番 軍隊 時計 交響曲102番 太鼓連打 ロンドン

アルコ・バレーノによる室内楽版「時計」、99番、「ロンドン」(ハイドン)

またしても湖国JHさんから送り込まれた渋めのアルバムにハマりました。好みが枯れてきています(笑) 

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アルコ・バレーノ(Arco Baleno)による、ペーター・ザロモン(Peter Salomon)編曲の室内楽版の交響曲101番「時計」、99番、104番「ロンドン」の3曲を収めたアルバム。収録は2003年8月11日、12日、15日、ベルギーのブリュージュにある聖ジャイルズ教会(Sint-Gilliskerk)でのライヴ。レーベルは蘭ET'CETERA。

ペーター・ザロモンといえば、ハイドンをロンドンに招き、一連のザロモンコンサートを開催した興行主。ハイドンはこのコンサートのために交響曲93番から104番までの12曲の交響曲を作曲し、ロンドンで演奏したことはハイドン愛好家の皆さんならご存知のことと思います。もちろんこの12曲の交響曲がザロモン・セットと呼ばれるのもそのため。そのザロモンはハイドンと1795年、96年に6曲づつの契約を交わし、自分のコンサートで自由に演奏できる権利の他、編曲できる権利なども手に入れ、ロンドンでのハイドンの絶大な人気にあやかって、先の12曲の交響曲をフルート、フォルテピアノ、弦楽四重奏という構成の室内楽に編曲したものを出版し、一般の音楽愛好家に広く演奏されるようになったとのこと。

手元にはこのザロモン版の交響曲の録音が何種かありますが、いずれも元の雄大な交響曲のイメージの縮小版的演奏で、いまひとつ室内楽で演奏する魅力が伝わりきらないきらいがありましたが、このアルコ・バレーノの演奏は、編成が縮小されたことで音楽の純度が濃くなり、各フレーズ、メロディーがイキイキとして、これぞ室内楽の喜びといえるレベルまで研ぎ澄まされています。しかも耳が鋭敏になっている分、室内楽の範囲でのダイナミクスをフルに使ってフル編成のオケとは全く異なるスケール感を得ています。

奏者のアルコ・バレーノは1993年、フランドル地方の音楽大学出身者で結成された室内楽団。アルコ・バレーノとはイタリア語で虹の意。なぜかアルバムにもサイトにもメンバーの個人名は記されていません。個人ではなくアンサンブルとしての団結を大事にしているのでしょうか。

Arco Baleno

ライナーノーツに掲載された写真と、ウェブサイトに写っているメンバーは同じですが、その中のチェロのStefaan Craeynestが2014年9月に亡くなっているようです。

Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
聴き慣れた時計の序奏のメロディーですが、フルートと弦楽四重奏の純度の高い響きで、まるでオーケストラの音の型紙をとったように響きます。フォルテピアノが雅な響きを加えてオーケストラとは異なる彩。そして主題が始まった途端、様相が一変。オーケストラを上回る鮮やかな推進力で音楽が弾む弾む。この多彩な表情がアルコ・バレーノの演奏の魅力でしょう。室内楽版の編成の小ささを逆に生かして、室内楽的機敏なアンサンブルの魅力全開。1楽章の終盤に至る盛り上がりも音量ではなくアンサンブルの緊張感で表現する素晴らしいもの。一気に演奏に引き込まれます。
さらに素晴らしかったのが、続くアンダンテ。ヴァイオリンが奏でる時計のメロディーの実に艶やかなこと。弦楽器のピチカートが刻むリズムに乗って伸び伸びとヴァイオリンが歌います。途中から加わるフルートのキレの良いタンギングも最高。多彩な音色の変化にアクセントもキリリと効いて原曲以上の面白さ。演奏によってこれほどこの室内楽版が面白く響くとは。このアンダンテは絶品です。
ちょっとスケール感に欠ける印象を持つと思ったメヌエットも逆にキレの良さと鮮度の高い響きでまったくそんな印象を感じさせません。ハイドンが書いたもともとのメロディーの面白さがオーケストラよりもうまく表現できていて、こちらの方がいいくらい。もちろんアンサンブルのそれぞれのパートの息がピタリとあって音楽に統一感があります。指揮者のいないアンサンブルにありがちな平板さは微塵もなく、まるで一人がコントロールしているような音楽の完成度。
耳が慣れたのか、フィナーレは大迫力に聴こえます。畳み掛けるアンサンブル。そして終盤に向けて素晴らしいエネルギーの充実。あまりの素晴らしさに圧倒されます。迫力とは音量ではないと思い知ります。1楽章と終楽章の見事な構成感、アンダンテの楽興、メヌエットのエネルギーが完璧に表現されています。時計という曲の真髄を突く驚きの名演。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
好きな99番。冒頭の柔らかいハーモニーから完璧に響きます。すでにアルコ・バレーノの音楽に完全にハマっていますので、冒頭からこの99番の室内楽なのにゆったりとした流れにどっぷりつかります。フルートとフォルテピアノが実にいい響きを加えます。脳内ではオーケストラ版の雄大な序奏のイメージがチラつかなくもありませんが、研ぎ澄まされた響きにすぐに慣れます。そして主題以降は実に快活。この切り替えの鮮やかさも聴きどころ。各パートが鮮明に聴こえる分、音楽の面白さも倍増。1楽章のクライマックスに向けての盛り上がりもスリリングで、緩急による実にしっかりとした構成感の演出も出色。
美しいメロディーの宝庫のアダージョは、まさに至福の時間。オーケストラではないのに悠然とした大河の流れのようなうねりが感じられるのが素晴らしいところ。この室内楽版を演奏しながら、交響曲の素晴らしいメロディーを想像していた当時の音楽愛好家の気持ちが味わえます。
そして前曲同様小気味よくキレるメヌエットを経て、ハイドンの交響曲の最も特徴的なフィナーレの緊密な高揚感を実に巧みに演出していきます。交響曲の縮小版と感じさせないくっきりとした表情の魅力を保ち、グイグイ攻め込んで盛り上げていくあたりは流石。この99番も見事でした。

Hob.I:104 Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
そして、もともと雄大な曲想のロンドンですが、本当に耳が慣れてきたのか、この曲でも小編成なのに音楽にはスケール感が宿り、大迫力に聴こえます。オーケストラ版でも妙に力の入った演奏では逆に力みが耳につくように、スケール感、雄大さというものが力任せでは表現できないということの証のような演奏。室内楽版とはいえ耳に聴こえるダイナミックレンジはかなりのもの。抑えた表現の巧みさが迫力のポイントですね。
続くアンダンテは、前2曲の美しさの限りを尽くした楽章とは少し構成が異なり、1楽章の興奮の箸休め的な印象をうまく表現して、ある意味淡々とした音楽にしています。中間部の盛り上がりで聴かせたあとは、再び淡々とした音楽に戻ります。
そしてメヌエットはこの曲独特の陶酔感のようなものを聴きどころに置いてきました。
最後の雄大なフィナーレは、速めのテンポでクライマックスに至る過程をくっきりと描きながら、あらん限りの緩急、ダイナミクスを駆使して盛り上げます。最後の陶酔の限りを尽くした曲想の盛り上がりは不思議とオーケストラよりもキレの良さを感じさせるほど。最後に万雷の拍手に迎えられて、ライヴ収録であったことを思い出したほど。素晴らしい演奏でした。

今まで室内楽版のザロモンセットというと、ちょっと際物扱いしていたのが正直なところですが、このアルコ・バレーノ盤を聴いて、これは室内楽愛好家には宝物のようなものであるとようやくわかりました。小さな編成でもこれだけの迫力、音楽の魅力が表現でき、大編成のオーケストラにも勝るとも劣らない魅力をもつことができるということを再認識いたしました。まるで、クラヴィコードの魅力を知った時のような衝撃を受けた次第。もちろん全曲[+++++]とします。

アルコ・バレーノの交響曲の演奏にはもう一枚のアルバムがあり、こちらも早速注文を入れました。毎度湖国JHさんの送り込まれるアルバムには脱帽です。

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tag : 時計 ロンドン 交響曲99番

ヨーゼフ・クリップス/ウィーンフィルの驚愕、99番(ハイドン)

温故知新。

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ヨーゼフ・クリップス(Josef Krips)指揮のウィーンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、交響曲99番、ロンドン交響楽団の演奏で交響曲92番「オックスフォード」、104番「ロンドン」などを収めたアルバム。今日はこの中からウィーンフィルとの驚愕と99番を取り上げます。この2曲の収録は1957年9月、ウィーンのソフィエン・ザールでのセッション録音。レーベルは豪DECCAのELOQUENCE。

実はこのアルバム、ごく最近手に入れたもの。巷では有名なアルバムのようですが、手元にないと気づいていなかったもの。アルバム自体には他にロンドン交響楽団とのオックスフォード、ロンドンも収録されていますが、録音が荒く聴き劣りするため、ウィーンフィルとの2曲のみ取り上げる次第です。

ヨーゼフ・クリップスは知らない人はいないでしょう。1904年ウィーンに生まれたオーストリアの指揮者。Wikipediaなどによれば、フェリックス・ワインガルトナーの助手、合唱指揮者として、ウィーン・フォルクスオーパーで働くようになります。その後ドルトムント市立劇場、カールスルーエ歌劇場などを経て、1933年、ウィーン国立歌劇場の常任指揮者に就任し、1938年のドイツによるオーストリア併合によりオーストリアを去ることになりますが、戦後は再びウィーンでDECCAに数々の名録音を残しました。1950年から1954年、ロンドン交響楽団の首席指揮者を務め、その後渡米しバッファロー・フィルハーモニー管弦楽団、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督を務めます。1963年にコヴェント・ガーデン王立歌劇場、1966年にメトロポリタン歌劇場にそれぞれデビュー。1968年初来日。1970年、ベルリン・ドイツ・オペラの指揮者に就任、同年から1973年までの間ウィーン交響楽団の首席指揮者を務めるなど華々しいキャリアを歩みます。1974年、スイスのジュネーブで亡くなっています。

手元にあるクリップスのアルバムはハイドンではロイヤルフィルとのロンドンが2種、今日取り上げるウィーンフィルとの驚愕も廉価盤が手元にあります。他にはコンセルトヘボウとのモーツァルトの交響曲21番から41番のボックスと、お菓子の缶のような造りのロンドン交響楽団とのベートーヴェンの交響曲全集。何も引き締まった彫刻的な演奏が印象的でした。これらの演奏を思い出しながらハイドンの交響曲を聴きますが、いやいや、これは素晴らしい!

Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
若干古さを感じさせるものの、響きは全盛期のウィーンフィルの魅力満点。彫りの深い弦楽器の響き。分厚い低音弦。速めのテンポでグイグイ攻めてきます。DECCAらしい実体感ある録音。驚愕の1楽章が筋骨隆々に引き締まって素晴らしい緊張感。メガネのおじさんの棒から魔法のように繰り出される素晴らしい音楽。これぞ正統派のハイドンです。完璧なプロポーションの古流の生花を見るよう。
2楽章のビックリもこけ脅しなしの純音楽的に緊密な構成。リズムとダイナミクスの饗宴。そしてどことなくウィーンの香りが漂う高雅な演奏。変奏が進むにつれてタイトに引き締まったオーケストラの魅力が炸裂。金管、木管陣は意外にあっさりしていますが、弦楽器の分厚い響きが逆に際立って、これも見識と納得。演歌を持ち歌の本人が歌った時だけに感じるハマり感と同様、このハイドン、クリップスの振るウィーンフィルがオリジナルと思わせるなみなみならぬ説得力があります。
メヌエットも同様。なんでしょう、この有無をも言わせぬ完璧な演奏は。曲があるべき響きに完全にハマってます。自然なのに深い。深いのに自然。音楽にまったく古さを感じません。
フィナーレはことさらキレを強調せず、リズムをしっかり刻んでバランスの良い感興。ハイドンが古典派の作曲家であることを誰よりも理解するウィーンフィルならではの、あえて八分の力でのフィナーレというところでしょう。あまりに見事な演奏にしばしうっとり。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
驚いたのははじめて聴くこちらの99番。いやいやこれほど彫りの深い演奏とは思いませんでした。おおらかな曲調のこの曲が、彫刻的におおらか! 前曲と同じ時期の録音ですが、こちらのほうが一歩踏み込んでます。ウィーンフィル特有の深い響きの色は変わらず、バランスの良さも前曲同様ですが、陰影のグラデーションのやわらかながらクッキリとしたコントラストが見事。速めのテンポでの見通しの良さもあり、99番の魅力があらためてよくわかります。やさしくコミカルな曲調の本質を捉えた名演奏でしょう。
美しいメロディーの宝庫の2楽章。木管楽器の独特の鄙びたような音色がいい雰囲気。弦楽器の繰り出す幾重もの大波にゆられる快感。時折ホールに響き渡るチェロのメロディーはウィーンフィルならでは。これはオリジナルのLPで聴いてみたいですね。
雰囲気をさっと変えるようなメヌエット。あえて軽く、さらりとこなします。そしてフィナーレは驚愕の1楽章同様、引き締まったオーケストラの魅力を再び見せつけます。迫力もそこそこありますが、センスで聴かせる大人の技。それでも徐々にクライマックスにもっていく推移の巧さはかなりのもの。終盤に力を緩めるところも実に見事。これぞウィーンフィルのハイドンという見本のような見事なコントロールでした。

ヨーゼフ・クリップスの振るウィーンフィルによる驚愕と99番。今更ながら、あまりに見事な演奏に打たれました。ウィーンフィルによるハイドンの録音は実は多くなく、有名どころではカラヤンによる、ロンドンと太鼓連打などがありますが、クリップスによるこの録音は最もウィーンフィルらしい、古き良き時代を感じる演奏と言えるでしょう。ただし、意外にも古い感じはせず、この演奏が普遍的な魅力をもっていることがわかります。録音もDECCAらしい重厚なもの。古楽器の演奏や新たな解釈による演奏も手にはいる今においても、魅力を失わない素晴らしいアルバムですね。評価はもちろん2曲とも[+++++]とします。

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tag : 驚愕 交響曲99番 ヒストリカル

【新着】コリン・デイヴィス/LSOのライヴ交響曲集(ハイドン)

久々に交響曲の新着アルバム。待望のアルバムですね。

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サー・コリン・デイヴィス(Sir Colin Davis)指揮のロンドン交響楽団の演奏によるハイドンの交響曲92番「オックスフォード」、93番、97番、98番、99番の演奏を収めたアルバム。収録は2010年から11年にかけて、ロンドンのバービカンセンターでのライヴ。収録日は各曲のレビューに記載しましょう。レーベルはご存知LSOの自主制作LSO Live。

コリン・デイヴィスはアムステルダム・コンセルトヘボウ管とザロモンセットなどをPHILIPSに録音したアルバムが有名ですが、CD化されたPHILIPS盤は音質が往時のLPのキレの良い響きの魅力まで届かず、私はLPの方を愛聴しています。コリン・デイヴィスのアルバムはいままで結構取りあげているんですね。

2013/04/21 : ハイドン以外のレビュー : 【番外】コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウの「春の祭典」
2013/04/19 : ハイドン–交響曲 : 【追悼】コリン・デイヴィスの88番、99番
2011/10/28 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/バイエルン放送響の「ロンドン」ライヴ
2011/08/19 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の熊、雌鶏
2011/08/13 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番3】コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団のネルソンミサ
2011/06/16 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-2
2011/06/14 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-1
2010/07/17 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィスの時計ライブ

なんと、コリン・デイヴィスの略歴を今まで紹介してきませんでしたので、このアルバムを聴きながら、ちょっと調べてみました。生まれは1927年、イングランドのロンドンの南のサリー州のウェーブリッジ(Weybridge)。貧しい家だったようでピアノを買う事ができず、最初は安価に入手できたクラリネットを学びはじめ、ロンドンの王立音楽大学にすすみます。どうもあまりピアノが上手くなかったようで、指揮者になりたいと思う一方、大学では指揮を学ぶ事ができなかったそう。また一時兵役につき、近衛騎兵連隊のクラリネット奏者として働いていました。ウィンザーに駐留中、ビーチャムやブルーノ・ワルターのコンサートを何度も聴く機会に恵まれ、兵役を終えると、王立音楽大学のかつての生徒を集めてカルマー管弦楽団を立ち上げフリーランスで指揮活動をしていました。クラリネット奏者として働く一方、指揮者としての最初のチャンスは設立されたばかりのチェルシー歌劇場で「ドン・ジョヴァンニ」を振り、すぐにバレエ団の指揮者に就任しますが、3ヶ月で倒産してしまいました。ようやく1957年にBBCスコテッシュ管の副指揮者となり活躍し始めます。転機は1959年、ロイヤル・フェスティヴァル・ホールで体調不良のクレンペラーに代わってドン・ジョヴァンニを振り、これが評判を呼んで有名になりました。また翌年にはグラインドボーンで今度はビーチャムの代役で「魔笛」を振りこれも成功。以後はサドラーズ・ウェルズ・オペラ、ロンドン交響楽団、BBC交響楽団などで活躍しました。1971年からはショルティの後任として、コヴェント・ガーデン王立歌劇場の首席指揮者に就任。その他、ボストン交響楽団の首席客演指揮者、バイエルン放送交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団名誉指揮者、そして1995年にこのアルバムのオケであるロンドン交響楽団首席指揮者に就任。オケの自主制作レーベルであるLSO Liveからはかなりの数のアルバムがリリースされています。とくにティペット、シベリウス、ベルリオーズを得意としている人という印象。亡くなったのは昨年の2013年の4月、85歳ということでした。

ということで、このアルバムはデイヴィスが80歳を超えた最晩年の貴重なライヴ。ザロモンセットが揃わないのが惜しいところですが、選曲も実に渋いところを突いています。特に、97、98、99番を取り上げるところなど、ハイドンの真髄はここにありと言わんばかりの渋さ。

聴くとすべての邪心を捨て、虚心坦懐にオケを鳴らすまさに燻し銀のハイドン。もともとアポロン的構築感と中庸の美学を重んずるハイドンを聴かせていただけに、最晩年に至って、力が抜け、オケに身を任せながらハイドンの交響曲の面白さを描ききる素晴しい演奏です。録音もSACDらしい自然なリアリティに富んだ素晴しいもの。いや、以前聴いた天地創造がちょっと期待と異なる演奏だっただけに、これほどの演奏とは思いませんでした。曲ごとに聴き所を書いておきましょう。

Hob.I:92 / Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
2011年10月2日、4日のライヴ。バービカンセンターに轟くオケの分厚い響きが痛快。音量を上げて聴くと、部屋がバービカンセンターになったような素晴しい迫力。会場のノイズや咳払い、拍手はカットされていますが、リアリティは失われていません。スピーカーから等身大のオケが吹き出してくるよう。デイヴィスのコントロールは極めてオーソドックス。奇を衒うようなところは皆無。1楽章は分厚いオケに圧倒されます。
アダージョに入っても大河の流れのように、滔々とした音楽の流れが印象的。時折デイヴィスの声らしき鼻声がうっすらと聴こえます。すこし穏やかになったと思いきや、中間部でオケが炸裂。またしてもオケの風圧を感じるような図太い響き。終盤になるに従って音が溶け合うようになり、長い間と木管の掛け合いの美しい響きにとろけそう。
メヌエットは予想どおり、グイグイとオケの迫力で聴かせます。楽章間のバランスのよい構成はデイヴィスなならでは。そして聴き所のフィナーレの入りは軽やか、すぐに怒濤のオケに飲み込まれます。オケのスロットルのコントロールが見事。フルオーケストラの分厚い響きと軽やかなヴァイオリンの音階を自在に切り替えながら、ハイドンの名旋律を落ち着いて聴かせます。リズム感の良さは流石デイヴィス。演奏スタイルどうこうを全く意識させない、正統派の堂々としたハイドンの名演奏。

Hob.I:93 / Symphony No.93 [D] (1791)
2011年12月11日、13日のライヴ。前曲とは別の日ですが、音響は非常に良くそろっています。分厚いLSOの響きはそのまま。威風堂々とした序奏にたじろぎます。主題に入ってもあまりに素晴しいオケの響きにのけぞらんばかり。正統派の演奏の魅力にただただ立ちすくみます。93番がこれほど力感に満ちて響くとは。キレは適度ながら、推進力とリズムの正確さは素晴しいものがあります。1楽章は均整のとれたギリシャ彫刻のごとく圧倒的な存在感。
ラルゴは独特の情感を醸し出しながら、やはりオケの迫力の素晴しさで聴かせます。抑えた表現のところでもそのうちオケの響きに飲み込まれる予感が緊張をはらみます。
メヌエットは畳み掛けるよう。次々と響きの波が襲いかかり、手に汗握る展開。そしてフィナーレは少し推進力をおとしてじっくりと攻める感じで入り、ところどころリズムに力が漲って、最後の盛り上がりへ向けてオケが空ぶかしで煽ります。最後は冷静に盛り上がってフィニッシュ。

Hob.I:97 / Symphony No.97 [C] (1792)
2010年5月6日、9日とこのアルバムでは一番古い日付。好きな97番。デイヴィスのこの演奏スタイルで聴かされるとあって、聴く前から身構えます。デイヴィスは1楽章の機知にあふれた曲想を相変わらず大局的な視点でグイグイ音にして行きます。前2曲にくらべて少し枯れて聴こえはするものの、オケの迫力は相変わらず。人間80歳を越えてこのような迫力に溢れた音楽を生み出せることに驚きます。アダージョ、メヌエットは前2曲同様、オケの迫力をベースにした上での自然な表現。フィナーレも最後に間をしっかりとってハイドンの仕込んだユーモアをきっちり描いて終わります。いやいや見事。

CDを入れ替えて2枚目。

Hob.I:98 / Symphony No.98 [B flat] (1792)
2011年12月4日、6日のライヴ。冒頭から力漲るサウンド。やはり前曲でちょっと枯れた印象があったのは録音の期日が古かったからでしょうか。この曲では響きは鮮明、デイヴィスのコントロールは手綱のテンションが少し下がって、オケに身を任せているようです。刻むリズムの迫力に徐々に打たれて行きます。コントロールはしなやかさを増し、実に柔らかい響きを造っています。このアルバムでもっとも自然体な演奏スタイル。1楽章終盤はすこしリズムが重く感じました。
アダージョははじめてぐっと沈み込みます。これまで中庸なリズムと大河のような流れの一貫性で聴かせてきたデイヴィスですが、この曲のアダージョに至って情が深くなり、音楽に陰りが見えまず。ほんの少しの違いですが、すこし感情移入の方にに振れてきました。
メヌエットに入っても力の抜け具合はいい感じ。フィナーレは意外に朴訥な感じで入ります。最後に鍵盤がコミカルに加わるイメージがあるので、そこここにその前振りがあり、このころの交響曲でも独特のユーモラスな曲調。デイヴィスも力が抜けてゆったりとコントロールしているよう。最後はリズムを強調して、珍しく誇張した表現。金管が一音とちりますが、気にせず終了。

Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
2011年5月28日、6月2日のライヴ。1楽章はこのアルバムでも一番踏み込んだ演奏。穏やかかに聴かせる演奏が多い曲ですが、リズムが活き活きとして快活。デイヴィスの棒が冴えているのがわかります。穏やかな曲なのに素晴しい高揚感と引き締まった響きにぐっと来ます。
アダージョに入るとオケの奏者のソロが絶妙なキレを聴かせ、絡み合うメロディーの綾に魅せられます。時折大波のように押し寄せる弦楽器の艶やかなこと。絶品。デイヴィスも唸ってます。中間部の展開の迫力はこのアルバム共通。
メヌエットはやはりスロットルコントロールによってオケが自在に吹き上がる快感に溢れたもの。ティンパニのリズムが冴え、ホールの空気を自在に揺らしている感じ。最後はかなり溜めてフィナーレの入りを引き立てます。
フィナーレはアルバムの最後にふさわしく神々しいばかりに堂々とした演奏。途中のコミカルなフレーズは抑え気味でオケの迫力を際立たせるのでしょうか。正統派のオケの魅力を振りまくような素晴しい迫力。最後は本当に怒濤の迫力で締めます。バービカンセンターに本当は鳴り響いたであろう拍手がカットされているのが惜しいところ。素晴しい演奏でした。

コリン・デイヴィスの亡くなる2年前の最晩年に手兵ロンドン交響楽団を振ったハイドンの交響曲5曲を収めたアルバム。夕暮れのビッグベンを写したジャケットの写真といい、ホールの雰囲気をそのまま伝える鮮明な録音といい、そしてライヴらしい活きた音楽の流れといい、ハイドンを聴くには絶好のアルバム。コリン・デイヴィスと言う人の生き様を音にしたような、素晴しいライヴでした。人は80歳を越えて、これほど純粋無垢な音楽を奏でられるものなのでしょうか。特に99番は絶品。フィナーレこそ岩のような堅牢さを聴かせたものの、デイヴィスが踏み込むようすがよくわかる演奏。そして冒頭のオックスフォード、93番も名演です。期待した97番、98番は他の3曲の素晴しさと比べるとちょっと差がついてしまうというのが正直なところ。オックスフォード、93番、99番を[+++++]、他2曲は[++++]ということにしておきましょう。

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ハイティンク/コンセルトヘボウ管の奇跡、99番(ハイドン)

先日ディスクユニオンで見つけたLPです。

Haitink9699.jpg

ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲96番「奇跡」、99番の2曲を収めたLP。収録年代は記載されておりませんが、ネットを調べてみると1967年にプレスされたものとの情報がありました。レーベルはPHILIPS。

このLP、PHILIPSのデラックス・シリーズと名付けられたシリーズ物の一枚のようです。ジャケットには、なぜか源氏物語絵巻から飛び出してきたような十二単の女性の姿が。ERATOのBONSAIシリーズの対抗馬のようなキッチュなシリーズです。ジャケットには一部カビが見られるコンディションでしたが、盤面はそこそこ綺麗なので手に入れた次第。帰って愛機THORENSのプレイヤーにのせ、針を落とすと、瑞々しい響きが吹き出しました。コンセルトヘボウでのPHILIPSの空気感溢れる素晴しい響きに圧倒されます。若きハイティンクの覇気も噴出。これはいいです。

つい先日もハイティンクのCD-Rを取りあげましたが、ハイティンクのハイドンは気になります。オケをキリリと引き締め、タイトな響きを引き出すハイティンクの演奏は、ハイドンのちょっと武骨なところをそのまま音楽にするようで、ハイドンの交響曲の本質の一面を突く演奏といえるでしょう。

ということで、これまで取りあげたハイティンクの演奏の一覧はこちら。ハイティンクの略歴などは、クリーヴランド管との記事をご覧ください。

2014/01/20 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)
2011/07/21 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ベルリンフィルの95番ライヴ
2011/06/28 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!
2011/05/12 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ

今回取りあげるのは、まさにハイティンクが長年首席指揮者を務めた、アムステルダム・コンセルトヘボウ管との録音。しかもご本家、PHILIPSによる録音ということで、これまで取りあげたCD-Rなどとは期待度が異なります。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
ゆったりと響きわたるオーケストラの序奏。PHILIPS独特の鮮明な響きがスピーカーから溢れ出します。主題に入るとシフトチェンジ。小気味好いほどに軽々としたフレージングでこの曲独特のコミカルなメロディーが進みます。アバドほどの突き抜けた爽快感はないのですが、堅実な響きはハイティンクならでは。ハイティンクのアクセルワークに鮮やかに応じるオケの機能美は素晴しいものがあります。流石コンセルトヘボウといったところ。
アンダンテは、そのままテンポを落として、平常心の演奏。ハイティンク自身がゆったりと響きオケの響きを楽しんでいるよう。素朴な音楽の魅力に溢れた楽章。つづくメヌエットも適度な筋肉美を見せ、あっさりとした表情にとどめるところにハイティンクの美点があるよう。中間部のオーボエのソロの響きの美しいこと。ソロの美しさと続くオケの分厚い響きの対比をそれとなく目立たせる巧みな演出。
この曲のハイライトのフィナーレは、入りの軽さでまたまた演出の上手さが光ります。ステレオ録音ゆえ、フィナーレの左右の掛け合いの効果も見事。オケは流石コンセルトヘボウという素晴しいキレ味。交響曲の醍醐味を十分に表現して終わります。ハイティンクの後年の重厚さよりも、この頃のほうが閃きがあるような気がします。

Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
LPを裏返して、ハイティンクの至芸に相応しい穏やかな曲調の99番。予想どうりの分厚いコンセルトヘボウの響きに冒頭からうっとり。少しスクラッチノイズがありますが、気になるほどではありません。穏やかな流れに徐々にキリリと引き締まるようなメロディーが浮かび上がり、グイグイ推進していきます。ヴァイオリンパートがキレキレ。筋肉質な音楽の魅力が炸裂します。
意外に良いのがこのアダージョ。各楽器の響きが微妙に溶け合いながら掛け合う様子が実に巧みに描かれていきます。ハイティンクのアダージョがここまで深い情感をはらむとは思ってませんでした。穏やかな音楽なのに素晴しい立体感。広大な大草原を鮮明な3D映像で見るよう。遠くの草が風でそよぐわずかな変化が手に取るようにわかります。素晴しい録音によって音楽が鮮明に迫ります。これは名演でしょう。
メヌエットはアムステルダムコンセルトヘボウのホールに響きわたるオケの余韻の美しさに惚れ惚れします。ここでも節度あるハイティンクのコントロールは見事。
フィナーレは奇跡のコミカルさとはことなり、じっくりと燻したような味わいの深いもの。ゆったりと深い間をとり音楽をつないで、ここでもオケの各楽器を鮮明にじっくりと鳴らし分けて素晴しい感興をつくっていきます。実に味わい深い演奏でした。

ハイティンクと手兵アムステルダムコンセルトヘボウ管によるハイドンのザロモンセットからの2曲。ハイティンク38歳という若さでの演奏ですが、オケを完全にコントロールして、ハイドンの素朴な音楽を、ハイティンクらしく節度あるコントロールで、コンセルトヘボウのホールの空気を鳴らすように淡々と描いていく演奏。これまで聴いたハイティンクのハイドンの中では間違いなく最上のもの。若きハイティンクの才能の素晴しさを伝えるアルバムでした。評価はもちろん[+++++]とします。

この演奏、記事を書き終えてから確認してみるとmichaelさんのブログでも取りあげられていますね。リンクしておきましょう。

Micha Lute ブログⅡ:B.ハイティンク:ハイドン交響曲第96番、99番

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tag : 奇跡 交響曲99番 LP

【新着】ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの交響曲99番、時計、軍隊(ハイドン)

知らぬ間に第3弾がリリースされていたようです。このシリーズ、なかなか粋なジャケットデザインです。

Weil99_100_101.jpg
amazon / TOWER RECORDS

ブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil)指揮のカペラ・コロニエンシス(Cappella Coloniensis)の演奏で、ハイドンの交響曲99番、101番「時計」、100番「軍隊」の3曲を収めたSACD。収録は2012年9月29日、2013年2月16日の両日、ドイツ、エッセンにあるエッセン・フィルハーモニーのアルフレッド・クルップホールでのライヴ。レーベルは独Ars Production。

ヴァイルのハイドンはトーマス・ファイなどと同様、かなりの回数取りあげています。

2013/05/09 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ヴァイル/ターフェルムジークの86番
2012/08/11 : ハイドン–管弦楽曲 : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」
2012/01/24 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイル/カペラ・コロニエンシスの四季
2011/08/14 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番4】ブルーノ・ヴァイルのテレジアミサ、ネルソンミサ
2011/01/10 : ハイドン–オラトリオ : ブルーノ・ヴァイルの天地創造
2010/12/25 : ハイドン–交響曲 : 【年末企画】ブルーノ・ヴァイルの交響曲50番、64番、65番
2010/03/08 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへ

いろいろ書いているとおり、最近のカペラ・コロニエンシスとの演奏は、昔の溌剌としたヴァイルの良さから、かなり落ち着いてきていますので、好みも別れる所でしょう。このアルバム、久しぶりのヴァイルの新譜と言う事で何となく気になっていました。

Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
予想通り、さっぱりと速めのテンポで入ります。先日ファイの新譜を聴いたばかりですが、ヴァイルも新参者ファイに負けてはおれぬとの気合いの入った演奏。ファイよりも変化は少なめですが、キビキビとしたオケの魅力はターフェル・ムジークとの時代を彷彿とさせるもの。一時落ち着いてしまったと思ったんですが、ヴァイルのキビキビとタイトな演奏の魅力は健在でした。中盤以降は素晴しい推進力で畳み掛ける迫力に溢れたもの。ライヴですが会場ノイズは皆無で音響処理をしているのでしょう。
アダージョはゆったりと盛り上がる魅力に溢れた曲ですが、ヴァイルのアプローチは古楽器的な音色を活かしたさっぱりとした感興で聴かせるもの。途中さらりとフルートの音色の透明感が際立つ部分が印象的。ジャケット写真を見ると管楽器は古楽器ですね。メヌエットはキビキビとしたオーケストラコントロールで聴かせます。
期待のフィナーレはファイが千変万化する表情の変化で聴かせたものを、ヴァイルはオーソドックスながら、各楽器の面白い響きを重ねて油彩で色を置いていくような練りをを感じるもの。途中テンポを落としたところのカジュアルな表現など、ハイドンの面白さを知り尽くした人ならではの工夫があります。分厚いオケに奏者の息づかいを感じるような各楽器の面白い響き。なかなかいい99番です。拍手はカットされています。

Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
時計も序奏は速目でさっぱりとしたもの。やはり主題に入るとがっちりとしたオケによる推進力溢れる演奏。オケは適度に粗いのですが、それが良い方向に働いてます。時計の良さは1楽章にあると確信している私にとって、このヴァイルの畳み掛けるように推進していく演奏は理想的。モダン、スタイリッシュでかつオーセンティックなところをおさえたバランスの良い演奏と言っていいでしょう。
有名な時計のアンダンテは速い速い。予想はしてましたが、まるでおとぎの国の時計のような微笑ましさ。中盤以降の激しいフレーズに入っても快速テンポは変わらず、グイグイいきます。落ち着かないぐらい速い。
その勢いを受けて、メヌエットも比較的速いテンポで楽天的に入ります。音楽に勢いがあるせいか、アクセントもきっちり効いてメリハリも十分。
そして最後のフィナーレは、なぜかほっとするような落ち着きを帯びています。もちろんクッキリとして推進力もほどほどあるのですが、全体に音楽がなじんで、ゆったりと流れる印象があります。カペラ・コロニエンシスの低音弦の迫力はなかなか見事。クライマックスはオケが振り切れんばかりに鳴って終了。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
そして、期待の軍隊。この曲も最近ファイの名演に接しています。ヴァイルの演奏はオーソドッックスなものですが、前曲からの流れの影響か、落ち着きが感じられます。やはり、じっくりと歌う部分の存在が曲を落ち着かせます。堂々として、風格があり、穏やかでもある演奏と良いでしょう。風格の1楽章。
そして軍隊の行進を描いたアレグレットは普通にはじまりますが、ここぞの爆発が凄い。普通の演奏とは異次元のアクセント。床を踏み鳴らすような音まで聴こえて、ハイドンの機知に応えているよう。なかなかユニーク。打楽器陣大活躍。流石SACDだけあって鮮明に響きます。
メヌエットは響きの余韻を楽しむよう。十分ダイナミックなんですが、前楽章が異次元のダイナミックさだったので、流麗、穏やかな演奏に聴こえるのが不思議なところです。
フィナーレも同様、最初は大人しく、テンポもすこし穏やか目に聴こえますが、徐々に盛り上がり、特に固い音のティンパニが加わると響きが引き締まり、最後は爆発します。やはり軍隊はこうこなくては。

久々にブルーノ・ヴァイルらしいハイドンを聴くことができました。硬質な響きと鋭いアクセントが決まったときのキレは流石というところ。ただし、ターフェル・ムジークとの初期交響曲、パリセットの飛ぶ鳥を落とす勢いの演奏とくらべると、やはり落ち着いていて、あと一歩の踏み込みを求めたくなってしまうのも正直なところ。迫力のコントロールは見事ですが、逆に曲としての音楽的なまとまりについては、これ以上の演奏も増えてきているというのが正直なところでしょう。私の評価は3曲とも[++++]とします。

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tag : 交響曲99番 時計 軍隊 SACD

【追悼】コリン・デイヴィスの88番、99番

今週の日曜日4月14日、イギリスの名指揮者、コリン・デイヴィスが亡くなりました。追悼の意味も込めて、デイヴィスの演奏を取りあげましょう。

IMG_4343.jpg
amazon(PentaTone classicsCD)

サー・コリン・デイヴィス(Sir Colin Davis)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲88番、99番の2曲を収めたLP。収録はLPには表記がありませんが、同じ音源だと思われるCDのほうには1975年11月、アムステルダム・コンセルトヘボウでのセッション録音と記載されています。レーベルは蘭PHILIPS。

コリン・デイヴィスのハイドンは下記のように結構とりあげていますが、一部のライヴ盤を除くと無難な評価なものが多いのが正直なところ。ただし、それには原因がありそうです。

2011/10/28 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/バイエルン放送響の「ロンドン」ライヴ
2011/08/19 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の熊、雌鶏
2011/08/13 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番3】コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団のネルソンミサ
2011/06/16 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-2
2011/06/14 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-1
2010/07/17 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィスの時計ライブ

今日取り上げるLPはかなり前に手に入れたもの。実は手に入れたばかりのときに数度針を通しただけで、あまりちゃんとした演奏の記憶がありません。今回追悼を機に聴いたところ、かなり良いのげビックリしたのが正直なところ。手元にはおそらく同じ音源のSACDであるPentaTone classics盤(上記amazonのリンク先のアルバム)があり、引っ張り出して聴いたところ、明らかにLPの方が音質がいいです。PHILIPS自身がリリースしてるザロモンセットのCDもあまりキレが良くないことを考えると、CD化にあたって音質が落ちていると想像されます。迫力、弦のキレ、実体感は明らかにLPの方が良く、デイヴィスのオケのヴォリューム感とコンセルトヘボウをゆったりと鳴らした演奏本来の鮮明な響きの魅力がLPからつたわります。コリン・ディヴィスのハイドンの交響曲は風景画をあしらった上品なジャケットで次々とリリースされ、LPの発売当時はコンセルトヘボウの響きの魅力で、かなり話題になった記憶がありますが、CDではその魅力が薄まっていたのかもしれません。

Hob.I:88 / Symphony No.88 "Letter V" 「V字」 [G] (1787?)
アムステルダム・コンセルトヘボウの豊かな瑞々しいオーケストラの響き。デイヴィス特有のアポロン的中庸さの均衡のとれたフォルム。オーケストラを聴く悦びに溢れたバランスの良い響き。そしてLPならではダイレクトな音像。そう、PHILIPSの輸入盤ならではのこの空気感です。ただ音楽が流れることが快感な演奏ですね。音量を絞る部分の透明感も素晴らしく、まさしくHi-Fi録音。コリン・デイヴィスの演奏は実に自然なテンポとリズム、フレージングなのにキレの良さが爽快なもの。
つづくラルゴもじつに穏当なもの。これ以上オーソドックスな演奏はないほどの、ある意味素晴らしい完成度。完璧なフォルムの石膏彫像のような安定感があります。録音がよいからこそ引き立つ自然な響きの魅力。
おそらくこの演奏の白眉はメヌエット。オケの力強い響きがコンセルトヘボウに響き渡ります。抜群の立体感。部屋の中にフルオーケストラがやってきたような異次元の立体感。音量を上げて、メヌエットの響きに打たれます。
88番のコミカルなフィナーレは、コミカルであるよりも律儀な印象なのはデイヴィスの性格に由来するのでしょうか。やはり、明らかにCDとは別格の彫刻的フォルム。中盤以降の変奏の迫力の素晴らしさはLPならではの響きです。最後は転げ落ちるような急激なテンポの変化を聴かせる演奏もありますが、コリン・デイヴィスのコントロールは落ち着き払って、ちょいとテンポを上げるだけですが、彫り込みの深い抜群の迫力で聴かせきってしまいます。やはりLPで聴くと素晴らしい演奏でした。

Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
つづいてこちらも名曲99番。予想通り大河のごときおおらかさで雄大な響きから入ります。この曲はデイヴィスに合ってますね。弦や管のさざめくような伴奏に対して、分厚い響きの弦楽器群の奏でる旋律が実に大胆にメロディーを乗せていきますが、デイヴィス特有のさっぱりとしたコントロールによって実に純音楽的で、アカデミックな印象を残します。短い音符のキレがいいので、全般に引き締まった緊張感を保ちます。
99番のアダージョは穏やかな表情と徐々に盛り上がる感興が有名な曲。聴き入るうちに大河の流れに浮かんでいるような錯覚に襲われます。大波に身を任せてオーケストラの力強い響きを堪能。
メヌエットも同様。オケの精度が高いため、スピーカーから流れ出るサウンドはまさに正確そのもの。特に短い音の余韻にコンセルトヘボウの美しい響きが乗って、最高の演奏。
フィナーレは前曲同様落ち着き払って、オケをどうしたら良く鳴らせるか熟知しているようですね。手元のこのアルバム、ノイズもなく非常に聴きやすい音。まさに名録音です。

コリン・デイヴィスの指揮するアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ハイドンの名曲を2曲録音したLP。どちらの曲もLPのほうがCDよりも音楽の骨格が豊かでかつ、彫りも深く音楽が眼前に展開する素晴らしい録音であることがわかりました。この彫りの深さが、穏当なデイヴィスの音楽にタイトさを加えて、しかも音響的な面白さもかなりアップさせています。LPを再生する装置をお持ちでしたら、このシリーズは是非LPでそろえられるべきかと思います。評価は両曲とも[+++++]とし、CD版とは差を付ける事と致します。

コリン・デイヴィスはハイドンばかりでなく、モーツァルトやベートーヴェン、ベルリオーズ、シベリウス、ストラヴィンスキーと広いレパートリーにいろいろ名盤を残しています。ネットではデイヴィスが亡くなった事をしのんでいろいろなアルバムがレビューされており、今更ながら、穏やかながら人を惹き付けて止まない、流れるような彼の音楽の魅力を再認識した次第です。また一人偉大な指揮者を失いました。ご冥福をお祈りします。

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tag : 交響曲88番 交響曲99番 LP

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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