Meta4の弦楽四重奏曲Op.55

今日は久しぶりに若手クァルテットの新譜です。

Meta4.jpg
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Meta4によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.55のNo.1、No.2「剃刀」、No.3の3曲を収めたアルバム。収録は2008年11月4日から6日、ドイツ、ハイデルベルクの南方の街ザントハウゼンにあるクララ・ヴィーク・オーディトリウムでのセッション録音。レーベルは最近良く取りあげているhänssler CLASSIC。

クララ=ヴィークとは調べたところクララ・シューマンのことのようですね。ヴィークが旧姓です。

さて、Meta4ですが、ライナーノーツによると、フィンランドのクァルテット。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:アンティ・ティッカネン(Antti Tikkanen)
第2ヴァイオリン:ミンナ・ペンソラ(Minna Pensola)
ヴィオラ:アッテ・キルペライネン(Atte Kilpeläinen)
チェロ:トマス・デュプシェバッカ(Tomas Djupsjöbacka)

2001年に結成され、ヨーロッパ室内楽アカデミーのハット・バイエルレ(アルバン・ベルク四重奏団のヴィオラ奏者)とヨハネス・マイスル(ウィーン・アルティス四重奏団の第2ヴァイオリン)に師事。2004年にモスクワで開催された国際ショスタコーヴィチ弦楽四重奏コンクールで優勝し、同時にショスタコーヴィチのすぐれた演奏によって特別賞も受賞しました。2007年4月にはウィーンで開催されたヨゼフ・ハイドン国際室内楽コンクールでも優勝しました。その後、フィンランド文化省から、フィンランドの若手で将来有望な演奏家たちを奨励するフィンランド賞を授与され、2008年以降、フィンランド内陸部でロシア国境に近い街、クフモで開催されるクフモ室内楽音楽祭の常任クァルテットとなっています。また、2008年9月から、BBC新世代の芸術家に選ばれ、シティ・オブ・ロンドン音楽祭、チェルトナム音楽祭、マンチェスター・ミッドデイ・コンサーツ・ソサエティやバーミンガム・タウン・ホールに招かれているなど、活躍の場を広げています。

ヨーロッパの辺境フィンランドの若手演奏家によるハイドンの比較的地味な曲の録音。ライナーノーツによれば、このクァルテットのデビュー盤で、ハイドンを選んだのはマドリードでのハイドンの弦楽四重奏曲全曲演奏でこのOp.55を演奏したからとのことでしたが、もともと師であるアルバン・ベルク四重奏団のヴィオラ奏者だったハット・バイエルレから2003年にバーゼルで教わり始めた際、「ハイドンを学ばなければならない。ハイドンを演奏出来れば、どんな曲も演奏することができる」と言われたからだとのこと。けだし名言だと思います。

ジャケットに目をやれば、才気あふれる若者がかなり挑戦的な眼差しでたたずむ姿。これまでのハイドンの弦楽四重奏曲の演奏史に、この新たな才能が一石を投じる事が出来るでしょうか。以前取りあげたミネッティ四重奏団もそうですが、若手のクァルテットのアルバムを聴くのは、非常に楽しみな事です。老練なハイドンもいいですが、若い才能がハイドンをどう料理するかも興味深いですね。今日はこのアルバムの最初の2曲を取りあげます。

Hob.III:60 / String Quartet Op.55 No.1 [A] (1788)
非常に鮮明かつダイレクトな音響。刺激が強すぎる一歩手前の鮮明な尖った音の録音。若手らしく音符から精一杯のメリハリを汲みとり、クッキリとしたソノリティを再現。特に高音域の鮮明さが音響上の特徴でしょうか。北欧だからかわかりませんが、透徹した氷のような響き。各奏者が自在にメロディを奏でていますが、テイストがそろっているせいか一体感は悪くありません。一音一音のチュナーミクをきっちりコントロールして、研ぎすまされた響きをつくっていくような演奏。テクニックは確かなものがあります。特に第1ヴァイオリンの磨き抜かれた高音のメロディーの浸透力は流石なもの。
2楽章のアダージョ・カンタービレは、クッキリした表情のままくつろいだ表現に。現代音楽ばりの精妙な響きで演奏されるハイドン特有の暖かいメロディー。ユニークな演奏ではありますが、悪くありません。ハイドンを良く理解して演奏しているようなので、表現が浮ついていませんし、なかなかの情感。
メヌエットは鋼のような強さのヴァイオリンがリードしてリズミカルな演奏。鮮度とリズム感を重視した意外とオーソドックスな演奏。ハイドンの難しいところは表現重視になれば、曲の美しさをスポイルしかねず、かといって大人しい演奏では凡庸に聴こえてしまうので、どこまで表現を踏み込むかのバランス感覚を鍛えられるところ。Meta4は、このバランスをうまくわきまえ、きっちり個性を出しながらも、ハイドンのクァルテットの演奏として踏み外さないバランス感覚を身につけているようです。
フィナーレも軽さをうまく表現しながら、持ち前の強い音色と表現を上手く織り交ぜて、自分たちのハイドンの表現をしっかり持った演奏にまとめています。フィナーレはコミカルな表情を上手く取り入れて、ハイドンらしさを十分表現しています。出だしの1曲目からなかなかの腕を披露していますね。

Hob.III:61 / String Quartet Op.55 No.2 "Lasiermesserquartetett" 「剃刀」 [f] (1788)
切れる剃刀に困っていたハイドンが、カミソリと交換しようと提案したエピソードで知られるこの曲。音響的には前曲そのままですが、表情が少し穏やかになって、ハイドンのメロディーを素直に楽しむ余裕がでてきました。短調の悲しげなメロディーを切々と弾いていきます。途中から顔を出すチェロのソロの柔らかい音色が妙にいい音。後半の明るい展開部の素朴な表現は1曲目の険しい表情とは打って変わってほのぼのとしたもの。
2楽章はアダージョではなくアレグロ。中庸なテンポと、程よいメリハリでハイドンの曲をじっくり描いていきます。時折見せるレガートが変化をつけます。軽さと輝きが同居してフーガのような深遠な波を表現して、徐々にタイトな表現に変化していきます。
メヌエットも適度なテンションで変化の幅を比較的大きくとり自在な表現を加えます。特に中間部の起伏は見事なもの、両端部は落ち着いているので対比も十分。
フィナーレは軽さとテンションの高い部分の繰り返しを鮮明に描き、この曲の面白さを際立たせる演出。ハイドンを研究し尽くした上での表現でしょう。この曲でも表現の踏み込みが個性的かつやり過ぎない絶妙のところにあり、なかなかのものとうならされる演奏。かなりの才能と見ました。

フィンランドの俊英によるMeta4のハイドンのOp.55の3曲を収めたアルバム。ジャケットに写る自信満々の挑戦的な姿そのもの攻めるハイドン。若手らしく尖ったところも見せながら、ハイドンの弦楽四重奏曲のハイドンらしさの域を超えないあたりも、賢明な判断です。鮮明かつ浸透力ある音響、テクニックも安定しており、音楽性も十分.
才能あふれるクァルテットですね。ハイドンを良く研究し、ハイドンを得意としたアルバン・ベルク四重奏団の元ヴィオラ奏者ハット・バイエルレに学んだだけのことはあります。評価はNo.1が[++++]、No.2の「剃刀」が[+++++]とします。今後が楽しみなクァルテットです。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.55 剃刀

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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