高関健/東京シティフィルの天地創造(東京オペラシティ)

昨夜は気になっていたコンサートに出かけました。

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東京シティフィルハーモニック管弦楽団:第309回定期演奏会

コンサートに行くたびにチラシで次のコンサートを物色するのですが、なんと今週来週、東京で天地創造が2回も取り上げられます。一つがこちらの高関健の振る東京シティフィル、もう一つが大野和士の振る都響。東京がアイゼンシュタットになったような祝祭感! 両方とも聴きたかったのですが、いろいろな都合もあり、なんとなく聴いたことのなかった東京シティフィルの方のチケットを取った次第。

指揮・チェンバロ:高関 健(Ken Takaseki)
ソプラノ:安井 陽子(Yoko Yasui)
テノール:中嶋 克彦(Katsuhiko Nakashima)
バス:妻屋 秀和(Hidekazu Tsumaya)
合唱:東京シティ・フィル・コーア(TCPO Chor)
合唱指揮:藤丸 崇浩(Takahiro Fujimaru)

高関健も東京シティフィルも名前はもちろん知っているものの録音も含めて聴くのはまったくはじめて。
高関健は群馬交響楽団のイメージがありますが、国内の主要オケの音楽監督を歴任し、今は東京シティフィルの常任指揮者と京都市交響楽団の首席客演指揮者で芸大指揮科の教授を務める人。1955年生まれで桐朋学園在学中にカラヤン指揮者コンクールジャパンで優勝し、ベルリンでカラヤンのアシスタントを務めていたそう。その後、バーンスタイン、小澤征爾に師事するなど、桐朋、カラヤン、バーンスタインという流れは小澤征爾と同じなんですね。
東京シティフィルは東京に数多存在するオーケストラのうちの一つで、なんとなくN響、読響などとはランクがちょっと違う感じですが、最近の在京オーケストラの水準は以前とは比べものにならないほど上がっていますので、お手並み拝見といったところ。

天地創造のアルバムのレビューは数えてみたら51種も書いていましたが、コンサートはこれまで2度のみです。

2017/06/04 : コンサートレポート : 鈴木秀美/新日本フィルの天地創造(すみだトリフォニーホール)
2010/10/31 : コンサートレポート : アーノンクールの天地創造(サントリーホール10/30)

ハイドンの作品の中でも最高傑作であり、天地創造というコーラスを伴う大規模なオラトリオは録音よりも生で聴きたいものですね。この日のコンサートはお手並み拝見といった気持ちでチケットを取ったわけですが、結果からいうと実に素晴らしいコンサートで、天地創造という名曲を存分に楽しめる超名演でした。



この日の会場は東京オペラシティ。いつも通り西新宿の職場から歩いてオペラシティに参上。先に待っていた嫁さんと合流して、いつも通りサンドウィッチとワインで腹ごしらえ。

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ワインはいつものものではなく、東京オペラシティ開館20周年記念で勝沼の鳥居平今村の甲州とブラッククイーンが供されており、それを注文。お腹も満ちたところで、いざ、天地創造です。

この日の席は1階前方中央と日頃めったに取らないS席。6列目でしたがステージが拡大されていたので、実質4列目。普段は上から俯瞰できる2階席右側を取るのですが、そちらが空いていなかったので、珍しくS席とした次第。オケの至近距離で響きもダイレクトですが、前方の奏者以外の奏者の様子がよく見えないので、眺めは今ひとつです。

ほどなくコーラスのメンバーが登場。ステージ後方にかなりの人数が並びます。そしてオケも天地創造としては大編成でしょう。オペラシティーのステージが狭く感じるほど。定刻になり歌手と高関健が登場。高関健さんはなんとなく近所のおじさんがタキシードを着てステージに上がったような気さくな感じ(笑) このところファビオ・ルイージ、ジョナサン・ノット、エリアフ・インバル、エサ=ペッカ・サロネンとスタイリッシュな指揮者のコンサートが続いていましたので、隣の嫁さんも指揮者というのはスタイリッシュなものだと思い込んでいたとのこと。高関健はチェンバロも兼ねているので、指揮台はなくステージにたち、チェンバロを20センチくらいの台に乗せ、立ってチェンバロと指揮をこなすスタイル。オケの東京シティフィルも、普通のオケにはいるギラついたオーラを発するような奏者は見当たらず、なんとなくアマチュアオーケストラ風な佇まい。

高関健が拍手に応えて実に気さくに微笑み観客に向かって挨拶を終え、奏者の方に向き直って両手を振り下ろすと、第一部冒頭の混沌の描写が始まります。響きはゆったりとしたもので最初はかなり遅めのテンポでじっくりと描いていきます。ヴァイオリンも丁寧すぎるくらい表情をつけたボウイングで、これより遅いと音楽が停滞しかねないくらい。コンサートの冒頭ゆえかオケもまだ少し硬い感じがありますが、奏者の数が多いので迫力はかなりのもの。そして注目のラファエルの第一声。ラファエルとアダムはバスの妻屋秀和。この日の妻屋さん、実に素晴らしかった。大柄な体に似つかわしくキリリとひきしまったバスがホールに轟きます。ラファエルこそ天地創造の要が持論ですが、アーノンクールの来日公演でのフローリアン・ベッシュの度肝を抜くような声量には及ばずとも、存在感と伸びやかさは十分。そこからのオケが徐々にオケが目覚めて湧き上がるように盛り上がります。ウリエルの中嶋克彦は非常に柔らかで透明感のある声。こちらも声量はほどほどながらしなやかな歌唱が絶品。そしてガブリエルとエヴァの安井陽子は明るく非常に伸びやかな高音の美しい声でチャーミング。第一部の聴きどこのガブリエルのアリアは名盤の名歌手の歌唱にも迫る素晴らしいものでした。この日の歌手陣は3人とも素晴らしい歌唱でした。高関健のコントロールは精緻な演奏ではありませんが、自然な呼吸とアゴーギクはハイドンの音楽の素朴な良さを引き立てます。第一部では前半に硬さが見られたものの、これはコンサートの常。大編成オケの迫力を活かしてゆったりと盛り上げ、要所で各楽器の音色を際立たせるアクセントを設けるなど流石に芸大指揮科の教授。曲全体の流れを一貫して保ちながら場面ごとの情景描写に変化をつける円熟の技。第一部終盤の盛り上がりは素晴らしいものがありました。

この日は第一部終了後に休憩が入り、休憩中にチェンバロを入念に調律し直していました。第一部の演奏は素晴らしかったんですが、お手並み拝見の想定内。ところが、休憩後の第二部以降はそれを超える想定外の素晴らしさ。天地創造の第二部はご存知の通り、素晴らしいアリアの宝庫。休憩でリラックスできたのか、オケも歌手もすっかり落ち着き払って、演奏の方は所謂ゾーンに入って、もはやハイドンの音楽と一体化したような素晴らしさ。淀みない音楽の流れに乗って、歌手が代わる代わるアリアを披露。剛腕指揮者の強烈なドライブとは正反対の自然な音楽。ハイドンの名演奏の多くはこうした素朴な中から心弾むような音楽が溢れ出してくる演奏。まさにこの日の第二部はそのゾーンに入っていました。次々と流れる絶品のメロディー。歌っていない歌手も他の歌手やコーラス、オケの演奏に聴き惚れながら次の出番を待つ至福の時間。ホール全体が演奏に集中する素晴らしい演奏でした。そしてクライマックスでは大波のように押し寄せるコーラスとオケが渾然一体になった怒涛の迫力。

そして、それまでステージに向かってラファエルが指揮者の左、ガブリエル、ウリエルが指揮者の右に配置されていたのが、ラファエルとウリエルが入れ替わって、第三部でのアダムとエヴァのデュエットに備えた配置に変わり、終曲で4重唱に参加するアルトの背戸裕子がステージに上がります。圧巻の第二部に続いて第三部でもゾーンは続いていました。入りのレチタティーヴォに続いて聴きどころのアダムとエヴァのデュエットは絶品。表情一つ変えずに朗々と歌う引き締まったアダムの声に表情豊かに可憐に歌うエヴァが寄り添い、2人の息もピッタリ。まさに至福のデュエット。安井さんのソプラノはまるで全盛期のルチア・ポップのような可憐さ。2つ目のデュエットはまさに夢見心地。そしてさらに素晴らしかったのが終曲。あえて軽めに終わる演奏もある中、堅固な大理石の神殿のような威容が姿を現し、これまでの演奏の総まとめ的クライマックスに突入。指揮者の影に控えていたアルトが前に立ち最後の四重唱。最後のアーメンの響きがホールに吸い込まれる前に拍手が降り注ぎました。

お手並み拝見とは失礼な前振りでしたが、この日の天地創造は素晴らしかった。もちろん生演奏の迫力があってのことですが、これまで聴いた数多の天地創造の中でも、心に残る演奏の一つとなりました。演奏の精度やオケの力量がこの演奏を上回るものは山ほどありますが、天地創造というハイドンが書いた曲の美しさ、素晴らしさを素朴に表現し、曲の本質に迫る演奏という意味では名だたる名演と肩を並べる素晴らしさでしょう。特に歌手3人は絶品。客席から降り注ぐ拍手とブラヴォーにステージ上で歌手もオケもコーラスも満足そうに笑顔で応えていたところみると、満足ゆく出来だったことでしょう。

終演後は、一部の奏者がロビーで観客に挨拶したり、プログラムも丁寧な作りで非常に好感の持てるコンサートでした。東京シティフィル、実に侮れない存在でした。今度はこの名演のコンビで、マイナーながら天地創造と同様美しいアリアの宝庫であるハイドンの「四季」か「トビアの帰還」を是非取り上げていただきたいですね。当ブログの総力を結集して集客に協力させていただきます!(大した集客力はありませんが、、、(笑))

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tag : 天地創造 東京オペラシティ

鈴木秀美/新日本フィルの天地創造(すみだトリフォニーホール)

昨日はすみだトリフォニーホールのコンサートに行ってきました。普段コンサートは夫婦2人で行くのですが、この日は嫁さんは学生時代の友人らと飲み会ということで、行く予定ではなかったこのコンサートの情報を数日前に思い出し、急遽1人分チケットをとった次第。

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新日本フィルハーモニー交響楽団 トパーズ #574

この日のプログラムは鈴木秀美の振る新日本フィルの「天地創造」。

鈴木秀美はご存知の通り、オーケストラ・リベラ・クラシカとハイドンの交響曲などをライヴで継続して録音している他、チェリストとしてはクイケンの指揮でのチェロ協奏曲の録音もあり、日本における近年のハイドン演奏の草分け的存在です。私もリベラ・クラシカとの録音は手元に10枚以上持っているんですが、特に初期にリリースされた交響曲の録音がピンと来ず、収集癖では誰にも負けない私も最近はあまり手を出していない状態なんですね。オケの精度は良いものの、リズムが重く、なんとなく教科書的な解説調の演奏で、フレーズやリズムに表情はあるのですが、音楽に表情がない感じがいつもつきまとう印象を拭えないという感じでしょうか。そんなこともあって、これまで記事にも取り上げてきませんでした。ただ、食わず嫌いも良くないと思って、このコンサートのことを思い出し、直前でも空席ありということでチケットをとった次第です。

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この日のソロと合唱は下記の通り。

ガブリエル/エヴァ:中江早希(Saki Nakae)
ウリエル:櫻田 亮(Makoto Sakurada)
ラヴァエル/アダム:多田羅 迪夫(Michio Tatara)
コーラス:コーロ・リベロ・クラシコ・アウメンタート(Coro Libero Classico Aumentato)

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土曜のコンサートなので開演は14:00。前々日にとったチケットということで、席は1階の後ろの方ですが、眺めも音も問題ありませんでした。この日の入りは6割くらいだったでしょうか。前日夜にも同じプログラムでのコンサートでしたので、まあまあの集客だったということでしょうか。

定刻になり、コーラスが整然と入場。そしてオケとコンサートマスターが揃ってチューニングを終えると、歌手と鈴木秀美が登壇。タクトなしで腕を振り上げ、第一部が始まります。いつもオケの近くで奏者や指揮者の表情が見える席が多いので、この日の席は遠くでバランスの良いオケの響きが鳴り響く感じで音は悪くありませんが、逆に奏者の表情まではわからないもどかしさがありますね。現代オケでの演奏ですが、やはりノンヴィブラート気味で古楽器らしい雰囲気を感じさせる演奏。オケは弦も金管も安定していてなかなかいい感じ。ただ、冒頭に書いた鈴木秀美風なリズムの重さというかちょっと説明調の雰囲気が残っており、まあ、入りは少し硬さがあるのかなといった感じで始まりました。なかなかの入りと思っていたのですが、混沌の描写でのラファエルの第一声で雰囲気が一変。ラファエルの多田羅さん、音程とリズムがかなりふらつきます。以前アーノンクールとコンツェントゥス・ムジクスの最後の来日公演となる天地創造でのフローリアン・ベッシュのホールを揺るがすような図太い第一声が印象に残っていますが、天地創造ではラファエルの存在は曲の主軸となるもの。この日の多田羅さんは終始この調子で、歌うたびに失速気味。逆にその直後のコーラスは精妙な透明感あふれる素晴らしい響きで持ち直します。そしてウリエルの櫻田さん、ガブリエルの中江さんともに非常にいい出来だっただけに、多田羅さんがかなり足を引っ張った形になりました。やはり、天地創造はラファエルが非常に重要な存在と再認識した次第。演奏の方は第一部のクライマックスにかけて、やはり生ならではの迫力で盛り上がり、演奏の方は期待以上。第二部もウリエル、ガブリエルのアリアは楽しめましたが、ラファエルは全く調子が上がりません。調子の問題ではないかもしれませんね。

休憩を挟んで、第三部はアダムとエヴァのデュエットが聴かせどころですが、変わらず。オケの方は冒頭の硬さがほぐれて朗々とクライマックスに向けて盛り上がりました。最後は拍手に包まれましがが、いつもは拍手が途絶えるまでコンサートの余韻を楽しんで退席するところ、なんとなくすぐに席を立って会場を後にしました。

この日に初めて天地創造を聴く人にとっては、迫力あるオーケストラによってハイドンの名曲を楽しめるコンサートだったと思いますが、私はちょっと楽しめませんでした。これは演奏の問題ではなく、配役の問題でしょう。

逆にテノールの櫻田さんは、バッハ・コレギウム・ジャパンとの共演で何度か聴いていましたが、よく通る透明感あふれる歌唱がなかなか良かったですし、ソプラノの中江さんも、おそらく生で聴くのは初めてでしたが、安定した歌唱でガブリエルとエヴァを好演、何よりコーラスの精度と透明感は印象に残りました。配役に穴があってはいけないといういい事例でしたね。

鈴木秀美とリベラ・クラシカのアルバム、もう少し集めて見ようかと思います。

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【新着】絶品! ミヒャエル・シェーンハイトの天地創造ライヴ(ハイドン)

またまた素晴らしいアルバムを発掘しました!

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ミヒャエル・シェーンハイト(Michael Schönheit)指揮のメルゼブルガー・ホフムジーク(Merseburger Hofmusik)の演奏で、ハイドンのオラトリオ「天地創造」のライヴを収めたアルバム。合唱はコレギウム・ヴォカーレ・ライプツィヒ(Collegium Vocale Leipzig)、シュロスカペレ・ザールフェルト室内合唱団(Kammerchor der Schlosskapelle Saalfeld)。収録は2015年9月11日と12日、ライプツィヒの西約20kmにあるメルゼブルク(Merseburg)にあるメルゼブルク大聖堂でのライヴ。レーベルはQUERSTAND。

このアルバム、最近リリースされた天地創造の新録音ですが、指揮者もオケもソロも未知のもの。天地創造は全種コンプリートを目指して収集中ゆえ何気なく注文したもので、結構時間がかかって最近到着したもの。いつも通りさして期待もせずCDプレイヤーにかけて聴きはじめたところ、最初は大聖堂での残響の多い古楽器のライヴだなあという印象でしたが、すぐに非常にニュアンスの豊かなフレージングとキビキビとしたコントロール、そして粒揃いの歌手陣、コントロールの行き渡ったコーラスに惹きつけられ、あっという間に全曲を楽しんでしまいました。最近の録音らしく会場ノイズは皆無ですが、第3部の終曲が終わり残響が静寂の中に消えた瞬間、ものすごい拍手が降り注ぎ、拍手は次第に地鳴りを伴うようになり、当日の観客の興奮までもがリアルに収められています。聴き終わった私が岡本太郎的形相で「なんだこれは?」と叫んだのはもちろんのこと(笑) いやいやこれは素晴らしい演奏です。

あらためてアルバムを見てみると、なんだか天地創造を表すような想像力爆発な絵画に加え、フォントにはカラフルなグラデーションが施されています。ジャケットは決して品がいいとは言えないものですが、このアルバムに込められたエネルギーを象徴するよう。

この素晴らしい演奏を生み出した指揮者のミヒャエル・シェーンハイトは、1961年、ライプツィヒの南にあるザールフェルト(Saalfeld)生まれの指揮者、オルガニスト。同じくオルガニストだった父ワルター・シェーンハイトからピアノとオルガンを教わり、1978年まで、地元ザールフェルトの少年合唱団に所属、その後ライプツィヒ・メンデルスゾーン音楽アカデミーで指揮とピアノを学びます。卒業後父のあとを継ぎ、ザールフェルトのヨハネ教会のオルガニストと合唱指揮者に就任します。1986年にはライプツィヒ・ゲヴァントハウスのオルガニストとライプツィヒ・バロックオーケストラのメンバーとなり、有名指揮者と共演するようになります。1995年にはクルト・マズアの振るニューヨークフィルにソリストとしてデビュー。1996年にはメルゼブルクの教会のオルガニストに就任、そして1998年にこのアルバムのオケであるメルゼブルガー・ホフムジークを設立します。このオケはライプツィヒ・ゲヴァントハウスの奏者などによる古楽器オケとのこと。

ライナーノーツによるとそもそもシェーンハイトの指揮者としてのデビューは1982年、ハイドンの生誕250年のアニヴァーサリーイヤーに父が振る予定だった天地創造のコンサートの際、父の急病により代打として指揮台に立った時で、以来30年以上に渡って天地創造の研究を重ねてきたとのこと。それだけ天地創造には思い入れがあるのでしょう。

歌手陣は下記の通り。
ガブリエル/エヴァ:ユーリア・ゾフィー・ヴァーグナー(Julia Sophie Wagner)
ウリエル:ロタール・オディニウス(Lothar Odinius)
ラファエル/アダム:アンドレアス・シャイブナー(Andreas Scheibner)

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
冒頭のカオスは、何気なく聴くと流れのいい普通の演奏なんですが、注意深く聴くとデュナーミクもアゴーギクも実に巧み。緊張感を保ちながらも一貫して堂々とした流れの良いテンポで音楽が進みます。場面場面にしっかりとした特徴を持たせながらも、スイスイ音楽が流れて行くので非常に見通しの良い演奏。そしてそこここにキリリとしたアクセントをつけて行くので、変化に富んだ感じも十分。かなり演奏を重ねてきた円熟を感じます。歌手も揃って若々しい声で悪くありません。ラファエルのアンドレアス・シャイブナーは柔らかで自然な声質、ウリエルのロタール・オディニウスはキリリと澄んだ声、ガブリエルのユーリア・ゾフィー・ヴァーグナーは線は細いもののふくよかな響きを感じさせるソプラノ。調べてみると夏目三久似のコケティッシュな人でした。期待のガブリエルのアリアは端正な歌唱。シュワルツコップから芳香を抜いてスッキリさせた感じ。コーラスは透明なハーモニーがくっきりと浮かび上がる素晴らしいもの。流石に合唱指揮も手がけてきただけのことはあります。先に触れたように非常に流れの良い演奏ですが、第1部のクライマックスに至る第12曲から13曲に至るところ盛り上げ方、アクセントを効かせた展開は見事そのもの。胸のすくようなクライマックスへの盛り上がり。音量を上げて聴くと大聖堂に響き渡るオケとコーラスの波にのまれる感じ。

第2部は美しいメロディーの宝庫だけにシェーンハイトのコントロールの美点が活きて、第1部以上に聴き応え十分。かなり速めのテンポでドンドン進みます。この見通しの良さはあらたな発見。ゆったりと流れるメロディーもいいものですが、大曲をまとまりよく聴かせるというコンセプトだと思います。やはりクッキリとしたメリハリが効いているのでセカセカした感じはしません。ガブリエル、ラファエル、ウリエルのそれぞれのアリアは純粋にメロディーの美しさに聴き惚れんばかり。次々と歌われるアリアの快感。そして第2部のクライマックスたる第26曲から28曲までの展開も迫力十分。決して力むことなく音楽の流れで表現される迫力。大迫力なのに透明感と軽々とした躍動感に満ちている素晴らしい瞬間。

そして天上の音楽のような期待の第3部。冒頭からオケの自然で透明な響きに聴き惚れます。とろけるようなホルンが鳴り響き、ウリエルのレチタティーヴォももとろけるよう。そして聴きどころのアダムとエヴァのデュエットはテンポを落とし、普通のテンポになります。歌手とオケとコーラスが完璧に響きあう至福のひととき。続く大迫力の合唱は速めのテンポでタイトにまとめ、2番目のデュエットでも再び至福のひとときが訪れます。エヴァのソプラノのなんと美しいこと。そして第3部のクライマックスたる第34曲の堂々とした入り、荘厳さを帯びたフーガ、次々とコーラスの波が襲い、オケがそれに呼応。素晴らしい迫力でのフィニッシュ。そして先に触れたように万雷の拍手が地鳴りを伴い降り注ぎます。

いやいやなんと素晴らしい演奏でしょう。じっくり克明に描く天地創造も多い中、全3部を一気に聴かせるタイトな演奏。しかもこれがライヴだとは信じがたい素晴らしい集中力。30年以上に渡って天地創造を研究してきたというミヒャエル・シェーンハイトの言葉に偽りはないでしょう。名演の多い天地創造ですが、名だたる一流どころの演奏と比べて劣るどころか、それら以上に素晴らしい演奏と言っていいでしょう。歌手、コーラス、オケ、録音も素晴らしい仕上がりのアルバムとして多くの人に聴いていただくべき価値のあるアルバムです。評価はもちろん[+++++]とします。

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tag : 天地創造 ライヴ録音 古楽器

ジョン・ネルソン/オランダ放送室内フィルの「天地創造」(ハイドン)

久々の映像ものです。しかもこれがなかなか良い。

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TOWER RECORDS / amazon(別装丁盤) / ローチケHMVicon

ジョン・ネルソン(John Nelson)指揮のオランダ放送合唱団(The Netherland Radio Choir)、オランダ放送室内フィルハーモニー管弦楽団(The Netherlands Radio Chamber Ohilharmonic)の演奏で、ハイドンのオラトリオ「天地創造」のライヴ映像を収めたDVD。収録は2010年6月、オランダのアムステルダム近郊の五稜郭のような要塞都市ナールデン(Naarden)のナールデン大聖堂でのコンサートのライヴ。レーベルはEUROARTS。

天地創造をとりあげるのは久しぶりです。しかも今回は映像。前からちょっと気になっていたアルバムですが、入手していないことに気づき手に入れました。指揮者もオケもなじみのないものでしたが、同じ組み合わせでバッハのマタイ受難曲、ロ短調ミサやベートーヴェンのミサ・ソレムニスなどもセットになった宗教音楽集バージョンもリリースされているなどかなり本格的な内容。また天地創造の歌手は一流どころが揃っており、期待できそうな予感がありました。歌手は下記のとおり。

ガブリエル:リサ・ミルン(ソプラノ)
ウリエル:ウェルナー・ギューラ(テノール)
ラファエル:マシュー・ローズ(バリトン)
エヴァ:ルーシー・クロウ(ソプラノ)
アダム:ジョナサン・ベイヤー(バス)

指揮者のジョン・ネルソンは1941年、アメリカ人の両親のもと、コスタリカで生まれ、シカゴ近郊のホィートン・カレッジ(Wheaton College)、ニューヨークのジュリアード音楽院で学び、1976年から87年までインディアナポリス交響楽団の音楽監督、1985年から88年までセントルイス歌劇場の音楽監督、以後91年まで首席指揮者、1983年から90年まではニューヨーク州カトナーのカラマー国際音楽祭の音楽監督などを歴任。欧米の主要オケへの客演履歴も豊富で、欧米では知られた人のようです。1998年はら2008年までパリ室内管弦楽団の音楽監督。現在はパリに住み、古典的な宗教曲の普及や合唱指揮などで活躍しているとのこと。一連のDVDは最近の活動の記録ということでしょう。

このDVDを記事に取り上げたということは、もちろん演奏が良いからに他なりません。

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
冒頭のメニュー映像は美しい要塞都市のナールデンの空撮映像から始まり、演奏会場となったナールデン大聖堂が素晴らしいロケーションにあることがわかります。大聖堂といっても十字のプランをもつゴシック様式の聖堂で小規模なオケと合唱で聖堂の半分がうまり、奏者と観客がほぼ同人数という規模。もちろん天井は高く石造りのため残響は豊かですが、鑑賞に問題があるほどではなく、録音は上手く処理しています。映像はカメラに動きがあってかなり凝ったもので、美しい聖堂でのコンサートを十分活かしたもの。
第1部のはじまりから、堅実な手腕でネルソンがオケをコントロールしていきますが、オケはまったく乱れを見せず、かなりの腕前揃いとみました。オケの規模の割に迫力は素晴らしく、タイトに引き締まっていい演奏。そしてコーラスも大聖堂に響きわたる迫力があり、オケとコーラスのコントロールは流石なところ。なにより素晴らしいのが歌手陣。最近では珍しい、5人構成でガブリエルとエヴァ、ラファエルとアダムはそれぞれ2人づつ設定されますが、ラファエルのマシュー・ローズが図太く鋼のような響きで存在感十分。ラファエルは天地創造の演奏の要だけに、この演奏の大きなポイント。ウリエルは古楽での登場が多いウェルナー・ギューラでしなやかな歌唱。そしてガブリエルのリサ・ミルンは可憐というよりよく響く声で迫力十分。ガブリエルのアリアの表情の豊かさはかなりもの。この3人の素晴らしい安定感がこの演奏の魅力の一つですね。そして聴き進むうちに、ネルソンの棒がオケをグイグイ引っ張り、ライヴらしい素晴らしい高揚感を表出していきます。盛り上げどころを心得た煽りが実に的確。オケも見事にそれに応え、第1部の終盤から小規模オケながら怒涛の高揚感に包まれます。そしてこうしたところでのコーラスの分厚いハーモニーが大聖堂に満ちていく幸福感。オケもコーラスも渾身の演奏でクライマックスを迎えます。

第2部は名曲の宝庫。ガブリエル、ラファエル。ウリエルともに聴かせどころを見事な歌唱でこなし、ネルソンはこんどはじっくりと歌手を支える側にまわって堅実な伴奏に徹します。速めのテンポで曲を進めるので見通しよく進め、第2部が間延びすることなく、美しい曲が代わる代わる響きわたるネルソンの酔眼。

第3部に登場するエヴァとアダムは如何にと思って聴き始めると、最初のウリエルのウェルナー・ギューラのあまりに見事な歌唱といままでで一番艶やかなオケの演奏に耳を奪われます。エヴァのルーシー・クロウは高音の透明感が素晴らしい歌唱。そしてデュエットの相手のアダムのジョナサン・ベイヤーもキリリと引き締まった硬質な声でいいアンサンブル。オケも曲の流れに乗って包み込むように歌手を支えます。ネルソンはかなり丁寧に指示を出して曲をまとめていきます。2つ目のアダムとエヴァのデュエットのなんという癒しに満ちた入り。デュエットも天上の歌声のよう。特にルーシー・クロウの声の抜けるような美しさは素晴らしいですね。そして終盤に差し掛かると大きなうねりの波に乗りながらも細かい指示で全メンバーのまとめて曲の大きな渦に乗せていきます。ハイドンが晩年に全精力を傾けて書いた名曲のすばらしさが圧倒的な高揚感のなかに浮かび上がります。そして終曲の冒頭の力みなぎる響きから、フーガのようにメロディーが繰り返されクライマックスへ。ネルソンは最後まで集中してオケとコーラスに指示を出しながら頂点を目指します。最後は神々しさを交えた響きに至り終了。大聖堂に暖かい拍手が満ちました。全員がスタンディングオベイション。この日の会場にいた観客は幸福感につつまれたでしょう。

ジョン・ネルソンという未知の指揮者による天地創造のライヴ。映像作品としてはコンサートの模様を丁寧に収録し、当日のライヴを見ているような感動を味わうことができる素晴らしいプロダクションです。歌手、コーラス、オケともにレベルが高く、しかも天地創造の演奏としては理想的なロケーションでのコンサートで、映像作品としては非常に楽しめるものに仕上がっています。演奏だけをとればこれより上の演奏もありますが、これはこれで貴重なもの。評価は[+++++]とします。オススメです!
惜しむらくはBlu-rayではないこと。ハイヴィジョン映像に慣れた現代の視聴環境にDVDの品質はちょっと難ありといったところでしょう。

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ワルシャワ・シンフォニアの天地創造、ジラール四重奏団のひばり(ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン)

昨日5月4日は、このところ毎年出かけているラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンへ。

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ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2016 「la nature ナチュール - 自然と音楽」

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンも今年で11年目とのこと。東京のゴールデンウィークの風物詩として定着しています。毎年決まったテーマでプログラムが組まれ、今年は 「la nature ナチュール - 自然と音楽」。当初は作曲家やお国をテーマとしていて、モーツァルトを特集した年には、おまけでハイドンも随分取り上げられましたが、最近は幅広い音楽を取り上げられるテーマ設定になっており、毎年ハイドンもパラパラとプログラムに入っています。ここ数年で聴いたコンサートの記事は下記のとおり。

2015/05/04 : コンサートレポート : ジャン=クロード・ペヌティエの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」(ラ・フォル・ジュルネ)
2014/05/06 : コンサートレポート : トリオ・カレニーヌのピアノトリオ(ハイドン)、アンヌ・ケフェレックの「ジュノム」(ラ・フォル・ジュルネ)
2014/05/04 : コンサートレポート : アルゲリッチ、クレーメルによる動物の謝肉祭(ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン)
2013/05/05 : コンサートレポート : 【番外】ラ・フォル・ジュルネで衝撃のブーレーズライヴ

今年もプログラムを見て、気になるコンサートをいくつかチェックして、つながりなどを考えてチケットを取ったのが2つのコンサート。

公演番号:236 ジラール四重奏団の「ひばり」、「ラズモフスキー2番」
公演番号:216 ワルシャワ・シンフォニアの「天地創造」

5月4日の19:30始まりで、間に15分おいた2つのコンサートということで予約した次第。もちろんお目当てはワルシャワ・シンフォニアの「天地創造」に他なりません。ワルシャワ・シンフォニアはラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンでは毎年出演しているオケですが、私が生で聴くのははじめて。他の方は知りませんが、私はこのオケに格別な関心があります。それは、フォルカー・シュミット=ゲルテンバッハの振る「悲しみ」の超絶の名演を聴いたから。自然さを保ったなかでもヴァイオリンパートの切れ味は恐ろしいほど。これまでのレビューを通して、ポーランドのオケは自然で雄大な響きをつくるのが上手い印象ですが、このアルバムは別格の完成度。ということで天地創造をワルシャワ・シンフォニアが演奏すると知り、すかさずチケットをとりました。

2012/07/17 : ハイドン–交響曲 : ヴィシュニエフスキ/アメリカン・ホルン四重奏団+ワルシャワ・シンフォニアのホルン信号
2011/01/16 : ハイドン–交響曲 : シュミット=ゲルテンバッハ/ワルシャワ・シンフォニアの悲しみ

プログラムを見ると、ワルシャワ・シンフォニアはラ・フォル・ジュルネの期間中、今年は3日ですべて異なるプログラムを8公演もこなす激務。その内の一つが大曲天地創造。プロとはいえ重労働ですね。



さて、4日は天気も良く、コンサートの始まりも遅い時間帯だったので、ちょっと早めに家をでて、近くのマリオンで開催されていた、イタリア映画祭で映画を見てからの出陣。

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朝日新聞社 - イタリア映画祭2016

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こちらも今年で16回目を迎えるゴールデンウィークの定番イベントということですが、私ははじめて。毎年見ている友人に誘われて、コンサート前の時間を狙ってチケットをとっておきました。見たのは「俺たちとジュリア」というコメディー映画(作品情報)。これが実に面白かった。それぞれイマイチな人生を送っていた3人が何の因果かイタリアの片田舎の不動産を共同購入することになり、夢のようなホテルを創るというお話。長年サラリーマンをやってきた私も身につまされる話です。オチはマフィアの国イタリアらしいもの。イタリア語のテンポのよいセリフと手慣れたつくり込みが秀逸でした。



映画を楽しんだあと、イトシアの地下でカジュアルなイタリアンを楽しみ、いざ夜の東京国際フォーラムへ。

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いつものように中庭には屋台がたくさん出て賑やか。開演時刻がまもないため人混みをかき分けて最初のコンサートのあるB5ホールへ急ぎます。B5ホールは256席の室内楽用の規模のホール。本来は会議用途なのでかなりデッドであり室内楽を楽しむには少々難ありです。

奏者はジラール弦楽四重奏団(Quatuor Girard)。このクァルテットのアルバムは以前一度記事にしています。略歴などは記事を御覧ください。

2013/11/07 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ジラール四重奏団のOp.76のNo.5

記事にも書いたとおり、なんと4人は兄弟姉妹。メンバーの内何人かが兄弟というクァルテットはたまにありますが、4人とも兄弟とは珍しい。上のアルバムは2008年とデビュー早々の録音で、評価も今ひとつでしたが、この日の演奏はなかなか聴き応えがありました。
1曲目のハイドンの「ひばり」は、まさにこのクァルテットの現在の実力を表すいい演奏でした。優雅な曲調の曲ですが、各パートのボウイングがそろってしなやか。第1ヴァイオリンが目立つ演奏が多い中、4人の息がそろって穏やかな演奏。楽器もしくは会場の音響のせいか、第1ヴァイオリンの高音の伸びは今ひとつながら、非常に丁寧にフレーズを一つ一つ表現してバランスも良く、古典的な均衡を保った演奏。力まず力のいれ方の緩急も洗練されており、緊張感を保った演奏でした。フィナーレでようやくぐっと踏み込むところもいいセンス。上の記事の演奏から8年が経過して腕もかなり上がってきたということでしょう。

2曲目のベートーヴェンのラズモフスキー2番に入るとハイドンの演奏の時とは異なり、ぐっとボウイングに力が入るところがそこここにあり、演奏精度もなかなかのもの。現在ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集の録音に取り掛かっているとのことで、やはり得意としているのでしょう。このベートーヴェンを聴くと、ハイドンでは古典的な整然とした響きを狙っていたことがわかります。ベートーヴェンの方も4人の精度の高いアンサンブルでレベルの高い演奏を楽しみました。やはり間近で聴くクァルテットはいいですね。

拍手もそこそこに席を立ち、15分で隣の巨大なホールAに移動しなくてはなりませんので、先を急ぎます。エスカレーターで1階まで降りて、東京駅側のホールAのエントランスへ。またまたエスカレーターでホールまで上がります。

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ホールAは5000席の大ホール。席は18列のほぼ中央ということで、いい席でした。こちらは残響は多め。

ガブリエル/エヴァ(ソプラノ):リュシー・シャルタン (Lucie Chartin)
ウリエル(テノール):ファビオ・トゥルンピ (Fabio Trümpy)
ラファエル/アダム(バリトン):アンドレ・モルシュ (André Morsch)
アルト:ゾエリーヌ・トロイエ (Zoéline Trolliet)
ローザンヌ声楽アンサンブル(Lausanne Vocal Ensemble)
ダニエル・ロイス(Daniel Reuss)指揮のワルシャワ・シンフォニ(Sinfonia Varsovia)

ワルシャワ・シンフォニアは先に触れたとおりですが、指揮のダニエル・ロイスは全く知らない人。公演のチラシによれば現在ローザンヌ声楽アンサンブルの芸術監督を務めている人。経歴をみてもRIAS室内合唱団、エストニア室内フィル合唱団など振っていた経歴もあり、合唱指揮の人ですね。歌手も知らない人ばかりでしたが、それぞれかなりの実力者でした。

開演が20:45と普通のコンサートの終わるような時間。しかも休憩なしで「天地創造」を演奏するということで、オケにとってはかなりの重労働ですね。隣のホールから移動して着席してすぐ、定刻通りに演奏がはじまりました。

広大なホールですが、程よく残響をともなったオケの響きはホールの大きさにもまけず、力強いもの。指揮のダニエル・ロイスはじっくり遅めのテンポで雄大に天地創造の第1部の混沌を描いていきます。肝心のワルシャワ・シンフォニアは職人オケらしく指揮者の指示に忠実に、どちらかといえばおおらかに天地創造の各場面を描いていきます。奇をてらうようなところは全くなく、逆に弱音部のコントロールや間の取り方が丁寧で、雄大さばかりでなく緻密な音楽を聴かせ、次々の場面のかわる絵巻物を一貫した描写で描いていくよう。天地創造という美しいメロディーの宝庫たる音楽を楽しむのに最適な演奏といったところでしょう。歌手はソプラノのリュシー・シャルタンが絶品。聴きどころの第6曲のガブリエルのアリアの美しいこと。コケティッシュな魅力のある伸びのある美声を振りまいてました。そしてラファエルのアンドレ・モルシュは、話題のショーンなんとかさん似のイケメンバリトン歌手。声量も迫力もありテンポ感も良く、天地創造の引き締め役を見事に演じていました。ウリエルのファビオ・トゥルンピも柔らかさをもった軽さのあるテノールで役に相応しい声。おそらく指揮者のダニエル・ロイスが役に相応しい歌手を選んでいるのでしょう。一番よかったのはある意味当然ですが、コーラスを担当したローザンヌ声楽アンサンブル。ここぞというところの迫力と透き通るような透明感あふれるハーモニーの美しさは流石なところ。この天地創造、指揮者は合唱指揮出身ということでオケに雄弁に語らせるというより一貫してハーモニーの美しさとうねるようような大きな起伏を描くことに集中して、オケの力みは皆無。こんなにしなやかで力まない天地造像はある意味珍しいほど。第一部のクライマックスはもちろん盛り上がりますが、程よい力感で収めます。曲間の間の取り方もうまく、さっと次に移るので曲が途切れる印象がありません。第2部は美しいメロディーの宝庫らしく、歌の美しさを最重要視したおだやかなオーケストラコントロールが印象的。そして奏者のみ2〜3分の休憩をとったあとの第3部の2つのアダムとエヴァのデュエットも絶品。最後の終曲でコーラスの端にいたアルトのゾエリーヌ・トロイエが前に出てソロに加わるあたりは定番の演出ですが、終曲はテンポを落として堂々とした迫力を描き、それまでのしなやかな流れとは少しギアを入れ替え神々しさを強調します。天地創造とはもともと聖書の創世記などを描いた宗教劇ではありますが、このコンサートのタイトルは「大自然のスペクタクル〜天地創造の壮大な歌劇」とあり、ラ・フォル・ジュルネ全体のテーマに合わせて自然の描写をテーマにおいています。テーマに合わせて演奏を変えたわけではないでしょうが、この楽天的で自然な演奏は、宗教劇というよりは、まさに自然を描写したものという印象がぴったりとくるものでした。

天地創造は公演ではアーノンクールの最後の来日の際の演奏を聴いていますし、録音のレビューは随分な数取り上げていますが、これほどのびのび朗々とした演奏はありませんでした。自然さというか無欲の純心な演奏という意味ではペーター・シュライアー指揮の映像を思い起こさせるもの。お目当てのワルシャワ・シンフォニアは、「悲しみ」でのタイトさとは異なり、安定感抜群の職人オケとして長大な曲を手堅く演奏するプロという印象でした。終演後は万雷の拍手。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンという企画上、天地創造をはじめて聴くお客さんも少なくなかったでしょうが、曲の魅力をしっかりと伝える演奏がお客さんの心に残るいいコンサートだったといっていいでしょう。

終演は22:40頃とかなり夜もふけ、東京国際フォーラムの中庭も屋台が終わって静けさをとりもどしていました。

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ゴールデンウィークもあと少し。脚の怪我もだいぶおちついたので本日はスポーツクラブで泳いで体力回復に努めます(笑)

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tag : ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 東京国際フォーラム 天地創造 ひばり

ゼーフリート/クリップス/ウィーンフィルの天地創造から(ハイドン)

月末ですが、もう一つ小物をとりあげます。先日取り上げたヨーゼフ・クリップスとウィーンフィルの交響曲を取り上げた際に、ネットのディスコグラフィを調べていて発見したアルバム。

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新星堂とEMIによる”栄光のウィーンフィルハーモニー管弦楽団II~その指揮者とソリストたち~”というシリーズの第24集の「ウィーン国立歌劇場の名歌手たち」というアルバム。この中に「天地創造」からガブリエルのアリアを2曲が入っています。ガブリエルはイルムガルト・ゼーフリート(Irmgard Seefried)、ヨーゼフ・クリップス指揮のウィーンフィルの演奏。このアリアの演奏は1946年11月3日、4日です。

先日クリップスの振るウィーンフィルの素晴らしいハイドンに酔いしれましたが、冒頭に書いたとおり、他に録音がないかと調べていたところ、驚くべき録音が存在することがわかりました。ハイドンはハイドンでも天地創造であり、しかもガブリエルが好きなイルムガルト・ゼーフリート! アリアの抜粋とはいえ録音は1946年と戦後間もなく。録音が古いのが嬉しいのではなく、ゼーフリートのハイドンの中では一番若い時の録音ということで、ネットで発見して、マイクロセカンド単位の早業でamazonに注文を入れました。到着がこれほど待ち遠しいアルバムはありませんでした。

これまでゼーフリートの歌うハイドンは2度ほどレビューしていますが何れも天地創造。

2011/09/22 : ハイドン–オラトリオ : オイゲン・ヨッフム/バイエルン放送交響楽団の天地創造ライヴ-2
2011/09/20 : ハイドン–オラトリオ : オイゲン・ヨッフム/バイエルン放送交響楽団の天地創造ライヴ
2011/02/20 : ハイドン–オラトリオ : マルケヴィチ/ベルリンフィルの天地創造、ゼーフリート絶唱

マルケヴィチのアルバムでのゼーフリートのガブリエルのアリアを聴いたときの衝撃は忘れられません。アリアの音程がゆっくりと上がるのに合わせてこちらも昇天。この世のものとは思えない美しさに完全にノックアウトされました。この録音が1957年ということでゼーフリートは44歳、そして次に手にいれたヨッフムのアルバム1951年録音、ゼーフリート38歳。若干古目の録音からも可憐で艶やかなソプラノに痺れたものです。そして今回のアルバムは1946年録音ということでゼーフリート33歳。ちょっと平常心を失い気味です(笑)

このアルバムに収録されているのは第1部のガブリエルの第7曲のレチタティーヴォと第8曲のアリア、そして第2部冒頭の第14曲のレチタテイーヴォと第15曲のアリアです。

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
(Recitativo: Und Gott sprach, Aria: Num beut die Flur)
LPから起こしたものでしょうか、わずかながらスクラッチノイズが聞こえますが、音の鮮度は悪くありません。レチタティーヴォから憧れのゼーフリートの若々しい声にうっとり。かえってノイズがノスタルジックな雰囲気を盛り上げます。ガブリエルのアリアに入ると序奏からクリップスはかなりゆっくり目のテンポでウィーンフィルからゆったりとした響きを引き出しています。それに合わせてゼーフリートも朗々とアリアを歌います。ゆったりとした静けさの支配するアリア。マルヴィッチとの歌唱は成熟した魅力に溢れていましたが、こちらは若々しく可憐な印象。声の伸びはマルケヴィチ盤ですが、この清純な感じもいいですね。最後にすっと突き抜ける高音の魅力を聴かせます。

(Aria: Auf starkem Fittige)
第二部の冒頭の序奏から入ります。クリップスは相変わらず落ち着いてウィーンフィルを捌きます。しっとりとした響きが古きよきウィーンフィルの良さ。ゼーフリートは声量を抑えて可憐に入ります。歌のテクニックは後年のものには敵いませんが、持って生まれた声の美しさで聴かせるもの。憧れのゼーフリートですが、アリアの聴かせどころの演出などは、まだまだ工夫の余地があり、やはりマルケヴィチ盤の素晴らしい完成度、ヨッフム盤の声の輝きとは一段差がありました。

若かりしゼーフリートの美声を味わえる貴重なアルバム。よくぞこのアルバムを企画してくれました。このアルバム自体は1998年のもので、リリースから17年も経ってしまったことになります。戦後のウィーンの時代の空気を味わったような暖かい心になるアルバムでした。ちなみに他にもエーリッヒ・クンツのレポレッロ、シュワルツコップのトゥーランドットなど1940年代後半の華やかなウィーン国立歌劇場のアリアを楽しめる好企画です。ハイドンのアリアは[++++]としておきましょう。

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tag : 天地創造 ヒストリカル 美人奏者

【新着】フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管の天地創造(ハイドン)

最近リリースされた大物、ヘレヴェッヘの天地創造。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

フィリップ・ヘレヴェッヘ(Philippe Herreweghe)指揮のシャンゼリゼ管弦楽団(Orchestre des Champs-Elysées)、コレギウム・ヴォカーレ・ヘント(Collegium Vocale Gent)の演奏で、ハイドンのオラトリオ「天地創造」を収めたアルバム。収録は2014年3月24日から26日、ベルギーのブリュッセルにあるフラジェー(Flagey)第4スタジオでのセッション録音。レーベルはヘレヴェッヘの録音を専門にリリースするφ PHI。

ヘレヴェッヘのハイドンは今日取り上げるアルバムと同じ合唱団、オケとの組み合わせで収録した「四季」を昨年5月に取り上げています。

2014/05/12 : ハイドン–オラトリオ : 【新着】フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャンゼリゼ管の四季(ハイドン)

その時にも近いうちに天地創造もリリースされるであろうことはなんとなく予想していましたが、これほど早いリリースになるとは思ってもみませんでした。四季が未曾有の名演だったということもあり、この天地創造も期待のアルバムです。

ヘレヴェッヘの略歴などは四季のレビューの方をご参照ください。このアルバムに参加している歌手は下記のとおり。

ガブリエル/エヴァ(ソプラノ):クリスティーナ・ランズハマー(Christina Landshamer)
ウリエル(テノール):マクシミリアン・シュッミット(Maximilian Schmitt)
ラファエル/アダム(バス):ルドルフ・ローゼン(Rudolf Rosen)

歌手の方は四季とバスが違うだけで、ヘレヴェッヘのお気に入りの人でしょう。

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
第一部
ヘレヴェッヘらしい、ニュートラルな響きの序奏。シャンゼリゼ管は古楽器オケではありますが、低音楽器も厚みがあり、迫力も十分。同じ古楽器オケで愛聴しているクリスティ盤と比べると、クリスティの方が響きを整理して旋律がくっきりと浮かび上がる感じ。一方こちらのヘレヴェッヘ盤はまさに混沌から秩序が生まれ出てくるようすそのままのよう。響きの柔らかさ、フレージングのしなやかさはこちらの方が上。よりニュートラルといったらいいでしょうか。中庸なテンポで自然に進行、まさに中庸の美学のような演奏。ソロはバスのルドルフ・ローゼンは迫力よりも風格で聴かせる歌。四季のフローリアン・ベッシュが圧倒的な声量の存在感で聴かせたのとは異なるスタイル。テノールのマクシミリアン・シュミットは実に柔らかな声。キレのいい歌唱で、曲が引き締まります。これもヘレヴェッヘの好みでしょう。ガブリエルのクリスティーナ・ランズハマーはコケティシュといっていいほど線が細い声ですが高音の響きが美しく可憐。録音はソロがオケに溶け込みながらすっと浮かぶいいバランス。第一部の終盤のクライマックスへの道程は静寂と間を存分に活かして、やはりニュートラルなもの。力みは皆無。オケが軽々と吹け上がり、音楽のエッセンスが盛り上がることが本質だと言わんばかり。弦楽器がキレよくコーラスを伴って幾重もの波となって押しかけるよう。

第二部
ヘレヴェッヘの演奏スタイルに最もマッチしそうなのが第二部。フレーズを丁寧に描きながらテンポよく曲が進みます。第一部よりもテンポを上げ、曲の見通しをよくしようということでしょうか。ソプラノのクリスティーナ・ランズハマーは第一部よりも滑らかになり、しっとりとした美声の魅力が引き立ちます。第二部の途中でCD2に変わる一般的な区切り方。後半はラファエル、ウリエルのレチタティーヴォと美しいメロディーのアリアがつづきますが、ここにきてラファエルのルドルフ・ローゼンの語り口が実に巧い。この演奏でも歌の巧さが聴きどころ。第二部終盤の合唱、三重唱、合唱と進むところでの盛り上がりでもローゼンが絶妙な語り口を聴かせます。さっぱりとしながらもグイグイオケが攻めてくる感じはヘレヴェッヘの真骨頂というところでしょう。最後のハレルヤコーラスはコレギウム・ヴォカーレ・ヘントの透き通るようなコーラスが絶品。

第三部
ここまで、中庸の美学を保ちながら自然な演奏を繰り広げてきましたが、最後の第三部では染み入るようなしなやかな入りで緊張感が途切れません。実に美しい音楽。ウリエルのマクシミリアン・シュッミットの柔らかい歌唱が花を添えます。アダムとエヴァのデュエットはしなやかなな流れの中にパッと明かりが差したような華やかさ。長大な曲にもかかわらず、ディティールまで磨き抜かれたレベルの高い演奏。デュエットの最後の盛り上がりも一貫してしなやか。レチタティーヴォを挟んで、2番目のデュエットでもしっとりとした音楽が流れ、うっとりするばかり。金管の響きも絶妙にコントロールされていて、ところどころでアクセントをつけます。最後の合唱で再びコレギウム・ヴォカーレ・ヘントが透明な響きによる音の洪水のような素晴らしいコーラスを聴かせます。最後までしなやかさを失わない素晴らしい演奏でした。

フィリップ・ヘレヴェッヘによるハイドンのオラトリオ第二弾の天地創造ですが、聴けば聴くほど完成度の高さに唸らされる素晴らしい演奏。長大な曲があっという間に感じられるほどの夢のような時間でした。天地創造は演奏によっては力みを感じさせてしまうものですが、この演奏に力みは皆無。そして何より歌手とコーラスが素晴らしい出来です。聴き始めはバスが弱いかと思ったんですが、ルドルフ・ローゼン、実に印象的な語り口にグイグイ引き込まれます。美しいメロディーのアリアもいいのですが、表現力豊かなフォルテピアノによってレチタティーヴォも聴き応え十分。そしてヘレヴェッヘに隅から隅までコントロールされたシャンゼリゼ管も見事。天地創造の決定盤的存在と言ってもいいでしょう。評価はもちろん[+++++]とします。

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tag : 天地創造 古楽器

【新着】サヴァリッシュ/フィレンツェ五月音楽祭管天地創造ライブ(ハイドン)

リリースされたばかりのアルバムが到着!

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINE

ウォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch)指揮のフィレンツェ五月音楽祭管弦楽団、フィレンツェ五月音楽祭合唱団(Orchestra e Coro del Maggio Musivale Fiorentino)の演奏によるハイドンのオラトリオ「天地創造」。収録は1999年6月11日、12日、フィレンツェのペルゴラ劇場(Teatro della Pergola)でのライヴ。レーベルはフィレンツェ五月音楽祭の自主制作。

日本でもN響の育ての親的存在として広く知られるウォルフガング・サヴァリッシュの振る天地創造の1999年のライヴ。あんまりハイドンを振った印象が残っていなサヴァリッシュですが、実はサヴァリッシュの振るハイドンは過去に3度ほど取り上げています。

2013/03/04 : ハイドン–交響曲 : 【追悼】ヴォルフガング・サヴァリッシュ ウィーン響との「驚愕」「軍隊」「時計」
2010/11/15 : ハイドン–オラトリオ : サヴァリッシュ、N響の天地創造ライヴ
2010/06/10 : ハイドン–オラトリオ : 重厚、サヴァリッシュの四季

このうち天地創造は1991年に行われたBMWジャパン設立10周年を記念してサントリーホールで行われた演奏会の様子を収録して顧客に配られたもので市販品ではありません。私がBMWの優良顧客なわけもなくこのアルバムはいつも通りディスクユニオンで中古盤を仕入れたものです。このサントリーホールライヴはサヴァリッシュらしい重厚ながら見通しの良い秀演。特にバスのクルト・モルの図抜けた存在感が聴きどころでした。

今日取り上げるライヴ盤は先のサントリーホールでの91年のライヴから下ること8年の1999年、フィレンツェ五月音楽祭でのライヴ。なんとバスは同じくクルト・モルで、テノールも同じくヘルベルト・リッペルトということで、この2人、サヴァリッシュのお気に入りということででしょうか。ソプラノはアンドレア・ロスト(Andrea Rost)という布陣。この演奏当時75歳のサヴァリッシュがどのようにオケと歌手をコントロールしているかが聴きどころでしょう。

Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
冒頭から力感に満ちつつも枯れた表情も見せる大迫力のオーケストラサウンド。比較のために取り出したN響を振ったサントリーホールライヴがスタイリッシュに聞こえるほど、こちらの方がテンポが遅く、構えが大きく聴こえます。録音はライヴとしては水準レベルですが迫力は十分つたわります。いきなり驚かされるのがクルト・モルのラファエルの第一声のど迫力。録音のバランスかもしれませんが、圧倒的な声量でいきなり度肝を抜かれます。以前アーノンクールの来日公演でのフローリアン・ベッシュの同じくラファエルの第一声のホール中に轟く声に驚かされたのを思い出させます。人間の声がオケを圧倒するほどのの迫力を持つこともあるんですね。最初のクライマックスで床を踏み鳴らす音が聞こえますが、指揮台の上のサヴァリッシュでしょうか。テノールのヘルベルト・リッペルトは声量は普通ながらキレの良い通りの良い声での安定した歌唱。ソプラノのアンドレア・ロストはテンションの高い高音よく通る声。聴きどころのガブリエルのアリアでは癒しというよりは艶やかな強い女を演じる感じ。ゆったりと歩んできた第一部ですが、第12曲の「いまや輝きに満ちて、陽は光を放ちながら昇る」からのクライマックスへのじっくりとした盛り上がりは、まさに晩年のサヴァリッシュの面目躍如。あわてずにじっくりと歩みを進めながら確実に頂点に近づいていく巨匠の技。ソロ、コーラス、オケが渾然一体となって昇り詰め、観客もその勢いに応えて拍手してしまいます。

CDを入れ替え第二部。迫力の第一部に対しアリアの美しさ、メロディーの面白さでは第一部以上に期待できる第二部ですが、サヴァリッシュも歩みをかなり遅くとった第一部に対して、すこし流れの良さを聴かせようとする方向にシフトしたのか、メロディーラインをくっきりと浮かび上がらせることに意識が向いてきたよう。最初のガブリエルのアリアは第一部よりもしなやかに演出します。続く三重唱とコーラスではソロがそれぞれ突き抜けるようにアリアを聴かせた上で再び頂点を迎え、サヴァリッシュが実に自然な歩みでクライマックスを築きます。そして第二部の一番の聴きどころのラファエルのアリア「いまや天は光に溢れて輝き」はクルト・モルの絶唱。生で聴いたらその声量と迫力に圧倒されたでしょう。身震いするほどの見事なコントロール。続くウリエルのレチタティーヴォとアリアに至ってサヴァリシュは音楽の純度を高め、透き通るようなリッペルトの声質をしなやかにサポートします。そして第二部の終曲は素晴らしいアリアの洪水の締めくくりとしてリズミカルにハレルヤコーラス。中間部のソロではクルト・モルが圧倒的な存在感。再びハレルヤコーラスに包まれ音楽は陶酔の彼方へ。

最後の第三部。冒頭から癒しに満ちた音楽。最初はちょっと鈍重だったオケも、第二部で完全に音楽を掌握し、第三部に至ってサヴァリッシュの棒に完全に一体となって音楽がいきいきと弾むようになってきました。第三部の聴きどころ、アダムとエヴァのデュエット、純度は最高潮。まさに至福に時の流れ。クルト・モルはこれまでの圧倒的な声量をあえて抑えて、エヴァをやさしく支えます。サヴァリッシュは天地創造に込められた音楽の素晴らしさをしなやかに表現することに徹して、水も漏らさぬコントロール。このゆったりとした音楽の流れを保つ円熟の棒捌き。ゆったりとゆったりと音楽が波打ち、湧き上がる感興に純粋に身を任せる喜び。第三部を神がかったような集中力でコントロール。まさに滔々とした大河の流れのよう。アダムとエヴァの第二のデュエットに至り、クルト・モルとアンドレア・ロストの至芸に完全にノックアウト。眼前で繰り広げられる迫真のデュエットを浴びるよう。そして徐々に終曲に近づく足音のようなメロディの緊張感。たまりません。本当の終曲はいきなりギア5段チェンジ! なんという展開。オケの音量が突然一気に上がります。これは録音レベルの調整でしょうか。天地創造の終曲はあっさりと終わる演奏もある中、この演奏は無理やりというか確信犯的に終曲に最高到達点をもってきました。驚愕のフィナーレ! 最後は拍手で終わりますが、これは衝撃的なフィナーレです。

日本のクラシックファンの育ての親的存在のウォルフガング・サヴァリッシュの振る天地創造のライヴ。重厚な演奏であろうことは以前のライヴからも想像できましたが、この展開は予想外。最後の外連味あふれる展開はまったく想定していませんでしたのでかなり驚きました。冒頭の第一部はちょっと重苦しい面もあり、第一部を聴いた時点では以前のN響のライヴの方に分があるとの印象でした。ただし、第二部、第三部と進むにつれ、サヴァリッシュの円熟の棒に引き込まれ、天地創造に込められた素晴らしい音楽の流れの魅力に圧倒されることになります。天地創造は第一部のドラマティックな展開が聴きどころでもありますが、最近は第二部、第三部の素晴らしい音楽にこそこの曲の真の魅力があると思うようになり、このサヴァリッシュの演奏はまさに第二部、三部が真の聴きどころということになります。評価は第一部の鈍重さを補って余りある後半のすばらしさを買って[+++++]とします。

ジャケットに写るサヴァリッシュの表情をまぶたに思い浮かべながら聴く第三部はまさにハイドンの音楽の素晴らしさにどっぷりと浸れる至福の時間でした。サヴァリッシュが亡くなってから2年余りが過ぎようとしていますが、あらためてその音楽の素晴らしさに触れられましたね。あちらでハイドンと仲良くやっているのでしょうか、、、

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tag : 天地創造 ライヴ録音

アニク・マシスの宗教曲アリア集(ハイドン)

久々の歌モノです。

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アニク・マシス(Annick Massis)のソプラノ、ダニエル・インバル(Daniel Inbal)指揮のコロンヌ合唱団&管弦楽団(Chœurs & Orchestre Colonne)の演奏で、モーツァルトの宗教曲の中のアリア5曲、ハイドンの宗教曲からのアリア6曲を収めたアルバム。収録は2003年10月21日、パリ、リュクサンブール公園近くのノートル・ダム・デュ・リバン教会(Eglise Notre-Dame du Liban)でのライブ収録。レーベルはスイスのCASCAVELLE。

ソプラノのアニク・マシスはHMV ONLINEの解説によれば、フランスではナタリー・デセイと人気を二分する存在とのこと。生まれは1960年(私より年上!)、最初は学校の教師とした働いていたそうですが、パリのフランシス・プーランク音楽院で学び歌手の道に入ったとのこと。デビューは1990年代にトゥールーズ歌劇場でモーツァルトのオペラやビゼーの真珠採りなどを歌ったということです。以来ヨーロッパ、アメリカの歌劇場などで活躍しています。彼女のサイトも紹介しておきましょう。

Annick Massis, Soprano: The Official Website

今日取り上げるアルバムのジャケット写真ではちょっと婦長さん的イメージで写っていますが、オフィシャルサイトでのイメージは妖艶なソプラノです(笑)

指揮者のダニエル・インバルは名前からお察しのとおり、エリアフ・インバルの息子とのこと。パーヴォやカルロス並みに親を超える存在なのでしょうか、興味深々。

このアルバムの収録曲目のうちモーツァルトの5曲は下記のとおり。

証聖者の盛儀晩課(K.339)
エクスルターテ・ユビラーテ(K.165)
戴冠式ミサ(K.317)
ミサ曲第16番(K.427(417a))
聖体の秘蹟のための連祷(K.243)

ハイドンの曲はレビューをしながら紹介しましょう。

Hob.XXI:1 / "Il ritorno di Tobia" 「トビアの帰還」 (1775)
「トビアの帰還」の第2部からラッファエッレのアリア「天の使いが皆さんに語っているものとして」(No.10b Aria:"Come se a voi parlasse um messagier del cielo" )。実にゆったりとしたオケの伴奏から入ります。オケはエリアフ・インバルの息子ダニエル・インバルのコントロールと知って聴くと、素直に空気感を生かしたストレスのない演奏に合点がいきます。アニク・マシスのソプラノは空中に浮かぶようにちょっと非現実的に定位する不思議な録音。肝心の歌唱は朗々とした高音の伸びが聴きどころのベルカント風の歌唱。録音のせいか低音部が細く、表情の変化は少なく、表現の幅があとすこし広がればと思わせなくはありません。終盤、オーケストラのユーモラスな旋律に乗ってソプラノの絶唱に至る部分が登場しますが、高音の伸びと声量でかなりのインパクトを与えます。

Hob.XXI:3 / "Die Jahreszeiten" 「四季」 (1799-1801)
つづいて「四季」から2曲。夏からハンネのレチタティーヴォ「さあ、暗い森にきました」に続いてアリア「なんという爽やかな感じでしょう」、冬からハンネのカヴァテーナ「光と命は衰え」。やはりオケの空気感は心地良いですね。教会での録音ゆえたっぷりした残響を伴い、実に癒しに満ちた伴奏。曲が成熟したからか、伴奏と歌も落ち着いてじっくり音楽を描いていく感じ。マシスはここぞというところまでは表情を抑えて、前曲よりも抑制が効いている感じ。ソプラノの定位は前曲ほどの違和感がなく実態感が増した感じ。オーボエのトロけるような美音が伴奏を彩り、歌以上にオケに癒されます。レチタティーヴォからアリアに入るとマシスの歌が雄弁に変わり、音量を上げて聴くとマシスの存在感が一層際立ちます。最後の超絶高音がど迫力。
冬のカヴァティーナではふたたび空中に漂うソプラノに戻ります。

Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
天地創造からは、まずは有名な第1部のガブリエルのレチタティーヴォとアリア。このアリアはカラヤン盤などで歌うヤノヴィッツの心に刺さる歌が記憶に残るところですが、このアニク・マシスも悪くありません。これまでの曲で聴かれた少々腰高な印象は消え去り、このガブリエルのアリアではゆったりと響きわたるオケに乗ってかなりリラックスした歌を聴かせます。やはり終盤のきかせどころで高音の音階を惜しげもなく披露。
もう1曲は第2部冒頭のガブリエルのレチタティーヴォとアリア。こちらもオケの心地よい響きを十分楽しんだ上でのアリア。若干浮き足立つようなインテンポでマシスが入りますがオケは慌てずゆったりとした演奏を維持。第2部ということで少しリラックスする時間があったのか、いい具合に癒しエネルギーが発散されています。

Hob.XXbis / "Stabat Mater" 「スタバト・マーテル」 [g] (1767)
最後のスタバト・マーテルからの曲はライナーノーツでは第3曲という記載になってますが、他のアルバムと聴き比べると第4曲の誤りですね。このアルバムに収録されたハイドンの曲としては一番作曲年代が早い曲が最後に置かれました。スタバト・マーテルといえばハイドンが病から回復した時に感謝の意を込めて作曲した曲。このアルバムでもそのような感謝の心が眼に浮かぶような祈りに近い清澄な音楽が流れます。マシスのソプラノ以上にダニエル・インバル率いるオケの自然なソノリティに惹きつけられる演奏でした。

久々に取り上げた歌モノ。ソプラノのアニク・マシスは触れ込み通り本格的なソプラノで、高音の伸びと音量で聴かせるベル・カント・ソプラノ。古典期のハイドンの宗教曲に合うのかとの危惧もありましたが、アルバムを聴くと朗々とした高音の魅力は聴かせどころとして申し分ありません。こうしてベル・カントで歌われているのを聴くと、ハイドンの宗教曲も後の世代の音楽とは根本的に異なるものの、声の魅力を生かして書かれていることがよくわかります。アニク・マシスの歌いぶりもさることながら、このアルバムの魅力の半分はダニエル・インバル率いるオケの非常に自然な演奏にあります。決定盤とはいわないものの、ハイドンの宗教曲のアリアをまとめたアルバムとしては、かなりいい線いっていると思います。評価は全曲[++++]としたいと思います。

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【新着】ハイティンク/バイエルン放送響の天地創造ライヴ(ハイドン)

書きかけの記事があるのですが、大物が手に入ったので、横入りでレビューです! 湖国JHさん、スミマセン!

HaitinkCreation.jpg
HMV ONLINEicon / TOWER RECORDS

ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のバイエルン放送合唱団、バイエルン放送交響楽団の演奏で、ハイドンのオラトリオ「天地創造」。合唱指揮はペーター・ダイクストラ(Peter Dijkstra)。収録は2013年12月19日から20日にかけて、ミュンヘンのヘラクレスザールでのライヴ。レーベルはバイエルン放送響の自主制作BR KLASSIK。

このアルバム、巨匠ハイティンクの最新のライヴということで、リリースが発表されたときより心待ちにしていたもの。注文をいれておいたものがようやく届き、早速のレビュー。ハイティンクのハイドンは正規録音は少なく、CD-Rがほとんど。これまでとりあげたハイティンクのハイドンの演奏はどれも素晴しいものでした。

2014/02/22 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/コンセルトヘボウ管の奇跡、99番(ハイドン)
2014/01/20 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)
2011/07/21 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ベルリンフィルの95番ライヴ
2011/06/28 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!
2011/05/12 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ

今日取り上げるアルバムはハイティンクのハイドンの正規録音としては非常に貴重なものです。しかも曲目は天地創造、昨年のライヴということで否が応でも期待が高まります。ハイティンクのビシッとオケを引き締めた筋肉質の演奏がきかれるでしょうか。

ソロは下記のとおり。

ガブリエル/エヴァ:カミラ・ティリング(Camilla Tilling)
ウリエル:マーク・パドモア(Mark Padmore)
ラファエル/アダム:ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(Hanno Müller-Brachmann)

ソプラノのカミラ・ティリングははじめて聴く人。1971年生まれのスウェーデンのソプラノ。テノールのマーク・パドモアはマクリーシュの天地創造でもウリエルを歌ってました。そしてバス=バリトンのハンノ・ミュラー=ブラッハマンはアンドレアス・シュペリングの天地創造で、ラファエルとアダムを歌っている人。決して豪華な布陣ではありませんが、堅実な歌手をそろえているといっていいでしょう。オケと合唱は名門バイエルン放送響ということで、ハイティンクの相手としては申し分ありません。

Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
冒頭からこれ以上図太い響きはないほどの渾身の一撃。録音は流石に最新のものだけあって、広大なダイナミックレンジを感じさせるもの。響きの良いヘラクレスザールらしく、ホール内に響きの余韻が消え入るようすが手に取るようにわかります。ゆったりとしたテンポながらタイトに攻めていくのはハイティンクならでは進行。第1部は特に静けさの表現が見事。静寂から轟音が轟く場面の迫力は素晴しいものがあります。ヴォリュームの調整を誤るともの凄い音量になります。ウリエルのパドモアはヴィブラートがかかった独特の歌唱。ミュラー=ブラッハマンは声量よりもエッジを立ててクッキリと語るように聴かせる声。そして期待のカミラ・ティリングは余韻がふくよかななかなか美しい声。ハイティンクの重厚なコントロールに従い、それぞれ独特ながら落ち着いた歌唱を聴かせます。第1部のガブリエルのアリアはすこしメロディーがふらつくもののティリングは独特の色っぽさのある歌唱を聴かせます。期待の第1部終盤の盛り上がりはやはりハイティンクの盤石のコントロール。消え入るような弱音からクライマックスに至る盛り上がりは、オケの奏者全員が筋肉質に鍛え上げられたような力感あふれるもの。どうしても耳が歌手よりもオーケストラにいってしまいます。重厚に響くオケとコーラスの快感。ヘラクレスザールに響きわたる大音響。大津波のようなクライマックス! 汗かいちゃいます(笑)

ここでCDを入れ替えて、第2部以降を聴きます。第1部は重厚長大な印象が強かったんですが、第2部に入ると、軽やかな表情も見せ始めます。ガブリエルのティリングはやはり独特な雰囲気を感じさせる個性的な歌唱で冒頭のレチタティーヴォとアリアを支配。純粋に美しい音楽を楽しめる第2部、やはりハイティンクの操るオケの魅力が際立ちます。分厚い響きに乗ってソロとコーラスを交えて昇天。特に低音弦の迫力はちょっと類が無いほど。素晴しく自然で鮮明な録音のおかげで自宅がヘラクレスザールになったようにスピーカーのまわりに響きが満ちあふれます。次々と流れる素晴しいメロディーの数々に痺れます。それぞれ個性的な歌手の声にも馴れて、心地よく響きを楽しめるようになってきました。オケがこれほどに気持ちよく鳴る演奏がこれまであったでしょうか。ハイティンクの絶妙なオーケストラコントロールに完全にやられてます。オケもコーラスも渾然一体になってハイティンクにグイグイドライブされていきます。第2部の終結部のハレルヤコーラスも天から光が射してくるような神々しい雰囲気に満たされ、最後は響きの坩堝に巻き込まれるよう。

第3部は、自然なメロディーをハイティンクの作為はないものの自然な迫力を加えた演奏で聴きます。ここにきてウリエルの歌唱がしなやかさを増し、実にいい感じ。アダムとエヴァのデュエットはハイティンクの純粋無垢な伴奏が心を打ちます。さっぱりとしていながらも、柔らかな厚みで支える円熟の境地。ここはソロを引き立て、オケもコーラスも絶妙に抑えます。デュエットの後のじわりと盛り上ってくるところの燻し銀の演出にも痺れます。ハイドンの曲に宿る気配のようなものまで含めて、ダイナミックに、しかもしっとりと描いて行く手腕な見事。特に第2部以降の自然な佇まいは神がかっています。終曲にいたるまで、ハイティンクのコントロールに圧倒されっぱなしでした。終曲のオケ、コーラス、ソロの渾然一体となった壮麗さにも打たれました。

巨匠ベルナルド・ハイティクの指揮する名門バイエルン放送響の2013年12月の天地創造ライブ。ヘラクレス・ザールの素晴しい響きをそのままアルバムにしたような完璧な録音によって会場の興奮がつたわります。この天地創造はハイティンクの見事なオーケストラコントロールが圧倒的な魅力になっています。歌手はハイティンクの好みかもしれませんが、かなり個性的な布陣。歌手だけスポットライトを当てれば、このアルバムよりすぐれたものは沢山ありますが、オケとコーラスの圧倒的な存在感はこのアルバムを越えるものはあまりないでしょう。ハイティンクはこの演奏時84歳。円熟は感じさせても老いは一切感じさせない力強い音楽は流石です。このアルバム、大音量で聞くとまさに天地を創造しているよう。これは名演です。歌手の分を割り引くと言う考えもありましたが、ハイティンクの圧倒的な音楽に敬意を評して[+++++]とします。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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