【ハイドン音盤倉庫特選】ザロモンセットの名演奏(前編)

突然ですが、新企画です!

日頃は1枚1枚のアルバムをレビューすることに徹しておりますが、私の興味の矛先がだんだんマニアックになってきて、レビュー対象もこのところマイナー盤やLPが多くなってきております。自然と読者の方もハイドンマニアの方中心になっており、読者層がなかなか広がらない状態で、これはとりもなおさずハイドンの音楽の素晴らしさを世に広めるという当ブログのミッションの達成が危ぶまれるというもの。ということで、このマンネリズム的状況から脱出すべくハイドンの有名曲のベスト盤をあえて世に問おうという起死回生の新企画を立ち上げます。

私自身は以前ブログに書いた通り、人が良いと勧めるものを聴くということはあまり好まず、自分の耳で聴いて、良い演奏を発掘するすることに無類の喜びを見出し、知る人ぞ知る名盤を発掘する巡礼の旅を続けております。もとより世の中に氾濫するベスト盤的な情報はあんまり信用しておらず、実際に雑誌などで勧められているハイドンのベスト盤などよりも素晴らしい演奏が山ほどあることを長年かかってわかったこともそうした思考に至る理由の一つです。ただし、そんな私も振り返ってみると、これまで雑誌などで目に留まった記事などを頼りに暗中模索的に1枚ずつアルバムを手に入れることを繰り返してながらかなりの数のアルバムを聴いてきた経験があるからこそ、そうした境地に至ったのかもしれないと改めて思った次第。

ということで、新企画はハイドンの音楽の素晴らしさをより多くの人に知っていただくため、膨大なハイドンの録音の収集とレビューを続けている当ブログだからこそ選べる、ハイドンの音楽の真髄に迫る名演奏を選定するもの。選定方針としては、多少の入手のしにくさなどには目をつぶり、その曲が持つ魅力を最も深く味わえる演奏とし、世評は意識せず、私自身が最も好きな演奏を選ぶというのが大方針。日頃ヒストリカルな演奏から古楽器、現代楽器を問わず広く色々な演奏を取り上げておりますが、本企画でもそうした演奏スタイルなどに拘らずに選定していこうと思います。また、選定対象は過去にレビューに取り上げたアルバムが多くなりますが、当ブログの記事を隅々まで読まれている方にも新鮮さを確保するため、ブログに未掲載の演奏も選定対象として加えました。名付けて「ハイドン音盤倉庫特選」シリーズ。手始めにハイドンの交響曲の有名曲として、ザロモンセットの前半6曲の特選盤を新企画最初の記事としてしたためました。



Hob.I:93 Symphony No.93 [D] (1791)

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2010/06/13 : ハイドン–交響曲 : 剛演、アンチェルの93番

作曲順では96番「奇跡」がザロモンセットの最初の曲ですが、ホーボーケン番号が一番若いためにザロモンセットでも最初に収録されることが多い曲。選んだのはチェコの巨匠、カレル・アンチェル指揮のベルリン放送交響楽団の演奏で、1957年4月24日の放送用録音。手元の49種の演奏の中で飛び抜けて印象的な演奏。ブログ初期に取り上げていますが、未だこれを超える演奏には出会っていません。赤熱する鉄の塊から刀鍛冶が渾身の力で刀を打ち出していくかのような激熱の演奏。ハイドンらしい構成感が美しい曲ですが、この典雅な曲からこれほどのエネルギー溢れる演奏が生まれるとは! この演奏を聴くまではこの曲はビーチャムやヨッフムの味わい深い演奏がお気に入りでしたが、この演奏によって曲の印象は一変。ハイドンの楽譜の中にこのエネルギーが込められていたことをアンチェルが見抜いたのでしょう。この1枚でカレル・アンチェルの凄さを知った次第。


Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)

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2013/02/09 : ハイドン–交響曲 : カルロス・クライバー/ケルン放送交響楽団の驚愕1972年ライヴ!

ご存知びっくり交響曲。104番「ロンドン」と並んで人気のある曲。この驚愕こそ世の中の人に最も知られたハイドンの曲であり、ハイドンのイメージを良くも悪くも代表する曲。2楽章のびっくりばかりが一人歩きしていますが、この曲の真髄は1楽章から4楽章までの明確な起承転結の構成感と優美なメロディー。名演奏ひしめく手元の117種の演奏から私がこの曲の決定盤に選んだのは、カルロス・クライバー! クライバーの驚愕には3種の録音がありますが、これはその中でも最も古い1972年のケルン放送交響楽団とのライヴ。世界をあっと言わせたウィーンフィルとの「運命」のDG盤が1975年のリリースですので、それより前の若さみなぎるクライバーの演奏。残念ながら海賊盤しかリリースされていませんが、この録音が音質も一番いいもの。クライバーが振ると、もちろん全編に燃えたぎる力感と優美さが調和する、まるでミケランジェロの彫刻のような存在に昇華されます。最初から最後までクライバーの天才ぶりに圧倒される素晴らしい演奏です。


Hob.I:95 Symphony No.95 [c] (1791)

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2010/04/21 : ハイドン–交響曲 : 枯淡、シューリヒトのハイドン

ザロモンセットの中で唯一の短調の交響曲。それゆえ比較的地味な存在ですが、1楽章冒頭の険しさ、全編に散りばめられた美しいメロディー、そして終楽章の燃え上がるようなクライマックスが魅力の曲。手元の49種の演奏の中で私が最も愛する演奏はカール・シューリヒトがシュツットガルト放送響を振った1955年4月5日の録音。このアルバムは直接レビューしておりませんが、上のブログ初期の記事で86番を取り上げた際にこのアルバムに触れています。シューリヒトのハイドンでは104番ロンドンと86番が味わい深い名演として有名ですが、どっこいこの95番こそシューリヒトの素晴らしさが味わえる演奏です。柔らかくしなやかに響くオーケストラですが、造形は端正で、ハイドンの交響曲の骨格をしっかりと描き、その上そよ風のような心地よさと滲み出るような味わいの深さ。それがこの95番交響曲のもつ可憐な表情を描き切っています。アンダンテの美しさはこの世のものとは思えな境地、そして終楽章の自然で流麗なのにものすごい迫力に至るところは見事の一言!


Hob.I:96 Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)

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2010/02/11 : ハイドン–交響曲 : アバドの「奇跡」

1791年、ハイドンが最初にロンドンを訪れた時、最初に作曲した曲。「奇跡」というニックネームはこの曲の演奏時にハイドンを一目見ようとハイドンの周りに観客が殺到した際、会場のシャンデリアが落下したものの、奇跡的に一人の怪我人も出なかったという逸話によるもの。気のせいか曲自体にもミラクルな感じがするところが面白いところ。手元にある67種の演奏から、このミラクルな曲のミラクルな演奏といえば、クラウディオ・アバドがヨーロッパ室内管を振った1986年の演奏です。この時期、アバドはヨーロッパ室内管とザロモンセットから8曲と協奏交響曲などを録音していますが、そのシリーズの中でも飛び抜けてこの奇跡が素晴らしい出来です。奇跡といえばワルター、クリュイタンスなどの名演盤を推す方もあろうかと思いますが、このアバドの演奏は若手中心のヨーロッパ室内管の驚くほど俊敏な反応の良さで聴かせる演奏。アバドのニュートラルな指揮はこの曲の純音楽的な構成の面白さを際立たせ、終楽章の火を吹くような鮮やかさはまさにミラクル!


Hob.I:97 Symphony No.97 [C] (1792)

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2010/03/22 : ハイドン–交響曲 : クイケンのザロモンセット

ハイドンが第1回目のロンドン旅行中の1792年に作曲した曲。熱狂的に迎えられたロンドンでの充実した日々を経て、交響曲の筆致も熟成を極めたハイドンが書いたハ長調の晴朗、端正な曲。ニックネームがないことから比較的地味な存在ですが、この端正な曲には端正な演奏が似合います。手元の49種の演奏から選んだのがシギスヴァルト・クイケンの振るラ・プティット・バンドによる1993年の録音。古楽器のザロモンセットの録音には古くはグッドマン、ブリュッヘン、ミンコフスキなどのものがありますが、私が一番好きなのはこのクイケンのもの。どの曲も端正な演奏ながら音楽がイキイキとした名演奏なんですが、中でもこの97番は古楽器オケが気持ちよく鳴り響く名録音です。この曲のメヌエットは典雅の極み。古楽器の響きに包まれるエクスタシー。リズムのキレも最高。最後まで一糸乱れぬ古楽器オケによる最高の演奏です。


Hob.I:98 Symphony No.98 [B flat] (1792)

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ザロモンセット前半最後の98番。97番同様第1回のロンドン旅行中の作曲。98番もザロモンセットの中では地味な曲ではありますが、緊密な構成であることはもちろん、美しい緩徐楽章、機知に富んだ展開に溢れ、特に終楽章の最後にチェンバロのソロが登場することで有名な曲。この曲の52種の演奏から私が選んだのは、オイゲン・ヨッフム指揮のロンドンフィルによる1972年録音のアルバム。ヨッフムとロンドンフィルとのザロモンセットは多くの方の愛聴盤となっているいわば定番。98番は特に終楽章に一貫性を持たせるのが難しい曲ですが、ヨッフムの速めのテンポによる非常に流れの良い演奏と自然なデュナーミクによって、まるで絵巻物を見ていくように音楽が一貫して流れる心地よさを味わえます。当初、少し前にレビューしたヨッフムが1962年にベルリンフィルを振った殺気を感じるほどの切れ込みと迫力を味わえる録音を選ぶつもりでしたが、98番についてはロンドンフィル盤の流麗な見通しの良さの素晴らしさが勝ると確信し見直しました。この曲には他にドレスデンシュターツカペレとの盤の燻し銀の響きを味わえる録音もあり、3者とも素晴らしい演奏です。
(参考)2014/04/25 : ハイドン–交響曲 : オイゲン・ヨッフム/ベルリンフィルの88番、98番(ハイドン)



以上、ザロモンセット前半6曲の名盤セレクションでした。本記事を書くために色々なアルバムを聴き直しましたが、それはそれで楽しい時間でした。有名曲だけに、読者の皆様も色々と愛聴盤があろうかと思います。ご意見、お叱りなどありましたらコメントの方にどうぞ!

ちょっと間を置いて、ザロモンセットの後半6曲についても書きたいと思いますのでご期待ください。

※本記事で取り上げた演奏について所有盤リストには"Best Choice of Works"というリンクを貼り付けました。

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エドゥアルド・ファン・ベイヌム/RCOの驚愕、奇跡、97番(ハイドン)

今日はヒストリカル。

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HMV ONLINEicon / HMV ONLINEicon(DECCA盤) / amazon(DECCA盤) / TOWER RECORDS(DECCA盤)

エドゥアルド・ファン・ベイヌム(Eduard van Beinum)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、96番「奇跡」、97番、ブルックナーの交響曲7番の4曲を収めた2枚組のアルバム。ハイドンの収録は驚愕が1951年9月、奇跡が1952年12月、97番が1953年5月、いずれもアムステルダム・コンセルトヘボウの大ホールでのセッション録音。原盤はDECCAですが、手元のアルバムはRETROSPECTIVEレーベルのもの。最近DECCAからもハイドンのみの1枚がリリースされています。また、この3曲に関してはDECCAのLPから起こしたと思われるHaydn Houseのアルバムも手元にあります。

実は最近DUTTONの1947年録音の奇跡を手に入れ、そちらのレビューをしようとして比較のためにこのアルバムを聴いてみると、双方それぞれ良さがあるのですが、一般の人にオススメするにはこちらのアルバムの方が好ましいということで、急遽レビュー盤を変更した次第。奇跡に限って言えば1947年の方は小気味よくスタイリッシュな演奏なのにくらべ、こちらはくっきりとして迫力もある演奏という違いがあります。

そもそもエドゥアルド・ファン・ベイヌムにはハイドンの交響曲は他に軍隊の録音があり、ザロモンセットから4曲を録音しており、ハイドンの交響曲をレパートリーとしていた節はありますが、これまで一度も取り上げておらず、私自身ベイヌムの他の演奏にも親しんでいなかったので、どのような音楽を作る人か、いちどちゃんと聴いてみたいと思っていた人でした。

一応Wikipediaなどを参考に略歴などに触れておきましょう。

エドゥアルド・ファン・ベイヌムは1941年、オランダ東部のアルンヘム生まれの指揮者。16歳で地元アルンヘム管弦楽団にヴァイオリニストとして入団、翌年アムステルダム音楽院に入り、ピアノ、ヴィオラ、作曲を学びました。1920年にピアニストとしてデビューしますが、アマチュアオーケストラや合唱の指揮を始め、指揮者に転向することになります。1927年に指揮者としてデビュー、オランダのハールレム交響楽団の音楽監督となり、1929年アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団への客演が成功裏に終わり、1931年にピエール・モントゥーの推薦、メンゲルベルクの招きで同楽団の次席指揮者となったのち、1938年から首席指揮者になりました。1945年、メンゲルベルクがナチスへの協力で追放されると、コンセルトヘボウの音楽監督兼終身指揮者に就任します。1949年にはロンドン・フィルハーモニーの首席指揮者に就任、そして1956年からはロサンジェルス・フィルの終身指揮者に就任します。晩年は病気がちだったとのことで1959年4月、アムステルダムでのリハーサル中に心臓発作で倒れ、57歳で亡くなりました。

アムステルダム・コンセルトヘボウ管はオランダ人の音楽監督を置くということで、ベイヌムの後任は若いベルナルド・ハイティンクが務めることになりますが、あまりの若さにオイゲン・ヨッフムが補佐として常任指揮者として1964年まで加わりました。

ベイヌムはメンゲルベルクのロマン的音楽づくりに対して客観的な解釈でコンセルトヘボウに新風を吹き込んだとされています。今聴くベイヌムのハイドンはその指摘どおり、かっちりとした迫力に満ち、しかも流れの良さも併せ持つなかなか見事なものです。

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
1950年代の録音としてはかなり鮮明。いくぶん速めのテンポで健全なインテンポによるキリリと引き締まった音楽を創っていきます。ベイヌムの演奏スタイルはハイドンの音楽に実によくマッチしたもの。弛緩ない引き締まった表情で、ハイドンの音楽が凛々しく響き渡ります。驚愕の1楽章は構成感の緻密さが聴きどころですが、ベイヌムの手にかかると立体感あふれる彫像のような見事なフォルムを見せます。
2楽章のビックリもタイトに引き締まって、こけおどし的側面は皆無。ハイドンの音楽の気高さを強調するように、引き締まった音楽のままグイグイ攻めていき、ゆったりとした表情は見せません。オケの響きも各楽器の響きのバランスがよく、音楽の一体感も見事。
メヌエットもタイト。楽章間の対比やテンポの変化は逆に最小限。まさに一貫してタイトな音楽。休符も短めで音楽の流れの良さを強調しているよう。よく聴くとそれでも抑えるべきところで音量を絞り、単調になるのを避けています。
フィナーレはこれまでの一貫したスタイルの総決算。適度な前のめり感を保ちながらグイグイきます。オケの響きは引き締まりまくり、後年の響きの豊かなコンセルトヘボウと同じオケとは思えない禁欲的な響きで圧倒します。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
続いて奇跡。驚愕の一貫してタイトな表情にくらべ、少し余裕が増して落ち着きを保っているように聴こえます。演奏の基調は前曲と同じものを感じますが、曲に仕込まれたウィットを活かしてコミカルさを感じさせる余裕があります。速いパッセージのヴァイオリンの流麗なところは流石コンセルトヘボウ、録音の違いか柔らかな印象も加わり、引き締まりながらも表情豊かなかなかいい演奏。
つづくアンダンテは前曲と異なり、普通にゆったりとした表情の演奏。中間部の攻め込みにベイヌムらしいタイトな印象を垣間見せますが、すぐにゆったりとした表情に戻ります。
メヌエットも余裕がある一般的演奏。驚愕の攻め込むスタイルがベイヌム風だとすれば、こちらは普通の演奏ですが、ハイドンの曲としては、このほんのりとタイトでバランスの良い演奏の方が曲の良さが引き立ちます。
フィナーレもタイトさを感じさせるバランスの良い演奏。この曲の面白さを象徴する楽章ですが、楽譜に仕組まれたウィットに反応してオケも自在に攻めてきます。バランスの良い秀演でした。

Hob.I:97 / Symphony No.97 [C] (1792)
最後の97番は簡単に。一番最近の録音ながら、音はちょっとこもり気味。演奏は奇跡と同様余裕をもったバランスの良い演奏。聴くと確かに新古典主義的な端正なフォルムを感じさせます。1950年代には垢抜けた演奏として受け取られたということは想像できます。この97番も奇跡もちょっと聴くとオーソドックスな、どちらかというと個性的な演奏とは言い難い演奏ですが、適度にタイトな表情の魅力と、演奏からにじみ出る味わい、ハイドンの曲の面白さを素直に表した良さがあり、これはこれで完成度の高いなかなかいい演奏です。

エドゥアルド・ファン・ベイヌムと手兵アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によるハイドンのザロモンセットからの3曲、ベイヌムとはどうゆう音楽を奏でる人だったのかを知ることができる興味深い演奏でした。驚愕の攻め込む姿勢は非常に挑戦的ですが、ちょっと平板さもはらんでいました。逆に落ち着いて音楽をとらえた奇跡と97番は突き抜けた個性を感じさせる演奏ではありませんが、ハイドンの交響曲の演奏としては理想的な高次のバランスを保った名演とみなすことができるでしょう。こうした評価は人によってはまったく逆転することもあるでしょうが、私はバランスの良い演奏の方を採りたいと思います。というわけで評価は驚愕が[++++]、残り2曲が[+++++]とします。

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ショルティ/ロンドンフィルの「奇跡」、「時計」(ハイドン)

年度はじめに相応しく、メジャーアーティスト、メジャーレーベルのメジャーな曲。私個人の嗜好のままレビュー盤を選んでいくと、どんどんマイナーなアルバムになってしまいますので、意図してメジャーなアルバムをセレクトします。

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amazon / amazon(ザロモンセット)/TOWER RECORDS(ザロモンセット)

サー・ゲオルク・ショルティ(Sir Georg Solti)指揮のロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(London Philharmonic Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲96番「奇跡」、101番「時計」の2曲を収めたアルバム。収録は1981年3月、ロンドンのキングスウェイホールでのセッション録音です。レーベルは英DECCA。

ショルティはマーラー等派手なオーケストレイションの曲を得意としていたからか、はたまたかなり強引な指揮姿からか、豪腕なイメージが強い人ですが、このロンドンフィルとのハイドンを聴くとさにあらず。オケを思い切り煽って鳴らしまくるのですが意外とダイナミクスを強調した演奏ではなく、アクセントはあまり強調せず流れの良い大きな起伏で聴かせる演奏なんですね。これまで当ブログでもいろいろ演奏をとりあげています。

2012/02/25 : ハイドン–オラトリオ : ショルティ晩年の天地創造ライヴDVD
2012/01/02 : ハイドン–オラトリオ : ショルティ/シカゴ響による天地創造旧盤
2011/06/27 : ハイドン–交響曲 : ショルティ/ウィーンフィルの「ロンドン」1996年ライヴ!
2011/03/27 : ハイドン–交響曲 : 爆演、ショルティの指揮者デビュー録音、ロンドンフィルとの太鼓連打他
2010/12/03 : ハイドン–交響曲 : ショルティ/ロンドンフィルによる102番、103番「太鼓連打」2
2010/12/02 : ハイドン–交響曲 : ショルティ/ロンドンフィルによる102番、103番「太鼓連打」

ただし、最も録音年代の古いロンドンフィルとの太鼓連打の指揮者デビュー録音でははち切れんばかりの覇気に満ちた爆演。この演奏が最もショルティらしい演奏と言っていいでしょう。デビュー当時のショルティの気合いの入りかたは尋常ではありませんでしたが、今日取り上げる1980年前後のザロモンセットでは、いい具合に力が抜け、ハイドンとはしゃにむに振るのではないとの悟りを得たのか、適度に力がぬけたショルティの余裕が感じられる演奏だと言うところでしょう。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
響きの良い録音会場として多くの名録音を生んだ今は亡きキングスウェイホールの豊かな響きにつつまれた奇跡の序奏。ショルティらしい精緻なゆったり感。主題に入るとテンポを一気に上げ、いきなり素晴しい躍動感。インテンポで畳み掛け、この曲独特のコミカルなメロディーを素晴しいキレの弦楽器群が描いて行きます。意外と低音弦は抑え気味で主に高音弦の迫力で聴かせ、この推進力とハンガリーの伝統と思わせるヴァイオリンのキレは見事。オケはいい意味で適度な粗さもあり、それが迫力にもつながっています。ショルティがオケを煽っているのがよくわかります。
つづくアンダンテも基本的に落ち着いた表現ながらインテンポの余韻がのこってヴァイオリンパートの流麗さで聴かせる演奏。弦楽器の雄弁さと、奏者全員がショルティの煽りにしっかりとついて行っているのが流石。木管、金管もすこし控えめであくまで弦楽器主体なところにこのしなやかな表情が生まれるのでしょう。
メヌエットは流石に迫力に振ってきますが、それでも力ませではなく、あくまで音楽が一貫して流れ、特に弦楽器の雄弁さに裏付けられた一貫性があります。徐々に迫力を増し、オケが怒濤の迫力を帯びてきます。木管のソロは落ち着きはらって美しいメロディーラインをこともなげに吹いてきます。テンポは乱れず、音楽が滔々と流れて行きます。
アバド盤で鮮烈なキレが印象的だったフィナーレ。ショルティのコントロールはミクロ的なキレではなく大局的な見地でのキレがあります。最初は抑えて入りますが、徐々にマグマにエネルギーが満ち、オケの底力が発揮されます。それでも高音弦中心のスタイリッシュなイメージを保ちます。非常に高揚感を感じながらもオケの力が抜けた名演奏。

Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
続いてこちらも名曲「時計」です。ことさら1楽章の緊密な構成感が聴き所ゆえ、このアルバムのショルティの録音の出来が素直に刺さります。またまた緊張感を帯びたゆったりさで入ります。序奏の規模が奇跡よりも大きいので、しなやかにオーケストラが響くのをゆっくり楽しめます。そしておもむろにギアチェンジして怒濤のインテンポ。特に低音弦を抑えながらのこの高揚感。あえて旋律の美しさに目を向けさせようと言うのでしょうか。高音弦だけでもこれだけ迫力を出せることを誇示したいのでしょうか。真意はわかりませんが、いずれにせよ素晴しい高揚感。時計の1楽章の理想的な演奏でしょう。
有名な時計のリズムを刻むアンダンテは、予想通り速めのテンポでいきます。おそらく途中からのうねりも速めに畳み掛けてくるのでしょう。速めののテンポと軽々としたリズムからハイドンの諧謔的なメロディーの面白さが滲み出てきます。このあたりはショルティの面目躍如。時計の面白さを良く踏まえた演奏。中盤からの盛り上がりもテンポを落とさずしっかりと隈取りを重ねて素晴しい迫力。再び枯れてもテンポは落とさず、オケは規律を失いません。最後まで弦楽器のボウイングに力が漲り、エネルギーはおとろえません。
メヌエットは前曲と異なり、かなりアトラクティヴ。クッキリと旋律を描き、色彩感も抜群。陽光に映える白亜の神殿のような圧倒的存在感。丁寧にフレーズを重ね、徐々にクライマックスに近づいていきます。間奏のフルートが妙に上手くて気になります。冴え冴えとした動と静の対比が見事。
最後のフィナーレに集中。入りはオーソドックスですが、おそらくトランス状態のような陶酔がまっているでしょう。やはり低音弦を抑えてメロディー主体の盛り上がり。これがショルティのハイドンのスタイルでしょうか。不思議に落ち着いてもいながら響きは陶酔まっしぐら。明らかにこの楽章に焦点を合わせてきています。最後はやはりショルティ、オケを鳴らしきって終わります。

サー・ゲオルク・ショルティ指揮のロンドンフィルによるザロモンセットのアルバムから「奇跡」と「時計」というハイドンの交響曲でも指折りの名曲。やはり一流どころのハイドンたる雄弁な演奏だと再認識。ショルティの古典派が良いというイメージを持たない方も多いかもしれませんが、これは名演です。私はカラヤン/ベルリンフィルのザロモンせっとよりもショルティの方を推します。この2曲の評価は[+++++]ですね。未聴の方は是非聴いてみてください。

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ハイティンク/コンセルトヘボウ管の奇跡、99番(ハイドン)

先日ディスクユニオンで見つけたLPです。

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ベルナルド・ハイティンク(Bernard Haitink)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲96番「奇跡」、99番の2曲を収めたLP。収録年代は記載されておりませんが、ネットを調べてみると1967年にプレスされたものとの情報がありました。レーベルはPHILIPS。

このLP、PHILIPSのデラックス・シリーズと名付けられたシリーズ物の一枚のようです。ジャケットには、なぜか源氏物語絵巻から飛び出してきたような十二単の女性の姿が。ERATOのBONSAIシリーズの対抗馬のようなキッチュなシリーズです。ジャケットには一部カビが見られるコンディションでしたが、盤面はそこそこ綺麗なので手に入れた次第。帰って愛機THORENSのプレイヤーにのせ、針を落とすと、瑞々しい響きが吹き出しました。コンセルトヘボウでのPHILIPSの空気感溢れる素晴しい響きに圧倒されます。若きハイティンクの覇気も噴出。これはいいです。

つい先日もハイティンクのCD-Rを取りあげましたが、ハイティンクのハイドンは気になります。オケをキリリと引き締め、タイトな響きを引き出すハイティンクの演奏は、ハイドンのちょっと武骨なところをそのまま音楽にするようで、ハイドンの交響曲の本質の一面を突く演奏といえるでしょう。

ということで、これまで取りあげたハイティンクの演奏の一覧はこちら。ハイティンクの略歴などは、クリーヴランド管との記事をご覧ください。

2014/01/20 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/クリーヴランド管 交響曲86番1976年ライヴ(ハイドン)
2011/07/21 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ベルリンフィルの95番ライヴ
2011/06/28 : ハイドン–交響曲 : ハイティンク/ドレスデン・シュターツカペレの86番ライヴ!
2011/05/12 : ハイドン–交響曲 : ベルナルド・ハイティンク/ウィーンフィルの時計ライヴ

今回取りあげるのは、まさにハイティンクが長年首席指揮者を務めた、アムステルダム・コンセルトヘボウ管との録音。しかもご本家、PHILIPSによる録音ということで、これまで取りあげたCD-Rなどとは期待度が異なります。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
ゆったりと響きわたるオーケストラの序奏。PHILIPS独特の鮮明な響きがスピーカーから溢れ出します。主題に入るとシフトチェンジ。小気味好いほどに軽々としたフレージングでこの曲独特のコミカルなメロディーが進みます。アバドほどの突き抜けた爽快感はないのですが、堅実な響きはハイティンクならでは。ハイティンクのアクセルワークに鮮やかに応じるオケの機能美は素晴しいものがあります。流石コンセルトヘボウといったところ。
アンダンテは、そのままテンポを落として、平常心の演奏。ハイティンク自身がゆったりと響きオケの響きを楽しんでいるよう。素朴な音楽の魅力に溢れた楽章。つづくメヌエットも適度な筋肉美を見せ、あっさりとした表情にとどめるところにハイティンクの美点があるよう。中間部のオーボエのソロの響きの美しいこと。ソロの美しさと続くオケの分厚い響きの対比をそれとなく目立たせる巧みな演出。
この曲のハイライトのフィナーレは、入りの軽さでまたまた演出の上手さが光ります。ステレオ録音ゆえ、フィナーレの左右の掛け合いの効果も見事。オケは流石コンセルトヘボウという素晴しいキレ味。交響曲の醍醐味を十分に表現して終わります。ハイティンクの後年の重厚さよりも、この頃のほうが閃きがあるような気がします。

Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
LPを裏返して、ハイティンクの至芸に相応しい穏やかな曲調の99番。予想どうりの分厚いコンセルトヘボウの響きに冒頭からうっとり。少しスクラッチノイズがありますが、気になるほどではありません。穏やかな流れに徐々にキリリと引き締まるようなメロディーが浮かび上がり、グイグイ推進していきます。ヴァイオリンパートがキレキレ。筋肉質な音楽の魅力が炸裂します。
意外に良いのがこのアダージョ。各楽器の響きが微妙に溶け合いながら掛け合う様子が実に巧みに描かれていきます。ハイティンクのアダージョがここまで深い情感をはらむとは思ってませんでした。穏やかな音楽なのに素晴しい立体感。広大な大草原を鮮明な3D映像で見るよう。遠くの草が風でそよぐわずかな変化が手に取るようにわかります。素晴しい録音によって音楽が鮮明に迫ります。これは名演でしょう。
メヌエットはアムステルダムコンセルトヘボウのホールに響きわたるオケの余韻の美しさに惚れ惚れします。ここでも節度あるハイティンクのコントロールは見事。
フィナーレは奇跡のコミカルさとはことなり、じっくりと燻したような味わいの深いもの。ゆったりと深い間をとり音楽をつないで、ここでもオケの各楽器を鮮明にじっくりと鳴らし分けて素晴しい感興をつくっていきます。実に味わい深い演奏でした。

ハイティンクと手兵アムステルダムコンセルトヘボウ管によるハイドンのザロモンセットからの2曲。ハイティンク38歳という若さでの演奏ですが、オケを完全にコントロールして、ハイドンの素朴な音楽を、ハイティンクらしく節度あるコントロールで、コンセルトヘボウのホールの空気を鳴らすように淡々と描いていく演奏。これまで聴いたハイティンクのハイドンの中では間違いなく最上のもの。若きハイティンクの才能の素晴しさを伝えるアルバムでした。評価はもちろん[+++++]とします。

この演奏、記事を書き終えてから確認してみるとmichaelさんのブログでも取りあげられていますね。リンクしておきましょう。

Micha Lute ブログⅡ:B.ハイティンク:ハイドン交響曲第96番、99番

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ブルーノ・ワルター/ニューヨークフィル1954年「奇跡」聴きくらべ(ハイドン)

まずは、お正月にディスクユニオンに寄った際にみつけたアルバム。

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ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philarmonic)の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。他にウィーンフィルとの1938年「軍隊」、ロンドン交響楽団との86番、フランス国立管弦楽団とのモーツァルトの「フリーメイソンのための葬送曲」が収められたアルバム。奇跡の収録は1954年と記されていますが、ネットを確認すると1954年11月21日のライヴであることがわかります。レーベルはなつかしい伊AS disc。

もう一枚は手元にあったこちら。

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ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のニューヨーク・フィルハーモニック(New York Philarmonic)の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。他にというかこのアルバムのメインはコロムビア交響楽団とのモーツァルトのオペラ序曲、「フリーメイソンのための葬送曲」など。奇跡の収録は上記アルバムのライヴの直後である1954年11月29日と12月6日。ニューヨークの30番街スタジオでのセッション録音。こちらはSONY CLASSICAL。

上のアルバムの演奏を所有盤リストに登録する際、ブルーノ・ワルターの膨大なディスコグラフィを整理されているDannoさんのサイトで調べて、この2つの演奏が同じオケの間を置かずの録音であることが判明し、聴き比べてみたくなった次第。

Bruno Walter Home Page

ワルターのハイドンは以前、偶然にも奇跡の演奏を取りあげています。

2011/09/07 : ハイドン–交響曲 : ブルーノ・ワルター/フランス国立管弦楽団の「奇跡」

Dannoさんのサイトのワルターのハイドンのディスコグラフィを見ると、奇跡はこの他1937年のウィーンフィルとの演奏とあわせて4種で、今回手に入れたアルバムで4種すべてがそろったことになります。にんまり(笑)

さて、ワルターといえばどうしてもモーツァルトという印象ですが、ハイドンもワルターらしい慈しみに溢れた演奏なんですね。久しぶりにワルターのハイドンの素晴らしさを満喫です。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
まずは、AS discのライヴ盤から。録音はモノラル。

もの凄い迫力の序奏。ライヴらしく会場の物音がリアルに録られています。主題に入ると音は歪み気味ながら、素晴しい覇気で畳み掛けるように攻め込みます。音が割れ気味ながら、それが異様な迫力をともない、もの凄い緊張感。音量を上げて聴くとヴァイオリンパートが弦が赤熱しているように感じるほど、キレキレの演奏で火傷しそう。炎のような1楽章。
つづくアンダンテは全体に落ち着いた表情ではじまりますが、弦楽器のテンションの高さは1楽章そのままで、耳に刺さるように切れ込んできます。ニューヨークフィルの弦楽セクションがこれほどの浸透力をもつとは思いませんでした。聴いているうちに弦の迫力に圧倒されるようになります。間奏の穏やかさと弦楽器の圧倒的な存在感の対比が素晴しい効果。これをライヴで聴いていたらのけぞっていたでしょう。細かいところなど全く気にする余裕がないような圧倒的な迫力。
メヌエットは予想どおり、大きな筆で一気に書き上げるような豪快かつおさまりも考えた緻密な設計。特にそっと抑える部分の存在が、筆の勢いの良さを際立たせるプロの技。会場の観客が凍りついている気配が感じられるほど。神々しいとはこの演奏のことでしょう。途中のオーボエとトランペットのソロは少ない楽器の演奏に集中します。トゥッティでは音が割れますがかまわずグイグイ進みます。
奇跡の聴き所のフィナーレ。キレよく入りますが、オケが煽る煽る。オケの全員がクライマックス目指して殺気立っているよう。それゆえアンサンブルは粗いんですが、それが迫力を増し、火の玉が育って巨大隕石になって飛んでくるよう。金管も弾けるよう。最後の一音の余韻が消えるのを待たずに嵐のような拍手が降り注ぎます。いやいやこの日の会場の熱狂はいかばかりのものかと思います。ワルターがここまで煽ってくるものかと再認識したライヴ。

さて、続いてその8日後のセッション録音であるSONY CLASSICAL盤。

同時期の録音ではありますが、流石にセッション録音なので、録音は2段階くらい上をいきます。こちらもモノラルながら細部まで鮮明で、Hi-Fi調。スタジオで鮮明に録られたオーケストラの彫刻的なフォルムの迫力が直に伝わる録音。ライヴの粗い録音から伝わる炎のような熱気とは異なり緻密なコントロールが印象的。弦楽器は鮮明かつ厚みを感じる落ち着いた演奏。ワルターが煽っているのか、フレーズの入りは速めに斬り込みますが基本的に落ち着いた演奏。
アンダンテもワルターのコントロールが行き届いて、メロディーラインの豊かな表情と、キリリと引き締まった表情が相俟って完成度の高い響きをつくっています。細部まで鮮明な録音によって先程のキレキレの演奏とはずいぶん印象が変わり、彫刻的ながら穏やかさが目立ちます。奏者も平常心。これはこれで完成度の非常に高い演奏。
メヌエットは鮮明な録音によって、モノラルながら迫力あるフォルムが目立ちます。スピーカの前でニューヨークフィルが実際に演奏しているようなリアリティ。先程の盤でのオーボエとトランペットのソロはライブならではのノリがありましたが、こちらは本当に上手い。セッション録音らしい完成度の高さが生み出す迫力に酔います。
フィナーレは特段テンポが速い訳ではなく、むしろじっくり行く感じで聴いていきますが、迫力はかなりのもの。徐々にオケが白熱して、荒々しさが加わります。ライヴとは異なりますが、セッション録音であっても、この曲のフィナーレは奇跡的でしょう(笑)

今更ながらに後者のセッション録音の完成度の高さが印象に残った次第。ワルターは練習嫌いではじめてのオケでもさほど練習をせず本番にのぞむそうですが、このセッション録音を聴く限り、コントロールは行き渡り、この演奏も交響曲「奇跡」名演奏の一つとして十分にお薦めできるものです。前者のライヴ盤はそれとは異なり、突き抜けた迫力が聴きどころ。録音はそれほど良くはありませんが。粗い響きから浮かび上がる会場の興奮を共有できる貴重な録音と言っていいでしょう。ほんの少しの間を置いて録られた2つのアルバムですが、音楽の本質を共有しながらも、ライヴとセッション録音の違いにスポットライトを当てた事になります。評価は両者ともに[+++++]とします。SONY CLASSICAL盤は上方修正です。AS disc盤ははじめて聞きましたが、ワルターのライヴの見本の様なすばらしさ。これを聴いてしまうと、ワルターから逃れられなくなるのでしょうね。

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tag : 奇跡 ライヴ録音

ブルーノ・ワルター/フランス国立管弦楽団の「奇跡」

今日は巨匠ブルーノ・ワルターのハイドン。

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ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)指揮のフランス国立管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」。奇跡の前にはベルリンフィルとのブラームスの交響曲2番、後にはストックホルムフィルとのモーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークが置かれています。奇跡の演奏について、ライナーノーツには収録は1955年とだけ記載されていますが、ワルターのディスコグラフィーをネットで調べると1955年5月12日、パリのシャンゼリゼ劇場でのライヴとのこと。レーベルは懐かしいイタリアのASdisc。なぜか郷愁を感じるASdiscの定番ジャケットデザインですね。

ワルターのハイドンの交響曲は以前に一度取りあげています。同じASdiscのアルバムでした。

2011/04/17 : ハイドン–交響曲 : 爆演、ブルーノ・ワルターの86番、88番

ワルターほどになると、ディスコグラフィーも大変充実しています。下記のサイトにはワルターのハイドンの演奏がいろいろあることがわかりますが、まだ未入手のものもあります。

Recorded Performances of Bruno Walter(英文)

かなり決まった曲を繰り返し取りあげるようなイメージがありますが、今回取りあげた96番奇跡はワルターが得意としていた曲のようです。上記のディスコグラフィーによると4種の演奏があることがわかります。

1937年5月5日:ウィーンフィル
1954年11月29日、12月6日:ニューヨークフィル
1954年11月21日:ニューヨークフィル(カーネギーホールライヴ)
1955年5月12日:フランス国立管弦楽団(シャンゼリゼ劇場ライヴ)

最後の演奏が今回のアルバム。3番目の演奏のみ未入手でどうやら同じくASdiscからアルバムがリリースされているようですので、気長に中古やオークションを探してみようと思います。

ワルターは1876年生まれで1962年に亡くなっていますので、この演奏はワルター78歳のライヴということになりますが、我々の世代になじみのあるコロンビア交響楽団との最晩年のスタジオ録音で聴かれる慈しみ深い演奏とはかなり印象が異なり、抜群の生気とエネルギー。カザルスの演奏のときも驚きましたが、今更ながらこの年齢でこのエネルギー感は見事という他ありません。かくありたいものです、私も(笑)

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
冒頭の序奏から素晴らしい覇気。オケはちょっと荒々しい感じはしますが、主題に入るとテンポが上がり、粗いながらも生気が漲る演奏。ワルターらしいちょっと早足ですすむ、というか一筆書きで描くような浮き足立った表現が印象的。1楽章のコミカルな旋律がワルター流の即興的な演出で描かれます。録音は年代なりで潤いには欠けますが、迫力は十分あり、ヒストリカルな録音が好きな方には全く問題ない仕上がり。
2楽章のアンダンテはワルターらしい慈しみ深さはほどほど。シャンゼリゼ劇場のコンクリートを主にした独特の残響の雰囲気でオケの音色も古風に聞こえます。途中のヴァイオリンのソロがくっきりと浮かび上がり、オーボエなどにメロディーを引き継ぎアンダンテを閉じます。
楽章間の会場のざわめきが引く間もなくメヌエットがはじまります。メヌエットは力感溢れる演奏ですが、冷静にコントロールしている印象もあり、テンポは一定な感じでダイナミクスの幅もほどほど。徐々に音量が上がり迫力もましますが、それだけではないのがワルターたる所以。徐々に大胆さが増し、メヌエットの最後は迫力とキレが聴き所とはっきりわかる演奏。
フィナーレはデッドなシャンゼリゼ劇場のダイレクト感のある音色。奇跡といえばアバド/ヨーロッパ室内管の火を噴くような俊敏な演奏の記憶が残ってますが、ワルターの奇跡はキレはほどほどながら意外と迫力が素晴らしいもの。終盤の畳み掛けるような盛り上がりはまさに生気溢れるもの。会場の万来の拍手で終えます。奇跡のユニークな曲想が十分表現されています。

久々に聴いたワルターのハイドン。流石ワルターと言うべき個性的な演奏でもあります。ワルターの演奏としての盤石さという意味ではまだ上がありますので評価は[++++]ということにしたいと思います。

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アイヴァー・ボルトンの奇跡、88番、迂闊者

今日はアイヴァー・ボルトンの交響曲集。

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アイヴァー・ボルトン(Ivor Bolton)指揮のザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲96番「奇跡」、最近おなじみの88番、60番「迂闊者」の3曲を収めたアルバム。収録は2008年10月22日、23日、ザルツブルクのモーツァルテウム大ホールでのセッション録音。レーベルはOEHMS CLASSICS。

ボルトンはあまりなじみの指揮者ではありませんが、以前取りあげたオラトリオ「四季」の演奏が抜群によかったので、ボルトンのハイドンの他のアルバムをさがしていました。「四季」のレビュー記事のリンクを張っておきましょう。

2010/12/13 : ハイドン–オラトリオ : アイヴァー・ボルトン/モーツァルテウム管弦楽団の四季ライヴ

「四季」は現代楽器のライヴ演奏ながら古楽器奏法をとりいれた非常に引き締まった響きが印象的な演奏でした。はたして同じコンビの交響曲のセッション録音は如何な出来でしょうか。

交響曲96番「奇跡」(Hob.I:96)1791年作曲
奇跡の導入部は期待したタイトな響き。速めのテンポと引き締まったオケの響きの魅力がいきなり炸裂。しかもコミカルな印象を感じさせる余裕があります。奇跡の1楽章のメロディーの面白さが存分に表現されてます。小編成オケのようで透明な響きが美しいもの。2楽章のアンダンテは各楽器のアタックが鮮明にわかる演奏。演奏によっては優しくゆったりした印象のものもありますが、このアンダンテはクッキリ鮮明なメロディーが痛快。最後の部分の木管楽器の掛け合いが印象的。3楽章のメヌエットもアタックの明解、各楽器が気持ちよく弾き抜けるような演奏。中間部のオーボエのソロ、巧いですね。そしてフィナーレは意外と落ち着いた入り。途中から祝砲が撃たれたような腰に響くアタック。途中一部の楽器がスパートしかけますが抑えて落ち着きを保ったまま最終部へ。興奮の坩堝へと思いきや、あえて低音を抑えて意外に透明感を狙った終結。なかなかのアイデアです。演奏としては、音色とスタイルはトーマス・ファイに似てなくもありませんが、ファイほど曲想を揺らさず、曲に素直な解釈。純粋に古楽器のような音色によるエネルギーとタイトさを狙った演奏のように感じます。

交響曲88番(Hob.I:88)1787年?作曲
つづいて最近よくとりあげる88番。前記事でバーンスタインの激こってりな演奏を取りあげたばかりですね。ボルトンの88番は前曲同様タイトな響きで88番の名旋律を刻んでいきます。まるで別の曲のような引き締まった響き。2楽章のラルゴも同様。鍛え上げた筋肉美の体操選手の床運動をみるがごときラルゴ。3楽章はすこしスピードをあげて爽快感を増します。フィナーレはコミカルなメロディーにかなり表情の変化を付けます。強奏部分の意図的なレガート。これは意外ですが、これまで逆に表情をおさえてフィナーレまで来た意図が分かりました。盛り上がる音楽的感興。これはボルトンの作戦勝ちですね。88番のユニークな曲想をどう表現するかをかなりコンセプチュアルに考えてのことでしょう。いやいや巧みです。

交響曲60番(Hob.I:60)1774年以前に作曲
最後は「迂闊者」。88番のあっぱれな演出で、次のこの曲も期待が高まります。1楽章から抜群なアイデアのキレ。音響的迫力で聴かせる部分もあるんですが、これぞハイドンの機知といわんばかりのフレージングがキレまくってます。鳥肌クラスです。楽譜を単純に弾くところは皆無。すべてのフレーズに生気と創意が宿ってます。見事! 2楽章はアンダンテ。ボルトンの真髄はタイトながら旋律に潜む表情をウィットに富んだ表現でコントロールしていくところ。この楽章はあまりのアイデアのキレに痺れる感じ。3楽章のメヌエットはあえて表情を抑えてカッチリと表現。中間部のトルコ風な曲想をふくめて多彩な表情。4楽章は嵐が過ぎ去るのを待つような激しい曲。そして5楽章は静けさが印象的な美しい曲。前楽章との対比が見事。そして弦のチューニング風景をもりこんだ終楽章。このアルバムに取りあげられた曲はどの曲もハイドンのユーモア溢れる豊かな曲想が特徴の曲。ボルトンの選曲意図が十分につたわる素晴らしい演奏ですね。

気に入りました。ハイドンの交響曲に含まれる機知の真髄をウィットに富んだ表現で聴かせるボルトンのコントロールは見事の一言。もちろん全曲[+++++]としました。奇跡も88番も迂闊者も見事。古典的であり、オーセンティックでもあり、ユーモアに富んでいて、音楽的にも刺激的な演奏と言えば良いでしょうか。これは多くの人に聴いていただきたい素晴らしい演奏。「ハイドン入門者向け」タグもつけちゃいます。売り場ではあまり見かけませんが現役盤。HMV ONLINEで注文したものなので入手もおそらく容易でしょう。こうなると、ボルトンの天地創造も聴いてみなくてはなりませんね。もちろん、同時に入手済みなので手元にあるんですね(笑)

こうゆう楽しみが趣味ならでは。天地創造は大物故今週末にとっておくことにしましょう。

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tag : 奇跡 交響曲88番 迂闊者 ハイドン入門者向け

【新着】ジョージ・セルのハイドン交響曲ボックス

今日は昨夜の予告通り着いたばかりのセルのボックスを開封。

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ジョージ・セル(George Szell)指揮の手兵クリーヴランド管弦楽団の演奏によるハイドンの交響曲11曲を集めた4枚組。収録曲目は下記の通り。

CD-1
交響曲第93番(Hob.I:93)1968年4月18日収録
交響曲第94番「驚愕」(Hob.I:94)1967年5月5日収録
交響曲第95番(Hob.I:95)1969年1月17日、18日収録
CD-2
交響曲第96番「奇跡」(Hob.I:96)1968年10月11日収録
交響曲第97番(Hob.I:97)1969年10月3日、6日、10日収録
交響曲第98番(Hob.I:98)1969年10月10日収録
CD-3
交響曲第92番「オックスフォード」(Hob.I:92)1961年10月20日収録
交響曲第99番(Hob.I:99)1957年10月25日、26日収録
CD-4
交響曲第88番(Hob.I:88)1954年4月9日収録(MONO)
交響曲第104番「ロンドン」(Hob.I:104)1954年4月9日収録(MONO)
交響曲第97番(Hob.I:97)1957年10月25日、26日収録

ザロモンセットがそろっている訳ではなく、100番「軍隊」、101番「時計」、102番、103番「太鼓連打」が抜けており、その代わりに88番、92番「オックスフォード」が含まれ、97番については2種の演奏が含まれているということです。録音はすべてクリーヴランドのセヴァランス・ホールでのセッション録音。1954年収録の88番と104番「ロンドン」のみモノラルで他はステレオ。

セルのハイドンについてはライヴを中心にこれまで何度か取り上げていますので、過去のレビューをご覧ください。

2011/01/03 : ハイドン–交響曲 : セル/クリーヴランド管の99番(1966年2月ライヴ)
2010/08/26 : ハイドン–交響曲 : セル/クリーヴランド管の93番、驚愕
2010/08/25 : ハイドン–交響曲 : セル1954年の93番ライヴ録音2種
2010/08/17 : ハイドン–交響曲 : セル/クリーヴランド管のロンドン他
2010/08/16 : ハイドン–交響曲 : セルの1959年ザルツブルク音楽祭ライヴ

これまで聴いたセルの印象は録音年代が古いほど覇気があり、新しいものは均整のとれた高潔なセルの魅力は素晴らしいものの、古い時代の素晴らしい迫力とキレは少々後退してしまった印象があります。またライヴはムラはありますが、ライヴならではの迫力を感じられる演奏もあります。

このアルバムによって、セル/クリーヴランド管の未入手の演奏も一気に手に入りました。これまで未入手だったのは、92番「オックスフォード」の1961年の演奏、95番、96番「奇跡」97番の1969年の演奏ということになります。オックスフォードと97番についてはクリーヴランド管とのセッション録音が複数あったんですね。ということで、今日は未入手の演奏から95番と96番「奇跡」を取り上げようと思います。

交響曲95番(1791年作曲)
セルの最晩年の録音のひとつ。1969年1月17日、18日の録音。他の曲よりもオーケストラの響きがちょっとざらついて聴こえます。コントロールが甘いという感じというよりは録音の影響のようにも感じます。冒頭の短調の序奏から力強い響き。良い意味でザクザクした感じと勢いが感じられ、1楽章はなかなかの迫力。
2楽章に入ると艶やかな弦の響き。ただし枯れた表情が強くなります。往年のセルとは明らかに異なる表情。コントロールが行き届いているというよりはオケに任せている感じも強いですね。
3楽章のメヌエットは再びセルの覇気を感じさせるキレが見られます。オケにも火がついたのか2楽章とは明らかに異なるエネルギー感。ふたたびザクザクと刻まれる音。
そして、95番の聴き所、沸き上がるエネルギーが炸裂するフィナーレ。オケもアンサンブルは粗いものの素晴らしい吹き上がり。セルのやや冷たさを感じさせなくもない高潔な表情とは異なる、晩年のエネルギー感が素晴らしい演奏です。95番のフィナーレはこうでなくては。

交響曲96番「奇跡」(1791年作曲)
奇跡は95番の前年1968年10月11日の録音。おそらくセルの良さが最も合うと思われる曲。こちらは95番よりもまとまりのある音質で、オケも精度が少し上がります。1楽章はセルの真骨頂であるカッチリとクリアな音が印象的。序奏は意外と有機的な響き。オケの各楽器のバランスが絶妙。主題に入るとコミカルなこの曲独特なメロディーをカッチリと折り目正しく描いていきます。曲の創意と指揮者の覚醒したようなコントロールの絶妙なバランス。オケ全体に行き渡る軍隊の規律のような張りつめた緊張感。終盤のオケの力感は見事。
2楽章は艶やかなメロディーとフレージング。艶やかながら基本的には規律に従ったキリッとした面もあります。ゆったりしたメロディーがきっちり進みます。
3楽章のメヌエットは落ち着いた入り。若干溜を効かせてメリハリを強調します。一貫したリズムでメロディーを刻み、若干形式的な印象を与えてしまいます。
前曲同様盛り上がりを期待するフィナーレ。最初は力を抜いて入りますが、たびたび襲ってくる低音弦の波に刺激されるように、オケに力が漲ります。ただ、前楽章から感じられる型にハマった感はちょっとぬぐい去れず、爆発というところまでには至りません。安定感は見事故、この奇跡はセルのキリッとした折り目正しい演奏を楽しむ演奏と位置づけられると思います。

さて、まずは未聴の95番と96番「奇跡」を聴きましたが、良かったのは95番。荒々しい音色と終楽章の炸裂感が見事。それでもセルの全盛期の恐ろしいばかりの覇気とはちょっとレベルに差があります。評価は[++++]とします。奇跡の方はバランスの良い演奏ながら、生気と言うかエネルギーの面での期待とはちょっとギャップがあるところです。この辺は最初期の88番とか104番との差は大きいと思います。評価はこちらも[++++]とします。

さて、いわば晩年の演奏として、ある意味予想通りの演奏だったんですが、最初期の演奏のこれまでリリースされてきたアルバムとの差なども気になるところ。つづいて、その辺に切り込みます。

が、その前に食事です。

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ロバート・ハイドン・クラークの交響曲集

昨日より料理や食事をしながら聴いていたロバート・ハイドン・クラークのハイドンの名前付き交響曲集。
単なる廉価盤と思いきや、さにあらず。あまりに素晴らしい演奏なので、ブログに取り上げましょう。

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Collins Classicsというレーベルの1990年、91年のプロダクション。
ロバート・ハイドン・クラーク(Robert Haydon Clark)指揮のコンソート・オブ・ロンドンの演奏。名前にハイドンとあるところにただならぬ運命を感じさせますが、つづりには作曲家ハイドンとはちがい、”o”が入っています。

収録曲目は次の通り(収録順)
<CD1> オペラ「月の世界」序曲、48番「マリア・テレジア」、92番「オックスフォード」(1990年1月録音)
<CD2> オペラ「アルミーダ」序曲、49番「受難」、100番「軍隊」(1989年5月録音)
<CD3> 94番「驚愕」、96番「奇跡」、45番「告別」(1990年7月録音)
<CD4> オペラ「オルフェオとエウリディーチェ、または哲学者の魂」序曲、103番「太鼓連打」、104番「ロンドン」(1990年1月録音)

ネットで調べたところ、Collins Classicsは1989年の創業ですが、1998年に廃業したとの記述がありました。まさにこのアルバムが創業時に録られたものでしょう。この演奏のすばらしさは個人的にはレーベルを興すのに十分なインパクトがあると思いますが、アルバムが売れるかどうかは演奏者の知名度をはじめとして、広告やPR、プロダクトデザイン、流通、価格などブランディングに関する様々な要素が影響するゆえ、商業的な面では課題を解決できなかったのでしょう。惜しいレーベルをなくしたものです。

演奏ですが、現代楽器による極めて正統なハイドンの交響曲の演奏。これといって個性的な部分はあまりありませんが、凡庸な普通の演奏とのわかる人にはわかる大きな違いは、溢れんばかりの生気と、力感と弛緩の絶妙のバランス感覚。そして驚くべきは各曲のムラのない仕上がり。そしてハイドンを知り尽くした曲順の設定。月の世界の序曲からはじまり、ロンドンで幕を閉じる構成は見事。3枚目が告別で終わるところも最高。各CDの冒頭に序曲がおかれているのもよく考えられています。
オケは非常にうまく、テンポ感も素晴らしいです。そしてそれらの長所を引き立てる素晴らしく自然な録音。この録音も鑑賞という視点からは素晴らしいものです。このアルバムの制作に関わった人の気合いすら感じます。

中でもおすすめは、、、これはすべての曲がおすすめです。
似たタイプにテイトの交響曲集がありますが、私自身はテイトよりいいと思います。

肝心の指揮者のロバート・ハイドン・クラークですが、このアルバムのライナーノーツにはひところもふれられていません。ネット上にもほとんど情報がありませんが、他にハイドンのトランペットコンチェルトなどの録音があるようです。タワーレコードでのふりがなはハイドンではなくヘイドンとなっていました。

すでに廃業してしまったレーベルですが、私自身はこの入魂の素晴らしいアルバムによって深く心に刻まれました。今はこの会社から離れて違う仕事をしている人も多くいるかと思いますが、このアルバムの制作に関わったすべてのひとに感謝を。

これだからアルバム収集はやめられません。

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プレヴィン/ウィーンフィルのオックスフォード

2009年からなんとNHK交響楽団の主席客演指揮者に就任したアンドレ・プレヴィン。
ジャズをはじめとして、多彩な活動で知られるひとですが、CDの整理をしていたら、この人のハイドンの交響曲からザロモンセットから2枚分のCDを発見!、というよりラックの肥やしになっていたので、あらためて聴いてみました。

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92番オックスフォードと96番奇跡、1992年2月の録音。

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こちららは102番と104番ロンドン。1993年3月の録音。

残念ながら、どちらもフィリップス盤のため廃盤のようですが、、、
調べたところ、タワーレコードが国内盤で復刻してました。

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TOWER RECORDS

フィリップスのキリッとしたジャケットの良さが失われてしまったのが残念ですが、2枚で1500円との価格設定はありがたい限りですね。

肝心の演奏は、極めてオーソドックスな現代楽器によるハイドンの交響曲。ムジークフェラインでのウィーンフィルの弦の響きの美しさを最大限に引き出した演奏といえるでしょう。プレヴィンらしく過剰な演出はなく、メロディーラインのわかりやすさを優先しているようで、ダイナミクスは控えめで、曲の主旨を音符にすべて奏でさせるような作為のない自然な演奏。

4曲の中でいいのは、92番オックスフォードと96番奇跡。オックスフォードはとろけるようなムジークフェラインの響きと、少しおどけた感じのフレージングが曲想にあってます。終楽章の踊るようなメロディーの演出の巧さもプレヴィンならではのものですね。奇跡はキレよりも豊かな響きを生かした構成。こちらもウィーンフィルの響きの美しさ全開の演奏です。弦楽器の自然なフレージングはやはりウィーンフィルならではでしょう。
この2曲は最高評価の[+++++]としました。おすすめ盤です。

102番とロンドンは、生き生きとしたところが一歩後退。重厚さにすこし傾いたのか、前の2曲に感じられた遊びというか余裕が足りません。102番は[++++]、名盤ひしめくロンドンは[+++]としました。

このようなベーシックな魅力を核にしたプレヴィンの演奏ですが、似たタイプには、以前に取り上げたテイト盤がありましたし、まだ取り上げていないスラトキン盤などもあり、ハイドンの交響曲の素直な魅力を知るのにはこのアルバムも良いアルバムだと思います。

最後に、プレヴィンの愛聴盤をもう1枚紹介しておきましょう。ただし、ジャズです(笑)

PrevinLiveatJazz.jpg

ニューヨークのThe Jazz Standardにおける2000年10月のライヴ。プレヴィンのピアノとデヴィッド・フィンクのベースのデュエット。残念ながらこちらも現役盤ではないようです。
プレヴィンのピアノは、ジャズミュージシャンのすえた響きでスウィングするピアノというよりも、コンサートグランドでスウィングする感じで面白いですが、ちょっと変わったプレヴィンのピアノでもライヴ独特の盛り上がりは見事。ライヴハウスの熱気が伝わります。やはりジャズ出身の人だけあって、モーツァルトのコンチェルトではあれだけ純粋無垢な響きを奏でながら、これだけのスゥイング感もだせるのは流石です。

音楽とは音を楽しむものということだということを地でいく人なんでしょうね。うらやましい限り。
この年齢になっても、自らの様々な才能で人々を喜ばせるとは、流石です。

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tag : 交響曲102番 ロンドン 奇跡 オックスフォード ジャズ おすすめ盤 ウィーンフィル

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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