ドイツ弦楽三重奏団のソナタ集(ハイドン)

8月最初のレビューは、涼風を感じるような演奏。久々にCDです(笑)

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ドイツ弦楽三重奏団(Deutsches Streichtrio)による、ハイドンのピアノソナタの編曲の弦楽三重奏曲3曲(Hob.XVI:40、XVI:41、XVI:42)と現在はミヒャエル・ハイドンの作と判明している弦楽三重奏曲(Hob.V:Es1)、ハイドンのディヴェルティメント(Hob.V:8)の5曲を収めたCD。収録情報はPマークが1981年とだけ記載されています。レーベルは独INTERCORD。

このアルバム、当ブログにいつも含蓄に富んだコメントをいただくSkunJPさんから、かなり前にいただいたもの。レビュー候補の棚に置いたまま結構な時間が経ってしまいました。最近改めて聴き直してみると、これがなかなかの演奏だったんですね。というわけで結構時間が経った今、タイムマシン的に取り上げます(笑)

奏者のドイツ弦楽三重奏団ははじめて聴きます。1972年にシュツットガルトで設立されたアンサンブル。メンバーは下記の通り。

ヴァイオリン:ハンス・カラフース(Hans Kalafusz)
ヴィオラ:クリスチャン・ヘドリッヒ(Christian Hedrich)
チェロ:ライナー・ギンツェル(Reiner Ginzel)

ヴァイオリンのハンス・カラフースは1940年オランダ生まれのヴァイオリニスト。チェロのライナー・ギンツェルはミュンヘン音楽演劇大学で教鞭をとる人というくらいの情報しかわかりませんでした。

このアルバムに収録されている弦楽三重奏曲の3曲は元はピアノソナタを原曲としたもの。この3曲については以前に一度グリュミオーらの演奏を取り上げたことがあります。

2012/08/29 : ハイドン–室内楽曲 : 【新着】グリュミオー三重奏団のピアノソナタ編曲集

Hob.XVI:40 Piano Sonata No.54 [G] (c.1783)
ピアノソナタでおなじみの穏やかなメロディーですが、こうして弦楽三重奏で演奏されても全く違和感のない見事な編曲。原曲のピアノソナタ自体はニコラウス・エステルハージII世侯の妻、マリア妃のために書かれたものですが、編曲はハイドン自身によるものか、出版を担当したホフマイスターによるものか判明していないとのこと。出だしは3人のバランスの良いオーソドックスなアンサンブルに聴こえましたが、曲が進むにつれてハンス・カラフースの弾くメロディーがくっきりと浮かび上がってきて、徐々にそのテクニックと美音が明らかになります。ヴィオラとチェロが伴奏に徹する中、赤熱してくるメロディー。演奏から別格のオーラが立ち上ります。
この曲集は3曲とも2楽章構成。2楽章のプレストは軽やかな弓さばきを聴かせながらも美音をチラつかせる巧みな演奏。速い音階のキレっぷりは見事。ピアノではキレを聴かせるように感じないところですが、ヴァイオリンで弾くと鮮やかな音階にうっとり。いやいや見事です。

Hob.XVI:41 Piano Sonata No.55 [B] (c.1783)
2曲目は冒頭からカラフースのヴァイオリンが抜群の存在感。ドイツらしい気骨と華美になりすぎないヴァイオリンの美音がカラフースの特徴でしょうか。楽器が良いのか、実に図太く深いに音色を繰り出します。ピアノでの演奏以上にメロディーの美しさが際立つ素晴らしい演奏。1楽章はカラフースの独壇場。ヴィオラとチェロも一歩下がって、慎み深くアンサンブルを支えます。
この曲でも2楽章のボウイングは見事。何気にヴィオラが影のようにヴァイオリンにピタリと寄り添い、チェロは少し離れて自在なところを聴かせてこの曲のコミカルな印象を垣間見せます。アンサンブルの完成度は非常に高く、表現が考えつくされていますね。

Hob.XVI:42 Piano Sonata No.56 [D] (c.1783)
録音の雰囲気が少し変わって、鮮明になります。この曲もピアノの印象が強いんですが、弦楽合奏で聴くと、この版がオリジナルと言われても疑いようがないくらいよくまとまっています。ヴァイオリンの奏でるメロディーはピアノよりもメロディーの美しさ、翳りの両面を描けるところが強み。曲が進むとチェロがこれまでにない活躍ぶりで、グッと前に出てきます。時折りうっとりするような美音を聴かせるところをみると、チェロも相当の腕の持ち主と見ました。クァルテットより楽器が少ないことからハーモニーよりもメロディーをくっきりと描くのに向いた編成なんでしょう。
美音の後は軽快なボウイングの妙技に酔いしれます。カラフースのボウイングは冴えまくって変幻自在。短い曲ですがあっという間にクライマックスに到達!

続くミヒャエル・ハイドンの曲は少し雰囲気が変わって、ヴァイオリンの美音よりも穏やかなアンサンブルを楽しめと言われているようにゆっくりと進みます。ハイドンほどのヒラメキを感じることはありませんが、これはこれでいい曲でしょう。

Hob.V:8 No.8 Divertimento for 2 Violins and Violoncello [Es] (1765)
一転、穏やかな入り。アダージョ、メヌエット、フィナーレの3楽章構成。前3曲のピアノソナタよりもだいぶ前に書かれたものなので、曲の起伏も比較にならないほど簡単。ただしこのディヴェルティメント自体が、演奏して楽しむような用途の作品ですので、これが本来の姿なのかもしれません。この曲では作品を鑑賞するというよりは、演奏しているような気になりながら聴くのがふさわしいでしょう。1楽章は次々と展開する変奏が聴きどころ。2楽章のメヌエットは後年の自在な筆致の萌芽は見られませんが、中間部がいきなり突き抜けるのがハイドンらしいところ。素朴なメロディーの美しさが聴きどころ。そしてフィナーレではハイドンのユニークなメロディーメーカーとしての才能がすでに開花。よくぞこのメロディーを思いついたと唸るばかりの進行。アンサンブルは力を抜いて演奏を楽しむように弾いてゆくので、こちらも非常にリラックスして聴くことができました。

ドイツ弦楽三重奏団によるハイドンのピアノソナタを原曲とする曲集。見事な編曲により、原曲以上にメロディーの美しさが感じられ、新たな発見がありました。演奏はヴァイオリンのハンス・カラフースの妙技が聴きどころ。ヴァイオリンはグリュミオーに劣るどころか、グリュミオーとは異なる輝きを放つ素晴らしいもの。アンサンブルの精度も素晴らしく、聴きごたえ十分でした。評価は最後の曲が[++++]、それ以外のピアノソナタを原曲とする3曲は[+++++]とします。クァルテットもいいものですが、トリオもいいですね〜。

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tag : 弦楽三重奏曲 ディヴェルティメント

ウィーン・フィルハーモニア三重奏団の弦楽三重奏曲集 Vol.1

ご無沙汰しております。相変わらず仕事が忙しく平日は帰りが10時過ぎ。ブログの記事を書くにはちょっと遅いですね。今日は久々のお休みでゆっくりさせていただきました。

今日は最近手に入れてたんですが、聴いていなかった大物を取り上げます。

WienerTroSet.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

カメラータ・トウキョウからリリースされていたハイドンの弦楽三重奏曲集。以前よりVol.1~Vol.6のバラと6枚をセットしたものがリリースされていましたが、しばらく6枚組の方が流通していなかったようです。これが最近再販されネットショップや店頭でも見かけるようになりました。未入手で気になっていたアルバムなので、早速HMV ONLINEで注文して届いたもの。6枚組はバラをそのままボックスにパッケージした、所謂なんちゃってボックス。今日はその中らからVol.1を取り上げます。

演奏はウィーン・フィルハーモニア弦楽三重奏団。1994年にウィーンフィルのメンバーによって設立された三重奏団。ウィーンフィルの名ヴァイオリニストのペーター・ヴェヒター(Peter Wächter)、ヴィオラはトビアス・リー(Tobias Lea)、チェロのタマーシュ・ヴァルガ(Tamás Varga)の3名によるトリオですが、曲自体がヴァイオリンとヴィオラ、チェロの組み合わせによるものは1曲のみゆえ、ほとんどの曲をヴィオラに代わって第2ヴァイオリンをトーマス・ヴィンクラット(Tomás Vinklát)が弾いています。

ハイドンの室内楽といえば弦楽四重奏曲かピアノトリオ、もしくはバリトントリオが有名ですが、弦楽三重奏曲というのはあまりなじみがありません。このアルバムの他に数枚の弦楽三重奏曲のアルバムを持っていますが、あまりちゃんと聴き込んでいなかったため、このアルバムは新たな名曲が含まれているのではないかという期待も合って楽しみにしてたものです。

ライナーノーツによれば弦楽三重奏曲の作曲年代はほぼすべての曲が1762年から67年の間。この頃はハイドンが1766年にエステルハージ家の楽長に就任する頃、その前の副楽長時代。今回のアルバムセット6枚に含まれるのは31曲。今日紹介するアルバムに含まれているHob.V:8のみヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの組み合わせですが、その他の曲はヴァイオリン×2、チェロの組み合わせ。聴き比べるとヴァイオリンとヴィオラの違いだけで響きも少し違うのが面白いところ。

今日取り上げるアルバムには5曲の弦楽三重奏曲が収められています。弦楽三重奏曲はホーボーケン番号と作曲順に明解な関係はない模様で、このアルバムに収められたものが初期のものというわけではありません。

演奏は最近の録音らしく鮮明かつクリアな音響で、繊細な弦楽器のトリオの精妙なアンサンブルが録られているため音質的にはすばらしい録音。クッキリ浮かび上がるヴァイオリンの美音。少し細身の響きがクッキリ感を強調しています。演奏的にも第1ヴァイオリンのクッキリしたメロディーラインを強調したもの。第2ヴァイオリンは逆に第1ヴァイオリンを支える伴奏役に徹するような展開が多く、チェロはさらに淡々と伴奏に徹するような感じです。アンサンブルはオケの団員の演奏らしく、個性を強調したアンサンブルではなく、音符に忠実な演奏で、流石ウィーフィルのトップ奏者の組み合わせ故、クォリティは抜群です。

収録曲目は弦楽三重奏曲V:1、V:2、V:3、V:4、V:8の5曲。基本的に弦楽四重奏曲ほどの構成感の芽生えはまだで、それぞれの楽器の掛け合いもほどほど。練習曲とはいいませんが、技巧的にはそれほど難しい曲ではないと思います。ヴァイオリンの透明感溢れる美音と弦楽器の織りなすメロディーの妙を楽しむというのがこのアルバムの聴き所だと思います。V:1、V:2、V:3の3曲はアダージョではじまり、2楽章はアレグロ、3楽章がメヌエットという構成。中でもV:3が短調ということで、メロディーの暗さをともなった美しさが印象的な曲。V:4はアレグロ、アダージョ・カンタービレ、プレストというある意味普通な構成に。そしてV:8はヴィオラが登場して、アダージョ、メヌエット、プレストという流れ。

演奏はウィーンフィルの団員のアンサンブルらしく、弦楽器の美しさとアンサンブルの面白さが凝縮された名演奏ということが出来ると思います。特段個性的な部分はほとんどなく、楽譜のままにしっかり弾いていくところはまさにオケの団員ならでは安心感。3つの弦楽器の織りなす突き詰めた美しさとともに、安心して聴ける安定感もあります。おそらく弦楽器を弾く人には伸びのある美音が素晴らしく魅力的な演奏に写るのではないでしょうか。逆にアンサンブルとして火花散る緊迫感というか、掛け合いの妙を表すようなスリリングな要素はほとんどなく、サロンでゆったり楽しむような音楽という風情です。これも室内楽の悦びを伝える演奏としては素晴らしいものです。

私も気に入りました。もうじき爆発期に入るハイドンの最も創造性に溢れる時期の少し前にハイドンが何を書いていたかという意味で、それぞれの曲に、この後の創造の萌芽がみられるような気がします。今日は曲ごとのレビューには入らずにおきましょう。全体を聴き通したらおすすめの曲とか演奏について取り上げたいと思います。今日のアルバムに収録された曲の評価はすべて[++++]とします。

このシリーズの演奏は今日すべて所有盤リストのChamber Music - 1に登録しました。こうゆう作業はお休みの日にしか出来ませんので。

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tag : 弦楽三重奏曲 おすすめ盤

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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