【新着】ゴルトムント四重奏団の弦楽四重奏曲集(ハイドン)

弦楽四重奏曲の新譜です。当ブログにいつも含蓄のあるコメントをいただくSkunjpさんから「レビューせよ」とのお告げをいただいていたもの(笑)

GoldmundQ.jpg
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ゴルトムント四重奏団による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.1のNo.1、Op.33のNo.5、Op.77のNo.1の3曲を収めたアルバム。収録は2016年4月18日から21日にかけて、ミュンヘンの北の街、イスマニンング(Ismaning)のガブリエル教会(Gabrielkirche)でのセッション録音。レーベルは、な、なんとNAXOS。

なんと、NAXOSと言ったのは、もちろん廉価盤の雄であり、作曲家の作品のフルレコーディングに執念を燃やし、しかもハイドンの弦楽四重奏曲についてはすでにコダーイ四重奏団との素晴らしい全集を完成させたあのNAXOSが、新たな奏者との録音を始めたとの驚きを隠せないからに他なりません。コダーイ四重奏団との全集がリリースされ始めたのはかなり前になりますが、リリース当初は廉価盤ゆえ一流の演奏とは差があるだろうとたかをくくっていましたが、リリースされるたびにその円熟の演奏の素晴らしさが判明し、現在選択できる弦楽四重奏曲全集でも、1、2を争う素晴らしいものであるのは皆さんご存知の通り。そのNAXOSが新たに世に問う弦楽四重奏曲の新譜ということで、ちょっと普通のアルバムとは見方が違ってしまうのは無理からぬことでしょう。

しかも、選曲は、作品ごとではなく、Op.1、Op.33、Op.77と初期、中期、晩年の作品からセレクトしたもの。さらに、ジャケットに写る姿がまた意味ありげです。まるでコダーイ四重奏団の偉業である弦楽四重奏曲全集をアルプスの山に象徴させ、それを遠景に自信ありげに崖に立ちすくむ4人組。まるでコダーイを過去のものにしてしまうことを暗喩するようなジャケット写真にこのクァルテットに寄せられる期待の大きさと、NAXOSというレーベルの尽きない野心を感じてしまうのは私だけでしょうか。

ゴルトムント四重奏団は、ミュンヘンで学んでいた学生たちによって2009年に設立されたドイツのクァルテット。マドリードの室内楽国際研究所でアルバン・ベルク四重奏団のゲルハル卜・シュルツとギュンター・ピヒラーに師事。デビューはミュンヘンのプリンツレゲンテン劇場(Prinzregententheater)で、以来国際的な音楽祭などに出演を重ねて腕を磨いてきたとのこと。メンバーは下記の通り。

第1ヴァイオリン:フローリアン・シェッツ(Florian Schötz)
第2ヴァイオリン:ピンカス・アド(Pinchas Adt)
ヴィオラ:クリストフ・ヴァンドリー(Christoph Vandory)
チェロ:ラファエル・パラ卜ーレ(Raphael Paratore)

Goldmund Quartet

彼らのウェブサイトを見ると、これまでにリリースされたアルバムは今日取り上げるハイドンだけしか掲載されていませんので、もしかしたらこれがデビュー盤かもしれませんね。

いずれにせよ楽しみなアルバムに他なりませんね。

Hob.III:1 String Quartet Op.1 No.1 [B flat] (c.1757-59?)
音に芯を感じる現代楽器による堅実な響き。ハイドンらしいリズムの軽さもあり、正攻法の演奏です。何気に精度も高く、規律もあっていきなりハイドンらしい朗らかな良さがじわじわと伝わってきます。これは名演の予感。
初期のクァルテットは5楽章構成で2楽章、4楽章にメヌエットが挟まりますが、このメヌエットが実に心地よい演奏。短い楽章の中に流麗さ、規律、機知、ハーモニーの全てが感じられる実に深い演奏。ここでもハイドンらしい明るくユーモアのある規律が支配しています。
アダージョに入るとそれに精妙さが加わり、深い陰影の美しさが際立ちます。ヴァイオリンのフローリアン・シェッツの弱音から伸びやかに響きわたるメロディーの美しさはかなりのもの。アンサンブルも音色がそろって緊張感を保ちます。
後半のメヌエットもよく聴くと非常にニュアンス豊か。シンプルなメロディから非常に多彩な音楽を繰り出してきます。このメヌエットからこのクァルテットの力量がよくわかります。
フィナーレに入って、ヴァイオリンが牙をむいてきました。ただ軽やかにまとめてくるかと思いきや、ヴァイオリンが意外性のある踏み込みをみせて、只者ではないとさりげなく主張しているよう。最後にチラッと牙を剥くあたりのセンスも秀逸です。ハイドンの最初の弦楽四重奏曲を1曲目に持ってきながら、この曲でこれだけの表現を仕込んでくるあたり、大物ですね。非常に完成度の高い演奏です。

Hob.III:41 String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
冒頭からハイドンの筆致の変化に驚きます。前曲に比べると驚くほど豊かな響き。この曲の配置は秀逸。この曲でも速めのテンポにってリズミカルかつ規律ある演奏。アクセントのつけ方もフレージングもわずかに個性的な変化をつけて新鮮さを感じさせます。曲の起伏を急な音量変化で印象付けながら、流麗さは保っているので流れの自然さと、ユニークさを両立させています。この表現力、創造力によって聴き慣れたこの曲が実にスリリングに響きます。
2楽章のラルゴ・カンタービレはヴァイオリンのくっきりと浮かび上がるメロディーを強調、冴え冴えとしたこの曲の魅力が際立ちます。あえてヴァイオリンだけにスポットライトを当てた割り切りが見事。
前曲でもメヌエットが絶品でしたが、この曲でも素晴らしい躍動感が味わえます。ハイドンのメヌエットの理想形。要所での崩しと、流れの維持のコントラストも見事。創意が冴えまくってます。
フィナーレは変奏。リズムと戯れるのが楽しくてしょうがないような演奏。天真爛漫とはこのことでしょう。ハイドンがこの曲に込めたニュアンスを見事に掘り起こして、我々に最上の形でとどけてくれたような演奏。絶品です。

Hob.III:81 String Quartet Op.77 No.1 [G] (1799)
最後は最晩年の曲。やはり速めの快活な入り。最初の数フレーズを聴いただけで、巧みなアクセントと豊かなデュナーミクに惹きつけられます。冴え渡るアイデア。聴き慣れた曲の垢がすっかり落ちてメロディーが実に新鮮に響き渡ります。ボウイングのキレが良いというのではなく、パート間のやりとりのスリリングさが尋常ではないレベルで火花が散っています。それでいて古典の規律は守っているところが素晴らしいところ。
アダージョもやはり精妙な入りですが、太めのチェロの音色がぐっと迫りながら波を作ってき、それに各パートが合わせていく感じ。途中すっと音量を落として静けさを感じさせるところの演出も巧み。音の硬軟を鮮やかに切り替えながら音楽を作っていきます。ふと気づくと、深い音楽の淵をのぞいているような気分にさせられます。ハイドンの晩年の心境を鮮やかに再現。
そしてゴルトムント得意のメヌエットはここでも神々しいほどの切れ味でリズミカルなメヌエットから、ただリズミカルなだけでなく古典期のハイドンが到達した極北の表現の深さを描き切ります。このメヌエットは絶品。千変万化、快刀乱麻、風味絶佳!
フィナーレはこのアルバムの終結にふさわしいキレと風格と規律が高次にバランスしたもの。曲が進むに連れて軽やかな音楽の深みにはまっていきます。最後はキレよく多彩な響きの織りなすクライマックスに至り、すっと終わります。いやいや見事。

NAXOSレーベルが放つ、新たなハイドンの弦楽四重奏曲の第一矢は、このレーベルがこれまで築きあげてきた、大手レーベルの存在を脅かすような品質、ブランドの底力を示す、素晴らしいプロダクションです。新たなシリーズに発展するかどうかの情報はありませんが、これは新たな金字塔になる予感も感じさせます。ゴルトムント四重奏団、素晴らしい才能の持ち主と見抜きました。ハイドンの演奏にこれほどふさわしいクァルテットをよくぞ掘り起こしたというのが正直な感想。これは是非シリーズ化してほしい。いや、シリーズ化しないと人類の損失です。もちろん、評価は全曲[+++++]とします。

少し前に記事にしたキアロスクーロ四重奏団といい、このゴルトムント四重奏団といい、新たな才能を感じさせる若手クァルテットが次々とハイドンに挑み、しかも素晴らしい演奏を聴かせてくれるということで、ハイドンの弦楽四重奏曲の演奏も新時代に突入したという印象を強くしました。このアルバムも是非、聴いてみてください。

Skunjpさん、こんなところで如何でしょうか!

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tag : 弦楽四重奏曲Op.1 弦楽四重奏曲Op.33 弦楽四重奏曲Op.77

マッジーニ四重奏団のOp.33(ハイドン)

以前取り上げたアルバムが良かったマッジーニ四重奏団のもう1枚リリースされているハイドンのアルバムを取り上げます。

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マッジーニ四重奏団(Maggini String Quartet)によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33のNo.5、No.1、No.2「冗談」の3曲を収めたアルバム。収録は1990年12月3日から6日にかけて、ノルウェーのオスロの南にある街シー(Ski)のサレン教会堂(Salen Church Hall)でのセッション録音。レーベルはノルウェーのSIMAX。

マッジーニ四重奏団の演奏は以前に取り上げています。演奏者の情報などは前記事をご参照ください。

2014/11/05 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : マッジーニ四重奏団のOp.77、Op.103(ハイドン)

以前取り上げたアルバムがおそらく1996年の録音で、クァルテットの設立は1988年、今日取り上げるアルバムが1990年の録音ということで、このアルバムはクァルテットの設立直後の録音ということになります。

Maggini Quartet

オフィシャルサイトのディスコグラフィを見ても、このアルバムが一番古い録音であることがわかります。なおこのアルバムの収録時のメンバーは下記のとおりで、第1ヴァイオリンは以前取り上げたアルバムの時とは異なります。

第1ヴァイオリン:トーマス・ボウズ(Thomas Bowes)
第2ヴァイオリン:デイヴィッド・エンジェル(David Angel)
ヴィオラ:マーティン・ウートラム(Martin Outram)
チェロ:ミハウ・カズノフスキ(Michal Kaznowski)

調べてみるとこのアルバムで第1ヴァイオリンを務めるトーマス・ボウズは1960年生まれのヴァイオリン奏者。トリニティ・カレッジで学び、ロンドンフィル、アカデミー室内管などのヴァイオリン奏者として活躍したのち1988年にこのマッジーニ四重奏団を設立します。1989年からはロンドン・モーツァルト・プレイヤーズのリーダーに就任し、マッジーニ四重奏団からは1992年に離れ、その後はロンドン交響楽団、BBC交響楽団、ロンドン・シンフォニエッタ、フィルハーモニア管などの客演リーダーとして活躍しています。

このクァルテットの原点たるハイドンのロシア四重奏曲。いかがなものでしょうか。

Hob.III:41 String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
オーソドックスな入りに聴こえますが、よく聴くと第1ヴァイオリンのピンと張り詰めた表情がキリリとした緊張感を生んでいます。他のパートよりも明らかに張りがあり、音量の変化の起伏も大きいですね。エキセントリックに聴こえなくもない、なにかえも言われぬ緊張感があります。フレーズごとに間をたっぷりとって曲想を分解しながら再構成するような趣もあります。演奏によっては楽天的な明るさが支配する曲調の曲ですが、この演奏ではピリッと引き締まった響きが聴きどころになっています。
つづく2楽章はかなり音量を落として、表情もあえて抑え気味ですが、間をたっぷりととることによって滲む詩情が聴きどころ。音量もかなり抑えて、淡々とメロディーを描いていき、ところどころでメロディーをかなり丁寧に分解してじっくり聞かせます。冷静沈着な演出が印象的。
メヌエットでも、フレーズごとにかなり大胆に表情をつけていきますが、不思議とくどいかんじはせず、逆に侘び寂びを感じさせる不思議な雰囲気。
そしてさらっとフィナーレに入ります。メロディーを完全に把握して彼らの音楽にしてしまっているところは流石。楽譜通りに演奏するというより完全に再構成された音楽ですが、あまりに説得力あふれる解釈に不自然さは皆無。フレーズ毎の表情の微妙な変化に耳を奪われます。かなり力を抜いての演奏ながら水も漏らさぬ緊張感に痺れます。1曲目から圧倒的な完成度。

Hob.III:37 String Quartet Op.33 No.1 [b] (1781)
ハイドンのロシア四重奏曲集の天津爛漫なイメージからはずいぶんと異なる印象、それも悪くない印象を引き出した1曲目に続き、うっすらと陰りを感じるNo.1ですが、冒頭からかなり先鋭な緊張感を醸し出します。このクァルテットの聴かせどころを踏まえて聴きますが、その予想を上回るかっちりとした構成感に冒頭から酔います。前曲では巧みな表情にやられたのですが、この曲ではそれに音量の起伏も加わり、圧倒的な迫力を感じます。アーティスティックにデフォルメされた表情にスポットライトがあたり、くっきりと陰影がついて、曲が持つイメージよりもかなり峻厳な印象。しかもトーンの変化のしなやかなさもあって実に豊かなニュアンスが伝わります。
2楽章のスケルツォは畳み掛けるようなインテンポで攻めてきます。聞き手の曹操を上回る緩急のコントロールに圧倒されっぱなし。
そして3楽章のアンダンテでは淡々と落ち着いた表情を取り戻し安堵。こうした穏やかな部分でも実に豊かなニュアンスを感じさせるのが凄いところ。このアルバムがデビューアルバムとは思えない円熟のなせる技。
そしてフィナーレでは才気爆発。各奏者の響きの統一感はほどほどながら音楽的なエネルギーの集中力は素晴らしいものがあります。これぞ弦楽四重奏曲の醍醐味と言わんばかり。第1ヴァイオリンのトーマス・ボウズに煽られて、メンバーも手に汗握るほどの呼応。空間をつんざくような鋭い響きにアンサンブルが続きます。終盤は巧みに表情を変えながら、ここぞ聴かせどころとばかりにもの凄いエネルギーが噴出。

Hob.III:38 String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
コミカルな表情が特徴の曲ですが、ただコミカルなだけではなく、圧倒的な表現力を聴かせながらの入り。ただものではないのはわかってはいますが、やはりこちらの想像を超えるアーティスティックさ。特にチェロのくっきりとしたアクセントが実に新鮮。各パートそれぞれに聴かせどころを作りながら曲を進めます。この楽章の基調となるリズムを保ちながら千変万化する表情にうっとり。ところどころでしっかりアクセントをつけますが、くどさは感じません。
つづくスケルツォは、これまで同様緩急自在。短い曲ながら華やかさを保ちます。
そしてこのアルバムで一番驚いたのが、3楽章のラルゴ。現代音楽のような静寂を感じさせる極度に抑えた入り。そして楔を打つような慟哭。表現が冴えまくって、曲に新たな魅力を与えるほど。特に抑えた部分の独特の表現は独創的。ハイドンの曲自体に潜む、古典的とは言い難い仕掛けをマッジーニ四重奏団が暴いたと思わせる快心の解釈。鳥肌が立つような表現のキレ。
そしてこの曲の聴かせどころのフィナーレ。前楽章のキレキレの音楽のあとに、いたずら心に満ちたハイドンの軽快な音楽をさらりとこなしてきます。これまでどおり起伏もかなりのものですが、音楽の軽快さをしっかり保ち、そして印象的な終わり方に至るまでに、しっかり間をとってこの曲の面白さを伝えます。見事。

マッジーニ四重奏団のデビューアルバムであるハイドンのロシア四重奏曲から前半3曲を収めたアルバム。いきなり彼らのポテンシャルの高さを真正面から世に問うたような素晴らしい出来。そしてハイドンのロシア四重奏曲の演奏史に新たな価値を加えたと言っても過言ではないレベルの演奏でしょう。思い切り気に入りました。これほど見事な演奏には滅多にお目にかかれません。ハイドンの弦楽四重奏を愛する全ての方に聴いていただきたい素晴らしいアルバムです。もちろん評価は[+++++]以外にはありえません。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.33

マタンギ四重奏団の日の出、蛙、鳥(ハイドン)

今日も湖国JHさんから送り込まれたアルバム。いやいや、いい演奏はまだまだあるものです。

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マタンギ四重奏団(Matangi Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76のNo.4「日の出」、Op.50のNo.6「蛙」、Op.33のNo.3「鳥」の3曲を収めたアルバム。収録は2012年8月26日から28日にかけて、ライプツィヒのすぐ南のマルククレーベルク(Markkleeberg)のリンデン・ザールでのセッション録音。レーベルはオランダのCHALLENGE CLASSICS。

朧月夜のような中、うっすらと輝く光の方を向いたクァルテットのメンバーの写真をあしらった意味ありげなジャケット。なんとなくこのアルバムにかける気合のようなものが漲っています。ライナーノーツの冒頭にはスヴィーテン男爵によるハイドンの四季の春のテキストが引用されています。

All is alive,all is expectant, all neture bestirs! itself!
すべてのものが息づき、すべてものが身を動かし、すべてものが活動している(大宮真琴訳)


また、それに続いて「憂鬱な日はハイドンを弾くと、手から温もりを感じる、、、」で始まる、2011年にノーベル文学賞に輝いたスウェーデンの詩人、トーマス・トランストロンメルによる詩が合わせて掲載されています。このアルバムが伝えようとしているハイドンのイメージを言葉にしています。

奏者のマタンギ四重奏団はオランダのクァルテット。マタンギとはヒンズー教の女神で、語り、音楽、書の神様とのこと。言葉に対する格別のこだわりはクァルテット名にも現れているようですね。

設立は1999年、王立ハーグ音楽院とロッテルダム音楽院で学んでいた若い音楽家がメンバー。2002年から2003年までの2年間、オランダ室内楽アカデミーでオルランド四重奏団のチェリスト、ステファン・メッツに師事、以後はオランダを中心に欧米で演奏活動を行っています。このクァルテット、ジャズのアルバムもリリースするなど、普通のクァルテットとは一味違う側面ももっています。

メンバーは次のとおり。いつものようにクァルテットのウェブサイトへのリンクもつけておきましょう。

第1ヴァイオリン:マリア=パウラ・マヨール(Maria-Paula Majoor)
第2ヴァイオリン:ダニエル・トリコ・メナチョ(Daniel Torrico Menacho)
ヴィオラ:カルステン・クレイエル(Karsten Kleijer)
チェロ:アルノ・ファン・デル・ヴルスト(Arno van der Vuurst)

Matangi - Home

Hob.III:78 String Quartet Op.76 No.4 "Sonnenaufgang" 「日の出」 [B flat] (1797)
比較的近い位置にクッキリリアルに定位するクァルテット。折り目正しい正統派の演奏。心なしか速めのテンポでタイトに引き締まった表情で音楽を創っていきます。特徴は長音での4人のアンサンブルの精妙な響き。かなりしっかりとコントラストをつけての演奏ながら、力を抜くところでしっかり抜いているのでくどくはありません。むしろ推進力とところどころにつくアクセントが効いて、かなりメリハリのしっかりした溌剌とした演奏に聴こえます。録音も4人のバランスが良く、中音域の木質系の力強い響きがうまく録られています。
アンサンブルは2楽章のアダージョに入ると一層精妙になり美しさが際立ちます。和音だけきくと現代音楽のような峻厳な印象もありますが、ジャズを得意としているように、メロディーを描くセンスがいいので硬くはなりません。しっかりと沈み込んでメリハリをつけます。
メヌエットは適度な弾力があり、表情の変化の幅も十分。音楽として一貫していながら楽章間の表情の描き分けがしっかりしていて聴き応え十分。
ちょっと意外だったのがフィナーレ。流麗に来ると思いきや、訥々と語るような入り。勢いに乗った演奏ではなく、徐々に彫りが深くなっていく様子を聴かせようということのようですね。こちらの先入観に振られましたが、よく聴くと実によく考えられた構成。これはこれで完成度の高い演奏と納得する演奏。音楽をまとめる力はかなりのもの。

Hob.III:49 String Quartet Op.50 No.6 "Frosch" 「蛙」 [D] (1787)
好きな蛙(笑)。4人の対等なメロディーの渡し合いの実に愉快な展開。よく聴くとメロディーには相当表情をつけて、イキイキと描いています。ハイドンの音楽の楽しさをよく踏まえた演奏。基本的に楽天的な雰囲気が支配しますが、適度なデフォルメがアーティスティックさも保ち、絶妙のバランス。曲に仕込まれた響きの変化をよく拾って変化に富んだ演奏。1楽章は絶品。
短調に変わる2楽章のポコ・アダージョ。しっかりと翳りを表し、そして長調に転調する場面の変化のセンスの良さ。もちろん演奏のテクニックはそれなりですが、音楽にテクニックを誇示するような印象はまったくなく、ひたすらメロディーをニュアンス豊かに鳴らそうという謙虚な姿勢が感じられます。途中の弱音が非常に効果的。
メヌエットのさりげない雄弁さは前曲同様。そして蛙の鳴き声に似ているいうことで有名な終楽章はこのクァルテットの表現力がよくわかる痛快な演奏。バリオラージュ奏法によるユニークなメロディーがイキイキと踊り、曲の構成もしっかりと描く名演。力の抜けた表現の多彩さに打たれます。

Hob.III:39 String Quartet Op.33 No.3 "Vogelquartett" 「鳥」 [C] (1781)
最後は名曲鳥。この曲は速めの入り。シュトルム・ウント・ドラング期の仄暗いイメージから脱却して、明るく変化に富んだ曲調のロシア四重奏曲の代表曲であることを強調するようなキビキビとした展開。歌う部分ではテンポを落としてゆったりと歌い、キビキビとした部分ではキレ味鋭いボウイングを聴かせる、まさに緩急自在の演奏。時折持続音を長く保って精妙な響きのスパイスを加えるなど細工も十分。ハイドンの機知の真髄を踏まえての演奏という説得力もあります。このさりげない表現力、マタンギ四重奏団の真骨頂でしょう。
続くスケルツォも速足での入り。筆の勢いが感じられる草書のようなしなやかさ。中間部は墨をしっかり含んだ筆による楷書のようにクッキリとした表情、そして再び草書に戻ります。
3楽章は明るい曲奏のアダージョですが、マ・ノン・トロッポとあるように、遅すぎないように、沈まないアダージョの表現とはこういうことかと納得するようなテンポ設定。表情の変化も抑え気味にすることで、メロディー自体の面白さに集中できます。
日の出とは異なり終楽章は快速、クッキリ、キレ味抜群で期待通り。響きを揃えるのではなく純粋に演奏のキレを楽しむような遊び心が感じられる演奏が好印象。実に躍動感があり、音楽が弾みます。鳥も名演でした。

名前もジャケットもアルバムの作りもレパートリーも個性的なマタンギ四重奏団のハイドン名曲集。選曲も皇帝やひばりなどを並べるのではなく、日の出に蛙、鳥というなんとなくこだわりを感じる選曲。演奏も彼らの表現の幅の多彩さ、音楽としてまとめる力を遺憾なく発揮したもの。これは聴きごたえあります。このアルバムの前にOp.20のNo.4を収めたアルバムがあるようですので、これも聴いてみなくてはなりませんね。評価は全曲[+++++]とします。ロシア四重奏曲の残りの曲の録音も期待したいところですが、そういった構成での録音はしないでしょうねぇ(笑)

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tag : 弦楽四重奏曲Op.76 日の出 弦楽四重奏曲Op.50 弦楽四重奏曲Op.33

フーゴ・ヴォルフ四重奏団によるOp.33、Op.20ライヴ(ハイドン)

コンサートや旅行の記事が続いたので、レビューから少しご無沙汰しておりました。そうこうしているうちにいつも当方の所有盤リストにないアルバムを貸していただく湖国JHさんから、新たに何枚かのアルバムが届きました。そのうちの1枚。

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フーゴ・ヴォルフ四重奏団(Hugo Wolf Quartett)の演奏による、ハイドンのロシア四重奏曲Op.33のNo.5、太陽四重奏曲Op.20のNo.3、No.4の3曲を収めたアルバム。収録は2009年7月13日、18日、オーストリアのアイゼンシュタットの少し南にあるロッケンハウス(Lockenhaus)の聖ニコライ教会でのライヴ。レーベルはVMS Music Tresure。

このアルバム、実は私も海外に注文を入れていて、それが届く前にこちらが先に届いたので早速レビューです。

アルバムタイトルは”Live in Lockenhaus”というもの。なぜかカナで打つと私のMacは六軒ハウスと妙にリアルな変換(笑)。このライヴはギドン・クレーメルが1981年に創設したロッケンハウス室内楽音楽祭の2009年のライヴということで、この年に没後200年を迎えたハイドンの曲が演奏されたということでしょう。

奏者のフーゴ・ヴォルフ四重奏団は1993年にウィーン音楽大学で設立されたクァルテット。アルバン・ベルク、スメタナ、アマデウス、ラサールらクァルテットの大御所に師事(なんと豪華な!)し、すぐにウィーンフィル特別賞、室内楽ヨーロッパ賞などに輝きました。その後は国際的に演奏活動を繰り広げ、日本のサントリーホールでもコンサートを開いたとのこと。レパートリーは古典から現代音楽まで幅広く、彼らに献呈された現代曲もいろいろあるようです。ウェブサイトがありましたので、リンクしておきましょう。

Welcome | Hugo Wolf Quartet

このアルバムに参加している奏者は次のとおり。

第1ヴァイオリン:セバスチャン・ギュルトラー(Sebastian Gürtler)
第2ヴァイオリン:レジ・ブリンゴルフ(Régis Bringolf)
ヴィオラ:ゲルトルート・ヴァインマイスター(Gertrud Weinmeister)
チェロ:フローリアン・ベルナー(Florian Berner)

Hob.III:41 String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
教会でのライヴらしい、豊かな残響に包まれた一体感ある音響。ただ鮮明さもほどほどあり、コンサートを楽しんでいるのに近い録音。ライヴですが会場ノイズはほとんと聞こえず、ライヴとしては理想的な録音です。フーゴ・ヴォルフ四重奏団の演奏は鮮度抜群、推進力抜群、4人のまとまりもかなりのレベルということで、冒頭から最上のライヴを客席で楽しむような素晴らしいもの。まるで生きた魚が跳ねるようなバネの強い躍動感と緊張感。ロッケンハウスということでクレーメルの眼鏡にかなう出演者が選ばれているのでしょうか。クレーメルの殺気のようなもととは少し異なりますが、キレ味の鋭さはかなりもの。この音楽祭のレベルの高さが伺えるというものです。1楽章は手に汗握る展開。ハイドンなのにメチャメチャスリリング。音量を上げて聴くとまさにコンサート会場にいるようなリアリティ。
このクァルテットの凄さはつづくラルゴで確信しました。この切々たる音楽の彫りの深い描き方。アーティスティックさを保ちながら、グイグイ迫る迫力、ちょっと遅れて入るチェロのセンスの良さ、抑えた部分の精妙なバランス、どれもこれ以上の演奏はあり得ないほどに完成度が高い。超低音の会場ノイズが入り、ライヴだと気付かされます。
メヌエットは緩急自在。4人の息がピタリと合って見事なテンポのコントロール。クァルテットの表現力の幅の広さを思い知らされます。次々と繰り出されるメロディーの面白さに釘付け。
そしてフィナーレは実に落ち着いた入り。楽譜を読みきっている自信がみなぎる落ち着き。変奏ごとに絶妙な表現のコントロールが加わり、進むごとに至福度が徐々にアップしていく快感。徐々にメロディーが変化する意味がよくわかります。最後はメロディーがカオスのようにからまり終了。1曲目から度肝を抜く素晴らしさ。

Hob.III:33 String Quartet Op.20 No.3 [g] (1772)
太陽四重奏曲の中でも地味な曲を選んできました、なぜこの曲を選んだか演奏を聴くと理由がわかるような気がします。この曲のメロディーに潜むものをすべてが彼らの音楽で置き換えられていると言っていいほどの説得力に冒頭から打たれっぱなし。これほどの確信をもって演奏されたこの曲の演奏を知りません。教会堂に響き渡るハイドンの機知。すべての音符が書かれた理由を知り尽くしているがごとき踏み込み。これ以上つっこむとくどくなるという寸前。というかくどさという印象は一切感じませんがものすごい踏み込みに圧倒される感じ。演奏している教会堂ごとフーゴ・ヴォルフ四重奏団に完全に支配されているよう。
2楽章はメヌエット。この曲自体の演奏の神が乗り移ったかのような推進力はこの楽章でも変わらず。数あるクァルテットのなかでもこの集中は稀に見るほどの見事さ。短調から長調へのさりげない変化も流石。
つづく3楽章のポコ・アダージョは今度は精妙なアンサンブルの魅力を遺憾なく発揮。弱音のバランスもさることながら、ここにきてチェロの雄弁な演奏が光ります。ライヴでの究極の洗練が聴かれます。しなやかにうねる曲想。天上に抜けるような上昇感と静寂に吸い込まれる響き。フィナーレは疾走する感じを実に上手くまとめ、アンサンブルの一体感を見せつけて終了。

Hob.III:34 String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
このクァルテットの素晴しさを十分に理解しての最後の1曲は、もはや圧倒的と言っていい出来。冒頭のざわめきのような響きからメロディーが浮かび上がり、何度か楔が打たれながら音楽が形作られていく様子はまさにそこで熱い鉄が打たれているようなリアリティ。すべての音符が有機的に絡み、このクァルテットにより再構成されて、イキイキとした音楽として迫ってきます。けっして不自然にはならず、音楽の赴くままを演奏しているように聴こえるのが流石なところ。
1楽章もさることながら、長い2楽章の構成感も見事。音楽が変奏ごとにしっとりと表情を変えながら進み、徐々に装飾を加え、ハイドンの音楽本来の表情が浮かび上がってきます。ここでもチェロが音楽の表情を豊かにしていきます。変奏ごとの音楽の描き分けの見事さはこのクァルテットのすぐれた特徴の一つでしょう。そして短いメヌエットを経てフィナーレへ。フィナーレは鮮明なアンサンブルと推進力のショーケースのような楽章。ただテクニックを誇示する演奏とは異なり、フレーズごとに実にしっかりとした表情がつき、この速い楽章が実にくっきりと表情が浮かび上がるのが流石。最後の曲には湧き上がるような会場のからの拍手が降り注ぐ様子が録られてています。

いやいや、このフーゴ・ヴォルフ四重奏団によるハイドン、超名演です。2日のコンサートの記録を合わせたアルバムですが、真っ赤に燃えたぎる火の玉のようにエネルギッシュな演奏にも拘わらす、ハイドンの曲を演奏するののに不釣り合いなところがある印象はありません。このライヴに立ち会った人はものすごいネネルギーを得て帰ったことでしょう。流石にロッケンハウスのプログラムに組み入れられるだけのことはありますね。このアルバムの演奏、全曲『+++++]としたいと思います。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.20 弦楽四重奏曲Op.33

テルプシコルド四重奏団のOp.33(ハイドン)

最近入手した弦楽四重奏曲の名演盤。

Terpsycordes.jpg
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テルプシコルド四重奏団(Quatuor Terpsycordes)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33からNo.5、No.2「冗談」、No.1の3曲を収めたアルバム。収録は2005年11月20日から23日にかけて、スイス、ラ・ショー=ド=フォンの名録音会場、Salle de Musiqueでのセッション録音。レーベルはスイスのclaves。

最近アバドとモーツァルト管の協奏交響曲や、つい先日取り上げたファブリツィオ・キオヴェッタのピアノソナタ集などいい録音を相次いてリリースしているスイスのclaves。そのclavesからリリースされている弦楽四重奏曲ということで興味を持った次第。しかも曲もロシア四重奏曲という絶好の選曲。

テルプシコルド四重奏団は初めて聴くクァルテット。1997年にジュネーヴで4人の若者によって創設されたクァルテット。イタリア人、ブルガリア人と2人のスイス人の組み合わせ。

第1ヴァイオリン:ジローラモ・ボッティリェーリ(Girolamo Bottiglieri)
第2ヴァイオリン:ラヤ・ライチェヴァ(Raya Raytcheva)
ヴィオラ:カロリーネ・ハース(Caroline Haas)
チェロ:フランソワ・グリン(François Grin)

設立後、ジュネーヴ音楽院でタカーチ四重奏団の創設者、ガボール・タカーチ=ナジに師事し、音楽院での芸術賞で1等となったのを皮切りにシシリアのトラパニ、ドイツのワイマール、オーストリアのグラーツのでのコンクールで優勝しています。レパートリーは古楽器による演奏から現代音楽までと幅広く、デビュー盤はシューマンの弦楽四重奏曲集。

若手のクァルテットの演奏を聴くのは楽しみですね。

Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
このアルバムでは古楽器にガット弦での演奏。古楽器といっても音色は現代楽器に比較的近いふくよかさはあります。録音は最近のものらしく鮮明。そして名録音会場であるラ・ショー=ド=フォンのSalle de Musiqueらしい、自然な残響がわずかに感じられるバランスの良いもの。テンポは速めに入るのですが、適度にリラックスしていて、折り目正しいというよりは、自然な音楽が心地良い感じ。変に精妙さを表現しようとすることはなく、自然な起伏と躍動感を主体とするスタイルのようです。このロシア四重奏曲の演奏ではそういったスタイルの演奏の方が曲に合っている感じですね。音楽を楽天的に楽しむという本来の姿。ハイドンの美しいメロディーがキレ良く踊る素晴らしい1楽章。
2楽章のラルゴ・カンタービレに入ると自然さはそのまま、短調の翳りのような気配を程よく感じさせるデリケートな表情の変化をみせます。そしてスケルツォでは、テンポを自在に揺らして曲想の面白さを際立たせます。楽章間のスタンスの変化が鮮やかで、音楽にくっきりとメリハリがつきます。そしてさらりとフィナーレに入るあたりのセンスも実にいい。曲が進むにつれて表現の幅が広がり、ハイドンが仕込んだ急転部分も鮮やかにキメます。楽譜を深く読みこなして、そこに潜む音楽を再構成する巧みさがこのクァルテットの聴きどころとみました。

Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
有名な冗談。実におおらかな表情での入り。いきなり癒しに包まれます。フレーズ毎に実に豊かに表情をつけ、軽さもおおらかさも躍動感もある演奏。あいかわらず楽天的な気分は一貫しています。この気分こそがハイドンらしさなのかもしれませんね。演奏のスタンスは前曲同様一貫していて、楽章ごとにスタイルを変え、またフレーズ毎に大胆に変化をつけていきます。2楽章のスケルツォは遊び心に満ちた表現に引き込まれます。そして3楽章では弦楽器本来の木質系の渋い響き自体の存在感を際立たせます。これまでの楽天的な気分が吹き飛ぶ深い闇。表現のボキャヴラリーの多彩さに驚きます。フィナーレはご存知の通り、軽いタッチで入り、最後まで軽さの表現が見事。意外に3楽章の深さにしびれました。

Hob.III:37 / String Quartet Op.33 No.1 [b] (1781)
このアルバム最後の曲。短調の入りからタイトさと色彩感と素朴な感じがいいバランス。響きを揃えるという視点はなく、音楽を自在に描いていこうとする姿勢の一貫性が素晴らしい。しかもいい意味で適度な粗さがあって、無理やり緻密に弾こうとしていないのが肩肘張らない感じにつながっているのでしょう。さらりと2楽章のスケルツォに入り、鮮やかにフレーズを切り替えていくところは同じ。3楽章のアンダンテはユーモラスな表情をじっくりと描いていきます。これまで特段ボッティリェーリのヴァイオリンが目だったわけではないのですが、この楽章ではなかなか美しいヴァイオリンを聴かせます。そしてフィナーレでは鮮やかな弓捌きの饗宴。かなり速いパッセージながらテクニックの誇示のように聴こえる部分は皆無。音楽としのまとまりがしっかりとついています。

事前の予想ではもうすこし若さや表現意欲が先に立つ演奏かと思いきや、音楽の表現の幅が広く、表情の豊かさはかなりのもの。若手ではありますが、これは要注目のクァルテットでしょう。ハイドンをこれだけ上手くこなすということでも、このクァルテットの並々ならぬ実力が伺い知ることができますね。私は非常に気に入りました。ということで評価は3曲とも[+++++]とします。ハイドンの録音はもう一枚「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」がリリースされていますので、これは早速入手しなければなりませんね。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.33 冗談 古楽器

プラハ・ヴラフ四重奏団の弦楽四重奏曲集(ハイドン)

今日は弦楽四重奏曲。

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プラハ・ヴラフ四重奏団(Blach Quartet Prague)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.4、Op.33の3「鳥」、Op,77のNo.1の3曲を収めたアルバム。収録は2000年4月10日から12日、17日、チェコのプラハにあるスタジオ・アルコ・ディーヴァ(studio ARCO DIVA)でのセッション録音。レーベルはチェコ、プラハのWALDMANNというところ。

このアルバム、例によって湖国JHさんから送り込まれた3月の課題曲。いつも当方の所有盤にない名盤をさりげなく送り込まれますので、油断なりません(笑)。このアルバムも調べてみると、簡単には手に入りそうもないレアもの。いままでいろいろなアルバムを貸して頂いていますが、どれも流石ハイドンに詳しいだけあると唸るばかりの名盤揃い。今回もアルバムをプレイヤーにかける前には、佐々木小次郎を前にした宮本武蔵のような張りつめた空気が漂います。いや、もしかしたら、宮本武蔵を前にした佐々木小次郎の心境かもしれません(笑)

プラハ・ヴラフ四重奏団は、1982年、第1ヴァイオリンのヤナ・ヴラコーヴァが設立した四重奏団。

第1ヴァイオリン:ヤナ・ヴラコーヴァ(Jana Vlachová)
第2ヴァイオリン:カレル・スタッドゼール(Karel Stadtherr)
ヴィオラ:ペトル・ヴァマー(Petr Verner)
チェロ:ミカエル・エリクソン(Mikael Ericsson)

このクァルテットの前身は、ヤナ・ヴラコーヴァの父、ヨゼフ・ヴラフが第1ヴァイオリンを務めたチェコでは有名なヴラフ四重奏団。時代が変わって、メンバーも変わったため、クァルテット名に新たにプラハをつけて新設されたということでしょう。設立の翌年1983年にはチェコの国際弦楽四重奏コンクールで、チェコ現代音楽演奏賞に輝き、1985年には英ポーツマスで開催された国際弦楽四重奏コンクールで欧州1位となるなどの受賞歴があります。その後スイスでメロス四重奏団のマスターコースに参加しています。ヨーロッパ、アメリカ、日本などでもコンサートを開き、1997年には岐阜のサラマンカホールのレジデンス四重奏団となっているとのこと。日本にもゆかりがあるのですね。また、録音はNAXOSからドヴォルザークの弦楽四重奏曲全集15枚がリリースされているなど、なかなかの実力派でもあります。

Hob.III:34 / String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
ざわめきのようなそわそわした感じの入り。録音のせいか少し饐えたような音色の印象がありますが、すぐに第1ヴァイオリンのヴラコーヴァのキレのよいボウイングに耳を奪われます。テンポは中庸ですが、フレーズの息が短く、テンポ感の良い演奏。きっちり音色を合わせていく演奏ではなく、適度に粗さを持ちながら、アンサンブルが凝縮していく感じ。一人一人のボウイングのキレの良さが時折重なり、時折離れていくような自在さがあります。音量を上げていくと実演の印象と重なってきて、スピーカーの前に4人が並んで弾いているようなリアリティ。
2楽章に入ると、絞り出すように情感を感じさせる演奏。もうすこし伸びやかな演奏で情感を滲ませていく方が好みではありますが、この独特の絞り出すような感じがこのクァルテットの特徴でもあります。半ばよりプレゼンスが上がるミカエル・エリクソンのチェロのフレージングがおおらか。線がほそいのですが、鋭さをもったヴァイオリンとチェロの対比が緊張感をもたらします。
メヌエットでもチェロの素朴なフレージングとヴァイオリンが拮抗。そしてフィナーレはヴァイオリンのキレで一気に聴かせます。音階のキレをことさらクッキリ描いていくことで、曲がカッチリと明解になります。テンポは少し足速で前のめりな印象。もしかしたら、もう少し落ち着きと柔らかさがあった方が曲の深みが出るかもしれませんね。

Hob.III:39 / String Quartet Op.33 No.3 "Vogelquartett" 「鳥」 [C] (1781)
ご存知有名曲の「鳥」。少し短めの呼吸はこれまでのまま。すこしごつい感じがしますが、この曲では気にならず、もともとのテンポ良く進める感じが曲にはあってます。インテンポで畳み掛けながら曲を進めますが、やはり第1ヴァイオリンのヴラコーヴァのはち切れんばかりのボウイングがかなりのインパクト。ハイテンションとはこのことでしょう。穏やかな表情と軽さを表現する演奏が多いロシア四重奏曲の演奏のなかにあっては、ハードな部類に入るでしょうか。素晴しい凝縮感ではありますが、曲の位置づけからするとちょっと力みを感じなくもありません。
続くスケルツォはなでるようなじっくりした演奏を両端に置き、中間部は軽さを聴かせる曲ではありますが、サクサク感が聴き所。
そしてアダージョ。アダージョまでテンポとテンションを落としきっていない印象もあります。フレーズ毎にメリハリをつけているようですが、やはり第1ヴァイオリンのコントロールで聴かせきってしまう勢いがあります。
そしてフィナーレではヴラコーヴァのヴァイオリンがエッジが立ったようにキリリとフレーズを奏でていきます。一貫してハイテンションで終えます。まさに鳥のさえずりのよう。

Hob.III:81 / String Quartet Op.77 No.1 [G] (1799)
これまでのテンションとはちょっと異なり、ゆったりとしたリズムで入るので、ちょっと安心できます。表現がテンションのみではなく、曲が成熟した分、音楽の流れの良さにも廻って、音楽に少し余裕ができてきます。徐々に力感を増しながら1楽章のクライマックスへ。代わる代わる登場する楽器がプレゼンス良くメロディーを受け継ぎ、一つの音楽にまとめあげていきます。
アダージョは音楽の流れのしなやかさを保ちながら、ヴァイオリンの高音部が今まで一番力の抜けた演奏を披露。相変わらずチェロは生真面目に伴奏に徹する姿勢。やはり力が抜けているのが音楽にはプラスでしょう。弦楽器の音の重なる部分にアンサンブルの面白さが宿ります。
そして、これまでのメヌエットでは最も力の乗ったメヌエット。奏者のエネルギーが集中します。最後の力を振り絞っているのか、中間部でも弦が峙つ感じが素晴しい効果を挙げています。
フィナーレは予想通りヴラコーヴァの鮮やかなキレのよい弓さばきが聴き所。他の3人も髪を振り乱して追随しているよう。アルバムのフィナーレに相応しい盛り上がり。ハイドン最晩年の作品のテンションを浮き彫りにした形。武闘派の演奏でしょう。

プラハ・ヴラフ四重奏団によるハイドンの弦楽四重奏曲集。各時代の名曲から3曲選んでアルバムにしたというところでしょう。基本的に攻めのハイドン。カミソリのようなキレ味で第1ヴァイオリンのヴラコーヴァがメロディーを描き、3人がそれをサポートするという構図。録音のせいか、鋭利な音色が耳に刺さるような鮮明さで迫ってきます。時代をまたいだ3曲ながら演奏の姿勢は一貫していて、あえて言えば最後のOp.77の前半はすこしゆったりしてテンションを緩めますが、聴いているうちに攻めの姿勢に戻ります。これはこれで非常に刺激的なハイドンです。評価は一般のハイドンファンへのオススメ度合いを勘案して、3曲とも[++++]とします。これはハイドンマニアの方向けの、知的刺激に満ちた演奏です。ハイドンの弦楽四重奏曲の魅力をこれから知ろうという人にとっては刺激過多です(笑)

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tag : 弦楽四重奏曲Op.20 弦楽四重奏曲Op.33 弦楽四重奏曲Op.77

【新着】ライプツィヒ弦楽四重奏団のOp.33(ハイドン)

今日は新着アルバムから。

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ライプツィヒ弦楽四重奏団(Leipziger Streichquartett)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33のNo.3「鳥」、No.1、No.5の3曲を収めたアルバム。収録は2013年2月20日から21日にかけて、ドイツ北部ハノーファーの南西約50kmのところにあるマリエンミュンスター(Marienmünster)修道院のコンサートホールでのセッション録音。レーベルはドイツのmDG GOLD。

このアルバムはmDGによるライプツィヒ弦楽四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲集の第6巻として、つい最近リリースされたものですが、私としたことが第1巻から5巻までについても手元になく、はじめて手に入れたもの。今回第6巻のリリースにあわせて何枚か同時に注文したところです。6巻もリリースされているのに素通りしてきたのは特に理由があるわけでもなく、単なる巡り合わせが悪かったから。良く使うHMV ONLINEでは最近在庫がないもの入荷タイミングがバラバラなのでまとめ買い時に選びにくかったというところです。

ということでライプツィヒ弦楽四重奏団のハイドンははじめて聴く事になります。現在6巻までリリースされているということで、これは全集を目指しているのでしょうか。だとすると、これはマークしない訳にはまいりませんね。

ライプツィヒ弦楽四重奏団は1988年に設立されたクァルテット。名前から想像されるとおり、メンバーは元ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の首席奏者などからなっています。

第1ヴァイオリン:シュテファン・アルツベルガー(Stefan Arzberger)
第2ヴァイオリン:ティルマン・ビュニング(Tilman Büning)
ヴィオラ:イーヴォ・バウアー(Ivo Bauer)
チェロ:マティアス・モースドルフ(Matthias Moosdorf)

2008年に第1ヴァイオリンが現在のシュテファン・アルツベルガー(ライプツィヒ出身でライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のアシスタント第1コンサートマスター)に変わっています。HMV ONLINEをみてみると、ハイドンの他、ベートーヴェン、モーツァルト、ブラームス、メンデルスゾーン、シェーンベルク、シューベルトなど独墺系の主要な作曲家の弦楽四重奏曲をmDGレーベルからかなりの数リリースしており、かなりの実力派とみなされる存在のようです。

楽器は現代楽器のようですが、弓はハイドンの時代に制作されたもののレプリカを使用しているとのことで、ハイドンに対するアプローチもよく考えているようです。

Hob.III:39 / String Quartet Op.33 No.3 "Vogelquartett" 「鳥」 [C] (1781)
弓のせいかどうかわかりませんが、非常に柔らかく染み入るような音色。楽器をゆったりと穏やかに鳴らして、ハイテンションとは逆。ローテンションと言うのでしょうか、非常に落ち着いた入り。各楽器ともかなり綿密にデュナーミクをコントロールしてしっとりと音楽を奏でていくので、こちらが耳を峙てて音楽を聴きにいく感じ。明るい晴朗な曲調のロシア四重奏曲ですが、春の薄曇りの音楽に変わっています。
ライプツィヒ弦楽四重奏団のこのスタンスは一貫していて、2楽章のスケルツォでは前半後半の低音弦によるメロディーをじっくり奏でる部分のしなやかさはなかなかなもの。いつもは音量を上げて聴きたくなるのですが、この演奏は音量を落として、しっとりと楽しみたくなります。
つづくアダージョも同様、意外とあっさりしていますが、フレーズの奥に広がる静寂感のようなものの存在を意識しながら聴きます。実に慈しみ深い音楽。弦楽器の木質系の響きが心地よいですね。
フィナーレは流石に素晴しい弓さばき。それでも力みはまったくなく、軽々とフレーズを刻んでいくので、ようやく明るさが見えてきます。アンサンブルは良い意味ですこし暴れがあり、それが豊かな響きの印象につながっています。いやいやこれは大人向けのじつに趣き深い演奏。

Hob.III:37 / String Quartet Op.33 No.1 [b] (1781)
ロシア四重奏曲唯一の短調から入る曲。前曲の印象はそのまま、非常に落ち着いた音楽。正確無比なアンサンブルではなく、適度にばらついた演奏が、じつに味わい深い印象につながっています。4人がそれぞれ意を凝らして響き合っているのがよくわかります。この響きがライプツィヒ・ゲヴァントハウスの伝統でしょうか。そういわれるとなんとなくそう思えて来ます。録音はアンサンブルがスピーカーの奥に定位する程よい距離感があり、残響成分が程よくのって聴きやすいもの。
この曲も2楽章がスケルツォ。なんとなく楽章間の対比はあまり意識せず、淡々と楽譜をこなしていく感じ。クアルテットの演奏というより、オケの弦楽パートの演奏のような姿勢なのでしょうか。そう思いはじめると、まさにオケの弦楽パートを淡々と弾いているようにも聴こえてきます。そのスタンスがじつにおだやかな音楽につながっているのでしょう。
アンダンテも同様。クァルテットとして踏み込んでくるという感じはせず、淡々と穏やかな音楽が流れます。これはこれで実に良い味わい。このへんをどう聴くかでこのクァルテットの演奏に対する評価が変わってくるポイントかもしれません。しなやかさを極めたアンダンテ。
そしてフィナーレは迫真の曲調を楽しんでいるような余裕たっぷりの演奏。やはり弓さばきは見事で軽さも十分。演奏によってはかなりタイトに攻め込むところですが、速いパッセージの練習をこなすがごとき余裕があります。感情移入しすぎず、曲を楽しんで演奏しているようなスタンスは変わらずです。

Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
このアルバム最後の曲。演奏の特徴は前2曲とかわりませんが、この曲は比較的速めのテンポ設定で流麗な印象が前2曲より強くなっています。テンポが変わると音楽の印象もだいぶ変わりますね。弾き急ぐような管もありますが、それが草書の魅力のようなものを感じさせるのも正直なところ。曲調の変化する部分もさらりとかわすあたりのセンスも見事。草書を書き慣れている人の筆さばきに感心しきり。
この曲では2楽章がラルゴ。構えず自然に切々とした短調のメロディーを重ねていきます。力が抜けているのはこのアルバムの演奏の特徴ですが、最後のこの曲ではかなり自在に、本能の趣くままに演奏しているような自在さがあります。続くスケルツォも同様。かなり自在な演奏なのに各奏者の呼吸がピタリと合っているところは流石です。
フィナーレは逆に、襟を正すかのようにキリリと締めてきました。この辺の呼吸も見事と言う他ありません。

ライプツィヒ弦楽四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲集の第6巻。もうすこし硬派の演奏だと想像していましたが、これは腕利きの奏者が構えずしなやかに音楽の演奏を楽しんでいるところを録ったようなアルバムでした。ロシア四重奏曲という曲調を考えるともう少し明るく張りのある演奏を狙うべきとの声も出そうですが、これはこれで燻し銀の演奏と看做す事もできます。クッキリタイトな演奏とはまったく逆に、自然なアンサンブルで音楽を紡いでいく演奏。なんとなくこのクァルテットのやりたいことが飲み込めた気になりました。この演奏、いろいろクァルテットを楽しんでいる上級者向けの演奏でしょう。この楽しみはこれでいいものです。私の評価は3曲とも[++++]としておきます。突き抜けた個性がある訳でも、驚愕のアンサンブルなわけでもありませんが、じっくり楽しむ価値のある演奏ということです。

このクァルテットの他のアルバムもじっくり聴かねばなりませんね。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.33

驚愕の名演 シャロン四重奏団の冗談、五度(ハイドン)

皆さま、明けましておめでとうございます。地道にハイドンの名演奏発掘を志すマイナーなブログですが、本年もよろしくお願いいたします。

年始一発目はこちら。

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シャロン四重奏団(THe Sharon Quartet)の演奏による、伝ハイドンの弦楽四重奏曲Op.3のNo.5、いわゆる「ハイドンのセレナード」、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33のNo.5「冗談」、Op.76のNo.2「五度」の3曲を収めたアルバム。収録は1989年6月、ドイツ、ケルンの聖ヨハネ教会でのセッション録音。レーベルはDISCOVER INTERNATIONAL。

DISCOVER INTERNATIONALといえば、先日取りあげたワリド・アクルのピアノソナタ集などをリリースしているレーベル。アクルのアルバムでは"KOCH" DISCOVER INTERNATIONALとKOCHの名前が入っていたのですが、このアルバムにはKOCHの名前が入っていません。今日取り上げるアルバムの方が録音年代が古いことを考慮すると、この後このレーベルをKOCHが傘下に収めたということでしょうか。この辺の状況はわかりません。KOCH自体ももう存在しませんが、KOCHといえばハイドンマニアの方は、マンフレッド・フスによる室内楽、管弦楽の素晴しい演奏の数々を思い浮かべるでしょう。そう、ハイドンマニアには注目のレーベルなんですね。幸いフスの録音は現在スゥエーデンのBISからかなりの量リリースされていおり、現在も流通しているものと思います。

前振りが長くなりましたが、このアルバム、例によって湖国JHさんから貸していただいたもの。地味なジャケットですが、かく言う背景から、DISCOVER INTERNATIONALのロゴにアンテナがピンときました。

演奏者のシャロン四重奏団はもちろんはじめて聴く団体。設立は1984年で、第1ヴァイオリンがギル・シャロンということが楽団名の由来のようです。メンバーは下記の通り。

第1ヴァイオリン:ギル・シャロン(Gil Sharon)
第2ヴァイオリン:ロディカ=ダニエラ・チョチョイ??(Rodica-Daniela Ciocoiu)
ヴィオラ:ゲオルク・ハーグ(Georg Haag)
チェロ:カタリン・イレア=マイアー(Catalin Ilea-Meier)

第1ヴァイオリンのギル・シャロンはどうやらルーマニアの人のよう。ブカレストで学び、ルーマニア国内各地を演奏してまわったそう。1961年イスラエルに渡り、テル・アヴィヴ大学のルービン・アカデミーで引き続き学びます。その後イスラエル軍弦楽四重奏団の創設メンバーとなり、ダヴィド賞を受賞、1971年にはロンドンで開催されたエミリー・アンダーソン国際ヴァイオリンコンクール優勝しました。その後、マーストリヒト交響楽団のコンサートマスター、バルセロナ交響楽団の客演コンサートマスターなどとして活躍すると同時にソロヴァイオリニストとしても活動し、ヨーロッパ各国、イスラエルなどでコンサートを開いています。室内楽ではこのシャロン四重奏団とアマティ・アンサンブルを創設して活動しているとのことです。

このアルバム、聴くとシャロンの落ち着いたヴァイオリンをベースとしたのどかな音楽が流れてきます。最近非常に凝った表現のアルバムが多いなか、テンポはほとんど揺らさず、メリハリもそこそこ、かといって一本調子になるでもなく、じつに落ち着いた音楽が流れ、癒されるようなハイドン。そういった意味で貴重な演奏でしょう。

String Quartet Op.3 No.5 [F] (Doubtful 疑作 Composed by Roman Hoffstetter)
久しぶりに聴く「ハイドンのセレナード」。録音は時代なり。教会での演奏らしく、適度に残響がのった聴きやすい録音。先に触れた通り、非常にオーソドックスな弦楽四重奏。キリリと締まった表情、テンポ良く進め、外連味は一切なく堅実この上ない演奏。4人の奏者の息はぴったりですが、やはり第1ヴァイオリンのギル・シャロンの美音が印象的な演奏。このオーソドックスな演奏がかえって新鮮です。
有名な二楽章のアンダンテ・カンタービレは速めのテンポでこれ以上ない安定感。デリケートに抑えられた3人のピチカートに乗って、ギル・シャロンが優雅にメロディーを奏でます。良く聴くと素晴しい完成度。美しい音楽だけが流れます。これは絶品。
メヌエットも4楽章のスケルツァンドも速めで音楽の見通しは極めてよく、久しぶりに粋な演奏を聴いたという感想。まったく力まず、軽々と音楽を奏でていき、特に4楽章は踊り出すような活き活きとした表情をつくっていきます。この演奏の良さは、弦楽四重奏曲を聴き込んだ人にはわかると思います。1曲目からあまりに見事な演奏に驚きます。

Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
シャロン四重奏団の演奏スタイルが絶対に映えそうな選曲。予想通り軽やかなメロディーが流れてきます。前曲同様、1楽章から素晴しい音楽。どの楽章も速めのテンポで、楽章間の対比をつけるような意図はなく、一貫した音楽が流れますが、ただただ美しい音楽が見通しよく流れていき、聴いているうちに実に幸せな気分になります。1、2楽章は予想通りだったんですが、驚いたのは3楽章のラルゴ。これほど美しいラルゴを聴けるとは。冒頭から信じられないような美音で、ようやく深くテンポを落としてじわりと心に迫ってきます。チェロとビオラの奏でる伴奏の美しさったらありません。またそれに乗ってギル・シャロンのボウイングが冴え渡ります。まさに至福のラルゴ。お正月気分が吹き飛びます。またもや絶品。
そして、この曲の聴き所。過度にくだける事はなく、凛々しい印象のまま、軽々とフレーズを刻んでいきます。まさに正統派の演奏。すべてのクァルテットの教科書になりそうな、見事な完成度。最後の聴かせどころも素晴しいセンスでまとめます。

Hob.III:76 / String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
すでに完全にノックアウトされています。この完成度で五度を聴かされたらと思いながら、まさにワクワク感満点で聴き始めます。速めのテンポは変わらず。そしてバランスの良い落ち着いた演奏スタンスも変わらず、五度の最も美しい冒頭の部分を畳み掛けるように進めていきます。この素晴しい完成度、神々しいというのが相応しいでしょう。素晴しい音楽が流れていきます。良く聴くと時折、ぐっと音量をしぼっているので、引き締まった印象が保たれている事がわかります。
やはり、この曲でもアンダンテが沁みます。情に流されない素晴しいアンサンブル。ヴァイオリンの美音。ハイドンのアンダンテはこのように演奏するのだと諭されているよう。なぜか心にぐっさりささる音楽。終盤の孤高の境地。
五度でもっとも表現が難しいと思われるメヌエット。野暮な演奏で聴くと、ただ荒々しいだけの殺伐とした音楽に成り下がってしまうリスクをはらみますが、流石シャロン四重奏団はツボを押さえて、心に刺さると同時に気高さも感じるタイトな音楽に仕立てました。
フィナーレはこのアルバムで最も力の入った演奏。力が入ったというより、力感の表現が秀逸だといったほうが正しいでしょう。斬り込むような鋭い音色が続きますが、クッキリとまとめて音楽の一体感が際立ちます。いやいや参りました。湖国JHさんが苦手だったこの曲をこの演奏を聴いて好きになったというのが頷ける演奏です。

実はこのアルバム、年末から何度も聴いていてあまりの素晴しさに打たれ続けていたもの。やはりお正月最初に取りあげるのが相応しいとの思いで、レビューを先送りしてきました。弦楽四重奏曲はたった4本の弦楽器のアンサンブルですが、その表現の幅はまことに広く、実に様々な演奏があります。今日とりあげたシャロン四重奏団のハイドンは、まさにハイドンの弦楽四重奏の原点、それも容易には真似の出来ない恐ろしいまでに完成された原点たる演奏といって良いでしょう。このすばらしさは多くの人に聴いていただく価値があります。残念ながら現役盤ではありませんが、amazonなどではまだ手に入るようですので、是非! 3曲とも決定盤、評価は[+++++]以外にはあり得ません。新年の幕開けに相応しい名盤でした。

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tag : ハイドンのセレナード 冗談 五度 弦楽四重奏曲Op.33 弦楽四重奏曲Op.76

シャルトル弦楽四重奏団のOp.64のNo.3、Op.42、Op.33のNo.5

8月も終わりに。暑い暑い夏でした。でしたといってもまだ暑い日が続くかもしれませんね。8月は弦楽四重奏を集中的に取りあげましたが、最後に到着した1枚を取りあげます。私の所有盤リストにないアルバムをいつも貸していただく湖国JHさんから届いたアルバム。

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シャルトル弦楽四重奏団(Quatuor à Cordes de Chartres)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.3、Op.42、Op.33のNo.5の3曲を収めたアルバム。収録は1992年9月、パリの西方60kmほどの所にあるトロンブレ・ル・ヴィコントという街の聖マルタン教会でのセッション録音。レーベルは仏BNL PRODUCTIONS。

シャルトル弦楽四重奏団の演奏は手元に「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」がありますが、調べてみると他にもう1枚、Op.20のNo.5、鳥、五度を収めたアルバムがあるようですね。

シャルトル四重奏団は1984年に結成されたクァルテットで、アマデウス四重奏団、ジュリアード、アルバン・ベルク、ファイン・アーツなど錚々たるクァルテットから指導を受けたそうです。情報が少ないためあまり細かい事はわかりませんが、簡単なウェブサイトがありましたので紹介しておきましょう。

Quatuor de Chartres : qatuor a cordes

この録音当時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:パトリス・レグラン(Patrice Legrand)
第2ヴァイオリン:ロベール・アリボー(obert Aribaud)
ヴィオラ:ジル・デリエージュ(Gilles Deliège)
チェロ:フィリップ・ペナングー(Philippe Pennanguer)

Hob.III:67 / String Quartet Op.64 No.3 [B flat] (1790)
フランスのクァルテットらしく少し線の細さを感じさせながらもクッキリと軽いタッチが特徴の入り。適度に鮮烈
、大きなメリハリよりもフレーズ事にしなやかに表情をつけながら、流れの良さを意識した一貫した演奏。普通もうちょっと第1ヴァイオリンが目立つ所でしょうが、このクァルテットは4人対等、というより第1ヴァイオリンが控え目で、4人のアンサンブルの織りなすリズミカルな表情の方に狙いがあるよう。奏者ごとの掛け合いの面白さが聴き所。1楽章は軽めの入り。
続くアダージョは彼らの特徴がぐっと引き立ちます。4人がしっかり深いフレージングで絡まって、深い音楽に入ります。クッキリと透明感ある音色による深い音楽なので、爽やかさも保って程よいバランス。重さはなく、音楽にも澱みがありません。癖がないのに深さを感じるなかなかの演奏。チェロが時折ぐっと踏み込んできて、音楽にメリハリをつけていきます。
メヌエットも力みなく穏やかなもの。構えのない,穏やかな心境を映しているような実に晴れ晴れとした音楽。ただただ音楽の演奏を楽しんでいるよう。不思議と凡庸さは感じず、朗らかさが印象に残ります。
前楽章のニュアンスを保ちながらフィナーレに入ります。フィナーレも全く構えなし。力感は異なりますが、先日聴いたスメタナ四重奏団と似た音楽を感じます。一人一人の奏者が折り重なるようにしてしなやかな音楽を織り上げていくよう。スメタナより若い分、フレッシュさと透明感が漂って、モダンな印象もあります。なかなか玄人好みの演奏。不思議と豊かな気持ちになる演奏。悪くありません。

Hob.III:43 / String Quartet Op.42 [d] (1785)
短調の緊密な音楽。曲にのめり込む事なく予想通り淡々とした入り。すこし粗さがあるのが良い意味で表情を豊かにしています。淡々と音楽をこなしていくので、曲に込められた創意を聴き取ることに集中できます。音楽の流れの中に適度なメリハリ、適度な鮮烈さがあるので淡々としながらも単調にはなりません。
メヌエットは短い楽章。しなやかさを保ちながらほどほどのキレ。非常に落ち着いた演奏。音楽の起伏の変化を穏やかな心情で楽しむよう。
やはりこのクァルテットの持ち味はアダージョの透明感を保った深い音楽です。前曲と同様、クリアなのに実に深い音楽が流れ出してきます。とくにヴァイオリンの高音分のキリリとしたクリアな音色がそう感じさせるのでしょう。そして良く聴くと抑えた部分のコントロールが実に緻密である事に気づきます。
フィナーレも安心して聴けます。この曲も素晴しい出来。

Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
最後は明るい曲。速めのテンポでこの曲のリズミカルな面白さを強調するよう。4人の線は適度に荒れて緊密な一体感をもつような演奏ではありませんが、音楽が粗い感じはしません。不思議とライヴ感があり、生演奏を眼前で聴いているような印象。このアルバムでは一番フレッシュな演奏。勢いで一気に聴かせてしまいます。曲ごとにスタンスをきちんと変えてきています。
得意の緩徐楽章。自然なのに深いニュアンスがきっちり表現できるあたり、テクニックとは異なる次元の音楽性をもっているようですね。
スケルツォは珍しく溜めが目立ちます。この曲では前2曲とは異なり楽章感の対比を結構鮮明に弾きわけています。フィナーレはアルバムの終結にふさわしい穏やかさ。このクァルテットの得意な表情を存分に感じさせ、ハイドンの楽譜どおり、自然に虚心坦懐に音にしていきます。この終楽章の自然さはこのアルバム一番の聴き所。何でもない演奏にも聴こえますが、その中から実に深い音楽が聴こえてきます。音楽がすすむにつれて穏やかに盛り上がる感興。静かな音楽から豊か感情が沸き立つよう。体が音楽にあわせて自然に動きます。最後はびしっと決めて終わります。

聴き始めは自然なソノリティが印象的な演奏だと感じましたが、聴き進めるにつれて、このクァルテットの術中にはまったよう。決して派手な演奏でも。劇的な演奏でもありませんが、タイプの違う3曲を並べて、このクァルテット流に穏やかに料理する腕前をみてくれと言わんばかりの演奏。それぞれ家庭料理をプロが料理したように、見た目は普通でも、口に含んだとたんにプロの仕業とわかる深い味わいが広がる感じと言えばいいでしょうか。私は非常に気に入りました。弦楽四重奏曲をいろいろ聴き込んだ玄人の人に是非聴いていただきたい味わい深い演奏です。評価は3曲とも[+++++]とします。

湖国JHさん、いつも素晴しいアルバムありがとうございます!

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tag : 弦楽四重奏曲Op.64 弦楽四重奏曲Op.42 弦楽四重奏曲Op.33

スメタナ四重奏団の鳥

なんだか、夏休み気分もだんだん薄れて、仕事も忙しくなってきました(涙) もうすこし頻繁に記事を書きたいのですが、滞りがちとなっております。今日も弦楽四重奏曲のアルバム整理で聴き直したアルバムから。

Smetana39.jpg
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スメタナ四重奏団(Smetana Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33のNo.3「鳥」、シューベルトの弦楽四重奏曲D.87、D810の3曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1982年3月15日、スイスのルガーノにあるスイスイタリア語放送のオーディトリウムでのライヴ。レーベルは伊ERMITAGE。

スメタナ四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲の録音はあまり多くありません。ブログをはじめた頃にラストコンサートをもようを収めたアルバムを取りあげています。

2010/06/16 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : スメタナ四重奏団ラストコンサート

徐々に力がおとろえ始めたクァルテットが引退する時にハイドンの最後の弦楽四重奏曲を演奏した感動のコンサートです。

スメタナ四重奏団は日本でも良く知られた存在でしょう。1943年にチェコのプラハ音楽院で室内楽を学んだ4人によって設立されたクァルテットで、当初はプラハ音楽院弦楽四重奏団と名乗っていたそう。1945年にスメタナ四重奏団に改称し、デビューしたそうです。このころのメンバーには指揮者として名をなしたヴァーツラフ・ノイマンがいました。1956年以降のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:イルジー・ノヴァーク(Jiří Novák)
第2ヴァイオリン:リュボミール・コステツキー(Lubomír Kostecký)
ヴィオラ:ミラン・シュカンバ(Milan Škampa)
チェロ:アントニーン・コホウト(Antonín Kohout)

主なレパートリーは、スメタナ、ドヴォルジャーク、ヤナーチェクなどのお国もの。前記事でとりあげたとおり、1989年に解散しています。

Hob.III:39 / String Quartet Op.33 No.3 "Vogelquartett" 「鳥」 [C] (1781)
引退コンサートの7年前の演奏。最初のさざめくような入りがちょっとズレているように聴こえますが、意図してそうしているよう。スメタナ四重奏団らしく、かなりくずした草書体のような演奏。全員がピタリと合わせて弾くという感じはまったくなく、一人一人の音楽が微妙に折り重なるようにしながら、ざっくりと音楽を織り上げていくよう。良く聴くと各奏者の音楽はかなりしなやかで、水が流れるような清透さと、円熟の境地をきわめた老練な印象もあります。前記事で聴いたヘンシェル四重奏団の張りのある彫りの深い鳥とは正反対の音楽。
スケルツォに入るとかなり足早にさかさかと進めます。本当に書の達人が目の前で鮮やかに草書の筆を走らせているのを眺めているよう。中間部の鳥のさえずりのような部分も非常にしなやか。ヘンシェル四重奏団が曲の構造を明確に表したのに対しスメタナは一貫して柔らかな筆遣いの妙で聴かせています。
アダージョに入ってもしなやかな筆の流れは途切れません。楷書のハイドンと草書のハイドン。どちらも捨て難い魅力をもっています。ディティールにはほとんどこだわらず、音楽の流れに身を任せてのどかに演奏することに徹しています。後半に入ると知らぬ間に筆に力が漲り、そして消え入るように終わるドラマチックなところも聴かせます。
意外と言っては失礼ですが、フィナーレのキレはそこそこあります。テクニシャンの迫真の掛け合いというよりは、老練なのにここぞという時には力が漲ります。線がぴしっとそろわないのですが音楽のフォーカスはピタリと合って、不思議と聴き応えがある演奏でした。最後は拍手が録音されています。

スメタナ四重奏団の晩年の老練な魅力を伝える貴重なライヴ録音。録音はそこそこ鮮明で悪くありません。このアルバム、弦楽四重奏の表現の幅の広さを再認識させるような演奏です。どこにこだわって音楽を創っていくかということを考えると非常に興味深い演奏です。泰然とした自然体の音楽。細かい事はまったくこだわらないものですが、音楽を聞くと、曲の流れは非常によく考えられたもの。ハイドンの弦楽四重奏曲に全く違う方向からスポットライトがあたりました。評価は[++++]とします。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.33 ライヴ録音

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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