アレア・アンサンブルの弦楽四重奏曲Op.77、42

今日は古楽器による弦楽四重奏。またまた湖国JHさんにお借りしているアルバムです。

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アレア・アンサンブル(Alea Ensemble)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.77のNo.1、No.2、Op.42の3曲を収めたアルバム。収録はハイドンのアニヴァーサリーイヤーである2009年5月26日から28日にかけて、イタリアミラノの東にあるクレマ(Crema)という街のピエトロ・パスクイーニ・スタジオでのセッション録音。レーベルは懐かしい伊stradivarius。

stradivariusは昔クララ・ハスキルのライヴをいろいろ買い集めました。ライヴ中心のレーベルで今はもうないのかと思っていたら、どっこい生き残ってました。あんまり懐かしくてハスキルのモーツァルトのアルバムを取り出して聴いてみたところ、夢見るような素晴しさ。こちらは別の機会に取りあげることにして、本題に戻りましょう。

アレア・アンサンブルは2002年に結成された弦楽四重奏団。古典派、ロマン派の室内楽曲を古楽器で演奏すること、同時期のあまり知られていない曲を再発見することをなどを趣旨としているよう。メンバーはイタリアで有名な古楽器オケである、エウロパ・ガランテ、アカデミア・ビザンチナのメンバーということです。

AleaEnsemble

第1ヴァイオリン:フィオレンツァ・デ・ドナティス(Fiorenza de Donatis)
第2ヴァイオリン:アンドレア・ロニョーニ(Andrea Rognoni)
ヴィオラ:ステファノ・マルコッキ(Stefano Marcocchi)
チェロ:マルコ・フレッツァート(Marco Frezzato)

イタリアの古楽器奏者によるハイドン、それも晩年の傑作の仕上がりは如何なものでしょう。

Hob.III:81 / String Quartet Op.77 No.1 [G] (1799)
適度に鮮烈、適度に弾み、適度にオーソドックスな入り。イタリアのクァルテットということでもう少し癖があるかと思っていましたが、ほんのりと明るさの乗ったオーソドックスな古楽器の演奏。デュナーミクの変化もきっちりつけて、かなり正統派の演奏。録音は適度な残響をともなうかなり鮮明なもの。演奏と録音から感じる印象はアウリン四重奏団に近いものがありますが、アウリンが精妙な響きの精度を聴かせどころとしているのに対し、こちらのアレア・アンサンブルはイタリアのクァルテットらしいほのかな明るさと、しなやかさがポイントのよう。アンサンブルの精度は高く、技術的なレベルは非常に高いものをもっているようです。
アダージョではその精度の高さが素晴しい高みに達しています。録音のせいかチェロの存在感が際立ちます。ヴァイオリンは音量はさほどではありませんが、クッキリと鮮明にメロディーを刻み、隈取りをクッキリとつけていきます。良く聴くと大きな流れのなかの起伏をしっかりつけていくので、大河のような大きな流れがうまく表現できていますね。
かなり正統派の演奏だとわかり、メヌエットも一貫して純度の高い表現が心地よいですね。演奏の安定感も抜群。テンポもじっくりとメリハリをつけているので、音楽的な深みも十分感じさせます。ここまで来て、もう少し踏み込みが欲しいとおもった中間部で、ぐっとテンポを落として、一段ダイナミックにギアチェンジ。こちらの期待を見抜いているような変化。
フィナーレは、力を抜いて軽く流すような演奏。各奏者のキレの良い音階が交互に現れますが、十分リラックスしているので、音楽がサラサラと流れて、非常に軽快な印象。精度の高い正統派のアンサンブルで、曲の構造も踏まえたこなれた演奏。最後はかなり踏み込んだ表現も加えてフィニッシュ。若手ではありますが、演奏には円熟味も加わって、1曲目から素晴しい完成度です。

Hob.III:82 / String Quartet Op.77 No.2 [F] (1799)
前曲と第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが交代しています。演奏の安定感はかなりもの故、次のNo.2も実に落ち着いた、精度の高い演奏。古楽器の研ぎすまされた響きのなかに、適度なダイナミクスと表情の美しさが込められた名演奏。細部の精度がきっちりしているのに、音楽の大きな流れもしっかりと骨格を感じさせるのは素晴しいですね。非常に良く練られた演奏。
続くメヌエットもキレの良い音楽が続きます。曲の流れがしっかりつかまれていて、構成感がしっかりしていることについては、一貫して素晴しいところ。
この曲の白眉、アダージョは淡々と演奏することで孤高の高みに達しています。ヴァイオリンのロニョーニも音量は控えめながら実に表情豊か。自然な歌心が演奏から溢れ出てきます。弱音のコントロールも秀逸でこのアダージョは絶品ですね。
フィナーレも実にしなやか。前曲の演奏よりも流麗さでは上回っているよう。第1ヴァイオリンの交代の影響でしょうか。ドナティスがクッキリとした印象だったのに対し、こちらのロニョーニの演奏は柔らかく柔軟な印象。どちらも腕利きのヴァイオリニストのようですが、まとまりはロニョーニの方に軍配が上がりますでしょうか。

Hob.III:43 / String Quartet Op.42 [d] (1785)
最後はめずらしいOp.42。短調の名曲です。第1ヴァイオリンは1曲目と同様、ドナティスに戻ります。ふたたびクッキリとした張りを感じるフレージング。凛とした険しさを上手く表現して、緊張感のある演奏です。確かにこの曲ではドナティスの方が合っていると思わせるものがあります。
続くアダージョとメヌエットも大きな曲の起伏をしっかりつけていきますので聴き応え十分。最後のフィナーレはでは期待通りきっちりテンポを上げ、各楽器がこのアルバム一のキレを聴かせます。古楽器の枠を超える実にしっかりとした構成感。灰汁の強さを全く感じさせずにこれだけのキレ味を感じさせるのは流石です。

今までまったく存在を知らなかったアレア・アンサンブル。古楽器によるハイドンの弦楽四重奏曲の演奏としてはかなりイケてます。とくに構成感の表現が秀逸。古楽器の精妙な音色で、陰影をしっかりつけた素晴しい立体感を感じさせる演奏。今日取りあげたアルバムは3曲とも抜群の出来です。評価は全曲[+++++]とします。ハイドンのさらなるアルバムのリリースに期待したいですね。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.77 弦楽四重奏曲Op.42 古楽器

シャルトル弦楽四重奏団のOp.64のNo.3、Op.42、Op.33のNo.5

8月も終わりに。暑い暑い夏でした。でしたといってもまだ暑い日が続くかもしれませんね。8月は弦楽四重奏を集中的に取りあげましたが、最後に到着した1枚を取りあげます。私の所有盤リストにないアルバムをいつも貸していただく湖国JHさんから届いたアルバム。

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シャルトル弦楽四重奏団(Quatuor à Cordes de Chartres)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.3、Op.42、Op.33のNo.5の3曲を収めたアルバム。収録は1992年9月、パリの西方60kmほどの所にあるトロンブレ・ル・ヴィコントという街の聖マルタン教会でのセッション録音。レーベルは仏BNL PRODUCTIONS。

シャルトル弦楽四重奏団の演奏は手元に「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」がありますが、調べてみると他にもう1枚、Op.20のNo.5、鳥、五度を収めたアルバムがあるようですね。

シャルトル四重奏団は1984年に結成されたクァルテットで、アマデウス四重奏団、ジュリアード、アルバン・ベルク、ファイン・アーツなど錚々たるクァルテットから指導を受けたそうです。情報が少ないためあまり細かい事はわかりませんが、簡単なウェブサイトがありましたので紹介しておきましょう。

Quatuor de Chartres : qatuor a cordes

この録音当時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:パトリス・レグラン(Patrice Legrand)
第2ヴァイオリン:ロベール・アリボー(obert Aribaud)
ヴィオラ:ジル・デリエージュ(Gilles Deliège)
チェロ:フィリップ・ペナングー(Philippe Pennanguer)

Hob.III:67 / String Quartet Op.64 No.3 [B flat] (1790)
フランスのクァルテットらしく少し線の細さを感じさせながらもクッキリと軽いタッチが特徴の入り。適度に鮮烈
、大きなメリハリよりもフレーズ事にしなやかに表情をつけながら、流れの良さを意識した一貫した演奏。普通もうちょっと第1ヴァイオリンが目立つ所でしょうが、このクァルテットは4人対等、というより第1ヴァイオリンが控え目で、4人のアンサンブルの織りなすリズミカルな表情の方に狙いがあるよう。奏者ごとの掛け合いの面白さが聴き所。1楽章は軽めの入り。
続くアダージョは彼らの特徴がぐっと引き立ちます。4人がしっかり深いフレージングで絡まって、深い音楽に入ります。クッキリと透明感ある音色による深い音楽なので、爽やかさも保って程よいバランス。重さはなく、音楽にも澱みがありません。癖がないのに深さを感じるなかなかの演奏。チェロが時折ぐっと踏み込んできて、音楽にメリハリをつけていきます。
メヌエットも力みなく穏やかなもの。構えのない,穏やかな心境を映しているような実に晴れ晴れとした音楽。ただただ音楽の演奏を楽しんでいるよう。不思議と凡庸さは感じず、朗らかさが印象に残ります。
前楽章のニュアンスを保ちながらフィナーレに入ります。フィナーレも全く構えなし。力感は異なりますが、先日聴いたスメタナ四重奏団と似た音楽を感じます。一人一人の奏者が折り重なるようにしてしなやかな音楽を織り上げていくよう。スメタナより若い分、フレッシュさと透明感が漂って、モダンな印象もあります。なかなか玄人好みの演奏。不思議と豊かな気持ちになる演奏。悪くありません。

Hob.III:43 / String Quartet Op.42 [d] (1785)
短調の緊密な音楽。曲にのめり込む事なく予想通り淡々とした入り。すこし粗さがあるのが良い意味で表情を豊かにしています。淡々と音楽をこなしていくので、曲に込められた創意を聴き取ることに集中できます。音楽の流れの中に適度なメリハリ、適度な鮮烈さがあるので淡々としながらも単調にはなりません。
メヌエットは短い楽章。しなやかさを保ちながらほどほどのキレ。非常に落ち着いた演奏。音楽の起伏の変化を穏やかな心情で楽しむよう。
やはりこのクァルテットの持ち味はアダージョの透明感を保った深い音楽です。前曲と同様、クリアなのに実に深い音楽が流れ出してきます。とくにヴァイオリンの高音分のキリリとしたクリアな音色がそう感じさせるのでしょう。そして良く聴くと抑えた部分のコントロールが実に緻密である事に気づきます。
フィナーレも安心して聴けます。この曲も素晴しい出来。

Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
最後は明るい曲。速めのテンポでこの曲のリズミカルな面白さを強調するよう。4人の線は適度に荒れて緊密な一体感をもつような演奏ではありませんが、音楽が粗い感じはしません。不思議とライヴ感があり、生演奏を眼前で聴いているような印象。このアルバムでは一番フレッシュな演奏。勢いで一気に聴かせてしまいます。曲ごとにスタンスをきちんと変えてきています。
得意の緩徐楽章。自然なのに深いニュアンスがきっちり表現できるあたり、テクニックとは異なる次元の音楽性をもっているようですね。
スケルツォは珍しく溜めが目立ちます。この曲では前2曲とは異なり楽章感の対比を結構鮮明に弾きわけています。フィナーレはアルバムの終結にふさわしい穏やかさ。このクァルテットの得意な表情を存分に感じさせ、ハイドンの楽譜どおり、自然に虚心坦懐に音にしていきます。この終楽章の自然さはこのアルバム一番の聴き所。何でもない演奏にも聴こえますが、その中から実に深い音楽が聴こえてきます。音楽がすすむにつれて穏やかに盛り上がる感興。静かな音楽から豊か感情が沸き立つよう。体が音楽にあわせて自然に動きます。最後はびしっと決めて終わります。

聴き始めは自然なソノリティが印象的な演奏だと感じましたが、聴き進めるにつれて、このクァルテットの術中にはまったよう。決して派手な演奏でも。劇的な演奏でもありませんが、タイプの違う3曲を並べて、このクァルテット流に穏やかに料理する腕前をみてくれと言わんばかりの演奏。それぞれ家庭料理をプロが料理したように、見た目は普通でも、口に含んだとたんにプロの仕業とわかる深い味わいが広がる感じと言えばいいでしょうか。私は非常に気に入りました。弦楽四重奏曲をいろいろ聴き込んだ玄人の人に是非聴いていただきたい味わい深い演奏です。評価は3曲とも[+++++]とします。

湖国JHさん、いつも素晴しいアルバムありがとうございます!

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tag : 弦楽四重奏曲Op.64 弦楽四重奏曲Op.42 弦楽四重奏曲Op.33

イギリス弦楽四重奏団のOp.1、Op.42、Op.103

弦楽四重奏曲が続きます。湖国JHさんにお借りしているアルバム。

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イギリス弦楽四重奏団(The English String Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.1のNo.5(No.0)、Op.42、Op.103の3曲を収めたアルバム。収録はPマークが1986年との表記しかありません。レーベルは良い録音の多い英Meridian。

ライナーノーツによれば、ハイドンの数多の弦楽四重奏曲の中から、独立した作品として書かれたものを初期、中期、後期から1曲づつ選んで取りあげたとの企画。珍しいのはOp.1のNo.5でしょうか。

演奏者のイギリス弦楽四重奏団は初めて耳にするクァルテット。古くからイギリス、ヨーロッパでは有名なクァルテットだそうですが、日本ではあまり知られた存在ではないようです。1982年にメンバーが交代し、この録音のメンバーとなったようです。

第1ヴァイオリン:ダイアナ・カミングス(Diana Cummings)
第2ヴァイオリン:コリン・キャロー(Colin Callow)
ヴィオラ:ルチアーノ・ロリオ(Luciano Iorio)
チェロ:ジェフリー・トーマス(Geoffrey Thomas)

ヴァイオリンのダイアナ・カミングスとヴィオラのルチアーノ・ロリオは夫婦とのこと。2人とも直前はロンドンの著名なオケのメンバーとして働いていたようですが1982年にこのクァルテットのメンバーとなったそうです。ダイアナ・カミングスは同年に王立音楽アカデミーの教授となっています。現在リリースされているアルバムもわずかであり、情報も少ないため、詳しいことはわかりません。

純粋に演奏から彼らの音楽を楽しむ事としましょう。

Hob.II:6 / String Quartet Op.1 No.0 [E flat] (c.1757-59?)
ながらく消失していた曲で、1931年にマリオン・スコットとガイリンガーによって別々に発見された曲。1986年の制作としては鮮明な録音。特に高音が鮮明というか、少々クッキリしすぎかもしれない独特の録音。MeridianらしくAKGのマイク、Nagraのテープレコーダー、AGFAのテープが使われいるとの記載があります。録音のせいかヴァイオリンがクッキリ鋭い音に聴こえます。イギリス弦楽四重奏団の響きは華麗、華美な印象。演奏は初期のハイドンの弦楽四重奏曲に共通なディヴェルティメントに近い明るく優雅な舞曲のような味わいを上手く表現しています。非常にオーソドックスな音楽のつくりですが、クッキリとしたヴァイオリンによって非常に華やか。リズムもはっきり刻んでいるので、音楽に活気があります。5楽章構成プレスト-メヌエット-アダージョ-メヌエット-フィナーレと言う構成。一貫して舞曲風で演奏者自身が楽しむための曲のようです。

Hob.III:43 / String Quartet Op.42 [d] (1785)
1785年にハイドンがスペインのオスナ公爵夫人に送った3曲のうちの1曲(他の2曲は消失)と考えられているそう(大宮真琴さんの新版ハイドンから)。録音の冴えは一段あがり、高音域はクッキリを通り越して超鮮明。前曲が華やかな印象だったのは曲のせいもありますが、短調のこの曲では、三次元デジタル的に鮮明な峻厳な響きに印象が一変します。この曲は2楽章がメヌエットで3楽章がアダージョ。どちらの楽章も実に良く練られた演奏。鮮度、リズム感、ゆったりと沈み込むアダージョのフレージングと申し分なし。特に超鮮明な録音でリアルながら、実に良く歌うアダージョが秀逸。音量のコントロールが非常に丁寧で、アダージョがクリスタルのように輝きます。そして美しく輝きながらも鬼気迫るフィナーレ。フーガ風に繰り返すメロディーがクリアな響きで畳み掛けます。この曲は、超鮮明な録音とクッキリした響きが曲のイメージに合っていて、いい出来。

Hob.III:83 / String Quartet Op.103 [d] (before 1803)
そしてハイドン最後の曲。前記事のリンゼイ四重奏団の演奏でも取りあげたばかり。やはりこの曲では穏やかな演奏に変わります。鮮明な音響によって、この穏やかな曲に不思議と絢爛豪華な印象も加わります。リンゼイ四重奏団の演奏では弦楽器の響きの中に力みというか力の入れ具合の変化の面白さが感じられたのに対し、こちらのイギリス弦楽四重奏団の演奏では全楽器の響きがクッキリと重なり、鮮明な隈取りで実に豪華な響きが耳に残り、聴かせどころが全く変わります。鮮明な音響にもかかわらず、音楽には澄みきった静けさのようなものが宿ります。つづくメヌエットも同様。峻厳な響きで一気に聴かせきってしまいます。アンサンブルの精度は抜群、デュナーミクのコントロールもきっちりして、演奏は第一級です。

ちょっと録音に癖があるので、最初は独特な印象をもったのですが、何回か聴いているうちに彼らの音楽のポイントがわかってきました。よく聴くとアンサンブルは鮮明、音楽も実に良く練られた演奏です。ハイドンの弦楽四重奏曲のうち、単独で残っている曲を時代ごとにならべるというアルバムの企画意図も冴えていてなかなか興味深いアルバムです。まだ手に入るようですので、弦楽四重奏曲好きな方にはオススメのアルバムですね。評価はOp.1のNo.0が[++++]、他は[+++++]とします。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.1 弦楽四重奏曲Op.42 弦楽四重奏曲Op.103

フェステティチ四重奏団のOp.33(旧録音)

5月になって最初のレビューは弦楽四重奏曲。

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フェステティチ四重奏団(Quatuor Festetics)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33とOp.42を収めた2枚組。ただし現在流通しているARCANAへの録音ではなく、harmonia mundi FRANCEへの旧録音。1990年12月から91年1月にかけてブダペストでのセッション録音。一方ARCANAのほうはHMV ONLINEの情報では2000年の録音とのこと。新盤の方はまだ未入手なんですね。

フェステティチ四重奏団のARCANAの方の録音は2巻を除いてほとんど持っているですが、録音が超デッド。うちのシステムで聴くとちょっととげとげしく弦が薄っぺらく聴こえるのでので曲を楽しむには少し問題があるため、あまり取り出す機会が多くありません。一方、フェステティチ四重奏団はARCANA以前にもharmonia mundi FRANCEなどにいくつか録音があり、手元にはOp.64の2枚組がありましたが、これがharmonia mundiによる残響の豊かな良い録音。先日ディスクユニオンで今日取り上げるOp.33を発見して迷わず購入。手に入れたのは4月ですので、ごく最近です。

フェステティチ四重奏団はハンガリーのブダベストに本拠を置く古楽器による弦楽四重奏団。メンバー表を見るとこのアルバムとARCANAの最近のアルバムでメンバーに変更はなさそう。

このアルバムもARCANA盤とは異なり、冒頭からたっぷりした残響含んだ良い録音。流石harmonia mundiですね。同じ奏者で表現も最近の録音の方が緻密なんでしょうが、デッドな空間で弾かれた弦楽器のちょっと痩せた音とは異なり音楽を十分楽しむことができます。

弦楽四重奏曲集Op.33は「ロシア四重奏曲」と呼ばれ、それは作曲の翌年アルタリア社の初版にロシア大公への献辞がつけられたことによるもの。ロシア大公は1781年にウィーンを訪れ、12月26日または25日に大公妃の部屋で音楽会が催された際、ハイドンの弦楽四重奏曲の1曲が演奏されたようです。このアルバムの収録は作曲当時の順番のようなので、曲ごとに演奏の特徴などを簡単に触れておきましょう。

弦楽四重奏曲Op.33 No.5(Hob.III:41)1781年作曲
冒頭の曲故耳が集中します。速めの快活なテンポ。インテンポで畳み掛けるように進め、生気とエネルギーが満ちあふれています。2楽章は短調の痛切なメロディーが美しい曲。クイケンなどの古楽器の演奏でのクールな感じとは異なりメロディーに没入する感じ。楽器の音色は古楽器そのものですが演奏スタイルは古楽器風という感じはなく楽器の雅な音色が特徴。3楽章はやはり速めの展開。テンポとフレーズごとのメリハリはハッキリつける方で、ハイドンの曲の流麗さと構成の面白さを活き活きと描きます。フィナーレは端正さを取り戻し曲の襟を正します。1曲目から古楽器とは思えない流麗さに耳を奪われます。

弦楽四重奏曲Op.33 No.2(Hob.III:38)「冗談」1781年作曲
2曲目は私の好きな曲。冒頭からヴァイオリンの艶やかな音色が心地よい演奏。楽器が非常に良く鳴っている感じが伝わります。途中現れる不協和音のアクセントがずしんと来ますね。2楽章はスケルツォが来て、3楽章がラルゴ。このラルゴが素晴らしい出来。じっくり遅いテンポで緊張感溢れる展開。素晴らしい集中力。アンサンブルの一体感も完璧。フィナーレも軽やかに決まり、この曲も抜群の出来。

弦楽四重奏曲Op.33 No.1(Hob.III:37)1781年作曲
冒頭から短調の険しい曲想が心に刺さります。基本的に演奏の安定感は良いためどの曲も聴かせどころを押さえた素晴らしい演奏。この曲も雅な古楽器の音色による流麗な四重奏の魅力溢れる演奏。この曲も2楽章がスケルツォ、3楽章はアンダンテ。アンダンテが抜群。素っ気ない演奏にも聴こえますがハイドンの音楽の詩情が色濃く表現された演奏。チェロのよく伸びた弦の音が素晴らしいですね。どの楽器も素晴らしい力量。フィナーレのアンサンブルは奇跡的な素晴らしさ、メロディーの波が次々と襲ってくる素晴らしい迫力。

弦楽四重奏曲Op.33 No.3(Hob.III:39)「鳥」1781年作曲
1楽章が素晴らしいエネルギー感。曲ごとにムラがほとんどなく素晴らしい安定感。有名なこの曲も新鮮さを保ちながらぐいぐい引き込まれる演奏。抜群のテクニックに全奏者の息がピタリとあった音楽性。基本的に速めのテンポによる精度の高いアンサンブル。弦楽四重奏曲の魅力が万全に表現されています。この曲のフィナーレは珍しくクッキリとメロディーラインのクリアさを前面に出した演奏。かっちり決まります。

弦楽四重奏曲Op.33 No.6(Hob.III:42)1781年作曲
変わった曲調の1楽章。曲の様子を探りながら演奏するような感じですが、途中のちょっと抑えた表現の部分の美しさが印象的。流れが時折止まる曲の特徴を生かした表現でしょうか。この曲は2楽章がアンダンテ。張りつめた緊張感が素晴らしい演奏。絶品。3楽章のスケルツォ、4楽章のフィナーレとも余裕たっぷりの演奏。この曲は格別集中力が素晴らしいですね。音楽が溢れ出てくる感じです。

弦楽四重奏曲Op.33 No.4(Hob.III:40)1781年作曲
Op.33の最後の曲。この曲も変わった曲想なんですが、その曲想を噛み砕くようにじっくりした演奏。音量のコントロールの面白さを巧く使ったり、テンポを所々象徴的に落として曲の面白さを表現。もはや曲自体の構造を読み尽くして自在な表現を極めます。ハイドンのクァルテットのすべてを知り尽くしたかのような自在さ。2楽章はスケルツォ、そして3楽章にラルゴ。このラルゴも絶品。最後は明るいプレスト。最後のピチカートが微笑ましいですね。

弦楽四重奏曲Op.42(Hob.III:43)1785年作曲
このアルバムの最後はOp.42。この曲はほの暗さが印象的な曲。Op.33のテンションの高さとは打って変わって、穏やかな曲調が続きます。この曲もゆったりした3楽章の充実ぶりが素晴らしい出来。あんまり集中して聴いたことがない曲だけに久々に聴き入っちゃいました。

このアルバムの評価は全曲[+++++]です。録音は90年から91年にかけてで、その10年後に録音された新盤がこのアルバムを超える演奏かどうか興味は尽きませんが、これは入手したときの楽しみにとっておきましょう。このアルバム自体は聴きやすい良い録音と4人とも万全のテクニックとピタリとそろった音楽性が素晴らしい出来です。アルバム自体が入手しやすい状態ではないことを考慮に入れてもこの演奏の素晴らしさは皆さんにお薦めしたいもの。「ハイドン入門者向け」タグも進呈です。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2016年9月のデータ(2016年9月30日)
登録曲数:1,361曲(前月比+3曲) 登録演奏数:9,608(前月比+87演奏)
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