グリラー弦楽四重奏団のOp.71、Op.74(ハイドン)

今日は名盤として評価の高いもの。ただしLPです。

Griller.jpg
amazon(CD)

グリラー弦楽四重奏団(The Griller String Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.71のNo.2、No.1、Op.74のNo.1の3曲を収めたLP。収録情報はこのLPには記載されていませんが、手元にある同録音のCDの情報によると1959年2月、カリフォルニア州バークリー校のハーツホール(Hertz Hall)でのセッション録音。レーベルは米VANGUARD。

このアルバムに収められた演奏は、同じくVANGUARDからOp.71の3曲、Op.74の3曲の6曲セットを収めたCDがリリースされており、そちらを愛聴していらっしゃる方も多いはず。かくいう私もそのCDでグリラーの演奏の素晴らしさの薫陶を受けたわけですが、今回LPを手に入れたのをきっかきに再度聴き直して、音質も含めてその素晴らしさに触れたため、記事にしようと思った次第。

グリラーの他の演奏はブログの初期に1度取り上げています。

2010/10/16 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : グリラー四重奏団の鳥(Op.33 No.3)

グリラー四重奏団は1927年、ロンドンの王立音楽院に在籍中の4人によって設立され、1931年から1963年頃まで活動していたイギリスの弦楽四重奏団。メンバーは下記の通り。

第1ヴァイオリン:シドネイ・グリラー(Sidney Griller)
第2ヴァイオリン:ジャック・オブライエン(Jack O'brien)
ヴィオラ:フィリップ・バートン(Philip Burton)
チェロ:コリン・ハンプトン(Colin Hampton)

このアルバムをあえて取り上げたのはやはりCDとLPの違い。改めて比較してみると、特にヴァイオリンなど高音のキレはLPならではのもの。中低音の安定感やノイズレスなところはCDも悪くありませんが、クァルテットのリアリティはやはりLPに軍配が上がります。

Hob.III:70 String Quartet Op.71 No.2 [D] (1793)
LPのコンディションは見た目はイマイチでしたが、いつもの通りVPIのクリーナーで洗浄すると全くノイズは聞こえず、なかなかいいコンディション。冒頭の序奏のなんと味わい深いこと。そして鮮明なチェロのメロディーにも驚きます。主題に入ると霧が晴れたようにクリアな響きに包まれます。適度にデッドな響きなんですが、4人のせめぎ合うような弓使いがかえって鮮明に記録されて、音楽がダイレクトに響きます。メロディーの美しさを安直に表現するのではなく、4本の楽器のメロディーの交錯から音楽の豊かさを紡ぎ出していくような姿勢。1楽章から素晴らしい集中力。
続くアンダンテ・カンタービレはタイトに辛口の表現が心地よく響きます。それぞれの楽器のボウイングが揃っているばかりでなく、独特なアクセントのつけ方が揃っていることがこのクァルテットのテイストだとわかります。訥々と語り続けていく一貫した姿勢が潔いですね。
メヌエットに入ると力感に満ちた鮮やかなボウイングに耳を奪われます。特にシドネイ・グリラーのキレの良い弓さばきがポイント。フィナーレは4人が他の奏者の音を追うように交錯し、ある時はまとまり、ある時は散らばるメロディーの構成の面白さを浮かび上がらせます。これぞクァルテットの醍醐味ですね。最後の快速テンポの部分のキレも最高。

Hob.III:69 String Quartet Op.71 No.1 [B] (1793)
入りは少しリズムが重めに感じますが、すぐにすっと普通のテンポに戻って演出であったことがわかります。独特の揺れるような音色が味わい深さに繋がっています。この曲は1楽章から複雑にメロディーが入り組みますがくっきりと筋を立てるところと、メロディーが交錯する部分の対比の演出が上手く、曲の構造がよく見通せます。
緊張感に満ちた1楽章から、続くアダージョに入ってもゆったりとするばかりではなく、テンションを保ったままテンポが落ちる感じ。このアダージョの魅力をうまく捉えた演奏。アンサンブルの精度がいい意味で少し暴れていて、それが味わいに感じられるのがグリラーのすごいところ。荒い筆使いの絵画の魅力のよう。

IMG_2990.jpg

2楽章と3楽章の間で盤面が変わります。メヌエットは音の角の面取りをしたようになだらかなボウイングで流麗な印象。丁寧なフレージング。ちょっとした表現の違いで曲の印象をしっかりと刻み込む音楽性を持っているのでしょう。
終楽章は入りの抜けるような明るさでメヌエットの雰囲気を断ち切り、最後にハイドン得意の複雑なメロディーの絡まりの面白さをクッキリ描いて曲を締めます。ここでもシドネイ・グリラーのヴァイオリンの妙技を味わえます。

Hob.III:72 String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
最後の曲。やはりこの曲は名曲ですね。最初の和音から雰囲気一変。なんと味わい深い推進力。これぞグリラーの至芸でしょう。全てのフレーズに霊気が宿る渾身の演奏。古い録音ですがLPの響きは鮮明そのもの。そして演奏には古さを感じることはなく類い稀な説得力に満ちています。特にフレーズごとにキリリとアクセントをつけてくるので音楽が立っています。
2楽章のアンダンティーノ・グラツィオーソはハイドンの緩徐楽章の中でも特に個性的なもの、一定のリズムで刻まれる伴奏とメロディーの不思議な絡まりが独特の雰囲気を生みます。そしてふと力を抜いてフレーズを区切るグリラー独特の演出もあってハイドンのユニークな曲想の魅力が浮かび上がります。
メヌエットも実にユニーク。このメロディーをどうして思いつくのか、そしてそのメロディーをどうしてこううまく展開していけるのか、いつもながらハイドンの創造力に圧倒されます。ハイドンの音楽を完全に掌握してのグリラーの演奏は、一貫して説得力に溢れ、力強さに満ちて鳴り響きます。
フィナーレも記憶に残るユニークなメロディー。複雑に絡み合いながら終結に向けて快速テンポで飛ばしていく中にもドラマが走馬灯のように流れていきます。この複雑な流れが実に巧みにメリハリがつけられながら、時にクッキリ、時に混沌としながら突き進み、最後はキリリと締めて結びます。

いやいや、久しぶりに聴くグリラーの至芸にうっとり。CDもそれなりにいいマスタリングなんですが、ヴァイオリンのダイレクトな響きはやはりLPに軍配が上がります。幸いコンディションの良い盤が手に入り、グリラーサウンドに酔いしれることができました。これは宝物になりましたね。評価は3曲とも[+++++]とします。この録音は高く評価する方も多いはずですので、みなさんお馴染みかもしれませんね。だまてらさんに突っ込まれる予感がします(笑)



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tag : 弦楽四重奏曲Op.71 弦楽四重奏曲Op.74

【新着】ラサール四重奏団のOp.71のNo.2(ハイドン)

最近リリースされたヒストリカルなアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

ラサール四重奏団(LaSalle Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.71のNo.2、ブラームスの弦楽四重奏曲3番Op.67、ツェムリンスキーの弦楽四重奏曲3番Op.19の3曲が収められたアルバム。ハイドンの収録は1968年12月14日、ドイツのバーデン=バーデンのハンス・ロズバウド・スタジオでのセッション録音。レーベルは独hänssler CLASSIC。

ラサール四重奏団といえば、現代音楽を得意としていたクァルテット。手元にはシェーンベルクの浄夜などを収めたアルバム、バッハとモーツァルトのプレリュードとフーガなどを収めたアルバムがありますが、ハイドンの演奏は初めて聴きます。念のためさらっておきましょう。

ラサール四重奏団は1946年、ヴァイオリン奏者のヴァルター・レヴィンによって設立されたクァルテット。ラサールという名前は、クァルテットの結成当時にメンバーが住んでいたマンハッタンのアパートメントの面していたラサール通りにちなんだもの。クァルテットに寄贈されたアマティを演奏して精緻なアンサンブルを誇ってきました。古典派はもとより、新ウィーン楽派などの演奏によって知られ、特にDGからリリースされたツェムリンスキーの弦楽四重奏曲全集によって、当時まだ謎の作曲家とみなされていたツェムリンスキーを世に知らしめたことが重要な業績とみなされています。またリゲティの弦楽四重奏曲2番は彼らに献呈され、1969年に彼らによって初演されています。

第1ヴァイオリン:ヴァルター・レヴィン(Walter Levin)
第2ヴァイオリン:ヘンリー・メイヤー(Henry W. Meyer)
ヴィオラ:ピーター・カムニツァー(Peter Kamnitzer)
チェロ:ジャック・キルステイン(Jack Kirstein)

そのラサール四重奏団によるハイドン、しかもOp.71のNo.2という比較的地味な選曲。ラサールが現代音楽で聴かせるカミソリのようなキレ味が味わえるでしょうか。

Hob.III:70 String Quartet Op.71 No.2 [D] (1793)
非常に状態のいい録音。冒頭から緊密なアンサンブル。キリリと引き締まり、ピタリと各パートが重なる快感。期待通りのキレ味にうっとり。鋭利なヴァルター・レヴィンのヴァイオリンに隈取られたワイドレンジな響き。シャープに陰影がついて、階調豊かなモノクロームのオリジナルプリントのようなアーティスティックな世界。現代のモダンさとは少々異なり、少々クラシカルな雰囲気がこれまたいい感じ。くっきりとしたアクセントによってハイドンの時に素朴な印象さえ与える音楽が実にフォーマルな姿に映ります。1楽章は完璧なアンサンブルの魅力に圧倒されます。
続くアダージョはゆったりとした音楽をスリリングな緊張感で聴かせるラサールならではの演奏。冷静に品良くデフォルメされたメロディーに酔いしれます。冷徹さも感じさせる引き締まった響きなのに、妙に暖かさを感じる完成度。
メヌエットはまさにカミソリ。ヴァイオリンの鋭い響きが自在に楔を打ちながら、チェロの厚みのある響きに支えられたアンサンブルが呼応。そしてフィナーレはメヌエットの余韻を残しながらも、冷静にリセットされて、妙に乾いた響きのアンサンブルで始まりますが、演奏が進むにつれて、しっとりとしなやかさを加えながらクッキリとメロディーが発展して終わります。

弦楽四重奏とは演奏者によってかくも個性的に響くものでしょうか。ラサール四重奏団のまさにカミソリのようなキレ味のアンサンブルによるハイドン。この孤高の響きは真似のできるものではありませんね。同じくクッキリとした表情で完成度の高い演奏を誇るアルバン・ベルク四重奏団のハイドンにはどこか人工的な印象が付きまとい、あまり好きにはなれなかったんですが、このラサールによるハイドンは、人工的などという枠を突き抜けるアーティスティックさがあり、逆に圧倒的な凄みを感じます。この微妙なのに決定的な違いこそ音楽の面白さの源でしょう。この演奏、ハイドンの弦楽四重奏曲の極北の姿と言っていいでしょう。評価は[+++++]です。一聴あれ。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.71 ヒストリカル

タカーチ四重奏団のOp.71(ハイドン)

今日は弦楽四重奏曲。

TakacsQ71.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

タカーチ四重奏団(Takács Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.71のNo.1、No.2、No.3の3曲を収めたアルバム。収録はNo.1とNo.2は2010年1月30日から2月2日、No.3は2010年11月15日から17日、イギリス西部のモンマス(Monmouth)という街にあるWyastone Estateのコンサートホールでのセッション録音。レーベルは英古楽レーベルの代表格、hyperion。

タカーチ四重奏団は1975年にハンガリーのブダペストの音楽アカデミーに在学していたの4人の学生によって結成された弦楽四重奏団。第1ヴァイオリンはガボール・タカーチ=ナジという人だったのでタカーチ四重奏団という名前になったんでしょう。1977年にフランスのエヴィアンで開かれた国際弦楽四重奏コンクールで1等および批評家賞を受賞したことで注目される存在になりました。1993年にアメリカに移ることを決断し、コロラド大学ボルダー校に所属する弦楽四重奏団となり、この時に第1ヴァイオリンが現在のデゥシンベルに交代しました。また翌年の94年、創立メンバーのガボール・オーマイががんになり退団。95年に亡くなりました。彼に捧げられたバルトークの弦楽四重奏曲の全曲録音、その後絶賛されたベートーヴェンの弦楽四重奏曲全集、ボロディン、スメタナなど矢継ぎ早に録音し、現代の代表的な弦楽四重奏団とみなされるようになりました。現在はアメリカ、コロラド州ボルダーを拠点としているそうです。現在のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:エドワード・ドゥシンベル(Edward Dusinberre)
第2ヴァイオリン:カーロイ・シュランツ(Károy Schranz)
ヴィオラ:ジェラルディン・ウォルサー(Geraldine Walther)
チェロ:アンドラーシュ・フェエール(András Fejír)

オフィシャルサイトもありましたので、リンクを張っておきましょう。

takácsquartet.com(英文)

Hob.III:69 / String Quartet Op.71 No.1 [B] (1793)
古楽器のように感じる弦楽器の音色ですが、古楽器ではないようです。キリッとエッジをたてた正統派の演奏。音楽の組み立てはそれぞれの奏者がテンポとアクセントをそろえながらも、それぞれ独自のフレージングで攻める感じ。わずかに騒がしい印象があるのは全員がデュナーミクまであわせようとせず、独自性も聴かせようとしているからのように思えます。テンポ感は非常によく、キレもいい演奏。
録音はオンマイクの直接音重視のダイレクトな感触。残響が少なめな分、アダージョも潤いよりは曲の構造に耳が行く演奏。その分部屋にクァルテットがいるようなリアルな定位感。音色をコントロールしているような感じではなく強弱で音楽を作っている感じ。
メヌエットは堂々とした開始部と軽やかな中間部の対比の変化が上手い具合について、見通しの良い演奏。
フィナーレはダイレクトな音響が効果的。畳み掛けるようにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが交互に掛け合うスリリングな様子が良く伝わる演奏。リアルなだけに迫力は十分。欲を言えばもう少し色彩感のようなものと、流麗さがあってもいいかなと思わせます。ディティールではなく骨格で聴かせるような演奏と言えばいいでしょうか。最後の一音は思い切って力を抜いたもの。

Hob.III:70 / String Quartet Op.71 No.2 [D] (1793)
曲の印象からか、冒頭から前曲よりも流麗さを感じます。出だしから音形の面白さが際立つ曲。前曲よりもアンサンブルのそろいがいいように感じます。録音のダイレクト感は変わりなく、リアリティも前曲並み。あまり細部を意識する事もなく、全体的な骨格を描いていく感じも変わりません。
アダージョも少し叙情的なところを見せます。ヴァイオリンの高音のハリのある音色は流石の出来です。ここに来て自在な演奏を楽しむように弾いているように聴こえます。また途中のチェロの深い音色が非常に印象的。
メヌエットは繰り返される印象的なメロディー。生気を感じる導入部とちょっと変わった中間部。2分少々の短い曲。
フィナーレは途中から驚くような鮮明さで楔を打つようなメロディーが非常に効果的。後半は鮮明さを増してこれまでで一番踏み込んだ演奏。このクァルテットの踏み込みどころがつかめた感じ。

Hob.III:71 / String Quartet Op.71 No.3 [E flat] (1793)
これまでで一番踏み込んだノリのいい演奏。全員のフォーカスが合ってきて、4人のアンサンブルのスリリングな展開が魅力的な演奏。テンポのわずかに速めで、まさにすりリングが掛け合いの妙。この曲のみ録音日が異なるので、演奏のテンションが異なるのも頷けるところ。
2楽章は前曲とは異なり情感も乗って音楽が活き活きとしています。ヴァイオリンのドゥシンベルがリードしたと思ったら、チェロのウォルサーもかなり突っ込んできて、クァルテットの一番面白い瞬間を味わえます。楽器の余韻の消え入る間まで巧く使って非常に濃密な音楽。
メヌエットも生気を保って、特にチェロの大きな波のような表現が秀逸。おおらかさと軽やかさを上手く織り交ぜた秀逸な音楽。テンポもかなり自在に動かしてここでも濃い音楽。
フィナーレは変幻自在な草書の達筆のような素晴らしいもの。テクニックを超えて自在な音楽を4人が楽しむがごとき演奏です。

タカーチ四重奏団は1987年録音のOp.76のアルバムも以前に聴いているのですが、銭湯で収録したような残響過多の録音が災いしてあまり楽しめない演奏でした。それからだいぶ経って、レーベルも変わった後の新録音。前2曲は骨格重視の演奏で、これがタカーチかと思いかけたところ、No.3に至ってその真髄が見えました。特にチェロの踏み込んだ表現が印象的な独特の演奏。これはなかなかです。評価はNo.1、No.2が[++++]、No.3は[+++++]としました。実は同時に注文したOp.74が既に入手困難という扱いで、まだ手に入れてませんので、他で探してみるつもりです。

タカーチのベートーヴェンの評判の良さは聞いていますが、このハイドンを聴くかぎり、ベートーヴェンが良さそうなのは頷けるところですね。あまり得意ではありませんが、そのうちベートーヴェンの全集も聴いてみたいと思います。

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tag : 弦楽四重奏曲Op.71

【新着】ホグウッドの伴奏による歌曲集、室内楽

今日はホグウッドの室内楽と歌曲などを集めたアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon / HMV ONLINEicon

クリストファー・ホグウッド(Christopher Hogwood)指揮のエンシェント室内管弦楽団の演奏によるハイドンの室内楽と歌曲。ハイドンがイギリスを訪問した際に作曲した曲を集めたアルバム。DECCAオーストラリアによる廉価盤のシリーズであるELOQUENCEシリーズの2枚組です。収録曲目は収録順にスコットランド歌曲5曲、ピアノ三重奏曲(Hob.XV:18)、弦楽四重奏曲曲Op.71 No.3、英語による歌曲「貴婦人の鏡台」(Hob.XXXIc:17a)、ロンドン・トリオNo.2(Hob.IV:2)、英語による歌曲「牧歌」、「人魚の歌」、フォルテピアノのための小品、ロンドン・トリオNo.3(Hob.IV:3)、英語によるカンツォネッタ「おお、美しい声よ」(Hob.XXVIa:42)、そして最後は交響曲94番「驚愕」の室内楽編曲版。収録は1978年9月にロンドンのロスリン・ヒル教会で。

アルバムにはこの組み合わせでの初CD化との記載があります。今日はこのアルバムから歌曲を中心にいくつかの曲を取り上げましょう。歌はソプラノがユディス・ネルソン(Judith Nelson)、テノールがポール・エリオット(Paul Elliott)です。

ユディス・ネルソンは1939年アメリカシカゴ生まれのソプラノ。ミネソタ州ノースフィールドのSt. Olaf Collegeで音楽を学び、1979年ブリュッセルでモンテベルディの「ポッペアの戴冠」でオペラ界にデビュー、その後は欧米で活躍。ポール・エリオットは、1950年生まれのイギリスのテノール。最初はロンドンのセント・ポール寺院の合唱隊で歌っていたが、その後声楽のトレーニングを受けて実力をつけ古楽の世界で活躍するようになったとのこと。

CD1-4 「エジンバラの花」(Hob.XXXIa:90)
CD1枚目の冒頭に置かれたスコットランド歌曲5曲の中で抜群に美しい曲。ヴァイオリン、チェロ、フォルテピアノの伴奏による序奏は郷愁に溢れたメロディー。伴奏は落ち着いた響き。ユディス・ネルソンの歌は非常に艶やかで表情豊か。この録音時39歳ということになりますが、非常に若々しい張りのある声。

CD2-1「貴婦人の鏡台」(Hob.XXXIc:17a)1794/5年作曲
先日取り上げたエマ・カークビーのアルバムにも取り上げられていた曲。フォルテピアノの伴奏による短い曲ですが、ネルソンの声の美しさが堪能できる曲。カークビーとはまた違った良さがありますね。驚くのは次の曲。

CD2-2 フルート3重奏曲「ロンドン・トリオ」No.2(Hob.IV:2)1794年作曲
これは「貴婦人の鏡台」と同じメロディー。2本のフルートとチェロによる美しいメロディのアンサンブル。声も良いのですが、美しいフルートの音色によるメロディーもいいもの。えも言われぬ至福感。つぎつぎと訪れるメロディーのさざ波。チェロの雅な響きとフルートの音色が醸し出す優しい響きが静かな感動を呼び起こします。

CD2-3 「牧歌」(Hob.XXVIa:27)「人魚の歌」(Hob.XXVIa:25)1794年作曲
こんどは英語によるカンツォネッタ集から2曲。ホグウッドのフォルテピアノによる伴奏にのってまたユディス・ネルソンの若々しい声の魅力を味わえる歌。ホグウッドは特に雄弁でもなく、さっぱりとした伴奏。

このアルバムに含まれる曲はライナーノーツによればすべて1978年9月の収録ということで、バラバラに収録されたものを集めたアルバムではなさそうです。「貴婦人の鏡台」「エジンバラの花」「おお、美しい声よ」がいい出来で[+++++]としました。その他の曲は[++++]です。ピアノ三重奏曲、弦楽四重奏曲もなかなか聴き応えがあります。ハイドンがイギリスを訪問したときに作曲したものをまとめた企画ものという意味でも良いアルバムですですので、歌曲好き、室内楽好きの方にはおすすめの良いアルバムです。

(追記)後日聞き直したところ、ザロモンによる交響曲94番「驚愕」の室内楽編曲版も素晴らしい演奏ということで評価を[+++++]にしました。

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tag : スコットランド歌曲 英語カンツォネッタ集 ピアノ三重奏曲 ロンドン・トリオ 弦楽四重奏曲Op.71 古楽器

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

モーツァルト天地創造交響曲61番交響曲5番ピアノソナタXVI:46ストラヴィンスキーシューベルトチャイコフスキーピアノソナタXVI:52ピアノソナタXVI:20チェロ協奏曲ライヴピアノ協奏曲XVIII:11弦楽四重奏曲Op.2序曲バッハ軍隊ヴィヴァルディベートーヴェンオペラ序曲アリア集パイジェッロ弦楽四重奏曲Op.76皇帝ヒストリカル日の出ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:49ブーレーズラヴェルサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.71無人島騎士オルランドアルミーダチマローザ変わらぬまこと哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:4ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:3弦楽四重奏曲Op.20交響曲79番アレルヤ古楽器ラメンタチオーネ交響曲3番驚愕チェロ協奏曲1番交響曲88番オックスフォード交響曲19番交響曲58番交響曲27番アンダンテと変奏曲XVII:6紀尾井ホールショスタコーヴィチドビュッシーピアノ三重奏曲ミューザ川崎オーボエ協奏曲協奏交響曲LPヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:39ブルックナーマーラー十字架上のキリストの最後の七つの言葉告別交響曲90番交響曲97番奇跡交響曲99番交響曲18番ひばり弦楽四重奏曲Op.64フルート三重奏曲悲しみ交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者ミサブレヴィスニコライミサ小オルガンミサ交響曲95番交響曲93番交響曲78番時計ピアノソナタXVI:23王妃SACD武満徹ライヴ録音交響曲80番交響曲全集交響曲81番マリア・テレジア交響曲21番クラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかりBlu-ray東京オペラシティ交響曲9番交響曲12番交響曲11番交響曲10番太鼓連打ロンドン交響曲2番交響曲4番交響曲15番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:3ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ロッシーニライヒャドニぜッティ弦楽三重奏曲シェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26タリスアレグリモンテヴェルディバードパレストリーナピアノソナタXVI:6美人奏者四季交響曲70番迂闊者ピアノ協奏曲XVIII:7アコーディオンバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナー交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲46番交響曲35番交響曲51番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:10リュートピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオドイツ国歌モテットカノンオフェトリウム弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルク主題と6つの変奏オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲34番交響曲77番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:11ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bis音楽時計曲カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲62番交響曲107番交響曲108番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

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