【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第4巻(ハイドン)

継続的に取り上げている日本センチュリー響のハイドンの交響曲集ですが、第4巻が発売されました。

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飯森範親(Norichika Iimori)指揮の日本センチュリー交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲7番「昼」、58番、19番、27番の4曲を収めたSACD。収録は27番以外が2016年6月27日、27番が2016年8月12日、大阪のいずみほホールでのライヴ。レーベルは日本のEXTON。

当ブログの読者の方なら既にご存知の通り、飯森範親が日本センチュリー響を振って取り組んでいるハイドン・マラソンというプロジェクトの第5回、第6回のコンサートで取り上げられた曲を収めたアルバム。

2018/03/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第3巻(ハイドン)
2017/07/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第2巻(ハイドン)
2016/11/19 : ハイドン–交響曲 : 【新着】飯森範親/日本センチュリー響の交響曲集第1巻(ハイドン)

このシリーズも第4巻となり、これまでのコンサートで取り上げてきた曲を網羅的にリリースし続けているところをみると商業的に全集化も視野に入ってきたかもしれませんね。直近で取り上げた第3巻に至って、演奏の質も高いレベルで揃えてきていますので、このプロジェクトにも勢いが感じられるようになってきました。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
これまでの巻同様、録音はSACDだけあって自然で鮮明なんですが、好みからいえばこのレーベル特有のHi-Fi調で人工的な感じが取れてくるとさらにいいですね。演奏はこれまで通り流麗、清透なもの。リズムに推進力があり、アンサンブルの精度は非常に高く、キリリと引き締まった見事なもの。この昼は、リリーズ済みの朝と並んで各パートのソロが各所に散りばめられていて、そのソロの活躍が聴きどころの一つですが、この録音ではソロをくっきりと浮かび上がらせるより、オケの一体感と重視したバランスで、ライブでの聴こえ方を忠実に再現したものでしょう。まさにゆったりと聴いていられる感じ。飯森範親の指揮は曲全体の流れをうまく保ちながら、ディティールを丁寧に描いていく感じで、ライヴの高揚感や迫力よりもセッション録音的な意識が強い感じ。この曲では2楽章のアダージョのヴァイオリンのソロを中心とした音楽の深みは見事ですね。響きは実に巧みにコントロールされ、オケの吹き上がりも見事。メヌエットの中間部のコントラバスのソロのコミカルな表情の面白さ、ホルンの響きなどもとろけるような美音もいいですね。終楽章も流麗なんですが、あと一歩表情にコントラストがつくといいですね。

Hob.I:58 Symphony No.58 [F] (before 1775)
シュトルム・ウント・ドラング期の均整のとれた構成の曲。1楽章から力が抜けてリラックスした演奏に癒されます。こういった曲は素直な演奏が似合います。適度な推進力とコントラストで描かれることで、ハイドンの美しい曲の魅力を堪能できます。それを知ってか、オケも実に楽しげに演奏していきます。特に3楽章のメヌエットのコミカルな表情の描き方と流麗さの絶妙なバランス感覚が見事。終楽章も力まずにハイドンの見事な筆致を再現。

Hob.I:19 Symphony No.19 [D] (before 1766)
3楽章構成のごく初期の曲。前曲に続き、こういったシンプルな曲の演出は非常に上手いですね。1楽章の愉悦感、2楽章の陰陽の交錯のデリケートな表現、3楽章のアクセントの効かせ方など、ハイドンの仕込んだ機知を上手く汲み取って、安心して聴いていられる演奏。

Hob.I:27 Symphony No.27 [G] (before 1766)
最後の曲ですが、流麗な入りにうっとり。オケも軽やかにリズムを刻み、次々と繰り出されるハイドンのアイデアをかなり装飾を加えて目眩くようような鮮やかさで片付けていきます。初期交響曲の魅力を見事に表現した演奏。1楽章の華やかさを鎮めるように、続く2楽章のアンダンテはシチリアーノという8分の6拍子の舞曲が弱音器付きの弦楽器で慈しむように演奏されます。終楽章は軽やかさを失わないように八分の力で流して終了。

4巻目に入ったハイドンマラソンシリーズのライヴ録音ですが、演奏も非常に安定してレベルの高いものが揃うようになってきました。表現に遊びが見られるようになって、ハイドンの交響曲の魅力を十全に表した内容になっています。このところファイやアントニーニによる前衛的な表現による全集の取り組みが続いており、このプロジェクトも現代楽器とはいえ、さらに踏み込んだ表現を世に問わなければ飽きられるのではないかとの危惧を持っていましたが、この現代楽器によるオーソドックスなアプローチの中でも演奏のレベルを揃えることで、新たな価値が問えるのではないかとの感触も生まれてきました。録音の方は第4巻ですが、実演はさらに進んでいますので、さらなる成熟を期待したいところですね。本巻の4曲、全曲[+++++]とします。



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リステンパルト/ザール室内管の朝、昼、晩(ハイドン)

今日は秘蔵お宝盤。

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カール・リステンパルト(Karl Ristenpart)指揮のザール室内管弦楽団(Chamber Orchestra of The Saar)の演奏で、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」の3曲を収めたLP。ヴァイオリンソロはヘンデル(G. F. Hendel)、チェロソロはヒンドリクス(B. Hindrichs)、フルートソロはクロム(K. Cromm)。収録情報は記されていませんが、ネットを色々調べてみると1965年頃の録音かと思われます。このアルバムはモノラルですが、nonesuchからステレオ盤もリリースされています。レーベルは仏Le Club Français du Disque。

リステンパルトのハイドンはこれまでに何度か取り上げてきています。

2017/11/19 : ハイドン–交響曲 : リステンパルト/ザール室内管の交響曲21番、マリア・テレジア(ハイドン)
2015/12/31 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルト/ザール室内管の81番、王妃(ハイドン)
2013/01/07 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルトの驚愕、軍隊、時計
2010/02/04 : ハイドン–交響曲 : 絶品! リステンパルトのホルン信号

特に昨年11月に取り上げたnonesuchの21番、マリアテレジアのアルバムはあまりに素晴らしい演奏と、超絶的な録音によってノックアウトされた名盤。文字通り高雅な演奏によりハイドンの名曲のまろやかな響きに包まれる幸福感に満たされるアルバムでした。ということで今日は手元にあるアルバムからまだ取り上げていないアルバムを選びました。

リステンパルトのハイドンについてはcherubinoさんのブログで何度かに渡って取り上げられていますので、こちらもご参照ください。

毎日クラシック:リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その1)
毎日クラシック:リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その2)
毎日クラシック:リステンパルトのハイドン演奏まとめ(その3・板起こしCD編)

Hob.I:6 Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
朝の霞の中からほのかに光が射してくるような独特の入りのアダージョを得も言われぬような柔らかな響きで見事に描くリステンパルト。最初からあまりに見事な演奏に惹きつけられます。アレグロに入るとテンポは心地よい速さで非常に見通しの良い演奏。オケのアンサンブルは微塵の乱れも外連味もなく、淡々とリステンパルトの棒に合わせた自然極まりない演奏。ソロの多いこの曲だけに各奏者の腕の見せ所が多い曲ですが、木管を中心に実に味わい深い、しかも全てのパートの音楽性がピタリと揃った完璧な演奏。肝心の録音はモノラルながら絶妙な柔らかさで豊かな低音と抜群の安定感。LPのコンディションはほどほどながらモノラルカートリッジの盤石の安定感で非常に聴きやすい録音です。
2楽章のアダージョに入ると今度は弦楽器の艶やかつ味わい深い音色に耳を奪われます。あまりに見事なヴァイオリンソロに昇天。少々古びてはいるものの、独特の弦楽器の燻らせたような響きの味わい深さは異次元。フレーズの一つ一つがかくあるべしと言わんばかりに決まって、素晴らしいまとまり。この楽章の音楽の深さをこれほどまでに感じさせる演奏はありません。
メヌエットは後年のシュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲の完成度を先取りしたようなわずかに仄暗い雰囲気を感じさせる曲ですが、その独特の響きの香りを見事に描いていきます。フルートやファゴットの見事な演奏が独特の気配を色濃く描きます。
そしてフィナーレは少しテンポを落としてじっくりと描いていこうということでしょう。フルートが軽やかに響き渡るたびに華やかな響きに包まれます。ゆったりと音楽に身を任せる至福のひととき。1曲目からノックアウト気味です。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
朝の完成度そのままに昼に入ります。演奏も録音も聴き進めるうちに全く古さを感じることはなくなります。それどころかハイドンの音楽のあまりに自然であまりに美しい解釈に普遍性を帯びて聴こえるほど。この曲でもヴァイオリンソロの美しさは突き抜けてます。今度は少しゆったりとした弦楽器の刻むリズムに身を任せながら、各楽器のソロが愉悦感たっぷりに飛び回るように自在に妙技を聴かせます。
続く2楽章はレチタティーヴォですが、いつもながら交響曲としては意外な展開に驚くばかり。劇的な楽章を挟んだことで続くアダージョの幸福感が際立つという寸法。この楽章の美しさは筆舌に尽くしがたいもの。柔らかいオケの音色に様々な楽器の音色が織り込まれて、まさに極上の響き。終盤のソロの応酬の部分は雰囲気満点。

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レコードをひっくり返してメヌエット。実に落ち着いたテンポでゆったりとリズムを刻みます。トリオのゆったりと演奏を楽しむ雰囲気も絶品。何気にホルンのとろけるような音色が心地よいですね。そしてフィナーレに入ると各パートの妙技はさらに冴え渡り、全くブレずに曲をまとめます。

Hob.I:8 Symphony No.8 "Le soir" 「晩」 [G] (1761?)
前2曲ですっかりメロメロになってますので、もはやリステンパルトの術中にハマってます。どこを取っても高雅でゆったりとしたオケの響きの美しさに圧倒されます。モノラル録音にもかかわらず奥行きと広さを感じる素晴らしい録音によって、この曲の真の姿を間近で見るよう。続くアンダンテはただでさえ美しいメロディーがさらに磨かれて聴くものの心に刺さるような浸透力を帯びてきます。時にしなやかに、時に大胆に大きく変化をつけて、この名曲をしっかりと料理していきます。メヌエットは情に溺れることなく堂々とした演奏のなか静けさとくっきりとしたメロディーの余韻がよくマッチしています。最後の大胆な構成のフィナーレも攻めた形になっています。古典のバランスを保ち、オケが破綻しない範囲で、力強いアクセントと大胆なフレージングを印象付けるあたり、ただの古き良き時代の演奏ではありませんね。最後まで刺激に満ちた素晴らしい演奏でした。

リステンパルトと手兵ザール室内管によるハイドンの朝、昼、晩でしたが、この曲集の最良の演奏と言ってもいいでしょう。古い録音でしかもモノラルながら、この曲に仕込まれたアイデアや機知を見事に浮かび上がらせ、しかも絶妙なるセンスの良さでまとめあげた稀有なる名盤です。先日聴いたnonesuchの21番、マリアテレジアはさらに素晴らしい録音で見事な演奏を収録していましたので、この曲のnonesuch盤も捕獲予定リストに追記ですね。もちろん評価は3曲とも[+++++]としました。

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【新着】トーマス・ファイの交響曲全集第23巻(ハイドン)

前記事でファイのハイドンの最初の録音を取り上げアップした翌日に、偶然にも待っていた新譜がamazonから届きました。

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トーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のハイデルベルク交響楽団(Heidelberger Sinfoniker)の演奏で、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」の3曲に、ファイの名前はなく、ベンジャミン・シュピルナー(Benjamin Spillner)がコンサートマスターと記されハイデルベルク交響楽団の演奏による、交響曲35番、46番、51番の3曲、合わせて6曲を収めた2枚組のアルバム。収録はファイの3曲が2014年3月、他の3曲が2016年6月、どちらもハイデルベルクの西20kmくらいのところにあるバート・デュルクハイム(Bad Dürkheim)にあるナチュラルホルンアカデミーでのセッション録音。レーベルはもちろんhänssler CLASSIC。

このアルバムですが、CD1の3曲はファイの指揮とされる録音。ファイの交響曲集のこれまで最後にリリースされた22巻が2013年の9月から10月の録音。そしてこの23巻の収録が約半年後の2014年の3月とのことですが、22巻のリリースは2014年8月でしたので、このアルバムはそれから2年半も経ってからのリリースとなります。ファイが脳損傷になって再起が危ぶまれるという情報は出回ったのですが、いつ頃のことなのかなど詳しいことはわかりません。私の想像ですが、このアルバムがファイの指揮で編集まで済んでいた状態だったとしたらもう少し早くリリースされていたはずですので、編集段階か、あるいは録音の途中でアクシデントに襲われたのではないかと思います。とすると、このアルバム、前半のファイの指揮の曲の出来もそうした状況の手がかりとなります。

2017/03/03 : ハイドン–協奏曲 : ファイ/シュリアバッハ室内管のピアノ協奏曲集(ハイドン)

前記事のファイの原点たる1999年録音の協奏曲集が素晴らしいキレで度肝を抜く演奏だったのもあって、このアルバムにファイの最後の魂が乗っているかが非常に気になり聴き始めた次第。

Hob.I:6 Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
聴く耳を立てているせいか、厳かな始まりに聴こえます。演奏としては快活ないい演奏なんですが、ファイらしい個性というか突き抜けたところが影を潜め、普通に精緻ないい演奏。低音弦のキレ方などはファイの特徴を感じさせますが、ファイだったこちらの想像を超えるアイデアが次々とくりだされてくるはずとの先入観に対して、普通に精緻な今風の演奏。もしかしたら、この録音、最後までファイが振ったものではないのではないかとの想像がよぎります。こちらの期待を蹴散らす豪放さがないのでちょっと肩透かし。
つづくアダージョ楽章はファイならば表情を抑えて淡々とくるところですが、ほどほどに起伏もあり、こちらも普通にいい演奏。録音がいいので弦楽器の響きの美しさは惚れ惚れするほど。落ち着いたテンポによる丁寧な表現がかえってファイっぽくない感じを醸し出してしまいます。こちらも普通にいい演奏なんですが、ファイらしさがあまり感じられません。
メヌエットも実にゆったりとした表情で進みます。ファイだったらこうはしないと思います。導入も展開部も勢いで攻めてくるところはなく、落ち着いた判断で乗り切ります。
なんとなくここまで特段オケが一肌脱ぐ感じとなったことはなく、終楽章もそれぞれ役割を果たすべくオケの奏者がしっかりと実力を発揮して、演奏を律儀にまとめています。どうしたことでしょう。繰り返しに閃きが宿るわけでもなく、非常にオーソドックスな演奏が続きます。もちろんいい演奏なんですが、ちょっと肩透かしを食らった感じです。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
つづく昼ですが、朝よりもキレていてひと安心。曲想のせいか、展開の速さに合わせて生気が戻ります。朝では踏み込めなかったエネルギッシュな場面も多々あり、なかなかスリリングです。ただ、ファイ特有の多様な変化にまではいたっていません。
2楽章は交響曲には珍しいレチタティーヴォアダージョ。劇的な展開の面白さが聴きどころ。徐々に曲の面白さの真髄にせまりつつあります。次々と繰り出される変化球のようなメロディーの描き分けもなかなかのレベル。かなり踏み込んできていますが、ファイの突き抜けた想像力の域と同じようにはいかないようです。
メヌエットはかなりテンポを落として念入りな描写。念入りなところがちょっと一本調子な印象を残してしまいます。そしてフィナーレもちょっと重さを感じさせるもの。ファイのフィナーレでこのようなことはありません。

Hob.I:8 Symphony No.8 "Le soir" 「晩」 [G] (1761?)
CD1の最後の曲。ここまで一番生気を感じる楽章。勢いで曲をあおっていく迫力を感じます。この曲にはファイの存在が感じられなくもありません。2楽章のアンダンテでも楽器感のバランスやアクセントには閃きが感じられ、穏やかな音楽にもかかわらずキラリとひかるものがあります。音楽も今までで一番起伏に富んでいます。そして3楽章のメヌエットへの入りのセンスも悪くありません。コントラバスのユーモラスなメロディーもそれなりにこなし、演出も十分表現力豊か。ですが、ファイだったらさらに突き抜けた面白さを聴かせるだろうと想像してしまいます。フィナーレも雄弁。あのスリリングさ戻ってきました。

今日のレビューはここまでにしておきます。

ちょっと複雑な心境となってしまった、トーマス・ファイの交響曲の23巻。まったく私の勝手な想像ですが、なんとなくこのアルバムの朝、昼、晩の3曲の録音にあたり、晩はリハーサルまでこなしたところまでファイが関わり、その他の曲は関わってもごく浅いレベルまでだったような気がします。特に昼はまったくファイらしくない単調さや重さが見られ、朝も演奏自体は悪くないものの、これまでの多くの演奏からつたわるファイの個性が感じられません。リリースまで時間がかかったのもこの状態でのリリースについていろいろ考えるところがあったのかもしれませんね。ただ、このアルバムの演奏は、このアルバム自体の良し悪し以上に、この演奏から逆にファイのこれまでの非凡さが浮かび上がるという意味でもリリースした意味があると思います。やはりオーケストラで最も重要なのは指揮者だということがよくわかりますね。これまでファイの全集を応援してきた私としては、このあとリリースされるアルバムの状態如何にかかわらず、サポートしていきたいと思います。評価は晩が[++++]、朝と昼は[+++]とします。

ファイの名をはずしたCD2については次の記事で!

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【新着】佐渡裕/トーンキュンストラー管の朝、昼、晩(ハイドン)

最近LPや古い録音ばかり取り上げていますが、新譜にも気になるアルバムがないわけではありません。

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佐渡裕(Yutaka Sado)指揮のトーンキュンストラー管弦楽団(Tonkünstler-Orchester)の演奏で、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」の3曲を収めたアルバム。収録は2015年10月から2016年5月にかけて、ウィーンのムジークフェラインでのライヴ。レーベルはトーンキュンストラー管の自主制作レーベル。

佐渡裕のハイドンはもちろん初めて聴きます。いつものようにWikipedeiaなどから略歴をさらっておきます。1961年京都生まれと、私と同世代。京都市立芸術大学フルート科を卒業。ブラスバンドや関西二期会の副指揮者をへて小澤征爾、レナード・バーンスタインに師事します。その後ヨーロッパに渡りバーンスタインに師事しながら1989年にブザンソン国際指揮者コンクールで優勝し指揮者としてデビューしました。その後多くのオケに客演して経験を積み、2002年に日本のシエナ・ウィンド・オーケストラの音楽監督、西宮の兵庫県芸術文化センターの建設にともない兵庫県芸術文化協会芸術監督に就任、そして2015年10月から今日取り上げるアルバムのオケであるトーンキュンストラー管弦楽団の首席指揮者に就任しています。特に日本では日曜朝に放送している題名のない音楽会の司会者として同じみですね。また2011年にはベルリンフィルの定期に登場した際の模様も放送されました。

皆さんもそうでしょうが、佐渡裕がハイドンを振るイメージはないのですが、トーンキュスンストラー管の自主制作アルバムの第2弾にハイドン、しかも「朝」「昼」「晩」と質実なところを持ってきたのはちょっと驚きでした。ベルリンフィルの定期でも、汗だくになりながらオケから強烈な響きを絞り出すように鳴らす姿が印象に残っていますので、ハイドンの小規模な交響曲を振るイメージは全くありません。そこにこのアルバムということで、逆に興味深いアルバムと言うのが正直なところ。ということで早速聴いてみましたが、これはこれまでの佐渡裕のイメージを払拭する整然とした名演でした。

Hob.I:6 Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
ムジークフェラインだからか、オケの響きの厚みと溶け合い方が見事。ライブですが会場のノイズはまったく聴こえず、ノイズ除去に伴う定位感の乱れもありません。実に見事な録音。オーソドックスなテンポに乗って品のいいアクセントを伴いリズムが躍動。デュナーミクの変化もしっかりつけてメリハリも充分。何より一貫して爽やかさを保って1楽章から見事。
続くアダージョはソロが活躍する楽章ですが、オケの美音に包まれながらヴァイオリンソロの自在なフレージングはまるで草原を飛び回る蝶のごとく自在。相変わらずリズムが清々しく、このリズムが基調にあることで非常に爽やかな印象。オケも非常にリラックスして、ノンヴィブラート気味の透明感溢れる響きと相まって実に穏やかな音楽が流れます。弱音の扱いも見事。
そして、さらに見事なのがメヌエット。実に自然で堂々とした入りにづづいてフルートの美音に耳を奪われます。自身がフルート奏者出身だからか、フルートと木管楽器のコントロールは特に見事。中間部で一旦曲調が変わる所の一瞬の変化の鮮やかさは音楽の気配までコントロールしているよう。しなやかなコントラバスのソロも効果的。各パートがイキイキとメロディーを重ねていくことでハイドンの音楽の見事な綾が輝きます。再び現れるメヌエットのメロディーは力が抜けて余裕たっぷり。
フィナーレも力むことなくよく抑制を効かせながらリズミカルにハイドンの音楽をトレースしていきます。ヴァイオリンのメロディーに耳を奪われがちですが、副旋律を担当するフルートや他の楽器の抑揚のついた演奏も素晴らしく結果的に豊かな音楽を作っていきます。いやいや、ここまでハイドンの音楽に集中してくるとは思いませんでした。会場からは暖かい拍手が降り注ぎます。これは見事!

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
テミルカーノフの秀演で俄然注目するようになった「昼」。前曲の出来から悪かろうはずもなく、安心して耳を傾けます。相変わらずのムジークフェラインでの素晴らしい響き。録音上はウィーンフィルよりも美しく聴こえます。豊かな響き、規律正しく躍動するリズム、フレーズ毎にしなやかに迫りくる迫力、穏やかな表情付けと非の打ち所がありません。極上の心地よい音楽に身を任せます。ヴァイオリンも木管群も最高。佐渡裕もリラックスして指揮を楽しんでいるよう。この曲ではホルンの柔らかい音色がさらに印象的に加わります。
ハイドン渾身の音楽と気づいた昼の2楽章。もちろんここでも手を抜くはずもなく、劇的な展開を古典の規律の範囲で豊かにまとめてきます。素晴らしい緊張感を保ちながら美しすぎる音楽を織り上げていきます。ヴァイオリンもチェロもフルートも最高。終盤のソロの掛け合いも遊び心を高度に昇華させたやりとりが素晴らしいですね。
メヌエットでは低音弦がリズムの軽やかさを保ったまま迫力たっぷりの響きを聴かせます。中間部のコントラバスの活躍する場面はぐっとテンポを落として絶妙な語り口。さらりと寄り添うホルンも絶妙なテクニック。
フィナーレはこれまでの見事な演奏の総決算。佐渡裕もスロットルを巧みにコントロールして、オケを束ね、ハイドンのアイデアの結集した音楽をまとめます。昼のコミカルな側面にスポットライトを当てた名演出でした。

Hob.I:8 Symphony No.8 "Le soir" 「晩」 [G] (1761?)
「朝」も「昼」も絶妙の演奏が続いたので、安心して「晩」に入れます。もちろんこれまでの見事な演奏と同様の素晴らしさ。コミカルなメロディーが転調して展開していく推移の面白さは尋常ではありません。吹け上がりの良いオケが軽々と響く痛快さ。短い1楽章も聴きどころ十分。
晩の聴きどころといえば続くアンダンテでしょう。美しいメロディーと静けさが同居する至福の時間。2本のヴァイオリンの磨かれたメロディーに深みのあるチェロとファゴットが応じ、十分に間をとって音楽がしっとりと進みます。
アンダンテの安らぎを断ち切るように柔らかくも直裁な響きで入るメヌエット。楽章間の転換の見事さもこの演奏の特徴でしょう。ちょっとしたセンスが重要なんですね。トリオは再びコントラバスの聴かせどころ。今度は敢えて鈍い感じを意図したのでしょう、曲に応じて見事な語り口の使い分け。再びメヌエットに戻ると、今度は適度に躍動させます。
そして締めくくりのフィナーレ。どうしてこのようなメロディーが浮かんでくるのかわからないほど入り組んだ構成とメロディーに釘付け。佐渡裕の鮮やかな手腕でハイドンの創意が見事に音になっていきます。最後はキレよく終了。もちろんこの大人のハイドンに聴衆から暖かい拍手が降り注ぎました。

いい意味で予想を完全に覆す超名演盤でした。佐渡裕が新たに首席指揮者に就任後、オケの自主制作レーベルの第二弾としてリリースされたこのアルバム。そこにハイドン、しかも初期の「朝」「昼」「晩」という質素な名曲を選んだ理由がわかりました。佐渡裕さん、ハイドンの交響曲の演奏のツボを完全に掌握していました。一流の料理人が作った親子丼のように、きっちり親子丼ですが、味の深さ、素材の活かし方、バランス、食後の余韻まで並みの親子丼とは次元の異なる味わい深さ。なのに親子丼としての素朴さを失っていない名人芸。ホールを鳴らしきるような迫力の演奏もできる腕力を封印し、ハイドンのこの粋な交響曲のまさに「粋」たる部分をしっかり表現した名演奏と言っていいでしょう。録音は万人が想像するムジークフェラインの黄金のとろけるような響きを捉えて完璧。現代楽器による「朝」「昼」「晩」の入門盤でかつ決定盤と断じます。もちろん評価は全曲「+++++]。全ての人に聴いていただきたい素晴らしいアルバムです。

これは是非、さらなるハイドンの録音を期待したいところですね!(佐渡さん本人は見ていないでしょうね〜)

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ユーリ・テミルカーノフ/レニングラードフィル室内管弦楽団の「朝」、「昼」(ハイドン)

久々の交響曲です。

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ユーリ・テミルカーノフ(Yuri Temirkanov)指揮のレニングラードフィル室内管弦楽団(Chamber Orchestra of the Leningrad Philharmonic)の演奏で、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」の2曲を収めたLP。収録は1972年、収録場所などはロシア語表記のみなので読み取れません。レーベルはソ連国営のMelodiya。

このアルバムは最近オークションで手に入れたものですが、ロシア国内向け仕様のため、表記はロシア語のみ。ドイツ語もフランス語でもなんとか当たりをつけて解読することができるのですが、ロシア語は大変です。ネットを駆使してレコード番号からロシア語の表記のサイトを探し出し、そこからグーグル翻訳などで英語に翻訳して読み解きます。演奏者とオケを特定するだけでも一苦労(笑)。なぜそこまでするかといえば、以前に取り上げた若きギドン・クレーメルの演奏するヴァイオリンソナタのMelodiya盤が録音も含めてあまりに素晴らしかったので、Melodiyaは宝探しのターゲットとなったわけです。

このアルバムもジャケットはシミだらけですが、盤の状態はそれほど悪くなく、いつものようにクリーニングすると黒々と光輝く盤面になりました。これは期待できるということで針を落とすと案の定素晴らしい響きが広がります! レビューの前に奏者の情報をさらっておきましょう。

ユーリ・テミルカーノフは1938年、ロシアの黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方の都市、ナリチク(Nalchik)に生まれた指揮者。小さい頃から才能に恵まれ、レニングラードでヴァイオリンとヴィオラを学びます。レニングラード音楽院でヴィオラを学んだ後、指揮を学び1965年に卒業。1966年にはソ連指揮コンクールで優勝し、コンドラシンに招かれ、オイストラフを伴ったモスクアフィルの欧米ツアーに帯同します。1967年にはレニングラードフィルの指揮台にデビューし、直後にムラヴィンスキーからレニングラードフィルのアシスタント指揮者に任命されます。その後1968年にはレニングラード交響楽団の首席指揮者、1976年にはキーロフ歌劇場(現マリンスキー劇場)の音楽監督などを歴任。以後は1988年からレニングラード・フィルハーモニー交響楽団、1998年からボルティモア交響楽団、2009年からパルマ・レージョ劇場のそれぞれ音楽監督を歴任。日本では読響の名誉指揮者であり、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団と何度か来日していますので、おなじみの方も多いことでしょう。

このテミルカーノフ、調べてみると予想どおりハイドンの録音はこれまで手元にありませんので、このLPは貴重な録音です。意外にもロシアの指揮者のハイドンはいい演奏が多く、コンドラシン、フェドセーエフ、スヴェトラーノフ、コンスタンチン・オルベリアンとライヴを中心に名演盤がいろいろありますね。

Hob.I:6 Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
かなりゆったりとしたテンポでの序奏の入り。主題に入ると弦をかなり鳴らしてクッキリとメロディーラインが浮かび上がります。弦は直近、フルートやホルンの響きが奥に広がって非常に立体的に空間が広がります。ウキウキするような推進力。テンポが速くないのに推進力は抜群。各奏者のリズム感が冴え渡って1楽章はキリリと引き締まった見事な展開。録音も鮮明で言うことなし。
素晴らしいのが続くアダージョ。ここでもかなりゆったりと入りますが、緊張感が途絶えることがありません。ゆったりしているのに響きは非常に引き締まっていて、コンサートマスターのレフ・シンデルのヴァイオリンソロのがこれまた素晴らしい美音。それを包む大波のようなオーケストラの響き。やはりこの楽章はソロが上手いと違います。たっぷりと休符をとって音楽の構造を明快に弾き分けます。遅いからといって古臭い感じは全くしないのがすごいところ。
続くメヌエットも遅めのテンポは変わらず、遅めにもかかわらずかなりはっきりとメリハリをつけてきます。リズムは相変わらずクッキリ、オケの響きもクッキリ、特に木管楽器の溶け合うような響きが素晴らしいですね。グッとトーンを落とした中間部の濃密な描写で聴かせ、再び最初のメロディーに戻るところの描き分けも鮮やか。
フィナーレもじっくり入ります。しっかり音楽の骨格を描くことで曲の構造がよくわかります。ハイドンの書いた音楽のうち、楽器の音色の面白さに意識が集中するように意図したのでしょうか、じっくり描かれた朝は、聴き応え十分。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
前曲と同じく、ゆったりとした入り。ゆったりと言うよりもじっくりといった方がイメージが伝わるかもしれません。ハイドンの書いたこの曲の導入部がいかに素晴らしいか、噛み砕いて聴かせてもらっているよう。すぐに素晴らしい推進力と見事なソロのアンサンブルに包まれます。オケのリズムの良さは前曲そのまま。手堅く完璧なテミルカーノフのオーケストラコントロールに完全にのまれた感じ。
劇的に展開する2楽章もじっくりと音楽を丁寧に描いていくので、迫力十分。この2楽章は時代を先取りするような劇性を持った曲ですが、こうしてテミルカーノフの棒でしっかりと描かれるとその素晴らしさが際立ちます。まるでアンセル・アダムスの豊かなトーンのモノクロ写真のように、アーティスティックな風格が漂います。音楽の輪郭の濃淡を完璧にコントロールして、影の部分の豊かなラチュードが見所のように、音楽に潜むデリケートなニュアンスを完璧に再現。ものすごい描写力。そしてソロも当時のロシアのトップオケの奏者の面目躍如。この2楽章は絶品。あまりの素晴らしさに昇天。
そしてメヌエットはその緊張をほぐすように素直にリズムを弾ませ、そのリズムを少しづつ強調させるようにしてアーティスティックさを保ちます。中間部への切り替えの鮮やかさは前曲通り、コントラバスとホルンの響きがLPならではのダイレクト感で伝わってきます。元のテーマに戻る時は実に自然なのが不思議な所。
フィナーレもじっくり。オーソドックスにまとめてきますが、やはりそこここに表現の巧みさが見え隠れします。特にフルートをはじめとする木管楽器のキレの良さ、クッキリと浮かび上がるヴァイオリンなどが印象的。さらりと終わりますが、深い印象が残りました。

ユーリ・テミルカーノフの振るレニングラードフィル室内管の「朝」と「昼」ですが、これは名盤と言っていいでしょう。特に「昼」の2楽章は絶品です。ハイドンがこの時代に書いた曲がいかに先進的だったか改めて気づいた次第。テミルカーノフによって、この曲の持つ複雑なニュアンスと劇性、そしてメロディーの美しさ、完成度など群を抜くものであったとわかりました。評価は両曲とも[+++++]とします。

Apple Musicを検索してみると、他にロンドンと驚愕の音源が登録されていますが、ロンドンの方は録音がかなり悪く、驚愕の方も全曲が登録されていないようです。これはさらにLPを探す必要がありそうですね。

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tag : ヒストリカル LP

【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの昼、雌鶏など(ハイドン)

5月の最初のアルバム。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ハリー・クリストファーズ(Harry Christophers)指揮のヘンデル&ハイドン・ソサエティ(Handel and Haydn Society)の演奏によるハイドンの交響曲7番「昼」、ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:1)、交響曲83番「雌鶏」の3曲を収めたアルバム。収録は2015年1月23日、25日、ボストンのシンフォニー・ホールでのセッション録音。レーベルはCORO。

ちょっと前にリリースされたアルバムですが、最近になって他のアルバムと一緒に手に入れたもの。3年前にリリースされた同じ奏者による交響曲集を取り上げていますが、そのアルバムの延長の企画。

2013/09/26 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ハリー・クリストファーズ/ヘンデル&ハイドン・ソサエティの朝、熊など

どちらのアルバムも配曲は一夜のコンサートのように構成されていて、1曲目が「朝」と「昼」、2曲目がヴァイオリン協奏曲のHob.VIIa:4とVIIa:1、3曲目が「熊」と「雌鶏」とまったく相似形のプログラム。これでまとめてリリースされているならいざ知らず、2枚のアルバムの間に3年を置いてるところが、雄大というかおおらかな企画。察しのいい読者の方なら、次はまた3年後に「晩」、ヴァイオリン協奏曲VIIa:1、「王妃」が来ると想像していることでしょう。パリセットは6曲構成なので名前付きの3曲を組み合わせると読みました(笑)

このアルバムを取り上げたのは、このアルバムのリリースによってシリーズものとしての企画の面白さに気づいたことと、3年前のアルバムがほどよくいい演奏ながら、少々の硬さと力みを感じるもので、3年の歳月が音楽をほぐしてくれるかどうかを知りたかったから。奏者の情報などは前記事をご覧ください。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
最新の録音だけあって、ボストン・シンフォニー・ホールに響き渡る古楽器オケの鮮烈なサウンドが鮮明に録られています。ハリー・クリストファーズのコントロールは予想通り、迫力十分の力感みなぎるもの。アメリカのオケらしくしっかりと機能美を誇る精緻な演奏。そして前録音よりもしなやかさを増して、音楽の硬さは少し和らいでいます。
快活な1楽章から、短調による劇的な展開のレチタティーヴォを経てアダージョに入ります。このレチタティーヴォの迫力ある描写がこのオケの力量を示しています。そしてアダージョも大きな起伏をうまく表現して、緊張感を保った安らぎを伝えます。古楽器から雅さではなく機能美を引き出してくるあたりがアメリカのオケ。演奏はテンポを落とし気味にしてじっくり精緻な響きを作っていきます。終盤のヴァイオリンとチェロのじっくりと進む掛け合いのクッキリとした表情は聴きどころの一つ。
つづくメヌエットは覇気に満ちた充実の響き。精緻でダイナミックですが、ほどよく力も抜けていていい感じ。そしてフィナーレですが、ここは力が入ってリズムが少々重いのが惜しいところ。クリストファーズはこの小交響曲のフィナーレに迫力を求めているようです。

Hob.VIIa:1 Violin Concerto [C] (c.1765)
続いてヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は前アルバムと同じくアイスリン・ノスキー(Aisslinn Nosky)。ハリー・クリストファーズ率いるヘンデル&ハイドン・ソサエティのちょっと重めリズムによる精緻な演奏という傾向がわかってきました。もう少しリズムに軽さがあればスリリングな印象なんでしょうが、ちょっとリズムの重さが気になってしまいます。アイスリン・ノスキーのヴァイオリンは特に高音部が張りのあるいい音を鳴らしていますが、演奏自体はオケの重さにひきづられて少々平板な印象。ヴァイオリンの美音とオケの迫力はかなりのものですが、掛け合いの妙というかスリリングさが感じられず曲が単調に響いてしまいます。
つづく2楽章に入るとノスキーのヴァイオリンがさらさらと奏でるヴァイオリンの美音が心地よく響きます。これまでの楽章とは逆に、このアダージョ、速めであっけないほどサラサラと進めるので逆にびっくり。カデンツァではノスキーのヴァイオリンの高音の抜けるような美音を堪能できます。
そしてフィナーレは再び力感みなぎる精緻な響きに満たされます。1楽章ほど重みは感じず、ヴァイオリンとオケの適度な掛け合いを楽しませてくれます。

Hob.I:83 Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
やはりかなり力の入った入り。独特の曲想の入りを速めのテンポで畳み掛けるようにきました。音量を上げるとちょっとキンキンするほどの迫力。ただ、これまでの2曲がちょっとスタティックな印象だったのに対し、この曲では流麗でダイナミック。アクセントもしなやかさが加わり、曲の流れがよくなりました。
そしてアンダンテに入るとさらに表情がしなやかさを増し、曲自体の良さに近づいてきた感じ。自然な陰影と力感はやはり大事ですね。このアンダンテがこのアルバム一の聴きどころでしょう。
メヌエットでも爽やかさが保たれ、そしてフィナーレは1曲目でのちょっとくどい感じとは異なり、流れの良さを保ちます。最後の曲が一番しなやかな演奏でした。

アメリカ最古の古楽器オーケストラであるヘンデル&ハイドン・ソサエティによるハイドンの交響曲などを収めた好企画のアルバム。ヨーロッパのオケとは全く異なる文化をもったオケという印象で、精緻でクリアな響きで緻密に演奏することを狙っているようですが、ハイドンの交響曲の真髄にはちょっと届かないのかもしれません。前アルバムよりは力が抜けてきたものの、音楽の流れの面白さはもう一超えほしいところ。オケのテクニックは確かなものがあるだけに、これは指揮者の器の問題なのかもしれませんね。企画自体は興味をそそられるものゆえ、次のリリースを待ちたいと思います。評価は交響曲2曲が[++++]、ヴァイオリン協奏曲は[+++]とします。

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tag : 雌鶏 ヴァイオリン協奏曲 古楽器

ヴィルモシュ・タートライ/ハンガリー室内管の昼、受難(ハイドン)

夏休みの東北温泉旅行の記事にかまけておりましたゆえ、レビューはかなり間が空いてしまいました。今日はLPです。

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ヴィルモシュ・タートライ(Vilmos Tátrai)指揮のハンガリー室内管弦楽団(Hungarian Chamber Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲7番「昼」、49番「受難」の2曲を収めたLP。LP自体に録音年の表記はありませんが、Apple Musicでこの録音を聴くことができ、Pマークは1988年。レーベルはおそらくハンガリーのQuoliton。

このアルバム、先日DISC UNIONで見かけて手に入れたもの。鮮やかなブルーのジャケットにエステルハーザの夏の宮殿の写真が誇らしげに写っています。そしてなによりタートライ四重奏団の第1ヴァイオリンをつとめたヴィルモシュ・タートライの振るハンガリーのオーケストラということで、ぐっときて手に入れた次第。なんとなくゆったりとした音楽が流れ出してきそうなイメージ満点。なかなか希少なアルバムを手に入れたと思って喜んでいました。このアルバムを聴いてなかなかの演奏ゆえブログに取り上げることにして調べてみると、このコンビネーションでかなりの数のアルバムがリリースされていることがわかりました。これらはApple Musicに登録されています。登録されているアルバムを書き出してみると下記の通り。

交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」
交響曲26番「ラメンタチオーネ」、44番「悲しみ」、45番「告別」
交響曲39番、47番、54番
交響曲49番「受難」、59番「火事」、73番「狩り」
交響曲55番「校長先生」、67番、68番
交響曲27番、88番、100番「軍隊」
交響曲43番「火星」、82番「熊」、94番「驚愕」
交響曲31番「ホルン信号」、73番「狩り」

最後の一枚を除きHUNGAROTONの廉価版レーベルWHITE LABELからCDとしてリリースされていたものがApple Musicに登録されています。これらのアルバム、手元の所有盤にはまったくないもの。Apple Musicに登録されているアルバムの実物を手にいれるかどうかは実に微妙なところ。

ということで、このLPとApple Musicで聴き比べると、Apple Musicの方は聴きやすいものの明らかにデジタルくさい音。DACなどの専用システムは持っていないのでAir Playでの再生環境での比較です。世代的にネットオーディオにはまだ抵抗があり、CDの方がコレクション欲という意味でも音質という意味でも分があります。

Hob.I:7 Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
実に柔らかく瑞々しいオケのの音色。ゆったりとしながらも表情は変化に富んで、ハイドンの書いたメロディーの綾をザックリと音にしていきます。もちろん録音はLPらしいしなやかかつ味わい深いもの。主題に入ると自然な推進力の魅力が滲みでてきます。ソロが活躍するこの曲、ソロヴァイオリンはヴィルモシュ・タートライ本人。
2楽章、短調のレチタティーヴォはこれも適度な劇性をしっとりと表現したもの。そしてつづく後半のアダージョがこの曲の聴きどころ。悠久の時の流れを感じさせるゆったりとした音楽。昼のこの楽章の美しさを際立たせる至福の音楽。
3楽章はメヌエット。適度に粗いオケが音楽の表情を豊かに感じさせます。古き良き時代のハイドンの音楽そのもの。古楽器の演奏も悪くありませんが、この幸福感に勝るものはありません。
フィナーレ。速いパッセージにも適度に余裕があり、実に典雅。フルートのソロの軽やかな音色が印象的。オケが落ち着いてこともなげにフレーズをさばいていく様子が微笑ましい感じ。まさに味わい深い名演奏と言って良いでしょう。

Hob.I:49 Symphony No.49 "La passione" 「受難」 [f] (before 1768)
名曲「受難」。前曲の印象から悪かろうはずもありません。1楽章のアダージョから実にしっとりとした序奏が心に刺さります。ゆったりとゆったりと進む音楽。シュトルム・ウント・ドラング期特有の仄暗い雰囲気が色濃く出た演奏。古き良き時代のバランスの良いハイドンの交響曲の典型的な演奏。LPだからこそ感じるのどかな印象。
2楽章に入ると前曲同様、自然な推進力の範囲で曲をコントロール。表現が大げさなところは一切ないのに妙にしっとりとくる演奏。ハイドンの曲に宿る気配のようなものを十分に踏まえての演奏に宿る神々しいオーラが充満。よく聴くとフレージングのメリハリは実に豊か。ハイドンの音楽のツボを押さえているからこその演奏でしょう。流石にタートライのコントロール。いぶし銀の弦楽セクション。
メヌエットに入っても穏やかな音楽は変わらず、ホルンの深い響きの魅力が加わって一層響きが魅力的になります。木管陣も金管陣も優秀。フィナーレはざっくりとした弦楽セクションのテクスチャーの面白さがあり、メロディーラインの穏やかな躍動感と不思議にキレを感じる演奏。ライヴに近い緊張感もあり、音楽の行方を追いかけるように聴きますが、荒々しさが逆に心地よさにつながる演奏。最後はキリリと引き締めて終わります。

ヴィルモシュ・タートライの指揮するハンガリー室内管弦楽団の演奏、Apple Musicで多くの演奏を聴くことができますが、LPで聴く古き良き時代のハイドンの交響曲の典型的な演奏もいいもの。同じ演奏でもネットで聴くのと、LPで聴くのはちょっとニュアンスが異なります。少々のスクラッチノイズの向こうには分厚いダイレクトでしなやかな響きが広がっていました。これだけのいい演奏が、これだけの曲数残っているということで、TOWER RECORDの復刻シリーズでの再発売などが期待されます。中の人、この企画いかがでしょうか(笑) やはりCDでの再発売のほうが我々の世代にはありがたいですね。評価は2曲とも[+++++]とします。

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tag : 受難 LP

【新着】クイケン/ラ・プティット・バンドの「朝」、「昼」、「晩」

久々の新着アルバム。引越し後はじめてHMV ONLINEからの荷物到着。

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HMV ONLINE

シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)指揮のラ・プティット・バンド(La Petite Bande)の演奏による、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」の3曲を収めた最新のアルバム。収録は2012年1月9日から12日にかけて、ベルギー北部のオランダ国境に近い街モル(Mol)にあるギャラクシースタジオでのセッション録音。レーベルはベルギーのACCENT。

クイケンはハイドンの交響曲をかなり録音しており、手兵、ラ・プティット・バンドとザロモンセットや初期交響曲、エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団とパリセット等があります。クイケンの特徴はしなやかなオーソドックスな演奏で曲自体に語らせるというスタイル。聴き進めるうちにじわりと曲の魅力を感じる演奏です。いつもどおり、これまで取りあげたクイケンの演奏のリンクを張っておきましょう。

2011/11/23 : ハイドン–室内楽曲 : クイケン・アンサンブルによる「ロンドン・トリオ」
2011/09/14 : ハイドン–声楽曲 : シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンドのテ・デウム
2011/07/04 : ハイドン–オラトリオ : クイケン/ラ・プティット・バンド1982年の天地創造ライヴ
2011/07/02 : コンサートレポート : シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンドのブランデンブルク協奏曲
2010/03/22 : ハイドン–交響曲 : クイケンのザロモンセット
2010/03/21 : ハイドン–交響曲 : クイケンのパリ交響曲集

クイケンとラ・プティット・バンドの演奏は昨年、東京オペラシティでブランデンブルク協奏曲を聴いていますが、アルバムから感じる緻密な響きよりも、音楽の演奏を楽しむような余裕ある演奏姿勢に打たれました。コンサートという緊張感はなく、まさに練習場で音楽を演奏する事を自分が楽しむような風情でした。

このアルバムはこれまでのクイケンのハイドンの交響曲の録音のカタログにはなかったものですが、ちょっと聴くとその演奏にはコンサートの時の余裕まで録られてました。

Hob.I:6 / Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
どちらかというと遅めのテンポで入ります。ライナーノーツによると第1、第2ヴァイオリン、フルート、オーボエ、ホルンが2台、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、バスーンが1台という小編成オーケストラ。キレとかメリハリとかをことさら感じさせるのではなく、淡々としなやかに曲をこなしていくまさに大人の演奏。最新の録音らしく響きの余韻が美しい非常に鮮明な録音。特にすこし強調されたホルンの音色に耳が奪われます。曲を完全に掌握して、小細工等は一切なくまさに淡々と進みます。
アダージョは弦楽器の繊細な響きの織りなす綾の美しさに打たれます。やはり完璧にリラックスしたような各奏者が繰り広げる音楽はクイケンの最小限のコントロールにより極めて自然な音楽。最後の静寂に響きが消えていく様子は息を飲むほど。
メヌエットはコントラバスが大活躍。ここでも自然な音楽。ことさらメリハリを強調することなくしっとりと染み入るようなメロディーラインを各奏者が重ねて行くことで豊穣な音楽が生まれています。
フィナーレはちょっと驚くほどテンポを落とした入り。クイケンにしては踏み込んだ解釈でしょう。フィナーレの本来は快活な響きをスローモーションで聴くような独特な印象。曲を振り返って味わい尽くすという意図でしょうか。遅いだけに各楽器のメロディーの美しさとその引き継ぎなどが克明に聴こえ、曲を分解してみたような不思議な感覚。

Hob.I:7 / Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
響きも解釈も前曲とかなり一致するツブのそろった演奏。以降のレビューは簡単に。やはり曲を演奏者が楽しむような、ゆったりとしたテンポにのったのどかな演奏。5楽章構成のこの曲は朝ほどの仕掛けはなく、どの楽章ものびのびとした自然なもの。心なしかメリハリもキリッとして、曲自体を存分に楽しめます。

Hob.I:8 / Symphony No.8 "Le soir" 「晩」 [G] (1761?)
このアルバムの中で最もオーソドックスな演奏。1楽章には覇気と生気が漲り、2楽章のアンダンテは静けさを感じる精妙なヴァイオリンの音色にうっとり。メヌエットもフィナーレも期待通りのしなやかなソノリティを感じさせる演奏。このオーソドックスさは貴重ですね。

シギスヴァルト・クイケンと手兵ラ・プティット・バンドによるハイドンの「朝」、「昼」、「晩」はクイケンの最近の演奏の特徴を踏まえた、程よく力の抜けた演奏ですが、根底には非常にリラックスして弾いているラ・プティット・バンドの高い技術があり、また色づけを感じさせないと言うようり、非常に透明度、純度の高い音楽になっています。まさに期待通りの演奏です。強いてあげれば朝の終楽章が、この曲としては異例の遅いテンポをとっているのが目立ちます。クイケンの意図かと思いますが、私の印象は普通のテンポだった方がしっくりくる感じでした。評価は朝が[++++]、その他は[+++++]とします。

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tag : 古楽器

カンブルラン/読売日響の朝、昼、晩

本日は夕方からサントリーホールに読売日響のコンサートに。今日はのんびり出かけたので、開演前のアンデルセンでビールを飲む時間の余裕がありませんでした(笑)
仕方なく、広場をうろうろして、すぐにホール内に。

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開場直後のサントリーホール前の広場(アーク・カラヤン広場)

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ブルーのライティングで雰囲気を盛り上げます。

今日は以前、同じくカンブルランと読売日響のジュピターと春の祭典などを聴いた時に座って気に入った、2階席のオケ裏、指揮者から見て右手の席です。この席だと回り込みにくいヴァイオリンの音色がダイレクトに届き、またオケを俯瞰できるので、指揮者のコントロールが手に取るようにわかります。

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開演前に密かにパチリ。今日の席からの眺め。

席を確かめたうえで、2階のラウンジで赤ワインをたのんで、開演前のざわめきを肴に喉を潤します。ちょっと注文はサントリーがやってるホールなのに赤ワインが冷蔵庫温度なこと。もうすこし温度を上げて赤の余韻を楽しみたいところですね。

コンサートの情報は先日紹介しましたが、もう一度貼っておきましょう。

読売日響:第532回名曲シリーズ

前半はハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」。オケの人数はやはり多めヴァイオリンだけで20人以上でしたね。ホルンは2本。

すでにツィッターなどでもレビューが上がってますが、カンブルランのハイドンは良かったですね。キビキビした速いテンポで、生き生きとした演奏。後半がストラヴィンスキーの火の鳥ということで、プログラム的にはまさに前座なんですが、演奏の濃さは負けてませんでした。

オケを俯瞰しながら聴く「朝」、「昼」、「晩」は面白いですね。ハイドンの楽譜の妙がよくわかります。ヴァイオリン、チェロ、フルート、オーボエ、コントラバスとかわるがわるソロを担当し、掛け合いがあったりとこの3部作の魅力がよくわかりました。今日のコンサートマスターはデヴィッド・ノーランさん。ヴァイオリンは音が揺れる感じの鳴くヴァイオリンと言う風情。先日のセント・ルークス室内アンサンブルのヴァイオリンソロの凛々しい感じとは全く違うヴァイオリン。これはこれで有りですね。ソロの中ではフルートが絶品。コントラバス、チェロも良かったですね。

驚いたのは2曲目の「昼」の1楽章。速さもさることながら、素晴しい力感で1楽章から渾身のテンション。ここにフォーカスをあわせた演奏ははじめて。これも楽譜の読みなんでしょうね。期待の「晩」の2楽章は、予習しすぎて期待が膨らみすぎました(笑)。ちょっと浮き足立った感じが最後まで残り、究極のリラックスとは行きませんでした。良かったのが終楽章。3部作のフィナーレ的な位置づけで、盛り上がりも十分。会場からブラヴォーの嵐でしたね。

ハイドンを十分楽しんで休憩に。

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さきほどワインで喉を潤したので、今度はプレミアムモルツを。休憩中に一杯飲んで、ざわめきを楽しむのはいいものですね。手酌でちょびちょびやりながら、後半のストラヴィンスキーの開始を待ちます。

ホールに戻ると、オケ席外のオルガン下にも譜面台があります。団員の入場がはじまり、さきほどの席にも団員が計7人。センター、左中間、右中間に計3人のトランペットソロ、そしてセンター左脇に、何と言う楽器でしょう、姿はチューバですが、大きさはトランペットよりちょっと大きな楽器が4本並びます。

客席に楽器が入るコンサートはこれで4回目。最初は小澤征爾と新日本フィルのマーラーの8番。天上からトランペットの号砲が降り注ぎビックリしました。つづいて声ですが、タリス・スコラーズのコンサートで客席奥から素晴しい声がしてビックリ、そしてアダム・フィッシャーの昨年のサントリーホルでのコンサート「報いられた誠意」序曲でホルンが客席奥から鳴らされるアンコールの演出。客席に楽器が入ると何となくそわそわしますね。

火の鳥は冒頭からカンブルランの緻密なコントロールとフランス人ならではの色気のある音色が素晴しい演奏。ハイドンで響きの純度と規律の楽しみを味わった後、フル編成のオケの大迫力に撃たれました。先日の春の祭典の原始の炸裂も素晴しかったんですが、火の鳥の方はフルオーケストラのそれぞれのパートが次から次へとメロディーをつなぎながらクライマックスにいたる長大なメロディーのような構成で、カンブルランの長所が春の祭典よりも出ているようでした。打楽器陣も完璧な仕事ぶりで、ティンパニも登場回数は多くないものの、完璧。
フィナーレはホールが吹き飛びそうになるような大音響で盛り上がりも最高。こちらもブラヴォーの嵐で、楽しめましたね。今までストラヴィンスキーといえば、春の祭典とペトルーシュカで、火の鳥はちょっと格下と見ていましたが、実演に接してなるほど、良い曲と見直した次第です。

今日の入りは8割ほどでしたでしょうか。日曜なので6時始まりで8時過ぎには終わるので後が楽で良いですね。

コンサートを存分に楽しんだあと、今日はコンサート前に腹ごしらえをしなかったので、お腹がすいてきました。そこでサントリーホールの目の前、アンデルセンの並びのAUX BACCHANALES(オー・バッカナル)赤坂店へ。オー・バッカナルは以前は職場が赤坂見附だったので、ホテルニュー・オータニの1階にある紀尾井町店にはよく寄ってました。いつもギネスにつまみを頼んで遅くまで飲んでいたものです。一度小澤征爾さんが隣の席で飲んでいたこともありましたね。機転の利くギャルソンさんと美味しい料理のカジュアルなフレンチのお店です。

AUX BACCHANALES

すぐに赤ワインを注文。ホールのワインとは違いいい温度(笑)

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ハウスワインですが、そこそこいい余韻。

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トイレに入ったら、アールデコ調の雰囲気の良い照明が。

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頼んだのは2500円のディナーメニュー。前菜とメインを一品づつ指定できます。今日の前菜はスープと温製サラダをセレクト。

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メインのポークカツレツとサーモンのソテーをセレクト。お腹がすいていたので多めのポーションでもちょうど良かったです。どちらもはっきりとした味付けで美味しかったですね。

コンサートの余韻を楽しみながらしばしゆったりして、さきほど帰宅しました。コンサートでいつももらうチラシでも眺めながら次に行くコンサートでも考えましょうか。もう一杯飲んで寝ます。

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tag : 読売日響 サントリーホール

セント・ルークス室内アンサンブルの朝、昼、晩

先週金曜日に今日のカンブルランのコンサートの予習としてピノックの「朝」、「昼」、「晩」を取り上げたんですが、今日は現代楽器のお気に入り盤を紹介しましょう。リストを整理していたら、このアルバムを紹介しなくてはとメラメラと思い始めたという次第。

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HMV ONLINEicon

2001年宇宙の旅を思わせるような意欲的な造りのジャケットがこのアルバムのただならぬ迫力を感じさせます。演奏は、セント・ルークス室内アンサンブル(St. Luke's Chamber Ensemble)によるハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」とディヴェルティメントの断片(II:24)の4曲。録音は2000年6月12日~18日にニューヨークの米国芸術文学アカデミーでのセッション録音。

この3部作が作曲された1761年は、ハイドンがエステルハーザに副楽長として赴任した年。当時のハイドンの雇い主であったパウル・アントン・エステルハージ候より副楽長就任一日の時刻を題材とするようというにというお題が与えられたとのことですので、それを踏まえてハイドンが渾身の力を込めて作曲したものと言うことができるでしょう。

オケは日本風には聖路加室内アンサンブルとでも言ったら良いでしょうか。ニューヨークを拠点に活動する1974年設立の楽団。現代楽器で指揮者はなしです。オルフェウス室内管弦楽団と同じような構成ということでしょう。

この演奏は、ハイドンの初期の交響曲を現代楽器の小編成アンサンブルでプレーンに演奏したもの。指揮者なしのオケらしく、踏み込んだ解釈はないんですがきっちりしたアンサンブルの美しさを感じさせ、個々の楽器のキレも良い演奏。個性的な演奏もいいのですが、こうしたオーソドックスながら良い演奏というのもまた良いものです。ライナーノーツのオケのメンバー表から各楽器の人数を書き出すと、次のようになります。

フルート(2)
オーボエ/イングリッシュホルン(2)
バスーン(2)
ホルン(2)
ハープシコード(1)
ヴァイオリン(4)
ヴィオラ(1)
チェロ(1)
ベース(1)

総勢でも16名ですから旋律がクリアに聴こえるわけですね。おそらくハイドンが着任した頃のエステルハーザの楽団もこの程度の人数だったことでしょう。

そもそもこの3部作自体、交響曲とは呼ばれていますが、独奏楽器を多用する書法はコンチェルト・グロッソ、特に管楽器を独奏楽器として愛用するオーケストレーションや楽章構成はディヴェルティメントに近いということです。この演奏は、これらの曲の特徴を鮮明に表現するというコンセプトにもとづくものと推察されます。

1曲目の「朝」。1楽章の出だしは朝もやがはれるようないつもの開始ですが、速めのテンポで始まり、小編成のオケらしく、線は細いものの書く音符の動きが鮮明にわかるようなクリアな演奏。各楽器のきっちりしたテンポ感とフレーズを入れ替わり担当する掛け合いの面白さが聴き所ですね。各楽器が生き生きとして演奏しているんですが、模範的な演奏ともいえる折り目正しさもあります。
2楽章は、テンポを落として編成の割に大きなうねりを感じさせる表情豊かなな演奏。1楽章と対比が効果的。個々の楽器の巧さを感じさせる緊密なアンサンブルですね。
3楽章のメヌエットはやはり丁寧な表情付けがいいですね。特に中間部に入りテンポを落として訥々としたフレーズを重ねるあたりの詩情は見事ですね。両端の舞曲はフルートをはじめとした木管楽器の音色の美しさで聴かせます。
フィナーレは期待どおりの快速テンポ。編成が小さいだけにホルンや木管各楽器の音色の美しさが印象ですが、この楽章は特にヴァイオリンが目立っていい響き。

つづく「昼」と「晩」もムラのない良い仕上がり。「朝」と同様なソロの美しさを満喫できます。ピノック盤でも良かった「晩」の2楽章は、さらに良いですね。極上の響き、長い休符の恍惚、ハイドンの神髄が凝縮した8分間。やはりハイドンは天才ですね。この曲のすばらしさが、パウル・アントン・エステルハージ候にも伝わったことでしょうね。この恐るべき才能を同時代、現場で聴いていた人の衝撃はいかばかりのものだったでしょうか。

最後に加えられたディヴェルティメント(II:24)の断片楽章ですが、コンサートであればアンコールに取り上げ他と言う感じで加えられたものでしょうか。作曲年は3部作と同様1761年頃とされています。小編成オケのための曲で、メヌエットと5つの変奏曲で成り立っていますが、メヌエット自体は消失してしまったとのこと。8分少々の曲ですがソロがかわるがわる出現し、最後はホルンとコントラバスの掛け合いがあるなどユーモラスな曲調がいいですね。この部分のホルンの響きは絶品。

評価はディヴェルティメントを含む全曲を[+++++]としました。以前より評価を上げました。このアルバムをリストに加えたときには個性と言うか、踏み込みの部分でもう一歩のものがあるという印象だったんですが、こちらが大人になったんでしょう、踏み込まないところが良いと思うよう場数を踏みました(笑)

HMV ONLINEのカタログには残っていますが、レーベルであるARABESQUE RECORDINGSのウェブサイトでは現役盤とはなっていないので入手可能かどうかはわかりません。見かけたら即ゲットをお薦めします。

さて、ちょっとのんびりしたら、今晩はサントリーホールでカンブルランの「朝」、「昼」、「晩」。流石にこのアルバムほど人数は絞り込んではこないと思いますが、生で聴くハイドンの傑作3部作はどう聴こえるでしょうか。レポートは帰ってから記事にしたいと思います。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : おすすめ盤 ハイドン入門者向け

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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