【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)

いよいよ第3巻まで来ました。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)指揮のイル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏で、ハイドンの交響曲42番、「無人島」序曲、交響曲64番「時の移ろい」、コンサートアリア「ひとり物思いに沈み」(Hob.XXIVb:20)、交響曲4番の5曲を収めたアルバム。収録は2015年11月18日から22日にかけて、ベルリンのテルデックス・スタジオでのセッション録音。レーベルはouthere MUSICグループのALPHA-CLASSICS。

このアルバムはご存知の通り、ジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドン交響曲全集の第3弾。このシリーズについては、膨大なハイドンの交響曲全集への挑戦ということで前2作もレビューに取り上げています。

2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

シリーズの企画についてや、演奏者については第1巻の記事をご参照ください。このシリーズ、いつも丁寧な日本語解説をつけて販売しているマーキュリーから国内盤がリリースされていて、いつもはそちらを手に入れるのですが、今回のアルバムはamazonで見かけてポチった際、あまり考えずに注文したため、輸入盤の方を入手してしまいました。

このシリーズ、ジャケットやアルバムの造りは非常に手が込んでいて、レーベルのこのシリーズにかける意欲が伝わって来ます。膨大なハイドンの交響曲全曲をハイドンの生誕300年のアニヴァーサリーイヤーである2032年までかけてリリースするという壮大な計画ゆえ、商業的に成り立つには演奏の出来が非常に重要です。レビューに書いた通り、第1巻はアントニーニの躍動感と全集を見据えた冷静さのバランスのとれた名演奏でしたが、第2巻はちょっと力みが感じられ、今後に不安を残しました。そしてこの第3巻ということで、今後を占う重要なリリースとなるわけです。

ということで期待の第3巻を聴いてみましょう。

Hob.I:42 Symphony No.42 [D] (1771)
シュトルム・ウント・ドラング期の交響曲。冒頭から俊敏な古楽器オケが躍動しますが、力む感じはなく、オケが一番キレた音を聴かせる範囲での演奏。やはり全集を見据えての落ち着きのようなものが感じられます。もちろんアントニーニらしいうねるような躍動感は健在ですので、いいバランス。古楽器らしいタイトな響きと凝縮したエネルギーを保った良い演奏。全集としては理想的な演奏に聴こえます。
1楽章のエネルギーを癒すように、極めて自然な2楽章の入り。このあたりの絶妙なセンスは流石です。聴きなれた2楽章のメロディーがすっと耳に入って来ます。作為を避けた虚心坦懐な演奏。仄暗いこの時期のハイドンの音楽の魅力が滲み出します。静寂に吸い込まれるような弱音のコントロールが見事。
メヌエットは鮮やかな弦楽器のキレが聴きどころ。ここでも弱音をしっかり抑えることで音楽にくっきりと陰影がつきます。アントニーニのコントロールが行き渡った素晴らしい精度。
間をおかずフィナーレに入りますが、このあたりの曲間のセンスは前記通り素晴らしいものがあります。ざわめくような絶妙の感覚。聴く方も聴覚を研ぎ澄ませて構えます。いつもながらフィナーレに仕込んだハイドンのアイデアのキレの良さを確認しながら聴きます。ブレーズごとに千変万化する音楽をアントニーニが完璧に汲み取り、アイデアのおもちゃ箱のように仕上げて来ます。第3巻の最初の曲はこれまで最高の出来と言っていいでしょう。

Hob.XXVIII:9 "L'isola disabitata" 「無人島」 (1779)
オペラの序曲を挟んで来ました。シュトルム・ウント・ドラング期の少し後の曲。序奏はぐっとテンポを落として深く沈みますが、主題に入るとエネルギー爆発。ここでも力みはなく、吹っ切れた開放感に満ちた演奏。ほんのわずかの違いですがこれが大きいんですね。この曲はアントニーニのいいところが非常によく出ています。次々に襲い来る打撃を見事にオケをコントロールしてエネルギーの波としてこなします。やはり抑えた部分をしっかりコントロール出来ているからこそのこの躍動感でしょう。見事。

Hob.I:64 Symphony No.64 "Tempora mutantur" 「時の移ろい」 [A] (before 1778)
この曲は告別同様シュトルム・ウント・ドラング期最盛期の作曲と分類されています。アントニーニはこの巻では非常に落ち着いていて、クライマックス以外の部分ではかなり冷静に音楽を制御しています。この曲の1楽章でも、時折キレの良いアクセントでアントニーニらしさを主張しますが、使いどころが適切なのでゴリ押し感は皆無。第3巻になってハイドンの音楽の真髄に近づいたのでしょう。さりげない部分の表現も非常に上手く、これまでの古楽器の演奏ではもっとも自然な表情豊かさを感じます。古楽器による演奏での決定盤を感じさせるオーラに包まれています。
42番同様、静寂からすっと入る絶妙な2楽章の入り。この楽章はアントニーニの抑えた表現が冴え渡って素晴らしい展開。静寂の中にそっと流れる厳かな音楽。そしてこの曲がこれほどまでに聴きごたえがあったのかと再認識。
メヌエットは鮮やかなキレの良さで聴かせるのは変わらず。しかも軽さを伴った見事なキレ。古楽器ならでは妙技と唸ります。
そしてフィナーレも穏やかな表情から湧き上がるエネルギーのスロットルコントロールが見事。途中からスイッチが入り、アントニーニ特有の炸裂感を楽しみます。ハイドンの交響曲の面白さが詰まった名演奏と言っていいでしょう。ここまでべた褒めですが、いいものはいいんですね。

Hob.XXIVb:20 Aria da "Il canzoniere" di Francesco Petrarca "Solo e Pensoso" 「ひとり物思いに沈み」 [E flat] (1798)
1798年と少し年代が降ったコンサート用アリアを挟んで来ました。ソプラノはフランチェスカ・アスプロモンテ(Francesca Aspromonte)という人。1991年生まれの若手。ザルツブルクのモーツァルテウム、ローマのセチェチーリア国立アカデミーのレナータ・スコットオペラスタジオなどで学んだ人。非常に透明感のある軽やかな歌声が素晴らしい人ですね。
しっとりとしながらも劇的な伴奏に乗って、透き通るような美声が轟きます。以前聴いた中ではヌリア・リアルに似た声質ですね。古楽器に合う声でしょう。アントニーニはこのアリアでも抑制が効いたコントロールでオケを制御。途中からオケにぐっと力が漲り、アントニーニの面目躍如。アスプロモンテも難しい高音の聴かせどころを難なくこなして実力のほどを見せつけます。交響曲の合間に歌曲が置かれるのも粋な選曲。

Hob.I:4 Symphony No.4 [D] (before 1762)
最後は初期の交響曲。冒頭からはち切れんばかりのエネルギー。この曲をアルバムの最後に持って来た理由がわかります。初期の小交響曲ですが、迫力満点。そしてアントニーニの振るこのオケのテンションの高さがもっともよく伝わる演奏。アクセントとメロディーの流れのバランスが良く、力みは感じません。ファイの演奏も似たキレキレの演奏ながら、ファイがフレーズ毎に創意を凝らして、即興的面白さを聴かせるの似たしアントニーニは周到に演奏プランを練ったキレという感じ。キレそのものを聴かせるアーノンクールとも異なる音楽的完成度を感じます。この1楽章はキレまくってますね。
極度に音量を落としたアンダンテが1楽章の鮮やかさを引き立てます。日向から暗い室内に入り、暗闇の中の微妙な濃淡に目が慣れて来てうっすらとフォルムを見通せた時のよう。ハイドンは創作の初期からこれほどの深い音楽を書いていたことに改めて驚きます。そして、この絶妙のコントラストでハイドンの意図を見抜いたアントニーニの才能にも驚きます。
この曲は3楽章構成で終楽章がメヌエット。曲は比較的シンプルなんですが、アントニーニの棒によって鮮烈なメヌエットが流れ、シンプルな曲のシンプルさに深い陰影がついて見事なフォルムに仕上がりました。最後は各パートのアクセントがせめぎあう饗宴のごとき音楽が痛快。最後の1フレーズの厳しいアクセントがアントニーニらしい余韻を残します。

ジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコによるハイドンの交響曲全集の第3巻はこれまでで一番キレた素晴らしい演奏でした。アントニーニも第2巻で聴かれたちょっと空回りするような力みから抜け出し、抑えた部分をしっかり抑えて各曲にくっきりとコントラストをつけて来ました。ホグウッドに欠けていたエネルギーがあり、ピノックよりもクッキリとアクセントをつけ、ブリュッヘンよりもムラがなく、クイケンよりも踏み込んだ、古楽器による決定盤を予感させる素晴らしい出来でした。これは続くリリースが楽しみです。評価は全曲[+++++]とします。

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tag : 交響曲42番 交響曲4番 時の移ろい 無人島

テンシュテット/SWR交響楽団の「時の移ろい」

久々のCD-R。

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クラウス・テンシュテット(Claus Tennstedt)指揮のの音源を集めたCD-R。ハイドンはSWR交響楽団(SWR Symphony Orchestra)の演奏で交響曲64番「時の移ろい(Tempora Mutantur)」、他にブラームスの大学祝典序曲、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が収められています。ハイドンの収録は"Not Clear"、つまり不明です。会場ノイズがないので放送用録音でしょうか。レーベルはCD-Rでは良く見かけるEn Larmes。

テンシュテットは何気にハイドンを好んでいたようですね。これまでにもCD-Rを中心にいろいろな録音があり、当ブログでも何度か取りあげています。

2010/11/20 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの軍隊ライヴ、爆演!
2010/07/16 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの太鼓連打
2010/06/17 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの王妃
2010/06/13 : ハイドン–オラトリオ : テンシュテットの天地創造
2010/06/09 : ハイドン–交響曲 : テンシュテットの57番

テンシュテットのハイドンは、曲ごとにどうくるかわからないスリルがあります。基本的に穏やかな部分は非常に端正で時に叙情的な音楽をつくり、ここぞというときに爆発します。軍隊や太鼓連打では爆発の妙味が味わえます。また、今日取り上げるアルバムのような初期のマイナーな交響曲もコンサートで取りあげているようで、マーラー等大曲で有名になったテンシュテットの、意外にも古典的な曲への愛着が垣間見えるあたりが面白いですね。

今日取り上げる交響曲64番「時の移ろい」は番号は進んでいるものの作曲年代は古く、シュトルム・ウント・ドラング期の直後の1773年頃の作とされている曲で、穏やかな曲調で知られる曲。

Hob.I:64 / Symphony No.64 "Tempora mutantur" 「時の移ろい」 [A] (before 1778)
牙を剥かない時のテンシュテットの穏やかでしっとりとした演奏。録音は鮮明さはほどほどあり、ノイズもなく聴きやすいもの。ハイドンらしいきびきびとしたリズムと晴朗な表情。曲が進むにつれて、穏やかな表情の彫りが少しずつ深くなっていき、瑞々しさも加わり、ドラティの演奏を少し流麗にしたような理想的な音楽に。
流石だと唸らされるのはつづく2楽章のラルゴ。じつにゆったりとしたテンポをとりながら、深い陰りをもつ癒しの音楽が流れます。古典的でありながらロマンティック。知らず知らずのうちに音楽の波にのまれていきます。ハイドンの音楽がまるでマーラーのアダージョのような滔々とした流れを感じさせ、雄大な音楽に変わっていきます。
メヌエットも遅めのテンポで、テンシュテット流のじっくりした音楽。ハイドン初期の音楽が非常に雄大に感じられる、不思議なコントロール。
フィナーレにいたっても一貫して音楽をじっくりとらえるスタンスは変わらず、通常は溌剌と展開するところが、やはりしっとりと展開します。テンシュテット独特の解釈。表題の「時の移ろい」とは発見された楽譜への書き込みで明確な意味はわかっていないとのことですが、テンシュテットの演奏は、まさに「時の移ろい」という感情を音楽にしたようです。そこまで考えての解釈でしょうか。

久々に聴くテンシュテット。やはり只者ではありませんね。穏やかな部分の情感の濃さと、全体を見渡した巧みな設計、そして一貫してゆったりとした音楽とすることで雄大な造りを感じさせるあたりは閃きというか、テンシュテットならではの演出です。この「時の移ろい」の演奏はテンシュテットのハイドンの交響曲の演奏の中でも、もっともテンシュテットらしい演奏ということができるでしょう。この音楽の深さにはなかなか至れません。もちろん評価は[+++++]とします。

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tag : 時の移ろい

トーマス・ファイ/シュリアバッハ室内管の「時の移ろい」「告別」

これも最近手に入れたアルバムです。

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トーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のシュリアバッハ室内管弦楽団(Schlierbacher Kammerorchester)によるハイドンの交響曲64番「時の移ろい」、45番「告別」の2曲を収めたアルバム。収録はPマークが1999年で、ドイツのハイデルベルグ北方のメルレンバッハ(Mörlenbach)のコミュニティーセンターでのセッション録音。レーベルはファイの交響曲集をリリースし続けているhänssler CLASSIC。

このアルバムはファイのハイドン交響曲全集の第2巻にあたりますが、第1巻を含めて他のアルバムのオケがハイデルベルク交響楽団なのに対し、このアルバムのみシュリアバッハ室内管弦楽団と異なり、しかもHMV ONLINE上では既に廃盤というもの。調べたところシュリアバッハ室内管弦楽団はハイデルベルク交響楽団の前身で、1993年にハイデルベルク交響楽団に変わったとのこと。この巻のみ廃盤な理由はわかりませんが、ハイデルベルク交響楽団として録り直す予定でもあるのでしょうか。

このアルバムは廃盤だったので入手できていませんでしたが、ディスクユニオンでたまたま見かけたのでようやく手に入れたもの。おそらく編成の大きさのみの違いで奏者は同じ人も多いのではないかとと思いますので、オケの音色の違いはそれほどないのではないかと想像しています。ファイのハイドン交響曲全集の第2弾ということで、最近の録音との演奏の違いなどがあるかどうかが気になるところです。

これまで取りあげたレビューを紹介しておきましょう。

2011/07/06 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの「帝国」、54番
2010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号
2010/08/01 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイの69番、86番、87番

これまで取りあげたのは、それぞれ第7巻、14巻、15巻と比較的最近のもの。7巻の録音も2006年ということで、ファイの交響曲全集の初期のアルバムは取りあげていないことになります。この第2巻の1997年以前の録音がどのような出来かというのも興味あるところです。

Hob.I:64 / Symphony No.64 "Tempora mutantur" 「時の移ろい」 [A] (before 1778)
告別交響曲よりも少し後に作曲された曲。大宮真琴さんの新版ハイドンによると、筆写譜の4楽章に"Tempora mutantur"との書き込みがあるのでこの標題がついたという事ですが、それが何を意味するのかはわかっていないそう。冒頭から、落ち着いていながらも楽譜に書かれたハイドンの音楽を題材にファイらしいしっかりしたアクセントと奏法上のメリハリを凝らした演奏。オーケストラのテクニックはかなりしっかりしており、管楽器以外は古楽器という編成で、スペクタクルな展開。ハイドンの音楽に新風を吹き込もうというファイの心意気が感じられる素晴らしい演奏。この演奏は全集を創る価値があると頷けるものです。そこここにちりばめられた弦楽器のレガートが印象的。録音は鮮明で、響きも固すぎず心地よい音響。
2楽章のラルゴは弱音器つきの弦楽器が奏でる静かな曲。弱音部の美しさに焦点を合わせ、かなりテンポを落としたじっくり静かな音楽。
メヌエットは弾む感じを上手く出した、軽いタッチの演奏。オケは良くそろってファイの棒に忠実についていきます。研ぎすまされた集中力によって、フレーズごとに巧みにコントロールされ、各奏者の力の入れ加減がピタリとそろったフレージングを実現。
フィナーレは、知情のバランスが非常にいい演奏。行き届いたコントロールはそのままに、音楽の推進力が増し、交響曲の結びにふさわしエネルギーをそこここで噴出。これは見事。

Hob.I:45 / Symphony No.45 "Farewell" 「告別」 [f sharp] (1772)
疾走する悲しみという言葉が相応しい入り。機知とエネルギーが満ちた素晴らしい入り。速めのテンポでぐいぐい行きます。弾む感じ、古楽器のアタック特有の快感、現代オケに負けないダイナミックレンジを感じさせながらも、一貫してファイの音楽。十分にコントロールされた見事な入りです。徐々に制御よりもエネルギーが勝るようになり素晴らしい盛り上がりを見せます。オケもいい意味で乱れた部分もあり、この交響曲に込められたエネルギーを素晴らしい表現で響きに込めています。
2楽章のアダージョは意外に素っ気ない感じで入ります。弱音器つきの弦楽器が奏でる聴きなれたメロディーを表情を抑え気味にして、ことさら磨く事なく、淡々と進めていきます。おそらく楽章間の対比が主眼にあり、この楽章自体の表現は押さえ込むという狙いだと思います。ここもじっくり静かな音楽。
3楽章のメヌエットは一転して浮き足立った展開。速めのテンポと速めに拍子を打つような速度感の演出で対比を鮮明にします。告別のメヌエットとしてはかなり速い方でしょう。
その勢いそのままにフィナーレに突入。前半は1楽章の再来のようなはち切れんばかりのエネルギーを放出。ほの暗いシュトルム・ウント・ドラング期特有のハイドンの魂が見えてくるよう。奏者が去っていく最後のアダージョにはいり、テンポと表情が落ち着きます。表情は淡々としたまま少しずつ楽器が減り、最後の弦楽器の1台になるまで表情はそのまま。抑えた表情が一層曲想を強調するような展開でした。

トーマス・ファイとシュリアバッハ室内管によるハイドンの交響曲全集第2巻。「告別」と「時の移ろい」という珍しい曲の組み合わせでしたが、その演奏はファイらしい創意と自然さを保った前衛的な側面もあるバランスの良い演奏。特に印象的なのが楽章間の対比と、告別の1楽章、4楽章の素晴らしいエネルギー感。この頃はハイドンの交響曲全集のまだ出だしでしたのでファイ自身にも緊張感が漲っていたように聴こえました。評価は両曲とも[+++++]とします。

今日は朝から雨ですが、府中は連休恒例のくらやみ祭りがはじまりました。街中に大きな太鼓の音色が轟いてます。昨年は震災の影響で中止となってしまいましたので、2年ぶりの太鼓の音色です。やはり普通のことが普通に行われるのがいいものですね。

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tag : 時の移ろい 告別 古楽器

【年末企画】ブルーノ・ヴァイルの交響曲50番、64番、65番

プレストンのミサ曲がつづきましたので、今日はシュトルム・ウント・ドラング期の交響曲を。

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こちらが手元にあるアルバム。ブルーノ・ヴァイル指揮のターフェルムジークの演奏で、ハイドンの交響曲50番、64番、65番。録音は1993年3月27日~29日、4月1日~3日、カナダのトロントにあるCBCグレン・グールドスタジオでのセッション録音。トロントといえばグールドの街ですね。スタジオの情報がありましたのでリンクを張っておきましょう。

CBCグレン・グールドスタジオ

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こちらが、SONY CLASSICALからリリースされているヴァイルのハイドンの交響曲をまとめてリリースした7枚組のアルバム。今手に入れるならこちらでしょう。

ブルーノ・ヴァイルは1949年ドイツ生まれの指揮者。トロントを本拠とするターフェルムジークの首席指揮者として有名ですね。指揮をハンス・スワロフスキーとフランコフェラーラに学びコンペなど有名になったようです。1987年カラヤンとウィーンフィルによって演じられる予定だったザルツブルク音楽祭のドン・ジョバンニの代役を急遽務めてメジャーデビュー。カラヤンは89年に亡くなってますので体調がすぐれなかったんでしょう。以降欧米の有名オケとの競演を重ね、N響にも客演歴があるようです。私はもっぱらハイドンの交響曲とミサ曲の録音で知った人です。

ヴァイルのハイドンは以前、最近録音が始まったザロモンセットの録音について記事を書いていますのでリンクを張っておきます。

ハイドン音盤倉庫:ブルーノ・ヴァイル、ザロモンセットへ

先日ニコラス・ウォードのラメンタチオーネを取り上げたときに、中野博詞さんの「ハイドン交響曲」を読んでシュトルム・ウント・ドラング期の交響曲のうち、交響曲26番「ラメンタチオーネ」、交響曲49番「受難」、交響曲64番の3曲が明らかに宗教的目的のために作曲されたことを知ったので、シュトルム・ウント・ドラング期の交響曲ならば、これまであまり触れられていない64番を含むアルバムを取り上げるべしと思っていました。64番の所有盤リストを眺めると、今までターフェルムジークとの演奏を取り上げていなかったブルーノ・ヴァイルの演奏があるではありませんか。こうした訳で今日はこのアルバムを取り上げるに至った訳です。

収録順にレビューしていきましょう。

交響曲50番の最初の2つの楽章は、ハイドンのマリオネット・オペラ「フィレモンとバウチス」の序劇「神々の怒り」の序曲を転用したものとのこと。1773年の作曲で自筆楽譜が残っているようです。また、1773年にマリア・テレジアがエステルハーザを訪れた際に御前演奏されたのは、交響曲48番「マリア・テレジア」ではなく、この50番だったとのこと。
出だしはまさにオペラの序曲のごとき劇的な導入。オケの力漲る素晴しい響きがグレン・グールドスタジオを満たします。荘重な序奏に続いて素晴しい推進力のオケが主題を奏でます。リズムの起伏が痛快で、特に低音弦のメリハリの利いた活躍が凄まじいです。ブルーノ・ヴァイルのコントロールは生気溢れるというより生気の塊のよう。エネルギーが飛び散りまくりです。なんという感興。
2楽章は厚みのある古楽器の弦セクションによるアンダンテ・モデラート。一転落ち着いてじっくりしたフレージング。しっかりコントロールされたデュナーミクがこの楽章の詩情溢れる旋律を情感豊かに表現。まさに極上のひととき。
3楽章のメヌエット、素晴しい推進力で一気に図太い筆で一筆書きにしたような展開。速めのテンポでも速さを感じないじっくりしたフレージング。オケが良く鳴っていることがよくわかります。
そしてフィナーレ。回想的な序奏に続いて、フルスロットルのオケ。1楽章同様低音弦セクションのキレが炸裂。素晴しいリズム感と響きのキレ。ハイドンが楽譜に込めた以上のエネルギーを放つ演奏。ヴァイル渾身のコントロールでシュトルム・ウント・ドラング期の素晴しい響きが我が家に出現。いやいや圧倒的なエネルギーに打ちのめされました。

交響曲64番は最新のゲルラッハの研究により1773年秋頃の作曲とされているようです。先に触れたように宗教的目的のために作曲された交響曲。前曲の余韻もさめやらぬ中、1楽章はニコライミサのキリエと似た節まわし。前曲同様オーケストラに殺気が漲るような集中力。強奏にはいるところの間を取る息づかいが聴こえてくるような素晴しい一体感。
2楽章は、宗教的目的のために作曲されたという特定の状況が感じられないようなあっさりとした旋律。全体的にゆったりした流れ。途中から大きなため息のような強い慟哭にちかい深い呼吸が曲想を深めます。
3楽章のメヌエットは前曲よりも軽めながら、リズミカルさは変わらず。
フィナーレは弦楽器による特徴的な下降するメロディーと推進力溢れるオケの主題がかわるがわる現れるおもしろい構成。意外とあっさり気味に曲を閉じます。
ラメンタチオーネや受難のようにほの暗い雰囲気はなく、宗教的な目的とはどういったシチュエーションだったのでしょうか。

最後は交響曲65番。作曲は少しさかのぼって1767年とされています。シュトルム・ウント・ドラング期の初期のもの。出だしはなぜか前曲のフィナーレと不思議な一体感をもつ、覚えやすいメロディーが支配する曲。この曲もオケの音響は素晴しいエネルギーの表出。畳み掛けるように特徴的なメロディーを重ねていくうちに曲の構造を浮かび上がらせ、圧倒的な感興をもたらします。特にヴァイオリンセクションの充実は見事。
2楽章は、弦と木管の掛け合いが見事。掛け合いというよりエネルギーの交換にちかい生気溢れるやりとり。ダイナミックレンジの広いコントロール。抑えた部分と強奏の部分の対比をこれだけ有機的なメロディーにのせてメリハリをつけて聴かせるのは流石。木管と弦の解け合いも最高。最後は弦が消え入るように抑えながらも楽章のテーマの余韻を明確に残します。
メヌエットは3曲共通の素晴しい生気で聴かせきります。弦楽セクションの面目躍如。コンサートマスターはジーン・ラモン。素晴しいボウイングで演奏を支えます。古楽器の弦楽セクションがこれだけ雄弁で生気溢れるデュナーミクというのは類いまれなものでしょう。
フィナーレはこちらも素晴しい生気。ホルンの余韻と弦の交錯。エネルギーのぶつかり合いと言った風情。オケの強奏とその余韻が消え入らぬうちに次のメロディーの波にまた襲われ、そのまた次の波も見えるようなまさに畳み掛ける展開。オケの生気がこれだけ素晴しいと聴き応えがまるで違います。最後は次の波がくるエネルギーもかき消して終了。超凄級のエネルギー感で聴かせるフィナーレでした。

評価はもちろん3曲とも[+++++]。古楽器によるハイドンの交響曲では図抜けたエネルギー感をもつ演奏。強さと情感の深さ、音楽性ともに一級の演奏といっていいでしょう。この時期の交響曲の演奏では、私はヴァイルが一押しです。

今日は、年賀状の仕込みなどをしながらのんびり過ごして、スポーツクラブでひと泳ぎ。その後さきほど近所の中華料理店で食事をしてかえりました。いよいよ本当に年の瀬となってきましたね。

ぐるなび:中国名菜 麟嘉

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安くて美味しいのでよく立ち寄る近所のお店。まずはプレミアムモルツ。

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定番、ピータンと春巻。熱々の春巻きが美味。

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本格派のカニチャーハン。

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最後は海鮮麺。野菜の甘みと海鮮の出汁がよく出たスープが絶品。至福の一時(笑)

さてさて、シュトルム・ウント・ドラング期の名曲を集中的に取り上げた年末企画は本記事でひとまず打ち止めとして、通常の流れに戻ります。明日は何を取り上げましょうか、、、

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tag : 交響曲50番 時の移ろい 交響曲65番 古楽器 おすすめ盤 ハイドン入門者向け

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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