アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル(東京オペラシティ)

3月21日月曜は、コンサートに出かけてきました。

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ハイドンファンにはおなじみのアンドラーシュ・シフ(András Schiff)による「ザ・ラスト・ソナタ」と銘打たれた2017年のコンサート。このコンサートに注目したのは、もちろんハイドンのソナタが演奏されるからに他なりません。

当初は3月25日土曜の彩の国さいたま芸術劇場のチケットを取っていたんですが、なんとドンピシャの日に仕事が入ってしまい、やむなくそのチケットを友人に譲り、ネットを駆使して(笑)あらためて東京オペラシティのチケットを取った次第。普段だったら、譲ってあきらめるだけで終わるんですが、なんとなくこういうコンサートは機会を逃すと再びチャンスがこないような気がしたので、私にしては珍しく深追いしたもの。

そういえば、以前もスクロヴァチェフスキと読響のブルックナーの7番も仕事で聴き逃しましたが、あとから考えるとあれを聴いておきたかったという思うばかり。

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この日の公式のプログラムは下記のとおり。

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第17番 変ロ長調 K.570
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 op.110
ハイドン:ピアノ・ソナタ ニ長調 Hob. XVI:51
シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D959

「ザ・ラスト・ソナタ」と名を冠するのにふさわしく、モーツァルトもベートーヴェンもシューベルトも最晩年のソナタを並べていますし、ハイドンもロンドンで作曲された最後の3つのソナタの一つであるXVI:51が選ばれるなど、コンサートの企画としては一本筋の通ったもの。円熟の境地にあるシフの演奏とあって期待が高まりますね。

シフのハイドンのソナタ自体はDENONから1枚、TELDECから2枚組がリリースされていますが、DENON盤が1978年、TELDEC盤が1997年の録音と結構古いもの。フレージングはシフ独特の個性的なもので、多彩なタッチの変化とダイナミクスを強調した演奏が印象に残っています。また奥さんの塩川悠子とボリス・ベルガメンシコフと組んだピアノトリオのアルバムは昨年レビューに取り上げました。

2016/03/15 : ハイドン–室内楽曲 : アンドラーシュ・シフ/塩川 悠子/ボリス・ベルガメンシコフのピアノ三重奏曲(ハイドン)

ピアノソナタ集の方は、ハイドンの曲の良さをもう少し素直に出してもいいのではないかとも思われるもので、今回の実演でそのあたりのシフの個性がどう響くのかを確かめたかった次第。



さて、この日は年度末でバタバタのなか、仕事をやっつけて会場の東京オペラシティには開演の15分前に駆け込み到着。外はあいにくの雨でしたが、ホワイエにはすでに多くの人が駆けつけ、かなりの熱気でした。

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昼飯も抜きで仕事を片付けてきたのでお腹エコペコ。いつものようにサンドウィッチと赤ワインを5分で平らげ、プログラムを買って3分前に着席。この日の席は1階正面8列目とピアノを聴くにはベストポジション。会場はもちろん満員。

定刻の19:00を過ぎると会場の照明が少し落ちて、下手からシフが登場。

すぐにモーツァルトが始まります。コンサートの1曲目ということで、若干硬さも感じられるなか、シフらしく緩急とメリハリをしっかりつけながらフレーズごとの巧みな描き分けが徐々にくっきりと焦点が合ってきて、音楽が淀みなく流れるようになります。ピアノは最近のシフの定番ベーゼンドルファー。厚みというか独特の重みをもった低音に、すこしこもり気味に聴こえる石のような響きの高音が特徴ですが、モーツァルトの曲にはスタインウェイのようなクリアな響きの方が合うような気がしながら聴き進めます。そのうちに左手の表情の豊かさがこの演奏のポイントだという気にさせられ、シフがキレより迫力の表現が引き立つベーゼンドルファーを好む理由がわかったような気がしました。アレグロの起伏の陰影の深さに対し、アダージョの響きの柔らかさの対比は見事。タッチの多様さ表現の変化は流石なところ。そしてアレグレットではタッチの鮮やかさ、躍動感で圧倒されました。弾き進むうちに場内もシフに魔法をかけられたように集中度が上がります。もちろん盛大な拍手が降り注ぎますが、袖に下がることなくすぐに続くベートーヴェンに入ります。

ベートーヴェンは最初の入りは柔らかなハーモニーと力強いアクセントが豊かな情感のなかに交錯するような音楽でした。普段あまり聴かないせいか新鮮に聴こえます。暖かな音色と楔を打つような鋭い音にフレーズごとに巧みに変化する曲想がシフの魔法のようなタッチから紡ぎ出される感じ。ベーゼンドルファーだけに高音の輝きではなく、中低音の輝きが優先するような分厚い響きがベートーヴェンの力感を表すよう。2楽章は分厚い音色に襲われる感じ。タッチの軽さをかなり綿密に制御して、重厚さと軽やかさの対比のレンジが広大。そして3楽章の荘厳な印象も楽章間のコントラストの演出が完璧に決まります。モーツァルトでも豊穣だった響きがさらに豊穣さを増して、観客は皆前のめりでシフのタッチに集中します。またまた拍手が降り注ぎますが、シフはステージを囲う四方の観客に丁寧にお辞儀をしてすぐにピアノに向かいます。

もちろん私の興味はハイドンですが、このコンサートにおけるハイドンの役割はシフの表現力のうち軽やかな機知に満ちた表現に対する適性を垣間見せるという構図のよう。晩年のソナタでも珍しい2楽章構成の曲。最初からタッチのキレの良さが際立ちます。音が跳ね回るように見事な展開。ハイドンのソナタの演奏としては味付けは濃い目ですが、中音部で奏でられるメロディーの面白さはベーゼンドルファーならでは。そしてハイドンだからこそフレーズごとのタッチの変化の面白さが聴きどころ。やはり圧倒的な表現力はシフならではのもの。ハンガリー生まれのDNAに由来するのでしょうか。続く2楽章でもタッチの軽やかが際立ちます。うっとりとしながら人一倍聞き耳を立てて聴き入りますが、短い曲ゆえ、あっと言う間に終わってしまいます。私は2楽章構成と知って聴きますが、他の人は3楽章の始まりを期待しているような終わり方なので、拍手が湧き上がる間も無くすぐに続くシューベルトに入ってしまいます。

この日はやはりシューベルトがメインプログラムでした。普段ほとんどシューベルトは聴きません。その私が聴いてもこれは素晴らしい演奏でした。長大なソナタですが、シフがその魂を抜き取りピアノで再構成したような劇的かつ壮大な音楽。ちょっとくどい感じさえする低音の慟哭がシフの手にかかるとキレよく図太い低音の魅力に昇華され、時折聞かせる長い間が時空の幽玄さすら感じさせます。シューベルトが終わると、まさに嵐のような拍手が降り注ぎ、まさに観客の心をシフが鷲掴みにしてしまったがごとき状況。何度かのカーテンコールにつづいて、アンコールの演奏にシフがピアノの前に座り、演奏を始めました。

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最初はシューベルトの3つの小品から。アンコールとは思えない本格的な構成の曲に再び場内が静まり返ります。コンサートのプログラムも全て暗譜。そしてアンコールに入ってもさらりと演奏をはじめ、はじまると実に豊かな音楽が流れます。すべての曲を完全に自分のものにしきっているところに一流どころのプライドを感じます。シューベルトが終わったところで席を立つ人もいましたが、アンコールは1曲ではありませんでした。プログラム最後のシューベルトの演奏に酔いしれた観客に、さらにシューベルトがだめ押しで加わったかと思うと次はバッハのイタリア協奏曲の1楽章。バッハのアルバムをいろいろリリースしているだけあってシフのバッハを待っていた人も多かったのでしょう。アンコールに寄せられた拍手はどよめきにも近いものに変わります。これで終わりかと思っていると、シフはまたまたピアノに向かい、なんとイタリア協奏曲の2楽章、3楽章を演奏。すでに観客はクラクラ(笑)。完全にシフに魂もってかれてます。もちろん盛大な拍手に迎えられ、シフも引き下がれず、今度はゴリっとした感触が印象的なベートーヴェンの6つのバガテルから。ここまでくると、休憩なしで張り詰めっぱなしの観客とシフの根比べ(笑)。盛大な拍手にアンコールで応えるシフも引き下がらず、その後モーツァルトに最後はシューベルトの楽興の時を披露。聴き慣れた曲が異次元の跳躍感に包まれる至福のひととき。そして盛大な拍手が鳴り止まず、シフが再びピアノの前に座ると、そっと鍵盤の蓋を笑顔で下ろし、長い長いアンコールの終わりを告げ、観客も満足感に包まれました。

プログラムの演奏だけで90分ほど。そしてアンコールを入れると2時間半弱。休憩まったくなしで完璧な演奏を続けたシフ。私はプログラム最後のシューベルトの余韻に浸っていたかった気もしましたが、最後まで聴いてみると、シフの観客をもてなそうとする気持ちもわかり、これがシフの流儀だと妙に納得した次第。ピアノという楽器の表現力の偉大さをまざまざと見せつけられたコンサートでした。

先に紹介したようにシフのハイドンの録音は古いものばかり。この円熟の境地で再びハイドンのソナタに挑んでほしいと思うのは私ばかりではないはず。こころに響くいいコンサートでした。

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tag : 東京オペラシティ モーツァルト ベートーヴェン シューベルト

バッハ・コレギウム・ジャパンのロ短調ミサ(東京オペラシティ)

11月11日金曜は仕事帰りにコンサートへ。

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Bach Collegium Japan:J. S. バッハ:ミサ曲 ロ短調

この日のプログラムはバッハのロ短調ミサ。バッハはこのところクイケンのマタイやブランデンブルク協奏曲などを聴きに行ってます。ロ短調ミサは2009年にラ・フォル・ジュルネ音楽祭でミシェル・コルボとローザンヌ声楽・器楽アンサンブルの演奏を聴いていいます。クイケンの淡々と精緻な演奏や、コルボの自然でのびのびとした演奏も素晴らしいのですが、世界が注目するバッハ・コレギウム・ジャパンでロ短調ミサが聴けると知りチケットをとった次第。バッハ・コレギウム・ジャパンは今年調布で行われた調布音楽祭でヘンデルの水上の音楽を聴いていますが、古いホールのせいかなんとなくもうひとつな感じがしたので、あらためて響きのよい東京オペラシティのタケミツメモリアルホールでのコンサートということで、BISのアルバムでの素晴らしい響きが聴かれるか期待のコンサートです。

歌手陣は下記のとおり。

ソプラノ:朴 瑛実、ジョアン・ラン
アルト:ダミアン・ギヨン
テノール:櫻田 亮
バス:ドミニク・ヴェルナー

このところ嫁さんからうつった喉風邪で喉がガラガラ。医者でもらった薬を飲んで咳は引くんですが、ちょっと薬でぼ〜っとしながら、コンサート会場である東京オペラシティに向かいます。

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仕事でバタついていたので、ついたのは開演10分前とギリギリ。嫁さんが赤ワインとサンドウィッチを買ってホワイエで待っていてくれたので、着くなりサンドウィッチをワインでかき込んで席に着きます。席はお気に入りの2階右ステージのちょっと手前の席です。



流石にバッハ・コレギウム・ジャパンの東京定期公演ということで、ホールはほぼ満員。定刻になり、メンバーが入場してきますが、オケの配置は指揮者の正面にフラウト・トラヴェルソ2人が座わり、その奥にオルガンとチェンバロが配置されるという変わった配置。左端にはナチュラル・トランペットが3人、右端にはオーボエ3人が並び、後ろにコーラスが1列に並びます。オルガンのキーで丹念にチューニングを終えたあと、指揮者の鈴木雅明さんが手を振り上げると、キリエの鮮明な響きがホールに轟きます。いきなり素晴らしいのがコーラスの透明感。普通のコーラスの混濁感が全くなく、絶妙なハーモニーに圧倒されます。オケも冒頭からじっくりと落ち着いた演奏で指揮に合わせていきます。冒頭のキリエはコーラスの素晴らしさに打たれました。ソロがいないと思いきや、全員コーラスを兼ねて、ソロの部分になると前にそろりと出てきます。ソロは皆素晴らしい歌唱なんですが、特に素晴らしかったのがアルトを担当するカウンターテナーのダミアン・ギヨン(Damian Guillon)とテノールの櫻田亮。ダミアン・ギヨンの声は男性とは思えない美しさ。そして櫻田亮は日本人離れした透き通るようなクリアな声。オケの方は、2曲目以降落ち着いたテンポを保ちながら、要所でグッともりあがっていくコントロールはアルバムで聴くよりも指揮姿と合わせてみることで迫力が違います。オケではティンパニのリズムが冴えまくっていて要所の盛り上がりをキレで支えています。そして左端のトランペットは3人とも片手で高らかにナチュラルトランペットを掲げ、祝祭的な音色でバッハらしい音色を加えていきます。キーのないトランペット故、演奏は難しいのでしょうが、アルバムで聴かれるほどの安定感には至っていません。6曲目のヴァイオリンソロはコンサートマスターの若松夏美で、キレが良いのに妙にしっとりとした見事な弓さばき。そして11曲目にようやく登場する、ホルン(コルノ・ダ・カッチャ)オリヴィエ・ピコンは立ち上がってアクロバティックなメロディーを事も無げにこなしていきます。そして、第一部のクライマックスの12曲は、素晴らしい上昇感。タケミツメモリアルホールに古楽器オケの響きが満ちていきます。

休憩を挟んで、後半もコーラス、ソロ、オケの素晴らしさは変わらず。特にコーラスの弱音部の透明感溢れるコントロールは秀逸。オケの響きの余韻とコーラスの余韻がえもいわれぬハーモニーをつくり、観客もそのハーモニーに心地よく酔っていました。コルノ・ダ・カッチャのオリヴィエ・ピコンは前半のみの登場にもかかわらず、後半もステージに上がって譜面を追っています。その辺のことがパンフレットのインタビュー記事に触れられており、1箇所の登場にもかかわらず集中力を保つコツと後半ステージになぜ上がっているのかが触れられていました。なんでも世界有数のバッハをステージ上で聴ける貴重な時間ということで、ずうっと譜面を追いながら集中していました。長大な第2部のクレド、第3部のサンクトゥスを経て、あっという間に第4部へ。フラウト・トラヴェルソとテノールのソロや、カウンターテナーのソロを挟んで、終曲のコーラスへ至ります。終曲は厳かな威厳に満ちたゆったりとしたコーラスの魅力に溢れた演奏で締めくくります。もちろん素晴らしい演奏に場内からは拍手が降り注ぎます。鈴木雅明さんも会心の演奏だったのか満面の笑みで奏者を次々と称えます。

調布音楽祭の演奏では、いまひとつオケのハーモニーの美しさがが感じられなかったのですが、この日の演奏はバッハ・コレギウム・ジャパンの素晴らしさがしっかりとつたわりました。バッハの演奏の頂点の一つであると納得の演奏。やはりコンサートではホールも重要ですし、その響きが奏者の集中を促す働きもあるような気がしますね。心に残るコンサートでした。



コンサート後は小田急線の参宮橋まで歩いて、先日よって美味しかったお店で反省会。

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風邪気味ではあってもワインは欠かせません(笑)。スパークリングに白で乾杯。

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コンサート後でラストオーダー間近なので、最初に一気に注文。前菜盛り合わせ2人前。

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そしてピッツァはシラスとドライトマト。シラスは生シラスをたっぷり乗せて焼いてあり、シラスの旨味が素晴らしい。記事は厚めのナポリ風。

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パスタはマッシュルームをペースト状にしてスパゲティに絡めたもの。これもマッシュルームの穏やかな風味が感じられていい味でした。

ワインに美味しい料理で風邪も流して、ほろ酔い加減で帰途につきました。

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tag : 東京オペラシティ

没後20年武満徹オーケストラコンサート(東京オペラシティ)

先週木曜の10月13日は以前からチケットを取ってあったコンサートに行って来ました。

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東京オペラシティ:没後20年武満 徹 オーケストラ・コンサート

日頃ハイドンばかり聴いていますが、武満徹も好きで、手元には30枚くら武満のアルバムがあります。一般的には武満などの現代音楽を好む人は少ないのでしょうが、夢千代日記の音楽などで武満の音楽の魅力は日本では割と知られているのではないでしょうか。その武満が亡くなったのが1996年2月ということで、今年は武満の没後20年に当たる年。そのアニヴァーサリーに、武満の名を冠した東京オペラシティのタケミツメモリアルホールで行われるということで、このコンサートの存在を知った4月にチケットを取ってあったもの。奏者も武満にゆかりのある人が揃い、指揮はイギリスの現代作曲家で武満の音楽に心酔し、武満のアルバムも多く残しているオリヴァー・ナッセン、ピアノには当初タッシなどで武満の音楽を好んで演奏していたピーター・ゼルキンが参加する予定だったものの、体調不良とのことで、こちらも縁のある高橋悠治が代役に入りました。オケは日本フィル。

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いつものように仕事を早めに終えて、初台の東京オペラシティに向かいます。いつものように嫁さんが先に待っていてくれるはずでしたが、この日は嫁さんが出がけにばたついて珍しく財布とチケットを忘れたというメールが途中で入ります。これが歌舞伎でしたら入り口で告げるだけでちゃんと松竹の方で調べて何事もなく入れてくれるんですが、会場に向かう電車の中からメールでやり取りして、私の方のチケットに書かれているオペラシティのチケットセンターに嫁さんから電話を入れても、相手にしてくれないとのこと。仕方なくそのまま会場に向かうように告げ、会場で落ち合い、入り口の偉そうな方に相談すると、予約一覧をチェックの上、確認を取ってくれて事無きを得ました。この辺の対応は松竹とは大違い。歌舞伎のお客さんは高齢者が多いのでしょうから、チケット忘れなど日常茶飯事なのでしょうね。やはり民間の方がサービスが進んでいます。

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会場に無事入れて嫁さんも一安心。いつものようにワインとサンドウィッチで軽く腹ごしらえ。今日はチケット忘れ騒動でばたついていたので、ワインが沁みます(笑)

この日のプログラムは下記の通り。

地平線のドーリア(The Dorian Horizon for 17 strings)  
環礁 - ソプラノとオーケストラのための(Coral Island for soprano and orchestra)
(休憩)
テクスチュアズ - ピアノとオーケストラのための(Textures for piano and orchestra)
グリーン(Green for orchestra)
夢の引用 - Say sea, take me! - 2台ピアノとオーケストラのための(Quotation of Dream - Say sea, take me! - for two pianos and orchestra)

もちろんオール武満プログラムで、この手のコンサートはお客さんの入りが良くないこともありますが、この日はほぼ満員。芸術文化振興基金助成事業ということでチケットが安かったのもあるでしょう。私に取っては好きな武満の特に1960年代の若い頃の挑戦的な作品が多い絶好のプログラム。

席について配られたプログラム冊子を読んでいると、この冊子が実によくできています。武満徹の研究者である小野光子さんによる作品解説が読み応えがあって素晴らしいもの。この解説一つでこの日の体験の深さが変わるだけの価値があります。

聴き慣れたこのホールの鐘の合図で開演時間となったことを知らせます。ステージ上には大オーケストラ用の楽器が配置される中、打楽器やピアノが脇に避けられ、中央に小編成のオケ用の椅子だけが並びます。

地平線のドーリア(1966)
最初は弦楽器だけの「地平線のドーリア」。オリヴァー・ナッセンの武満はDGからロンドン・シンフォニエッタのアルバムが何枚かリリースされているため、外人らしからぬ日本的に精緻なコントロールの行き渡った演奏をする人だとは知っていましたが、実演は初めて。超巨漢で脚が悪いのでしょう、杖をつきながらゆっくりと指揮台に登壇する姿は、想像とは結構違っていてビックリ。弦楽器は前後2群に別れて配置されます。ナッセンが体の大きさに比して非常に小さな指揮者用の椅子に腰掛け、タクトをすっと下ろすと、静寂の中から不協和音がさざめくように鳴り始めます。奏者が互いの響きを確かめながら進むように、それぞれが微妙なタイミングで音を響かせます。解説によると、音が方々から発せられ立体的に聴こえるように意図された、ドビュッシーの手法に影響されたものとのこと。絶妙な緊張感が漂いながら、弦楽器が弦楽器らしからぬ響きで空間を切り裂いていくように音楽が進みます。武満の響きに対する鋭敏な感覚が冴え渡る音楽。ヴァイオリンの高音は笙のように澄み渡り、コントラバスはザラついたただならぬ気配を発します。10分少しの曲ですが、いきなりホールが武満の音楽で包まれます。家に帰って若杉弘と読響による初演時の演奏を聴き直してみた所、若杉の演奏にはより日本的な、鉋をかけたてのヒノキの柱のような凛とした風情が感じられました。ナッセンの演奏はウェーベルンの延長のような、よりインターナショナルな響きを感じた次第。世界から見た武満のより普遍性を感じる演奏との印象を深くしました。

続いて今度は大オーケストラ用の曲に変わるため、舞台の座席を作り変えます。

環礁 - ソプラノとオーケストラのための(1962)
今度はソプラノやピアノ、打楽器群も加わります。ソプラノはイギリスのクレア・ブース(Claire Booth)で、今回が初来日とのこと。解説によると、武満が1961年に京都の苔寺(西芳寺)を訪ね、その回遊式庭園に啓示を受け1962年に作曲した曲とのこと。歌詞は詩人の大岡信に依頼した日本語のシュールレアリスティックなもの。5部構成で15分ほどの曲。
弦のさざめきから入るところは変わりませんが、すぐにピアノとパーカッションが加わり、武満らしいモノクロームなのに色彩感を感じるような独特の精妙かつ豊かな響きに包まれます。ウェーベルンの引用のように感じる部分と、武満独特の弦の深い響きの交錯。弱音の連続で緊張感が高まったところにピアノ、フルート、シロフォンやマリンバなどの響きでパッと色彩が加えられる独特の響き。第2部と第4部にソプラノが加わります。クレア・ブースはかなりの声量。日本語の歌詞は解説を見なければちょっと聞き取れませんが、音程の安定感、声の艶はなかなかで、適切な配役でしょう。実際の歌詞もメロディーも実にシュールレアリスティック。

前半は曲自体は正味25分程度ですが、曲感のオーケストラの席の配置替えにも随分時間がかかるため、特段短いと感じることはありません。むしろその間に解説などに目を通す余裕があって悪くありません。

休憩を挟んで後半に入ります。

テクスチュアズ - ピアノとオーケストラのための(1964)
ステージ中央にピアノが置かれます。ピアノは高橋悠治。解説によると36人づつ2群に分けられたオーケストラとピアノのための作品で、奏者が一人一人個として織物を織るようにテクスチャーを構成することを求めたもの。この曲は1965年に国際現代作曲家会議で最優秀賞に輝き、武満が欧米で本格的に認められるきっかけとなった曲とのこと。ちょっとリゲティ風の宇宙空間の描写のように無限を感じさせる場面がある一方、個と群を意識させ、喧騒と静寂を行き来、高橋悠治のピアノの強打音が散りばめられ、弦も管も入り乱れて混沌とした音の塊が飛び交うような強靭な音楽。終盤の澄んだ弦の響きがすっと消え入り終了。8分くらいの小曲ですが、武満らしい透明な響きの魅力を存分に味わえる曲でした。ナッセンは相変わらず、精緻ながら非常にしなやかな音楽を繰り出します。

グリーン(1967)
この曲は有名なノヴェンバー・ステップスの続編として、作曲時は「ノヴェンバー・ステップス第2番」と題されていたが、その後「グリーン」へと改題されたとのこと。また、指揮者のナッセンが1960年代に武満の音楽を知り、中でもこの「グリーン」に惹きつけられ、その後武満と親交を結ぶまでになったきっかけとなった曲とのこと。手元にはロンドン・シンフォニエッタの自主制作盤で武満の曲を集めたアルバムがありますが、そこにも最初にこのグリーンが収録されており、ナッセンのお気に入りだということがわかります。50年代から60年代初頭までの前衛的な作風から、少し叙情的なメロディーが含まれるように変化してきました。ナッセンの演奏もニュートラルなオーケストラの響きの魅力に溢れたもの。帰ってから先のアルバムを聴いてみた所、まさにコンサートの演奏と非常に近い柔らかな響きに包まれた素晴らしい演奏。過度に日本を意識することなく響きの純度を高めて行った先にある究極のニュートラルさにたどり着いたような素晴らしい録音に、コンサートの情景が重なりました。

後半に入っても曲ごとにステージ上の座席配置を大きく変更することは変わりませんが、最後の曲はピアノが2台となり、2台目のピアノをステージ脇から中央に配置します。2台のピアノと大オーケストラの配置は壮観。ピアノは高橋悠治と台湾出身のジュリア・スー(Julia Hsu)。

夢の引用 - Say sea, take me! - 2台ピアノとオーケストラのための(1991)
このコンサート最後の曲。この曲のみ1990年代の曲。バービカンセンターとロンドン交響楽団の委嘱により作曲された曲。初演はマイケル・ティルソン・トーマス指揮のロンドン交響楽団の演奏で、ピアノを今回来日するはずだった、ピーター・ゼルキンとポール・クロスリーが担当していました。この曲の世界初録音はナッセンとロンドン・シンフォニエッタで、同じくピーター・ゼルキンとポール・クロスリーでDGからリリースされており、手元にもあります。
ピアノの印象的な響きから始まる曲。途中、夢千代日記の音楽の一部やドビュッシーの「海」やの一部がコラージュのように散りばめられたり、解説によると武満自身の作品からの引用もされているとのこと。60年代の緊張感溢れる音楽からは大きく変化し、ゆったりとした色彩感に溢れた見事なオーケストレイションが聴きどころの曲。千変万化する魅力的な響き、そしてドビュッシーの断片が泡沫のように浮遊する心地よい音楽。ナッセンは適度にオケを引き締めながらも、独特のニュートラルな響きで武満の作品をさらに魅力的に響かせていました。ピアノの高橋悠治もジュリア・スーも録音よりもオケに埋もれがちでしたがきらめくようなピアノの美音を置いていき、まるで響きに宝石をちりばめていくよう。まさに「夢の引用」とのタイトルにぴったりな演奏でした。

もちろん、素晴らしい演奏に会場からは万雷の拍手が降り注ぎ、ナッセンは脚が悪いのに何度もステージに引き戻されていました。オケの東京フィルも素晴らしい集中力。数カ所ホルンの音がひっくり返ったところがあったくらいで、あとは完璧。特にコンサートマスターを中心に弦楽セクションの表現力は見事でした。ナッセンもオケの好演に満足気な表情を浮かべていました。現在武満を演奏する理想的なメンバーによる素晴らしいコンサートでした。普段もちろん武満など聴かない嫁さんも満足げ。チケット騒動のことも忘れてコンサート後の余韻を楽しみました。

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(参考アルバム)
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帰りは、近くの参宮橋駅まで10分ほど歩いて、以前から気になっていた駅前のお店で反省会を兼ねた夕食をとりました。

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以前テレビで取り上げていたのを見て、気になっていたお店。オーナーが好きなことをやり続けるために、営業時間や競合などにこだわらず一本筋の通った運営を続けるお店。イタリアン風ですが、メニューも個性的でなかなかいいですね。

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グラスワインはフレンチ中心。オーガニックのすっきりしたところを揃えていて、セレクトも悪くありません。

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コンサート後ということで入ったのは9時半すぎ。10時ラストオーダーということで、頼んだのはサラダとパスタ2皿。パスタは手打ちパスタが名物ということで見本を前に丁寧に説明してくれました。

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こちらは山のサラダ。こちらも名物とのこと。

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こちらはうさぎ肉のラグー。麺はタリアテッレをセレクト。

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こちらは鴨とごぼうの赤ワイン煮込みに赤い手打ちパスタを合わせました。どちらも手打ち麺の適度なもちもち感と優しい味付けですっきり系のワインと相性ピタリ。コンサート後の反省会にぴったりということで、今後も寄らせてもらいそうです。

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tag : 東京オペラシティ 武満徹

スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー8番(東京オペラシティ)

今日は東京オペラシティのコンサートに行ってきました。待ちに待ったコンサート。

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読売日本交響楽団:スクロヴァチェフスキ指揮 特別演奏会 《究極のブルックナー》 2日目

スクロヴァチェフスキはなんと92歳。高齢ゆえ、前回2014年10月のコンサートを聴きに行った時も、これで聴き納めかもと思っていましたが、またまた来日して、しかも曲目はブルックナーの8番ということで、このコンサートが発表された時からチケットをとってあったもの。これまでスクロヴァチェフスキのコンサートは定期公演に組み込まれていましたが、今回は「特別演奏会」という企画。もしかしたら、本当にこれで聴き納めかもしれないとの想いもよぎります。

普段はハイドンばかり聴いていますが、ブルックナーも嫌いではありません。ただ、自宅のオーディオセットで長大なブルックナーの曲を通しで聴ける忍耐力もなく、ブルックナーは最近は専らコンサートで楽しんでいます。ふとしたことから2010年に読響のスクロヴァチェフスキの8番のコンサートに行き、あまりの熱演に腰を抜かして、以来スクロヴァチェフスキのブルックナーはほとんど聴いています。一度東京芸術劇場での7番を、チケットはとってあったのに仕事で行けなかったのが痛恨事でした。コンサートレポートも随分書いています。

2014/10/10 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/読響のブルックナー&ベートーヴェン!(サントリーホール)
2013/10/13 : コンサートレポート : 90歳のスクロヴァチェフスキ/読響/サントリーホール
2012/09/30 : コンサートレポート : 東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

今日の東京は夜は雪の予報。この重要なコンサートに万が一にも遅れてはならぬということで、いつもよりも余裕をもって出かけ、東京オペラシティには開場の30分前には到着。

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周りをうろついているうちに開場時刻となり、ホールに戻ってみると、すでにごった返していました。

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ベストコンディションにコンサートに臨むため、赤ワインにエスプレッソを煽り、脳の神経が最も冴え渡るよう体調をコントロール(笑)

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久々のオペラシティですが、1階の平土間席はあまり好きでないため、サントリーホールの定番席同様、2階席の右側、指揮者とオケを右から見下ろす席をとりました。(写真は2階席正面奥からのもの)

流石にスクロヴァチェフスキのコンサートということで、客席は満席。開演時刻をすこし過ぎたところで場内の照明が落ち、オケのメンバーとこの日のコンサートマスターの長原さんが登壇してチューニング。この開演前のそわそわした雰囲気はいいものですね。そしてスクロヴァチェフスキがステージに姿を見せたとたん割れんばかりの拍手が降り注ぎます。以前から登壇の時は足が悪そうで引きずっていましたが、今回は右足が曲がらないのか、かなり引きずるようす。それでもゆっくりゆっくり自分で歩いて指揮台に登り、いつものように気さくな笑顔で拍手に応えます。実際に姿をみてようやく安心。

そして独特の短い指揮棒を振り下ろすや否や、脚の悪さなど微塵も感じさせない矍鑠とした指揮姿を見せ、オケから荘重な響きを引き出します。今日の演奏、スクロヴァチェフスキも読響も神がったような素晴らしい集中力。指揮台には譜面台と楽譜が置かれていましたが、一度も開くことなく、すべて暗譜で指揮

1楽章からオケは乱れることなくスクロヴァチェフスキの指示に完璧に応え、表現は精緻さを優先させ、スクロヴァチェフスキとしてはやや抑え気味。読響は特にヴァイオリンをはじめとした弦楽器陣のビロードのように揃ったトレモロの演奏が秀逸、金管陣もほとんど乱れることなくバリバリと号砲で迫力を加えます。ティンパニは溜めの効いたバチさばきの岡田さんではなく武藤さんという人で、シャープなリズムでさらりとこなします。メロディーを歌わせるところの朗々とした表情と、全奏部の圧倒的な力感、そして時折すっと静寂に沈むところを自在にコントロールしていくのはスクロヴァチェフスキならでは。2楽章まではセッション録音の演奏のように完璧な演奏でしたが、様相が一変したのが3楽章のアダージョから。それまでも素晴らしい演奏だったんですが、アダージョはスクロヴァチェフスキの面目躍如。表現の幅が一段と大きくなり、ホール内もスクロヴァチェフスキの棒に完全にのまれます。深々と鳴動するフレーズ。ホールに響き渡る轟音。そして完全にそろった3台のハープから流れる美しいメロディー。爆音の後、静寂に吸い込まれていく余韻。長大な3楽章を何度も峠を越えながら終盤のクライマックスに向けて盛り上げていく手腕は見事。しかもずっと立ちっぱなしでの指揮にもかかわらず、まったく疲れを感じさせない矍鑠としたスクロヴァチェフスキ。オケに緻密に指示を出しながらものすごいダイナミックレンジを制御します。このアダージョの神々しさは今まで聴いたことのない高みに達していました。
フィナーレの冒頭の喧騒は、テンポを上げて火の玉のようなオケのパワーで圧倒。アダージョとの対比からか、全般に速めに曲をすすめますが、終盤に至り、天上から光が差すように荘厳な雰囲気を作り、最後の号砲を轟かせて終わります。

静寂を突き破るようにフラインブブラボーと拍手が降り注ぎますが、スクロヴァチェフスキは微動だにせず無視。それを見てお客さんが静寂にもどってようやくタクトを置くと、ホールをつんざくような拍手とブラヴォーが降り注ぎ、ようやくスクロヴァチェフスキが拍手に応えます。タクトを置くのを我慢できない一部のお客さんのイマイチなマナーを、さらりと制するスクロヴァチェフスキの粋なさばきに皆笑顔に戻りました。もちろん客席は総立ちで92歳の老指揮者の渾身の名演を讃えます。袖に下がるときはもちろん脚をひきずりながらゆっくり歩いてですが、この名演に拍手がやむはずもなく、オケのメンバーを讃え、お客さんの拍手に応えて何度もステージ上に呼び戻されていました。最後はオケのメンバーが下がったあとも2度ほどステージに昇り、胸に手を当てて深々と笑顔で挨拶する姿が感動的でした。

この奇跡のような素晴らしい時間。指揮棒ひとつで全ての観客の心を奪う大伽藍のような音楽を繰り出ますが、どこにも媚びたところもなく、純粋無垢な音楽が次から次へお湧き出てくるような素晴らしい説得力。再度来日する機会があるのでしょうか。92歳という年齢からすると可能性は低くなってくるかもしれませんが、できればもう1度、奇跡の時間を味わいたいものです。

2日前の東京芸術劇場でのコンサートにはNHKの収録が入ったとのことですので、放送があるかもしれませんね。生とは迫力がちがいますが、スクロヴァチェフスキという人の真価を知るにはいいものだとおもいますので、コンサートを聴かれていない方は放送にご期待ください。

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tag : 東京オペラシティ ブルックナー

ユベール・スダーン/東京交響楽団のオール・ハイドン・プログラム(東京オペラシティ)

先日ブログのコメントでSOSさんから情報をいただたハイドンのコンサート、行ってきました!

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コンサート情報 | 東京交響楽団 TOKYO SYMPHONY ORCHESTRA

3月22日(土)東京オペラシティで行われた東京交響楽団による「東京オペラシティシリーズ 第78回」。指揮は東京交響楽団の音楽監督ユベール・スダーン(Hubert Soudant)、フォルテピアノがピート・クイケン(Piet Kuijken)、コンサートマスターはグレブ・ニキティン(Greb Nikitin)。プログラムは下記のとおり。

ハイドン:交響曲 第1番 ニ長調 Hob.I:1
ハイドン:ピアノ協奏曲 ハ長調 Hob.XVIII:5
ハイドン:ピアノ協奏曲 ニ長調 Hob.XVIII:11 op.21
ハイドン:交響曲 第104番 ニ長調 Hob.I:104 「ロンドン」

ということで、日本では非常に珍しいオール・ハイドン・プログラム。プログラム構成も企画意図を感じさせる、交響曲の父と呼ばれるハイドンの交響曲1番ではじまり、最後はハイドン最後の交響曲104番で終わるというもの。間にクラヴィーアのための協奏曲2曲を挟んだという、まさにハイドンファン向けのプログラム。

普段はあまり熱心にコンサート情報をチェックしていないため、コンサートに出かけるときも、行き当たりばったりですが、ブログに寄せられた情報を見て、これは行かねばならないコンサートであるとピンときたもの。というのも、東京交響楽団ははじめて聴くオケ(当初東京都交響楽団と勘違いしていました)、そして指揮者のユベール・スダーンもはじめて聴く人ながら、このハイドン愛に満ちたプログラムを組むとあっては、ハイドンマニアを自負する私が聴きにいかないわけにはいきません。加えて、東京交響楽団の音楽監督を2004年から続けてきたユベール・スダーンは今月でその座を降り、後任のジョナサン・ノットに譲るとのこと。自身の10年のキャリアを終える時期にオール・ハイドン・プログラムを組むと言う事はよほどのこと。ユベール・スダーンと言う人がハイドンをどう振るのか興味は尽きません。

ユベール・スダーンは1946年、オランダの南端、マーストリヒト生まれの指揮者。当初ホルンを学びホルン奏者として活躍していましたが指揮者に転向。ブサンソン国際指揮者コンクールで優勝、カラヤン国際指揮者コンクール2位、グイド・カンテルリ国際コンクール優勝などの受賞歴があります。1994年から2004年まで、フランス国立ペイ・ドゥ・ラ・ロワール管弦楽団の音楽監督、同じく1994年から2004年まで、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団の音楽監督などをつとめ、2004年から東京交響楽団の音楽監督に就任しています。2004年7月にはザルツブルク市名誉市民となり、またオーストリア・ザルツブルク州ゴールデン勲章を授与されているそうです。ハイドンやモーツァルトなど古典を得意とするのはザルツブルクでの経験があってのことと想像されます。まさに本場もののハイドンを知る人ということでしょう。

まさに、今日のハイドンは古典の矜持を守るハイドンという趣でした。



今日はもともと歌舞伎に行く予定だったため、急遽歌舞伎のチケットを嫁さんの友人に譲り、私のみこのコンサートへ。ということで、通い慣れた東京オペラシティに向かいます。開演は14:00。幸い天気も良く、不幸にして花粉飛びまくりのなか、小田急線の参宮橋駅から歩いてオペラシティに向かいます。

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参宮橋駅から10分くらいなので開場時刻ちょうどのタイミングでオペラシティのタケミツメモリアルホールに到着します。

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一人だったのと、車ではないので、安心してワインを楽しめます(笑)

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今日の入りは9割強。私ははじめてですが、東京交響楽団も常連さんが多いようで、ここ10年親しんだユベール・スダーンの最後とあって、お客さんも名残り惜しそう。

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今日の席は2回席右奥。そう、サントリーホールでお気に入りの位置ですが、先日デニス・ラッセル・デイヴィス/読響の第九に母親連れで来た時にはじめてこのホールの2階の席をとり、こちらも1階席よりも見やすく、音もダイレクトに響くということで、狙っていた席です。ご覧のようにステージを直下に見下ろすなかなかいい眺めの席。



さて、定刻の14:00となり、奏者が入場してきます。こちらもはじめて聴く指揮者とオケへの期待で、ちょっといい緊張感。グラス一杯のワインで、聴覚も鋭敏になっています。スダーン入場で、開場からは割れんばかりの拍手が降り注ぎます。

Hob.I:1 / Symphony No.1 [D] (before 1759)
コンサートでは滅多に演奏されないであろう、交響曲1番。頭のなかではやはりドラティの快活な演奏が刷り込まれています。指揮棒をもたずにスダーンがさっと手をあげると、オケから、ドラティ以上の快活さでリズミカルな1楽章が流れ出します。クッキリとリズムの線を明確した折り目正しい演奏。流石モーツァルテウムで鍛えられた人の音楽と腑に落ちます。オーソドックスな演奏ながら、そこここにアクセントをつけて、スタティックな躍動感と言えばいいのでしょうか、カッチリしながらも推進力をもったバランスの良い演奏でした。特にヴァイオリンパートはコンサートマスターのニキティンがリードしてクッキリとしたアクセントを効かせます。つづくピアノ協奏曲でソロを務めるピート・クイケンが通奏低音を担当し、要所で装飾をかなり施し、華を添えますが、若干リズムが重くオケの快活さとすこし方向が違う感じを残します。管楽器陣はホルンが少し音をはずしたのと、オーボエが少し固い他、安定していい演奏。1番は流石の出来で、ハイドンらしい快活さとバランスの良さが印象的な演奏でした。

Hob.XVIII:5 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [C] (before 1763)
つづく協奏曲は、ステージ上から奏者が何人か下がり、ぐっと小編成となります。この曲はオルガンソロで演奏されることが多い曲ですが、どれも快活な印象でした。スダーンはテンポをかなり落とし、また表情をかなり磨いて、快活さよりもあえてしっとりとした表情を出そうとしているようでした。ソロのピート・クイケンはヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のヴィーラント・クイケンの次男とのこと。クイケン兄弟といえば竹を割ったような直裁なリズム感と淡々と語るなかから滲み出る音楽が特徴ですが、息子世代のピート・クイケンの音楽はかなり異なり、即興的にばらつくタッチと重めのリズムで、じっくりと音楽を奏でるもの。交響曲1番での快活さを考えると、スダーンはこの曲ではピート・クイケンに合わせてしっとりしたコントロールに振ったのかもしれません。クイケンはこうした音楽性からか、オケとすこし合わずに指がまわっていないように聴こえる部分もあるなど、本調子でなかったかもしれません。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
ステージ上に先程下がったオケの団員が戻り、編成が少し大きくなります。ハイドンのピアノ協奏曲と言えばこの曲。冒頭のオケは一転して鮮烈かつリズミカルな入り。やはりスダーンのコントロールは芯がしっかりとした快活な部分の華やかさに特徴があります。オケがしっかりとリズムを刻むなか、ピート・クイケンが独特のタッチでしっとりとソロを刻みますが、オケがつくった推進力に乗り切れていない印象を残してしまう部分もあり、この辺は個性のぶつかり合いといえるほどの存在感をクイケンが残せていない印象でした。ただ、会場からあ割れんばかりの拍手が降り注ぎ、フォルテピアノソロのアンコールが演奏されました。アンコールは私の好きなアダージョ(XVIII:9)。こちらは独特の即興的なタッチで静かに弾き散らかすような演奏。演奏によっては香り立つような詩情を発する曲ですが、訥々とした別の魅力が浮かび上がったのも事実。こちらは悪くありませんでした。




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休憩を挟んで、最後はハイドン最後の交響曲。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)

ステージ上からフォルテピアノが搬出され、オケの人数がぐっと増えます。またティンパニはバロックティンパニ。ロンドンはオーソドックスながら、やはりユベール・スダーンの折り目正しさとオーケストラコントロールの素晴らしさが良く出た秀演でした。オケの規模が大きくなって、ティンパニなどが加わったせいか、冒頭から大迫力の序奏。バランス良くクッキリとメロディーを描いていくスダーンの特徴が良く出た演奏。オケの集中力に会場も固唾をのむように聴き入っているのがわかります。1楽章の終盤の怒濤の盛り上がりもバランスを崩すことなく古典の均衡を保ったもので、構築感を上手く表現していました。
素晴らしかったの続くアンダンテ。規律をたもちながらじわりじわりと盛り上がってくる曲ですが、途中から躍動する部分でのオケの音を重ねて行く部分の立体感は鳥肌がたつほど。ロンドンはどうしても1楽章と終楽章に耳がいきますが、このスダーンのアンダンテのコントロールは見事。今日一番の聴き所でした。
そしてメヌエットとフィナーレは期待通りの盛り上がり。冒頭に聴いた1番から35年以上あと、2度目のロンドン旅行の際に書かれたハイドンの交響曲の総決算たる曲ですが、構成、スケール感、メロディーラインの複雑なからまりなど、第1番交響曲とは次元の異なる仕上がり。一日のコンサートの中でハイドンの交響曲創作の歴史の始点と終点の双方を並べるあたり、ユベール・スダーンの企画意図がしっかりつたわりました。この曲ではティンパニが活躍しますが、バロックティンパニの直裁な響きが鋭い迫力につながっていました。最後はスダーンに嵐のような拍手が降り注ぎました。このオケを10年間振ってきたスダーンに対する観客の暖かい拍手が印象に残りました。

普段N響や読響はたびたび聴きに行っているのですが、はじめて聴く東京交響楽団の響きは新鮮でした。安定感のある折り目正しい弦楽器、管楽器群も総じて優秀ですが、読響などに比べると、すこし潤いに欠けるところもありました。やはりスダーンによるこの10年の取り組みの成果でしょうか、クッキリとした表情は流石に上手く、古典的な曲ではその部分はかなりのレベルにあると思います。

今日は聞き慣れたホールで、聴き慣れたハイドンの曲を、はじめての指揮者とオケで聴くと言う得難い経験でした。やはり生で聴く音楽には録音されたものとは異なる力があります。自身の最後の一連のコンサートにオール・ハイドン・プログラムをもってきたユベール・スダーンと言う人。やはりハイドンの素晴しい音楽の価値を知る人でした。ホールに鳴り響くロンドンの終楽章がもつ力、会場内の多くの人の心に、スダーンと言う人の記憶とともに残りましたね。いいコンサートでした。

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tag : 東京オペラシティ 交響曲1番 ピアノ協奏曲 ロンドン ワイン

デニス・ラッセル・デイヴィス/読響の第九(東京オペラシティ)

なんだかここ数年は、日本でのトレンドに乗って年末は第九を聴きに行くのが習わしとなっております。昨夜は初台の東京オペラシティに母親、嫁さんと3人で出かけました。

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ここ数年、第九はカンブルラン/読響、ホグウッド/N響、スクロヴァチェフスキ/N響となかなか聴き応えのあるコンサートに出かけています。今年読響の第九の指揮は、なんと、デニス・ラッセル・デイヴィス! 突然彗星のごとくハイドンの交響曲全集をリリースしたので、ハイドンマニアの方は一目置く指揮者かもしれません。ただし、わたしはこの全集はあまりお薦めしていないことからもわかるとおり、今ひとつ没入できない指揮者という印象でした。食わず嫌いは良くないということと、母親を連れて行くのにちょうど良い席が空いていたということで、急遽聴きに行くことにしました。

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第4回東京オペラシティ・プレミアムシリーズ - 読売日本交響楽団

オペラシティはクリスマスのイルミネーションで華やか。なんとなく世の中クリスマス気分ということで、開場前からいい気分。18:00の開場と同時にホワイエに入り、まずは腹ごしらえ。東京オペラシティのサンドウィッチは美味しいので、赤ワインとともに楽しみます。この開演前のちょっとざわついた雰囲気もコンサートの楽しみの一つ。

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母上君も赤ワインをいただきご機嫌です(笑)
→ 母親の友人諸氏の皆様 うちの母も元気です!

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今日は東京オペラシティではじめて2階席です。右側ステージ横でステージが俯瞰できるなかなか良い席。2階席は2列しかないので見通しも十分です。東京オペラシティは1階平土間の勾配が緩いので、なかなかステージが見えませんが、サントリーホール同様、2階席からは逆に見晴らしも良く、なかなか良い席であるのがわかりました。何よりいいのが2階にもビュッフェがあり、こちらのほうがゆっくりできること。これは今回新発見。

プログラムは上のリンク先を参照いただきたいのですが、第九の前に読響メンバーによる室内楽が演奏されました。ヴィオラ四重奏とチェロ四重奏。とくにヴィオラ四重奏は普段脇役のヴィオラの趣深い音色が味わえる素晴しい演奏でした。これはなかなか良い試みですね。

短い休憩を挟んで第九に入ります。

東京オペラシティは普段良く行くサントリーホールよりも体積がだいぶ小さいのでオケが良く響き渡り、迫力もアップ。

デニス・ラッセル・デイヴィスはジャケット写真などの印象では、強面ですが、意外に背が低く、動きもかなり細かいためなんとなく想像したのと異なる印象でした。

1楽章はちょっと力が入り過ぎて、かなり表情が固い印象。リズムをクッキリ描いて行くスタイルはハイドンの交響曲の録音からも想像できましたが、リズムやメロディーを受け継ぐ部分のつながりがぎこちない感じ。ちょっと単調なところがあり、かなり力で押し通すような1楽章。ただしティンパニや低音弦をかなり鳴らして迫力は尋常ではありません。ちょっとこの先どうなるのだろうと不安な印象もありました。
印象が一変したのがつづくスケルツォ。いままでのぎこちなさがウソのように、スケルツォはタイトに引き締まりまくった素晴しい演奏。デイヴィスの力の入ったコントロールがこんどは良い方向に作用して、未曾有の迫力。楽章間でこれほど印象の変わる第九ははじめてです。
アダージョは速めにくるだろうと想像していましたが、これまた予想とかなり異なり、歌う歌う。現代風のタイトなアダージョではなく、美しいメロディーを弦楽器が雄弁に表現。ここにきてデイヴィスの指揮もかなり柔らかくなり、各パートに的確に指示を出しながら音楽を紡いでゆきます。
圧巻は終楽章。これはかなり確信犯的演出です。入りは速目でタイトながら、歓喜の歌のフレーズがはじまった途端、白亜の大神殿が出現するように象徴的に巨大な構造物を表現するようにがっちりと構造を描いて行きます。この終楽章の象徴的にデフォルメした構造の表現こそ、現代音楽まで得意とするデイヴィスの描く第九の真髄だったと気づきます。今日のソロはオール日本人キャストでしたが、とくにバリトンの与那城敬さんは素晴しい声量で、ソロの入りの一瞬でホールの観客を釘付けにする素晴しく朗々とした歌唱でした。そしてコーラスは新国立劇場合唱団。ホールが狭いせいか、コーラスは怒濤の迫力。声が一つにそろって素晴しい精度。母親も仕切りにコーラスをほめていました。デイヴィスの指揮は終楽章に入ると自在さを増し、基本的に速めのテンポながら、時折現代音楽のような峻厳さを感じさせるほどテンポを落とす場面もあり、聴衆を引き込んでいきます。最後は爆風のような迫力でオケが爆発。開場もまさに割れんばかりの拍手で熱演に応えていました。今日もティンパニの岡田さんは見事。母親も「太鼓ぴったりだった」感心しきり。生のオーケストラの大迫力にはじめてふれて、痺れていました。

私もデイヴィスをちょっと見直しました。聴衆の鳴り止まない拍手に深く深く礼をする誠実な姿が印象的でした。第九の演奏としてはかなりユニークなものでしょうが、デイヴィスの狙いは良くわかりました。やはり現代音楽を理解する視点からみたベートーヴェンのあり方をよく考えての設計でしょう。なかなか楽しめました。なにより母親がいたく感激していたのが嬉しかったですね。

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ゆったりとコンサートを楽しんで、お客さんが引けたホワイエのクリスマスツリーをパチリ。良いコンサートでした。

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tag : 東京オペラシティ ベートーヴェン 第九 読売日響

東京オペラシティでスクロヴァチェフスキ/読響の英雄に打たれる

今日は台風17号迫る中、以前からチケットを取ってあったコンサートに。

第147回オペラシティ・マチネーシリーズ-読売日本交響楽団

スクロヴァチェフスキはハイドンを振る訳ではありませんが、以前に行ったコンサートはどれも素晴らしく、年齢が信じられないほどの活き活きとした音楽を楽しめるので、やはりコンサートには足が向きます。これで4回目のスクロヴァチェフスキのコンサートです。

2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/10/19 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演
2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ

今日は東京オペラシティでのベートーヴェンの2番と3番「英雄」という正統派プログラム。ベートーヴェンの交響曲でも2番はハイドン時代の構成の延長にある曲なので好きな曲。そして英雄はハイドンが到達した交響曲の高みに対して、次元を超える創造で新境地を切り開いた曲でしょう。この名曲をスクロヴァチェフスキがどう料理するのか、期待は高まります。

今日の東京はお昼までは台風襲来を感じさせない平常を保っていました。開場のだいぶ前にオペラシティについて、ホールの下の階にある本屋さんで少々のんびり。英気十分で開場を待ちました。

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もちろん開場後、すぐにビュッフェに立ち寄り、珈琲と赤ワインで喉を潤します。

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今日の赤ワインは勝沼、鳥居平の「鳥居平ルージュ」。山梨特産のブラック・クィーンのワイン。こうして音楽ホールでも国産のワインを名前を出して給するようになったんですね。口当たりが柔らかい優しい味の赤ワインでした。

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開演前に練習するステージ上の奏者たち。今日の席は1階の右前の方。

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ついでに、上方をパチリ。東京オペラシティのタケミツ・メモリアル・ホールの高い天井。この時間はまだ台風の影響もなくホール内はこれから起こるただならぬ演奏を待つ、まさに嵐の前の静けさの状況。



開演時間である14:00の少し前に、ステージ上には読売日本交響楽団の団員が登場しだします。1曲目はベートーヴェンの2番。つづく3番のために少し席を残した規模のオーケストラ。

ベートーヴェンの交響曲2番は1801年から2年の作曲で、初演は1903年4月5日、アン・デア・ウィーン劇場とのこと。1803年といえば、ハイドン最後の作品である弦楽四重奏曲Op.103が作曲された年。

この日のコンサートマスターはデヴィッド・ノーランさん。いつものように調律が終わると、袖から元気そうなスクロヴァチェフスキさん登場で、拍手喝采。指揮台に登る時に脚を気にする様子は、以前と変わりません。演奏前なのに万来の拍手を浴びて、にこやかに応ずる様子もいつも通りで一安心。

2番は、最初の一音から最後まで、圧巻の出来でした。いつもハイドンばかり聴いている私の耳には、交響曲というジャンルを確立したハイドンのなし得た偉業を、新しい世代が、これまでとは異なる次元の力感を込めて超えていった様子が手に取るようにわかる演奏でした。
スクロヴァチェフスキらしい、引き締まった響きと、時折聴かせる弦楽器のうなりを伴うような深い響きで、ベートーヴェンの初期の交響曲を描いていきます。1楽章は長い序奏をじっくりと聴かせたあと、主題に入ると、テンポを上げ、アポロン的な均衡を保ちながら、沸き上がる力感をじっくり描いていきます。スピーディにまとめる演奏が多い中、スクロヴァチェフスキはスピーディななかに、ミケランジェロの彫刻のように筋肉のディティールをデフォルメするように強調しながら、全体のバランスを躍動的に描くような演奏。スクロヴァチェフスキ流のデュナーミクの変化が引き締まった表情を保ち、徐々にエネルギーを増していくようになり、クライマックスではスクロヴァチェフスキは両手を震えるように振り上げて、オケを煽りまくり、もの凄いエネルギーを引き出します。
2楽章のラルゲットはスクロヴァチェフスキの真骨頂。時折まるでブルックナーのアダージョのような深い響きを時折聴かせながらも引き締まった規律を保った演奏。後半の盛り上がりはまさにブルックナーの大伽藍を思わせる神々しさ。ベートーヴェンの2番からこのような荘厳な響きを聴けるとは思いませんでした。
3楽章のスケルツォはハイドン時代のメヌエットによる均衡から一段と力の表現が濃くなり、オケは、エネルギーの塊のように荒れ狂います。つづくフィナーレもあわせて、徐々にクライマックスにいたる大きな流れをつくり、頂点を鮮明に意識して、スロットルを少しづつ開いていきます。静と動の変化も巧みにコントロールして、豊かな表情と引き締まった響きを両立した素晴らしい感興。いやいや、ここまでの高みに至るとは。1曲目なのに割れんばかりの嵐のような拍手に迎えられます。スクロヴァチェフスキさん、満面の笑顔で拍手に応えます。

休憩を挟んで、今日の本命、英雄です。作曲は1802年から4年、初演は1904年12月、ロプコヴィッツ伯爵邸でということです。ロプコヴィッツ伯爵はハイドンが弦楽四重奏曲Op.77を献呈した人です。

こちらは、さらなる高みに。まずは、英雄の最初の一撃の集中力、凝縮感に圧倒されます。スクロヴァチェフスキは震えるようにタクトを振り上げ、素人にはどこで入るのか全くわからないタイミングでの入り。この一音、というかニ音ですが、響きの緊張感はただならぬもの。最初の一撃のみで、開場の聴衆の耳を鷲掴みにします。以降は2番と同様、引き締まった響きで音楽をつくっていきますが、聴き進むうちに2番はそれでも抑制していたことがわかります。要所で見せるスケールの大きさは2番とはやはり差がつきます。オケの編成も少し大きくなり、コントラバスの図太く深い響きや、オーボエの美しい響きが音色の幅を広げています。1楽章は寄せては返す大波のように何度かの盛り上がりのあと、最後のクライマックスはそれまでの音楽の造りも含めて、素晴らしい上昇感と力感。CDで聴くのも悪くありませんが、やはり渾身の生は違いますね。
2楽章の葬送行進曲は、実に深いフレージングでじっくりと攻め込みます。静寂と弦楽器の唸るような響きの繰り返しはやはりスクロヴァチェフスキの得意とするブルックナーのアダージョを思わせるもの。ただ、ブルックナーの響きに没入するような圧倒的な轟音とは異なり、古典の均衡をきっちり意識して、ベートーヴェンらしさも保っています。
スケルツォはホルンの名旋律で知られますが、この日の読響のホルンは絶妙な上手さ。スクロヴァチェフスキの渾身の指揮に奏者が完璧な演奏で応えます。今日はミスらしいミスはなく、読響は素晴らしい演奏で華を添えています。
そしてフィナーレはスクロヴァチェフスキ圧巻のコントロール。とくに極端にテンポを落とすさざめくような場面を意識的に作って、盛り上がりを演出するあたりは、並の指揮者とは異なります。完全にスクロヴァチェフスキのベートーヴェンになっていました。長大な英雄ですが、引き締まってかつ、彫りの深い音楽として、実に聴き応えのあるものでした。最後は嵐のような拍手とブラヴォーに何度も呼び返され、今日の充実振りを楽しむようなスクロヴァチェフスキの笑顔が印象的でした。コンサートマスターのデヴィッド・ノーランとガッチリ握手してずいぶんにこやかに話していたところをみると、今日の演奏はスクロヴァチェフスキにとっても納得の演奏だったのでしょう。

今日は素晴らしいベートーヴェンでした。おそらくテレビでも放送されるでしょうから、このコンサートを聴けなかった人にもこの様子を味わってほしいですね。昨年末に聴いたN響との第九も素晴らしいものでしたが、振り慣れた読響との2番と英雄はそれを上回る出来と言えるでしょう。

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今日は9割5分の入りというところでしょう。心なしか年配者が多かったようですが、皆さん満足げに開場を後にされていました。

いつもだと、このあと食事をして帰るのですが、今日は台風接近に備えて、おとなしく家路につきました。明日からまた、忙しい仕事ですね、、、

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スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演

今日は東京オペラシティでコンサート。

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東京オペラシティ文化財団:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮のザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニーの東京公演。プログラムはモーツァルトの交響曲41番「ジュピター」とブルックナーの交響曲4番「ロマンティック」。

スクロヴァチェフスキのコンサートは昨年3月に読売日本交響楽団の音楽監督最後の公演でブルックナーの8番を聴き、生のオーケストラの大伽藍を満喫しました。今度はおなじみのオケとの組み合わせでの公演と知り、チケットをとってあったもの。スクロヴァチェフスキの年齢を考えると、もう何度も聴けないとの思いもあります。以前のコンサートレポートはこちら。

2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ



久々のオペラシティ。今日は仕事が予定通り終わったので、オペラシティには開場間もなくの時間に到着。

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いつも通り、オペラシティのカフェでサンドウィッチと白ワイン、嫁さんはコーヒーで腹ごしらえ。入口でもらったチラシ等をちらちら見ながらワインでいい気分。オペラシティは規模が大きすぎず、落ち着いた雰囲気がいいですね。

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今日の席は右側前から数列のいい席。いつものように開演前のざわめきを楽しみながらのんびりと待ちます。開演前のステージをこっそりパチリ。今日は指揮台の周囲に4本のマイクが立てられていましたので、ライヴ収録があるようですね。終演後ドイツの放送局が録音していたとの張り紙がしてありました。

お客さんの入りは前の方が少し空いていましたが、程よく埋まってちょうどいい感じ。

定刻を少し過ぎたころにオケがステージに上がります。最初はジュピターなので編成は大きくありません。オケがそろって2段階のチューニングが終わったところで、割れんばかりの拍手のなかスクロバチェフスキが登場。1923年生まれということで88歳! お元気そうではありますが、指揮台に登るときに手すりに頼らないと登れなさそうなところに年齢を感じます。

独特の短い指揮棒を振り上げた途端、引き締まったジュピターの1楽章がはじまります。音楽がはじまるととても88歳という年齢が信じられない機敏な動き。ジュピターは速めのテンポでドイツの重厚さを感じさせながらも非常に引き締まったタイトな響き。下手な若手の指揮よりもよほど若々しい響きに驚きます。ノンヴィブラートだったりするようなことはなく、新しいスタイルではありませんが、キビキビとしたフレージングと独特のメリハリ、アクセントが音楽を活き活きとさせています。3楽章までは、それでもエンジン全開前のならし運転のような風情もありましたが、終楽章に入ると、異次元の迫力。テンポは一層速まり、アクセントのキレも最高。そしてオケから放たれる凄まじいエネルギー。アポロン神殿のような均整のとれた古典的姿ではなく、畳み掛けるエクスタシーのような終楽章。モーツァルトの天才的は音楽がスクロヴァチェフスキの魔術で古典的均整を越えたデフォルメすら感じさせるエネルギーの塊のようなフィナーレとなりました。前半のプログラムから嵐のような拍手とブラヴォー。恐ろしいエネルギーにしばし放心。

休憩にはいると早速ステージ一杯にオケの座席を拡張。後半のブルックナーは私の聴いたコンサートでは間違いなく一番の出来。号砲と静寂、祈りにも似た深い弦の響き。ブルックナーの交響曲の録音では伝わなない殺気のようなものまで感じさせる素晴らしい体験でした。

1楽章はステージ全体から発せられる抑えこんださざ波のようなトレモロにホルンの聞き慣れたフレーズ。会場の霧のような静寂からほのかに光が射すようなブルックナー特有の開始。録音で聴くのとは明らかに異なる気配。冒頭からフルオーケストラが振り切れるような号砲とスクロヴァチェフスキ特有のドイツ風ながら伸びのある弦のメロディーが繰り返され、いきなりブルックナーの大伽藍が眼前に出現。ジュピターとは逆にゆったりしたテンポとスクロヴァチェフスキ流の間を挟んだ流れのよいフレージングでブルックナーの名旋律をたどって行きます。長大な1楽章だけでも壮大な建築物を眺めるような緊密な構築感。今日はオーケストラのノリもよく、ヴァイオリンパートは素晴らしく深いフレージング。そしてブルックナーのメロディを奏でるのに最も特徴的なのがヴィオラ。今日はヴィオラもキレていました。ホルンは非常に安定した演奏。右サイドだったのでコントラバスも素晴らしいメリハリを表現しているのが良く聴こえました。
2楽章はピチカートを多用して朴訥なメロディーを浮かび上がらせます。終盤の盛り上がりは素晴らしい効果。フルオーケストラの号砲とその消え入る余韻までのタケミツメモリアルの空間に響き渡る余韻。オーケストラの醍醐味を満喫。3楽章は何度もオーケストラが爆発。3楽章が終わるとスクロヴァチェフスキは眼鏡をはずして汗を拭くほど。
そしてフィナーレは宇宙との交信のごとき超絶的な音楽。最後の一音がなり終わった後はしばしの静寂。スクロヴァチェフスキが手をおろしてようやく拍手とブラヴォーの嵐。オケのメンバーの快心の笑顔が今日の出来を物語っていましたね。スクロヴァチェフスキはやはりオーケストラコントロールの達人ですね。

今日はオペラシティのホールが吹き飛ばんばかりの素晴らしい迫力でした。何度もステージに呼び戻されブラヴォーの嵐。最後はオケが出払った後も、今日大活躍の首席ホルン奏者やコンサートマスターと一緒に拍手に応じていました。今日は心に残るいいコンサートでした。



コンサート前のサンドウィッチももう消化済み。それゆえオペラシティの地下鉄からの入口の横にあるインドカレーで嫁さんと反省会。

食べログ:ガンジス 初台オペラシティ店

IMG_2260.jpg

もちろん、生ビール。嫁さんはマンゴビール(笑)

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カレーのセットを頼んだら出てきた野菜スープ(ニンニク風味)。なかなか旨い。

IMG_2262.jpg

ナンとご飯にカレー2種、タンドリーチキンのようなものにサラダまでついています。カレーはマイルド系ながら生姜が効いていました。なかなかのお味でしたね。



今日は十分いいコンサートを堪能できました。明日からまた仕事ですね。ふぅ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : カレー ビール 外食 モーツァルト ブルックナー 東京オペラシティ

シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンドのブランデンブルク協奏曲

今日は、東京オペラシティ、タケミツメモリアルホールのコンサートへ。

LaPetittBand20110702.jpg
カメラータ:ラ・プティット・バンド バッハ・コレクション

クラッシックのアルバムを出しているレーベルとしても有名なカメラータが招聘元。今日のプログラムは次の通り。

J.S.Bach
ブランデンブルク協奏曲 第2番 ヘ長調 BWV1047
ブランデンブルク協奏曲 第6番 変ロ長調 BWV1051
三重協奏曲 イ短調 BWV1044
ブランデンブルク協奏曲 第5番 ニ長調 BWV1050
ブランデンブルク協奏曲 第3番 ト長調 BWV1048

バッハのブランデンブルク協奏曲を中心にしたプログラム。今日は土曜で3時開演。いつものように30分ほど前にホールについて、まずはサンドウィッチとビールで喉を潤します。

IMG_1829.jpg

サントリーホールだと好きなプレミアムモルツですが、オペラシティはエビス。良く冷えたグラスとともにビールの小瓶が供されます。嫁さんはいつも通りコーヒー。オペラシティのサンドウィッチはなかなかしっかりしていて、コンサート会場でいただくものとしては悪くありません。嫁さんと2人で一箱いただくとちょうど良いヴォリューム。

最近行くコンサートは空席が目立つものが多かったんですが、今日はほぼ満席。ステージ上ではハープシコードを丹念に調律しています。イスがなく譜面台がハープシコードのまわりに数台集中して置かれており、少人数の演奏であることがわかります。コンサート前のざわめきを楽しみながら、開演を待ちます。

陽の高いうちのコンサート。タケミツメモリアルホールの天井には空が見えるトップライトがあります。最初は空が見えていたんですが、開演を知らせるよう場内の照明が徐々に落とされた後見上げると、トップライトも塞がれてました。電動スクリーンのようなものがあるんでしょう。

拍手とともに奏者がステージに登壇し、じっくり調弦。いいですね、この間。

1曲目はブランデンブルク協奏曲2番。ハープシコードの他は6~7名だったでしょうか。ホールの大きさにしては音量がやはり小さめで最初は迫力不足かと思いましたが、演奏に聴き入るうちに雅な音色に耳を奪われます。圧巻はトランペット(F管だそうです)。古楽器のキーのないトランペットを片手でかなり上向きにかまえ、残りの手は腰に。そう、日本人が銭湯で牛乳を飲む時のあの決めポーズです。キーのないトランペットで朗々とメロディーを吹き進めていきます。もちろんキーのない楽器ゆえ時折音程が乱れますが、生だけに素晴らしい覇気。トランペットの登場はこの曲のみでしたが、バッハの名旋律を堪能できました。
オケの方はまだアイドリングのような感じ。シギスヴァルト・クイケンはなんとヴァイオリンではなくスッパラで登場。本来チェロで弾くところを1オクターブ高いスッパラという楽器で弾きます。ヴィオラよりちょっと大きめの楽器を首からバンドで下げて、弓で弾くというスタイルです。クイケンのアルバムはいろいろ聴いてますが、やはり構えなくすっと自然に演奏するスタイルが多いようです。1曲目は、まさに何事もなかったように、しかもステージで演奏するという構えもなく、毎日の練習のように入ります。まだまだ、暖まりきらないのかちょっとキレが悪く、音程も少しふらつく感じでした。

2曲目はブランデンブルク協奏曲6番。曲間に譜面台を動かし、この曲用の配置に。この曲では2台のチェロが入りヴァイオリンはなし。中低音楽器のみのアンサンブル。今日は双眼鏡を持っていったので、演奏をよく見ていると、弓の毛でしょうか、その張りがかなり柔らかそう。これも音色に影響していそうですね。ヴィオラ、チェロなど現代楽器だとかなり張りのある鋭さを感じる音色ですが、今日のラ・プティット・バンドはかなり柔らかい音。しかも調律も低そうですね。オケはまだまだ、本調子というより準備体操といった雰囲気でした。

そして休憩前の最後は三重協奏曲イ短調。この曲でちょっとしたアクシデント。1楽章の後半に入ったところで、この曲からヴァイオリンを持ったシギスヴァルト・クイケンの弦がビシッという音ともにきれてしまい、演奏は中断。クイケンのみステージを降り弦を張り替えているんでしょう。ステージ上ではメンバーがにこやかに談笑してクイケンを待ちます。数分の中断でしたでしょうか。この間のようすを観客もおおらかに楽しむよう。古楽器の演奏では弦が切れることも少なくないのでしょうか。日常の出来事のように淡々とした表情で待つメンバーの振る舞いに音楽文化の深さを感じましたね。

クイケンが再登場して、場内に何やら一言で、会場がわっと湧いて、3曲目を最初からやり直し。ここからオケにエンジンがかかったように緊張感が張りつめます。1楽章は短調の曲ゆえストイックなバッハ独特のメロディーが続き、2楽章はクイケンを含むソロの部分が長く聴き応えがあります。終楽章は再び弦楽アンサンブルとフルート・トラヴェルソの共演。この曲はバッハの音楽の峻厳さが際立ついい演奏でした。結果的には弦が切れたことで、オケの目が覚めた感じでしょう。

さきほどビールを楽しんだので、休憩時間はのんびり過ごします。お客さんの入りがいいのでホワイエはかなりにぎやかでした。

後半は、ブランデンブルク協奏曲の5番から。この曲は私はグールドのライヴを偏愛しています。1楽章の途中で狂気を帯びたようなグールドのピアノが切れまくり、あまりの覚醒ぶりにシナプスからアドレナリンが噴出するような演奏。バッハの音楽をヘヴィー・メタルな皆さんもリスペクトする理由がわかるよう。この曲の音符には狂気が宿っているんですね。

5番は抜群の出来でした。休憩開けから聴き慣れたメロディが柔らかな音色のオケによって、クッキリと浮かび上がり、またハープシコードを担当したベンジャミン・アラード(Benjamin Alard)が素晴らしいキレ。古楽器の演奏ゆえグールドの狂気とは異なりますが、ソロの部分のエクスタシー感は素晴らしいものがありました。

最後はブランデンブルク協奏曲3番。今日の1曲目と同様、この日の最大編成で登場。ハープシコードの反響版(ふた)をはずし、ハープシコードの後ろに譜面台が並び替えられましたので、ハープシコードをかこんで真ん中にスッパラ3台と両側にヴァイオリン、ヴィオラ、フルート・トラヴェルソがならび、迫力の布陣。最初にトランペットを含む2番、最後に壮麗な3番をもってくるあたり、コンサートでの演奏映えをよく考えた曲順でした。演奏は今日一番の出来。全楽器が活き活きとメロディーを刻みバッハの緻密な音楽と多くの音符で編み込まれた精緻なフレーズをエネルギー感豊かに演奏。最後はブラヴォー連発。アンコールは3番の終楽章をもう一度演奏して終わりました。

終了後はサイン会があったようで、ホワイエには既にサインを待つ人の長い列ができていました。

以前にもクイケンのハイドンはこのブログでも取りあげましたが、さりげない演奏の中に深い音楽がある人だなとの印象。最近ではバッハのマタイやロ短調ミサの新譜が出ておりそちらも、ライムンドさんのブログなどで取りあげられて気になってました。やはりアルバムとは異なりコンサートでは鮮明な印象が残るもので、今日は良いコンサートでした。

今でもしぶとく聴いています:OVPPによるバッハのロ短調ミサ S.クイケン

※ライムンドさんのブログへのトラックバック誤ってましたので張り直しました(7/3)

最近でも来日予定がキャンセルされる演奏家も多いと聞いていますので、この時期の来日はなかなか大変でしたでしょう。今日はバッハの真髄に触れられ、いい思い出になりました。



コンサートが終わって、5時ごろということで、今日はオペラシティの地下の居酒屋で反省会。

食べログ:釜めし やきとり 藩 東京オペラシティ店

なにはともあれ、まずは生です。

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コンサート前はエビスでしたが、今度はモルツ。良く冷えてて美味しい。やはり日本の夏のビールはキンキンに冷えていないと。

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ビールを一気に飲み干して、すぐに日本酒です。つまみは穴子の柳川とホタルイカの沖漬け。バッハの反省会にはザウアークラウトとかの方が良いのでしょうが、もう後戻りできません(笑)
穴子の柳川がなかなかの味付けで、非常に旨い。ホタルイカの沖漬けも大根おろしとシソの葉が添えられていいですね。
あとテーブルが釿(ちょうな)仕上げの粋なもの。なかなかいい趣です。

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今日頼んだのは、仙台に住んでいたときに散々飲んだ、宮城石巻の銘酒「日高見」。震災の影響からか、品揃えの良いうちの近所の酒屋さんからも姿を消してしまい心配していたんですが、「希望の光」という震災を経たもろみを使ったお酒でした。久しぶりの日高見。慣れ親しんだ味に安堵しました。どちらかというと吟醸系のお酒。日高見の吟醸はフルーティさが際立って美味しいんですね。

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鮎の塩焼き。遠めの火で焼いたようで火の通りが絶妙。がぶりといきました。こちらも香りがあって美味。

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大根をつかった餃子。このあたりで日本酒おかわり。今度は「臥龍梅」と言うお酒。仙台では臥龍梅といえば、松島瑞巌寺なんですが、これは静岡のお酒。さきほどの日高見もフルーティでしたが、さらにキリッとしていてフルーティ。今日はあたりですね。どちらのお酒も非常に美味しかったです。

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〆は冷やし鶏蕎麦。これがまた旨い。鶏の出汁がよく利いてこくがあります。さっぱりといただけました。

藩はチェーン店ですが、味はなかなか良かったです。以後オペラシティでのコンサート後の反省会の場所として定番化しそうですね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : バッハ 居酒屋 日本酒 蕎麦 ビール 東京オペラシティ

読響最後のスクロヴァチェフスキ

今日は東京オペラシティーへ。

http://yomikyo.or.jp/2009/09/post-116.php

スクロヴァチェフスキが読売日本交響楽団の音楽監督をこの3月に退任すると聞き足を運びました。曲はブルックナーの8番。先日テレビで見た9番も非常に良かったので期待大です。

最近ハイドンやモーツァルトなどのコンサートばかりでしたので、ステージ一杯に広がる大編成オケの座席が妙に新鮮です。オケとコンマスがそろったところへ御大登壇で、興奮気味の拍手。1楽章、2楽章はオケが荒めで、ソロの入りが微妙にずれたりするところもありましたが、3楽章で一変、オケがタクトにぴたりとハマり、スクロヴァチェフスキ独特のタイトながら弦を目一杯歌わせるフレージングと静寂の織りなすコントラストが見事。3楽章のクライマックスの盛り上がりは圧巻でした。非常な盛り上がりの余韻を残したまま、4楽章へ。4楽章前半は逆に速めのテンポで曲の見通しよく進め、フィナーレに近づくにつれ、腰を落とし、最後は壮麗なエンディング。割れんばかりの拍手とブラヴォーの嵐となりました。アンコールがなかったのも曲の余韻が残って良かったです。

年齢が信じられないほどの機敏な指揮ぶりと、この大曲を情緒に傾かず、タイトにまとめあげる音楽性、謙虚なステージマナー。ファンがつかない訳はありませんね。斯く言う私も好きな指揮者の一人です。以前N響を振った第九の超名演を放送で見てから注目し、CDもベートーベンやブルックナー等いろいろ集めましたが、放送で感じられたライブの興奮は味わえません。今日はスクロヴァチェフスキの神髄にふれられた気がします。ハイドンばかりではなくたまにはブルックナーの爆音の滝に打たれるのもいいものです。今日は、わざわざ足を運んでよかったです。

高齢ゆえ、今後もコンサートや録音で良い演奏を続けていかれるよう祈るばかりですね。このBLOG的には、天地創造とか、ミサ曲などハイドンの曲にも手をだして欲しいものですね。


※今日は、3楽章の途中、場内が音楽に集中している絶妙なタイミングで前の方の席の年配の女性がコツコツ大きな靴音をたてて退席し、会場の緊張の糸を切る始末。体調が優れなかったとか理由はあると思いますが、あのタイミングであの無配慮な靴音はいけませんね。みなさん多忙ななか音楽を楽しみに集まってるわけですからね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 東京オペラシティ

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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