ウィリアム・スタインバーグ/ボストン響の「校長先生」1969年ライヴ(ハイドン)

8月最初のレビューはDVDです。

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ウィリアム・スタインバーグ(William Steinberg)指揮のボストン交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲55番「校長先生」、ベートーヴェンの交響曲7番、8番を収めたDVD。ハイドンの収録は1969年10月7日、ボストン・シンフォニー・ホールでのライヴ。レーベルはica CLASSICS。

ウィリアム・スタインバーグは日本ではあまり大きく露出された人ではありませんが、小澤征爾の前のボストン響の音楽監督だった人です。1989年、ドイツのケルン生まれの指揮者。早くからピアノ、ヴァイオリン、作曲の才能に恵まれ、ケルン音楽院でピアノや指揮を学び、特に指揮はヘルマン・アーベントロートに師事し、1919年に指揮で優秀賞を得て卒業しました。その後ケルン歌劇場の第2ヴァイオリン奏者となりますが、独自のボウイングのせいではなれ、クレンペラーのアシスタントになります。クレンペラーが1924年に去ると、首席指揮者となりました。1930年にはフランクフルト歌劇場の音楽監督に抜擢されますが1933年、彼がユダヤ人であったためその地位を追われました。そして、1936年に当時イギリスが統治していたパレスチナに移住し、同地でブロニスワフ・フーベルマンらと共にパレスチナ交響楽団(現イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団)を結成し、指揮者を務めることになります。戦後は1945年から53年までバッファロー・フィルハーモニー管弦楽団、1950年代にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、1952年から76年までのピッツバーグ交響楽団の指揮者としての活動しましたが、ボストン響の音楽監督はミュンシュ、ラインスドロフの後を受けて、1969年から72年まで務めました。スタインバーグの後は、冒頭に触れたように小沢征爾が1973年から2002年までの29年間努めていましす。ちなみにこの29年間は歴代音楽監督のなかで最長ということです。なお、息子のピンカス・スタインバーグも指揮者として活躍しており、以前、N響を振ったハイドンのロンドンの演奏をたまたまテレビで見る機会があり、覇気に満ちた素晴しい演奏だったのが印象に残っています。

今日取り上げる映像はボストン交響楽団の演奏のテレビ放映用の映像であり、しかも1960年代としては貴重なカラー映像。ボストンのシンフォニーホールでのライヴの様子がよくわかる演奏です。

Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
ステージ袖からから指揮台に上がるだけで万来の拍手。片手だけで大きな独特なアクションでオケに指示を出しますが、かなり独特な指揮で、奏者はタイミングではなくアクションからテンションの指示を受けているよう。1楽章は落ち着いたテンポでキレよくハイドンの音楽の推進力を引き出して行きます。1969年当時のボストン響のメンバーは老紳士が多く、キリリと引き締まって、かなり正統派な演奏。ヴァイオリンのボウイングはテンポの厳格さの中でも伸びやかさを失いません。音楽は折り目正しさを保ちます。
続くアダージョも、テンポはかなり遅めですが、ゆったりしながらも規律正しい感じを保っているのがスタインバーグ流でしょう。大きな独特のジェスチャーでオケに指示を出して行くスタインバーグの姿を見るのも楽しい映像。咳払いなども聴こえますがいい意味でライヴの緊張感を感じさせて悪くありません。独特の棒から繰り出される音楽は実にニュアンスが豊かで、ハイドンの音楽の微笑ましさが迸ります。
メヌエットも遅めですが、起伏は十分。テンポに安定感があるので曲のメリハリを落ち着いて楽しんでいるよう。中間部のチェロのソロもさりげない演奏ですが、大きな起伏をうまく作って音楽の面白さを際立たせます。この表情の作り方の上手さもスタインバーグの特徴の一つでしょう。
フィナーレもじっくり入ります。木管、金管ともにテンポ良くユーモラスなメロディーを重ね、徐々にオケも盛り上がっていきますが、かなり明確に強弱をコントロールして、音楽のメリハリを浮かび上がらせます。ハイドン独特の入り組んだメロディーを実に上手く重ねて、最後はきっちり片をつけます。ボストン響の奏者の笑顔がスタインバーグとの良好な関係と、演奏の出来を物語っているよう。会場も割れんばかりの拍手で迎えます。古き良き時代の素晴しいハイドンの演奏として、貴重な映像であることは間違いないでしょう。

このあと、1970年10月6日のベートーヴェンの7番(同じくボストン市ンフォニーホールでのライヴ)、1962年1月9日のベートーヴェンの8番(ハーバード大学サンダースシアターでのライヴ)が収められていますが、どちらもスタインバーグの溢れる覇気を収めた素晴しいもの。後者は白黒映像で途中に映像の乱れが散見されますが、音はかえってリアルで音楽を聴く分には問題ありません。7番も素晴しいのですが、この8番は図抜けて素晴しい演奏です。

個人的にはあまりなじみのなかったウィリアム・スタインバーグのハイドンですが、こうして映像を通して見ると、スタインバーグという人の音楽がよりリアルに感じられます。ボストン響から引き締まった素晴しい響きを引き出し、ハイドンの音楽の要であるユーモラスな表情の演出も流石というところ。他にハイドンの演奏がないか探したくなってしまいます。ちなみにこのDVDの見所はやはりベートーヴェンであり、ボストン響の素晴しい吹き上がりを堪能できます。手に入れる価値のある素晴しい映像です。「校長先生」の評価は[+++++]とします。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 校長先生 ライヴ録音 DVD

【新着】ルドルフ・ケンペ/ベルリンフィルの校長先生ライヴ(ハイドン)

TESTAMENTの新譜。いつもながら、モノクロームのジャケットから浮かび上がる奏者の写真がえも言われぬ味わい。つい手を出してしまう好企画。

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ルドルフ・ケンペ(Rudolf Kempe)指揮のベルリンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲55番「校長先生」、ベートーヴェンののピアノ協奏曲4番(独奏:ニキタ・マガロフ)、モーツァルトの交響曲39番の3曲を収めたアルバム。収録は1962年8月16日、ザルツブルクのモーツァルテウムでのライヴ。レーベルは復刻にかけては第一線の英TESTAMENT。

このアルバム、まさに入荷したてのもの。冒頭に触れたTESTAMENT独特のジャッケットに、ザルツブルク音楽祭の赤いロゴマークが燦然と輝き、演奏当時の空気をそのまま運んでくれそうな素腹らしいプロダクション。ジャケットから音楽が溢れ出してくるようです。

ケンペのハイドンの録音は少ないながらも、いくつか取りあげています。

2011/07/05 : ハイドン–交響曲 : ルドルフ・ケンペ/フィルハーモニア管1956年のロンドン
2010/10/10 : ハイドン–交響曲 : ルドルフ・ケンペのロンドン

何れもロンドンですが、フィルハーモニア管とBBC交響楽団との演奏。今回は相手がベルリンフィルで、ザルツブルク音楽祭のライヴということで、俄然期待が高まります。

Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
録音はモノラル。残念ながらかなりカマボコ型のハイ落ち、ロー落ちの録音。安定感は悪くありません。ヴォリュームを上げて演奏会場の雰囲気に近づけるよう調整。ハイドンの中期の交響曲のシンプルながら面白い表情をさらりと聴かせながら、流れの良さを印象づける正統派のもの。録音がもう少しリアリティがあれば、かなり楽しめる演奏でしょう。録音を脳内で補正して聴くと、小曲ながら表情の多彩さ、快活さはなかなかのもの。1楽章はテンポ感の良さで聴かせきってしまいます。
続くアダージョに入ると、録音のハンディがあまり目立たなくなり、ゆったりした音楽に集中することができます。校長先生という曲名の元になった規則正しい音楽。そのメロディが次々と変奏として重なりますが、その表情が実にいい。メロディーが活き活きとして、表情豊か。オケは一糸乱れることなくケンペのコントロールに忠実にメロディーを置いていきます。いつも火を噴くベルリンフィルもケンペに完全に掌握されてます。この統率力は見事で、シンプルな曲に素晴しく豊かなニュアンスが重なります。
メヌエットも旋律はシンプルなものながら、ケンペの手にかかると、その旋律が活き活きと躍動します。曲の核心をつく解釈。力が抜けているのに音楽は躍動します。途中でチェロのソロが登場しますが、軽々とした弓さばきが見事。ケンペ独特の穏やかながら活気あるコントロール。
フィナーレは敢えて力をかなり抜いて、羽毛布団のような肌触りでコミカルなメロディーを重ねていきます。このスタンスこそケンペらしいところでしょう。音楽に潜む本質的な気配を汲みとり、音にして行くセンスの鋭敏さ。この曲の機知を見事に捉えています。最後に突然クリアになってフィニッシュ。観客もそれに反応して拍手まで音楽のよう。

つづくベートーヴェンの4番のコンチェルトに入ると、ニキタ・マガロフのピアノが驚くほど鮮明に響いてビックリします。これは鮮明な録音。オケは校長先生と同様ですが、ピアノの鮮明さは驚くほど。味わい深いピアノが印象的。
そしてモーツァルトの39番は独特の高揚感と燻し銀の響きに痺れます。これも名演奏。

1962年と言えば私の生まれた年。今から51年前、ザルツブルク音楽祭の行われたモーツァルテウムの空気がそのまま家に届くような雰囲気のアルバムです。この日のコンサートではハイドンの校長先生は前座的な位置づけですが、すこしぼやけた録音を通しても、その粋な演奏の真髄は伝わります。ケンペと言う指揮者の誠実かつ曲に対する謙虚な姿勢がつたわる良いアルバムです。校長先生の評価は、録音の分差し引いて[++++]というところでしょう。このアルバム、やはり聴き所はベートーヴェンとモーツァルトです。51年前のザルツブルクを想像しながら楽しみました。

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tag : 校長先生 ライヴ録音 ヒストリカル ベルリンフィル ザルツブルク音楽祭

ウラジミール・フェドセーエフ/ウィーン響の校長先生、太鼓連打ライヴ!

ちゃんと聴いたことのない音楽家シリーズ。

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ウラジミール・フェドセーエフ(Vladimir Fedoseyev)指揮のウィーン交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲55番「校長先生」と103番「太鼓連打」の2曲を収めたアルバム。演奏は校長先生が2000年8月、太鼓連打が1998年4月、何れもウィーンのムジークフェラインの大ホールでのライヴ。レーベルはオーストリアのVMS Musical Treasuresというレーベル。

フェドセーエフはロシア系指揮者としては日本でも有名でしょう。怖い顔つきからか、スヴェトラーノフのような爆演系の指揮者というイメージがありますが、本盤の印象はきわめてオーソドックスな演奏。いつものようにWikipediaなどの情報から略歴に触れておきましょう。

1932年レニングラード(現サンクトペテルブルク)の生まれ。レニングラードのムソルグスキー学校、モスクワのグネーシン特別音楽大学、モスクワ音楽院などで音楽を学び。1971年にムラヴィンスキーにすすめられレニングラード・フィルの客演指揮者としてデビュー。その後ロシア放送民族楽器オーケストラの芸術監督を経て、モスクワ放送交響楽団の音楽監督および首席指揮者に就任。以来、現在に至るまでその立場を継続。その他世界の数々の有名オケと共演し、1995年から東京フィル首席客演指揮者、1997年から2005年まで、このアルバムのオケであるウィーン交響楽団の首席指揮者を歴任している。またオペラ指揮者としてもキーロフ劇場の他、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、フィレンツェ5月音楽祭、ローマ歌劇場、モスクワ・ボリショイ劇場などのオペラハウスで指揮を行なっているとのことで、ロシアのみならず世界中で活躍する指揮者。

このアルバムはウィーン交響楽団の首席指揮者時代のライヴということになります。フェドセーエフというロシア系の指揮者の振るハイドンは如何なるところに狙いがあるのでしょうか。

Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
豊穣なムジークフェラインの響き。速めのテンポでいきなり生気抜群のオーケストラの響き。ロシア風な感じはせず、正統的ウィーン風の響きに聴こえます。木質系の美しいとろけるような響きがスピーカーのまわりに広がります。会場ノイズはほとんど聴こえないので音響処理しているのでしょう。リズミカルな部分の弾むようような生気、古典の均衡の範囲を逸脱しない紳士的なコントロール。ライヴとしては、以前聴いたヴァントの76番のDVDと同質の素晴らしい演奏。現代楽器によるハイドンの中期交響曲の理想的な演奏というレベル。
2楽章のアダージョは校長先生の聴き所。穏やかな表情のメロディーに癒されます。これ以上の癒しはないような極上の時間。強面のフェドセーエフの奏でる抑制を利かせながらもユーモラスな表情をみせるメロディーライン。これぞハイドンのアダージョの真骨頂。豪腕は影をひそめひたすら美しいメロディとゆったりとした間を表現するフェドセーエフ。絶品です。
メヌエットも至極正統的なもの。力感、均整、穏やかさともに絶妙のバランス。どちらかというと抑え気味のメヌエット。ハイドンの演奏にうるさいと想像されるウィーンの聴衆もこの演奏には納得でしょう。
フィナーレは1楽章の生気がもどってきました。穏やかながらも活き活きとしたフレージングでハイドンの名旋律によるフィナーレを描いていきます。何気ない演奏でもあるんですが、ハイドンの真髄を知っているというか、絶妙なコントロールを感じる演奏です。会場のお客さんも惜しみない拍手で迎えます。これは素晴らしい校長先生ですね。

Hob.I:103 / Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
静かな遠雷タイプの太鼓連打。校長先生が絶妙の演奏だっただけに期待が高まります。1楽章の序奏は非常にしっとりとメロディーラインを描いて、これから始まる響宴への伏線を張っているよう。主題に入り非常にジェントルな表情、八分の力で主題を奏でていきます。まさにハイドンの名旋律を楽しめと言わんばかりの余裕たっぷりの演奏。ムジークフェラインの黄金のホールに豪腕ロシア人指揮者が完全にウィーン趣味を理解して完璧なハイドンを表現。素晴らしい音楽性です。これは玄人好みの燻し銀の演奏。ハイドンの交響曲を聴き込んだ人にしかわからない、究極の自然さ。何もしていないようで、ハイドンを熟知している人だけが出来る絶妙なバランス感覚。久々に出会う絶品の演奏。1楽章だけで昇天です。
アンダンテはじっくりと骨のある演奏。アンサンブルは多少粗めではありますが、それもいい味わい。後半の盛り上がりはフェドセーエフの演奏の特徴である力みの一切ない自然な盛り上がり。これだけ自然で音楽に没入できる演奏はそうありません。
アンダンテの余韻の韻を踏むようなはじまり。全く力みのないのに素晴らしい力感のメヌエット。ムジークフェラインの美しい響きが我が家に降臨。完全にツボにはまってます。
フィナーレはここまでの秩序が保たれたオケのテンションが徐々にあがり、クライマックスにむけて不気味な迫力を帯びてきます。終盤の盛り上がりは流石フェドセーエフ。それでも決して力むことのないウィーン交響楽団の美しい音色がムジークフェラインに響き渡ります。こちらも観客の慈しむような拍手に迎えられて終了。

しっかりと聴いたことのなかったウラジミール・フェドセーエフのハイドンの交響曲ですが、聴いてみてビックリ。現代楽器のハイドンの交響曲の演奏としてはこれ以上の演奏はないほどの素晴らしい演奏でした。しかも私のすきなライヴ。ウィーンフィルではなく一つ格下のウィーン交響楽団の演奏ですが、ウィーンフィルに劣るような印象は皆無。評価はもちろん[+++++]とします。ハイドンの交響曲が好きなすべての人にお薦めの演奏です。もちろん「ハイドン入門者向け」タグをつけちゃいます。

※8月8日ブログのトラブルで本記事が表示されていませんでした。モバイル経由で修正した際に記事が飛んでましたので修正しました。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 校長先生 太鼓連打 ライヴ録音 ハイドン入門者向け

ホグウッド/AAMの校長先生

今日はいままで避けて通ってきたホグウッドの交響曲を取りあげましょう。

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クリストファー・ホグウッド(Christopher Hogwood)指揮のエンシェント管弦楽団(The Academy of Ancient Music)の演奏でハイドンの交響曲6曲を収めたアルバム。収録曲は交響曲50番、54番、55番「校長先生」、56番、57番、60番「迂闊者」とハイドンの創作の最初の絶頂期のシュトルム・ウント・ドラング期の直後の1773年から1774年にかけて作曲された曲を集めたアルバム。今日はその中から今までブログで取りあげていない、交響曲55番「校長先生」を取りあげます。収録はロンドン近郊の街、ウォルサムストウ講堂で1993年の3月、6月、7月にかけてのセッション録音。レーベルは今はDECCA系列のオワゾリール(L’Oiseau-Lyre)。

このアルバムは皆さんご存知のようにホグウッドによるハイドンの交響曲全集を目指して刊行されていたシリーズの第8巻。たしか第4巻か第5巻あたりからリリースされ始めてて、その後第1巻にもどり順次第10巻までリリースされたところで中断されてしまったもの。丁寧な解説、美しい装丁、古楽器の典雅な演奏と3拍子そろったシリーズで、発売当時そこそこ人気があったもの。ただ、私自身はホグウッドのこの交響曲のシリーズはあまり積極的に推していません。古楽器の音色の美しさと繊細さは感じられるものの、肝心の生気や愉悦感、機知の表現というハイドンのはずせない魅力が少し薄いという印象がつきまとっているため。

当ブログでもホグウッドの演奏自体はいくつか取りあげています。

2011/04/02 : ハイドン–声楽曲 : 【新着】ホグウッドの伴奏による歌曲集、室内楽
2010/09/21 : ハイドン–協奏曲 : ホグウッドのトランペット協奏曲
2010/09/15 : ハイドン–協奏曲 : コワン/ホグウッドのチェロ協奏曲

ブログの記事で取りあげたように、逆に協奏曲の伴奏という場面ではなかなかいい指揮も見せるようで、総じて交響曲というよりも協奏曲や歌曲の伴奏のほうが出来がいいものが多い印象があります。

今日取り上げる校長先生は1774年の作曲。「校長先生」という呼び名は1840年のアロイス・フックスによる「ハイドン作品主題目録」にあとから書き込まれたものとしてはじめて現れ、ハイドン研究家のポールによるとこの呼び名は、この曲の第2楽章の主題の規則正しい性格によるとのこと。当時も校長先生とは規則正しさを求める存在だったんでしょうね。こう言われて第2楽章を聴くとなるほどと思えてしまうところがハイドンのウィットに富んだ曲想の素晴らしさですね。

Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
小編成の古楽器オーケストラのタイトな響きに彩られたスピーディな開始。カッチリしたリズムと推進力に溢れた演奏。迫力はほどほどですがキレの良さはなかなか。録音はかなりデッドな空間で実体感重視のもの。これでもう少しゆったりした響きがあれば音楽の潤いも増すのでしょうか。ライヴでノイズを消すための音響処理を施したような混濁感もちょっと感じられて、録音で少し損をしている感じ。1楽章は小気味よい古楽器独特の溜のない軽快感がポイント。ホグウッドの全集の録音は後半に来るほど力感と生気がだんだん増してきた印象があり、第8巻であるこのアルバムではそれなりのレベルに達していますね。
2楽章の校長先生のモチーフは弱音器をつけたヴァイオリンによる規則正しい付点音符の静かなリズムを基調とした変奏が続く楽章。ハイドン独特のシンプルで奥の深い音楽。管楽器や弦が時折メロディーを重ねて変化を表現。この楽章はホグウッドの演奏の特徴がいい方向に働いて非常に深い響きに。
3楽章のメヌエットはリズムの切れと変化を聴かせる楽章。トリオはヴァイオリンとバスによる寄り添ったり掛け合ったりする不思議なメロディーライン。ふたたびメヌエットでリズムを強調。
この曲の一番の聴き所はフィナーレ。様々に表情に変化を付けながらメロディーをつないでいく工夫に満ちた曲。弦から管楽器、そしてまた弦とモチーフをつないでいきます。創意にみちた実験的な曲。ハイドンのめくるめくアイデアに素直に感服。演奏もそれを楽しむ余裕がありなかなかの充実。最後にキリッと〆て終了。

ホグウッドの校長先生はハイドンの閃きを十分に表現した良い演奏でした。ただ、前記事のヨッフムと同様、ホグウッドはハイドンの交響曲全集の前に完成させたモーツァルトの交響曲全集の驚くべき新鮮さと溢れんばかりの生気、凄まじいキレを知っているだけに、ハイドンの丁寧な演奏でもちょっと最高評価はつけにくいところ。ということで評価は[++++]としています。この演奏はホグウッドのハイドンの交響曲の演奏としては出来のいい方であり、ハイドンの交響曲好きの方には広くおすすめできる演奏であることは間違いありません。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 校長先生 古楽器 おすすめ盤

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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