クリストフ・ゲンツの英語カンツォネッタ集(ハイドン)

久しぶりに歌曲の未入手盤に出会いました! テノールのしなやかな歌唱と陰影の深いピアノの伴奏が素晴らしい演奏です。

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クリストフ・ゲンツ(Christoph Genz)のテノール、ジュリアス・ドレイク(Julius Drake)のピアノによる、モーツァルトの歌曲6曲、ハイドンの英語によるカンツォネッタから12曲、英語による歌曲2曲を収めたアルバム。収録は1999年9月、ドイツ放送(Deutschelandradio)のケルン放送センターの放送ホールでのセッション録音。レーベルはBerlin Classics。

ハイドンの英語によるカンツォネッタ集はハイドンが第1回のロンドン旅行に出かけた1791年に知り合った外科医ジョン・ハンター(John Hunter)の夫人であるアン・ハンター(Anne Hunter)の書いた詩などに曲をつけた曲集で、6曲づつ2巻に分けて出版されたもの。第1巻が1794年、第2巻が1795年と、おそらくハイドンの第2回のロンドン旅行に合わせて出版されたもの。ハイドンはドイツ語の歌曲やクラヴィーアの伴奏付きのカンタータなども書いていますが、これまでリリースされているアルバムの数を見るとこの英語によるカンツォネッタが群を抜いて多くの録音があり、人気のある曲集であることがわかります。

ほとんどが女性による歌唱ですが、男性によるものもわずかながらあり、このアルバムもその中の1枚。

テノールのクリストフ・ゲンツは1971年、ドイツ中部のエアフルト(Erfrut)の生まれ。ライプツィヒの聖トーマス教会の合唱団、ケンブリッジのキングスカレッジ合唱団などを経てライプツィヒのメンデルスゾーン音楽演劇大学で学び、1996年にヨハン・セバスチャン・バッハコンクールで1等に輝き、以後世界各地のオペラハウスなどで活躍しています。録音も多数の残しており、ガーディナー、クイケン、鈴木雅明などとの共演も多く古楽も重要なレパートリーのようです。ハイドンではマンフレッド・フスの振るマリオネット・オペラ「フィレモンとバウチス」でフィレモンを歌っています。

ピアノのジュリアス・ドレイクは1959年ロンドン生まれのピアニスト。歌曲の伴奏、室内楽を中心に活動しているようです。ロンドンのパーセル・スクール、王立音楽大学で学び、現在は王立音楽アカデミー、王立ノーザン音楽大学の教職に就いています。伴奏者としてはトーマス・アレン(2016年のジョナサン・ノットの「コジ・ファン・トゥッテ」の演出とドン・アルフォンソは見事でした!)、オラフ・ベーア、イアン・ボストリッジら名歌手の伴奏役として活躍している人。



このアルバム、クリストフ・ゲンツのテノールの透明感あふれる響きも素晴らしいんですが、何と言ってもジュリアス・ドレイクの染み入るようなピアノが絶品なんですね。

Hob.XXVIa:25 6 Original Canzonettas 1 No.1 "The Mermaid's Song" 「人魚の歌」 [C] (1794)
もう夢のような柔らかいピアノの伴奏からいきなり惹きつけられます。流石に伴奏のスペシャリストだけに歌を引き立てるツボを押さえた演奏。ゲンツは清らかかつ澄んだ響きの声。ニュアンス豊かな歌なんですが、それもドレイクのピアノの表現力もあってのこと。

Hob.XXVIa:26 6 Original Canzonettas 1 No.2 "Recollection" 「回想」 [F] (1794)
ゆったりとした伴奏にゆったりとした歌が乗り、極上の音楽が流れます。かつての恋人との忘れがたい時をしのぶ歌詞がしっとりとうたわれる名曲。

Hob.XXVIa:27 6 Original Canzonettas 1 No.3 "A Pastoral Song" 「牧歌」 [A] (1794)
なぜか、イギリスらしい郷愁を感じる曲。ピアノのきらめくような高音の美しさがちりばめられながら、時折りコミカルな表情をみせたかと思うと、陰りも見せる美しいメロディーが印象的です。ゲンツの表情の使い分けが巧みです。

Hob.XXVIa:28 6 Original Canzonettas 1 No.4 "Despair" 「絶望」 [E] (1794)
ここにきて、歌よりも雄弁なピアノの伴奏。英語の歌詞をみると確かに絶望という感じの詩なんですが、透明感が覆う美しい曲。ジュリアス・ドレイクの自在なタッチに耳を奪われます。

Hob.XXVIa:29 6 Original Canzonettas 1 No.5 "Pleasing Pain" 「愛の苦しみ」 [G] (1794)
この曲では今度はクリストフ・ゲンツの高音の伸びやかさでリードしてきます。歌手と伴奏の微妙なやりとりの妙を楽しめます。ピアノは少し砕けた表情で力を抜きます。

Hob.XXVIa:30 6 Original Canzonettas 1 No.6 "Fidelity" 「誠実」 [f] (1794)
と思うと、今度はピアノが踏み込んできました! なんというアンサンブルの面白さ。ゲンツもドレイクも競い合うようにキレの良さを誇る見事な演奏。第1巻の最後の曲はスリリングなせめぎ合いが楽しめます。



Hob.XXVIa:31 6 Original Canzonettas 2 No.1 "Sailor's Song" 「船乗りの歌」 [A] (1795)
第2巻の最初の曲。気分が変わって軽やかな曲。6曲がセットになっている意味をしっかり踏まえてあえてさらりとした軽さを強調。この曲の詩はアン・ハンターではなく作者不詳。

Hob.XXVIa:32 6 Original Canzonettas 2 No.2 "The Wanderer" 「さすらい人」 [g] (1795)
そして、月夜にさすらう人の歌。しっとりと沈む曲想。ピアノはしなやかに豊かなニュアンスを発散し、テノールは淡々と歌います。微妙な音程のコントロールの巧みさをさりげなく聴かせる名唱。

Hob.XXVIa:33 6 Original Canzonettas 2 No.3 "Sympathy" 「共感」 [E] (1795)
心の通じ合う喜びを歌う、ほのかな明るさを帯びた曲。ピアノの伴奏のメロディの雄弁さと多彩さに驚きます。

Hob.XXVIa:34 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
この曲集で最も美しいメロディの曲。詩はシェイクスピアだったんですね。美しい曲の序奏をことさらゆったりとした間を取りながらゆったりと伴奏していく、見事な入りにゲンツも伸びやかな歌唱で応えます。

Hob.XXVIa:35 6 Original Canzonettas 2 No.5 "Piercing eyes" 「見抜く目」 [G] (1795)
しっとりとした曲とコミカルな曲が交互に配され、歌曲集としての構成も見事。曲順もハイドンのアイデアなのでしょうか。詩は作者不詳。

Hob.XXVIa:36 6 Original Canzonettas 2 No.6 "Content"(Transport of Pleasure) 「満ち足りた心」 [A] (1795)
第2巻の最後の曲はやはり伴奏だけで沁みる曲。最後に持ってくるのにふさわしい晴朗な曲。爽やかな風のように軽やかな情感に包まれます。この曲も詩は作者不詳。



アルバムの最後にアン・ハンターの詩による英語による独立した曲を持ってきました。

Hob.XXVIa:41 "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795
歌手の表現力、そしてピアノによる表現力を問われる曲。前半の霊気漂うような厳粛な雰囲気と、後半の朗々とした歌唱の対比がポイントの曲ですが、流石にドレイクのピアノはこれまでの演奏同様、自然な表情の演出が絶妙で、もちろんこの曲の対比を見事に描き、ゲンツもそれに応える朗々とした歌唱で、ハイドンの仕込んだ深い曲想を汲み取ります。見事。

Hob.XXVIa:42 "O tuneful Voice" 「おお美しい声よ」 [E flat] (c.1795)
なんと美しい伴奏。最後に絶妙に美しい曲で締めます。あえてさらっとした曲の魅力を印象付けて終わります。

ハイドンの英語によるカンツォネッタ集は名曲揃い。女性による歌唱もいいんですが、ゲンツの清らかなテノールによる歌唱もいいですね。このアルバムのポイントはゲンツの安定した歌唱のクォリティの高さもあるんですが、何と言ってもジュリアス・ドレイクのピアノによる伴奏の豊かな表情の変化。この伴奏あってゲンツの歌唱が引き立つというものです。そして、短い曲を組み合わせて作られる曲集としての面白さもこのアルバムの聴きどころでした。評価は全曲[+++++]とします。

お盆をすぎて東京の気温も少し下がり、秋の気配も感じられるようになってきましたね。歌曲や室内楽を楽しむ季節ですね。



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エリザベス・スペイサー/ジョン・バトリックの歌曲集(ハイドン)

今月は週末しか記事が書けてなくてスミマセン。今日は久々の歌曲のアルバム。

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エリザベス・スペイサー(Elizabeth Speiser)のソプラノ、ジョン・バトリック(John Buttrick)のピアノによるハイドンの英語によるカンツォネッタ4曲、ピアノソナタ(Hob.XVI:50) 、ナクソスのアリアンナ、アンダンテと変奏曲(Hob.XVII:6)を収めたアルバム。収録は1987年とだけ記載されています。レーベルはスイスのJecklin disco。

このアルバム、少し前にディスクユニオンで仕入れたのですが、歌曲の未入手盤を売り場で見かけるのは珍しいこと。いつものように所有盤リストを見ててダブり買いではないことのみ確認して、にんまりするのを抑え気味でレジに向かいゲット。未入手盤を手にいれるのは心躍ることなんですね。

歌手のエリザベス・スペイサーは1940年スイスのチューリッヒ生まれのソプラノ。スイスのウィンタートゥル、チューリッヒ、ウィーンなどで学び、当初はコンサートや歌曲のソロ歌手として国際的に活躍しはじめました。レパートリーは現代音楽にも広がりましたがオペラはごく一部をのぞき出演していないとのことですが、記録に残っているのは魔笛のパミーナなどわずか。他にはヘルムート・リリングとバッハの録音が何枚かあるようです。ハイドンについてはテレジアミサのソプラノを歌ったアルバムが1枚あるのみ。要はあまり知られていない人と言う感じです。

ピアノの伴奏を務めるジョン・バトリックもあまり知られていない人ですね。アメリカ生まれのようですが、腕から肩にかけての病気で一度は演奏者の道を諦めたものの、ピラティス、漢方などにより復帰し、今日取り上げるアルバムのリリース元であるJecklinより12枚のアルバムをリリースするに至っているとのこと。

ということで、このアルバム、知る人ぞ知るというか、知らない人はまったく知らない奏者による歌曲集ということになります。もちろんレビューに取り上げたのは演奏が素晴らしいからに他なりません。

Hob.XXVIa:32 6 Original Canzonettas 2 No.2 "The Wanderer" 「さすらい人」 [g] (1795)
しっとりとしたピアノの伴奏。伴奏者になりきった自己主張を抑えた穏やかなピアノの佇まい。録音のバランスはもう少し歌手に焦点をあててもよさそうですが、ピアノがぐっと前に来て、歌手はピアノの横というより後ろにいるようなバランス。ピアノから香り立つ穏やかな詩情がなんとも言えず素晴らしいです。ソプラノのエリザベス・スペイサーはよく通る声で、派手さはありませんが歌い回しは自然で、伸びやかな中音の響きが特徴。声量はピアノに負けていますが、声の余韻のデリケートなコントロールが秀逸で、聴き応え十分。この陰りのある曲の陰影を実に深々と感じさせます。アルバムの冒頭に置かれたのがわかります。

Hob.XXVIa:34 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
この曲でもピアノが実に詩情豊かに伴奏を奏で、歌が入る前に雰囲気を整えます。ジョン・バトリック、素晴らしい腕前です。豊かなピアノの表情だからこそ、繊細なスペイサーの声の表情が引き立つというもの。全般に静寂のなかでの歌唱を意識させる透明感があります。

Hob.XXVIa:41 "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795)
カンツォネッタ集の中では情感の濃い曲ばかりを集めているのがわかります。穏やかな表情ながら、集中力あふれる展開。前半の暗いメロディーからすっと明るさが射すところでの変化。暖かい光が射したときのじわりとくる深い感動。この曲の勘所を知っての選曲でしょうが、実に見事な歌にしびれます。

Hob.XXVIa:42 "O tuneful Voice" 「おお美しい声よ」 [E flat] (c.1795)
なんという澄んだ響き。序奏でのハイドンのひらめきだけでノックアウト。カンツォネッタ集から最後の曲にこの曲を選んでくるとは。伴奏の劇的な展開と、それに乗ってしっとりと響きを重ねるスペイサーのソプラノ。歌曲の素晴しさに満ち溢れた演奏。最後にゆったりと終わるあたりのセンスも見事。

Hob.XVI:50 Piano Sonata No.60 [C] (probably 1794)
ジョン・バトリックによるソナタの演奏が挟まります。これも見事。腕の病気で演奏を断念していたことが信じられません。ハイドンのソナタのツボであるリズムをしっかり刻みますが、珍しく高音のアクセントで印象づけてきます。歌曲の伴奏同様、力むようなところはなく、力の抜けた演奏。適度なしなやかさを保ちながら初見で楽しんで弾いているような自在さを感じさせる不思議な演奏。ソナタに正対するのではなく、友人の書いた曲を楽しんで弾いているような印象。この晩年の見事なソナタから、実に楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
続くアダージョでは、しなやかさはそのままに美しいメロディーを実に美しいピアノの響きで飾ります。これまで聴いた磨かれたタッチによる緩徐楽章の美しさとは少し異なり、透徹したというよりざっくりとしたタッチで一音一音が磨かれているという感じ。また、老成したという感じでもなく、適度に凸凹したところが持ち味。それでいてこの楽章の美しさを表現しきっている感もある実に不思議な演奏。
フィナーレの入りのリズミカルな表現の素晴らしいこと。間の取り方ひとつで、ハイドンの書いたメロディーがまるで生き物のように弾みます。余裕綽々の演奏からハイドンのソナタの真髄がじわりと伝わります。これは見事な演奏。

Hob.XXVIb:2 Cantata "Arianna a Naxos" 「ナクソスのアリアンナ」 [E flat] (c.1789)
名曲「ナクソスのアリアンナ」。ジョン・バトリックはことさら劇的になるのを避け、さらりと流すような入り。スペイサーの入るところでさっと間を取り、最初の一声が入るところは鳥肌が立つような絶妙さ。これほど見事な歌の入りかたは聴いたことがありません。歌が入るとピアノは実に巧みにフレーズを組み立て、オケには真似のできないような変化に富んだサポート。スペイサーの透明感溢れる真剣な歌唱を十分に活かすようよく考えられた伴奏。スペイサーはカンツォネッタ同様、響きの余韻のコントロールが素晴らしく、この劇的な曲の美しさを緻密に表現しています。三部構成で19分と長い曲がバトリックの見事な伴奏で緊張感が緩むことなく劇的に展開します。各部の描き分けも見事。コレペティートル的なざっくりとした良さを持ったピアノですね。

Hob.XVII:6 Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
ナクソスのアリアンナの最後の響きの余韻が残っているところでさっと始まりますが、この入りがまた絶妙。最初から完全にバトリックのピアノに引き込まれます。前曲のざっくりとした印象は影を潜め、今度は透徹した響きの美しさが印象的。特に高音のアクセントが冴えて、曲をきりりと引き締めています。変奏が進むたびに、ハイドンのアイデアに呼応してバトリックのピアノも敏感に反応します。ハイドンのアイデアを次々にバトリックの表現でこなしていく見事な展開。変奏曲とはかく弾くべしとでもいいたそうですね。聴く方は耳と脳が冴えわたってピキピキ。高音の速いパッセージの滑らかなタッチは快感すら感じさせます。曲が進むにつれてバトリックの孤高の表現の冴えはとどまるところを知らず、どんどん高みに昇っていきます。一度ピアノが弾けなくなった経験があるからこそ、一音一音の意味をかみしめながら弾いているのでしょうか。これほどまでに透明な情感の高まるピアノは聴いたことがありません。奏者の魂が音になっているような珠玉の演奏。これほどの演奏をする人がマイナーな存在であること自体が驚きです。この曲には名演が数多くありますが、最近聴いた中ではベストの演奏と言っていいでしょう。見事。

このアルバム、エリザベス・スペイサーの歌も素晴らしかったですが、それよりさらに素晴らしいのが伴奏のジョン・バトリック。音符を音にするというのではなく、音符に潜む魂を音にしていくような素晴らしい演奏。歌手と伴奏の息もピタリとあって歌曲は絶品。そして2曲収められたピアノ独奏の曲も歌曲以上の素晴らしさ。これほど見事な演奏が埋もれているとは人類の損失に他なりません。もちろん全曲[+++++]とします。歌曲が好きな方はもちろん、ピアノソナタの好きな方、このアルバムを見逃してはなりません。いつもながらですが手にはいるうちにどうぞ。

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イルムガルト・ゼーフリートのカンツォネッタなど(ハイドン)

ゼーフリートの追っかけ的記事をもう一本。

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イルムガルト・ゼーフリート(Irmgard Seefried)のアリアや歌曲の1944年から1967年までの録音を集めた4枚組のアルバム。この中にハイドンのアリア「情け深い人は」Hob.XXIVb-13(F.ビアンキの「インドのアレクサンドロス大王」への挿入曲、英語によるカンツォネッタ集から3曲が収められています。アリアはレオポルド・ルートヴィヒ(Leopold Ludwig)指揮のウィーン交響楽団の演奏で1944年10月、ウィーンのムジークフェライン・ザールでの録音。カンツォネッタ3曲はエリック・ウェルバ(Erik Welba)のピアノ伴奏で、1956年1月、ザルツブルクのモーツァルテウムでのオーストリア放送の録音。レーベルはORFEO D'OR。

このアルバムは、先日取り上げたゼーフリートの歌う天地創造のアルバムの記事を書いている時にゼーフリートのディスコグラフィを調べていて発見したもの。もちもとヨーゼフ・クリップスつながりでゼーフリートにつながり、そしてこのアルバムにつながったという流れです。天地創造のアルバムも発見と同時に注文。そしてこのアルバムも同じく発見と同時に注文ということで、短期間に未聴のハイドンの名演奏が3組つながった次第。いやいや世の中便利になりました。このへんのつながりについては前記事を御覧ください。

2015/10/31 : ハイドン–オラトリオ : ゼーフリート/クリップス/ウィーンフィルの天地創造から(ハイドン)

さて、このORFEOのゼーフリートの録音集ですが、ハイドンばかりでなくモーツァルト、ベートーヴェンからプッチーニ、ワーグナー、リヒャルト・シュトラウス、ムソルグスキーなどの曲が含まれています。特にモーツァルトのアリアは、カラヤン、フルトヴェングラー、ワルター、ベーム、ライトナー、アンセルメなどの名指揮者の振るウィーンフィルなどの有名オケの伴奏と超豪華な布陣。CD2の冒頭に置かれた1947年録音のカラヤン/ウィーンフィルとの「フィガロの結婚」のケルビーノのアリアはこれまでこのアリアでも最も芳しい歌唱でノックアウト! 憧れのゼーフリートの絶頂期の素晴らしい歌声にとろけそうです。1952年のフェルディナント・ライトナーとの「羊飼いの王様」のアリアはライトナーの沁みる伴奏にゼーフリート絶唱! そして1953年のワルター/ニューヨークフィルとの「エクスラーテ・ユビラーテ」など、ハイドンのレビューの前にメルトダウン。いやいやこのアルバム、ゼーフリートファンには宝物のようなアルバムです。ちなみにハイドンのうちカンツォネッタ3曲はこのアルバムが初出とのこと。

Hob.XXIVb:13 Aria di Errisena "Chi vive amante" for Bianchi's "Alessandro nell'lndie", Act 1 Scene 5 「情け深い人は」ビアンキの歌劇「インドのアレクサンドロス大王」への挿入曲 [B] (1787)
4枚組のCD1の冒頭に置かれた曲。どこかで聴いた曲だと思ったら、ヌリア・リアル盤、ベルガンサ盤に収録されていて、どちらもレビューしてました。この曲はハイドンの書いたアリアの中でも指折りの美しいメロディーの曲。冒頭から癒しが満ち溢れます。

2010/11/06 : ハイドン–オペラ : ヌリア・リアルのオペラ挿入アリア集
2010/11/03 : ハイドン–オペラ : ベルガンサのオペラアリア集

レオポルド・ルートヴィヒの振るウィーン響が実にしなやかな伴奏。ゆったりとした序奏に乗ってゼーフリートもゆったりと入ります。もちろんモノラルながら1944年とは思えないしっかりとした響き。ノイズも気になりません。流石ORFEOの技。神々しくもある非常に美しいメロディーをゼーフリートの芳しいソプラノが朗々と歌い上げていきます。ゼーフリート31歳の声の輝きが眩しいですね。至福の時間。5分くらいのこの短い曲1曲でもこのアルバムを手にいれる価値があります。オケも実に慈しみ深い響きで名サポート。アルバムの冒頭でいきなり昇天。

Hob.XXVIa:34 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
カンツォネッタから有名な曲。カンツォネッタ3曲はCD3の冒頭に置かれています。非常に美しいメロディーの曲。ゼーフリートはハイドンの歌曲のなかでもメロディーの美しい曲を厳選して録音していることになります。ピアノのエリック・ウェルバは1913年生まれのドイツのピアニスト。ゼーフリートをはじめとしてペーター・シュライアーやニコライ・ゲッタの伴奏を長らく務めた人。流石に伴奏のプロ、ゆったりと濃密な音楽で、歌手が歌いやすいように気配を整えます。序奏からゆったりとドラマティック。すでに序奏で詩情がにじみ出てきます。ゼーフリートの歌は残念ながら他の録音ほど輝きを感じず、ゆったりと朗々とした歌唱ながらも、もう一歩の起伏が欲しいところ。

Hob.XXVIa:35 6 Original Canzonettas 2 No.5 "Piercing eyes" 「見抜く目」 [G] (1795)
2分弱の短い曲。ウェルバのしっとりとしたピアノは変わらず、ゼーフリートは高音を転がしながらこの曲を歌うことを楽しむよう。

Hob.XXVIa:41 "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795)
ハイドンの歌曲の中ではもっとも暗澹とした曲。やはりゼーフリートの選曲眼の鋭さを感じます。この曲でもウェルバの饒舌なピアノが心に刺さります。ゼーフリートは安心してゆったりとピアノに乗って歌います。ゼーフリートの美声は楽しめるものの、歌自体に潜む魂のようなものにあと一歩届いていないかもしれません。この3曲でゼーフリートの声が少々平板に聴こえてしまうのはもしかしたら歌曲にしては少々デッドな録音のせいかもしれません。

ゼーフリートのハイドンの録音を探して辿り着いたこのアルバム。アルバムの冒頭に置かれたビアンキのオペラへの挿入曲はゼーフリートの素晴らしさを存分に味わえる録音。そして歌曲の方はこれまでリリースされていなかった理由があるような気がします。綺羅星のように輝くゼーフリートのアリアの数々を知る人にとって、ちょっと化粧乗りの悪いゼーフリートは見たくないかもしれません。もちろん歌唱は素晴らしいものなのですが、ゼーフリートの絶頂期の、あの芳しく可憐で胸躍るアリアの魅力からはちょっと差がついているということです。いずれにせよ、ハイドン以外も含めてゼーフリートファンの方は絶対手にいれるべき素晴らしい価値のあるアルバムと言っていいでしょう。ハイドンの評価はアリアは[+++++]、歌曲3曲は[++++]としておきます。

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【新着】野々下由香里/桐山建志/小倉貴久子の歌曲集(ハイドン)

今日は最近仕入れた珍しいアルバム。

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浜松市楽器博物館コレクションシリーズ52「スクエアピアノとイギリス家庭音楽の愉しみ」と題されたアルバム。収録曲目はハイドンの歌曲3曲、クラヴィーアソナタ1曲、他にクレメンティ、ヨハン・クリスチャン・バッハのクラヴィーアソナタ、モーツァルトの歌曲、キラキラ星変奏曲などを収めたアルバム。収録は2013年1月2日から4日、アクトシティ浜松音楽工房ホールでのセッション録音。浜松市楽器博物館オリジナルプロダクション。

もちろんハイドンの曲目当てということで手に入れたアルバムです。まずはこのアルバムをリリースしている浜松市楽器博物館について調べてみます。

浜松市楽器博物館

浜松といえヤマハ、カワイ、ローランドなど音楽に関係する企業の本社があるため、浜松市も「音楽のまち」として音楽で町おこしをしています。浜松駅前のアクトシティには立派なコンサートホールが2つもあり、また、この楽器博物館もそうした音楽振興の一環でつくられたものでしょう。浜松駅の北口からすこしのところに博物館があるそうで今年で20周年とのこと。今日取り上げるアルバムジャケットの右上にも楽器博物館20周年と誇らしげに記されています。ウェブサイトを見てみると収集している楽器はヨーロッパのみならずアジアやオセアニア、もちろん日本のものもあり、雅楽器から現代の洋楽器、電子楽器までと幅広いコレクション。そしてお気づきだと思いますが、今日取り上げるアルバムは浜松市楽器博物館コレクションシリーズのなんと52巻目ということで、楽器収集のみならず、こうしたプロダクションにもかなり力を入れていることがわかります。

このアルバムは楽器博物館の所蔵品である1805年クレメンティ社によって発売されたトーマス・ラウド(Thomas Loud)制作のスクエアピアノを演奏したもの。1806年といえばまだハイドンが存命、と言っても最晩年ですが、同じ時代のもの。スクエアピアノは現代のグランドピアノのような大型のものと異りリーズナブルな価格やコンパクトな形状からこの頃以降、イギリスの中産階級の家庭で大流行したとのことで、このピアノで歌曲などを楽しむというのは誠に理にかなったもの。所有する楽器の楽しみ方を心得たプロダクションですね。ライナーノーツには楽器の詳細な解説、演奏者の情報、曲目解説、歌詞まできちんと載せられ、しっかりとしたプロダクションであることがわかります。

演奏者について触れておきましょう。
スクエアピアノは小倉貴久子さん。コンサートや録音でご存知の方も多いでしょう。芸大、アムステルダム音楽院を卒業後、1993年ブルージュ国際古楽コンクールのアンサンブル部門、1995年同フォルテピアノ部門で1位となり、以後国際的に活躍しています。
ヴァイオリンの桐山建志さんは、芸大、フランクフルト音楽大学を卒業後、1998年同じくブルージュ国際古楽コンクールソロ部門で1位となった人。
そしてソプラノの野々下由香里さんは、芸大、パリのエコール・ノルマル音楽院を卒業、バッハ・コレギウム・ジャパンのソプラノソリストとして多くのアルバムの録音に参加しているのでご存知の方も多いでしょう。

Hob.XXXIa:112bis - JHW XXXII/3 No.262 "Green sleeves" (Robert Burns)
古楽器のヴァイオリン特有の鋭い音色と、フォルテピアノのような音色のスクエアピアノによる伴奏から入ります。ハイドンの編曲によるスコットランド歌曲集では本来チェロが入るのでしょうが、このアルバムではヴァイオリンが加わるのみ。ヴァイオリンの桐山建志さんは非常に存在感のある音色。メロディはシンプルなのにぐっと沁みるヴァイオリン。よく聴くとスクエアピアノはフォルテピアノと比べて特に低音部の迫力は抑え気味、楽器の大きさからでしょうか、優しい音色ですね。ただ驚くのは音色のピュアさ。よほど調律が追い込まれているのでしょう、響きに濁りがなく、高音から低音まで、実に気持ちよく響きます。録音はこうした楽器に焦点を合わせたプロダクションとしてはちょっと異例で、ホールでゆったり音楽を楽しむような残響が比較的多めの録音。もう少しスクエアピアノの音色をオンマイクで拾っても良いかもしれませんが、ゆったりと音楽を楽しむには絶好のもの。
ここまで歌に触れずにきましたが、このアルバムの聴きどころは野々下由香里さんの歌でしょう。出だしから素晴らしい歌唱。日本人の歌唱だと言われなければ気づかないほど自然な英語で、しかも古楽器に合う透明感のある声。私は野々下さんは初めて聴く人、と思ってバッハ・コレギウム・ジャパンの手元のアルバムを何枚か見てみたら、野々下さんの参加しているアルバムがありました。ということで、私は野々下さんは「意識して」聴くのは初めて、ということになります(笑)
このグリーン・スリーブスはおなじみのヴォーン・ウィリアムスのメロディーのものとは違う曲ですが、スコットランド歌曲集の特徴である郷愁を感じさせる独特な雰囲気を持っています。小倉貴久子さんのスクエアピアノは実に端正。最初はちょと踏み込み不足に聴こえなくもありませんが、聴きなおすと、清々しさを感じさせるような心地良さがあり、リズム感も抜群、そして音の粒が揃って、理想的な演奏。完璧な自然さとでも言ったらいいでしょうか。1曲目から素晴らしい演奏に酔います。

Hob.XXVIa:25 6 Original Canzonettas 1 No.1 "The Mermaid's Song" 「人魚の歌」 [C] (1794)
おなじみの曲。この曲の伴奏はスクエアピアノのみ。小倉貴久子さんの華麗な伴奏に乗って野々下さんも気持ち良さそうに歌います。スクエアピアノの音階が宝石のように光り輝き、美しく躍動します。この曲の伴奏の中ではピカイチ。前曲同様、非常に楽器の響きが澄んでいますね。3分少々の曲ですが既にうっとり。

Hob.XVI:41 Piano Sonata No.55 [B] (c.1783)
2曲の歌曲の後に2楽章のピアノソナタが入りますが、このあたりでスクエアピアノの音色を純粋に楽しめということでしょう。ここでも小倉貴久子さんのタッチは冴え渡って、まるで自分が所有する楽器のように馴染んでます。非常に演奏しやすそう。先日生で聴いたクラヴィコードもそうでしたが、家庭などの少人数で楽しむには必要十分というより、むしろ、この身近さがよりふさわしいと言ったほうがよいのでしょう、ほどほどのダイナミクスに透明な響き、楽器のそばで演奏を楽しむという意味ではピアノやフォルテピアノよりもふさわしいと思わせる説得力がある音色。それにしてもコピーではなく実際に1806年に製造された楽器ということで、この楽器のコンディションは驚異的。高音から低音までの音の素晴らしい音のバランス。ビリつきは皆無。実に澄んだ音色と三拍子そろっています。そして小倉さんの素晴らしい演奏で、楽器も喜んでいることでしょう。まさに自宅でハイドンのソナタを楽しむ境地。絶品。

この後、クレメンティ、クリスチャン・バッハ、モーツァルトの曲が挟まりますが、中でもクリスチャン・バッハのクラヴィーアソナタ(Op.5-3)のスクエアピアノから繰り出される色彩感豊かな響きと、モーツァルトのおなじみのキラキラ星変奏曲の純粋無垢な音色は秀逸。スクエアピアノのニュアンス豊かな響きに引き込まれます。

Hob.XXXIa:218 - JHW XXXII/5 No.388 "Auld lang syne" (Robert Burns)
アルバムの最後に置かれたスコットランド歌曲集から蛍の光。ヴァイオリンとスクエアピアノに乗って野々下さんの歌う、スコットランド風の蛍の光。いやいや、スコットランドの草原に立って風を浴びているような心境になりますね。名手3人が繰り出す自然な音楽の浸透力の素晴しさに打たれます。音楽の力とはすごいものですね。日本では卒業式の合唱か閉店のBGMのメロディでしょうが、こうしてソプラノとヴァイオリン、スクエアピアノでハイドンの手による伴奏で聴く蛍の光の深さはまったく異なる力をもっていることがわかります。いやいや、いいアルバムです。

まことに失礼ながら、浜松市楽器博物館コレクションシリーズというプロダクションから想像される出来とは異なり、まことに素晴らしいプロダクションでした。貴重なコレクションであろうこのスクエアピアノの素晴らしさを完璧に伝える好企画。しかも演奏者、選曲、楽器のコンディション、調律、録音、すべてお見事。公共の仕事でここまでレベルの高い仕事はそうあるものではありませんね。評価は全曲[+++++]です。これはこのシリーズの他のハイドンの録音、聴かなくてはなりません。

期待を込めてあえて一つだけ課題をあげればジャケットでしょうか。タイトルもスクエアピアノの写真をメインとしたデザインも悪いわでではありませんが、このアルバムの中身の素晴しさ、演奏者の素晴しさを伝え切れていない感じも残ります。このプロダクションにデザインの力が加われば世界で勝負できると思います。今後に期待です。

そして、この楽器博物館、一度訪れてみなくてはなりませんね。このアルバムから伝わる制作者の心意気、しっかり受け止めました。当ブログの読者のハイドン好きな皆さん、このアルバムは買いです。ハイドンの時代の空気を吸ったような気持ちになります。

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tag : スクエアピアノ スコットランド歌曲 英語カンツォネッタ集 ピアノソナタXVI:41

【新着】ドロテー・ミールズの歌曲集

実に久しぶりのレビュー。先月末から約1ヶ月、関西への旅行をきっかけに旅行記にかまけて、レビュー記事をアップしておりませんでした。純粋にハイドンファンの皆様には大変ご無沙汰をしておりました。しばらくはハイドンのレビューに集中したいと思います。

さて、今日は最近手に入れたアルバムから、お気に入りの一枚を取りあげたいと思います。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ドロテー・ミールズ(Dorothee Mields)のソプラノ、レサミ・ド・フィリッペ(Les Amis de Philippe)の伴奏による、ハイドンの英語カンツォネッタ集から6曲、スコットランド歌曲集から12曲のあわせて18曲を収めたアルバム。収録は2013年2月18日から21日にかけて、ドイツ,ブレーメンの放送ホールでのセッション録音。レーベルはマイナーな曲を網羅的に録音している独cpo。

ドロテー・ミールズは1971年、ドイツのエッセン近郊の街、ゲルゼンキルヒェン生まれのソプラノ。バロック及び現代音楽をレパートリーとしているそうです。子供のころピアノとヴァイオリンを習い、歌をエッセンで習うとその後、いくつもの合唱団で経験を積み、ブレーメン芸術大学で声楽を学ぶようになります。大学では17世紀、18世紀の音楽に対する興味が増し、ハリー・ファン・デル・カンプ等に師事、卒業後はシュツットガルトでユリア・ハマリについて声楽を学びました。その後は古楽、現代音楽のコンサートで経験を積み、レパートリーはモンテヴェルディからブーレーズまでとかなり広く、手元のアルバムではヘンゲルブロックの天地創造でエヴァを歌っていました。

伴奏のレサミ・ド・フィリッペは、ヴァイオリン、ヴィオラ、フォルテピアノの3人から成る団体。メンバーは下記のとおり。

ヴァイオリン:エヴァ・サロネン(Eva Salonen)
チェロ:グレゴール・アンソニー(Gregor Anthony)
フォルテピアノ:ルドガー・レミー(Ludger Rémy)

この歌曲集、好きなハイドンの歌曲集ということで、注文を入れておりましたが、到着して聴いてみると、清透なドロテー・ミールズのソプラノの美しさのみならず、しっとりとした伴奏の美しさ、特に遅いテンポの曲に宿る静けさのようなものの表現の美しさにぐっときました。ハイドンが最晩年に手がけたスコットランド民謡への伴奏づけという仕事の面白さが手に取るようにわかる、実に見事な演奏。ちょっと旅ボケしていた私の、ハイドンの音楽の素晴しさを感じる脳の中枢のスイッチを入れ直してくれるような癒し系のアルバムです。

18曲もの曲が収められているので、曲ごとに簡単にメモを残しておきましょう。

Hob.XXVIa:32 / 6 Original Canzonettas 2 No.2 "The Wanderer" 「さすらい人」 [g] (1795)
カンツォネッタ集からの曲はフォルテピアノのみの伴奏。ルドガー・レミーのフォルテピアノは歌曲の伴奏ということを踏まえた雄弁すぎないサポート。清らかで良く延びるドロテー・ミールズのソプラノに対し、訥々と語りかけるようなタッチで寄り添います。切々としたほの暗い表情の美しさ際立つ曲。

Hob.XXVIa:41 / "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795)
名曲ですが、時折消え入るような伴奏の表現の幅の大きさが素晴しく、これまでの演奏の中でも、曲の劇性が際立って、特に静けさの表現が秀逸。歌曲における伴奏の重要さを再認識。しっとりとしているのに、素晴しい立体感を感じます。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
つづく名曲。この曲も入りの伴奏から、グッと惹き付けられます。ミールズの歌はそれに応えるように、しっとりと艶やかで、一貫して清楚。発音もドイツ人とは思えない自然さ。ここまでの3曲が英語カンツォネッタ集からの曲。

Hob.XXXIa:9 - JHW XXXII/1 No.9 / "The waefu' heart"
ここからはスコットランド歌曲。伴奏にヴァイオリンとチェロが加わりますが、フォルテピアノの雄弁さがヴァイオリンとチェロにも乗り移っているような、見事なしっとり感。スコットランド歌曲集といえば、Brilliant Classicsからリリースされているアイゼンシュタット・トリオの全集が決定盤ではありますが、キレのいいカッチリとした伴奏の魅力で聴かせるもの。こちらはそれにたいし陰りのようなものを実に旨く表現していて、スコットランド歌曲集の別の魅力を引き立てます。

Hob.XXXIa:2 - JHW XXXII/1 No.2 / "John Anderson" (Robert Burns)
徐々に、ミールズの歌と、レサミ・ド・フィリッペの伴奏の醸し出すえも言われぬ世界に魅力に引き込まれます。

Hob.XXXIa:1 - JHW XXXII/1 No.1 / "Mary's dream" (Alexander Lowe)
感極まったのがこの曲。以前聴いたスーザン・ハミルトン盤もすばらしかったのですが、再びノックアウト。スコットランドの魂に触れるような素晴しい曲。美しすぎるメロディー。スコットランドの鉛のような空の魅力をたっぷり含んだ名曲。ハイドンのつけた伴奏はこの曲の美しさを余すところ無く伝えます。

Hob.XXXIa:246 - JHW XXXII/3 No.230 / "The boatman" (Allan Ramsay)
前曲の余韻を昇華するように、さらりと明るい歌が脳の別の中枢を刺激。歌っている歌手、伴奏を担当する演奏者自身が微笑みながら演奏を楽しんでるようすが手に取るように伝わる素朴な音楽。音楽の楽しみの真髄はこうした素朴な音楽にあるのだとハイドンが微笑んでいるよう。

Hob.XXXIa:235 - JHW XXXII/3 No.257 / "Langolee" (John Tait)
聴き進むごとに、どっぷりとスコットランド歌曲の魅力に浸かっていきます。ドロテー・ミールズの豊かな表情づけの魅力を堪能。ヴァイオリンとチェロはくだけた表現で、ミールズの素朴な魅力をさらにもり立てます。

Hob.XXXIa:173 - JHW XXXII/3 No.181 / "Sensibility" (Robert Burns)
ミールズの高音の素朴な伸びの美しさが際立ちます。録音は最新のものですので、適度に控え目な残響のなかにしっかりと奏者が浮かびあがり、実体感溢れる安定したもの。

Hob.XXVIa:42 / "O tuneful Voice" 「おお美しい声よ」 [E flat] (c.1795)
つづく3曲は再び英語カンツォネッタ集から。伴奏もフォルテピアノのみに戻ります。民謡から歌曲に戻ったことを印象づけるフォーマルな雰囲気に変わり、歌もタイトな表情に変わります。高音の音階の美しさを真摯に表現して、コントロール力を印象づけます。

Hob.XXVIa:27 / 6 Original Canzonettas 1 No.3 "A Pastoral Song" 「牧歌」 [A] (1794)
伴奏がシンプルになったことで、ミールズの歌に集中。あまりヴィブラートをかけないのびのびとした歌唱で、声の透明感が強調されますが、しなやかさが欠ける場合も多いものですが、ミールズの声質はもともとやわらかさをもっており、じつにしっとりと響きます。

Hob.XXVIa:30 / 6 Original Canzonettas 1 No.6 "Fidelity" 「誠実」 [f] (1794)
間に挟まれた3曲のカンツォネッタ集からの曲はいずれもフォーマルな佇まいをもつ曲。アルバムの中間において、変化をつけるという趣旨でしょう。なかなかいい発想です。

Hob.XXXIa:91 - JHW XXXII/1 No.91 / "Jockie and Sandy" (Robert Burns)
やはり、このアルバムの主役はスコットランド歌曲集。ヴァイオリン、チェロ、フォルテピアノの伴奏の饒舌さは素晴しいもの者があります。1分少しの曲なのに雰囲気を変えるインパクトをもっています。

Hob.XXXIa:3 - JHW XXXII/1 No.3 / "I love my love in secret" (Robert Burns)
語るような歌い口に伴奏もくだけて応じ、じつに楽しげな演奏。

Hob.XXXIa:13bis - JHW XXXII/3 No.214 / "Gramachree" (Said to have been written in Bedlam by a Negro)
終盤の名曲。再びスコットランドの魂にふれるような郷愁溢れるメロディーにぐっときます。繰り返し以降のすこし力を抜いた歌のはかない美しさは秀逸。伴奏は明らかに曲のメリハリを意識して、かなり弱音を緻密にコントロールしています。

Hob.XXXIa:168 - JHW XXXII/3 No.161 / "Auld Robin Gray"
そうとう考えた選曲なんでしょう。アルバムの終盤の曲にふさわしい、名残惜しさと機転を感じさせる曲。途中での短調への転調のキレ。そして静けさに徐々に包まれるような気配。

Hob.XXXIa:134 - JHW XXXII/2 No.134 / "What can a young lassie do" (Robert Burns)
そして、ヘザー・ハニーのような独特の芳香を放つ曲。

Hob.XXXIa:252 - JHW XXXII/3 No.232 / "Jenny's bawbee" (Alexander Boswell)
最後はコケティッシュなドロテー・ミールズの表現の幅の広さを印象づけます。ヴァイオリンは音程を狂わせるほどの演出で、このアルバムが皆を楽しませるための音楽であることを気づかせます。なかなか粋な演出です。

いやいや、このアルバム奥が深い。歌曲のアルバムは歌手の特徴がわかってしまうと、その個性をずっと引きずる単調さをはらむリスクがありますが、このアルバムでは、曲を変え、表現を変えて、ハイドンの歌曲の面白さと、ドロテー・ミールズの表現力を存分に楽しめる構成になっています。スコットランド歌曲集の面白さが際立ち、特にマリーの夢は名唱。伴奏もテクニックではなく味わいで聴かせる秀逸なもの。ハイドンの歌曲の入門盤としてもオススメです。評価は全曲[+++++]とします。

目の前には未聴盤の山。しばらくがんばります!

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tag : スコットランド歌曲 英語カンツォネッタ集 古楽器

アーリーン・オジェーのカンツォネッタ(ハイドン)

世の中ゴールデンウィークですが、ラ・フォル・ジュルネなどを楽しんだり、近くの公園に出かけたりと、近場で適当にゴールデンウィークを満喫して楽しんでおります。

今日取り上げるのは最近ネットを検索していてはじめて存在を知ったアルバム。amazonに注文したら、いつも通り翌日には到着です。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

アーリーン・オジェー(Arleen Augér)のソプラノ、エリック・ウェルバ(Erik Werba)のハンマークラヴィーアでグルック、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの歌曲26曲を収めたアルバム。収録は1978年5月11日、ザルツブルク・レジデンツ(宮殿)内のリッターザール(Rittersaal)での録音。ライヴとは記載されていませんが、明らかに拍手や会場ノイズが聴こえるのでライヴです。レーベルはORFEO。

アーリーン・オジェーは1939年、ロサンゼルス近郊のサウスゲート生まれのソプラノ歌手。子供のころからピアノとヴァイオリンを習っていましたが、ロングビーチのカリフォルニア州立大学を卒業し、最初は幼稚園の先生でした。26歳になってシカゴ近郊のエヴァンストンでテノール歌手のラルフ・エローレ(Ralph Errolle)について歌を学び始め、2年後にロサンジェルスで行われた声楽コンクールで優勝したことで歌手としてのキャリアがスタートしました。音楽家としては遅咲きのほうでしょう。この後ロサンジェルスフィルと共演、ウィーンに渡りり、ウィーン国立歌劇場ではヨゼフ・クリップスの指揮の魔笛でデビュー、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場ではベームの振るフィデリオのマルチェリーナ役でデビューといきなり世界のトップシーンで活躍し始めました。レーパートリーはバッハからモーツァルトあたりまでで、高貴な響きのソプラノで知られた人です。歌手としては全盛期だった1992年、脳腫瘍のため引退、3度の手術ののち1993年に亡くなったとのこと。今日取り上げるのは1978年、オジェー39歳の頃の歌ということですね。

ジャケットの若々しいオジェーの姿が眩しいですね。オジェーにはホグウッドが伴奏を担当した「ナクソスのアリアンナ」などを収めたアルバムや、オルベルツのピアノ伴奏によるカンツォネッタ集などのアルバムがありますが、何れもこの録音よりあとのセッション録音。また天地創造や四季、ミサ曲のソロを担当した演奏もいくつかありまますが、ドラティの「月の世界」の録音に1977年に参加している以外はすべて今日取り上げるアルバムより後の録音です。このアルバム、若きオジェーの貴重な録音といっていいでしょう。

伴奏のエリック・ウェルバは1918年生まれのオーストリアの作曲家、ピアニスト。ネットを検索すると歌曲の伴奏者として錚々たる歌手の伴奏を担当したアルバムが残されていますね。1992年に亡くなっています。

1曲目のグルックの曲につづき、2曲目から5曲目までの4曲がハイドン。

Hob.XXVIa:35 / 6 Original Canzonettas 2 No.5 "Piercing eyes" 「見抜く目」 [G] (1795)
伴奏のウェルバの弾く楽器はハンマークラヴィーアとありますが、音色はフォルテピアノに近いです。かなり雄弁なウェルバの伴奏に乗って、オジェーの歌が入りますが、高音の響きの豊かさがいきなり印象に残ります。録音は70年代後半としてはちょっと粗さが目立ちますが、特段聴きにくいものではありません。良く響く宮殿内のホールで歌っている感じがよくわかります。ウェルバの起伏に富んだ伴奏に対し、オジェーの歌の誠実な展開にぐっと来ます。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
挨拶がわりの前曲に対し、ぐっと情感が強まる曲をもってきました。ウェルバのドラマティックな伴奏にオジェーも応えて、歌の表現の幅も前曲より広がります。ゆったりと間を取る事で生まれる空気感を存分に活かした演奏。しっとりとした歌にゆったりとした伴奏から生まれる濃い情感。会場内のお客さんの集中力も一気に鋭敏になります。

Hob.XXVIa:21 / 12 Lieder No.9 "Das Leben ist ein Traum" 「人生は夢だ」 [E flat] (1784)
前曲同様、しっとりと入りますが、聴かせどころの盛り上がりかたが違いました。オジェー、いきなりフルスロットルで素晴しい高音を聴かせます。声の張りと力の漲り方が尋常ではありません。ウェルバが落ち着きはらってしっかりサポートしているのがいいですね。流石に伴奏に慣れた人と感慨しきり。オジェー全盛期の絶唱。

Hob.XXVIa:4 / 12 Lieder No.4 "Eine sehr gewöhnliche Geschichte" 「ごくありふれた話」 [G] (1781)
ハイドンの最後はこれまでの3曲とはことなりドイツ語の歌。コミカルな台詞まわしが印象的な曲。ハイドンの4曲だけで、歌曲の様々な面白さに次々とスポットライトを当てる巧みな選曲でした。この曲が終わると盛大な拍手に包まれます。

多くのソプラノ歌手の歌でも微妙なニュアンスの違いで、何となく好きになる歌手がいるものです。オジェーはなぜか、華やかさも折り目正しさもあり、妙に心に刺さる人。軽々とした節回しで転がるように音階が走り抜け、あとに何とも言えない可憐な余韻が残ります。このアルバムは若きオジェーの魅力が詰まった素晴しい歌唱が楽しめる絶好の録音。残念ながら70年代としては今少しの鮮明さが欲しいところですが、オジェーの魅力は十分伝わります。ウェルバの伴奏も味があって非常にいいですね。ファン必携のアルバムでしょう。評価はもちろん4曲とも[+++++]です。ハイドン以降のモーツァルト、ベートーヴェン、そして特にシューベルトがいいです。

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tag : 英語カンツォネッタ集 ライヴ録音 古楽器

ステファン・ヴァン・デイクのカンツォネッタ集(ハイドン)

久々の歌曲のアルバム。英語によるカンツォネッタ集では珍しい男性の歌です。

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TOWER RECORDS

ステファン・ヴァン・デイク(Stephan van Dyck)のテノール、ジャン=ピエール・バック(Jean-Pierre Bacq)のフォルテピアノによるハイドンの英語によるカンツォネッタ集から15曲。収録曲は下のレビュー記事をご覧ください。収録日は記載されていませんが、ネットの情報などから2004年頃でしょう。収録場所はベルギーのナミュールの東にあるフラン=ワレ城のすぐそばのフラン=ワレ教会でのセッション録音。レーベルはベルギーのARSIS Classics。

テノールのステファン・ヴァン・デイクはベルギーのテノール歌手。生年はわかりませんが、ブリュッセル生まれで、ブリュッセル王立音楽院で歌を学び、ブリュッセル自由音楽大学で音楽学の学位をとりました。その後ルネ・ヤコブスのヴェルサイユ・オペラ・スタジオ、パリ国立高等音楽院のウイリアム・クリスティのクラスで学び、以後、古楽器の著名なオーケストラと共演を重ねました。日本ではバッハ・コレギウム・ジャパンの公演、録音にも参加している人なので、ご存知のかたもあるでしょう。

フォルテピアノのジャン=ピエール・バックは、どうやら、今日取り上げるアルバムをリリースしているARSIS Classicsを主宰している人。彼のサイトは見つかりましたが、略歴がいまいちよくわかりません。

Jean-Pierre Bacq

このアルバム、先に触れたように普通はソプラノなど女性によって歌われることが多いハイドンの英語によるカンツォネッタ集などをテノールで歌った珍しいものですが、フォルテピアノの伴奏に乗ってテノールのステファン・ヴァン・デイクの凛々しく安定した歌声が教会に響き渡る素晴しい録音が楽しめるアルバム。テノールによるカンツォネッタも悪くありませんね。

Hob.XXVIa:25 / 6 Original Canzonettas 1 No.1 "The Mermaid's Song" 「人魚の歌」 [C] (1794)
少し下がって定位するフォルテピアノの伴奏に乗って、ヴァン・デイクの透明感あるテノールが残響たっぷりに響き渡ります。教会での録音らしく、のびのびしたテノールが非常に心地よい響き。高音の伸びと、強い部分の安定感ヴァン・デイクの力量をあらわしています。以後は曲ごとに少しづつコメントを。

Hob.XXVIa:29 / 6 Original Canzonettas 1 No.5 "Pleasing Pain" 「愛の苦しみ」 [G] (1794)
フォルテピアノのバックは控えめかつ自在にテンポを揺らしながら柔らかい音色でヴァン・デイクをサポート。媚びないさっぱりとした表情が伴奏にぴったり。

Hob.XXVIa:30 / 6 Original Canzonettas 1 No.6 "Fidelity" 「誠実」 [f] (1794)
目立たぬ曲ですが、フォルテピアノとテノールの掛け合いの妙を味わえる曲。要所でテンポを落とし、情感をコントロールしていきます。テンポ感が良いので、曲が変わっても一貫してクリーンな表情を保ってます。

Hob.XXVIa:31 / 6 Original Canzonettas 2 No.1 "Sailor's Song" 「船乗りの歌」 [A] (1795)
テノールの高音の伸びが印象的な曲。教会堂の響き渡るヴァン・デイクの美声。徐々にデイクの真価が発揮されてきました。バックのフォルテピアノもちょっと踏み込んで今までの曲よりも濃い表情。残響が消え入るようすが美しいこと。

Hob.XXVIa:32 / 6 Original Canzonettas 2 No.2 "The Wanderer" 「さすらい人」 [g] (1795)
ぐっと沈み込み、表現が深くなります。訥々と語られる詩情。フォルテピアノもぐっと深いフレージングで支えます。ちょっとした音程の変化の美しさに心を打たれます。

Hob.XXVIa:33 / 6 Original Canzonettas 2 No.3 "Sympathy" 「共感」 [E] (1795)
ヴァン・デイクも調子が上がってきたのか、ちょっとしたフレーズの立体感が冴え、小曲の起伏に酔います。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
名曲。序奏から、これからはじまる音楽の豊かな響きを予感させます。曲の起伏は進むにつれて深くなり、間も長く、歌曲の醍醐味が詰まった歌唱。ハイドンの歌曲にして濃い陰影。テノールの優しさと演奏の起伏の深さが拮抗してえも言われぬ仕上がり。

Hob.XXVIa:35 / 6 Original Canzonettas 2 No.5 "Piercing eyes" 「見抜く目」 [G] (1795)
再び、サラッとした表情に戻り、一休み。

Hob.XXVIa:36 / 6 Original Canzonettas 2 No.6 "Content"(Transport of Pleasure) 「満ち足りた心」 [A] (1795)
とろけるようなヴァン・デイクの高音の伸び伸びとした響きの魅力が活きる曲調。

Hob.XXVIa:26 / 6 Original Canzonettas 1 No.2 "Recollection" 「回想」 [F] (1794)
静かな語り口ですが、音階が昇るところのぬけの良さと、高域の伸びの良さが印象的。

Hob.XXVIa:27 / 6 Original Canzonettas 1 No.3 "A Pastoral Song" 「牧歌」 [A] (1794)
文字通り牧歌的な歌。伴奏からのどかな感じが溢れ、ヴァン・デイクの歌ものびのびとして、草原で歌うような雰囲気。

Hob.XXVIa:28 / 6 Original Canzonettas 1 No.4 "Despair" 「絶望」 [E] (1794)
終盤にかかり、フォルテピアノも渾身の気迫。ゆったり流す部分とアクセントの対比のダイナミクスが上がり、しかもゆったりした部分の呼吸の深さがここまでで最も深い。彫りの深い表情と、穏やかさの織りなす綾。終盤のクライマックスと言っていいでしょう。

Hob.XXVIa:42 / "O tuneful Voice" 「おお美しい声よ」 [E flat] (c.1795)
美しい高音の和音をキーとした展開。最後に精霊の歌が来るの知ってか、澄んだ展開の曲を挟んできました。

Hob.XXVIa:41 / "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795)
最後の大曲。ハイドンの歌曲の中でも「ナクソスのアリアンナ」と並んで本格的なもの。明るい曲もいいのですが、メロディーに魂が乗っているいるようなシリアスな展開ですが、ヴァン・デイクのテノールの張りのある声で聴くと、メロディーラインの彫りの深さが際立ちます。最後に締まりました。

ハイドンのカンツォネッタ集には珍しい男性によるもの。歌ものは好きなんですが、一人の歌手が歌うとどこかしら安定感に賭けたり、不自然な瞬間があるもの。このアルバムでは伴奏も歌もそういった局面が皆無で、盤石の安定感。安心して音楽に身を任せられるというだけで、レベルの高さが窺えます。テノールによる歌唱に違和感を感じるのではと思いましたがが、結果的には全く問題なく、むしろ優しく穏やかな語り口が女性による歌唱よりもいいと思わせるところまで感じさせます。残響が多めの録音とも相俟って、素晴しいハイドンの歌曲を楽しめます。評価は全曲[+++++]とします。
歌曲ファンの方、必聴です。

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アンナ・プロハスカの歌曲集(ハイドン)

たまたま見たNHKのBSプレミアムの9月23日0:00からの番組2本。一つはデュトワ指揮のN響の今年のザルツブルク音楽祭に参加した際のライヴ。もう一つは続けて放送された同じく今年のザルツブルク音楽祭のクスターボ・ドゥダメル指揮のベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団のマーラーの「千人の交響曲」。どちらにも出演していて、突き抜けた高音の魅力を振りまいていたのがアンナ・プロハスカ。今日はそのプロハスカのハイドン。

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HMV ONLINEicon / amazon

アンナ・プロハスカ(Anna Prohaska)のソプラノ、エリック・シュナイダー(Eric Schneider)のピアノ、シモン・マーティン=エリス(Simon Martyn-Ellis)のリュートで、バロックから現代曲まで幅広い範囲の歌曲26曲を収めたアルバム。ハイドンは1曲、英語によるカンツォネッタ集からピアノの伴奏で「人魚の歌」。最新のアルバムではありますが収録の情報はなくPマークが2010年とあるだけ。レーベルはご覧のとおりDeutsche Grammophone。

このアルバム、最近リリースされたハイドンのアルバムのうち、在庫のあるものをHMV ONLINEで注文する際、欲しいアルバムと合わせてマルチバイにすべく埋め草として注文したもの。この手のアイドル路線のアルバムはあまり好きなものではありませんが、ついて聴いてみると、実に良い声。そして昨夜のコンサートでもかなり印象に残り、取りあげる事にした次第。

いつものようにプロハスカについて少し調べてみましょう。1983年、ドイツのバイエルン州、ノイ=ウルム(Neu-Ulm)生まれの歌手。曽祖父はオーストリアの作曲家、指揮者のカール・プロハスカ、祖父は指揮者のフェリックス・プロハスカ、父はオペラのディレクターとのことで名門音楽一家の出身。ウィーン、ベルリンで音楽を学び、2002年にベルリン・コーミッシェ・オーパーのブリテンの「ネジの回転」でデビュー。この公演が評価されオペラ界で活躍するようになります。2006年から2007年にかけてベルリン国立歌劇場の専属歌手となり、多数のオペラに出演。そしてコンサートではアバド、バレンボイム、ブーレーズ、アーノンクール、ヤンソンス、ラトルなど大物指揮者と共演、そして2011年からDeutsche Grammophoneと独占録音契約を結んでいるとのこと。Wikipediaにはヘビメタ好きとも書かれており、なかなかユニークな人のようですね。

冒頭に触れた番組では、ザルツブルク音楽祭に初出演するデュトワ指揮のN響で細川俊夫の新作「ソプラノとオーケストラのための『嘆き』」を語りから絶唱。すっきりとしながらも鋭く力強い声で圧倒的な表現力を見せつけていました。アルバムの造りを見る限り、アイドル路線。ブログ初期に取りあげたイギリスの女流トランぺッター、アリソン・バルサムのアルバムに近いノリを感じますが、テレビで見る限り、ちょっとアイドル路線とは異なり、かなりの実力派と映りました。

今日取り上げるアルバムは歌曲集。ハイドンもすばらしいのですが、ハイドン以外の曲も素晴しいですね。ずっとブログのサイドバーに貼っているヌリア・リアル以来のお気に入りになりそうです。いつもは丁寧なHMV ONLINEの解説が割愛されているので、DGのサイトへのリンクを紹介しておきましょう。収録曲目などはこちらをご覧ください。

Deutsche Grammophone : Anna Prohaska – Sirène

Hob.XXVIa:25 / 6 Original Canzonettas 1 No.1 "The Mermaid's Song" 「人魚の歌」 [C] (1794)
超鮮明な録音によってクッキリと定位するちょっと固めの表情のエリック・シュナイダーのピアノ伴奏に乗って、プロハスカの独特の爽やかな歌声が転がるように入ります。録音はスタジオのようで、残響はかなり少なめ。そのかわりソプラノとピアノがあたかもそこで演奏しているようなリアリティ。圧倒的な声量でアクセントをつけながら聴き慣れたハイドンの晴朗な曲をさっぱりと歌っていきますが、高音の美しく磨かれた響きは素晴しい存在感と浸透力。繰り返し以降はかなり自在に装飾音を加えて、素朴な曲を歌うのを楽しむような歌唱。聴き慣れた素朴な歌が立派な歌曲として響き渡ります。

アンナ・プロハスカの歌曲集。やはり素晴しい実力の持ち主とハッキリわかる圧倒的な歌唱でした。このアルバムではハイドンの他、ダウランドや最後のグレゴリオ聖歌なども良かったんですが、ビックリしたのがシマノフスキの3曲。ピアノの幽玄な響きとプロハスカの空間を切り裂くような鋭い歌唱が見事。歌曲好きな方にはオススメのアルバムです。ハイドンの評価は[+++++]としておきましょう。

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中山節子/井上直幸の歌曲集(ハイドン)

実に久しぶりの歌曲集。思い立って連休中に歌曲のアルバムをいろいろ聴き返していたところ、所有盤リストに登録し漏らしていたアルバムを発見。そのアルバムが今日取り上げるもの。

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中山節子(Setsuko Nakayama)のソプラノ、井上直幸(Naoyuki Inoue)のピアノによる歌曲集。ハイドンの歌曲が3曲、シューマンの「女の愛と生涯」、同じくシューマンの歌曲5曲を収めたアルバム。収録は1982年9月16日、東京のルーテル市ヶ谷センターでのライヴ。レーベルはLIVE NOTES。

中山節子さんは桐朋音楽大学出身のソプラノ歌手。このアルバムで組んでいる井上直幸さんの奥さんだったそうです。井上直幸さんは以前アルバムを取りあげていますが、2003年に亡くなっていることは以前も触れた通りです。

2010/08/14 : ハイドン–ピアノソナタ : 豊穣、井上直幸のピアノソナタ

今日取り上げるアルバムは、ハイドンの英語によるカンツォネッタ集から3曲が冒頭に置かれていますが、なぜかドイツ語で歌われ、曲名もドイツ訳だったため、かなり前に手に入れていたにもかかわらず、曲を特定できずに登録しあぐねていたものと思われます。
先週末の台風来襲時に思い立って歌曲のアルバムをいろいろ整理していたところ、このアルバムが突然気になり出して、聴き直してみた次第。

井上直幸さんのピアノは詩情溢れるものとは知っていましたが、ソプラノの中山節子さんの歌唱も筋がすっと通ったなかなか堂々としたもの。情感たっぷりに弾かれるピアノにのって、張りのあるソプラノが良く通ります。

今一度中山節子さんのことを調べてみると、1965年にシュツットガルト国立音楽大学に留学し、1967年にはシューマンコンクールに入賞。その後西ドイツ各地で演奏活動を行い、1975年に帰国しました。やはりドイツ歌曲を得意としていたようで、ドイツ歌曲を中心にコンサート活動をしていたようです。ドイツでの評判は上々だったようで、それゆえ、ハイドンの英語曲をドイツ語で歌っているということなのでしょう。

Hob.XXVIa:36 / 6 Original Canzonettas 2 No.6 "Content"(Transport of Pleasure) 「満ち足りた心」 [A] (1795)
調べてみるとルーテル市ヶ谷センターは客席200席の小ホール。録音はかなり奥にピアノとソプラノが定位する、残響をかなり含みますが比較的鮮明なもの。ピアノは一音一音を慈しむようにじっくり入り、優雅でかつ、芯のしっかりした響きが特徴。なんとなく只ならぬ迫力を帯びたもの。しっかりと音階を刻みながらも儚さを感じさせる、奥深い音楽。中山節子さんはヴィブラートをしっかりかけて、日本人らしい、頭に抜けていくソプラノ。ピアノの余裕ある伴奏にのびのびと歌っているのが印象的。英語のカンツォネッタ集のなかでも比較的おとなしく、典雅な曲想の曲をトップにもってくるあたり、なかなかのセンスですね。

Hob.XXVIa:30 / 6 Original Canzonettas 1 No.6 "Fidelity" 「誠実」 [f] (1794)
つづいて疾走するような曲想の曲。ピアノとソプラノの掛け合いがスリリング。ピアノの表情はかなりの変化。ピアノに負けず、ソプラノの存在感もかなりのもの。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
そして聴き所はこの曲。姿見の前で、自身の姿を見ながら悲しみに耐えていたという歌詞の曲。フォルテピアノと透明感ある古楽風の爽やかなソプラノの組み合わせで聴くこの曲とはイメージがだいぶ異なり、ダイナミックに叙情的に曲を歌い上げています。かなり間をとって情感を嫌という程乗せていきます。実にしっとりとした曲に聴こえます。

短い曲3曲ですが、インパクトは十分。キラ星のように転がるピアノ美音に合わせて、かなりの存在感を感じさせる中山節子さんのソプラノ。他の歌手の歌唱とは一線を画す、魂の乗った歌唱。そういえば、ハイドンのカンツォネッタ集には「精霊(魂)の歌」という曲がありますが、演奏はまさにその言葉の通りのもの。アルバムの帯にも「魂の歌」とキャッチコピーがつけられていますが、「精霊(魂)の歌」自体が収められている訳ではありません。中山節子さんのソプラノを収めたアルバムは他にあまり目につくものはなく、このアルバムが代表盤なのでしょうか。個人的にはここに収められたライヴは、テクニックや出来というものとは別の、何か心に触れる大切な音楽を聴いたような気になる演奏だという印象です。評価は3曲とも[++++]としておきます。

なぜか、音量を少し落として、ハイドンとシューマンをのんびり楽しみます。東京は台風一過で爽やかな気候。そろそろ芸術の秋ですね。

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tag : 英語カンツォネッタ集 ライヴ録音

ハイドンとアビンドン卿

前記事でアップしたクイケン・アンサンブルのロンドン・トリオがあまりに良かったので、ロンドン・トリオがらみの未聴のアルバムを取りあげます。

HaydnAbingdon.jpg
HMV ONLINEicon / amazon

デレク・マカロック(Derek McCulloch)カフェ・モーツァルト(Cafe Mozart)の演奏による、ハイドンとハイドンの友人でもあったのアビンドン卿の室内楽や歌曲まとめた企画もの。収録は2007年5月31日と6月1日、ロンドンの北約50キロのヒッチン(Hitchin)近郊の街プレストン(Preston)にあるテンプル・ディンスレー(Temple Dinsley)でのセッション録音。ご覧のとおりレーベルはNAXOS。

アルバムタイトルは「ハイドンのアビンドン卿」。アビンドン卿とは、第4代アビンドン伯爵、ウィロービー・バーティという人で1740年生まれのイギリスの貴族。イギリス中部のマンチェスター東方のゲインズバラ(Gainsborough)生まれで、政治記者をしていた上、音楽家にとってのパトロンであった他、自身も作曲をしていた人。義理の父の縁でクリスチャン・バッハなどと親交があった他、ハイドンの友人でもあったようで、作曲はハイドンがすすめたとされています。

このアルバムには30曲が収められていますが、約半数がアビンドン卿が作曲したもの。もちろんハイドンと比べると作品の質に差のあるのは当然のことながら、こうして200年以上経過してから録音されアルバムになるとはアビンドン卿自身も想像だにしなかった事でしょう。

今日はそのなかから、もちろんハイドンの曲を選んでレビューしましょう。

Hob.XXVIa:31 / 6 Original Canzonettas 2 No.1 "Sailor's Song" 「船乗りの歌」 [A] (1795)
テノールはロジャーズ・カーヴィー=クランプ(Rogers Cobey-Crump)、伴奏はスクエア・ピアノでキャサリン・メイ(Katharine May)。イギリスっぽい発音の艶のあるテノールによる聴き慣れた曲。スクエア・ピアノの音はチェンバロっぽい音ですが、チェンバロとも少し違い箱っぽい音に感じます。朗々とした声の魅力で聴かせる歌ですが、スクエア・ピアノのリズムがちょっと重いのが惜しいところ。録音は鮮明で比較的オンマイクの音。前後に置かれたアビンドン卿の曲のリコーダーの音色が実に手作り感ある音楽だけに、この曲が逆に引き立つ感じなのが微笑ましいところ。

Hob.IV:9 / Op.38-4 Trio für Violine (oder Flöte), Violine und Violincello Nr.4 [G] (1784)
バリトン・トリオの曲に由来するフルート三重奏曲。ロンドン・トリオ同様1794年に書かれた曲。演奏はフルートはエドウィナ・スミス(Edwina Smith)、ヴァイオリンがオリヴァー・センディグ(Oliver Sändig)、バス・ヴィオールがイアン・ガミー(Ian Gammie)の3人。バリトンの精妙な音色のイメージが濃い曲ですが、フルートの清涼な音色に変わり、曲のイメージも変わってきます。アンサンブルの精度はそれほど悪くありませんが、やはりリズムの重さが少々気になるところ。知り合いの演奏会のようなカジュアルな感じに聴こえます。ハイドンの演奏当時はみんなで演奏をこのように楽しんだのだと言われているような演奏。

Hob.XXVIa:39 / "Trachten will ich nicht auf Erden" 「この世で何も得ようとは思わない」 [E] (1790)
1曲目と同様テノールのカーヴィー=クランプとスクエア・ピアノのキャサリン・メイの組み合わせの歌曲。カーヴィー=クランプの声はハイドンの歌曲にぴったりの声。朗々としかし叙情的なニュアンスも感じさせるデリケートな歌唱。ここではスクエア・ピアノの箱庭的な音色も雅な感じがしてなかなか盛り上げます。訥々とつぶやくようなスクエア・ピアノがようやく本領発揮。

Hob.XXVIa:34 / 6 Original Canzonettas 2 No.4 "She never told her love" 「彼女は決して愛を語らなかった」 [A sharp] (1795)
歌手がソプラノのレイチェル・エリオット(Rachel Elliott)に替わります。非常に透明感のある伸びの良い声。ハイドンの歌曲のイメージにドンピシャで絶妙の美しさ。短い曲ながらこのアルバムの聴き所でもあります。

Hob.IV:2 / Trio für 2 Floten (oder Flöte, Violine) und Violincello "London Trio" Nr.2 「ロンドン・トリオ」; [G] (1794)
ロンドン・トリオの2番の「貴婦人の姿見」のメロディーをフルート三重奏曲にしたものですが、ここでは最初のフレーズをテノールのカーヴィー=クランプ、指揮のデレク・マカロック、ヴァイオリンのミカエル・サンダーソンの3人が歌った導入という凝った演出。その後はフルートはジェニー・トーマス(Jenny Thomas)、エドウィン・スミス(Edwin Smith)とバス・ヴィオールがイアン・ガミーの3人の演奏。もちろん前記事のクイケン・アンサンブルの演奏の完成度には及びませんがなぜか手作り感のある演奏がとても印象に残ります。技術的な完成度だけが音楽を印象づけるものではないことを示してるような演奏。ハイドンの美しいメロディーを一生懸命演奏している汗を感じるような演奏。チェロではなくバス・ヴィオールの音色が変化を加えていますね。

Hob.XXVIa:16 / 12 Lieder No.4 "Gegenliebe" 「かなえられた恋」 [G] (1781)
先程美声に酔ったレイチェル・エリオットのソプラノに今度はイアン・ガミーのギターが伴奏を担当。やはり美しい声にうっとり。気に入りました。

Hob.IV:1 / Trio für 2 Floten (oder Flöte, Violine) und Violincello "London Trio" Nr.1「ロンドン・トリオ」 [C] (1794)
こちらは声の入らないフルート三重奏曲。2番のメンバーと同じメンバー。この演奏を聴くと逆にクイケン・アンサンブルの超自然的演奏の素晴らしさが際立ちます。もちろんこちらの演奏が悪い訳ではく、先程来の手作り感を感じるなかなかの演奏。

Hob.XXVIa:41 / "The Spirit's Song" 「精霊の歌」 [f] (c.1795)
名曲「精霊の歌」をレイチェル・エリオットの透明な声とスクエア・ピアノの組み合わせで。表現の幅はそこそこながら、透明感溢れる声の美しさは絶品。特に高音域の自然な響きと伸びは素晴らしいもの。

Hob.XXXIa:180 - JHW XXXII/3 No.173 / "Tak your auld cloak about ye"
この曲は作品番号ではこれなんですが、アルバムの曲には"When icicles hang on the wall"とあり、スコットランド歌曲集には同名の作品が見当たりません。カーヴィー=クランプのテノールにヴァイオリン、スクエア・ピアノ、バス・ヴィオールの組み合わせ。1分少々の小品。不思議と叙情的な語るような歌。アルバムの最後に置かれた曲。

カフェ・モーツァルトという団体の「ハイドンとアビンドン卿」という企画もの。アビンドン卿の曲にはちゃんと触れませんでしたが、ハイドンの時代に同時代で聴いているようなくつろいだ雰囲気が味わえる好企画と言ってよいでしょう。どの曲も技術的にはまだまだ上があるような演奏ですが、不思議に懐かしい感じと技術の欠点が粗と映らないない素朴な音楽の楽しみを感じるアルバム。ハイドンが好きな方には一度聴かれる事をお薦めします。評価は全曲[++++]とします。

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なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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