絶品 ラグナ・シルマーのピアノソナタ集(ハイドン)

すでにドイツは優勝してしまいましたが、ドイツ国歌がらみでもう一枚。

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ラグナ・シルマー(Ragna Schirmer)のピアノによるハイドンのピアノソナタなど9曲を収めた2枚組のアルバム。曲目は各曲のレビューをご覧下さい。収録は2007年8月1日から9日にかけて、ドイツのライプツィヒ近郊のハレ(ザーレ)のフランケ財団スタジオでのセッション録音。レーベルは独BERLIN Classics。

ラグナ・シルマーのハイドンはこれが2セット目で、最近ようやく手に入れたもの。手元には同じくBERLIN Classicsによる1995年録音の2枚組のアルバムがあり、それがなかなか良かったので探していたもの。

ラグナ・シルマーは1972年、ドイツのハノーファーの南にあるヒルデスハイム(Hildesheim)生まれのピアニスト。容姿端麗、人気ピアニストのようでBERLIN Classicsからは10枚以上のアルバムがリリースされています。幼少のころから才能が開花し、すでに9歳でピアノコンクールに優勝したそう。また、ライプツィヒで開催されている国際ヨハン・セバスチャン・バッハ・コンクールに1992年と1998年の2度優勝しているという経歴の持ち主。おそらくデビュー盤はバッハのゴールドベルク変奏曲で、このアルバムが話題となって広く知られるようになったということです。

最近印象にのこった女性ピアニストのハイドンといえば、ダリア・グロウホヴァのショパンのように詩的なハイドン。ラグナ・シルマーのハイドンはかなり正統的なもの。清透な清水の流れのような透明感溢れる響きが特徴。タッチのキレも良く、ハイドンのソナタをフレッシュに再生して弾いているような演奏。甘いマスクに華麗な経歴の持ち主のラグナ・シルマーのハイドンのソナタ集の第2弾、曲ごとにかいつまんでレビューしておきましょう。

Hob.XVI:37 / Piano Sonata No.50 [D] (c.1780)
挨拶代わりといった配置でしょう。1楽章の演奏はアルゲリッチの鬼気迫るようなキレではなく才女のキレのような印象。快活なリズムを刻んで行きます。ドラマティックな2楽章のラルゴも、ぐっと音楽は沈み込みますが、さらりとした爽やかな余韻の残るもの。そしてフィナーレもヴォルビックの口当たりのようななんともいえない透明感をはらみます。ハイドンのソナタの面白さを爽やかにまとめた演奏。

Hob.IX:11 / 12 Menuets arranged for clavier "Katharienentänze" "Redout Menuetti" (1792)
次の曲は12のメヌエットですが、4曲づつに3分割されて、ソナタの間に配置するという珍しい構成。全曲で透明感を基調とした響きで魅せたシルマーですが、このメヌエット集では、ゆったりと語るように曲を置いていきます。くだけたタッチで曲のメリハリを描くだけでなくどこか儚い色気が滲むあたりが流石です。

Hob.III:77 / String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
もちろん、2楽章の「神よ、皇帝フランツを守り給え」の変奏曲。意外に訥々と入ります。磨かれた表現というよりむしろ枯れた表現と言っていいでしょう。枯れた印象のなか右手の音階のきらめきの美しさをさりげなく感じさせます。変奏を聴き進むうちにシルマーの自然体のアプローチに引き込まれます。ピアノの美しい響きで純粋に聴かせる音楽。ドイツ国歌のメロディーが次々に変化を遂げ、音楽の芯がしっかりと響きながら力がすっと抜けて行くあたり、素晴しいコントロール。

つづいて先の12のメヌエットの中間の4曲を挟みます。

Hob.XVI:49 / Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
1楽章のリズムと展開の面白さが印象的な曲。タッチの上品なキレはやはりシルマーの特徴でしょう。この曲には名演盤が多いですが、シルマーの演奏は、バランスよく曲をまとめながら、タッチ、リズム、アクセントに微妙にアイデアがあり、しかも音楽が自然にながれるというところ。かなり玄人好みの演奏です。決して凡庸な演奏ではありません。2楽章のアダージョ・カンタービレでは、右手の美しいタッチをさりげなく際立たせながら、音楽は深く沈んでいくというなかなかの表現。そしてフィナーレでは軽やかなリズムの跳躍から少しづつ重みを増して行くあたりの微妙な変化が味わえます。

CD2に移ります。

Hob.XVI:47bis / Piano Sonata No.19 [e] (c.1765)
シュトルム・ウント・ドラング期まで遡る曲。冒頭のアダージョはぐっと沈み込むメロディーライン。その反動のように堂々としたアンダンテ。この対比を自然な流れを保ちながら表現。これは上手い。リズミカルなアンダンテになぜかほんのりと陰りがあり、音楽が深い。そして、実に自然なフィナーレへの展開。なにも迷いのない純粋な心境で弾いているのでしょう。さりげない演奏なのにゾクッとします。

Hob.XVII:5 / Tema con 6 variazioni "Faciles et agreables" 「やさしく快適」 [C] (1790)
有名なアンダンテと変奏曲(Hob.XVII:6)の一つ前の番号の演奏曲。落ち着いた主題が提示されたあと、そのテーマの6つの変奏が続きます。メロディーの変化だけではなく、タッチをかなり明確に変えて奏でられます。最初の変奏ではメロディーが複雑になり、次の変奏でテンポを上げ、さらに次の変奏で左手のタッチが冴え、こんどはゆったりとテーマを噛み締めるような変奏、そしてさらに沈み込み、最後は華麗、壮麗な変奏で結びます。この変奏ごとのタッチの変化が鮮明で聴き応え十分。基本的なテクニックの高さを見せつけます。

このあと12のメヌエットの最後の4曲が続きます。

Hob.XVI:11 / Piano Sonata No.5 [G] (1750's)
2楽章のアンダンテのみの演奏。ここだけ取り出して弾くと、まるでバッハのようなアンダンテ。短い曲ですが、神々しささえ感じる演奏。

Hob.XVII:10 / Allegretto [G]
音楽時計の曲から編曲された小曲。途中から時計のリズムのような不思議な伴奏が独特の雰囲気を醸し出します。こうしたさりげない小曲を、さりげなく深い印象を残すあたり、やはり流石な手腕です。

Hob.XVI:48 / Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
最後は有名曲。音の間に詩情が宿る、シルマーの美点が良く出た演奏。クッキリとメロディーの芯をきらめくような音で描き、また、ピアノの響きが消え入る瞬間の美しさでも聴かせるなど、かなりコントラストをハッキリつけた演奏が秀逸。このスリムなのに陰影の深い美しさはなかなか出せるものではありません。ピアノ音の厚さは男声ピアニストには敵いませんが、逆に凛としたメロディーの粒立ちとデリカシーは女性ピアニストならでは。2楽章のロンドもスリムな音色で実にクッキリと音楽を聴かせ、終盤左手のアタックでは、ピアノを鳴らしきる迫力も垣間見せます。聴けば聴くほど味わい深い演奏ですね。

ラグナ・シルマーによるハイドンのピアノソナタなど9曲を収めた2枚組のアルバム。最初はかいつまんで数曲取りあげて終わろうかと思っていましたが、聴き進むうちにシルマーの魅力に引き込まれ、全曲じっくり聴く事になりました。一聴すると小綺麗な演奏という印象でしたが、良く聴くと実に深い演奏。さっぱりとした雰囲気ながらクッキリと彫り込まれたメロディーに、ピアノの美しい余韻を織り交ぜ、しかもかなり表情をつけながらくどくならないセンスも持ち合わせています。洗練されたハイドンのソナタです。これは聴き応え十分。ハイドンのピアノソナタをじっくり味わうに足る素晴しいアルバムです。評価は全曲[+++++]としました。

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【新着】宇山ブヴァール康子のソナタ、音楽時計曲集

今日もすばらしいアルバムを紹介しましょう。先日HMV ONLINEから到着したばかりのアルバム。

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宇山ブヴァール康子(Yasuko Uyama Bouvard)のフォルテピアノの演奏で、ハイドンのピアノソナタ48番、49番、アンダンテと変奏曲(XVIII:6)、オルガンの演奏で、音楽時計曲8曲(XIX:11、14、12、13、10、24、15、9)を収めたアルバム。収録年はPマークが2012年とだけ表記されています。フォルテピアノはフランス南部、トゥールーズの県庁舎のサロン、音楽時計の方はトゥールーズのサン・ピエール・カルトゥジオ修道会教会堂(saint pierre des chartreux a toulouse)での録音。レーベルは仏EDITIONS HORTUSという未知のレーベル。

フォルテピアノによるピアノソナタとオルガンによる音楽時計曲という非常に珍しい構成のアルバム。一聴してフォルテピアノもオルガンも楽器を美しく響かせることに関して、非常に鋭敏な感覚をもった人との印象を受けました。しかも演奏は非常に自然で、ハイドンの音楽の豊かさがにじみ出てくるもの。良いアルバムそうですね。

奏者の宇山ブヴァール康子さんについて、ライナーノーツやらネットやらで調べてみたところ、現在はトゥールーズのトゥールーズ地方音楽院(Conservatoire à rayonnement régional de Toulouse)のハープシコードとフォルテピアノの教授とのこと。このアルバムでオルガンを弾いているサン・ピエール・カルトゥジオ修道会教会堂のオルガニストでもあるそうです。京都生まれで東京芸術芸大学でオルガンを学び、1976年に渡仏、フランスのオルガン奏者、ピエール・コシュロー(Pierre Cochereau)との出会いで大きな影響をうけたとのこと。フランスではオルガンとハープシコードをさらに学び、パリ国立高等音楽院でヨス・ファン・インマゼールにフォルテピアノを学び、フォルテピアノにも開眼。ハープシコードとオルガンでは国際コンクールで1等をとるなどの成果につながりました。その後、鍵盤楽器全般のソリストや室内楽の鍵盤楽器奏者として活躍し、録音もいろいろあるようです。このアルバムを聴いてまずピンと来た、楽器の音色に関する鋭敏な感覚、おそらくインマゼールから学んだものでしょう。インマゼールと似た透徹した感覚の持ち主とみました。

音楽時計については以前に2度ほど取りあげていますので、楽器や曲の解説は下記リンク先をご覧ください。

2011/06/13 : ハイドン–室内楽曲 : ペーター・アレキサンダー・シュタットミュラーの音楽時計曲集
2011/02/11 : ハイドン–協奏曲 : マルタン・ジュステルのオルガン曲集-2

レビューは収録順に記載します。

Hob.XVI:49 / Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
フォルテピアノは1785年製のアントン・ワルターのコピーで、2003年クリストファー・クラーク(Christopher Clarke)の作。録音会場は18世紀の板張りのサロンということで、状態の良い楽器が適度な大きさ、適度な残響のサロンで良く鳴っている録音。フォルテピアノがスピーカーの奥に定位してコンサートの席で聴くよう。流石インマゼール門下という素晴しい楽器の響き。一般的には残響がちょっと多めの録音ですが、聴きにくくはありません。宇山さんの演奏はゆったりとしたテンポで、メリハリを適度につけながら楽器の響きを自身で楽しんでいるよう。それでいてハイドンの書いた楽譜に込められた創意をくまなく拾い上げて、旋律の受け渡しや対比を楽しむ余裕があります。非常に穏やかな心情の持ち主なのでしょう、表現にはかなりのメリハリがつけられているのに、一貫して穏やかに曲が進みます。
2楽章のアダージョも同様。時折軽やかに装飾音を加えますが、メロディーラインがしっかり一貫しているので音楽の流れにぶれがありません。日本人ならではの清らかさも感じますが、表現の陰影が深いので、ともすると単調になりがちなところを、深い情感も帯びて聴き応え十分。深いアダージョの呼吸に打たれます。
フィナーレはテンポを速めますが、やはり楽器の響きを楽しむように落ち着いてハイドンの創意を響かせていきます。楽器のダイナミックレンジは素晴しく、強音の響きも澄みきっていて、弱音の繊細さも見事なもの。今まで聴いたフォルテピアノのの中でも最高のコンディションのものの一つでしょう。楽器の音響を踏まえた打鍵強度のコントロールも見事なもの。透明感ある表情から浮かび上がるハイドンの傑作ソナタを存分に楽しめる秀演と言っていいでしょう。

Hob.XIX:11 MS. Wien No.1 Allegretto [C] (before 1789)
Hob.XIX:14 MS. Wien No.4 Menuett [C] (before 1789)
Hob.XIX:12 MS. Wien No.2 Andante [C] (before 1789)
Hob.XIX:13 MS. Wien No.3 Vivace [C] (before 1789)
音楽時計曲は収録通り4曲まとめて。それぞれ1分少々の短い曲。このオルガンも実に美しい響き。オルガンの技術的なことは詳しくはありませんが、録音で聴けるオルガンの最上の響きと言って良いでしょう。曲ごとに音色をかなり変えて変化を付けます。フォルテピアノによるソナタと同様、演奏には揺るぎない安定感というか、非常に穏やかな心境で一貫して演奏していくのが印象的。この方、達観されていますね。音楽時計という細工物のために書かれた、微笑ましい小曲を、音楽時計以上に微笑ましく演奏していきます。本来壮麗、重厚であろうオルガンからおとぎ話のようなメロディーを紡ぎ出し、文字通りおとぎ話のような音楽。録音も鮮明で言うことなしです。

Hob.XVI:48 / Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
再びフォルテピアノの演奏に戻ります。楽器が変わっても音楽の穏やかさは一貫しています。間を十分にとって、この曲潜む詩的な表情を浮かび上がらせます。ブレンデルのピアノの演奏や、インマゼールのフォルテピアノの演奏がこの曲の刷り込み盤ですが、良く聴くと宇山さんの素直な響きの演奏もそれに勝るとも劣らない素晴しいもの。力強さも、詩情も負けていませんね。むしろ曲自体を楽しむにはこちらの方が良いほど。ちょっとハマってしまう良さ。2楽章構成のこの傑作ソナタを完全に手中に収めた素晴らしい演奏です。

Hob.XIX:10 Andante [C] (????)
Hob.XIX:24 MS. Niemecz No.3 Presto [C] (1789)
Hob.XIX:15 MS. Wien No.5 Allegro ma non troppo [C] (before 1789)
Hob.XIX:9 (Hob.III:57-III) Menuetto, Allegretto [C] (1788)
再び音楽時計曲4曲。今度はパパゲーノの吹く笛のような音色で来ました。やはり楽器の音色に関しては非常に鋭い感覚をもたれています。聴く人の想像力をかき立てる音色の変化。こればかりは聴いていただかなくてはわからないでしょう。たかが音楽時計のための曲と片付けられない深みを感じます。音楽とは音を楽しむものなりと諭されているよう。これまできいた音楽時計曲の演奏の中で間違いなく一番洗練され、一番楽しめる演奏です。

Hob.XVII:6 / Andante con Variazioni op.83 [f] (1793)
最後は再びフォルテピアノの演奏。間違いなくハイドンの最高傑作の一つです。この曲を最後にもってくるということは、ハイドンのことを熟知されているからに他ならないでしょう。前2曲のソナタと同様の一貫した演奏スタイルですが、テンポは前2曲より自由にとって、フレーズひとつひとつを噛み締めるように弾き進めていきます。右手のきらめき感も素晴しく、儚さをを帯びた美しいメロディーを繊細な表情と落ち着いた心で音にしていきます。淡々と変奏を重ねながら静かに心に刺さってきます。終盤の盛り上がりの力強さ、混濁感のない美しい響き、波の満ち引きの演出の巧みさ、そして穏やかな心境に裏付けられた、美しい音楽。この曲のフォルテピアノの演奏のなかでも飛び切り美しい演奏の一つでしょう。

初めて聴いた宇山ブヴァール康子さんの演奏ですが、これは素晴しい。フォルテピアノの演奏は、古楽器の弱点を一切感じさせない磨き抜かれた演奏。そして音楽時計曲もこれほどの完成度の演奏は聴いた事がありません。加えて素晴しいのがアルバムのプロダクションとしての完成度の高さ。初めて手にするレーベルですが、デザインのセンスもタイポグラフィーも素晴しいですね。昔ジュピターレコードでACCENTの美しいLPを手にした時と同じような悦びを感じます。評価はすべての曲を[+++++]とします。このアルバムのフォルテピアノの演奏、古楽器の演奏を苦手としている人にも聴いていただきたいですね。この雄弁なフォルテピアノによる深い詩情は、きっと気に入ると思います。

最近取りあげるアルバムが素晴しいので、レビューも楽しいです。

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ペーター・アレキサンダー・シュタットミュラーの音楽時計曲集

今日は超レア盤を紹介。

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ペーター・アレキサンダー・シュタットミュラー(Peter Alexander Stadtmüller)のオルガンによる音楽時計のための音楽を集めたアルバム。ハイドンの音楽時計のための音楽が29曲の他に、C.P.E バッハの曲が5曲、モーツァルトの曲が1曲、そしてベートーヴェンの曲が3曲収められています。収録年は記載されていませんが、Pマークが1978年と1990年となっていますので、それぞれの年以前に収録されたものと想像されます。

ハイドンの音楽時計の曲については以前に一度取りあげていますので、その記事へのリンクを張っておきましょう。

2011/02/11 : ハイドン–協奏曲 : マルタン・ジュステルのオルガン曲集-2

ついでに、その記事の音楽時計の解説部分もまるごと転載しちゃいましょう。

いつものように大宮真琴さんの「新版ハイドン」を紐解くと音楽時計のための曲の解説がありました。音楽時計(Flötenuhr)は、鋲つきの円筒、鞴(ふいご)、調律済みのパイプ列、捻子(ねじ)または錘り(おもり)で動作するオルガンのようなもので、オルゴールのオルガン版のようなものでしょうか。この装置にハイドンの音楽を刻んだものがいくつか残っており、そこに刻まれた音楽が音楽時計のための曲という訳です。ということでその再現はオルガンを演奏するということになります。

ハイドンの音楽を音楽時計に刻んだのは1780年にエステルハージ家の図書館長及び礼拝堂の司祭となったヨーゼフ・プリミティヴス・ニーメチェという人物で、ハイドンに作曲を学び、様々な楽器を演奏できた模様。彼が制作した音楽時計は3台が知られており、1789年製、1792年製、1793年製。その中に32曲の音楽が残されていたが、後に研究者のフェーダーによって26曲がハイドンの作とされた。後にもう1台1796年製の音楽時計もあること判明し、現在の音楽時計のための音楽が確定したようですね。


今日取り上げるアルバムに収録された曲とその印象は下記のとおり。最初の1772年の作とされるものは何かはわからす、大宮真琴さんの解説と整合性がとれません。大宮真琴さんの本の最後の作品リストでは1789年製のものの年代に?がついていますので、この音楽時計が1772年製との説があったと想像できるのでしょうか。ま、研究者ではありませんので大目に見てください。

この曲を演奏したペーター・アレキサンダー・シュタットミュラーは1930年、ドイツのシュトゥットガルト近郊の街、ハイデンハイム・アン・デア・ブレンツに生まれたオルガン奏者。シュトゥットガルトで教会音楽を学び、学校を卒業後はマリー・クレール・アランなどに師事。1953年からはローテンブルクで、1960年からはシュトゥットガルトで合唱指揮者や教会のオルガニストとして働き、その後ヨーロッパでは多くの放送用録音やオルガンコンサートによって知られるようになり、コンサートオルガニストとしてドイツ以外でも有名な存在となったとのこと。

1772年の音楽時計のための曲16曲(Hob.XIX:15、14、1、2、3、13、4、12、11、7、8、5、9、6、10、16)
以前も触れた通り音楽時計のための音楽は、サーカスで聴かれる手回しオルガンの曲のようなコミカルなメロディ。このアルバムの録音は中音域の良く通るオルガンの音が鮮明に捉えられており、録音は優秀。背後にオルガンの機械部分が動作する音が聴こえたりして、なかなか楽しめます。曲ごとにオルガンの音色が変わり、変化を楽しめます。シュタットミュラーは規則正しく機会仕掛けのように演奏していることがわかります。最後の曲がフーガとなり、締まった感じがするのが流石ハイドン。

1792年の音楽時計のための曲8曲(Hob.XIX:17、18、19、20、21、22、23、24)
最初の曲から、不思議なことに前曲よりも音楽時計により合った曲想のように感じます。演奏もより響きの純度が上がり、美しさも一段アップ。リズム感と推進力もアップして、シンプルな曲ながらオルガンの迫力ある演奏が非常に印象的。音楽時計の曲の演奏としては完璧でしょう。

この曲の後のモーツァルトのKV616は流石の一言。オルガンの美しい音色で奏でられたメロディーラインはモーツァルトならでは。

1793年の音楽時計のための曲5曲(Hob.XIX:25、26、27、28、29)
明るいマーチから始まり、素朴なアンダンテ、アレグレット、アレグロ、メヌエットと続きます。最後のメヌエットは交響曲103番「太鼓連打」の3楽章をもとにした曲で、良く知ったメロディー。

音楽時計のための曲は音域もせまく曲調もシンプル故演奏はそれほど難しいものではないのでしょうが、それらしく演奏するのはそれなりに技術もいるのでしょう。評価は[++++]としておきましょう。このアルバム、非常にマニアックなアルバム故万人向けではありませんが、ハイドンが好きと言う方にはバリトントリオやリラ・オルガニザータ協奏曲などとならんで、手に入れておくべきアルバムだと思います。音楽時計のための曲がこれだけ集められたアルバムは他になく、演奏も理想的ですので。

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マルタン・ジュステルのオルガン曲集-2

さて、前の記事の続きです。

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マルタン・ジュステル(Martin Gester)のオルガン、指揮でハイドンのオルガンの入る曲を集めたアルバム。収録順に、サルヴェ・レジーナ(XXIIIb:2)、ピアノ(オルガン)ソナタ(XVI:37)、オルガン協奏曲(XVIII:7)、音楽時計のための曲5曲、オルガン協奏曲(XVIII:8)。オケはル・パルルマン・ドゥ・ムジーク(Le Parlement de Musique)、収録は1992年9月、フランス北部のランス近郊の街、フェール=アン=タルドゥノワの教会(Eglise Saint-Mâcre)で。

今日はオルガン協奏曲(XVIII:7)からですが、先に音楽時計のための曲を取り上げましょう。

いつものように大宮真琴さんの「新版ハイドン」を紐解くと音楽時計のための曲の解説がありました。音楽時計(Flötenuhr)は、鋲つきの円筒、鞴(ふいご)、調律済みのパイプ列、捻子(ねじ)または錘り(おもり)で動作するオルガンのようなもので、オルゴールのオルガン版のようなものでしょうか。この装置にハイドンの音楽を刻んだものがいくつか残っており、そこに刻まれた音楽が音楽時計のための曲という訳です。ということでその再現はオルガンを演奏するということになります。

ハイドンの音楽を音楽時計に刻んだのは1780年にエステルハージ家の図書館長及び礼拝堂の司祭となったヨーゼフ・プリミティヴス・ニーメチェという人物で、ハイドンに作曲を学び、様々な楽器を演奏できた模様。彼が制作した音楽時計は3台が知られており、1789年製、1792年製、1793年製。その中に32曲の音楽が残されていたが、後に研究者のフェーダーによって26曲がハイドンの作とされた。後にもう1台1796年製の音楽時計もあること判明し、現在の音楽時計のための音楽が確定したようですね。

このアルバムにはその中から5曲がとりあげられており、収録順にXIX:10、XIX:11、XIX:15、XIX:27、XIX:28です。それぞれ1分から長くても3分弱の小曲ですが、これが音楽時計から聴こえてくるところを想像しながら楽しむのはなかなか乙な気分。サーカスで自転車につまれた手回しの自動オルガンの演奏のような風情。音域も限られたもので、テンポもゆらすべきものではありませんが、そのような限定のある中でも音楽として充実したものがあるのは驚きです。特殊な音楽であるのは正直なところですが、ハイドンの機知をつたえる貴重な録音ということができるでしょう。

そして最後に残ったオルガン協奏曲を2曲。まずは先に収録されたXVIII:7。

オルガン協奏曲といっても昨日の記事の冒頭で触れたサルヴェ・レジーナと同様のヴァイオリンが2人である以外は各楽器が1人というコンパクトな編成ゆえ、オケの響きは純粋そのもの。オルガンの圧倒的存在感が際立ち、リズムもオルガンが先導する感じですね。テンポは中庸、響きの透明度は最高、古雅な音色による落ち着いた演奏です。ヴァイオリンの奏でるメロディーラインとオルガンの決してスリリングという感じではない落ち着いた掛け合いが聴き所でもあります。
2楽章はオルガンの奏でる素朴なメロディーの美しさが非常に印象的。弦は完全に脇役にまわってます。決して広い音域を使っている訳ではありませんが、音楽の浸透力は流石。オルガンの響きの中に引き込まれそうです。
3楽章は厳かなテンポによる重厚な入り。決してまくることはなく、落ち着いた範囲での速めのテンポでフレーズを楽しみながら演奏している感じがよくでています。もともとリズミカルな曲想故推進力は必要十分。

そして最後はXVIII:8。前曲と曲想が似ており、ほとんどの要素が重なります。冒頭少し後に音程が少々ふらつく部分がありますが、こちらもそこそこ良い演奏。オルガン主体の協奏曲の良い演奏と言えるでしょう。

この記事で取り上げた曲の評価は、すべて[++++]というところでしょう。音楽時計のための曲は珍しいものですが、ハイドンの遊び心を感じるほのぼのとした曲。オルガン協奏曲の方は、小編成のオケによるオルガン協奏曲の模範的演奏という位置づけと感じました。



今日は雪の中仕事にでかけて、夕刻帰ってきました。先週とおなじく近所の鹿児島料理屋さんに直行。

食べログ:遊食友酒・菜

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雪でさむかったので暖かいものを頼もうかと思ったのですが、結局生ビールに。嫁さんはしその焼酎、鍛高譚のお湯割りを。今日は白子ポン酢から。

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今日のおすすめは水餃子。水餃子といっても本格的なものではないんですが、スープの中に豆腐や餃子、わかめ、葱などがこれでもかというほど入っていて、量は鍋2人前(笑)。暖まりました。

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こちらは豚モツ炒め。ホルモンの歯ごたえがなかなか。

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そしてたらの芽の天ぷら。先週と同じ銘柄の呑み比べを頼んで、程よくいい気分に。そろそろマスターか奥さんがこのページの存在に気づくはずなんですが(笑)

さきほど帰って、風呂に入りました。久しぶりに一時話題になった草津温泉ハップを入れて入浴。体が心から温まりますね(笑)

今週もハードでしたので今日は早めに休むことに致しましょう。

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プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
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