マルクス・シュテンツ/新日本フィルの哲学者、驚愕(すみだトリフォニーホール)

昨日2月2日はチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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新日本フィルハーモニー交響楽団:♯583 トパーズ<トリフォニー・シリーズ>

マルクス・シュテンツ(Markus Stenz)指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団。プログラムは下記の通り。

ハイドン:交響曲第22番「哲学者」
ハイドン:交響曲第94番「驚愕」
ヘンツェ:交響曲第7番

このコンサートはもちろんハイドンの曲が含まれるということで目をつけていたものですが、ハイドンはハイドンでも冒頭に置かれた哲学者という滅多に実演には取り上げられない曲がプログラムに含まれるということで、格別の興味を持ったもの。指揮者のマルクス・シュテンツも未聴の人。

マルクス・シュテンツは1965年、ドイツのボンの南にあるバート・ノイェンアール=アールヴァイラー(Bad Neuenahr-Ahrweiler)生まれの指揮者。ケルン音楽院で学び、タングルウッドではバーンスタイン、小澤征爾に師事したそう。現在はオランダ放送フィルの首席指揮者、ボルティモア交響楽団の首席客演指揮者を務めています。1988年にベネチアのフィニーチェ劇場でヘンツェの「若い恋人たちへのエレジー(改訂版)」を初演して以降、ヘンツェの多くの作品の世界初演を担当しており、ヘンツェには格別のこだわりがあるようです。日本ではN響に客演している他、2016年末の読響の第九の指揮を担当するなどそこそこ知られた存在でしょう。手元にアルバムもないため、私はこの日がシュテンツとは初顔合わせです。またヘンツェの曲も聴いた記憶もないため、こちらもこの日初めて聴きます。



平日ゆえ仕事を定時過ぎに切り上げ、新宿からちょっと離れた錦糸町まで向かいますが、中央線と総武線の乗り換えもスムーズでそれほど時間がかからないことがわかりました。

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いつものように先に到着していた嫁さんが、ホールの2階の北斎カフェでサンドウィッチを買って待ってましたので、ワインとサンドウィッチで軽く腹ごしらえをして、期待のコンサートに備えます。

開演は19:00ですが、開演前からオケのメンバーが入り、ほとんど19:00ピタリに演奏が始まるという異例の正確さ(笑) 最初の哲学者のオケの配置は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが両翼に配置され、ヴィオラが指揮者正面、そしてそのヴィオラの左右にチェロが別れて座るという対称性にこだわった珍しい配置。この日の席は珍しく指揮者の真後ろの真ん中と左右から鳴らされる音を聴き分けるには最適な席。

拍手に誘われシュテンツが指揮台に登壇、大柄な体を揺すって気さくな笑顔で観客に挨拶し、すっと振り返ってタクトを持たずにオケに合図すると、実にユニークな曲想の哲学者の演奏が始まります。テンポは心持ち速めでヴァイオリンは現代風にノンヴィブラートで透明感を重視したもの。この曲は色々な演奏で随分な数を聴いていますが、いきなり驚かされたのが、シンプルなメロディーの多くが左右の第1、第2ヴァイオリンの緻密な掛け合いで交互に演奏されていること。特に指揮者の背後で左右の掛け合いが鮮明にわかる席だったので、その構成の緻密さにはかなり驚きました。シュテンツはフレーズごとにかなりはっきりとコントラストをつけ強弱を鮮明にコントロール。インテンポでハイドンの書いたメロディーを目一杯デフォルメしながら、のどかな曲想から目眩くように変化の面白さをあぶり出す見事なコントロール。そしてメロディーを担当するくすんだ音色のイングリッシュホルンが上手のオケ席後ろ、ホルンが下手のオケ席後ろで立って演奏するというユニークな配置で、オケの左右の掛け合いの面白さを強調。先に書いた弦楽器の左右対称配置と相まって、これがこの掛け合いの面白さを最大限に発揮させるための熟考された配置であることがわかりました。演奏はさながらファイのようにスリリング。というより、ファイよりスリリングでしかもやり過ぎ感は皆無な見事なまとまり。この曲をのどかなメロディーの魅力で聴かせる演奏は数あれど、これほどまでにスリリングな演奏は初めて。1楽章からコンサートマスターの豊嶋さんの見事なボウイングを間近で見ながら素晴らしい演奏を堪能。
1楽章が終わると、先ほどまで両翼に立って演奏していたイングリッシュ・ホルンとホルンの奏者が正面の席に戻ります。シュテンツが再び合図を送ると、このプレスト楽章では前楽章以上にヴァイオリンのキレが際立ち、左右のヴァイオリンの掛け合いはよりスリリングになり、全奏者が体を揺らしてシュテンツに指示されたアクセントを次々にキメていく快感に満たされます。特に第2ヴァイオリンのヴァイオリンの息のあったボウイングは見事。メヌエットは楔を打つようなアクセントをところどころに挟み、舞曲というよりはリズムにも大胆に変化をつけた構成で、オケはシュテンツの巧みな構成にしっかりとついて行く熱演。アタッカで来ると思った終楽章もしっかりと間をとって始まりますが、この湧き上がるような上昇感が各所に散りばめられた曲に対し、シュテンツはその度に体をブルブルと揺らしてオケを煽ります。シュテンツの指揮ぶりは決してタイミングの指示が明確なタイプではないのですが、オケの反応は完璧。よほど練習をしっかりしたとみえてシュテンツの意図に従ってというより意図を先読みして見事な演奏。最後の湧き上がるようなフィニッシュもピタリと決まって、このハイドンの小交響曲を見事に仕上げました。

シュテンツも最初の曲のオケの俊敏な反応に満足そうな笑顔で奏者をたたえていました。続く驚愕のために奏者が少し入れ替わります。

続く驚愕も実にスリリング! 聴きどころの1楽章は、冒頭、シュテンツのポイントの把握しにくい指揮に各パートの入りが少し乱れるところがありましたが、すぐに落ち着き、基本的に少し速めのテンポで、各パートだけでも極めて大胆なコントラストをつけたかなり踏み込んだデフォルメを利かせますが、パート間のスリリングなやり取りの面白さが際立ち、まるで初めての曲を聴くような新鮮さ。そして要所でブルブルと体を揺らしながらオケを煽りまくって炸裂させる波の連続と、やはりファイを上回るファイ感(笑) ヴァイオリンの音階のキレの良さもノンヴィブラートな透明感と相まって実に美しい透明感が漂い演奏に華を添えていました。
見事な1楽章から、肝心のびっくりアンダンテに入ると、やはり何か仕掛けがありそうな予感をさせる、抑えて穏やかな演奏。すると居眠りしていた打楽器奏者に対し、他の奏者がオケを横切りびっくりのところでティンパニを叩いて去るという演出付きでした。もちろんその後の展開部のスリリングさ、ダイナミックさは期待通り、重厚さよりスピードとキレを求めた迫力に圧倒される見事なコントロール。そしてメヌエットはオケの響きの起伏の変化の面白さが聴きどころ、フィナーレではところどころでテンポを極端に落として、熱を冷まして再び炸裂する迫力をますような演出をさせていたのがユニーク。もちろん、観客はおそらく予想外のハイドンの素晴らしい演奏に拍手喝采。誰もこれほどのハイドンが聴けるとは予想していなかったのではないかと思います。私にとっても実演でこれほどの素晴らしい演奏に接すると思っても見なかっただけに非常に満足度の高い演奏でした。

休憩を挟んで後半はこの日のメインディッシュであるヘンツェの交響曲7番。メシアンもデュティユーもブーレーズもリームも聴きますがヘンツェは初めて。この曲はベルリンフィル創立100周年を記念して委嘱され1984年にジャンルイジ・ジェルメッティによって初演された作品。ヘンツェがベートーヴェンの伝統に従い、急・緩・スケルツォ・急という楽章構成に従って作曲した曲で、後半2楽章はドイツの詩人フリードリヒ・ヘルダーリンに影響を受け、ヘルダーリンの苦悩や詩を音楽化したものとのこと。曲は4本のチェロにる暗鬱なメロディから始まり、予想通り不協和音のクラスターが乱舞する難解なものですが、指揮者の真後ろで聞くと、各パートがかなり緻密なコントロールで演奏していることがよくわかり、前衛画家の細密画を間近で眺めるような感じ。おそらく作曲意図はこの不協和音による混沌とした響きの微妙な変化にアーティスティックさを求めたものであろうかと思いますが、緻密さと迫力、そしてオケの見事な演奏はわかったものの曲の真意を汲み取るまでには至りませんでした。まずはこちらの器の問題でしょう。シュテンツの指揮は見事で、オケも一糸乱れぬ快演ということで、最後はカーテンコールが繰り返されました。終演後嫁さんが「武満の偉大さがわかったわ」と意味深なことを呟きましたが、やはり音楽にはテーマがあり、ヘンツェの混沌は常人には難解だということでしょう。

久々の新日本フィルでしたが、オケの演奏水準は非常に高く、前半のハイドンの素晴らしさもあって、楽しめたコンサートとなりました。



ここ数日は母親はショートステイで介護の心配はないため、錦糸町で一杯やって帰ることにしました。

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食べログ:酒屋ばる Tocci

すみだトリフォニーホールの道路を挟んで向かいにあるバル。嫁さんが行きに見かけて良さそうだと目星をつけておいた店。満員の賑わいでしたが、幸い2席のみ空いていてすぐに入れました。お酒はビール、ワイン、日本酒、ウィスキーとなんでも御座れのお店。すぐにオススメのヒューガルテンとワインレモネード(笑)で乾杯。

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まずは豚のハムをつまみます。

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しらすの入った揚げ物。名前忘れました(笑) ビールに合いました。

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喉が渇いていたので、すぐにお酒を追加。グラスの白にスパークリング。

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そして生うにのリゾット。これがウニの香りが乗ってなかなか。量もかなりあって、この辺で打ち止めにしても良かったんですが、、、

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メニューに気になるものがあり、注文してみたのが焼きアボカド テキーラの香り。炎に包まれて出てきたアボカド。日が消えて熱々のところをスプーンですくって食べますが、これが絶妙に美味い。これは見事なアイデアですね。

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そしてイタリアンバルの定番、トリッパ。これも香ばしくて美味かった。

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今日は非常に充実したコンサートだっただけに酒が進みます。私はマッカランをニートでいただきます。昔は何本もいただいたマッカランですが、最近はご無沙汰。口に含んだ瞬間、マッカランらしい蜜のような甘みとバランスの良い樽の香りが広がります。いやいやいいですね。

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嫁さんはバニラアイスのバルサミコソース。ウィスキーとは違う甘みに嫁さんも満足げ。ここはカジュアルな感じでお酒の種類も多く、コンサート帰りに一杯飲むのにオススメのお店でした!



いやいや、この日はいいコンサートでした。マルクス・シュテンツ、要チェックです。新日本フィルの中の人、ハイドンを再びプログラムに入れてください!

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マリス・ヤンソンス/ベルリンフィルの「驚愕」(ハイドン)

久々に映像ものを取り上げます。

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TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のベルリンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、モーツァルトのフルート協奏曲K.314 (285d)、ベルリオーズの幻想交響曲の3曲を収めたBlu-ray。収録は2001年5月1日、ベルリンフィル恒例のヨーロッパコンサートで会場はトルコのイスタンブールの聖イレーネ教会でのライヴ。レーベルはEUROARTS。

この映像、存在は知っていたものの、手に入れたのはごく最近のこと。

マリス・ヤンソンスのハイドンは過去に2度取り上げていますし、昨年バイエルン放送響との来日公演で「軍隊」も聴いています。

2016/11/27 : コンサートレポート : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響の「軍隊」(ミューザ川崎)
2013/05/11 : ハイドン–交響曲 : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響のロンドン、軍隊
2011/08/11 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

ヤンソンスは皆さんご存知の通り、世界の一流指揮者の一人であり、非常に丁寧なコントロールで音楽をしなやかに聴かせる人です。ヤンソンスのハイドンはそのしなやかな魅力がベースの演奏ですが、過去に取り上げた演奏では、少々磨き過ぎて丁寧に過ぎる印象もちょっと感じさせ、ハイドンの直裁な魅力を十分に表現しきれていない印象も持っていました。ただ、昨年聴いた「軍隊」のコンサートはやはり素晴らしく、ちょっと見直したのが正直なところ。そう思っている中、このBlu-rayが目に入ったので手に入れた次第。

過去に取り上げたアルバムではバイエルン放送響との交響曲集が2003年と2007年、ハルモニーミサが2008年ということで、今日取り上げる2001年の「驚愕」が最も古い演奏ということになります。

Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
聖イレーネ教会は荒い肌の積み石がむき出しのイスタンブール最古の教会。雰囲気はなかなか良いのですが録音に適するようには思えません。ただその辺はうまく音響処理しているのか、普通のコンサートホールでの録音と言われてもわからないほど自然な音に録られています。冒頭が「驚愕」ですが、序奏からヤンソンスの魔法にかかったようにベルリンフィルからビロードのような柔らかい響きが引き出されます。ヤンソンスは指揮棒を持たず、体全体を使って非常にリズミカルな指揮ぶり。そして驚愕の聴きどころである1楽章の緊密な構成を非常に自然に描いていきます。特に素晴らしいのがリズムのキレ。流れるような演奏とはこのことでしょう。そしてヤンソンスの面目躍如なのがすべてのフレーズが丁寧に磨かれているかのような美しさ。映像で見るとなおさら磨きっぷりまでよくわかります。1楽章は大理石の透明感まで伝わるような白亜の大神殿のような優美な姿を見せます。
続くびっくりのアンダンテもこれ以上美しく演奏するのは難しいほど流麗なもの。びっくりの部分は適度な迫力でこなしますが、続く変奏では速めのテンポで見通し良く展開するので抜群の面白さを味わえます。まさに古典の均衡を味わえる見事な演奏。ヤンソンスの指揮姿を見ていると、見通し良くリズムを刻むところに細心の注意を払っていることがよくわかります。
そしてハイドンの交響曲で意外に単調になってしまいがちなメヌエットもヤンソンスの手にかかると躍動感に溢れる舞曲として弾みます。ベルリンフィルもいつもの剛腕ぶりから華麗な響きに変わり、シェフが変わるととろけるような甘みを見せます。
そしてフィナーレもまろやかな入りから、徐々にオケに力が宿り、軽やかに、華麗に、そして時に図太く変化しながら最後のクライマックスに向けて盛り上がっていきます。これほど華麗なこの曲のフィナーレは聴いたことがありません。最後はベルリンフィルの底じからをさらりと聴かせ終わります。いやいや素晴らしい。

マリス・ヤンソンスの驚愕、オーソドックスな演奏ながら、極めて完成度の高い極上の演奏でした。先日実演で聴いた「軍隊」も素晴らしかったんですが、この驚愕も見事の一言。評価は[+++++]とします。ヤンソンスは旧バルト三国のラトビア出身ですが、独墺系の伝統とは少し異なるロマンティックな古典の美しさの表現が上手いですね。実演に接してからヤンソンス流のハイドンにも違和感を感じなくなってきました。先日ハイドン音盤倉庫特選としてザロモンセットの名演奏を選んだ中で、驚愕はクライバー盤を選んだのですが、この映像も驚愕の名演奏としておすすめできるものです。未聴の方は是非。なぜかローチケHMVだけBlu-rayにもかかわらず1000円ちょっとで手に入ります。

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【ハイドン音盤倉庫特選】ザロモンセットの名演奏(前編)

突然ですが、新企画です!

日頃は1枚1枚のアルバムをレビューすることに徹しておりますが、私の興味の矛先がだんだんマニアックになってきて、レビュー対象もこのところマイナー盤やLPが多くなってきております。自然と読者の方もハイドンマニアの方中心になっており、読者層がなかなか広がらない状態で、これはとりもなおさずハイドンの音楽の素晴らしさを世に広めるという当ブログのミッションの達成が危ぶまれるというもの。ということで、このマンネリズム的状況から脱出すべくハイドンの有名曲のベスト盤をあえて世に問おうという起死回生の新企画を立ち上げます。

私自身は以前ブログに書いた通り、人が良いと勧めるものを聴くということはあまり好まず、自分の耳で聴いて、良い演奏を発掘するすることに無類の喜びを見出し、知る人ぞ知る名盤を発掘する巡礼の旅を続けております。もとより世の中に氾濫するベスト盤的な情報はあんまり信用しておらず、実際に雑誌などで勧められているハイドンのベスト盤などよりも素晴らしい演奏が山ほどあることを長年かかってわかったこともそうした思考に至る理由の一つです。ただし、そんな私も振り返ってみると、これまで雑誌などで目に留まった記事などを頼りに暗中模索的に1枚ずつアルバムを手に入れることを繰り返してながらかなりの数のアルバムを聴いてきた経験があるからこそ、そうした境地に至ったのかもしれないと改めて思った次第。

ということで、新企画はハイドンの音楽の素晴らしさをより多くの人に知っていただくため、膨大なハイドンの録音の収集とレビューを続けている当ブログだからこそ選べる、ハイドンの音楽の真髄に迫る名演奏を選定するもの。選定方針としては、多少の入手のしにくさなどには目をつぶり、その曲が持つ魅力を最も深く味わえる演奏とし、世評は意識せず、私自身が最も好きな演奏を選ぶというのが大方針。日頃ヒストリカルな演奏から古楽器、現代楽器を問わず広く色々な演奏を取り上げておりますが、本企画でもそうした演奏スタイルなどに拘らずに選定していこうと思います。また、選定対象は過去にレビューに取り上げたアルバムが多くなりますが、当ブログの記事を隅々まで読まれている方にも新鮮さを確保するため、ブログに未掲載の演奏も選定対象として加えました。名付けて「ハイドン音盤倉庫特選」シリーズ。手始めにハイドンの交響曲の有名曲として、ザロモンセットの前半6曲の特選盤を新企画最初の記事としてしたためました。



Hob.I:93 Symphony No.93 [D] (1791)

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2010/06/13 : ハイドン–交響曲 : 剛演、アンチェルの93番

作曲順では96番「奇跡」がザロモンセットの最初の曲ですが、ホーボーケン番号が一番若いためにザロモンセットでも最初に収録されることが多い曲。選んだのはチェコの巨匠、カレル・アンチェル指揮のベルリン放送交響楽団の演奏で、1957年4月24日の放送用録音。手元の49種の演奏の中で飛び抜けて印象的な演奏。ブログ初期に取り上げていますが、未だこれを超える演奏には出会っていません。赤熱する鉄の塊から刀鍛冶が渾身の力で刀を打ち出していくかのような激熱の演奏。ハイドンらしい構成感が美しい曲ですが、この典雅な曲からこれほどのエネルギー溢れる演奏が生まれるとは! この演奏を聴くまではこの曲はビーチャムやヨッフムの味わい深い演奏がお気に入りでしたが、この演奏によって曲の印象は一変。ハイドンの楽譜の中にこのエネルギーが込められていたことをアンチェルが見抜いたのでしょう。この1枚でカレル・アンチェルの凄さを知った次第。


Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)

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2013/02/09 : ハイドン–交響曲 : カルロス・クライバー/ケルン放送交響楽団の驚愕1972年ライヴ!

ご存知びっくり交響曲。104番「ロンドン」と並んで人気のある曲。この驚愕こそ世の中の人に最も知られたハイドンの曲であり、ハイドンのイメージを良くも悪くも代表する曲。2楽章のびっくりばかりが一人歩きしていますが、この曲の真髄は1楽章から4楽章までの明確な起承転結の構成感と優美なメロディー。名演奏ひしめく手元の117種の演奏から私がこの曲の決定盤に選んだのは、カルロス・クライバー! クライバーの驚愕には3種の録音がありますが、これはその中でも最も古い1972年のケルン放送交響楽団とのライヴ。世界をあっと言わせたウィーンフィルとの「運命」のDG盤が1975年のリリースですので、それより前の若さみなぎるクライバーの演奏。残念ながら海賊盤しかリリースされていませんが、この録音が音質も一番いいもの。クライバーが振ると、もちろん全編に燃えたぎる力感と優美さが調和する、まるでミケランジェロの彫刻のような存在に昇華されます。最初から最後までクライバーの天才ぶりに圧倒される素晴らしい演奏です。


Hob.I:95 Symphony No.95 [c] (1791)

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2010/04/21 : ハイドン–交響曲 : 枯淡、シューリヒトのハイドン

ザロモンセットの中で唯一の短調の交響曲。それゆえ比較的地味な存在ですが、1楽章冒頭の険しさ、全編に散りばめられた美しいメロディー、そして終楽章の燃え上がるようなクライマックスが魅力の曲。手元の49種の演奏の中で私が最も愛する演奏はカール・シューリヒトがシュツットガルト放送響を振った1955年4月5日の録音。このアルバムは直接レビューしておりませんが、上のブログ初期の記事で86番を取り上げた際にこのアルバムに触れています。シューリヒトのハイドンでは104番ロンドンと86番が味わい深い名演として有名ですが、どっこいこの95番こそシューリヒトの素晴らしさが味わえる演奏です。柔らかくしなやかに響くオーケストラですが、造形は端正で、ハイドンの交響曲の骨格をしっかりと描き、その上そよ風のような心地よさと滲み出るような味わいの深さ。それがこの95番交響曲のもつ可憐な表情を描き切っています。アンダンテの美しさはこの世のものとは思えな境地、そして終楽章の自然で流麗なのにものすごい迫力に至るところは見事の一言!


Hob.I:96 Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)

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2010/02/11 : ハイドン–交響曲 : アバドの「奇跡」

1791年、ハイドンが最初にロンドンを訪れた時、最初に作曲した曲。「奇跡」というニックネームはこの曲の演奏時にハイドンを一目見ようとハイドンの周りに観客が殺到した際、会場のシャンデリアが落下したものの、奇跡的に一人の怪我人も出なかったという逸話によるもの。気のせいか曲自体にもミラクルな感じがするところが面白いところ。手元にある67種の演奏から、このミラクルな曲のミラクルな演奏といえば、クラウディオ・アバドがヨーロッパ室内管を振った1986年の演奏です。この時期、アバドはヨーロッパ室内管とザロモンセットから8曲と協奏交響曲などを録音していますが、そのシリーズの中でも飛び抜けてこの奇跡が素晴らしい出来です。奇跡といえばワルター、クリュイタンスなどの名演盤を推す方もあろうかと思いますが、このアバドの演奏は若手中心のヨーロッパ室内管の驚くほど俊敏な反応の良さで聴かせる演奏。アバドのニュートラルな指揮はこの曲の純音楽的な構成の面白さを際立たせ、終楽章の火を吹くような鮮やかさはまさにミラクル!


Hob.I:97 Symphony No.97 [C] (1792)

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2010/03/22 : ハイドン–交響曲 : クイケンのザロモンセット

ハイドンが第1回目のロンドン旅行中の1792年に作曲した曲。熱狂的に迎えられたロンドンでの充実した日々を経て、交響曲の筆致も熟成を極めたハイドンが書いたハ長調の晴朗、端正な曲。ニックネームがないことから比較的地味な存在ですが、この端正な曲には端正な演奏が似合います。手元の49種の演奏から選んだのがシギスヴァルト・クイケンの振るラ・プティット・バンドによる1993年の録音。古楽器のザロモンセットの録音には古くはグッドマン、ブリュッヘン、ミンコフスキなどのものがありますが、私が一番好きなのはこのクイケンのもの。どの曲も端正な演奏ながら音楽がイキイキとした名演奏なんですが、中でもこの97番は古楽器オケが気持ちよく鳴り響く名録音です。この曲のメヌエットは典雅の極み。古楽器の響きに包まれるエクスタシー。リズムのキレも最高。最後まで一糸乱れぬ古楽器オケによる最高の演奏です。


Hob.I:98 Symphony No.98 [B flat] (1792)

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ザロモンセット前半最後の98番。97番同様第1回のロンドン旅行中の作曲。98番もザロモンセットの中では地味な曲ではありますが、緊密な構成であることはもちろん、美しい緩徐楽章、機知に富んだ展開に溢れ、特に終楽章の最後にチェンバロのソロが登場することで有名な曲。この曲の52種の演奏から私が選んだのは、オイゲン・ヨッフム指揮のロンドンフィルによる1972年録音のアルバム。ヨッフムとロンドンフィルとのザロモンセットは多くの方の愛聴盤となっているいわば定番。98番は特に終楽章に一貫性を持たせるのが難しい曲ですが、ヨッフムの速めのテンポによる非常に流れの良い演奏と自然なデュナーミクによって、まるで絵巻物を見ていくように音楽が一貫して流れる心地よさを味わえます。当初、少し前にレビューしたヨッフムが1962年にベルリンフィルを振った殺気を感じるほどの切れ込みと迫力を味わえる録音を選ぶつもりでしたが、98番についてはロンドンフィル盤の流麗な見通しの良さの素晴らしさが勝ると確信し見直しました。この曲には他にドレスデンシュターツカペレとの盤の燻し銀の響きを味わえる録音もあり、3者とも素晴らしい演奏です。
(参考)2014/04/25 : ハイドン–交響曲 : オイゲン・ヨッフム/ベルリンフィルの88番、98番(ハイドン)



以上、ザロモンセット前半6曲の名盤セレクションでした。本記事を書くために色々なアルバムを聴き直しましたが、それはそれで楽しい時間でした。有名曲だけに、読者の皆様も色々と愛聴盤があろうかと思います。ご意見、お叱りなどありましたらコメントの方にどうぞ!

ちょっと間を置いて、ザロモンセットの後半6曲についても書きたいと思いますのでご期待ください。

※本記事で取り上げた演奏について所有盤リストには"Best Choice of Works"というリンクを貼り付けました。

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ジュリーニ/フィルハーモニア管1956年の「驚愕」(ハイドン)

最近オークションで手に入れたLPです。

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カルロ・マリア・ジュリーニ(Carlo Maria Giulini)指揮のフィルハーモニア管弦楽団(Philharmonia Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」をおさめたLP。LP自体に収録年の表記はありませんが、ジュリーニのディスコグラフィーをネットで調べてみると、この録音は1956年10月4日、5日にされた模様。レーベルはEMIですが、日本のコーキ出版というところがリリースした"Library of Immortal Classics" というシリーズの第5巻。ジュリーニの驚愕はB面で、A面はメニューヒンの振るバース音楽祭室内管弦楽団の演奏による「告別」です。

ジュリーニの振るハイドンは今まで3度ほど取り上げています。

2014/04/13 : ハイドン–協奏曲 : シュタルケル/ジュリーニ/フィルハーモニア管のチェロ協奏曲2番(ハイドン)
2011/07/22 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジュリーニ/ベルリンフィルの驚愕ライヴ
2010/09/20 : ハイドン–交響曲 : ジュリーニの驚愕

最初に取り上げた驚愕の記事からリンクしているディスコグラフィーによると、ジュリーニのハイドンの録音はこの94番「驚愕」に集中しており、他には99番、104番「ロンドン」、シュタルケルとのチェロ協奏曲が1種づつあるのみ。「驚愕」はこれまで取り上げている76年のベルリンフィル、79年のバイエルン放送響の他にボストン響が2種あるようです。ボストン響との演奏は1962年と69年のもので、入手は難しいかもしれませんね。

よく見ると今日取り上げるアルバムはジュリーニのすべてのハイドンの録音の中で最も古い1956年のもの。ジュリーニは1914年生まれということで、このアルバムが録音された頃は40歳を超えたところ。調べてみるとローマRAI交響楽団、ミラノRAI交響楽団の首席指揮者を経て、1953年にミラノ・スカラ座の音楽監督に就任するも1956年には辞任してしまいます。こうした激動の年の録音ということでも貴重なもの。有名なフィルハーモニア管とのフィガロの録音が1959年ですので、それよりも前の録音。そして、後年、極端にスローテンポになっていったジュリーニの原点たる若い頃の録音という点でも興味津々というところでしょう。

比較のために76年のベルリンフィル盤をまずは聴いてから、フィルハーモニア盤に針を落とします。

Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
序奏の入りはそれほど変わらない印象でしたが、主題に入ってからのテンポが全く違い、このフィルハーモニア管盤はオーソドックスにタイトにインテンポで攻め込む驚愕の1楽章を捉えたもの。20年後のベルリンフィル盤は後年のジュリーニの特徴がよく出ていて、もはや攻め込むというよりは優雅で華麗に輝く響きをバランスよく聴かせようというもの。ダイナミックさよりも美しい旋律の表現に関心が集中している模様。テンポも遅いというか流麗。こうして比較すると、20年の歳月がジュリーニの音楽をどう変えたか非常に興味深いですね。フィルハーモニア盤に戻ると、後年の流麗なジュリーニの響きの芽生えのような瞬間がありながらも、速めのテンポでグイグイオケを引っ張っていくのが新鮮。響きのバランス感覚というか決して濁った音は出さないようにしているところは流石ジュリーニというところ。実は驚愕で最も聴きごたえのある1楽章の面白さが十全に表現され、引き込まれます。
続くびっくりのアンダンテも、遅くもなく速くもないテンポで入りますが、びっくりの一音だけ響きを長くとってハッとさせられます。これはジュリーニらしいアイデア。実はここも聴きどころの中盤以降の展開部でもジュリーニ流のほのかに流麗さを感じさせる見事なオーケストラコントロール。オーソドックスなのに品格を感じさせるジュリーニ・マジック!
そのジュリーニ・マジックの素晴らしさが最も活きているのが続くメヌエット。なぜだかわかりませんが、音楽に品格が漂い、しなやかな躍動感に包まれます。フレーズの一つ一つのつながりが滑らかで、よく磨かれているからでしょうか。音楽に包まれながら大きな波に揺られているような安堵感。
そしてフィナーレに入ると躍動感が上がり、弦楽器のボウイングのキレがさらに冴えてきます。オケは軽やかに吹き上がり、響きも鮮やか。そして後年のジュリーニは見られないダイナミックな煽りを受けてクライマックスに至ります。なんと見事なフィナーレでしょう。

カルロ・マリア・ジュリーニもカルロス・クライバーも偏愛した「驚愕」。クライバーの炎の塊のように燃え上がる「驚愕」とは異なり、若きジュリーニによる力感と流麗さのバランスのとれた名演。後年いささかスタティックな方に偏って行ってしまったジュリーニの原点たる活き活きとしたエネルギーが感じられる演奏でした。私はジュリーニの「驚愕」ではこの演奏を取りますが、入手しやすいものではないため、コレクターズアイテムというところでしょう。もちろん評価は[+++++]とします。

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ヨーゼフ・クリップス/ウィーンフィルの驚愕、99番(ハイドン)

温故知新。

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ヨーゼフ・クリップス(Josef Krips)指揮のウィーンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、交響曲99番、ロンドン交響楽団の演奏で交響曲92番「オックスフォード」、104番「ロンドン」などを収めたアルバム。今日はこの中からウィーンフィルとの驚愕と99番を取り上げます。この2曲の収録は1957年9月、ウィーンのソフィエン・ザールでのセッション録音。レーベルは豪DECCAのELOQUENCE。

実はこのアルバム、ごく最近手に入れたもの。巷では有名なアルバムのようですが、手元にないと気づいていなかったもの。アルバム自体には他にロンドン交響楽団とのオックスフォード、ロンドンも収録されていますが、録音が荒く聴き劣りするため、ウィーンフィルとの2曲のみ取り上げる次第です。

ヨーゼフ・クリップスは知らない人はいないでしょう。1904年ウィーンに生まれたオーストリアの指揮者。Wikipediaなどによれば、フェリックス・ワインガルトナーの助手、合唱指揮者として、ウィーン・フォルクスオーパーで働くようになります。その後ドルトムント市立劇場、カールスルーエ歌劇場などを経て、1933年、ウィーン国立歌劇場の常任指揮者に就任し、1938年のドイツによるオーストリア併合によりオーストリアを去ることになりますが、戦後は再びウィーンでDECCAに数々の名録音を残しました。1950年から1954年、ロンドン交響楽団の首席指揮者を務め、その後渡米しバッファロー・フィルハーモニー管弦楽団、サンフランシスコ交響楽団の音楽監督を務めます。1963年にコヴェント・ガーデン王立歌劇場、1966年にメトロポリタン歌劇場にそれぞれデビュー。1968年初来日。1970年、ベルリン・ドイツ・オペラの指揮者に就任、同年から1973年までの間ウィーン交響楽団の首席指揮者を務めるなど華々しいキャリアを歩みます。1974年、スイスのジュネーブで亡くなっています。

手元にあるクリップスのアルバムはハイドンではロイヤルフィルとのロンドンが2種、今日取り上げるウィーンフィルとの驚愕も廉価盤が手元にあります。他にはコンセルトヘボウとのモーツァルトの交響曲21番から41番のボックスと、お菓子の缶のような造りのロンドン交響楽団とのベートーヴェンの交響曲全集。何も引き締まった彫刻的な演奏が印象的でした。これらの演奏を思い出しながらハイドンの交響曲を聴きますが、いやいや、これは素晴らしい!

Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
若干古さを感じさせるものの、響きは全盛期のウィーンフィルの魅力満点。彫りの深い弦楽器の響き。分厚い低音弦。速めのテンポでグイグイ攻めてきます。DECCAらしい実体感ある録音。驚愕の1楽章が筋骨隆々に引き締まって素晴らしい緊張感。メガネのおじさんの棒から魔法のように繰り出される素晴らしい音楽。これぞ正統派のハイドンです。完璧なプロポーションの古流の生花を見るよう。
2楽章のビックリもこけ脅しなしの純音楽的に緊密な構成。リズムとダイナミクスの饗宴。そしてどことなくウィーンの香りが漂う高雅な演奏。変奏が進むにつれてタイトに引き締まったオーケストラの魅力が炸裂。金管、木管陣は意外にあっさりしていますが、弦楽器の分厚い響きが逆に際立って、これも見識と納得。演歌を持ち歌の本人が歌った時だけに感じるハマり感と同様、このハイドン、クリップスの振るウィーンフィルがオリジナルと思わせるなみなみならぬ説得力があります。
メヌエットも同様。なんでしょう、この有無をも言わせぬ完璧な演奏は。曲があるべき響きに完全にハマってます。自然なのに深い。深いのに自然。音楽にまったく古さを感じません。
フィナーレはことさらキレを強調せず、リズムをしっかり刻んでバランスの良い感興。ハイドンが古典派の作曲家であることを誰よりも理解するウィーンフィルならではの、あえて八分の力でのフィナーレというところでしょう。あまりに見事な演奏にしばしうっとり。

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
驚いたのははじめて聴くこちらの99番。いやいやこれほど彫りの深い演奏とは思いませんでした。おおらかな曲調のこの曲が、彫刻的におおらか! 前曲と同じ時期の録音ですが、こちらのほうが一歩踏み込んでます。ウィーンフィル特有の深い響きの色は変わらず、バランスの良さも前曲同様ですが、陰影のグラデーションのやわらかながらクッキリとしたコントラストが見事。速めのテンポでの見通しの良さもあり、99番の魅力があらためてよくわかります。やさしくコミカルな曲調の本質を捉えた名演奏でしょう。
美しいメロディーの宝庫の2楽章。木管楽器の独特の鄙びたような音色がいい雰囲気。弦楽器の繰り出す幾重もの大波にゆられる快感。時折ホールに響き渡るチェロのメロディーはウィーンフィルならでは。これはオリジナルのLPで聴いてみたいですね。
雰囲気をさっと変えるようなメヌエット。あえて軽く、さらりとこなします。そしてフィナーレは驚愕の1楽章同様、引き締まったオーケストラの魅力を再び見せつけます。迫力もそこそこありますが、センスで聴かせる大人の技。それでも徐々にクライマックスにもっていく推移の巧さはかなりのもの。終盤に力を緩めるところも実に見事。これぞウィーンフィルのハイドンという見本のような見事なコントロールでした。

ヨーゼフ・クリップスの振るウィーンフィルによる驚愕と99番。今更ながら、あまりに見事な演奏に打たれました。ウィーンフィルによるハイドンの録音は実は多くなく、有名どころではカラヤンによる、ロンドンと太鼓連打などがありますが、クリップスによるこの録音は最もウィーンフィルらしい、古き良き時代を感じる演奏と言えるでしょう。ただし、意外にも古い感じはせず、この演奏が普遍的な魅力をもっていることがわかります。録音もDECCAらしい重厚なもの。古楽器の演奏や新たな解釈による演奏も手にはいる今においても、魅力を失わない素晴らしいアルバムですね。評価はもちろん2曲とも[+++++]とします。

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tag : 驚愕 交響曲99番 ヒストリカル

エドゥアルド・ファン・ベイヌム/RCOの驚愕、奇跡、97番(ハイドン)

今日はヒストリカル。

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エドゥアルド・ファン・ベイヌム(Eduard van Beinum)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(Royal Concertgebouw Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、96番「奇跡」、97番、ブルックナーの交響曲7番の4曲を収めた2枚組のアルバム。ハイドンの収録は驚愕が1951年9月、奇跡が1952年12月、97番が1953年5月、いずれもアムステルダム・コンセルトヘボウの大ホールでのセッション録音。原盤はDECCAですが、手元のアルバムはRETROSPECTIVEレーベルのもの。最近DECCAからもハイドンのみの1枚がリリースされています。また、この3曲に関してはDECCAのLPから起こしたと思われるHaydn Houseのアルバムも手元にあります。

実は最近DUTTONの1947年録音の奇跡を手に入れ、そちらのレビューをしようとして比較のためにこのアルバムを聴いてみると、双方それぞれ良さがあるのですが、一般の人にオススメするにはこちらのアルバムの方が好ましいということで、急遽レビュー盤を変更した次第。奇跡に限って言えば1947年の方は小気味よくスタイリッシュな演奏なのにくらべ、こちらはくっきりとして迫力もある演奏という違いがあります。

そもそもエドゥアルド・ファン・ベイヌムにはハイドンの交響曲は他に軍隊の録音があり、ザロモンセットから4曲を録音しており、ハイドンの交響曲をレパートリーとしていた節はありますが、これまで一度も取り上げておらず、私自身ベイヌムの他の演奏にも親しんでいなかったので、どのような音楽を作る人か、いちどちゃんと聴いてみたいと思っていた人でした。

一応Wikipediaなどを参考に略歴などに触れておきましょう。

エドゥアルド・ファン・ベイヌムは1941年、オランダ東部のアルンヘム生まれの指揮者。16歳で地元アルンヘム管弦楽団にヴァイオリニストとして入団、翌年アムステルダム音楽院に入り、ピアノ、ヴィオラ、作曲を学びました。1920年にピアニストとしてデビューしますが、アマチュアオーケストラや合唱の指揮を始め、指揮者に転向することになります。1927年に指揮者としてデビュー、オランダのハールレム交響楽団の音楽監督となり、1929年アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団への客演が成功裏に終わり、1931年にピエール・モントゥーの推薦、メンゲルベルクの招きで同楽団の次席指揮者となったのち、1938年から首席指揮者になりました。1945年、メンゲルベルクがナチスへの協力で追放されると、コンセルトヘボウの音楽監督兼終身指揮者に就任します。1949年にはロンドン・フィルハーモニーの首席指揮者に就任、そして1956年からはロサンジェルス・フィルの終身指揮者に就任します。晩年は病気がちだったとのことで1959年4月、アムステルダムでのリハーサル中に心臓発作で倒れ、57歳で亡くなりました。

アムステルダム・コンセルトヘボウ管はオランダ人の音楽監督を置くということで、ベイヌムの後任は若いベルナルド・ハイティンクが務めることになりますが、あまりの若さにオイゲン・ヨッフムが補佐として常任指揮者として1964年まで加わりました。

ベイヌムはメンゲルベルクのロマン的音楽づくりに対して客観的な解釈でコンセルトヘボウに新風を吹き込んだとされています。今聴くベイヌムのハイドンはその指摘どおり、かっちりとした迫力に満ち、しかも流れの良さも併せ持つなかなか見事なものです。

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
1950年代の録音としてはかなり鮮明。いくぶん速めのテンポで健全なインテンポによるキリリと引き締まった音楽を創っていきます。ベイヌムの演奏スタイルはハイドンの音楽に実によくマッチしたもの。弛緩ない引き締まった表情で、ハイドンの音楽が凛々しく響き渡ります。驚愕の1楽章は構成感の緻密さが聴きどころですが、ベイヌムの手にかかると立体感あふれる彫像のような見事なフォルムを見せます。
2楽章のビックリもタイトに引き締まって、こけおどし的側面は皆無。ハイドンの音楽の気高さを強調するように、引き締まった音楽のままグイグイ攻めていき、ゆったりとした表情は見せません。オケの響きも各楽器の響きのバランスがよく、音楽の一体感も見事。
メヌエットもタイト。楽章間の対比やテンポの変化は逆に最小限。まさに一貫してタイトな音楽。休符も短めで音楽の流れの良さを強調しているよう。よく聴くとそれでも抑えるべきところで音量を絞り、単調になるのを避けています。
フィナーレはこれまでの一貫したスタイルの総決算。適度な前のめり感を保ちながらグイグイきます。オケの響きは引き締まりまくり、後年の響きの豊かなコンセルトヘボウと同じオケとは思えない禁欲的な響きで圧倒します。

Hob.I:96 / Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
続いて奇跡。驚愕の一貫してタイトな表情にくらべ、少し余裕が増して落ち着きを保っているように聴こえます。演奏の基調は前曲と同じものを感じますが、曲に仕込まれたウィットを活かしてコミカルさを感じさせる余裕があります。速いパッセージのヴァイオリンの流麗なところは流石コンセルトヘボウ、録音の違いか柔らかな印象も加わり、引き締まりながらも表情豊かなかなかいい演奏。
つづくアンダンテは前曲と異なり、普通にゆったりとした表情の演奏。中間部の攻め込みにベイヌムらしいタイトな印象を垣間見せますが、すぐにゆったりとした表情に戻ります。
メヌエットも余裕がある一般的演奏。驚愕の攻め込むスタイルがベイヌム風だとすれば、こちらは普通の演奏ですが、ハイドンの曲としては、このほんのりとタイトでバランスの良い演奏の方が曲の良さが引き立ちます。
フィナーレもタイトさを感じさせるバランスの良い演奏。この曲の面白さを象徴する楽章ですが、楽譜に仕組まれたウィットに反応してオケも自在に攻めてきます。バランスの良い秀演でした。

Hob.I:97 / Symphony No.97 [C] (1792)
最後の97番は簡単に。一番最近の録音ながら、音はちょっとこもり気味。演奏は奇跡と同様余裕をもったバランスの良い演奏。聴くと確かに新古典主義的な端正なフォルムを感じさせます。1950年代には垢抜けた演奏として受け取られたということは想像できます。この97番も奇跡もちょっと聴くとオーソドックスな、どちらかというと個性的な演奏とは言い難い演奏ですが、適度にタイトな表情の魅力と、演奏からにじみ出る味わい、ハイドンの曲の面白さを素直に表した良さがあり、これはこれで完成度の高いなかなかいい演奏です。

エドゥアルド・ファン・ベイヌムと手兵アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団によるハイドンのザロモンセットからの3曲、ベイヌムとはどうゆう音楽を奏でる人だったのかを知ることができる興味深い演奏でした。驚愕の攻め込む姿勢は非常に挑戦的ですが、ちょっと平板さもはらんでいました。逆に落ち着いて音楽をとらえた奇跡と97番は突き抜けた個性を感じさせる演奏ではありませんが、ハイドンの交響曲の演奏としては理想的な高次のバランスを保った名演とみなすことができるでしょう。こうした評価は人によってはまったく逆転することもあるでしょうが、私はバランスの良い演奏の方を採りたいと思います。というわけで評価は驚愕が[++++]、残り2曲が[+++++]とします。

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tag : 驚愕 奇跡 交響曲97番 ヒストリカル

【追悼】ロリン・マゼール/ベルリン放送響の「驚愕」1975年ライヴ(ハイドン)

7月13日、ロリン・マゼールが84歳で亡くなりました。肺炎による合併症とのこと。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートをずいぶん振ったので日本でもおなじみの指揮者でしょう。

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ロリン・マゼール(Lorin Maazel)指揮のベルリン放送交響楽団の演奏で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲3番(独奏:ヴィルヘルム・ケンプ)、ハイドンの交響曲94番「驚愕」の2曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1975年6月8日、ベルリンの放送ホール1でのライヴ。レーベルは貴重なライヴを次々とリリースする独audite。

マゼールのハイドンの録音は多くはありませんが、それでもいろいろ探して過去に2度ほど取りあげています。リンク先を読んでいただければわかるとおり、私はマゼールは嫌いではありません。

2013/04/11 : ハイドン–交響曲 : ロリン・マゼール/ベルリン放送響のオックスフォード、太鼓連打
2011/07/12 : ハイドン–交響曲 : ロリン・マゼール/ウィーンフィルの85年オックスフォードライヴ

マゼールで皆さんおなじみなのはやはりウィーンフィルのニューイヤーコンサート。調べてみると、弾き振りのヴィリー・ボスコフスキーの後を受けて1980年から7年連続で指揮をとり、その後1994年、96年、99年、2005年と振り、都合11回も指揮台に登っています。ボスコフスキーの25回、クレメンス・クラウスの12回について3番目に多い回数です。ボスコフスキーの後を継いで指揮をとった1980年のコンサートでは、優雅なボスコフスキーとは対照的にムジークフェラインを吹き飛ばさんばかりの大迫力の演奏に賛否両論だったのが懐かしいところ。もちろんオケのすべてのパートに指示を出すような精密機械のような指揮ぶりも圧巻。マゼールの音楽は音だけ聴くとフレーズの造りが微視的で大きな流れが弱いところがありますが、ディティールの緻密さと時折聴かせるグロテスクなまでの誇張によって、怖いもの見たさのような感覚で聴いてしまう面白さがありました。やはりマゼールは映像でその指揮姿を見ながら聴くのが一番特徴がわかる気がします。クライバーの魂を揺さぶるような指揮ぶりともちがって、鋭い眼光とタクトの先ですべての奏者を監視しながら恐ろしく精密に指示を出す姿は才気爆発。指揮者の指示を聴くような気になります。何れにしても、巨匠と呼ばれる世代の最後の世代の人でしょう。マゼールより高齢で活躍しているのは、もはやスクロヴァチェフスキくらいでしょうか。

今日取り上げるアルバムはフェレンツ・フリッチャイの後任として1964年から首席指揮者の地位にあったベルリン放送交響楽団とのコンサートのライヴですが、マゼールもこのライヴと同じ1975年にその地位を離れ、しばらく後の1982年にリッカルド・シャイーが首席指揮者に着きました。すなわちベルリン放送交響楽団との10年以上にわたる関係の総決算のような時期の演奏ということになります。若き日のマゼールの才気が迸るでしょうか。

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
録音は年代なりで、すこし痩せ気味ですが、十分鮮明です。1楽章は速めのテンポでグイグイ攻める感じ。アクセントがきっちりついてリズムを強調するあたりがマゼールならでは。首をふりながら指揮するすがた想像できるよう。オケもきっちり指揮についてキリリと引き締まった表情をつくっていきます。終盤になるに従ってオケの振幅も大きくなり、スピーディながらリズムに溜めをつくって表現を大きくしていきます。このへんの設計の確かさは流石なところ。一貫したスピードの中、表現の振幅を巧みに変えて音楽の抑揚をうまく造っていきます。1楽章は流石の出来。
意表をつかれるのが続くアンダンテ。テンポが速い。ビックリの部分も驚かそうなどというそぶりはまったくなく、単なる強弱記号をこなしていくだけのようなあっさりした表現。このアンダンテも緊密な音楽の構成を速いテンポで浮かび上がらせようと言う事でしょう。一貫してタイト。終盤の展開部も速めのテンポでグイグイあおり、ダイナミック。ところどころで金管にアクセントをつけて変化を加えます。
予想通りメヌエットも速い。ハイドンの音楽からスタイリッシュなダイナミックさが浮かび上がってきます。ここにきて節回しがマゼールっぽくなってきました。指揮棒をクルクルまわしてオケに指示を出しているのでしょう。
一貫して速めのテンポで来たので、フィナーレは突っ走ってほしいものです。まずは期待どおりの速めの入りですが、まだオケは抑え気味。徐々にスロットルを開いて行く快感。マゼール流のちょっとくどい感じもしかねないアクセントがかえって痛快。爆発を期待します。なんだか不思議な高揚感。最後は期待通りのクライマックス。やはり盛り上げ方は流石です。知的な印象も残し、ハイドンのやり方によってはちょっと温くもなってしまう交響曲をキリリと引き締めたタイトな曲に仕上げてきました。
最後は拍手に包まれます。

ロリン・マゼールが手兵ベルリン放送交響楽団を振ったコンサートのライヴ。若き日のマゼールの才気が味わえるなかなかいい演奏でした。マゼールのハイドンに対するスタンスは純音楽的にタイトに仕上げる素材としての古典期の曲というところでしょう。標題性には一切媚びる事無く、ハイドンの書いたメロディーとオーケストレイションをキリリと引き締めて聴かせる手腕は流石です。音楽を自在に操る類いまれな能力が迸っていました。このハイドン、マゼールらしさが出た秀演でしょう。評価は[+++++]に格上げです。

マゼールは演奏によっては独特の灰汁の強さがあり、好き嫌いが別れる指揮者だったと思いますが、この独特の演奏に惹き付けられた人も多いのではないかと思います。マゼールのハイドンの録音はほとんどないと思いますが、この不思議なタクトでもう少しハイドンを聴いてみたかったですね。また一人、偉大な個性が消えていきました。ご冥福をお祈りします。

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tag : 驚愕 ライヴ録音

ヒクメット・シムセク/ハンガリー国立管の驚愕、ロンドン(ハイドン)

いつも通り、マイナー盤。不思議な組み合わせの演奏です。

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ヒクメット・シムセク(Hikmet Şimşek)指揮のハンガリー国立管弦楽団(Hungarian State Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、交響曲104番「ロンドン」の2曲を収めたアルバム。収録情報は記載されておらず、Pマークが1990年。レーベルはハンガリーのHUNGAROTON。

こちらも最近ディスクユニオン店頭で発掘したもの。最近はディスクユニオンの交響曲の棚は見ても未知の盤の発掘につながることがあまりないため、滅多に寄りません。先日神保町のディスクユニオンに実に久しぶりに寄ったところ、神保町の棚はジャンル別・作曲家別ではなく、作曲家別・ジャンル別に並んでいるため、久々に交響曲の棚を見る事になり、このアルバムを発見した次第。まだまだ未聴盤がありますね。

指揮者のヒクメット・シムセクはトルコの東端、イラクにも近いスィイルト(Siirt)県のペルヴァリ(Pervari)生まれの指揮者。生まれるとすぐにアンカラの南のコンヤ(Konya)に移り、1936年、コンヤの兵学校に入ります。アンカラに移り、軍隊の教育を受け続けましたが、1946年、卒業を待たずに、突然アンカラ音楽院に移り音楽の道に転身、1953年にアンカラ音楽院を卒業しました。卒業後アンカラ音楽院で教える事となり、1959年以降は、トルコ大統領府交響楽団の副指揮者となります。シムセクはトルコで日曜に放送されるトルコ放送のクラシック番組に出演していた事から、トルコで最も知られた指揮者と言う存在だったようです。演奏の前には曲の解説等も織り交ぜ、日本で言えば山本直純さんのような存在といったところでしょうか。また、トルコ放送の外国語放送でトルコの作曲家を国外に紹介するなどの功績が認められ、1981年、トルコ政府よりState Artist(文化勲章のようなものでしょうか)を授与されました。また1980年代にはトルコの作曲家による音楽のシリーズものをリリースしています。調べてみると、まさにトルコ音楽界を代表する人のようですね。ライナーノーツによるとヨーロッパや、アメリカ、日本なども含む地域で国際的に活躍したそうです。2001年、アンカラの陸軍病院にて脳腫瘍で亡くなったとのことです。

このアルバム、トルコのシムセクが、ハンガリーを訪れ、ハンガリーのレーベルに、ハンガリーの地元の作曲家であるハイドンの交響曲、それも最も有名な「驚愕」と「ロンドン」を収録したということで、それだけでも「驚愕」の存在!

よほど素晴しい演奏をして、HUNGAROTONのプロデューサーを唸らせたことと想像されますが、アルバムを聴いてみると、その想像もあながち見当違いとも言い切れません。冒頭から分厚い響きのオケが素晴しい覇気の演奏。グイグイ来ます!

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
厳かな序奏から緊張感が伝わります。主題に入ると分厚い響きのオケに力が漲り、素晴しい覇気。オーソドックスな演奏なんですが、力感の素晴らしさはこの曲に期待される理想の響きといっていいでしょう。トルコと聞くと派手な鳴りものを想像しますが、それとは正反対。ぐっと沈み込む重心の低い迫力の響き。派手さはありませんが、その代わりに内なる赤熱するマグマのようなエネルギーを感じる演奏。独墺系のオケよりよほど正統な響きです。音量を上げて聴くとまさに響きの良いコンサートホールで聴く実物大のオケのよう。録音も自然な定位感と素晴しい力感をうまく録っています。HUNGAROTONとしてはかなりいい録音でしょう。1楽章は力感に圧倒されます。
ビックリの2楽章はアンダンテらしい、少し速めの足取りで、例のところはビックリさせるよりは雄大に響かせるような演出。聴衆はビックリしないのを踏まえた演出のよう(笑) 以降はしなやかにオケをコントロールして、やはり図太い響きを織り交ぜながら、誠実かつ豪快に曲を進めます。オケの低音セクションの安定感は素晴しいものがあります。
メヌエットは分厚いオーケストラを軽々と響かせ、まさに踊り出さんばかりにオケが弾みます。曲の真髄に迫っているからこその自然な音楽の流れ。単調さは微塵もなく、オケの反応から指揮者の指示を想像しながら音楽を楽しみます。実に伸びやかな音楽。これがハイドンが意図したメヌエットでしょう。
フィナーレもまるでハイドン自身の指揮のように、曲が本来そうあるべき姿のように軽々とした入り。オケは緩急織り交ぜ、非常にリラックスして要所でガッチリと響きの印象を残し、また、つなぐ部分では軽やかに弾み、まさしくハイドンの音楽はかくあるべしとの確信に満ちた演奏。良く聴くとティンパニが実にいいタイミングで響きを引き締めているのも安定感に寄与しているようですね。1曲目から、期待を大きく上回る素晴しい演奏に驚きます。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
驚愕の調子でこのロンドンを演奏すれば、名盤というか、決定盤間違いなしの素晴らしさでしょう。力感も陰りも憂いもある素晴しい序奏。響きも深く、慈愛に満ちた神々しさ。あまりの素晴しさに感情の高ぶりを抑えられません。ハイドンの最後の交響曲の輝きに満ちたメロディーが分厚い響きで鳴り渡り、まさに古典と言う時代の頂点に相応しい演奏。表現が大げさすぎず端正な印象さえあるのが美点でしょう。カラヤン/ウィーンフィルの名演奏を彷彿とさせ、響きはそれよりスケール感を感じるもの。シムセクのコントロールは力感がありながら響きに優しさもあるのが特徴。ロンドンも万全の入り。
ロンドンのアンダンテは、今度は少し遅め。しかも暮れる前の夕日のような静かな情緒に満ちた音楽。間をたっぷりと取りながら音量を落としてじっくり音楽を奏でていきます。木管群の美しい響きと、それをきっかけに唸るようなオケの波が押し寄せます。長大なアンダンテをニュアンス豊かに進め、そこここで情感が迸ります。このアルバム一番の聴き所。
メヌエットも前曲の踊るようなメヌエットとはスタンスが異なり、ぐぐっと攻め込むメヌエット。ハイドンを得意としていたのかはわかりませんが、この楽章毎にアプローチをデリケートに変えてくるシムセクのコントロールはハイドンに対する深い理解を感じさせます。
フィナーレはようやくオーソドックスなアプローチ。キレよく盛り上がり、徐々に恍惚とするほどのクライマックスに至ります。ここに来て虚心坦懐にハイドンの書いた複雑に絡み合う楽譜をクッキリと描いていきます。分厚い響きのオケがタクトに俊敏に反応して鮮やかに吹き上がる様子は、まさにロンドンのフィナーレのクライマックスに相応しいもの。最後は素晴しい盛り上がりで曲を終えます。

いままであまり聴いた事のないトルコの指揮者のハイドン。マイナーな演奏どころか、独墺系のどの演奏よりもハイドンの本質に近い、雄大なスケールながら端正さ、響きの深さ、優しさに溢れた演奏。これほどまでに素晴しいとは思っていませんでした。ネットを検索したところ、amazonでも中古は欠品中。これほど素晴しい演奏が現役盤ではないことは、大きな損失です。この演奏、多くの人に聴いていただきたい名演と断じます。もちろん両曲とも[+++++]とします。
タワーレコードの中の人、日本とトルコの更なる友好のために、是非このアルバムを日本で復刻すべきです。声が届かないかしら(笑) 意外といい企画だと思うんですが、、、

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クルト・ザンデルリンクの「驚愕」ライヴ2種(ハイドン)

たまには聴き比べを。

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(1)クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker)の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、ブラームスの交響曲3番の2曲を収めたアルバム。ハイドンの収録は1998年12月17日、ウィーンのコンツェルトハウスの大ホールでのライヴ。ザンデルリンクのライヴをいろいろリリースしているレーベルはWEITBLICK。

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(2)クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のスイス・ロマンド管弦楽団(Suisse Romande Orchestra)の演奏でハイドンの交響曲94番「驚愕」、オケを変えてラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲、リヒャルト・シュトラウスの「ドン・ファン」の3曲を収めたCD-R。ハイドンの収録は2000年11月8日で、収録場所は記載されていませんが、スイス・ロマンドの本拠地、ジュネーヴのヴィクトリア・ホールでしょうか。レーベルはCD-Rで良く見かけるEn Larmes。

クルト・ザンデルリンクはハイドンを得意としており、私も好きな演奏が多い指揮者です。これまでいろいろ取りあげてきました。

2013/02/16 : ハイドン–交響曲 : ザンデルリンク/読響の「熊」1990年サントリーホールライヴ
2012/11/13 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン交響楽団の王妃、86番
2012/06/30 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ザンデルリンク/スウェーデン放送交響楽団の39番ライヴ
2010/11/04 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンク/ベルリン・フィルの熊ライヴ
2010/06/18 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンクの86番

これまでの記事を読んでいただければわかるとおり、ザンデルリンクのハイドンは生気と感興、推進力が高次にバランスした演奏。まさにハイドンの美学をそのまま音楽に仕立ててきます。私もザンデルリンクのハイドンは好きなタイプの演奏故、過去取りあげたものは何れも高評価をつけています。そのクルト・ザンデルリンクでまだ取りあげていないこれらのアルバムを聴き比べながら取りあげようと言うのが今日の意図です。

ちなみにザンデルリンクの略歴などは、上の39番の記事をご覧ください。

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
まずは、ウィーン響との(1)から。
流石にウィーン響、柔らかい音色ながらしっかりと芯があり、ザンデルリンクの折り目のすっと通ったコントロールの魅力が伝わります。オーソドックスなのにアトラクティヴ。推進力があるのに落ち着きはらった指揮。そしてテンポは一貫して中庸を保ち、曲自体からハイドンの良さを再認識させるような自然なアプローチ。まさに王道を行く演奏。響きに身を任せて驚愕の変化に富んだ1楽章を楽しみます。ライヴですがまるでセッション録音のような安定感。
つづくびっくりの2楽章は、こうすれば子供騙しではなく純音楽的な洗練を感じさせられるようになるという見本のような折り目正しい演奏。あっさりとした表情からにじみ出る爽やかな情感。華美にもならず、テクニックの誇示にもならない誠実さ。素直なアプローチから純音楽的な面白さを存分に感じさせます。ハイドンの聴かせどころのツボを完全に押さえています。後半の展開部のダンディズム溢れるタイトな表情。
メヌエットはザンデルリンクの真骨頂。作為なく自然に音楽が流れますが、フレーズ事に微妙に間を変化させながら音楽の構造が浮かび上がるよう、くっきり描いていきます。音量の変化ではなく表情で音楽を浮かび上がらせる至芸。まさに燻し銀。
そしてフィナーレは、落ち着いたコントロールながら、この曲のクライマックスにふさわしい推進力が漲り、徐々に頂点に近づいていきます。リズムの芯がぶれずに、オケの各楽器がせめぎ合い、最後はフォーカスがピタリと合って頂点へ。この素晴しい盛り上がりはなんでしょうか。会場からも暖かい拍手降り注ぎます。

つづいて(2)。(1)から約2年後のコンサートということで、演奏の基本的なスタイルは変わりません。オケの音色の柔らかさや、まとまり、折り目正しさは(1)のウィーン響に歩がありますが、逆にライヴらしい独特の空気感や良い意味での荒々しさはこちらの方が上。録音はやはり(1)に歩があります。いつ爆発するかわからないような緊張感があり、これはこれでなかなか楽しめます。オケのキレはわずかに劣りますが、不思議と大きな流れの迫力はこちらにあります。
以後、フィナーレまで同じ傾向がつづき、(1)と相似形の演奏。流石にオケが変わってもコントロールが行き届き、ザンデルリンクならではの驚愕になっています。こちらの方が拍手は盛大で拍手に関してはこちらが一段リアルでした(笑)

クルト・ザンデルリンクの指揮するウィーン興、スイスロマンド管での「驚愕」のライブ2種。最も印象に残るのは、やはりザンデルリンクのコントロールのでしょうか。どちらの演奏もコントロールが行き届き、ザンデルリンクならではの響きになっています。どちらの演奏も燻し銀の名演。よりライヴらしい演奏を好む方はスイスロマンドのものを好む方もいるでしょう。一般的にはウィーン響とのWEITBRICK盤をオススメとしておきましょう。「驚愕」の折り目正しいバランスの良い演奏として、多くの人に聴いていただきたい名演だと思います。評価はウィーン響盤が[+++++]、スイスロマンド管盤が[++++]といたします。

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tag : 驚愕 ライヴ録音

【追悼】ジャン=フランソワ・パイヤール/イギリス室内管の驚愕、軍隊

メジャーな演奏者によるハイドンの交響曲の録音を取りあげている5月ですが、今日は先月亡くなったパイヤールのアルバムを取りあげます。

Paillard94.jpg
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ジャン=フランソワ・パイヤール(Jean-François Paillard)指揮のイギリス室内管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」と100番「軍隊」、そしてウィーン弦楽四重奏団の演奏による弦楽四重奏曲Op.76のNo.3「皇帝」の3曲を収めたアルバム。今日は交響曲の方を取りあげますが、収録は1980年とだけ記載されています。レーベルはRCA。

ハイドンの演奏でパイヤールといえば、モーリス・アンドレとのトランペット協奏曲の演奏がありますが、その他はあまり印象がありませんでした。このアルバムかなり前から手元にあったのですが、他のアルバムにまぎれて行方不明になっていたのがようやく見つかりました。先月パイヤールの訃報に接した時に取りあげようとしたのですが、アルバムが見つからす見送っていたものです。

2012/02/28 : ハイドン–協奏曲 : 【追悼】モーリス・アンドレ/パイヤールのトランペット協奏曲

モーリス・アンドレが亡くなったのが2012年の2月。そしてパイヤールも先月、4月15日に亡くなっています。昔親しんだ演奏家が次々と亡くなっていくのは、仕方のない事とはいえ、ちょっと寂しいものがありますね。パイヤールといえば何といってもモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲でしょう。我々の世代にとっては定番のアルバムですね。モーツァルトの協奏曲では最も華麗な曲想のこの曲を、リリー・ラスキーヌの上品なハープと、ランパルの豊穣なフルート、そしてパイヤールのキリッと上品にエッジを立てた華麗なオーケストラコントロールで描いた名演奏。このあと数多くリリースされる古楽器による素晴しい演奏と聴き比べても、パイヤール盤の華麗な演奏は耳に焼き付いています。やはりフランスらしい華麗なオーケストラコントロールの印象が強い人です。

そのパイヤールが、イギリス室内管を振ったハイドンの交響曲。このアルバムの他にも時計、ロンドンの録音があるようなので、手に入れなければなりませんね。

Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
小規模オケ、しかも現代楽器のオケらしい、クッキリとした響きの序奏から入ります。主題に入るとヴァイオリンによる高音の隈取りがクッキリついて華麗な響き。テンポはオーソドックスなものですが、キビキビした足取りで推進力は十分。安心して身を任せられる演奏です。演奏によってはインテンポで畳み掛ける迫力を味わえる1楽章ですが、パイヤールのコントロールは華麗な響きでハイドンの曲のメロディーラインと構成の美しさを表現する事に主眼を置いたもの。ここぞという踏み込みはないものの、この規律こそハイドンの本質と言わんばかりに、演奏をすすめていきます。旋律をこれだけクッキリと歌わせながら、類いまれな安定感。こうゆう演奏ももはや貴重なものですね。演奏スタイルは異なるものの、同じフランスのリステンパルトの演奏にも漂う安定感。
2楽章のアンダンテはまさに完璧な古典的演奏。音楽の授業で聴いたのはパイヤール盤だったのでしょうか。この曲のオーソドックスな演奏の見本のような響き。意外に彫りが深く、表情も立体的で迫力も十分。これだけ完成度が高い演奏だったとは。
メヌエットに入っても、完璧なプロポーションと流れの良さは健在。ウィーンらしいというより、やはりフランス風の軽やかさがあり、メヌエットはまさに舞曲らしくメロディーが弾むよう。ここまで活き活きとしたメヌエットはそうありません。
この曲の聴き所でもあるフィナーレ。入りから非常に表情豊か。音量ではなくフレージングでこの曲のフィナーレ独特の沸き上がる感じを上手く表現しています。音量でも迫力でもなく、磨き抜かれたオーケストラコントロールでこの曲の素晴しい盛り上がりを表現。見事。これほどの演奏だったとは。

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
入りから癒しエネルギーが満ちてます。これから展開する曲の面白さを予感させる、豊かな表情の序奏。現代の演奏が忘れてしまった、メロディーの華麗な展開と素朴な美しさに満ちあふれています。とりわけクッキリしたヴァイオリンと色彩感たっぷりの木管楽器の織りなす表情の美しさは素晴しいもの。実に美しい軍隊。これだけ華麗な軍隊の1楽章は聴いた事がありません。曲がすすむにつれて沸き上がる素晴しい興奮。音楽が生き物のように躍動しています。
軍隊の聴き所の2楽章。もちろん迫力もあるのですが、パイヤールのコントロールは一貫してメロディーの豊かな表現にあります。打楽器が炸裂するところもそこそこいいのですが、全体を見据えて盛り上げていくまでのコントロールと、抑えた部分の美しいメロディーは只者ではありません。そして全般に力みがまったくなく、純粋に演奏を楽しんでいるようなリラックスした雰囲気が素晴しいですね。
そしてこの曲でもメヌエットは弾みまくり。メヌエットとはこう演奏するものだと教わっているような気分。音符がすべて意味があり、リズムの刻みも完全にパイヤールのリズムになっています。オケ全員にパイヤールの音楽が浸透しているのですね。
期待のフィナーレ。少し抑え気味に入りますが、パイヤール流の流麗、華麗なフレージングは健在で、曲が進むにつれてだんだん表情が豊かになってきました。ただ弱音は意識的かなり落として、またテンポもすこし抑え気味。終結部にクライマックスをもってくる演奏も多いなか、パイヤールはフィナーレは実に慎み深く、抑え気味ですすめ、打楽器もそこそこの音量。もちろんクライマックスには違いありませんが、メロディーと曲の美しさこそこのフィナーレの聴き所とばかりに、バランスを重視した演奏でした。パイヤールの意図がぴしゃりと決まって、高貴華麗な軍隊となりました。

もちろん何度か聴いた事のある演奏でしたが、パイヤールのハイドンの交響曲がここまで素晴しいのかと再認識した次第。私たちがハイドンの交響曲、とくに晩年のザロモンセットの演奏の理想的な姿として想像していた通りの演奏がここにありました。非常に慎み深く、音楽は非常に豊かで、まさにハイドンとはこう演奏すべしとの啓示のような演奏です。ヴァイオリンをはじめとした弦楽器のコントロールも秀逸。録音も解像度は最新盤とは差がつきますが、十分聴きやすいものです。以前つけていた評価をあらため、両曲とも[+++++]とします。心を洗われるようなハイドンです。現役盤ではないようですが、amazonなどでまだ手に入りそうですね。

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Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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