グラン・カナリア・フィルのトランペット協奏曲、2つのホルンのための協奏曲

今日は湖国JHさんに貸していただいたアルバム。

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グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団(Orquesta Filharmónica de Gran Canaria)のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの作品を収めたアルバム。ハイドンはトランペット協奏曲、ハイドンの作とされる2つのホルンのための協奏曲、モーツァルトのホルン協奏曲3番、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲Op.11が収録されています。ハイドンの演奏者はトランペット協奏曲はトランペットがダヴィット・ラクルズ(David Lacruz)、アントニ・ロス=マルバ(Antoni Ros-Marba)指揮、2つのホルンのための協奏曲はホセ・ザルゾ(Jose Zarzo)とエリサ・ヴェルデ(Elisa Verde)のホルンにホセ・ルイス・ガルシア・アセンシオ(Jose Luis Garcia Asensio)指揮です。収録年は残念ながら表記がありませんが、アルバムのリリースが2010年ですのでそれほど古くありません。協奏曲3曲は最後に拍手が収められていますのでライヴでしょう。

このアルバムはHMV ONLINEのお気に入りリストに長らく登録していたのですが、何となく安っぽい廉価盤然としたジャケットからか、注文せずにおいたもの。ところがところが、良くメールをいただく湖国JHさんの好きな2つのホルンのための協奏曲の名演奏とのことで、貸していただいたもの。荷物がついて開けてみると見覚えのあるジャケット。アルバムの善し悪しは聴いてみなければわからない訳です。いつもはジャケットからにじみだす妖気に敏感に反応して、名演奏を嗅ぎ分けてきたわけですが、今回は勘が冴えていなかったということです(笑)

アルバムタイトルは"Vienna Classics in Gran Canaria"と題されたもの。カナリア諸島はスペイン領でヨーロッパの遥か南、アフリカのモロッコ、西サハラ沖に浮かぶ諸島で、中心となる島がグラン・カナリア島。ラテン語で「犬の島」を意味するそう。鳥のカナリアではないのですね。カナリア諸島の情報をまとめたサイトを紹介しておきましょう。

スペイン政府観光局オフィシャルサイト カナリア諸島

グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団は当地のオーケストラでしょう。ヨーロッパを中心に年間1000万人もの観光客が押し寄せる(Wikipedia)とのことで、このオケのコンサートを楽しみに観光に訪れる人も多いのではないでしょうか。

Orquesta Filarmónica de Gran Canaria OFGC

オーケストラのサイトを見てみると、歴史は古く設立は1845年に遡るそう。ヨーロッパのセレブが避暑に訪れるためか、共演した指揮者は一流どころがずらりとならんでいます。ロストロポーヴィチ、ルドルフ・バルシャイ、レイモン・レッパード、クリストファー・ホグウッド、フランス・ブリュッヘン、ギュンター・ヘルヴィッヒ、このアルバムでも指揮しているアントニ・ロス=マルバなどなど。現在はペドロ・ハルフター(Pedro Halffter)が音楽監督を務め、首席客演指揮者はギュンター・ヘルヴィッヒとのこと。いままであまり知りませんでしたが、伝統あるオケですね。録音も多く、Arte Novaからマーラーやドヴォルザーク、シベリウス!の交響曲等がリリースされています。南国のオケで聴くシベリウスは如何なる響きか、ちょっと聴いてみたくなります。

トランペット協奏曲を振っているアントニ・ロス=マルバは以前にも古い録音を取りあげています。

2011/01/22 : ハイドン–管弦楽曲 : ロス=マルバ/カタルーニャ室内管弦楽団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉

経歴などはこちらをご覧ください。

また2つのホルンのための協奏曲を振っているホセ・ルイス・ガルシア・アセンシオは、ヴァイオリニストでもあり、史上最年少でロンドンの王立音楽大学の教授となった人。20年以上にわたりイギリス室内管弦楽団のコンサートマスター指揮者として活躍してきた人とのこと。1992年からはマドリードのライナ・ソフィア音楽学校で教えているそうです。弦楽器の扱いに注目でしょうか。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
なぜかしっとりと心に染み入る柔らかい響き。残響の多いホールでゆったりと鳴らされたオーケストラの響きが非常に豊か。テンポは中庸ですが、極度にリラックスしている演奏。トランペットのソロを担当するダヴィット・ラクルスはグラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団の首席トランペット奏者。先日取りあげたモーリス・アンドレのインパクトにはもちろん比べるべくもありませんが、オケの伴奏に乗っておおらかにトランペットを吹いていきます。これはこれで十分なパフォーマンス。時折り高音をキリッと鳴らして変化をつけていくところ等ツボを押さえた演奏。ライヴですが、ノイズは皆無で、しかも音響処理をしたような不自然さはなく、録音は非常に自然です。ハイドンの書いたおおらかな音楽を、おおらかに演奏した、実に素朴でいい演奏。カデンツァを聴く限りテクニックも自然で音も非常に美しく、素晴らしい演奏。南国のオケの奏でる音楽は、小細工など考えもせず、おおらかさ一本の演奏です。
アンダンテも同様。ホールに響く美しいメロディーに癒されるよう。オケも過度に叙情的にならず、ラクルスはハイドンの書いたメロディーを淡々と演奏していくことで、素朴なメロディーの美しさが引き立ちます。
フィナーレもしっとりとした柔らかい響きを保ち、小気味好いテンポなんですが実に味わい深い演奏。トランペットの速いパッセージも難なくこなし、高音のもしっかり美しく輝くトランペットの美音を聴かせます。なんでしょう、ライヴなのにこの非常にリラックスした音楽は。緊張感張りつめるとは大曲にある穏やかな音楽。テクニックとは自然に振る舞うためにあると言わんばかりの演奏。遠くヨーロッパから来た観客に極上のもてなしを供するような音楽です。会場から自然に沸き上がる暖かい拍手が心を打ちます。

Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762) (Composed by Antonio Rosetti/Michael Haydn?)
そして2つのホルンのための協奏曲。ソロは前グラン・カナリア・フィル首席ホルン奏者のホセ・ザルゾと現首席奏者のエリサ・ヴェルデの二人。録音は少しハイ落ちで低音の定位感がちょっとぼやけ気味になりますが、前曲同様ホールの柔らかい響きをつたえる穏やかな録音。またもや朗らかなオーケストラの響きの魅力に溢れた演奏。この曲は先日ティルシャル兄弟の名演盤をレビューしましたが、この演奏のホルン奏者、ティルシャル兄弟に負けていません。ホルン2本が醸し出すえも言われぬ響きの重なり。ホルンが吹き上がるところの豪快な迫力も満点。素朴な造りの曲の魅力をつたえるオケ。いやいやこれは名演奏。グラン・カナリア・フィル、侮れません。指揮のホセ・ルイス・ガルシア・アセンシオはトランペット協奏曲のロス=マルバ同様、自然な表情を大切にするひとのよう。やはりイギリス室内管のコンサートマスターを長年務めただけに、弦楽器の表情付けは素晴らしいものがあります。音楽を楽しむ純粋無垢な心情をそのまま表現することだけをしっかりやっているよう。えも言われぬ幸福感で1楽章を終わります。
2本のホルンが大活躍の2楽章のロマンツァ。二人のホルンの息はぴったり。朗々と吹くホルンの音色の存在感も際立ち、オケの伴奏もしっとりと沈み込むロマンティックなもの。さざめくようにホルンを支えるデリカシーに富んだオケのコントロールは秀逸。深く深く沈み込む情感。2楽章、美しすぎます。
フィナーレは再びしっかりと独特のリズムを刻み、ホルンとオケが渾然一体となって振りまいた情感を拾い集めていくよう。ゆったりと広がるオーケストラをバックに2本のホルンが互いホルンの音に自身の音を乗せて響きをつくっていく様子がよくわかります。最後もオケのしっとりした情感が心にしみます。やはり会場から沸き上がる暖かい拍手とブラヴォーの声が印象的。いやいや、素晴らしい演奏でした。

このあとのモーツァルトのホルン協奏曲も名演。モーツァルトの閃きがしっとりと表された、これも特別な名演。特に1楽章のカデンツァは驚きのテクニック。何という奏法だかわかりませんが、素晴らしい効果。絶品です。正直ブレイン/カラヤン盤よりいいかもしれません。

南海に浮かぶカナリア諸島のオケゆえ、自身でも注文を躊躇していたアルバムですが、これは目から鱗の素晴らしい演奏。かつてカルロス・クライバーもカナリア諸島で演奏していますで、音楽的には非常に成熟したところなんでしょう。南国らしくおおらかな演奏なんですが、その音楽には心に刺さる深い感動がありました。音楽を純粋に演奏する喜び、純粋に聴く悦びに溢れた演奏といえばいいでしょうか。音楽に対する虚心坦懐な姿勢の大切さを教えられた気がします。これはすべての人におすすめの名盤です。評価はもちろん両曲とも[+++++]とします。

湖国JHさん、ありがとうございました!

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tag : トランペット協奏曲 2つのホルンのための協奏曲 ライヴ録音

ティルシャル兄弟による2つのホルンのための協奏曲(新盤)

今日はハイドンの作曲かどうか疑わしいとされる2つのホルンのための協奏曲を取りあげます。最近手に入れました。

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ズデニェク・ティルシャル(Zdeněk Tylšar)、ベドジフ・ティルシャル(Bedřich Tylšar)のホルン、ぺトル・アルトリフテル(Petr Altrichter)指揮のドヴォルザーク室内管弦楽団(Dvořák Chamber Orchestra)による、ハイドン作曲とされる2つのホルンのための協奏曲(Hob.VIId:2)などを収めた2枚組のアルバム。収録は1987年9月21日から29日、プラハのルドルフィヌムでのセッション録音。ルドルフィヌムはチェコフィルが本拠地としているホールのようです。レーベルはチェコのSUPRAPHON。

以前、このアルバムと同じホルン奏者であるティルシャル兄弟の2つのホルンのための協奏曲を取りあげています。その記事はこちら。

2012/05/21 : ハイドン–協奏曲 : ティルシャル兄弟/コシュラー/プラハ室内管の2つのホルンのための協奏曲

以前取りあげた方は1972年のPマークということで、今日取り上げる方は少なくてもその15年後の録音になります。指揮者とオケも異なり、時の経過とオケの違いがどのような違いにつながるかというところが聴き所でしょう。実はこのアルバム、よくメールを戴く湖国JHさんの愛聴盤ということで、手元の旧盤との違いが非常に気になっていたので取りあげた次第。奏者のティルシャル兄弟については、リンク先の前記事をご覧ください。

2つのホルンのための協奏曲については前出のティルシャル兄弟盤以外にも何度か取りあげています。

2012/07/26 : ハイドン–協奏曲 : 松崎 裕/山本 真/ジャパン・チェンバー・オーケストラの2つのホルンのための協奏曲
2011/10/05 : ハイドン–交響曲 : ヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管弦楽団の交響曲72番等
2010/10/16 : ハイドン–協奏曲 : ヘルマン・バウマンのホルン協奏曲集

この曲についての解説はバウマン盤をご覧ください。

指揮者のペトル・アルトリフテルは1951年、チェコ東部のオストラヴァの南の街、フレンシュタード・ポト・ラドシュチェム(Frenštát pod Radhoštěm)生まれの指揮者。オストラヴァ音楽院でホルンと指揮を学び、またヤナーチェク音楽・舞台芸術学校でも音楽を学びました。その後、チェコフィルでヴァーツラフ・ノイマンのアシスタントとして働き、プラハ交響楽団の首席客演指揮者を経て、1990年、首席指揮者に就任しました。ドイツでは1993年から2004年まで南西ドイツフィルハーモニーの音楽監督、イギリスでは1997年から2001年までロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務め、2002年からはチェコのブルノフィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者となっています。このアルバムを録音したころはプラハ交響楽団の客演指揮者をしていた頃でしょうか。

Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762) (Composed by Antonio Rosetti/Michael Haydn?)
一聴して典雅なオケの序奏に耳を奪われます。旧盤のコシュラーとプラハ室内管が情感に訴える演奏だったのに対し、アルトリフテルの指揮するドヴォルザーク室内管はリズムの折り目をきりっとつけて、テンポもゆったり目。録音は旧盤も悪くなかったのですが、新盤の方が地に脚がついた感じで、オケに対して2本のホルンが浮かび上がり、ホルンの位置関係もはっきりわかる理想的なもの。鮮明と言うほどではありませんが、鑑賞上は新盤はかなりいい線いってます。ティルシャル兄弟のホルンの演奏は新旧両盤とも完璧といっていいほどですが、新盤のゆったりとしたテンポで、控えめなオケの伴奏に乗って朗々と吹き抜く感じの方がいいですね。眼前で2人が交互に掛け合う感じは絶妙。新盤はまさにホルンに鮮明にスポットライトが当たった演奏ですね。カデンツァはまさにホルンを完璧にコントロールした2人の息がピタリと合った神業が聴き取れます。ホルン好きの方にはたまらないものでしょう。
1楽章のキリッとした表情のオケに対して、2楽章ではぐっとテンポを落とすと同時に、表現もぐぐっと深くなり、ゆったり濃密な音楽になります。ティルシャル兄弟のホルンはそうした伴奏にのって素晴らしく彫りの深い孤高のソロ。2本のホルンの絶妙な重なり具合。
フィナーレも落ち着いたテンポで、爽快感もありながらしっとりとした表情も保っていきます。ホルンの安定感は揺らぐ事もなく、またオケの典雅な印象も一貫していて、この演奏の完成度の高さが窺えます。ホルンもオケも、体にしみこんだ音楽を奏でているような自然な佇まいが素晴らしいですね。

旧盤も素晴らしかったんですが、この新盤はそれを上回る素晴らしさ。この珍しい曲を2度も録音する意味がしっかりありました。ティルシャル兄弟の素晴らしいホルンのソロを浮かび上がらせるように控えめながら、じつに味わい深い演奏で支えるアルトリフテルとドヴォルザーク室内管の素晴らしいサポート、そしてしっとりとした美しい響きの録音と完璧なプロダクションに仕上がっています。おそらくハイドン自身が書いたものではないだろうというのが最近の評価のようですが、曲の真贋議論とは関係なく、この演奏で聴くこの曲は実に素晴らしいものです。ホルンという演奏が難しい楽器を、2本ソロにしたこの曲に仕込まれた創意が一番よくわかるアルバムです。ホルンの美しい響きを含めて、是非実演で聴いてみたいものです。評価は[+++++]とします。

※旧盤のアルバムのHMV ONLINE、TOWER RECORDSのリンク先は今日とりあげた新盤でしたので削除致しました。

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tag : 2つのホルンのための協奏曲

松崎 裕/山本 真/ジャパン・チェンバー・オーケストラの2つのホルンのための協奏曲

今日は日本人奏者のアルバム。

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松崎 裕(Hiroshi Matsuzaki)、山本 真(Makoto Yamamoto)のホルン、ジャパン・チェンバー・オーケストラの演奏でハイドンの作とされていた2つのホルンのための協奏曲(Hob.VIId:2)とベートーヴェンの交響曲第7番を収めたアルバム。収録はハイドンが2002年6月2日、東京の多摩センターにあるパルテノン多摩でのライヴ。ベートーヴェンも同じくパルテノン多摩での2003年10月18日のライヴ。レーベルははじめて手に入れるALM CLASSICS。

2つのホルンのための協奏曲は良くメールをいただく湖国JHさんの愛聴曲。独特の魅力のある曲です。

この2つのホルンのための協奏曲は、おそらくハイドンの作曲ではなく、弟ミヒャエル・ハイドンかアントニオ・ロゼッティの作曲によるものと言われています。専門家ではありませんので、ハイドンの作かどうかを語れる訳ではありませんが、この曲を聴くとおそらくヨゼフ・ハイドンの作ではないように感じます。モーツァルトがメロディーを作曲して誰かがオーケストラパートを書き加えたと言われる協奏交響曲K.297bとオケの響き、曲の展開が似ていることから、両曲とも同一人物が関与していると勝手ににらんでます。K.297bの方はモーツァルトっぽいメロディーラインを感じさせながらもモーツァルトらしい閃きはちょっと弱く、またオーケストレーションもちょっとモーツァルト風をねらってはいるものの、彼本来の天才的な展開が感じられないような印象があり、誰かがモーツァルトを真似て書いたような印象を感じます。ハイドンのこの2つのホルンのための協奏曲も、ハイドンのようでもあり、モーツァルト風でもある印象を与える曲想。ハイドンの特徴である機知に富んだ意外な展開と巧みな構成感ではなく、テーマとなるメロディーをベースに統一感がある構成(展開がシンプル)なのに加えて、やはりメロディー自体の美しさはハイドンのものとは差がついているように感じます。まあ、こうした個人的な印象以外に根拠はありませんので、あまり突っ込まないように願います(笑)

ホルンの2人は元N響のホルン奏者。松崎 裕さんは首席ホルン奏者だった人。N響の演奏の映像で良く見かけ多人です。日本のトップクラスのホルン奏者でしょう。オケのジャパン・チェンバー・オーケストラは東京で活動するオーケストラの若手奏者を中心に結成されたオケで、1999年から本拠地をパルテノン多摩としているそうです。指揮者なしでコンサートマスターもローテーションとのこと。近所で活動する団体なのに全く知りませんでした。

Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762) (Composed by Antonio Rosetti/Michael Haydn?)
木質系のやさしい音色の序奏から入ります。直接音の重視の録音で、実体感ある録音。ライヴですが条件は悪くなく、奥行き感もそこそこある聴きやすい録音。序奏はモーツァルト風という感じ。ホルン2台は微妙に音色が異なり面白いですね。同じフレーズをそのまま繰り返すところなどはちょい単調な印象はありますが、ホルンの音の重なりの妙が加わり、響きを楽しめます。ホルンによる主題の演奏のあとのオーケストレーションはやはりモーツァルト風。オーケストラが音量をおとしてそわさせるあたりはまさにK.297bと非常に近いものを感じます。ホルンの2人は日本人らしい几帳面、真面目な演奏。ヨーロッパの城の石積がよく見ると日本の城の石垣でできているよう。ヨーロッパのロマンティックな響きのイメージに対し、演奏の基調には日本ならではの清らかさがあるという感じです。テクニックは十分で2本のホルンの息もピタリと合っています。1楽章の後半は早いパッセージを掛け合いながら見事に吹き抜くホルンの聴かせどころ。オケもヴァイオリンを中心にキレのいいアンサンブルを聴かせます。
2楽章のアダージョはいきなりホルン2本の重なったメロディーから入ります。やはりメロディーラインはハイドンだったらもう少し機知に富んだ展開をするのではと思わせる部分があります。ホルンが描くメロディーとオケの関係がもう少し明確に役割をになって展開するように感じます。
フィナーレは「タラタッタッタッター」というメロディーがテーマ。ホルンは忠実にメロディーラインをたどっていきます。オケの方は逆に指揮者なしにもかかわらず、なかなかのキレを聴かせ見事なサポート。音楽的にはオケの立体感の魅力もいい感じです。最後は拍手も録られており、ライヴであることを思い出させます。

日本人奏者によるハイドンの曲と思われていた2つのホルンのための協奏曲という珍しい曲の演奏。ホルンの音色の微妙な違いを生かした掛け合いと生気溢れるオーケストラの几帳面な演奏。演奏全体に良い意味で和風な雰囲気があり、日本人ならではの誠実な演奏といえるでしょう。オケは指揮者なしでもかなりの統一感があり、このアルバムの魅力のひとつとなっています。次に収められたベートーヴェンの7番では鮮度は高いものの、音楽の統一感としては、やはり指揮者がいたほうがまとまると思わせる余韻を残しますので、この辺は曲やコンサートマスターによる違いなんだろうと思います。2つのホルンのための協奏曲の方の評価は[++++]としたいと思います。

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tag : 2つのホルンのための協奏曲

ティルシャル兄弟/コシュラー/プラハ室内管の2つのホルンのための協奏曲

今日はハイドンの真作かどうかわからない2つのホルンのための協奏曲。

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ズデニェク・ティルシャル(Zdeněk Tylšar)、ベドジフ・ティルシャル(Bedřich Tylšar)のホルン、ズデニェク・コシュラー(Zdeněk Košler)指揮のプラハ室内管弦楽団の演奏で、ハイドン作曲とされる2つのホルンのための協奏曲(Hob.VIId:2)、ヴィヴァルディの2つのホルンのための協奏曲へ長調、テレマンの2つのホルンのための協奏曲変ホ長調の3曲を収めたアルバム。収録年はPマークが1972年という手がかりのみで詳細はわかりません。レーベルはチェコのsupraphonの録音をDENONが起こしたもの。

この曲については過去に2度取りあげています。

2011/10/05 : ハイドン–交響曲 : ヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管弦楽団の交響曲72番等
2010/10/16 : ハイドン–協奏曲 : ヘルマン・バウマンのホルン協奏曲集

曲の解説などはバウマンの方の記事をご参照ください。

ホルンのズデニェク・ティルシャルとベドジフ・ティルシャルは兄弟で兄がベドジフ。2人ともチェコ・フィルのホルン奏者として活躍した人とのことですが、弟のズデニェクは2006年に急逝したそうです。兄ベドジフは1939年生まれ、ブルノ音楽院とヤナーチェク音楽アカデミーで学び、ミュンヘン・フィルハーモニーに2年間所属の後、プラハ交響楽団の首席ホルン奏者となり、このアルバムの録音当時はチェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーでした。弟のズデニェクは兄と同じブルノ音楽院、ヤナーチェク音楽アカデミーで学んだ後、ミュンヘン国際音楽コンクール、プラハの春国際音楽コンクールで入賞し、同様チェコ・フィルハーモニー管弦楽団でホルン奏者として活躍しています。

指揮者のズデニェク・コシュラーは日本ではおなじみの人。1928年プラハ生まれ指揮者。日本では東京都交響楽団の客演指揮者としてたびたび来日していました。最近名前を聞かないとおもっていたら1995年に亡くなっていたんですね。私自身は印象に残る演奏がある訳ではないのですが、堅実な演奏をする人とのイメージです。

Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762)
この曲の直近のイメージはバウマン盤。朗々と吹き鳴らすへルマン・バウマンとティモシー・ブラウンのホルンに対し、アイオナ・ブラウンの指揮するアカデミー室内管弦楽団が愉悦感溢れる伴奏で支えていました。主にオケの表情豊かな演奏が印象に残っています。このアルバムはそれに対し、朴訥ともいえるプラハ室内管弦楽団の伴奏が逆に曲の素朴さを浮き彫りにするような入り。バウマン盤がかなり豊かな表情づけだったと今更ながらわからせるような演奏。伴奏のリズムと生気は悪くありません。コシュラー流石の伴奏。SUPRAPHONEの録音も悪くありません。オケのエネルギーがダイレクトに伝わるいい録音。正攻法のオケの生気、すばらしいですね。ティルシャル兄弟のホルンはオケに混じってオーソドックス、表情づけは控えめながら存在感は十分、ホルンという楽器の音色を存分に楽しめる演奏。堅実な印象が強い演奏ですが、基本的なメリハリやリズム感、キレがいいので聴き応えは十分。逆にリズムの正確さが際立ち、ホルンという難しい楽器のソロと感じさせないすばらしい安定感。アルペンホルンのような深々とした音色で交互に掛け合うホルンのメロディーがうら悲しさを誘います。1楽章の終盤はオケも勢いに乗って素晴らしいプレゼンス。迸るエネルギー。
2楽章のロマンツァは説明調になるような気がする演奏が多いのですが、コシュラーのコントロールはこの楽章独特の表情をうまく引き出し、起伏に富んだ素晴らしいサポート。ティルシャル兄弟のホルンは遠くから響くような音色が最高。この2楽章は出色の出来。
3楽章はタラタッタッタッターのリズムが印象に残る曲。ハイドンの作曲であれば、より有機的に絡み合う構成感溢れる曲だったのでしょうが、少し単調さが顔をのぞかせる曲。ただ演奏の方は、ホルンの妙技と直裁なオケの響きが素晴らしく、純粋無垢な魅力を発散する演奏。やはりオケのキレがいいので聴き応え十分ですね。

チェコの名手がそろった、珍しいハイドンの2つのホルンのための協奏曲を収めたアルバム。演奏者の個性や表現を抑えて、曲を正攻法で表現した堅実な演奏。それだけに曲自体の魅力というか、優しい曲調と響きの面白さを素直に表した演奏と言えるでしょう。バウマン盤との優劣は、演奏自体の完成度はバウマン盤ですが、曲自体を楽しむならこちらのティルシャル盤という事でしょう。評価は[++++]ということとします。

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ヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管弦楽団の交響曲72番等

今日は最近お気に入りのヒストリカル。

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ヘルムート・ミュラー=ブリュール(Helmut Müller-Brühl)指揮のケルン室内管弦楽団の演奏でハイドンの2本のホルンのための協奏曲、交響曲72番、ディヴェルティメント(カッサンシオン)の3曲を収めたアルバム。何れもホルンが活躍する曲。ホルンはエーリッヒ・ペンツェル(Erich Penzel)とウォルター・レクスット(Walter Lexutt)。収録は詳しいデータの記載がありませんが、おそらく1966年のもの。レーベルはCharlin(シャルラン)、アンドレ・シャルランという技術者のつくったレーベル。ワンポイント録音で録られた音源を数多く出しています。

ヘルムート・ミュラー=ブリュールといえばNAXOSレーベルからハイドンの交響曲集を何枚もリリースしているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。ただしNAXOSレーベルへの収録は同じケルン室内管弦楽団との演奏ながら1990年代から2000年代の録音。30年以上の隔たりがあります。

ヘルムート・ミュラー=ブリュールは1933年生まれの指揮者。ヘルマン・アーベントロートに師事し、彼の創立したケルン室内管弦楽団の指揮者として活動を続けているとのこと。知名度が上がったのはやはりNAXOSのアルバムを通して。特にハイドンの交響曲はキビキビとしたリズムが特徴の正統派の名演としてお薦めできるもの。彼の1966年の演奏ということで33歳のころの録音になります。果たしてその出来は如何なるものでしょう。

Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762)
この曲はこの演奏を含めて3種の演奏しかありません。大宮真琴さんの「新版ハイドン」の巻末の作品リストでは消失曲と整理されていますが、曲の真贋のほどはわかりません。この辺のことは詳しい方の解説に譲ることにして、演奏のレビューに特化しましょう。
冒頭からクラシカルな音響ながら非常に鮮明な録音。高音は繊細というかちょっと薄め、低域は分厚い、ちょっとボンついた印象もある響き。序奏からオーケストラの音像が非常に鮮明に浮かび上がる独特の録音。演奏スタイルは古さを感じさせるものの、推進力は十分。2本のホルンは比較的前に定位して絶妙な掛け合いを聴かせます。響きはやや乾いた響きで潤いに欠ける感じもありますが気になるほどではありません。ワンポイント録音とは言われなくてはわかりませんが、良く聴くとこの録音、各楽器の定位感が抜群にいいことがわかります。現代のワンポイント録音の自然な音響とはかなり印象が異なりますが、確かにワンポイントらしい音場です。ミュラー=ブリュールのコントロールは後年のNAXOSの録音と同傾向の印象もありますが、音響の違いが音楽の印象を大きく変えており、ちょっと聴くと同じ指揮者の演奏とは気づかないと思います。
アダージョはハイドンのコンチェルトとしては非常に珍しい音調で入ります。ホルン2本の悲しげなメロディーからはじまり、そのメロディーが弦楽器に引き継がれ、途中かなり印象的な転調を経て一貫して穏やかなメロディーを続けます。ホルンは音色が良くそろってテクニック的には申し分ありません。協奏曲としてはテクニックを誇示する部分は少なく、むしろ2本のホルンの掛け合いにポイントを絞った曲。
フィナーレは落ち着いたリズムにのってことさら盛り上がりや推進力を聴かせるわけではなく、律儀にキレを聴かせるというタイプ。最後は流石に力が入って終了。

Hob.I:72 / Symphony No.72 [D] (before 1781)
冒頭からホルン大活躍の曲。番号は後半ですが作曲年代は1960年代はじめと想定され、シュトルム・ウント・ドラング期のだいぶ前の曲。うら悲しい雰囲気はまだ降りてこず、純音楽的な構成。
1楽章は前曲同様優秀な録音を通して、ホルンがくっきりと隈取りを描く晴朗な旋律の魅力溢れる演奏。かなり高度なテクニックを要求するようなホルンの旋律ですが、難なくこなしていきます。2本のホルンの掛け合いはここでも見事。ミュラー=ブリュールのコントロールは落ち着いて立体的な音響を構築する感じ。
2楽章のアンダンテも落ち着き払った冷静沈着な演奏。響きが豊かな録音故音自体が活き活きしており、覚めた感じは皆無。淡々とした演奏がかえって豊かな音楽を表現しているような演奏。ヴァイオリンとフルートが際立った存在感。
メヌエットはビロードの肌触りのような弦楽器の最初の音が秀逸。他の楽章と差別化して舞曲風な感じの演奏というわけではなく、前楽章からの連続したトーンで入るので、非常に自然な入りと自然なフレージング。続くフィナーレもアンダンテなせいか、テンポもフレージングも前楽章からそのまま続いているような連続性。交響曲の起承転結よりも自然な連続性をポイントにしている演奏とみました。しっとりと変奏を重ねて音響的にではなく音楽的に次第に盛り上がるかんじがじわりと伝わります。最後は変奏の総決算のような盛り上げ方で終了。なかなか個性的な演奏ですね。

Hob.II:D22 / Cassatio (Divertimento) [D] (1761-65)
最後はこちらもホルンが活躍するディヴェルティメント。この曲はアブ・コスターのアルバムで鮮明な記憶が残っています。コスターの鮮明なホルンの演奏の印象からすると録音の古さは否めませんが、逆に味わい深い演奏とホルンのテクニックはコスター盤に劣ることはありません。コスター盤は同じアルバムに収められたホルン協奏曲を以前取りあげています。

2010/09/29 : ハイドン–協奏曲 : アブ・コスターのホルン協奏曲

5楽章構成のこの曲、2本のホルンと弦楽合奏によるのどかな音楽。2楽章と4楽章にメヌエットをはさみ、3楽章がアダージョ。弦楽器の線の細い響きとホルンの豊かな響きのコンロラストが独特の雰囲気。ミュラー=ブリュールはここでも冷静かつ穏やかなコントロール。淡々とした演奏の醸し出す音楽が雰囲気を盛り上げます。後半はすこしテンポが下がりキレが薄れてくる印象もありますが、優しい曲調とホルンの音色が相俟って忘れ難い印象を残す曲でもあります。

ここ最近のNAXOSレーベルへの録音で知られるヘルムート・ミュラー=ブリュールとケルン室内管弦楽団の演奏によるハイドンのホルンが活躍する曲をあつめたアルバム。シャルランの素晴らしいワンポイント録音によって時代を超えた魅力を放っています。評価は3曲とも[++++]とします。録音による音響のちがいで、最近の演奏とはかなり違った傾向の演奏に聴こえますが、音楽のエッセンスは変わらない気がします。NAXOSの交響曲もそのうち取りあげなくてはなりませんね。

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tag : ホルン協奏曲 交響曲72番 ディヴェルティメント ヒストリカル 2つのホルンのための協奏曲

ヘルマン・バウマンのホルン協奏曲集

昨日はほんとはスクロヴァチェフスキ/読売日響のブルックナーを池袋に聴きにいくはずだったんですが、仕事が入ってしまい、知人にチケットを譲っちゃいました。スクロヴァ爺がまた爆演だったんでしょうね。行かれた方のレビューでも読んで余韻を楽しみたいと思います。

レビューの方は前記事に引き続きPHILIPSレーベルの古いアルバムつながりで下記の盤を取り上げました。

BaumannHorn.jpg

ヘルマン・バウマン(Hermann Baumann)のホルンによる、ハイドンのホルン協奏曲集。ホルン協奏曲1番VIId:3、ホルン協奏曲2番VIId:4、2つのホルンのための協奏曲VIId:2、ハイドンと同時代の作曲家ポコーニー(Pokorny)のホルン協奏曲の4曲を集めたもの。演奏はアイオナ・ブラウン(Iona Brown)指揮のアカデミー室内管弦楽団(Academy of St. Martin-in-the-Fields)で、1988年2月のセッション録音。

バウマンのホルン協奏曲2曲は、他のハイドンの協奏曲と合わせた廉価盤で持っていたんですが、オリジナルのアルバムには珍しい2つのホルンのための協奏曲VIId:2が含まれているため、最近入手したものです。廉価盤の方がちょっと味気ないジャケットだったんですが、こちらの方は暗闇からバウマンの思慮深く彫りも深い意味ありげな姿が浮かび上がるなかなか迫力あるジャケットデザインで、コレクションに加えるべきとの判断から入手しました。

Wikipediaなどで調べたところハイドン作曲のホルン協奏曲(可能性のある曲も含む)は、知られているだけで5曲あります。

VIId:1 コルノ・ダ・カッチャ協奏曲 ニ長調(1765)紛失
VIId:2 2つのホルンのための協奏曲 変ホ長調(作曲年不明)偽作?
VIId:3 ホルン協奏曲第1番 ニ長調(1762)
VIId:4 ホルン協奏曲第2番 ニ長調(1781以前)偽作?
2つのホルンのための協奏曲 変ホ長調(1784以前?)偽作の可能性高い

一番有名というか演奏されることが多いのがホルン協奏曲第1番。作曲が1762年ですのでハイドンがアイゼンシュタットのエステルハージ家の副楽長に就任してすぐで、パウル・アントン・エステルハージ侯爵が亡くなった年のもの。2番は3楽章の類似性から弟ミヒャエル・ハイドンの作の可能性があるなど指摘があります。私の所有している録音も以前赤いジャケットの怪しいアルバムとして取り上げたクレヴェンジャー盤とこのバウマン盤のみ。2つのホルンのための協奏曲は1959年に筆写譜が発見されてハイドン作と思われたが認められなかったもの。こちらもパイヤールの指揮したERATO盤とバウマン盤のみ。

ということで、ハイドン作と確実に判明しているのはホルン協奏曲1番のみなんですね。

さて、第1番から。オケはロストロポーヴィチのチェロ協奏曲の名サポートで記憶にのこるアイオナ・ブラウン指揮のアカデミー室内管弦楽団。非常に軽やかかなリズムによるすがすがしい始まり。オケの鮮度が高く非常にキレがいい感じ。バウマンのホルンはそのオケに乗って、こちらも軽々と吹いていきます。よく聴くとバウマンのホルンはリズムが非常に正確で、重くなく、響きがよくコントロールされた模範的な演奏。こうした演奏は相当な技術がないと難しいのでしょう。オケのキレに合わせてホルンが軽々と進む痛快さ。1楽章のカデンツァは腕試し的にさらりとこなします。
2楽章はブラウンがギアチェンジ。非常に繊細にオケをコントロール。始まったとたんから素晴しい緊張感。バウマンのホルンは音量のコントロール、フレージングともに絶妙の極み。特に弱音のコントロールは見事の一言です。この曲の特徴であるホルンの低音部の魅力的なメロディーは、先日取り上げたデニス・ブレインが図太い低音の迫力で聴かせたのとは異なり、絶妙の音量コントロールで聴かせます。素晴しいテクニックですね。録音が鮮明な分純粋に響きの美しさも堪能できます。2楽章のカデンツァはバウマンの絶妙なテクニックによるホルン素晴しい響きを楽しめます。
3楽章はオーケストラの色彩感が際立ちます。美しい弦楽器の合奏と推進力。ホルンは再び軽々とメロディーをトレースしてハイドン特有の3楽章の複雑な構成をクリアに描いていきます。速いパッセージも滑かにこなしていきます。ホルンとオケが一体となった素晴しいフィナーレですね。最後のカデンツァはバウマンのテクニックが存分に発揮された素晴しい仕上がりです。

続いて第2番。演奏は1番の素晴しい質を保ってますが、やはり曲想が少々単調に感じられます。ハイドンの作曲かどうかの真贋を見定める能力も知識も立場もありませんが、耳に入る音楽の要素にはいつものハイドンの閃きのつみ重ねというよりは、単純なメロディーの組み合わせに聴こえてしまいます。演奏はバウマンの素晴しいホルンのメロディーを純粋に楽しめます。
2楽章はバウマン自身による本アルバムの解説に「宝石のよう」と書かれているように、短調の切々としたメロディーが美しい曲。打って変わって3楽章明るメロディーの曲。朗々たるホルンの響きを楽しめます。最後のカデンツァはホルンの音色の魅力のショーピースのような仕上がり。

最後は2つのホルンのための協奏曲。第2ホルンはティモシー・ブラウン(Timothy Brown)が担当。この曲は発見当時はハイドンの曲ということで話題となったようですが、その後の研究でハイドン作曲とまでは認められなかったようですね。ロビンス・ランドンの研究ではロセッティかエッティンゲン=ワーランシュタイン家の音楽家の一人の作品と推測されているとのことです。
曲は2本のホルンの掛け合いというか、響きの重なりを楽しむ曲。序奏はモーツァルトの曲といったら疑いようのないような流麗なもの。美しい序奏にホルンが乗ってきますが、2本のホルンによる響きは絶妙な調和で非常に美しいですね。ホルンという楽器の音色は1本でも美しいですが複数のホルンの音の重なりもまた違った美しさを感じさせますね。
2楽章はこの曲も短調のうら悲しいメロディーが美しい曲。3楽章は冒頭のタラタッタッタッターというメロディーが楽章全体の基調となる展開。オケとホルンがタラタッタッタッターの応酬。
全体の曲調もハイドンの曲とはちょっと異なる印象に聴こえます。

評価はホルン協奏曲1番が[+++++]、その他が[++++]としました。
この頃のPHILIPSのプロダクションは素晴しいものが多いですね。音楽産業全盛期の栄華が感じられます。1枚1枚の素晴しい完成度と、PHILIPSの自然な録音の素晴しさが堪能できます。このオリジナルアルバムが現在廃盤なのは残念なところ。中古で見つけられた際には見逃すべきではありませんね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ホルン協奏曲 おすすめ盤 2つのホルンのための協奏曲 偽作

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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