マルカンドレ・アムランのXVI:31ライヴ(ハイドン)

今日はDVDです。音楽は目でも聴くとの啓示に触発されて(笑)

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マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)のピアノによる2007年ルール(Ruhr)ピアノ・フェスティバルでのコンサートの模様を収めたDVD。プログラムは、ハイドンのピアノソナタXVI:31、ショパンのピアノ・ソナタ第3番Op.58、ドビュッシーの前奏曲第2集など。収録は2007年6月29日、ドイツ、エッセンのフィルハーモニーでのライヴ。レーベルはEURO ARTS。

ご存知のとおり、超絶技巧で現代曲をこともなげに弾く豪腕で知られるアムランですが、ハイドンのソナタ集を3組6枚と協奏曲集をhyperionからリリースしており、ハイドンに格別の愛着をもっているようです。

2013/04/20 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】マルカンドレ・アムランのピアノ協奏曲集
2012/05/17 : ハイドン–ピアノソナタ : 【新着】マルカンドレ・アムランのピアノソナタ集3

豪腕アムランが弾くハイドンは、リヒテルのハイドンのような人を圧倒するようなダイナミックな迫力があるわけでもなく、逆に現代音楽にも通じる静かな狂気のようなものが感じられると同時に、ハイドンの音楽の展開の妙をもさりげなく表現する余裕もあり、これもハイドンのソナタの一面を表した、本質的なものとみなしています。そのアムランのコンサートの映像ということで、期待の一枚ということでしょう。

プログラムの最初におかれたハイドンは、コンサートの幕開けにふさわしい、聴衆の脳に音楽というものの刺激と奥深さを印象づける素晴しい演奏です。

Hob.XVI:31 / Piano Sonata No.46 [E] (1776 or before)
ステージ上、ピアニストの背後におかれたカメラから客席方向に向けたカメラで、拍手に迎えられ、静かに深々と礼をするアムランの姿からはじまります。静寂からこのソナタの美しいメロディーがそよ風のように鳴り始めると、いきなりホールに音楽が満ちます。いつもの峻厳さをともなったキレ味は健在。指のアクションは動きが少なくなめるようなタッチで弾き進めていきます。紡ぎ出される音楽の可憐な美しさは例えようがありません。抑えた表情のなかに青白く光る狂気の炎。非常に大きな構造の音楽のごく一部を弾いているようなアムラン特有の雰囲気も十分。客席もコンサートの1曲目からいきなり濃密な音楽に引き込まれ、静寂の中に流れる音楽に酔いしれているよう。宇宙に輝く星雲のように曇りのない美しさ際立ちます。広いホールの全聴衆の耳がアムランのタッチに釘付け。
構えなくつづくアレグレットに。淡々と進む音楽の微妙な流れの変化がアムランの表情とともに実に鮮明に撮られています。良く聴くとそこここにアクセントやレガートが織り交ぜられて、滔々と流れる音楽に変化をあたえています。あまりの完成度にライヴであることを忘れそうですが、時折混じる咳払いでこれがコンサートであることにふと気づかされます。
フィナーレに入り、一音一音の粒立ちがクリアになり、心地よいパッセージが続きます。指は軽々と音階をこなし、アムランも余裕たっぷりで速いパッセージをこなします。小気味好い音楽を終え、会場からはブラヴォーまじりの拍手が降り注ぎます。

コンサートの冒頭に取りあげられたハイドンの短いソナタですが、流石はアムラン。軽々としたタッチから生み出される音楽はハイドンのソナタのこれまでの演奏の垢をはぎ取った純粋無垢な音楽として、そして現代にも通用するシャープなシェイプに仕立てて聴かせ、響きの織りなす綾の美しさでホールの聴衆を釘付けにする演奏でした。現代最高のハイドン演奏の一つといっても過言ではないでしょう。録音用の演奏とは異なり、コンサートでのこの精緻な演奏、表面的ではなく本質的なテクニックの高さを思い知らせる素晴しい演奏です。このハイドン1曲だけでも買う価値のあるDVDです。このあとのショパン、ドビュッシー、アンコールで演奏されるガーシュインなども素晴しい演奏。オススメです。ハイドンの評価はもちろん[+++++]とします。

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ウィリアム・スタインバーグ/ボストン響の「校長先生」1969年ライヴ(ハイドン)

8月最初のレビューはDVDです。

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ウィリアム・スタインバーグ(William Steinberg)指揮のボストン交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲55番「校長先生」、ベートーヴェンの交響曲7番、8番を収めたDVD。ハイドンの収録は1969年10月7日、ボストン・シンフォニー・ホールでのライヴ。レーベルはica CLASSICS。

ウィリアム・スタインバーグは日本ではあまり大きく露出された人ではありませんが、小澤征爾の前のボストン響の音楽監督だった人です。1989年、ドイツのケルン生まれの指揮者。早くからピアノ、ヴァイオリン、作曲の才能に恵まれ、ケルン音楽院でピアノや指揮を学び、特に指揮はヘルマン・アーベントロートに師事し、1919年に指揮で優秀賞を得て卒業しました。その後ケルン歌劇場の第2ヴァイオリン奏者となりますが、独自のボウイングのせいではなれ、クレンペラーのアシスタントになります。クレンペラーが1924年に去ると、首席指揮者となりました。1930年にはフランクフルト歌劇場の音楽監督に抜擢されますが1933年、彼がユダヤ人であったためその地位を追われました。そして、1936年に当時イギリスが統治していたパレスチナに移住し、同地でブロニスワフ・フーベルマンらと共にパレスチナ交響楽団(現イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団)を結成し、指揮者を務めることになります。戦後は1945年から53年までバッファロー・フィルハーモニー管弦楽団、1950年代にはロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、1952年から76年までのピッツバーグ交響楽団の指揮者としての活動しましたが、ボストン響の音楽監督はミュンシュ、ラインスドロフの後を受けて、1969年から72年まで務めました。スタインバーグの後は、冒頭に触れたように小沢征爾が1973年から2002年までの29年間努めていましす。ちなみにこの29年間は歴代音楽監督のなかで最長ということです。なお、息子のピンカス・スタインバーグも指揮者として活躍しており、以前、N響を振ったハイドンのロンドンの演奏をたまたまテレビで見る機会があり、覇気に満ちた素晴しい演奏だったのが印象に残っています。

今日取り上げる映像はボストン交響楽団の演奏のテレビ放映用の映像であり、しかも1960年代としては貴重なカラー映像。ボストンのシンフォニーホールでのライヴの様子がよくわかる演奏です。

Hob.I:55 / Symphony No.55 "Der Schulmeister" 「校長先生」 [E flat] (1774)
ステージ袖からから指揮台に上がるだけで万来の拍手。片手だけで大きな独特なアクションでオケに指示を出しますが、かなり独特な指揮で、奏者はタイミングではなくアクションからテンションの指示を受けているよう。1楽章は落ち着いたテンポでキレよくハイドンの音楽の推進力を引き出して行きます。1969年当時のボストン響のメンバーは老紳士が多く、キリリと引き締まって、かなり正統派な演奏。ヴァイオリンのボウイングはテンポの厳格さの中でも伸びやかさを失いません。音楽は折り目正しさを保ちます。
続くアダージョも、テンポはかなり遅めですが、ゆったりしながらも規律正しい感じを保っているのがスタインバーグ流でしょう。大きな独特のジェスチャーでオケに指示を出して行くスタインバーグの姿を見るのも楽しい映像。咳払いなども聴こえますがいい意味でライヴの緊張感を感じさせて悪くありません。独特の棒から繰り出される音楽は実にニュアンスが豊かで、ハイドンの音楽の微笑ましさが迸ります。
メヌエットも遅めですが、起伏は十分。テンポに安定感があるので曲のメリハリを落ち着いて楽しんでいるよう。中間部のチェロのソロもさりげない演奏ですが、大きな起伏をうまく作って音楽の面白さを際立たせます。この表情の作り方の上手さもスタインバーグの特徴の一つでしょう。
フィナーレもじっくり入ります。木管、金管ともにテンポ良くユーモラスなメロディーを重ね、徐々にオケも盛り上がっていきますが、かなり明確に強弱をコントロールして、音楽のメリハリを浮かび上がらせます。ハイドン独特の入り組んだメロディーを実に上手く重ねて、最後はきっちり片をつけます。ボストン響の奏者の笑顔がスタインバーグとの良好な関係と、演奏の出来を物語っているよう。会場も割れんばかりの拍手で迎えます。古き良き時代の素晴しいハイドンの演奏として、貴重な映像であることは間違いないでしょう。

このあと、1970年10月6日のベートーヴェンの7番(同じくボストン市ンフォニーホールでのライヴ)、1962年1月9日のベートーヴェンの8番(ハーバード大学サンダースシアターでのライヴ)が収められていますが、どちらもスタインバーグの溢れる覇気を収めた素晴しいもの。後者は白黒映像で途中に映像の乱れが散見されますが、音はかえってリアルで音楽を聴く分には問題ありません。7番も素晴しいのですが、この8番は図抜けて素晴しい演奏です。

個人的にはあまりなじみのなかったウィリアム・スタインバーグのハイドンですが、こうして映像を通して見ると、スタインバーグという人の音楽がよりリアルに感じられます。ボストン響から引き締まった素晴しい響きを引き出し、ハイドンの音楽の要であるユーモラスな表情の演出も流石というところ。他にハイドンの演奏がないか探したくなってしまいます。ちなみにこのDVDの見所はやはりベートーヴェンであり、ボストン響の素晴しい吹き上がりを堪能できます。手に入れる価値のある素晴しい映像です。「校長先生」の評価は[+++++]とします。

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tag : 校長先生 ライヴ録音 DVD

ショルティ晩年の天地創造ライヴDVD

以前はあまり興味をもっていなかったショルティですが、最初期の軍隊、102番、太鼓連打の爆演を聴いてからショルティのハイドンは気になってます。今日は最近HMV ONLINEから届いたDVD。しかも驚くほど安いもの。HMV ONLINEのマルチバイ割引で809円でした。

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サー・ゲオルク・ショルティ(Sir Georg Solti)指揮のバイエルン放送交響楽団と合唱団の演奏でハイドンのオラトリオ「天地創造」のライヴ映像をおさめたDVD。収録はミュンヘンのヘラクレス・ザールで収録年はわかりませんがおそらく1995年ではないかと思います。レーベルはDigitalClassicsというはじめてのレーベル。

歌手は珍しく4人のタイプ。ガブリエルとエヴァは1人2役ですがラファエルとアダムが別人という構成。

ガブリエル/エヴァ:ルース・ツィーザク(Luth Ziesak)
ウリエル:ヘルベルト・リッペルト(Herbert Lippert)
ラファエル:ラインハルト・ハーゲン(Reinhard Hagen)
アダム:アントン・シャリンジャー(Anton Scharinger)

ソプラノのツィーザクはシカゴ響とのセッション録音の天地創造や指揮でも共演していますので、ショルティのお気に入りなんでしょうか。リッペルトもセッション録音の天地創造で共演しています。

ショルティは1912年ハンガリーのブダペスト生まれで、1997年に南仏で85歳目前で亡くなっていますので、このDVDに収められたコンサートは亡くなる2年前くらいの映像。ショルティ最晩年にハイドンの最高傑作天地創造をコンサートで取りあげた貴重な記録ということでしょう。

当ブログで取りあげたショルティの演奏は下記のとおり。

2012/01/02 : ハイドン-オラトリオ : ショルティ/シカゴ響による天地創造旧盤
2011/06/27 : ハイドン-交響曲 : ショルティ/ウィーンフィルの「ロンドン」1996年ライヴ!
2011/03/27 : ハイドン-交響曲 : 爆演、ショルティの指揮者デビュー録音、ロンドンフィルとの太鼓連打他
2010/12/03 : ハイドン-交響曲 : ショルティ/ロンドンフィルによる102番、103番「太鼓連打」2
2010/12/02 : ハイドン-交響曲 : ショルティ/ロンドンフィルによる102番、103番「太鼓連打」

このDVD、激安価格ゆえ内容を危惧していましたが、映像も16:9で鮮明なもの。解説がついていないことはご愛嬌ですが、なぜこのような値段で売られているのか不思議なちゃんとしたプロダクツです。システィーナ礼拝堂のミケランジェロの天井画をあしらったジャケットは悪くありません。

Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
DVDをデッキにかけるとやはりシスティーナ礼拝堂をクレーンカメラでなめるように移動しながら映すなかなか凝ったメインメニュー。

第一部
バイエルン放送響のティンパニや弦楽器奏者のアップからはじまる混沌の描写。ショルティは80歳を超えているとは信じ難い矍鑠とした動き。いつものように眼光鋭く、長めの指揮棒を水平に持ちかっちり振っていきます。音楽はショルティらしくアタックが鋭くクッキリした隈取りがあり、並の指揮者とは次元の異なる緊張感に包まれます。ただし、予想したよりテンポがゆったりしており、またオケがシカゴ響ではなくバイエルン放送響のため適度に穏やかさもあって非常に落ち着いた入り。

ラファエルのラインハルト・ハーゲンはいい男。若々しい透明感のあるバスで、声量もまずまず。安定感もありいいですね。ウリエルのヘルベルト・リッペルトは非常に正確な歌唱。伸びのある良く通る声と落ち着き払った歌唱は素晴らしいですね。ショルティが起用する理由がわかります。

バイエルン放送合唱団は非常に緻密な音量コントロール。ショルティの指示に良くしたがって、序盤の精度高い演奏を支えます。ショルティのコントロールは特有のカッチリした表情で引き締めながらも、80を過ぎた経験からか、ある意味非常におちついたテンポ設定ともはや無欲の境地のような淡々とした指揮振り。オケを爆発させるようなところはなく、的確にコントロールできる範囲の音量で引き締まった音楽を進めます。時折ヴァイオリンの素晴らしい切れ味の音階が顔をのぞかせ、ハンガリー魂が垣間見えますがすべてはショルティの鋭敏なタクトのコントロール下のこと。

ガブリエルのツィーザクはショルティの引き締まった音楽になるほど良く合います。キレのいいテンポと鋼のような強い浸透力をもったキレのいい声。表情づけも豊かで万全の歌唱。第一部の中盤にさしかかりますが、音楽は微塵の乱れも生じさせず、張りつめた緊張感のなか素晴らしい精度で進行。豪腕投手が速球を封印し、針の穴の精度のコントロールで淡々とバッターを打ち取っていくような進行。時たま写るショルティの鋭いまなざしがヘラクレスザールの緊張感を支配しているようです。

ツィーザクのガブリエルのアリアは正確な歌唱と独特の表情が醸し出す高次元の芸術性。美声で気かせるというより、清潔さのかもしだすほのかな色香を表すような素晴らしい歌唱。これほど知的なガブリエルははじめて。完璧です。ショルティも上半身を左右に揺らしながら、抜群のサポート。なんでしょうこの引き締まった響きは。

続く曲から、ショルティのエンジンがかかってきました。と言っても灰汁の強いところは一切みせず、オケにムチをいれ、一段ギアチェンジ。バイエルン放送響はショルティの指示に良く従って、抜群の精度の演奏で緊張感を保ちます。場内はあまりにも素晴らしい演奏に打たれっぱなしのよう。ショルティは常に冷静に楽譜を見ながら緻密な指示を出し続け、テンポをまた少しあげて大山脈のような第一部のクライマックスにむけてオケをコントロール。美しいヘラクレス・ザールがショルティあおるオケの大音響で満たされ第一部を終えます。80歳を超えたショルティが見せた無欲ながら、ショルティらしい引き締まったコントロール。最後に爆発もみせ素晴らしい演奏。腰抜けそうです。爆演。

第二部
第二部はツィーザクのレチタティーヴォから。非常に表情ゆたか(本当に顔の表情が豊か!)なツィーザク。ちょっとやられました。ツィーザクの良く通る声と心に刺さる歌にメロメロです。平常心を失いました(笑) バイエルン放送響のソリストはショルティの指示にかなり忠実に応え、オケは万全。

第二部の聴き所の三重唱「若々しき緑に飾られて」でも3人のソロの正確なテンポと歌唱が素晴らしいですが、とりわけツィーザクの美しい声が別格の出来。指揮するショルティも歌いながらクライマックスにむけて追い込みます。ツィーザクは最後のアクロバティックな音階も難なくこなし素晴らしいプレゼンス。

ラファエルのハーゲンは第二部を安定した歌唱で支えます。突き抜けたところもない変わりに、非常に安定した歌唱で曲の進行を支えます。この安定感を支えるテクニックは素晴らしいものがあります。アリア「いまや天は光に溢れて輝き」は迫力のオケに押されながらもニュートラルな歌唱でしっかりと軸を定めています。

代わってリッペルトの聴かせどころ。この人はまったく破綻しそうな感じがしません。あくまでも自身のペースで素晴らしい安定感で歌い続けます。これがショルティのコントロールに妙にマッチして素晴らしい歌唱。男声陣のツィーザクに負けない存在感を誇示。

第二部のクライマックスに向けてコーラスの「大いなる御業は成りぬ」に入り、またしてもショルティがギアチェンジ。明らかにムチをうったようにオケに指示を出し、素晴らしい感興を招きます。あくまでも冷静に感動を演出するようなショルティのタクト。徐々に混沌の中からハレルヤコーラスが聴こえ始め、第二部のクライマックスへ。カメラが引き全奏者の強奏。最後はティンパニ奏者の素晴らしいバチさばき。おそらく第二部の終わりに休憩が取られたのでしょう、拍手で迎えられます。

第三部
そして、第三部。導入部の優しい響きを引き締まったタクトでショルティが演出。疲れ一つみせず、ショルティの目には鋭さが残っています。最初はリッペルトのビロードのような歌唱とホルンの醸し出す至福のひと時を楽しみます。

つづくアダムとエヴァのデュエット、速いです。個々から登場したアダムのアントン・シャリンジャーは胴に響く柔らかな声。ツィーザクとのデュエットは草原を駆け抜けるような快速のもの。このような解釈もありですね。シャリンジャーはリートにも向いたような響きの美しい声。力強さも十分。後半の盛り上がりも寄せては返す波のような大きなうねりを上手く表現して素晴らしいものです。波の頂点ではコーラスの分厚い響きがホールを包みます。ショルティはあくまでも冷静にオケとコーラスをコントロール。

2番目のアダムとエヴァのデュエットでも突き抜けるツィーザクのソプラノ。シャリンジャーの柔らかい声と好対照。バスーンのほっとするようなメロディーに続いてホルンによって終結を伝えるようなメロディーが奏でられ、テンポが上がります。この曲の畳み掛けるような終結にむけてデュエットも素晴らしい歌唱で支えます。

短いレチタティーヴォをはさんで大コーラスによる終曲。ショルティはまだ曲のはじめのようなすっきりとした表情でオケをコントロール。最後のフレーズでテンポを落としフィニッシュです。ショルティの笑顔を見ればわかるような快心の演奏に、ヘラクレス・ザールのお客さんも万来の拍手で迎えます。止まないブラヴォーの声が当日の開場の感動を伝えます。


サー・ゲオルク・ショルティとバイエルン放送交響楽団、同合唱団によるハイドンのオラトリオ「天地創造」のライヴ。ショルティ最晩年の演奏ですが、ショルティが時折みせる灰汁の強さは一切感じさせず、逆に自然な流れの中にいつもの引き締まった響きが聴かれ、しかも逆に若々しさすら感じさせるコントロール。歌手はソプラノのツィーザクが完璧なコントロールで一歩抜けていますが、その他の人も総じて素晴らしい出来。超廉価なプロダクツにも関わらず映像の品質も高く、完璧な出来。評価はもちろん[+++++]です。すべての人に聴いていただくべき人類の至宝です。

いや、いまさらですが素晴らしいアルバムがリリースされたものです。

テーマ : クラシック
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グスタフ・クーン/コレギウム・アウレウムの天地創造ライヴ(ハイドン生誕250年)DVD

今日は以前取りあげたアルバムの映像を取りあげます。

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グスタフ・クーン(Gustav Kuhn)指揮のコレギウム・アウレウム合奏団(Collegium Aureum)、ウィーン・アーノルト・シェーンベルク合唱団の演奏によるハイドンのオラトリオ「天地創造」。この演奏はハイドン生誕250年を記念してオーストリア科学アカデミー、オーストリア放送、ヨーロッパ放送連盟の主催したコンサートの記録。ソロは下記の通り。

ガブリエル(ソプラノ):アーリーン・オジェー(Arleen Augér)
ウリエル(テノール):ペーター・シュライアー(Peter Schreier)
ラファエル(バス):ヴァルター・ベリー(Walter Berry)
イヴ(ソプラノ):ガブリエレ・ジーマ(Gabriele Sima)
アダム(バリトン):ローラント・ヘルマン(Roland Hermann)

演奏の内容はすでに取りあげた記事の方をご参照ください。

2011/12/13 : ハイドン–オラトリオ : グスタフ・クーン/コレギウム・アウレウムの天地創造ライヴ(ハイドン生誕250年)

ハイドン生誕250年記念のウィーンでの演奏会の模様を収めた貴重な映像。演奏の安定した素晴らしさはCDレビューで取りあげましたので、繰り返す必要はないでしょう。今日は映像を主体としたレビュー。

こののDVDはORFの映像をARTHAUS MUSIKがリリースしたもの。1982年の映像なのでもちろん今見るにはだいぶ古びて見える映像。画面は4:3で映像の品質自体も自体もちょっと時代を感じさせるもの。カットはアップが多く、コレギウム・アウレウムが古楽器によって演奏されているのがよくわかります。

会場のウィーンの大学ホールはかなり古い建物のなかの大空間のホール。室内はシェーンブルン宮殿の時代のような装飾された空間ですが、色あせたのかどうか、一見して燻された銀色のような色彩。伝統ある講堂であることが窺い知れます。

指揮のグスタフ・クーンは若さが印象的。いわゆるマッシュルームカット風ロンゲで、指揮ぶりも若さあふれるもの。しかしタクトから降り出される音楽は非常に落ち着いていて、この記念すべき演奏会の指揮をまかされた理由がわかるような気がします。非常に安定した演奏。ソロの最初はラファエルのヴァルター・ベリー。もう少しガタイのいい人だと想像してましたが、黒縁眼鏡の真面目なおじさん風。ベリーの歌唱は圧倒的。ずば抜けた声量と張り。CDでもすばらしい存在感と安定感であった印象ですが、映像ではさらに迫力が伝わります。
ウリエルのペーター・シュライアーはいつも通りの透き通るような歌唱。微妙にうわずり気味な音程が彼の特徴でしょう。ただ、声量があり、まだまだ若さを感じる歌唱です。
目玉はやはり、若さ漲るアーリーン・オジェーでしょう。慈愛に満ちた顔で歌うガブリエルのアリアはぐっときますね。オジェーは1993年に亡くなっていますので、貴重な映像でしょう。
アーノルト・シェーンベルク合唱団は男性陣が黒い蝶ネクタイでごく普通なんですが、女性陣はそろいのモダンな柄のワンピースで、ちょっと新鮮な感じ。合唱陣はこの長い天地創造を暗譜で歌っています。
第1部のクライマックスにかけての流れは映像ならでは迫力が味わえます。指揮、ソロ、コーラスともに気迫のこもった演奏。やはり聴覚だけで聴く音楽とは異なり、映像の魅力は捨て難いものがあります。ことにこういった記念碑的なコンサートではなおさらでしょう。

第3部に登場するエヴァのガブリエレ・ジーマとローラント・ヘルマンはイケメンと美女の組み合わせ。アダムとエヴァのデュエットは寄り添いあって歌うところが非常にいい感じです。ローラント・ヘルマンは揺るぎない響きのヴァルター・ベリーとは異なり高音域の伸びのある声でアクセントがキリッと決まってまた違った歌の魅力があります。
第3部の演奏はソロもオケもコーラスも渾身の演奏。音だけで聴く時よりもさらに迫力を感じます。第34曲の終曲は怒濤の大迫力。やはり映像ならではの迫力を味わえます。最後は感動のフィナーレで会場はブラヴォーの嵐に。

ハイドン自身が聴いた響きを再現するというコンセプトのこの演奏会、私もハイドンと同じ音楽を味わったような気分になりました。全く同じ演奏ながらCD版は[++++]でしたが、このDVDは[+++++]とします。映像の古さは気にならず、むしろこの記念コンサートの様子を同時代的に楽しめるような気になります。

昨日の飲み残しの蔵王スターワインを飲みながら、素晴らしいコンサートの演奏を楽しめました。月曜からいいスタートです。

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tag : 天地創造 ライヴ録音 古楽器 ハイドン入門者向け DVD

【新着】シャルル・ミュンシュ/ボストン響の98番ライヴDVD

今日は昨日HMV ONLINEから到着したばかりのDVD。

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シャルル・ミュンシュ(Charles Munch)指揮のボストン交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲98番とブルックナーの交響曲7番の2曲を収めたDVD。収録は1960年10月18日、マサチューセッツ州ケンブリッジのハーヴァード大学サンダース劇場でのライヴ。もちろん映像は白黒です。レーベルはica CLASSICSというはじめて買うレーベル。

ミュンシュといえば爆演を期待してしまいますので、このアルバムも発売されると知ったときにすぐ注文。待ちに待った入荷です。爆演に打たれる準備をして、DVDをレコーダーにセット。いや、そわそわしますね。

交響曲98番(Hob.I:98)1792年作曲
かなりレトロなフォーカスの甘い映像。黒が浮いてきていますので映像の保存状態は今ひとつでしょう。ただ、迫力と緊張感は伝わります。拍手とともにミュンシュが登場、今となっては誰も使ってはいないような超ロングな指揮棒をやおら振り下ろして序奏が始まります。指揮棒は50センチはありそうです。非常に低速な序奏の入り。さらに音量とテンポを落として尋常ならざる雰囲気に。序奏だけでも劇画タッチ。ゆったりと主題のメロディーに入り、聴き慣れたところでミュンシュ独特の小節を効かせた大迫力のメロディーに。オーケストラのメンバーはプロらしく無表情に演奏していますが、音響は大迫力の気迫を帯びてきます。ミュンシュの指揮は長い指揮棒をキレよく振り回してアクセントをかなり強調するようコントロール。1楽章の途上ではザクザクとした推進力が素晴らしい迫力。抑えた部分の指揮姿が非常にダンディ。譜面台の楽譜を鋭く見ながら的確に各楽器に指示を出していきます。オケは背筋ピーンのまま弓の長さをフルに使ったボウイングで迫力の音響を構築。1楽章の最後は覚醒した爆発といった趣です。

2楽章のアダージョ。抑えの効かせ方が巧く、非常にハイセンスな感じの始まり方。息の長いフレーズを巧く使ってメロディーの美しさを引き出しています。徐々に起伏の幅を広げますが、力で押し通すようなところはなく、あくまでジェントル。この辺りの演出は流石です。十分に余裕のあるコントロールで懐の深さを見せつけます。

3楽章のメヌエットは再び長い指揮棒をしならせて、きっちりアクセントを効かせたフレージング。ヴァイオリン奏者はみな機械仕掛けのような正確無比なボウイング。途中のフレーズはあえて少しテンポを落として、ゆったり感を演出。

フィナーレも普通のテンポで入りますが、最初は余裕ある冷静な演奏ながら、ミュンシュのあおりに応じてオーケストラから青い炎が見え始めます。おそらくオケ全員の神経がどこで爆発するかの指示を待っているかのような模様眺め感。徐々にオケも伸びやかになり、ミュンシュの動きに敏感になり、びしっと線のそろった節回しで応えます。終盤はチェンバロではなくソロヴァイオリンが特徴的なメロディーを奏で、最後の盛り上がりにむけて力が入ります。最後は今度も冷静に爆発。フライング気味の興奮した聴衆の拍手に包まれ、ミュンシュも満足そうに退場します。

映像も音も古いものの、貴重なミュンシュの指揮姿の映像と、これも貴重なミュンシュのハイドンの演奏。ミュンシュらしい爆演でもありますが、今回はターボ半狂乱スイッチが入らず、というかハイドンは冷静にコントロールする曲とわきまえた範囲での爆発感ある演奏なんだと思います。評価はちょっと期待しすぎたというのも正直なところ故、[++++]としたいと思います。あくまで冷静な、しかしただでは済まないないミュンシュの片鱗も垣間見せる演奏というところでしょう。

今回到着したHMV ONLINEの荷物には他にも未聴盤がいくつか。先日指摘いただいたフルトヴェングラーの94番驚愕を含むセットもようやく手に入れました。こちらはまた週末にでも紹介することといたしましょう。

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tag : 交響曲98番 ライヴ録音 DVD ヒストリカル

ギュンター・ヴァントの交響曲76番DVD

昨日につづいてDVDの交響曲の演奏を取り上げましょう。

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ギュンター・ヴァント指揮のNDR交響楽団(北ドイツ放送交響楽団)の演奏で、ハイドンの交響曲76番とブルックナーの交響曲6番を収めたDVD。収録は1996年7月7日、ドイツ北部の街、リューベックのムジーク&コングレス・ハレでのコンサートの模様をライヴ収録。一般的にはこのアルバムはブルックナーの6番を聴くべき、いや観るべきアルバムですが、当ブログでは前座のハイドンがメインテーマです。というのもこのハイドン、当ブログで主役となりうる素晴らしい演奏なんですね。

ヴァントは1912年生まれで、亡くなったのが2002年の2月ということで、この演奏時は84歳のころということですね。とてもその年とは思えないかくしゃくとした風情。タクトのリズム感も素晴らしいものがあります。

近代的な木質系の壁面が特徴的な中規模のホール。満員の観客の拍手に迎えられてヴァント登場。

手首の先と体全体をつかってリズムをとりながら、流麗な1楽章のメロディーを小さなの動きでコントロール。いつものように眼光鋭いヴァント。速めのテンポで艶やかにメロディーラインを描きます。抜群のリズム感と生気。きびきびとしたオケ。ハイドンの音楽の演奏に必要なものがすべてそろっていると言っていいでしょう。ヴァントの隈取りの明確さが曲の明瞭感を浮き彫りにしています。1楽章の主題を繰り返すところでヴァントがタクトを落としますが、譜面台の上に落ちて、何事もなかったように拾い続けます。再現部もハイドンの晴朗なメロディーとかっちりとした構成感、そしてヴァントの推進力溢れるオケのコントロールが相俟って素晴らしい感興。昨日のバーンスタインとは180度異なるヨーロッパの歴史と伝統の延長上に奏でられる素晴らしいハイドン。ヴァントのコントロールは素晴らしいですね。

2楽章のアダージョは非常にデリケートなフレージング。テンポ、リズムともに完全にヴァントが支配し、軽やかさとデリケートさが素晴らしい演奏。オケの隅々にまで緊張感が張りつめています。本当に最小限の動きと眼力で完全にオケを統率。これが指揮の神髄というものでしょう。奏でられる音楽はどう演奏するという次元からはなれて、生き生きと鳴り響きます。後半の激しい展開部の力感も見事。重くなることも溜めることもなく音楽は流れるばかり。2楽章の演奏は神がかっているといえるでしょう。ヴァントが神々しく見えます。

3楽章のメヌエットは、優しい表情づけのメロディから入り落ち着いた展開。噛み締めるようにオケをにらみながらタクトを振るヴァントの表情が印象的。

フィナーレは微風のような入りから、しばらくでオケがフルスロットルに。展開部では抑えた表情と変奏を繰り返しながらクライマックスに向けてオケを追い込んでいきます。最後は非常にあっさりと投げ出すようなフィニッシュ。絶妙のフィニッシュですね。会場の暖かい拍手が興奮を物語ります。

私にとっては、この曲のベストの演奏は、本アルバム。もちろん評価は[+++++]です。ハイドンの交響曲の魅力がすべて含まれていると言っても良い名盤と言えるでしょう。最近[+++++]が多いんですが、評価が甘いのではなく、良い演奏をブログでは取り上げているということなので誤解なきようお願いいたします。

追伸)ブルックナーの6番も絶品です(笑)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲76番 おすすめ盤 DVD ハイドン入門者向け

【新着】バーンスタイン/NYPの97番、98番DVD

今日はもう1枚いきます。

Bernstein97.jpg
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レナード・バーンスタイン指揮のニューヨークフィルの演奏で、ハイドンの交響曲97番、98番の演奏。1975年エイヴァリー・フィッシャーホールでの収録のDVDです。DVDはドリームライフレーベル。

ご存知のとおり、私はいまひとつバーンスタインのハイドンのアルバムは今ひとつ評価しきれない印象をもってます。ヨーロッパの伝統に対し、バーンスタインの演奏から醸し出されるアメリカンな雰囲気にちょとしたアレルギーがあるのが正直なところ。

ところが、このDVDを見て、軌道修正です。古い映像ですが、そこから聴こえてくる音楽はタイトで引き締まったものでした。このDVDの演奏はいいです。

最初は97番。少人数に絞られたニューヨークフィルのメンバー。1楽章は中庸なテンポながら、バーンスタインの自在なタクトのコントロールに従い、いきなり引き締まった主題を演奏。ただならぬ殺気です。油っこくもなく、表情が濃すぎることもありません。映像を見ると客席に観客はいないため、映像収録目的のセッションでしょう。切れの良い旋律が奏でられていきます。ノリノリのバーンスタインの指揮とは対照的にオケはタクトの指示に従い淡々とした進行。ただし表現の幅は非常に大きく、しかも集中力も素晴らしいものがあります。1楽章を聴くだけでただならない迫力を感じます。後半の展開部の迫力も素晴らしいものがあります。ニューヨークフィルの全盛期のエネルギーが直接放射されるような素晴らしい力感。最後は古典の矜持を守るような素晴らしい感興。
2楽章のアダージョは、素晴らしい表現の深さを感じさせますが、演奏は極めてオーソドックス。この演奏でニューヨークフィルの実力が浮き彫りに。途中から増す迫力。素晴らしい力感。オケは微動だにしない平常心で素晴らしい感情の起伏を演出。プロですね。なにげに巧いのがティンパニ。バーンスタインの表情豊かな指揮にあわせて、オケのメリハリを明確につけていきます。
3楽章のメヌエットは入りから大迫力。やはりヨーロッパの伝統というよりは、純粋に楽譜をバーンスタイン流にホールに再現というニュアンス。素晴らしい迫力の演奏。度肝を抜かれるとはこのことでしょう。ハイドンのメヌエットがバーンスタインの解釈によって大音響で降誕した感じ。
フィナーレは素晴らしい推進力。観客のいないホールにニューヨークフィルのオケの大音響が響き渡ります。次の98番は観客入りの演奏ですが、観客の有無でライヴ感もだいぶ変わります。こちらはオケがホールの隅々まで響き渡る快感を感じられます。オケの力感も素晴らしいものがあり、ノリは最高潮。フィナーレは興奮の坩堝と化します。流石はバーンスタイン、オケをならすという意味では突き抜けた演奏です。

続く98番。97番は非常にオーソドックスな演奏だったんですが、98番は違います。1楽章の主題からギアを下げて超低速テンポになります。ビックリするようなじっくりさですが、それほど違和感はありません。バーンスタインは核心をつくような恍惚の表情で何事もなかったように進めます。それにしてもオケの一人一人は巧いですね。ニューヨークフィルの全盛期の素晴らしいアンサンブルですね。1楽章は落としたテンポで通します。ダイナミックレンジは振り切れんばかりで、テンポ以外は素晴らしいノリの演奏。ちょっと気になるのはオケのメンバーが指揮者をほとんど見ていないこと。バーンスタインの身振りが視線を合わさなくても伝わるほど大きいためか、はたまたオケと指揮者の関係の微妙さを物語るものかは解りません。
2楽章のアダージョ。2楽章はふつうのテンポに戻り、違和感はなくなります。呼吸の深さは素晴らしいものがあります。相変わらす表現の幅が大きくニューヨークフィルのメンバーの深いフレージングは圧倒的な迫力。途中チェロのソロが入る部分の映像がありますが、これぞ至福の瞬間という絶妙のタイミング。やはりバーンスタインの全身全霊を傾けたフレージングは素晴らしいものがありますね。この楽章は聴き所ですね。
3楽章のメヌエットは、大迫力の音響。出だしのバーンスタインのバックスイングに反応してオケも素晴らしい演奏。テンポはゆったり気味ですが、濃い演出。バーンスタインがタクトを振り下ろすたびにオケがフルスロットルに。溜めも迫力も素晴らしいんですが、ちょっとくどい印象も否めません。途中からタクトを持たない手で指揮をする変化は流石バーンスタイン、見せ場を作ります。
フィナーレは、軽い雰囲気で入りますが、次第にオケがかぶさって重厚な音響に。この楽章はフィナーレにしては長く8分以上の曲。バーンスタインは踊るように恍惚の表情。途中の転調からは表情の変化を付けますがすぐにオケの力感漲る強音に飲み込まれるよう。フィナーレの盛り上がりはエィヴァリー・フィッシャーホール中に轟かんばかりの大音響。最後はチェンバロの繊細な音色が心にしみる隙もなく、大音響で締めくくります。98番は観客がおり拍手喝采で終わります。

評価は97番が[+++++]、98番は[++++]というところです。97番の意外にもオーソドックスながらバーンスタイン節が良い方向に働いた演奏と、98番のちょっとくどくなってしまった演奏という評価。いずれにしてもバーンスタイン全盛期のニューヨークフィルとの貴重な映像の記録であることは間違いありません。

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tag : 交響曲97番 交響曲98番 DVD おすすめ盤

Haydn Disk of the Month - September 2010

Haydn Disc of the Month - September 2010

レビュー記事 ハイドン音盤倉庫:美声の響宴、シュライアーの天地創造 (09/11)

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ちょっと古い映像ですが、聴き込むうちにぐいぐい引き込まれる集中力の高い、すばらしい演奏。シュライアーの指揮らしく歌手と合唱が盤石。天地創造のファーストチョイスといった雰囲気はあまりないDVDですが、地味ながら観ていて飽きのこない素晴しい演奏だと思います。栄えある初回の表彰に相応しいアルバムと評価します。ハイドンが好きなすべての方にお薦めします。


(選考経緯)
さて、前記事でお伝えしたとおり、当ブログの2010年9月にレビューしたアルバムのうち最も心に残った一枚。候補となったレビューは次の記事です。

ハイドン音盤倉庫:美声の響宴、シュライアーの天地創造 (09/11)
ハイドン音盤倉庫:ミシェル・コルボのチェチーリアミサ (09/20)
ハイドン音盤倉庫:ロストロポーヴィチのチェロ協奏曲 (09/23)
ハイドン音盤倉庫:デニス・ブレインのホルン協奏曲 (09/26)

何れも甲乙つけ難い素晴しい演奏の出来ですので、選びにくいところ。
ロストロポーヴィチは有名なCDではなくDVDですが、演奏自体は既に名盤の仲間とといってもいいのなため、選考基準上微妙なところ。同様9月12日に取り上げたジャクリーヌ・デュ・プレのチェロ協奏曲はそもそもよく知られた名盤なので、そもそも候補に加えていません。
デニス・ブレインのホルン協奏曲はブレイン自体が伝説的存在ゆえ、この演奏もブレインに興味がある人はよく知っていることと想像できます。
ミシェル・コルボも日本では古くから親しまれている存在。今回取り上げたチェチーリアミサの演奏は、その名演ぶりと、その素晴しさが広く知られたものではないという意味で表彰に値する演奏ですが、今回はシュライアーの指揮する天地創造と比較すると、スポットライトを当てるべきなのはシュライアーの天地創造の方と判断した次第。


さて、明日から10月。衣替えですね。当ブログの方はこのところ協奏曲を重点的にレビューしています。飽きたら方針転換と思っていたんですが、不思議と飽きたという感触はありません。もうすこし協奏曲を取り上げていこうと思ってます。ハイドンの作品のうち日本ではやはり交響曲が最もポピュラーなんだと思いますが、協奏曲はやはり少々マイナーな存在。もう少し突っ込んでいろいろレビューが必要なんでしょうね。

来月も皆さんよろしくお願い致します。

テーマ : クラシック
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tag : おすすめ盤 ライヴ録音 天地創造 DVD

ロストロポーヴィチのチェロ協奏曲

今日はもう一つ。大御所ロストロポーヴィチのチェロ協奏曲のDVDです。

RostropovichDVD.jpg
HMV ONLINEicon

水曜にHMV ONLINEから到着したものの一つ。調べてみたら、所有しているCDとほぼ同じ時期の演奏であることがわかりました。ついでにCDも紹介しておきましょう。

RostropovichEMIOld.jpg
HMV ONLINEicon

今回手に入れたDVDはハイドンのチェロ協奏曲1番、2番とピアノ協奏曲(XVIII:11)を収めたもの。チェロ協奏曲の方はロストロポーヴィチのチェロに日本語呼称アカデミー室内管弦楽団。DVDではコンサートマスターの名にアイオナ・ブラウンの名があります。ピアノ協奏曲の方はオメロ・フランセシュのピアノにネヴィル・マリナー(この頃はサーがついていない??)指揮のアカデミー室内管弦楽団の演奏。チェロ協奏曲が1975年11月のヘンリーウッド・ホールでの録画、ピアノ協奏曲は1982年11月、バイロイトの教会のような場所での録画です。

一方CDの方のチェロ協奏曲はまったく同じ1975年11月の録音ですが、サイトはヘンリーウッド・ホールではなくアビーロードスタジオ。演奏時間も異なることから、同時期ながら別音源だと思います。また、CDの方はロストロポーヴィチとブラウンの双方にDirectionの表記があり、このあたりも微妙に違いますね。

私はロストロポーヴィチといえば、脳裏からはなれない鮮烈な演奏の記憶があります。それはチェロの演奏ではなく、ベルリンフィルを指揮したチャイコフスキーのくるみ割り人形組曲などを収めたDeutsche Grammophoneの銀色に輝く輸入盤LPです。今は亡き代々木のジュピターレコードで手に入れ、家に帰って針をおとして腰を抜かすほど驚きました。当時親しんでいたカラヤンの指揮によるベルリンフィルから豹変してオオカミのようなオケになっていました。タイトに締め上げられたベルリンフィルの音響の魅力炸裂。デッドに録られた録音。静寂ののなかからベルリンフィルのアタックがスピーカーのコーンを突き破りそうになるような超絶サウンドが飛び出すような演奏。カラヤンの指揮するベルリンフィルはレガートを多用し、鋭角的というよりは低音弦のうなりや、晩年はLPでは高域寄りの透明感重視の録音が多かったので、なおさらロストロポーヴィチのコントロールするベルリンフィルを聴いて、その底力を思い知った訳です。ロシア人らしい練りに練ったフレージングにも特徴がありますが、スヴェトラーノフなどとは異なり不思議と洗練された練りなのが特徴でしょう。このLPはいまでもたまに針を落として楽しんでます。

さてさて、肝心のDVDですが、古いものゆえ、全体に字幕をはじめとする構成が古風なところがありますが、映像はフォーカスを浅めにしたスポット映像によるチェロを弾くロストロポーヴィチの絵などをちりばめて、総じて観やすい映像で、画質もフィルムライクで悪くありません。

チェロ協奏曲のレビューでよく、弓使いという言葉を使いますが、別にチェロもヴァイオリンも弾いたこともない私がいうのもおかしな話。ただ映像で見るチェロのソロは、まさに弓使いに目が釘付けになります。ロストロポーヴィチのチェロはロシア風の粘っこいフレージングに特徴がありますが、さきほど触れた通り、それがくどくもなく、ハイドンの曲でも違和感はありません。

1番の1楽章の始まりはロストロポーヴィチがチェロを持って歩いて入場し、立ったままオケの序奏の入りを指示して座り、そのままソロに入ります。ソロに入ってからは途中も含めて指揮をするような部分はなく、オケはアイオナ・ブラウンに任せているようです。チェロは最初からロストロポーヴィチ節です。高音を音量を落として延ばすように弾くのが特徴でしょうか。オケは非常にオーソドックスですが、生気十分(重要です!)、キレも十分。ただし、これは完全にチェロを聴くべき演奏ですね。巨匠風といわれれば巨匠風なんですが、繊細なコントロールと洗練された響きは、人によっては巨匠風という言葉とは正反対のイメージを受けるかもしれませんね。音楽を言葉で説明するのはむずかしいです。チェロもリズムを先導するようなキレの良さで、いろいろ聴いているチェロ協奏曲の並のソリストとは別格の音楽性。1楽章のカデンツァはロストロポーヴィチの世界に引き入れられる素晴しい集中力。
2楽章はオケの弱音のコントロールが見事。チェロは泣きまくりですが引き締まった表現でむしろ理性的な印象を残すところが流石というところ。
3楽章は鮮烈な印象。速めのテンポですばらしいキレのオケに乗ってロストロポーヴィチも快速に飛ばします。終楽章のこの鮮烈さが曲の締まりを良くしているポイントになってます。いやオケの弦楽器の巧さ、冒頭で触れたベルリンフィルと同様、完全にロストロポーヴィチの支配下になり、最後は素晴しい楽興。ブラヴォー! これは名演ですね。

つづく2番も、1番同様オープニングのみロストロポーヴィチの指示。以後の演奏も1番同様。言葉の説明はよけいになってしまいますね。この素晴らしさを是非手に入れて聴いてみてください。

最後に収録されているピアノ協奏曲はマリナーの若い指揮姿が新鮮でなかなかいい映像ですが、調律の問題か、テープの保存状態の問題か、1楽章と3楽章のピアノが調律が狂ってるように聴こえるキズがあり、あまりお薦めできません。2楽章は普通にいい演奏。ピアノのオメロ・フランセシュはすこしたどたどしさがありますが、堅実な演奏。いい状態の音で聴いてみたいですね。

このDVDの評価はチェロ協奏曲は両曲とも[+++++]。ピアノ協奏曲は[++]としました。映像でロストロポーヴィチの至芸を見ることがでいるのはやはり貴重ですね。ロストロポーヴィチのチェロ協奏曲の映像というだけで広くおすすめできるDVDです。

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ジャンル : 音楽

tag : チェロ協奏曲 おすすめ盤 DVD ハイドン入門者向け

バーンスタインの天地創造DVD

天地創造のDVDをもう一枚。未入手盤をHMV ONLINEにまとめて注文していたもの。

BernsteinCreationDVD.jpg
HMV ONLINE
icon

シュライアー盤と一緒に届いたんですが、CDでの演奏がいまいち気に入っていないせいか、後回しにしていたもの。

指揮はバーンスタイン、オケと合唱はバイエルン放送交響楽団と合唱団、ソロは5人のタイプで、ガブリエルがジュディス・ブレゲン、ラファエルがクルト・モル、ウリエルがトマス・モーザー、エヴァがルチア・ポップ、アダムがカート・オルマンとCDの天地創造と全く同一キャストゆえ同じ演奏会かと思いきや、収録が1年違います。CD盤が1987年6月、ミュンヘンのヘラクレスザールでの録音に対して、このDVDはその1年前、1986年6月にオットーボイレンのベネディクト修道院バシリカ聖堂での録音。このコンサートの成功を受けて、CD盤の録音に踏み切ったと解せます。

私自身はマーラーも含めてバーンスタインはちょっと苦手なほう。バーンスタインで最も評価している演奏はニューヨークフィル時代のホルストの惑星とか、シベリウスの1番、2番あたり。ホルストの惑星はクライマックスである木星の中間部で音量をぐっとしぼって宇宙の雄大さを表現した画期的解釈だと思ってます。シベリウスも後年のグラモフォンの録音ではなくCBSソニー時代のもの。こちらもLPですり切れるまで聴き込んだ愛聴盤。フィンランドの自然というよりアメリカの叙情的な曲のような解釈でしたが、新鮮さがあり、心を打つ深みがありました。

ウィーンフィルの指揮をするようになったあと心に残るのはやはりベートーヴェンの交響曲全集。バーンスタイン流に整理されたわかりやすい響きが新鮮でした。その後、グラモフォンからリリースされた数多くの録音もことあるごとに聴いてきましたが、マーラーを含めて愛聴盤は多くはありません。ジャガイモにバターは合いますが、大福ににバターを塗って食べるような独特の濃い表現が気になるというか、作曲家の楽譜を素直に楽しめないような気がして、今ひとつ好みに合わないという印象を持ち続けてます。

さて、この天地創造の映像、いかなるものでしょうか。

まずはバーンスタインの非常に濃い表情付けがやはり印象に残る演奏。冒頭からテンポを非常に落として、フレーズの表情付けを丁寧に丹念に指示していきます。以前当ブログで取り上げたレヴァイン/ベルリン・フィル盤も遅かったですが、バーンスタインも負けず劣らずの丹念さ。レヴァインは巨大さを表現しようとした意欲と聴きましたが、バーンスタイン盤の狙いはマーラーばりの劇的展開なんではないでしょうか。この姿勢はもちろん全曲を通したもの。昨日のシュライアー盤とは濃さが異なります。天地創造が神の仕業ではなく人間の業によってもたらされたような曲調です。

このアルバムの聴き所は、なんといってもラファエルのクルト・モルの歌唱。1部、2部を通して素晴らしい歌唱。5人の歌手の中では図抜けて精度の高い歌唱。素晴らしい低音の深みと正確なテンポ、朗々としたラファエルのレシタティーヴォとアリアの魅力を十全に表現。クルト・モルの歌唱だけでもこのDVDは買う価値があります。
次いで素晴らしいのはエヴァのルチア・ポップ。第3部からの登場の一声で惹き付けられます。素晴らしい到達力のある声。
逆に分が悪いのはガブリエルのジュディス・ブレゲン。声質は通っていいものの、音程が落ち着かないところとテンポ感が悪く、モルの熱唱とはだいぶ差がついちゃってます。

オケとコーラスはバーンスタインの指示を忠実に守って、素晴らしい厚みのある響きを構築。流石にバーンスタインだけあって、全体のスケール感の構築とクライマックスの盛り上げ方は素晴らしいものがあります。指揮者の溜めまくる指示によく応えてついていってます。
バーンスタインの指揮は今更ながら全身をつかって情熱的に振りますが、オケから観たらわかりやすい指示だと思います。

ジャケットの写真からもわかる通り、コンサート会場となっているにオットーボイレンのベネディクト修道院バシリカ聖堂は大空間のバシリカで装飾の限りを尽くした豊穣な空間。オットーボイレンはミュンヘンの西約100キロの小さな町。そのバシリカに響き渡る豊穣な響き。映像的にも古さはあるものの特別なコンサートであることは明らかです。

第3部の最終曲は壮大なクライマックスは荘重に始まり次第にテンポを上げて、最後は溜に溜めたアーメン。最後はなぜか拍手ではなく教会の鐘が静かに鳴り響くという演出。

評価は[++++]としました。CDの方は、純粋に濃すぎる演出が耳につきましたが、映像で観る天地創造は音楽だけとは異なる魅力もあり、CDと違う評価をしました。
昨日のシュライアー盤との評価の違いが筆者の好みにあることは誤解なきようお願いします。おそらく一般には本盤の方が評価が高いかもしれませんが、ハイドンを聴き続けてきた耳には、シュライアー盤のすばらしい集中力と誠実な姿勢の方が心に迫っているということだと思います。

今日は、いつものようにスポーツクラブで泳いだあと、近所の居酒屋、菜で一杯やってきました。

IMG_0588.jpg
今日のおすすめはホッケ。脂がのって絶品。ポテトサラダと茄子のサラダがオマケに(笑)

明日もいくつかレビューします!

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tag : ライヴ録音 府中のお店 外食 DVD 天地創造

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

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