オットー・マツェラート/ヘッセン放送響の95番(ハイドン)

このところ古い録音の交響曲を続けて取り上げています。昔はLPをリリースするためにかなりの労力が必要だったからか、それぞれ素晴らしい完成度であることに今更ながらに驚きます。

Matzerath95.jpg

オットー・マツェラート(Otto Matzerath)指揮のヘッセン放送交響楽団(Symphonieorchester des Hessischen Rundfunks)の演奏でハイドンの交響曲95番他を収めたLP。収録情報は記載がありませんし、ネットを調べてもこのアルバムの情報に巡り合いませんが、マツェラートの略歴とステレオ収録であることから1957年から61年あたりの録音だと思います。レーベルはCHRISTOPHORUS。

このアルバムも最近オークションで仕入れたもの。指揮者のマツェラートは全く未知の人。オケの方は現在hr交響楽団と呼ばれ、しばらく前まではフランクフルト放送交響楽団と呼ばれていた楽団。インバルによるマーラーの交響曲の録音で日本でも知られていますね。この楽団の首席指揮者は2013年までパーヴォ・ヤルヴィが務めていましたが、そこから遡るとパリセットの名録音があるヒュー・ウルフ、ドミトリー・キタエンコ、エリアフ・インバル、ディーン・ディクソンそして1955年から61年までが今日取り上げるアルバムの指揮者であるオットー・マツェラート。この辺りの経緯はWikipediaのhr交響楽団のページをご参照ください。

オットー・マツェラートは現代の日本ではほとんど知る人がいないのではないでしょうか。調べてみると1914年デュッセルドルフに生まれたドイツの指揮者。地元デュッセルドルフの現ロベルト・シューマン音楽院でヴァイオリンとピアノ、オペラを学び、指揮は独学とのこと。歌劇場で経験を積み1942年、フルトヴェングラーによりコンサート指揮者として見出され、ベルリンフィルなども振っていたそう。戦後もドイツを中心に活躍し、先に触れた通り、1955年から61年までヘッセン放送響の指揮をしていたようです。その後なんと1963年9月から読響の首席指揮者となりましたが、直後の11月、相模原のキャンプ座間の米軍病院で亡くなったそうです。日本とも関係があった人ですが、わずか2ヶ月で急死してしまったということで、記憶に残っている方も少ないのではないかと思います。

さて、そのマツェラートの振るハイドンですが、堂々としたオーソドックスな名演奏として見事なものでした。

IMG_1103.jpg

Hob.I:95 Symphony No.95 [c] (1791)
このころの録音に共通する引き締まったオケの響き。オーソドックスさがそのまま演奏の特徴となっているような正統派の演奏。各パートはバランスよく鳴り響き、細密画のように一糸乱れぬ見事なアンサンブルで指揮者の律儀さが伝わって来るよう。各パートのメロディーが実によく聴こえます。1楽章はまるで教材のような完璧なアンサンブル。
続くアンダンテでもメロディーラインのクリアさを保ちながら、しなやかさも加わりしっとりとした情感が乗ってこの曲の陰りがよく表現されています。実に緻密な演奏。
ハイドンの交響曲の楽しみはメヌエット。曲毎に千変万化するメロディーの想像力にいつもながら驚かされます。マツェラートはザクザクとではなく、しっとりとしたメヌエットできました。律儀なフレージングの中にほっこりとするような安らぎを感じるメヌエット。
そしてフィナーレもオーソドックスなアプローチながらくっきりとしたメロディーが印象に残ります。フーガの幽玄さを感じさせながら徐々にオケに力が漲っていきますが、最後まで余裕を失わず、古典の均衡を守ったクライマックスで曲を閉じます。

なんとなくもう一歩踏み込んで欲しい感は残りますが、ハイドンの交響曲の演奏としては、バランスの良くまた各パートの動きもクリアに追えるレベルの高い演奏です。オットー・マツェラートという指揮者の清廉な音楽が浮かび上がってきているのでしょう。それがこの95番という振り方によっては険しさに焦点が当たりすぎる曲の穏当な解釈として貴重な存在とも言えます。評価は[++++]とします。ネットの情報ではこの95番の他にも何曲かハイドンの交響曲の録音があるようですので、気長に探してみたいと思います。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲95番 ヒストリカル

エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン響の93番、奇跡(ハイドン)

またまた素晴らしい演奏にめぐり合いました!

Leinsdorf9396.jpg

エーリヒ・ラインスドルフ(Erich Leinsdorf)指揮のボストン交響楽団(Boston Symphony Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲93番、96番「奇跡」の2曲を収めたLP。収録年、収録場所の表記は有りませんが1968年にリリースされたようです。レーベルは米RCA VICTOR RED SEAL。

このLPは最近オークションで手に入れたもの。ラインスドルフはあまり馴染みの指揮者ではありませんが、手元には米MCAからリリースされていたモーツァルトの1番から15番までの初期交響曲の2枚組CDがあり、バランスの良い引き締まった辛口の響きを作る人との印象が残っています。なんとなくモーツァルトよりもハイドンの方が良かろうとの想像が働きます。

一応略歴などをWikipediaからさらっておきましょう。1912年ウィーンで生まれ、モーツァルテウム音楽院で指揮を学び、その後ウィーン大学、ウィーン音楽大学などでチェロとピアノを学んだそう。1934年から1937年までザルツブルク音楽祭でワルター、トスカニーニの助手を務め、その頃から本格的に指揮活動を始めます。1937年、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でワルキューレを振り、副指揮者となると翌1938年には常任指揮者となり、特にワーグナーの指揮で名声を得て1939年にはドイツ系レパートリーの責任者に抜擢されるなどとんとん拍子に出世しました。1942年にはアメリカの市民権を得て帰化し、クリーヴランド管、ニューヨーク州ロチェスターフィル、ニューヨークシティオペラなどの音楽監督を歴任。1962年には今日取り上げるアルバムのオケであるボストン交響楽団の音楽監督に就任しRCAレーベルに多くの録音を残しました。ボストン交響楽団の音楽監督は1969年まで務め、その後ウィリアム・スタインバーグが3年務めた後1972年に小澤征爾が就任することとなります。ボストンを退任後は一時ベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者を務めますが、世界の著名オケへの客演が中心になり、亡くなったのは1993年でした。オケに厳しい指揮者として知られた人とのこと。

Hob.I:93 Symphony No.93 [D] (1791)
冒頭から図太い低音の響きに支えられたピラミッドバランスなオケの響きに耳を奪われます。キレのいい見事な響き。この曲は赤熱した鉄の塊を打ち出すようなカレル・アンチェルの剛演が耳に残っていますが、それに近い引き締まった響きが険しい規律とバランスを纏って流れてきます。まさに鍛え抜かれたオケが生み出すタイトな響きの魅力に溢れた素晴らしい演奏。しかも小気味よくスタイリッシュときていますので言うことなし。
続くラルゴ・カンタービレでもテンションを緩めることなく一貫してタイトな響きが続きます。テンポはもちろん落ちますがフレーズのエッジをキリリと強調して緊張感を保つ見事なコントロール。モーツァルトでは表情の硬さも感じられたのに対し、ハイドンではラインスドルフの引き締まった音楽が見事にハマり、素晴らしい説得力を帯びています。
これまでの演奏から予想される通り素晴らしかったのが続くメヌエット。彫りの深さと響きの険しさがこの曲の本質をえぐる快演。重くもならず軽くもなくがっちりとした推進力に満ちた揺るぎない音楽。音量を上げて聴くと素晴らしいオケの響きに包まれます。力強い筆さばきの魅力全開です。これぞハイドンのメヌエット!
そして最後は正攻法で仕上げたフィナーレ。全盛期のアメリカのオケの底力を思い知らされます。セルのクリーヴランド、ライナーのシカゴ、オーマンディとフィラデルフィアなどに比べても全く劣らぬ素晴らしい響きをラインスドルフがボストン響から絞り出しました。最後まで手に汗握る迫力を冷静に生み出す見事なコントロールに驚きます。

IMG_1087.jpg

Hob.I:96 Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
LPをひっくり返して続く奇跡。ラインスドルフの見事なコントロールは変わるはずもなく、冒頭から引き締まりまくった響きに耳を奪われるのは言うまでもありません。中庸なテンポでこの曲なミラクルな感じをじっくり描いていくのは先日レビューしたオーマンディ盤と同様。この曲は淡々と険しく攻め込むのがいいようです。オーマンディの方が化粧が上手く表情豊かではありますが、こちらは剛直な良さがあり甲乙つけ難いですね。
続くアンダンテは落ち着き払った入りから、徐々に険しく盛り上がり、起伏の大きさと鮮明な陰影によって実に深い音楽を奏でます。弱音部のリラックス度合いも音楽の深さを増す要因。そしてメヌエットは前曲とは異なり少し力を抜いてきます。この曲ではアンダンテに力点をおいたからでしょう。ザクザクと刻む低音弦に支えられた揺るぎない音楽。中間部のオーボエの明るい響きがこの演奏に華やかさを加えています。
フィナーレはオケの底力の見せ所。軽やかな入りから不気味な迫力が漂い、曲が進むにつれ徐々に力感を増しながらザクザクと低音弦が唸り始めます。気づくと力みとは無縁の余裕たっぷりのクライマックスに到達。やはりラインスドルフは冷静でした。

ジャケットを見ると微笑みを浮かべながら椅子に座るラインスドルフの姿。この演奏の自信のほどをうかがわせる微笑みと受け取るのが正しいでしょう。全盛期のボストン響の鍛え抜かれた響きが堪能できる見事な演奏でした。険しい響きを生み出しながらもニュートラルでスタイリッシュさを感じさせるのがラインスドルフの真骨頂でしょう。LPの録音の良さもありますが、手元のモーツァルトの交響曲集と比べてもハイドンとの相性の方が良いのは明らか。この2曲以外にラインスドルフのハイドンの録音があるかどうかはわかりませんが、他の曲も聴いてみたくなる出来でした。評価は両曲とも[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲93番 奇跡

ラースロー・ショモギー/ウィーン放送管の78番、哲学者(ハイドン)

ごく一部で話題(笑)のラースロー・ショモギー(ソモジ)のハイドンの交響曲のLPをもう一枚発掘しました。

Somogyi7822.jpg

ラースロー・ショモギー(Laszlo Somogyi)指揮のウィーン放送管弦楽団(Vienna Radio Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲78番、22番「哲学者」を収めたLP。収録は1964年6月、ウィーンのコンツェルトハウスのモーツァルトザールでのセッション録音。レーベルは米Westminster。

ショモギーのアルバムは以前に1度取り上げております。

2014/08/06 : ハイドン–交響曲 : ラースロー・ショモギー/ウィーン響の89番、90番(ハイドン)

以前取り上げたアルバムですが、ラースロー・ショモギーという未知の指揮者の振る89番と90番という超地味な選曲ながら、あまりに素晴らしい演奏に痺れた思い出のアルバム。最近そのショモギーのことを調べていた毎日クラシックのcherubinoさんから、前記事にコメントをいただき、ショモギーという指揮者が1967年にウィーンで開催された芸術祭のマーラーの全作品演奏ツィクルスでバーンスタインやアバド、マゼール、クーベリックなど居並ぶ名指揮者に混じってウィーン響を振り5番の演奏を担当するほどの人だということがわかり、しかも、今日取り上げる哲学者と78番のアルバムの存在も教えていただいていました。そんなことがあったなあと思いながらこの週末にディスクユニオンを覗いてみると、まさにそのショモギーの哲学者のLPが売り場の棚にひっそりと置かれているではありませんか。おそらくここで私のことを待っていてくれたのだろうと、優雅に取り上げ、いつものように若干過呼吸気味になりながら、レジに向かったのは言うまでもありません(笑)

改めて確認してみると、以前取り上げたアルバムはウィーン交響楽団を振ったもので録音は1963年6月、レーベルは英HIS MASTER'S VOICE、今日取り上げる方はあまり馴染みのないウィーン放送管弦楽団を振ったもので録音は翌年1964年6月、レーベルは米Westminsterとレーベルは異なりますが、ジャケットのデザインはショモギーの同じ肖像画をあしらった似たようなデザイン。よく見るとSOMOGYIの名前のフォントが全く同一でした。HIS MASTER'S VOICE盤の記載をみてみると”Recorded by Westmister Recording Co, Inc., U.S.A,”と書かれており、Westminsterが原盤であることがわかりました。この2枚は見た目通りシリーズ物だった訳ですね。

ということで、いつものようにVPIのレコード洗浄機で盤を綺麗にして針を落としてみると、予想通り、素晴らしい響きが溢れ出しました。

Hob.I:78 Symphony No.78 [c] (1782?)
前盤もそうでしたが、ハイドンの数多ある交響曲の中からなぜこの地味な曲を選んで録音したのか定かではありません。Westminsterの当時のカタログ充足状況などが関係するのでしょうか。針を落とすと短調の引き締まった響きが流れ出します。非常に見通しの良い落ち着いたコントロールで入ります。録音は非常に鮮明で、LPは表面に少し汚れがありましたが再生には全く影響なくノイズレスなグッドコンディション。徐々に力感が満ちてきて低音弦のザクザクとキレのいい力強さが印象的。パリセットの作曲を目前に控え、メロディーの派手さはないものの、曲の構成の緊密さはかなりのもので、曲の構造も完成度が上がっています。その構成を落ち着いて見事に組み上げるショモギーの手腕はかなりのもの。
続くアダージョは癒されるような気配を感じさせながら、静かな音楽に時折オケの大波が押し寄せるハイドンには珍しい構成。特に弦の響きは鍛え上げられた筋肉のように引き締まった見事なもので、気にトスカニーニ的な険しさを感じさせる見事な造形。この曲を辛口にまとめるあたりのショモギーのセンスとオケのコントール能力も抜群です。
そして、辛口の酒の後に出汁の旨味の効いた椀ものをいただいた可能ような愉悦感に満ちたメヌエットに入ります。明るいメロディーが弾むのですが、ショモギーの眼力が演奏にただならぬ緊張感を与え、実に風雅で引き締まった演奏。隅々にまで料理人の感性が行き渡っています。
短調のフィナーレは険しい慟哭のようなメロディーの連続からふと素朴なユーモアを垣間見せる見事な展開。ショモギーはオケをキリリと引き締めると同時にユーモラスな部分でさっと気配を変え、ハイドンの機知を見事に表現。最後は大団円で終えます。この演奏を聴くと100曲以上あるハイドンの交響曲からこの曲をなぜショモギーが選んだか、なんとなくわかる気がしました。

IMG_0955.jpg

Hob.I:22 Symphony No.22 "Philosopher" 「哲学者」 [E flat] (1764)
さて、盤をひっくり返してお目当ての哲学者です。なぜか、前曲の引き締まったオケの響きとは全く異なり、とろけるように柔らかい響きに包まれます。各パートは鋭さを隠して楽器を実に柔らかく響かせ、冒頭からこの素朴なメロディーの醸し出す夢見心地のような雰囲気にどっぷりと浸かることができます。よく聴いてみるとゆったりとしたメロディーにゆったりと意外にも大きな起伏をつけて音楽に生気を与えていることがわかります。ハイドンだけが書ける見事なハーモニーに酔いしれます。大河のようにゆったりと流れる音楽。
2楽章のプレストはもっと険しくくるかと思いきや、1楽章の流れを受けてむしろしなやかな演奏にまとめてきました。前曲が凛とした筆の運びが印象的な楷書だったのに対し、こちらは力の抜けた行書のように流れの良さとハーモニーのまとまりを意識した演奏。曲によって明確にコンセプトを変えてきますが、そのコンセプト自体がよく考えられていて深い。
メヌエットも行書のままですが、筆の勢いがよく硬軟織り交ぜながら、流れよくしなやかに流します。そしてフィナーレも同様、見事に力が抜けて1楽章から一貫した流れの一部のように通してきました。最後にくっきりメリハリをつけてまとめました。

今ではその存在がほとんど知られていないラースロー・ショモギーの振るハイドンの交響曲2曲を収めたLPでしたが、前盤同様、絶品の出来。このアルバムを聴くと、ショモギーという人、曲の本質に迫ろうとする類い稀な洞察力の持ち主と見ました。地味な78番についてはこの曲の見事な構成をキリリと描ききり、哲学者の方は夢見るように美しいハーモニーを活かしてしなやかにまとめてきました。記事を書くために2度聴きましたが、最初は哲学者が図抜けて素晴らしいという印象を持ったんですが、よく聴くと78番も見事。評価はもちろん両曲とも[+++++]とします。78番は録音も少ないため、ニコラス・ウォード盤とともに曲のベスト盤といってもいいでしょう。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 哲学者 交響曲78番

オーマンディ/フィラデルフィア管の奇跡、時計(ハイドン)

オーマンディをもう1枚。

Ormandy96101.jpg

ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy)指揮のフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)による、ハイドンの交響曲96番「奇跡」、101番「時計」を収めたLP。収録は奇跡が1961年12月11日、時計が1962年1月28日、収録場所の記載はありません。レーベルは日本のCBS SONYで「オーマンディ”音”の饗宴1300」というシリーズの36巻。

前記事で取り上げた99番と軍隊があまりに良かったので、オークションでオーマンディの他のアルバムを探して仕入れたもの。99番と軍隊が1950年代の録音でモノラルだったのに対し、こちらは1960年代に入っての録音でステレオ。国内盤のCBS SONYということで録音はあんまり期待していなかったのですが、盤のコンディションは最高で針を落とすと素晴らしい響きに包まれるではありませんか。ということで、2記事連続でオーマンディを取り上げることになった次第。これまでのレビューは下記をご覧ください。

2018/01/07 : ハイドン–交響曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の99番、軍隊(ハイドン)
2013/06/03 : ハイドン–交響曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の時計旧盤
2012/05/24 : ハイドン–協奏曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管のトランペット協奏曲、協奏交響曲
2011/03/28 : ハイドン–交響曲 : オーマンディ/フィラデルフィア管の88番1958年モスクワライヴ

さて、手元にあるオーマンディのハイドンの録音の中では最も新しい録音であるこのアルバム、フィラデルフィアサウンドが炸裂するんですね〜!

Hob.I:96 Symphony No.96 "The Miracle" 「奇跡」 [D] (1791)
冒頭の序奏から透明感あふれる素晴らしい響きが広がります。CBSの国内盤がこれほど音がいいとはちょっと驚きです。オーマンディのコントロールが行き渡って、オケは絶妙なバランス。前記事で取り上げた99番と軍隊が1楽章の主題でかなりテンポを上げてきたので、この奇跡でもそうくるかと身構えていると、そう来ません! 実に落ち着いたテンポでじっくり練り上げるような演奏。むしろ録音が良いので曲のディティールの美しさを聴かせようというコンセプトでしょうか。なぜかミラクルな感じがするこの曲の1楽章を実に丁寧にコントロールしていきます。フレーズごとの隈取りも前記事の時とは異なり自然体に近いもの。耳をすますと各パートの演奏は非常にくっきりとして見事。そしてパート間のバランスも完璧でオーマンディのコントロールが行き渡っています。最後は落ち着いたクライマックスでキリリと締めます。
続くアンダンテも実に落ち着いた展開。それぞれのパートがくっきりと滑らかなに響きあい、ここまでの展開は細密な模写のように曲を緻密に描いていきます。奇跡のアンダンテのメロディの展開の素晴らしさを存分に味わうことができます。ヴァイオリンや木管のソロの神がかったような上手さが手に取ったようにわかります。
メヌエットは見事な録音によって彫りの深い音楽がくっきりと三次元的に浮かび上がる快感に酔いしれます。家がホールと化したような素晴らしい録音。鳥肌ものですね。途中のオーボエのソロのなんと見事なこと!そしてビロードのような弦楽セクション。迫力、バランスが高度に融合した素晴らしい演奏に打たれます。
そしてこの曲の聴きどころであるフィナーレは期待通りというか、あまりに素晴らしい演奏に言葉も出ません。爽快なのに素晴らしい切れ味、迫力、そして完璧なオーケストラのバランス。オーマンディの鍛えあげたフィラデルフィア管の面目躍如。フィラデルフィア管の底力を思い知らされたようです。ブラヴォー!

IMG_0949.jpg

Hob.I:101 Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
奇跡で完全にノックアウトされましたが、同じ調子で時計も演奏されるかと思うとゾクゾクしながらLPをひっくり返して針を落とします。実に精妙な序奏は、、、これは来そうです! 主題に入ると精緻な大迫力の響きが襲ってくるではありませんか。迫力がありながら落ち着いたコントロールでこの時計の1楽章の素晴らしいメロディーと次々と襲いくる波状攻撃に痺れます。まさにフィラデルフィアサウンド!
時計のアンダンテは予想通り落ち着いたテンポで入り、正確にリズムを刻みながらコミカルなメロディを描いていきます。展開部での迫力も期待通り。特に音量のコントラストを鮮明につけ、強奏部は未曾有の迫力と弱音部のデリケートなコントロールが見事に決まります。オーケストラコントロールの緻密さのレベルが違います。何度も言いますがオケのパート間のバランスと弦の美しい響きの素晴らしさは段違いです。
そしてメヌエットはもうオーマンディの独断場。これより素晴らしい演奏はありえないと思わせる完成度。中間部のフルートやファゴットの見事なソロも絶品。音楽の神様が降りて来ているよう。力が抜けた真のダイナミックさが味わえる奇跡的な演奏と言っていいでしょう。
フィナーレはなんと気高い入りでしょう! この演奏の総決算にふさわしい品格と迫力。オーソドックスなアプローチながら、描写の性格さとコントラストの付け方があまりに美しいので、完璧に美しいフォルムに仕上がっています。無限に広がるようなフーガの雰囲気も素晴らしく、最後は怒涛の迫力で結びます。

これは驚愕の名盤、人類の至宝です。これまで聴いた全てのオーマンディの演奏の頂点をなす演奏です。正直に言うとオーマンディについては同時代的にはちゃんと聴いてきませんでした。クラシックを聞き始めた頃は、カラヤンにベーム、バーンスタインなど知名度で上回る指揮者のレコードは色々買いましたが、オーマンディはちゃんと聴いていなかったのが正直なところ。今改めてこの演奏を聴き、オーマンディの偉大さがやっとわかりました。ベートーヴェンやモーツァルトはともかく、ハイドンの交響曲に関して、特にこのアルバムに収められた奇跡と時計についてはこれ以上の演奏があろうかと思わせる素晴らしい説得力に満ちたものでした。全盛期のフィラデルフィア管のすばらしさもこの1枚に凝縮されています。評価はもちろん両曲とも[+++++]です。「オーマンディ”音”の饗宴」と言うシリーズ名に偽りなし! まだ未入手のアルバムもありますので、もう少し集めてみたいと思います。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 奇跡 時計

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の99番、軍隊(ハイドン)

LPが続きます。

Ormandy99100.jpg

ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy)指揮のフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)による、ハイドンの交響曲99番、100番「軍隊」を収めたLP。LPに収録情報は記載されておりませんが、ネットを調べると99番は1954年4月15日、軍隊は1953年12月23日の録音であるとのこと。レーベルはCOLUMBIA。

このLPは旅行前の昨年11月にオークションで落札したんですが、すぐに発送されたという連絡があったものの、1週間経っても到着せず、出品者に確認しても発送したとのこと。旅行から帰って郵送事故かと思って出品者とこちらで事故照会をしたところ年末ギリギリになって中継局で宛名が剥がれた状態で保管されているのが見つかり、年末にあらためて到着した次第。私は仕入れにオークションをよく使いますが、ゆうメールでの未着トラブルは初めて。照会すると見つかるあたり、日本の郵便も捨てたものではありませんね。なんとなく運命を感じたアルバムゆえ取り上げる次第。

オーマンディは若い頃はほとんど聴いたことがありませんでしたし、ハイドンを振る人という印象もありませんでしたが、いくつか録音があり、これまでに3度ほど取り上げています。

2013/06/03 : ハイドン–交響曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の時計旧盤
2012/05/24 : ハイドン–協奏曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管のトランペット協奏曲、協奏交響曲
2011/03/28 : ハイドン–交響曲 : オーマンディ/フィラデルフィア管の88番1958年モスクワライヴ

豪華絢爛ながらちょっと型にはまった印象のあるオーマンディですが、昔はそれゆえあまり興味を持たなかったものの、最近はハイドンの演奏には向いているのではないかと思うようになり、見かける度にアルバムを集めているといったところ。このアルバムも手元にない99番と軍隊ということでなんとなく良さそうな予感がしておりました。到着して調べてみると録音も上記の通り、1950年代とオーマンディ〜全盛期のもの。もちろん録音はモノラルということで、年末の大掃除でサブのプレーヤーをサブのラックの一番上にセットし直してモノラル専用の環境を作りましたので。いつものようにVPIのレコードクリーナーで綺麗にクリーニングして、モノラル用のプレーヤーに載せ、モノラルカートリッジの針を落とします。

IMG_0937.jpg

Hob.I:99 Symphony No.99 [E flat] (1793)
古いアルバムゆえ若干のノイズが残りますが、オケの響きはキレキレで分厚いく瑞々しいもの。ヴァイオリンパートのクッキリとした隈取りはフィラデルフィアサウンドそのもの。重厚な序奏から一気にテンポを上げて軽快な主題に入ると素晴らしい推進力でグイグイとオケを煽っていきます。フレーズごとに明確にテンポと勢いに区切りをつけながらハイドンの書いたメロディーを次々に繰り出していく快感に浸れる演奏。1楽章は速めのテンポで一気にまとめます。
驚いたのがアダージョ楽章の味わい深さ。1楽章の物凄い勢いから一転、実に深い音楽が流れます。おそらく録音会場の外を走る車の音でしょうがわずかに低音のノイズが聴こえるのが微笑ましいところ。このアダージョは絶品です。
深いアダージョの音楽が終わり、メヌエットに入ると規律正しいオーマンディらしい抜群の安定感でオケが見事なアンサンブルを聴かせます。この精緻なメヌエットの演奏は鍛え抜かれたオケとの信頼関係があればこそ。名書家による達筆の楷書のようにどこから見てもバランスを崩さない均整のとれた音楽。ディティールもキレまくっていて冴え冴えとしています。
そしてフィナーレは完璧なるオーマンディのコントロールが行き渡りながら曲が進むにつれて徐々にエネルギーを帯びていきます。見事な起伏に赤熱する鉄の塊のようなエネルギーが加わり、終盤ふっと息を抜いてから、最後のクライマックスをキレキレで結びます。

Hob.I:100 Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
LPを裏返して軍隊です。なんと艶やかなヴァイオリンの響き! 全てのパートの音量がきちんとコントロールされ、まさにフィラデルフィアサウンド! すぐに先の爆発を予感させる響きが聴こえ迫力十分。この曲でも主題に入ると快速テンポに切り替わりオケが見事追随。フレーズの節々のアクセンとが実にキレよく響くので軍隊という曲が非常に軽快かつスペクタクルに鳴り響きます。重厚というより痛快な1楽章でした。
続くアンダンテはくっきりと表情をつけるオーマンディならではのキレの良い行進曲。もちろん迫力は十分ですが、音量ではなくキレで聴かせるアンダンテ。ここでも若干速めのテンポで見通しよくまとめる手腕は健在。箱庭的面白さを感じさせます。
前曲同様見事なのはこのメヌエット。実にくっきりとメヌエットの面白さを描いていき、アンダンテ同様迫力よりも見通しの良さにこだわっているようです。この余裕たっぷりの軽やかさは見事ですね。
そしてオケの機能美が堪能できるフィナーレですが、入りは軽めで徐々にエネルギーが宿り、特にキリリと締め上げるような要所のアクセントが効いてきます。軍隊にありがちな高揚感を煽るのではなく、引き締まりまくったオーケストラとパーカッションの乱打のキレで聴かせる見事なフィナーレでした。

オーマンディが亡くなったのは1985年。1980年に勇退するまで42年にわたりフィラデルフィア管の音楽監督を務め、後任をやはりくっきりとした響きを造るリッカルド・ムーティに譲るなど最後まで美学を貫いた人。たまたまとはいえ今年のウィーンフィルのニューイヤーコンサートに久々に登壇したムーティの繰り出す優雅でキリリとした響きを聴いて、オーマンディのDNAを継いでいると感じたのは私だけでしょうか。このアルバムのハイドンもオーマンディの美学が貫かれています。特に99番は見事な演奏。先日Best Choice of Worksとしてザロモンセットの各曲のベスト盤として99番はパーヴォ・ベルグルンド盤を選びましたが、このアルバムを聴いていたらこちらを選んだでしょう。評価は両曲とも[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲99番 軍隊

【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第5巻(ハイドン)

現在進行中のハイドンの交響曲全集。順調にリリースが続いています。

Antonini5.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovani Antonini)指揮のバーゼル室内管弦楽団(Kammerorchester Basel)の演奏で、ハイドンの交響曲80番、81番、ヨーゼフ・マルティン・クラウスの交響曲ハ短調(VB 142)、ハイドンの交響曲19番の4曲を収めたCD。このアルバムはアントニーニによるハイドンの交響曲全集の第5巻。収録は80番が2016年10月24日から25日にかけてスイスのバーゼル近郊のリーエンという街にあるランドガストホフ・リーエンでのセッション録音。その他の曲が2016年6月23日から27日にかけて、ベルリンのテルデクス・スタジオでのセッション録音。レーベルはレーベルはouthereグループのALPHA-CLASSICS。

私が手に入れたのはマーキュリーがリリースする解説付き国内仕様。解説の翻訳はおなじみの白沢達生さん。このシリーズはパッケージも解説も非常に凝ったものなので、やはり翻訳付きはありがたいですね。

このアルバムは先に触れたようにアントニーニによるハイドンの交響曲全曲録音の第5巻。これまでの4巻はアントニーニの率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコが演奏したものでしたが、5巻目となってオケがバーゼル室内管がようやく登場したことになります。

2017/04/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第4巻(ハイドン)
2016/10/09 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)
2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

もともとこのシリーズは、制作当初からオケはイル・ジャルディーノ・アルモニコとバーゼル室内管を振り分けるものとアナウンスされており、これまでの4巻に収録された演奏がいずれもパリセット以前の曲だったので、なんとなくオケを振り分けるポイントはパリセット以降などの曲の規模や時代の流れでのことと想像していました。ところが、今回80番、81番という収録曲でオケを変えてきたのを見て、概ねそうした想像通りと思いきや、初期の19番も含まれており、ちょっと想像とも違った展開でもあります。

解説によれば、今回の企画は1巻ごとにテーマを決めて選曲されているとのことで、アルバムも巻ごとにタイトルが付けられ、そのテーマに従って選曲されています。第1巻「受難」、第2巻「哲学者」、第3巻「ひとり物思いに沈み」、第4巻「迂闊者」ときていますが、これらはそれぞれの巻に収録されている曲のタイトルそのものでした。そしてこの第5巻のタイトルは「才気の人(L'Homme de Génie)」という含蓄のあるもの。詳しくは解説によりますが、ハイドンの中期の交響曲と、ハイドンと同時代のスウェーデンのヨーゼフ・マルティン・クラウスの作品を並べてまとめるにふさわしいテーマだったのでしょう。いずれにしてもオケを振り分けるポイントは時代ごとと言った割り切れたものではなさそうですので、今後の展開がどうなるか楽しみが増えましたね。

また、これまでのジャケットデザインも巻ごとにアーティスティックな素晴らしい仕上がりとなっていましたが、これは1947年に発足された写真家同盟である「マグナム・フォト」と連携して作品のテーマにふさわしい写真家の作品が選ばれているとのこと。第5巻はイギリスのスチュアート・フランクリンという写真家の作品で、「才気の人」というテーマに相応しい写真に彩られています。この辺りのプロダクションの見事さはこれまでの全集とはレベルの違うものであり、こちらも1巻ずつ集める楽しみがあるものですね。

さて、肝心の演奏についてはどうでしょうか。

Hob.I:80 Symphony No.80 [d] (before 1784)
短調の鬼気迫る入り。パリセットの直前の曲ということで録音も少ない曲ですが、改めてアントニーニのエッジの立った先鋭的な響きによって、この曲の迫力が浮かび上がった感じ。もちろんこの鬼気迫る入りはハイドンの才気とアントニーニの才気がぶつかり合って素晴らしい緊張感。ただしこの緊張感をすっとコミカルなメロディーで緩めては引き締める緊張一辺倒ではないところがハイドンらしいところ。対比によって曲の構成を見事に描いていきます。
続くアダージョはしなやかな弦の魅力で聴かせ、あえて音量の起伏を大きめにとって彫りの深い音楽を作ります。このアダージョの落ち着きながらも構えの大きな音楽こそハイドンの魅力をしっかりと踏まえてのもの。そしてメヌエットの適度なキレとバランスの良い展開も全集当初見られた力みが完全に抜けた証でしょう。いいですねこれは。
フィナーレはハイドンの奇抜なアイデアのオンパレード。ウィットに富んだテーマを軸にオケがフル回転でメロディーを膨らませながら盛り上げていきます。メロディーもリズムも楽器の掛け合いも全てがアイデアに満ち溢れ、その芽を全て拾って膨らませるアントニーニの見事なコントロールに唸ります。いやいやいきなり見事な完成度!

Hob.I:81 Symphony No.81 [G] (before 1784)
録音時期と収録場所は異なりますが、音色の差はそれほど気になりません。あえて言えばこちらの方が少々響きがダイレクトな感じがします。冒頭からキレ味鋭いオケが素晴らしい推進力で覇気溢れる響きを聴かせます。鋭利ながら迫力も素晴らしく、グイグイ引っ張って行きます。エネルギーに満ち溢れているとはこのこと。これ以上だと強引に聴こえてしまうギリギリのラインを保ってのコントロール。このほんのすこしの差が演奏の印象を大きく変えてしまうリスクがありますが、その線をギリギリ保つことで類まれな生命感を帯びた音楽になります。力を抜くところでしっかりと抜けているのがポイントでしょう。1楽章から圧倒的!
前曲同様緩徐楽章は正攻法で彫りの深い音楽を奏でます。小細工なしに曲の良さを素直に生かす演奏こそ、ハイドンの真髄に迫る演奏になるとの確信があるよう。後半は意外にもかなり穏やかな音楽にほっこりします。
その穏やかさは鋭利なメヌエットへの対比のためだったのでしょう。このメヌエットも驚くべきアイデアに満ちたもの。アントニーニがそのアイデアをクッキリと浮かび上がらせて本質的な面白さを見抜きます。
そしてフィナーレももちろん千変万化する響きに目がクラクラするほど豪華な響きに圧倒されます。オケにもエネルギーが満ちてまるでライヴのような高揚感に包まれます。これまた見事!

この後ヨーゼフ・マルティン・クラウスの交響曲です。手元に何枚かクラウスの曲はありますが、この曲を聴いてあまりの構成感の見事さに驚いた次第。ハイドンがその才能を認めただけのことはありますね。まさに才気の人。アントニーニも渾身の演奏でクラウスの才気に応えます。

Hob.I:19 Symphony No.19 [D] (before 1766)
ハイドン中期の交響曲2曲にあまりに本格的なクラウスの交響曲というメインディッシュに対して、最後にデザートのように置かれたハイドン初期の交響曲。リズムのキレの良さでさらりと入ったかと思いきや、デザートも力が入っていました。パティシエ渾身の細工の見事さを見せつけらるようなメロディーのキレに唸ります。聴きどころは続くアンダンテでした! ここでもさらりと入った後に音楽が深く響いていく様子の見事さに唸らされます。この曲のアンダンテがこれほど素晴らしい曲だと初めて気づかされた気分。そしてフィナーレも短いながらアントニーニのコントロールが行き届いて軽やかさとオケの吹き上がりの見事さでまとめました。

第5巻でオケがバーゼル室内管に変わった、ジョヴァンニ・アントニーニのハイドン交響曲全集。これまでリリースされた中では間違いなく一番いい出来。特にこれまであまり重んじられてこなかった80番、81番というパリセット直前の2曲の面白さをこれまでで最も引き出した演奏と言っていいでしょう。ハイドン3曲の評価はもちろん[+++++]とします。そしてヨーゼフ・マルティン・クラウスのハ短調交響曲にもびっくらこきました! この全集、企画、演奏、アートワークが三拍子揃った素晴らしいものであり、1巻1巻揃える楽しみがあります。今から次のリリースが楽しみです!

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲80番 交響曲81番 交響曲19番 古楽器 交響曲全集

リステンパルト/ザール室内管の交響曲21番、マリア・テレジア(ハイドン)

その存在を最近知ったアルバム。LPの音がこれほどまでに美しいとは。

IMG_0093.jpg

カール・リステンパルト(Karl Ristenpart)指揮のザール室内管弦楽団(Chamber Orchestra of The Saar)の演奏で、ハイドンの交響曲21番、48番「マリア・テレジア」と、ギュンター・ヴァント(Günter Want)指揮のギュルツェニヒ交響楽団(Gürzenich Symphony Orchestra of Cologne)の演奏で交響曲82番「熊」の3曲を収めたアルバム。リステンパルトの方の収録は同じ音源と思われるマリア・テレジアのCDの収録情報から1965年1月、ドイツ南部のフラウラウターン(Fraulautern)でのセッション録音。レーベルは優秀録音で知られる米nonsuch。(2017/11/23収録情報を修正:cherubinoさんご指摘ありがとうございます!)

今日はリステンパルトの演奏を取り上げましょう。リステンパルトのハイドンは私の溺愛する演奏の一つ。ブログ最初期にホルン信号の記事を書いて以来、録音が手に入ると取り上げてきました。今年の夏に気まぐれで始めたザロモンセットの名演奏では時計のベスト盤にリステンパルトを選んでいます。

2017/08/20 : Best Choice of Works : 【ハイドン音盤倉庫特選】ザロモンセットの名演奏(後編)
2015/12/31 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルト/ザール室内管の81番、王妃(ハイドン)
2013/01/07 : ハイドン–交響曲 : カール・リステンパルトの驚愕、軍隊、時計
2010/02/04 : ハイドン–交響曲 : 絶品! リステンパルトのホルン信号

今日取り上げるアルバムに含まれる演奏のうち、マリア・テレジアはホルン信号のアルバムにも収録されていますので、初出は21番だけということになりますが、ホルン信号の記事を書いた頃には具体的なレビューを書いておりませんので、改めてマリア・テレジアもちゃんと取り上げることにします。最初の記事に書いた通り、「一言でいうとごく普通の演奏なんですが、まろやかなオケの音色、中庸なテンポ、すべての奏者の息がぴたりと合って大きな音楽を奏でていて、これ以上の演奏はないというような完成度。」といえも言われぬ演奏を期待してしまいますね。

Hob.I:21 Symphony No.21 [A] (1764)
いつものようにVPIのクリーナーで綺麗にクリーニングしてアルバムに針を落とした途端、まさにとろけんばかりのまろやかなオケの響きに包まれます。1楽章はアダージョで、弦はまろやかな上に分厚い低音をベースに無限に広がるような広い空間にゆったりと響きわたり、木管、金管陣はクッキリと浮かび上がります。いきなり脳内が快楽物質で満たされます。続く2楽章に入ると未曾有の推進力に満ち溢れ、さらに空間が広がります。何でしょう、このエネルギーに満ちた軽快さは。LPから素晴らしいエネルギーが湧き出てきます。そしてそのエネルギーがキレの良さに変わる3楽章のメヌエット。フレーズの一つ一つが波打つように弾みます。そしてフィナーレに到るまでキレキレのオケはエネルギーを放ち続けます。恐ろしいまでの集中力。これはこれまで聴いたリステンパルトのハイドンの中でも別格の素晴らしさ。そして超絶的名録音。

IMG_0096.jpg

Hob.I:48 Symphony No.48 "Maria Theresia" 「マリア・テレジア」 [C] (before 1769?)
そしてCDでも聴いているマリア・テレジアですが、このエネルギー溢れる音はLPならでは。このエネルギーはデジタルでは出ません! 日曜の夜だからか、アンプも絶好調でゾーンに入って、スピーカーからオケのピラミッドのような分厚い低音をベースとした響きが轟きます。続く2楽章は弱音器付きの弦楽器のしっとりとした入りからホルンのメロディーが重なっていきますが、ホルンの響きのなんたる美しさ。静寂の中に各楽器の織りなす綾が光沢を伴って揺らめきます。絶美。
2楽章の終わりでLPをひっくり返します。メヌエットはゆったりとしたテンポで余裕たっぷりの演奏と思いきや、すぐにずしりと響く迫力を帯びて険しさを垣間見せます。そしてメヌエットの力感を抜くように、爽やかにフィナーレに入りますが、弦楽器の恐ろしいまでのボウイングのキレの迫力ですぐに図太い流れを作ります。このLP、特に低音の迫力が見事でした。

この後に収められたヴァントの熊ですが、録音は高音がこもり気味で今ひとつ。というより、前2曲が素晴らしすぎました。

カール・リステンパルト指揮のザール室内管による交響曲2曲でしたが、素晴らしい演奏と素晴らしい録音が揃った超名盤と言っていいでしょう。nonesuchといえば長岡鉄男さんが民族音楽などの名録音盤を数多く紹介していたこともあって録音の素晴らしさで知られるレーベルですが、このアルバムはこれまで聴いたnonesuchの中でも飛び抜けて素晴らしいもの。1966年のプロダクションですが、現在でもこれを超える録音は見つからないでしょう。もちろん演奏もリステンパルトのハイドンの最上のもの。これは宝物レベルのアルバムですね。もちろん評価は2曲とも[+++++]です。LPの再生環境がある人はこのアルバムを是非入手して、リステンパルトとnonesuchの陶酔を味わってほしいものです。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ヒストリカル 交響曲21番 マリア・テレジア

アントニオ・ヤニグロ/ウィーン祝祭管の哲学者、ラメンタチオーネ(ハイドン)

ちょっと間が空いてしまいました。最近手に入れたLP。

IMG_0051.jpg

アントニオ・ヤニグロ(Antonio Janigro)指揮のウィーン祝祭管弦楽団(Orchestra of the Vienna Festival)の演奏で、ハイドンの交響曲22番「哲学者」、歌劇「騎士オルランド」序曲、交響曲26番「ラメンタチオーネ」、歌劇「無人島」序曲の4曲を収めたLP。収録に関する情報はレーベル面にヨーロッパで1965年に録音されたとだけ記載されています。レーベルはVANGUARD。

アントニオ・ヤニグロのアルバムは何度か取り上げています。

2013/07/18 : ハイドン–協奏曲 : ヘルムート・ウォビッシュ/アントニオ・ヤニグロのトランペット協奏曲
2012/04/26 : ハイドン–交響曲 : アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の「受難」
2012/04/24 : ハイドン–交響曲 : アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の「悲しみ」

ラジオ・ザグレブ交響楽団との2枚組のCDが有名で、交響曲の録音はそのアルバムに含まれる6曲のみかと思っておりましたが、さにあらず。好きな「哲学者」と「ラメンタチオーネ」が含まれるこのLPを見つけた時はちょっと過呼吸になりました(笑)。このLP、モノラル盤ですが、ステレオ盤もあるということで、そちらも見かけたらゲット予定です。

ヤニグロについては「悲しみ」の記事をご覧ください。

入手したLPはジャケットも盤面も見事なコンディション。いつものようにVPIのクリーナーと必殺美顔ブラシで綺麗にクリーニングして針を落とします。

Hob.I:22 Symphony No.22 "Philosopher" 「哲学者」 [E flat] (1764)
1楽章のアダージョは独特のリズムが整然と刻まれながら入ります。多少古びた響きの印象はありますが、淡々としながら実に彫りの深い見事な演奏にのっけからぐっときます。特に単調なリズムに乗って奏でられるヴァイオリンの透明感溢れる美しい響きやホルンの柔らかな響きが印象的。聴いているうちにこの曲の不思議な雰囲気にのまれます。
続く2楽章がアレグロで、ギアを2段上げて、颯爽とした演奏に切り替わります。1楽章で響きの美しさを聴かせたヴァイオリンが、今度は松脂が飛び散らんばかりのボウイングできりりと引き締まって音階を刻みます。素晴らしい推進力に圧倒されます。メヌエットも覇気溢れる堂々としたもの。弦楽器の見事に揃ったボウイングで分厚い響きが素晴らしい迫力を感じさせます。そしてフィナーレでもその弦の迫力が聴きどころ。ホルンや木管も見事に揃って素晴らしい一体感。湧き上がるような見事なクライマックスで締めます。

Hob.XXVIII:11 "Orlando Paladino" 「騎士オルランド」 (before1782)
3分少々の短い序曲。短い曲にも関わらずオペラの幕が開ける前のざわめきを伝えるハイドンの見事な構成に唸ります。前曲同様ウィーン祝祭管の弦楽陣の優秀さを感じさせる精緻なアンサンブル。

IMG_0050.jpg

LPをひっくり返してB面です。

Hob.I:26 Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
シュトルム・ウント・ドラング期独特の仄暗い1楽章の入り。彫り深くタイトな響きは哲学者同様。メロディーラインが明確な曲なんですが、ヤニグロのコントロールで聴くと内声部が豊かに響きます。速めのテンポで颯爽とした展開。
聴きどころの2楽章のアダージョは幽玄さを感じさせるような味わい深いもの。淡々としながらも実に丁寧にメロディーを紡いでいき、古風な雰囲気と陰りのある音色が絶妙な響きを作り、心を震えさせます。これは見事。ハイドンがこの曲を書いた時代にタイムスリップします。時折り印象的なアクセントを打ち込みます。
フィナーレまでオケの燻んだ音色の魅力は続きます。ただ古風な演奏というのではなく、ヤニグロが絶妙な味わい深さを加えています。これまた見事に曲を閉めました。

Hob.XXVIII:9 "L'isola disabitata" 「無人島」 (1779)
最後の曲。こちらは7分少々の曲でオルランド序曲よりも展開の面白さが味わえます。序奏に続いて湧き上がるような主題に入り、続いて物語りの展開を暗示させる典雅な音楽。そして再びタイトな主題で締める完璧な構成。ヤニグロ流の彫りが深く起承転結が明快なコントロールでこの緊密な序曲をキリリと仕上げました。

イタリアの名匠アントニオ・ヤニグロによる、あまり知られていなかった「哲学者」、「ラメンタチオーネ」他序曲2曲を収めたLPでしたが、有名なラジオ・ザグレブ交響楽団との交響曲集に劣らず素晴らしいものでした。自身がチェリストであるためか、弦楽器の扱いが秀逸で、響きを巧みにコントロールして分厚さとキレを両立させた見事な響きを作り上げていました。少々古風な印象もありますが、この哲学者とラメンタチオーネという曲にはそれが味わい深さとして見事にマッチしています。評価は全曲[+++++]とします。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 哲学者 ラメンタチオーネ 騎士オルランド 無人島

マリス・ヤンソンス/ベルリンフィルの「驚愕」(ハイドン)

久々に映像ものを取り上げます。

Jansons94.jpg
TOWER RECORDS / amazon / ローチケHMVicon

マリス・ヤンソンス(Mariss Jansons)指揮のベルリンフィルの演奏で、ハイドンの交響曲94番「驚愕」、モーツァルトのフルート協奏曲K.314 (285d)、ベルリオーズの幻想交響曲の3曲を収めたBlu-ray。収録は2001年5月1日、ベルリンフィル恒例のヨーロッパコンサートで会場はトルコのイスタンブールの聖イレーネ教会でのライヴ。レーベルはEUROARTS。

この映像、存在は知っていたものの、手に入れたのはごく最近のこと。

マリス・ヤンソンスのハイドンは過去に2度取り上げていますし、昨年バイエルン放送響との来日公演で「軍隊」も聴いています。

2016/11/27 : コンサートレポート : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響の「軍隊」(ミューザ川崎)
2013/05/11 : ハイドン–交響曲 : マリス・ヤンソンス/バイエルン放送響のロンドン、軍隊
2011/08/11 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番2】マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団のハルモニーミサライヴ

ヤンソンスは皆さんご存知の通り、世界の一流指揮者の一人であり、非常に丁寧なコントロールで音楽をしなやかに聴かせる人です。ヤンソンスのハイドンはそのしなやかな魅力がベースの演奏ですが、過去に取り上げた演奏では、少々磨き過ぎて丁寧に過ぎる印象もちょっと感じさせ、ハイドンの直裁な魅力を十分に表現しきれていない印象も持っていました。ただ、昨年聴いた「軍隊」のコンサートはやはり素晴らしく、ちょっと見直したのが正直なところ。そう思っている中、このBlu-rayが目に入ったので手に入れた次第。

過去に取り上げたアルバムではバイエルン放送響との交響曲集が2003年と2007年、ハルモニーミサが2008年ということで、今日取り上げる2001年の「驚愕」が最も古い演奏ということになります。

Hob.I:94 Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlag" 「驚愕」 [G] (1791)
聖イレーネ教会は荒い肌の積み石がむき出しのイスタンブール最古の教会。雰囲気はなかなか良いのですが録音に適するようには思えません。ただその辺はうまく音響処理しているのか、普通のコンサートホールでの録音と言われてもわからないほど自然な音に録られています。冒頭が「驚愕」ですが、序奏からヤンソンスの魔法にかかったようにベルリンフィルからビロードのような柔らかい響きが引き出されます。ヤンソンスは指揮棒を持たず、体全体を使って非常にリズミカルな指揮ぶり。そして驚愕の聴きどころである1楽章の緊密な構成を非常に自然に描いていきます。特に素晴らしいのがリズムのキレ。流れるような演奏とはこのことでしょう。そしてヤンソンスの面目躍如なのがすべてのフレーズが丁寧に磨かれているかのような美しさ。映像で見るとなおさら磨きっぷりまでよくわかります。1楽章は大理石の透明感まで伝わるような白亜の大神殿のような優美な姿を見せます。
続くびっくりのアンダンテもこれ以上美しく演奏するのは難しいほど流麗なもの。びっくりの部分は適度な迫力でこなしますが、続く変奏では速めのテンポで見通し良く展開するので抜群の面白さを味わえます。まさに古典の均衡を味わえる見事な演奏。ヤンソンスの指揮姿を見ていると、見通し良くリズムを刻むところに細心の注意を払っていることがよくわかります。
そしてハイドンの交響曲で意外に単調になってしまいがちなメヌエットもヤンソンスの手にかかると躍動感に溢れる舞曲として弾みます。ベルリンフィルもいつもの剛腕ぶりから華麗な響きに変わり、シェフが変わるととろけるような甘みを見せます。
そしてフィナーレもまろやかな入りから、徐々にオケに力が宿り、軽やかに、華麗に、そして時に図太く変化しながら最後のクライマックスに向けて盛り上がっていきます。これほど華麗なこの曲のフィナーレは聴いたことがありません。最後はベルリンフィルの底じからをさらりと聴かせ終わります。いやいや素晴らしい。

マリス・ヤンソンスの驚愕、オーソドックスな演奏ながら、極めて完成度の高い極上の演奏でした。先日実演で聴いた「軍隊」も素晴らしかったんですが、この驚愕も見事の一言。評価は[+++++]とします。ヤンソンスは旧バルト三国のラトビア出身ですが、独墺系の伝統とは少し異なるロマンティックな古典の美しさの表現が上手いですね。実演に接してからヤンソンス流のハイドンにも違和感を感じなくなってきました。先日ハイドン音盤倉庫特選としてザロモンセットの名演奏を選んだ中で、驚愕はクライバー盤を選んだのですが、この映像も驚愕の名演奏としておすすめできるものです。未聴の方は是非。なぜかローチケHMVだけBlu-rayにもかかわらず1000円ちょっとで手に入ります。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 驚愕 ライヴ録音 Blu-ray

パトリック・ガロワ/シンフォニア・フィンランディアの初期交響曲集(ハイドン)

10月に入って珍しく交響曲のアルバムが続きました。ということで、勢いで交響曲を取り上げましょう。

Gallois9_12.jpg
TOWER RECORDS / amazon

パトリック・ガロワ(Patrick Gallois)指揮のシンフォニア・フィンランディア(Sinfonia Finlandia)の演奏で、ハイドンの交響曲9番、10番、11番、12番の4曲を収めたCD。収録は2005年2月15日から18日にかけて、フィンランド中部の小さなまちスオラハティ(Suolahti)のコンサートホールでのセッション録音。レーベルはNAXOS。

先日レビューしたレストロ・アルモニコのLPを聴いて初期交響曲のアルバムを聴き直してみたくなりました。今更ながら手元の所有盤リストをチェックしてみると、まだレビューを一度もしていない曲があり、このアルバムも評価をつけていないことがわかりましたので、取り上げた次第。同じ奏者によるアルバムは以前に取り上げていて、なかなかいい演奏だったとわかっておりましたので、こちらもよかろうと踏んだという流れです。

2012/03/03 : ハイドン–交響曲 : パトリック・ガロワ/シンフォニア・フィンランディアの初期交響曲集

指揮者のパトリック・ガロワはフルーティストとしての方が有名でしょうか。奏者については前記事をご覧ください。オケは現在はユヴァスキュラシンフォニアという名称のようですね。

Jyväskylä Sinfonia

Hob.I:9 Symphony No.9 [C] (1762?)
なかなか響きの良いホール。前盤同様小編成でキレのいいオケの響きが心地よい録音。オーソドックスな現代楽器による録音ですが、リズムのキレがよく、アンサンブルの精度も非常に高いレベルの高い演奏。明確にアクセントをつけてリズムを強調することでハイドンの初期の交響曲の面白さがぐっと強まります。ハイドンの初期交響曲の理想的な演奏と言っていいでしょう。アンダンテは実に落ちついてゆったりとした音楽。素朴で暖かいメロディーの美しさが際立ちます。ハープシコードの音色が加わりなんとも言えない典雅な印象。このアンダンテの美しさを再認識。3楽章構成で終楽章はメヌエット。まさしくハイドンらしいメヌエットで締めくくります。このアルバム最後の楽章にふさわしい壮麗なフィナーレ。キレも推進力も響きの美しさも最高。まさに響きの坩堝と化し、見事なコントロールを見せつけて終わります。

Hob.I:10 Symphony No.10 [D] (before 1762)
入りから推進力に溢れた演奏。ところどころレガートで変化をつけながら初期の快活な交響曲の魅力を見事に表現していきます。パトリック・ガロワのコントロールは隙のないもの。リズムのキレと速めのテンポによるスタイリッシュな演奏。メロディーのアクセントのつけ方が巧みなので素晴らしい立体感と躍動感が生まれるんですね。1楽章は疾風のように過ぎ去ります。この曲も3楽章構成。続くアンダンテで穏やかに沈み込む情感を上手くすくい上げながら、美しい響きで包んできます。フィナーレも壮麗。ガロワは響きに関する鋭敏な感覚を持っていますね。これ以上は望めないほど美しくまとまったオケの響きに酔いしれさせられます。

Hob.I:11 Symphony No.11 [E flat] (before 1762)
これまで一度も取り上げていなかった曲。この曲は4楽章構成。入りのアダージョ・カンタービレからハイドンの類い稀な想像力に驚かされる曲。ゆったり流れる音楽に冒頭から身を任せたくなります。ガロワはその癒しのような音楽をじっくりと叙情的に描いていきます。古楽器の演奏ではこうはいかないでしょう。リラックスした分2楽章のアレグロのキレの良さが引き立ちます。快速テンポでの2楽章の入りのはまさに曲のコントラストをはっきりする上でポイントになるでしょう。テンポを上げてもオケの安定感は変わらず。オケは実力者揃いと見ました。メヌエットもしっとりとした魅力を放ち、どこか華やかさが残ります。聴きどころはフィナーレ。難しいリズムの変化の中各パートのせめぎあいの見事な展開。

Hob.I:12 Symphony No.12 [E] (1763)
1楽章は独特な節回しの曲ですが、その曲をさらにいじって、やや個性的な解釈を加えていきます。メロディーとリズムが面白いところをデフォルメする余裕が出てきました。基本的には爽快な現代楽器の演奏ですが、徐々に個性をどう出すかというテーマを持って演奏しているようです。続いて短調のアダージョに入りますが、見事な憂いと沈み込み。ただ沈み込むだけでなく音楽の呼吸が深く曲の真髄に迫ろうとする覇気を感じるレベル。この曲は3楽章構成。フィナーレはキレ、推進力、壮麗さとどれを取っても素晴らしいもの。このアルバムの最後を飾るにふさわしい出来でした。

パトリック・ガロアの振るシンフォニア・フィンランディアの初期交響曲集ですが、NAXOSのハイドンの交響曲全集の終盤を飾る素晴らしい演奏でした。ただ素晴らしいだけでなく、一流どころの演奏に劣るどころか収録曲のベスト盤としてもいいレベルに達しています。キレよくハイドンの初期交響曲をまとめる手腕は見事の一言。評価は全曲{+++++]とします。未聴の方は是非!

にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 交響曲9番 交響曲10番 交響曲11番 交響曲12番

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

最新記事
カテゴリ
タグリスト
クリックするとそのタグに関する記事が表示されます。特定の曲に関する記事の表示ができます。

ヴァイオリン協奏曲ピアノソナタXVI:50ベートーヴェンピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:48驚愕哲学者ニコライミサミサブレヴィス小オルガンミサ交響曲95番ヒストリカル奇跡交響曲93番弦楽四重奏曲Op.20交響曲78番時計交響曲99番軍隊ピアノソナタXVI:23ピアノソナタXVI:40王妃モーツァルトピアノソナタXVI:52アンダンテと変奏曲XVII:6武満徹SACDライヴ録音チェロ協奏曲交響曲80番交響曲19番古楽器交響曲81番交響曲全集マリア・テレジア交響曲21番豚の去勢にゃ8人がかりクラヴィコードピアノソナタXVI:20無人島ラメンタチオーネ騎士オルランドLPBlu-ray東京オペラシティ交響曲86番チェロ協奏曲1番十字架上のキリストの最後の七つの言葉交響曲10番交響曲9番交響曲11番交響曲12番ロンドン太鼓連打交響曲4番交響曲15番交響曲2番交響曲37番交響曲1番交響曲18番ひばり弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:3ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:5天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲102番交響曲97番交響曲98番ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:35ピアノソナタXVI:49フルート三重奏曲オーボエ協奏曲ドニぜッティロッシーニライヒャピアノソナタXVI:34弦楽三重奏曲皇帝ピアノ協奏曲XVIII:3ストラヴィンスキーミューザ川崎シェーンベルクマーラー東京文化会館ホルン協奏曲フルート協奏曲弦楽四重奏曲Op.2弦楽四重奏曲Op.17弦楽四重奏曲Op.9剃刀弦楽四重奏曲Op.103弦楽四重奏曲Op.77ピアノソナタXVI:31ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:26タリスアレグリパレストリーナモンテヴェルディバードすみだトリフォニーホールピアノ協奏曲XVIII:11ピアノソナタXVI:6告別ピアノソナタXVI:39美人奏者四季迂闊者交響曲70番ピアノ協奏曲XVIII:7ピアノ協奏曲XVIII:4アコーディオンバリトン三重奏曲スコットランド歌曲ガスマンヴェルナーシューベルトピアノソナタXVI:38交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲51番交響曲46番交響曲35番協奏交響曲DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:28ピアノソナタXVI:21アリエッタと12の変奏XVII:3サントリーホールラ・ロクスラーヌ帝国弦楽四重奏曲Op.76ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51五度ラルゴピアノ三重奏曲弦楽四重奏曲Op.64日の出ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.1弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.74騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス交響曲42番時の移ろいベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲ピアノソナタXVI:29ピアノソナタXVI:10リュートピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6ピアノ五重奏曲チェチーリアミサ東京国際フォーラムラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン雌鶏交響曲39番冗談英語カンツォネッタ集ナクソスのアリアンナアレルヤピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタバッハ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2交響曲79番ロンドン・トリオブルックナー交響曲88番オックスフォードモテットオフェトリウムカノンドイツ国歌スタバト・マーテル弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難パリセット交響曲84番ベルクブーレーズ主題と6つの変奏弦楽四重奏曲Op.71オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノショスタコーヴィチ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲悲しみリーム交響曲50番交響曲89番偽作CD-Rトビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタオルガン協奏曲火事交響曲38番リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日交響曲90番校長先生音楽時計曲ピアノソナタXVI:11ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bisカートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲66番交響曲91番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭ピアノソナタXVI:22変奏曲XVII:7オペラ序曲天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェライヴ府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア交響曲27番2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CDドビュッシー交響曲28番交響曲13番交響曲108番変わらぬまこと交響曲107番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲交響曲3番スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中交響曲58番ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
登録曲数:1,361曲 登録演奏数:10,291
月別(表示数指定)
リンク
全記事表示リンク

全ての記事を表示する

カウンター
カレンダー
01 | 2018/02 | 03
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 - - -
ブログ内検索
Translation(自動翻訳)
ブログランキング等
当Blogへお越しの際は、下のバナーをクリックの上お仲間のBlogも是非お楽しみください。
クラシック音楽鑑賞の情報満載。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ

クラシックの膨大なブログランキング。更新もクイック。
人気ブログランキングへ

音楽家、音大生、音楽愛好家のブログランキング。
音楽ブログランキング

このブログの成分解析。キーワードによるブログランキング。
blogram投票ボタン

大家さんFC2のクラシックブログランキング。


おすすめ(音楽)
ハイドンの超厳選名演盤。
AdamFischer97.jpg
沸き上がる興奮(Blog記事

Gloukhova2.jpg
ピアノソナタ新風(Blog記事

RialAria.jpg
恋人のための...(Blog記事

書籍もCDも送料1点から無料。配送クイック。


クラシックのアルバム・日本語解説が一番充実。
HMVジャパン
HMV ONLINEでハイドンのアルバムを検索icon
HMV ONLINEでハイドン関係書籍・楽譜を検索 icon

クラシックの独自企画・復刻盤は要注目。


おすすめ(音楽以外)




アクセスランキング(FC2)
[ジャンルランキング]
音楽
138位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
クラシック
11位
アクセスランキングを見る>>
twitter
ブログの更新情報などをつぶやいています。
最新コメント
最新トラックバック
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

RSSリンクの表示
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ