アントニーニ/読響による「軍隊」など(東京芸術劇場)

16日火曜日に続き、20日土曜はアントニーニの振る読響のコンサートを聴いてきました。

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読売日本交響楽団:第211回土曜マチネーシリーズ

火曜日はハイドンは歌劇「無人島」序曲だけだったんですが、この日は「軍隊」と本格的な曲がプログラムされ、しかもハイドンがとりを務めるというアントニーニらしい選曲。

ヴィヴァルディ:ドレスデンの楽団のための協奏曲(RV577)
ヴィヴァルディ:マンドリン協奏曲(RV425) マンドリン:アヴィ・アヴィタル(Avi Avital)
J.S.バッハ:マンドリン協奏曲(BWV1052) マンドリン:アヴィ・アヴィタル
ヴィヴァルディ:リコーダー協奏曲(RV443) リコーダー:ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)
ハイドン:交響曲100番「軍隊」

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この日はサントリーホールではなく、池袋の東京芸術劇場。同じ指揮者、オケでもホールが違うと響きがだいぶ違いますのでそのあたりがどう演奏の印象に影響するのかというのも聴きどころですね。

マチネーということで開演は14時。芸劇のマチネーの時には芸劇の1階のカフェで食事をしてコンサートに臨むのが習慣になりつつあります。お昼に到着してホールに上がるエスカレーターの裏のカフェでランチをいただきます。

食べログ:ベルギービール カフェ ベル・オーブ 東京芸術劇場

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お昼時だったので席に着くまでちょっと待ちましたが、5分ほどで座れ、まずはビールとスパークリングワインをいただきます。

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頼んだのはハンバーグにハヤシライス。ここは基本的に何を食べても美味しいですよ。

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ハヤシライスは牛スジを煮込んでコクがありました。

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お昼すぎについて、しばらくゆっくりして落ち着いてホールに上がります。

この日の席は2階席のやや右手。オケを遠くから見下ろす席でした。芸劇とサントリーホールはどちらも客席数約2000席で規模は変わらないんですが、サントリーがご存知のようにステージを囲うような客席で席からステージが比較的近いのに対し、こちらの東京芸術劇場は縦に長い構造のためステージが遠く感じます。席の位置の関係もありましたが、この違いが演奏の印象に結構大きな違いを生みました。

客席はほぼ満員。この日のプログラムはヴィヴァルディの比較的マイナーな曲がメインにしてはお客さんの入りはいいですね。やはりアントニーニの知名度が集客に大きく働いているのでしょう。

この日もコンサートミストレスは客演の日下紗矢子。1曲目のヴィヴァルディのドレスデンの楽団のための協奏曲ではヴァイオリンなどソロ楽器を立たせて協奏交響曲のような布陣。火曜のコンサートでは出だしの「無人島」序曲からフルスロットルの演奏だったのに対し、このヴィヴァルディは典雅に音楽を流す感じでテンションがだいぶ異なります。アントニーニは腰を落とすことなく、リズムを少々煽り気味に曲に緊張感を与える程度。ホールの容積に対してオケも小編成のため、アントニーニに期待される前衛的な踏み込みよりも、心地よくキレのいい音楽が流れるように聴こえます。オーボエとファゴットのソロが活躍する曲で、日下さんのヴァイオリンを含めてソロのレベルは非常に高く、引き締まった演奏にまとまりました。

続く2曲目はマンドリンがソロを務めるマンドリン協奏曲。マンドリン協奏曲とは非常に珍しく、私も初めて聴く曲。マンドリンという楽器がオケに対して音量的にソロとして目立つ存在となるかという点も危惧しましたが、結果的には全く問題ありませんでした。というのも伴奏は基本的にピチカートでの伴奏故、柔らかな音色の響きでの伴奏でマンドリンのメロディーにかぶることはありませんでした。この曲はもとよりマンドリンのために書かれた曲ということで、ヴィヴァルディもそのあたりをしっかり考慮して書いたということでしょう。解説を読むとヴィヴァルディがマンドリンのために書いた協奏曲はこの曲1曲のみとのこと。マンドリンのアヴィ・アヴィタルのマンドリンは音量、コントラスト、リズムのキレとも見事で、この短い曲の魅力がよくわかりました。帰って調べてみたところDGからアルバムがリリースされており、その道では有名な人なのでしょう。末尾に参考アルバムとしてリンクをつけておきました。アントニーニはここでもマンドリンを引き立てることに徹している感じで、腰は立ったままでした(笑)

ヴィヴァルディに続いて大バッハのマンドリン協奏曲が続きますが、バッハにマンドリン協奏曲があったかと思うと、これはチェンバロ協奏曲1番をアヴィタルがマンドリン用に編曲したものとのこと。こちらは聴き慣れた曲。ヴィヴァルディの方はマンドリン用に書き下ろしたということでマンドリンの音色と音楽性を活かし切ったものだったのに対し、こちらのバッハの方はマンドリンの音色の面白さは活きていたものの、音階の鮮やかさや速いパッセージの切れ味はチェンバロには及ばずという印象も残しました。こちらは古楽器オケの演奏はいくつも聴いているため、現代楽器のオケでの演奏で、ソロが古楽器で音色の澄んだマンドリンということで、ザラついたオケの感触がなく、ソロが浮かび上がるということで意外にいい響きに聴こえます。ただアントニーニはこの曲でも攻めてくる感じはせずキレ味を感じさせるのみ。マンドリンは速い音階が多い分技術的にはかなり高度なものがあり、最難部分では少しテンポを落とすことでその苦労を共有するような演出。バッハは古楽器演奏の刷り込みが多い分、マンドリンの音色の面白さを味わえるところはあるもののバッハの真髄に迫るという感じまでには至りませんでした。それでもお客さんはもちろんマンドリンの妙技に拍手喝采。

アンコールはちょっとクラシックのレパートリーではなさそうなアヴィタルの演奏に会場が釘付けになる素晴らしいものでした。終演後に張り出されたアンコール曲の張り紙には「アヴィタル:プレリュード(Bucimis)とありましたが、Bucimisを調べてみると、「ブチミシュ(Bučimiš)」とありブルガリア(西トラキア)地方で踊られる15/16拍子のダンスのこととのこと。こちらもベストアルバムに収録されていましたのでリンクを貼っておきます。

休憩を挟んでヴィヴァルディをもう1曲。

今度はアントニーニ自身がリコーダーソロを受け持つヴィヴァルディのリコーダー協奏曲。この曲も初めて聴きます。アントニーニは指揮台の横のソロが立つ席にリコーダーを持って立ち、すっと首を振って演奏に入ります。かなり小さなリコーダーですので、ソプラノあるいはソプラニーノでしょう。冒頭からリコーダーソロが大活躍。この曲は晴朗快活なアレグロ、リコーダーの哀愁漂うメロディーが印象的なラルゴ、アントニーニの指づかいの限界まで攻めるフィナーレで10分少しの小曲ですが、マンドリン同様、ソロの超絶技巧で聴かせる曲。関心はオケよりもソロに集まります。アントニーニはリコーダーソロで指が追いつかなくなる寸前まで攻めまくり(笑) こう来るとは思いませんでした。

そしてようやく最後のハイドンです。リコーダー協奏曲の演奏が終わるとステージ中央に置かれたチェンバロがステージ脇に移動され、オケも人数が増え、ようやくティンパニやグランカッサ、シンバルの出番です。アントニーニの進行中の交響曲全集の録音ではこれまでパリセット以降の曲の収録には至っておりませんので、ハイドンの大曲においてアントニーニがどのような演奏をするかを初めて聴くことになります。もちろん脳裏には数日前に聴いた、キレキレの「無人島」序曲とベートーヴェンの交響曲2番の余韻が残っておりますので、ようやくこの日のメインディッシュに至り、聴覚に全神経を集中させて聴き始めました。

ぐっと腰をかがめて入るかと思いきや、1楽章は意外に抑えた入り。序奏のコントラストをくっきりとつけて来るかと思いきや、それほどでもなく、金管を唸らせてくるかと思いきやこちらもそれほどでもなく、均衡を保ち、ティンパニも時折り皮を破らんばかりに強打する岡田さんも、そこまで力を入れない感じ。これは後半にクライマックスを持ってくる計算が働いているのではと察します。続く軍隊の行進場面のアレグレットでも、同様。もちろんアントニーニ風にくっきりとした表情と前衛的な雰囲気を漂わせるのですが、現代オケでは音量を上げて迫力で聴かせる終盤の盛り上がりも明らかにフルスロットル寸前で抑えているよう。パーカッション陣の表情を見ていてもそのことがわかります。
アントニーニの動きに少々変化が見られたのがメヌエットから。明らかに少しコントラストを上げ、オケに対する指示も綿密になってきます。ハイドンの真髄はメヌエットにありとの確信があるよう。挟まれるトリオとの表情のコントラスト、低音弦のゴリっとした感触もはっきりしてきました。
そして、やはりフィナーレに入るアントニーニ、腰が落ちてきました! しかも弱音部をかなり音量を落としてコントラストを最大限に高めようという意図も汲み取れ、オケを煽り始めます。きましたきました! ハイドンの書いた当時は最前線を行っていた音楽を現代の最前線に持ってくるように、オケを煽りまくるアントニーニ。読響の方もアントニーニのギアチェンジに鋭敏に反応してテンションを高めます。この終楽章に明確にポイントを置いたアントニーニの戦略に会場のお客さんも身を乗り出して聴き入ります。そして最後のクライマクッスへ向けて集中。ティンパニ、シンバル、グランカッサ奏者も先ほどまでと力の入り方が違い最後は風圧を感じさせて締めます。

やはりアントニーニが振ると読響の響きが引き締まります、ヴァイオリンのソロの場面の多いプログラムでしたので、古楽にも通じる音色を持つ日下さんが合っていましたね。そしてハイドンはやはりアントニーニの才能を感じさせる素晴らしいものでした。惜しむらくは席が遠かったのとホールの容積がこの規模のオケには大きすぎたのか、飽和感を感じさせるまでに至らなかったことでしょうか。響きの印象はサントリーホールとは大きく異なりました。今回、アントニーニ自身も読響に対していい印象を持ったことでしょうから、この先も客演の機会はあろうかと思います。その際には是非、サントリーホールでの演奏を期待したいと思います。



(参考アルバム)




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tag : ヴィヴァルディ バッハ 軍隊

アントニーニ/ムローヴァ/読響によるハイドン・ベートーヴェン(サントリーホール)

昨日10月16日は楽しみにしていたコンサートへ。

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読売日本交響楽団:第616回名曲シリーズ

ハイドンが好きな方ならよくご存知の鬼才、現在ハイドンの交響曲全集の録音に取り組んでいるジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)が読響に客演するということでチケットを取ったんですが、プログラムがまた絶妙。

ハイドン:歌劇「無人島」序曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲
ベートーヴェン:交響曲2番

ハイドンは序曲1曲だけですが、中でも劇的な展開で知られる「無人島」序曲。それにヴィクトリア・ムローヴァを迎えてのベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲に、おそらく火の玉のように燃え上がるであろうことが容易に想像できる交響曲2番。プログラムを見ただけでも過呼吸でした(笑)

アントニーニが取り組むハイドンの交響曲全集については、これまで逐一取り上げています。

2018/07/07 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第6巻(ハイドン)
2017/11/22 : ハイドン–交響曲 : 【新着】ジョヴァンニ・アントニーニの交響曲全集第5巻(ハイドン)
2017/04/18 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第4巻(ハイドン)
2016/10/09 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第3巻(ハイドン)
2015/06/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第2巻(ハイドン)
2014/11/08 : ハイドン–交響曲 : 【新着】イル・ジャルディーノ・アルモニコの交響曲全集第1巻(ハイドン)

リリース当初はちょっと力みも感じる演奏だったんですが、巻を重ねるごとに演奏の完成度も高まり、ここ数巻は非の打ち所のない仕上がりになっています。少し前に全集を目指して進行中だったトーマス・ファイも素晴らしかったんですが、即興性を重んじることで曲ごとにけっこうムラがあったのに対し、アントニーニは自分の理想の響きにきちんと磨き込んでくる完成度の高さがあります。今回は主兵ではない読響の客演で、どこまでアントニーニ流の響きの完成度に近づくことができるかが聴きどころと睨んでおりましたが、結論から言うと、読響がまるでバーゼル室内管になったような完成度に仕上がっていました!

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さて、いつものように嫁さんと待ち合わせて、開場時間にサントリーホールへ入ります。直前まで仕事に追われてドタバタでしたので、まずはいつものように適量のワインとビールで大脳皮質と聴覚神経を覚醒させます(笑)

この日の席はRAの前から2列目。もちろん指揮者の指示をくまなく把握しようと言うことで取った席です。アントニーニが読響初登場ということで、読響の方にもかなりの緊張感があったものと想像されます。お客さんもほぼ満席ということで注目度も十分。集客にはアントニーニもさることながらムローヴァ目当てのお客さんも少なくなかったことでしょう。この日は客演で日下紗矢子がコンサートミストレスでした。

チューニングを終え、アントニーニが登場。写真ではちょいワルおやじ風というかやさぐれおやじ風な風貌ですが、銀縁の眼鏡をかけて颯爽と登場する姿はむしろ知的な感じ。第一印象は事前の想像とはちょっと違いました。ホールが静まると、ぐっと腰を落としてかなり低い姿勢からタクトなして両手を対称に静かに振り上げ、最初の短調の「無人島」序曲の序奏に入ります。いきなりかなり引き締まった響きにただならぬ緊張感が宿り、弱音が続くなか、期待通りアントニーニのコントロールが隅々にまで行き渡ったタイトな響きに包まれます。主題に入ると予想通り爆発! かなり頻繁に腰を落として低い姿勢から伸び上がるようにオケに強奏を要求するアントニーニのアグレッシブな指揮にオケも完璧に追随してまさに鬼気迫る演奏。オケに粗はなく、読響の緊張感もひしひしと伝わります。鋭角的なアクセントや鋭い音量変化、フレーズごとに完璧に表情を変えながら劇的に展開する絶妙なコントロール。会場のお客さんもアントニーニの挨拶がわりの完璧なハイドンに仰け反らんばかり。いやいや素晴らしい。想像以上のオケの統率力を見せつけられ、こちらも仰け反りました。出会い頭にアントニオ猪木のビンタを食らったような衝撃。この曲は既発売の全集の3巻に収録されていますので帰ってから聴き直してみましたが、ライブの迫力が加わり完全に実演に軍配です。もちろん会場からは痛快すぎる見事なハイドンの序曲に拍手喝采。アントニーニも読響が意図通りに響き満足そう。何度かのカーテンコールで一旦静まり、続いてはベートーヴェン。

オケの編成が少し変わって、アントニーニとムローヴァが並んで登場。ムローヴァ、アントニーニよりも背が高く来年60歳とは思えぬすらりとした立ち姿にうっとり。再びアントニーニがぐっと沈んで、ハイドンとは異なる長い序奏にくっきりと陰影をつけながらノンヴィブラートのオケで描いていきます。先ほどのハイドンが集中度100だったとすると、こちらは80くらい。アントニーニの方はハイドンで短距離を全力疾走したので、ここは少し気合いを緩めてソロとの掛け合いを楽しむといった趣向でしょう。というかハイドンでの集中力が尋常ではなかったということでしょう。ムローヴァのヴァイオリンはいくつかの録音でかなりさっぱりしたものだという感触を持っていたので、その先入観のせいか、意外に豊穣に聴こえました。特に伸びやかな高音域が印象的。アントニーニの先鋭的な響きと伸びやかで屈託のないムローヴァの掛け合いはそれなりに面白い組み合わせ。お互いに自己主張をぶつけ合いながらも音楽としてはまとまっていました。2楽章のラルゲットでは弱音部とハーモニーの美しさをさらりと垣間見せ、フィナーレではオケが気持ちよく吹き上がるところを生かした見事なコントロール。ムローヴァの張り詰めた弓さばきもあって、お客さんも拍手喝采。アントニーニもムローヴァもニコやかに拍手に応じていました。アンコールはバッハのパルティータ第2番からサラバンド。さらりとしたサラバンドで虚飾を廃した純粋無垢、無色透明のような演奏。これはムローヴァならではですね。もちろんお客さんは大喜びでした。

休憩後はベートーヴェンの2番。おそらくアントニーニの演奏スタイルに最も合うのが2番でしょう。これがすごかった。才気爆発のキレキレの演奏。1曲目のハイドン以上に表情の変化の幅を大きくとり、時折り楔を打つような鋭角的なアクセントを織り交ぜながらも、曲の流れをバランスよく保ちます。読響も万全の体制でアントニーニの指示に的確に応える熱演。火の玉のように燃えたぎるとはクライバーのような演奏ですがアントニーニの演奏は目にもとまらぬ速さで快刀を振り回しながらデフォルメの効いたアーティスティックな彫像を彫り出していく感じ。しかも前のめりにオケを煽る面白さに満ちていて、目で聴くという意味でも実に面白い。独特の腰をかがめて沈み込むユニークな動きに合わせてオケも沈み込んだかと思うと炸裂し、速いパッセージのキレ味も抜群。1楽章は痛快の極み。お客さんも圧倒されっぱなしな感じ。この曲はハイドンの交響曲と近い構成のため、緩徐楽章にコンパクトなメヌエット、終楽章と続きますが、聴かせどころはハイドンの録音で心得ている感じ。曲の作りがハイドンでは構成の面白さに行き、ベートーヴェンではより力感を重視している感じで、アントニーニもそれを踏まえてしっかりとスロットルをコントロールしてオケを吹きあがらせます。メヌエットの諧謔性と、フィナーレの炸裂感はアントニーニの類い稀な才能があってこそと唸らされました。読響も熱演で、オケの仕上がりは以前ファビオ・ルイージとの共演時以上の素晴らしさ。終演後の満足気なアントニーニの表情を見ると、まんざらでもないとの印象を持ったと思います。

ということで、ハイドンの演奏ではおなじみのジョヴァンニ・アントニーニによる、ハイドンとベートーヴェンは期待を大きく上回る素晴らしい演奏でした。やはりオーケストラコントロール能力は図抜けたものがあります。ハイドンの交響曲全集についてもまだまだ先が長いですが録音が完結することを祈りたいと思います。

週末に同じくアントニーニが読響を振るヴィヴァルディとハイドンのプログラムもチケットを取ってあり、こちらも今から楽しみですね。



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tag : オペラ序曲 ベートーヴェン

ウィーン・ニコライ弦楽四重奏団の皇帝など(日経ホール)

なんだか、記事を書き終わらぬうちにコンサートの予定になっちゃってます。コンサートでもらったチラシから気になるコンサートに出かけています。

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日経イベントガイド:第477回日経ミューズサロン

10月10日に日経ホールで行われたコンサート。ウィーン・ニコライ弦楽四重奏団(Wien Nicolai Quartett)によるハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を並べたプログラム。ウィーン・ニコライ弦楽四重奏団とは聴きなれない名前でしたが、メンバーはウィーンフィルのメンバーで、もらったチラシには『ウィーンフィルの創始者「オットー・ニコライ」の名を冠する』とあり、至極由緒正しい感じがして、しかも今回の来日が日本のデビューコンサートということで、それならば聴いてみようということでチケットを取った次第。

しかもプログラムは下記の通り、有名曲ばかりを組み合わせた、かなり集客を意識した構成。

ハイドン:弦楽四重奏曲Op.76 No.3「皇帝」
モーツァルト:弦楽四重奏曲14番K.387「春」
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲7番Op.59-1「ラズモフスキー1番」

日本で絶大な人気を誇るウィーンフィルのメンバーがこれらの曲を弾くということで、客層の裾野はかなり広がるでしょう。メンバーは下記の通り。

第1ヴァイオリン:ヴィルフリート・和樹・ヘーデンボルク(Wilfried Kazuki Hedenborg)
第2ヴァイオリンベンジャミン・モリソン(Benjamin Morrison)
ヴィオラ:ゲルハルト・マルシュナー(Gerhard Marschner)
チェロ:ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク(Bernhard Naoki Hedenborg)

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日経ホールは読響以来2度目です。この日の席はやや右後方。規模は室内楽にはぴったりですが、多目的ホールなため弦楽四重奏には少々デッドで響きが痩せて聞こえるのではとの危惧がありましたが、だいたい予想通り。お客さんの入りはほぼ満員で、さすがにウィーンフィルというブランドが効いていると納得ですね。

1曲目の皇帝は、予想通りオーソドックスな演奏。1曲目ということでちょっと硬さも感じさせ、特に第1ヴァイオリンの音程が少し落ち着かない感じでした。響きがデッドなため、このあたりの粗が少し目立った感じ。ただし、1楽章で目立った粗も徐々に収まり、2楽章ではアンサンブルがかみ合ってきて、特に弱音のバランスの良さを感じさせるようになります。美しいメロディーを聴かせるところは流石にウィーンフィルということで味わい深い響きを作り出します。ヴィオラやチェロは盤石の安定感。メヌエットではこちらの耳がホールの響きに慣れてきたのか、デッドな響きがかえって心地よく感じられてくるのが不思議なところ。各パートの見通しが良くメロディーの受け渡しとリズムが鮮明に聞き取れるからでしょう。そして終楽章は複雑にメロディーが絡み合いながらまとまっていくところが聴きどころですが、弾き慣れているからでしょう、音楽が収束に向かうのを安心して聴いていられます。ということで、1曲目のハイドンはアイドリング的な感じがなくもありませんでした。

続くモーツァルトは、1曲目でアイドリングが済んだのか、冒頭から緊張感あふれる素晴らしい出来でした。ハイドンではどこか流れに淀みがあったように感じていたのが、モーツァルトでは実に楽しげにリラックスして4人のボウイングが揃って響きの統一感も上がった感じ。何よりのびのびとしてメロディーが心地よく流れ、アゴーギクもより自然に感じられました。この曲はモーツァルトがハイドンのロシア四重奏曲に深く感銘を受け、ハイドンに献呈したハイドンセットの6曲の最初の曲。作曲は1782年ということで、1曲目のハイドンの皇帝の1797年よりも15年も前に書いたことになります。こうして並べて聴くと流石にメロディーラインの美しさはモーツァルトならでは。ハイドンが構成の面白さに聴きどころを設けていたのに対し、モーツァルトはメロディーの流麗な美しさと、パートの絡み合いの面白さにこだわっていたことがよくわかります。天真爛漫にさえずるような音楽を聴いて、ハイドンがモーツァルトの才能を見抜いた時の様子を想像しながら楽しみました。特に3楽章のアンダンテ・カンタービレのジワリと染み透るような美しさ、終楽章のフーガの幽玄な感じは見事でした。

休憩を挟んで最後の曲はベートーヴェンのラズモフスキー1番。何度も書いていますが、ベートーヴェンのクァルテットは苦手分野の一つ。この曲の刷り込みは同じくウィーンフィルのウェルナー・ヒンク率いるウィーン弦楽四重奏団のもの。なんとなくウィーン風にまとめられたこのアルバムの演奏と比べて聴いてしまっていましたが、同じウィーンフィル母体のクァルテットながら、このウィーン・ニコライの方は、それと比べるとだいぶストイックに聴こえました。あえて流れの連続性を分断してキレ味を追求するような姿勢の演奏。ベートーヴェンを聴き慣れた人の耳にどう聴こえたかはわかりませんが、私には少し力入りすぎに聴こえました。まあ、ハイドンやモーツァルトはともかくベートーヴェンの感想はおまけ程度にご理解ください。この日のお客さんは迫真の力演に盛大な拍手で讃えていました。

そしてアンコールにはラズモフスキー3番のメヌエット。アンコール演奏前のアナウンスでラズモフスキーの3曲を録音して発売予定であることが告げられていましたので、番宣ならぬ盤宣という意味もあったのでしょう。

このコンサート、お手並み拝見的な気分でもありましたが、良い意味でも悪い意味でもウィーンフィルブランドに印象を引っ張られたような気がしました。ウェルナー・ヒンクやライナー・キュッヒル率いるウィーンフィル出身者のクァルテットが、ある意味ウィーン風の伝統の中で演奏してきたのに対し、このクァルテットもその期待を背負ってのスタートとなるわけです。伝統的な看板を背負ってこれからどのようにやっていくのか気になるところですね。もちろん、ハイドンの本格的な録音への期待も込めて見守りたいと思います。



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ユベール・スダーン/東響の軍隊、田園など(サントリーホール)

金曜に続き、土曜もコンサートに出かけました。土曜日はサントリーホールです。

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東京交響楽団:第663回定期演奏会

チケットを取ったコンサートはユベール・スダーン指揮の東京交響楽団のコンサート。プログラムは下記の通りです。

ハイドン:交響曲 第100番「軍隊」
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番 (K.218)
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

もちろん、プログラムにハイドンが含まれるからに他なりませんが、それだけではありません。実はユベール・スダーンのハイドンは、スダーンがジョナサン・ノットに音楽監督を譲る直前、2014年3月のオールハイドンプログラムを聴いて以来で、しかもそのコンサートが私が東響を初めて聴いたコンサート。その時ももちろんハイドン目当てだったんですが、今回は前回のハイドンのコンサートから久々のスダーンのハイドンを聴きたくてチケットを取った次第。

2014/03/22 : コンサートレポート : ユベール・スダーン/東京交響楽団のオール・ハイドン・プログラム(東京オペラシティ)

今回はハイドンは1曲だけですが、モーツァルテウムの首席指揮者を務めた人だけに、モーツァルトも悪かろうはずもなく、そしてベートーヴェンの田園と親しみやすい古典の名曲が並ぶプログラムということで、楽しみにしていたコンサートです。

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この日は土曜のコンサートということで、いつもより少し早めにサントリーホールに着いたので、サントリーホールの脇の階段を登ってちょうどホールの上にあたるアークガーデンを散策。巨大オフィスビルコンプレックスの庭園にしては、立ち入る人が少ないようで、手入れもさほどされておらず、いい意味で野趣あふれる感じ(笑)

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近所にお住まいの方の犬の散歩コースくらいの感じですね。普段足を踏み入れないところを歩くと世界が広がります(笑)

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うだうだしているうちに開場時刻になりホールに入ります。

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もちろん、散歩で喉が渇いたので、いつものようにビールとワインで喉を潤し、コンサートに臨む準備完了。

さて、この日の席は初めてのP席。P席とはオケの背後の第9だったら合唱団が座る席。オケを背後から眺めるんですが、指揮者の指示は克明にわかります。お客さんの入りは流石に元東響の音楽監督の指揮で有名曲ということでほぼ満員。ジョナサン・ノットの振る時よりもお客さんの年齢層はかなり高めのようですね。

期待の1曲めの軍隊ですが、ほぼ予想通り、非常にオーソドックスな演奏。軍隊の生はヤンソンスとバイエルン放送響を聴いていますが、ヤンソンスらしく非常に丁寧に仕上げられた華麗な盛り上がりと高揚感に満ちた演奏でした。スダーンのコントロールはそれよりだいぶ古典的。楽章ごとの起承転結の面白さに焦点を当て、2楽章と終楽章で大活躍するティンパニがバロックティンパニでしかも節度をわきまえた盛り上がりにコントロールされていたのに加えて、オケも節度を保ったバランスの良い演奏。実にノーブルなハイドンという演奏でした。印象的だったのが東響の奏者の上手さ。特に木管陣は惚れ惚れするような美しい響き。スダーンのコントロールが行き渡って、奏者も見事にそれに応える阿吽の呼吸を味わえました。

2曲めはモーツァルトのヴァイオリン協奏曲4番。ヴァイオリンソロは堀米ゆず子で私は生では初めて聴きます。ハイドンも良かったんですが、このモーツァルトがさらに良かった。流石にモーツァルテウムを率いてきた人だけに音楽に華があり、実に軽やか且つ典雅な演奏。堀米ゆず子のヴァイオリンの響きの美しさも最高。モーツァルトは流石に自家薬籠中の物と言っていいでしょう。前日に聴いたホーネックのモーツァルトは弾き振りの堅固な一体感が聴きどころでしたが、この日のコンチェルトはスダーンと堀米ゆず子の仲睦まじい掛け合いの妙と、モーツァルトらしい華やかさに満ちた音楽の躍動感が聴きどころ。連夜のモーツァルトの名演に心打たれました。もちろんこの日の観客の皆さんもうっとり。万雷の拍手でもてなし、堀米ゆず子さんは何度もステージに呼び戻されますが、アンコールはなし。これも爽やかでいいですね。

前半の素晴らしい演奏にうっとりとしながら休憩時間を過ごしましたが、後半の田園は、それよりさらに凄かった! この日はハイドンを聴きにきたはずなんですが、この田園には圧倒されました。冒頭から非常に研ぎ澄まされた東響の弦楽セクションの奏でる美しいメロディに惹きつけられますが、スダーンのメロディの膨らませ方とフレーズごとのコントラストのつけ方が見事で、実に美しい音楽に聴こえます。それがただ美しいだけではなく、揺るぎない説得力を徐々に帯びてきて、だんだん鬼気迫るような迫力まで帯びてくるではありませんか。どの音もどの瞬間もどれを変えても音楽が崩れてしまうほどの完成度。先ほどモーツァルトで自家薬籠中と言いましたが、この田園はスダーン渾身の完成度。楽章が進むにつれて、どんどんしなやかに迫力を増し、もはや圧倒的な支配力で、素晴らしく自然な、しかも並みの指揮者には到達できないような三昧の境地に入って、こちらはただただ音楽に打たれるだけ。4楽章の嵐のあとの5楽章の牧歌の研ぎ澄まされた美しさ、さらにフィナーレに向かうクライマックスのノーブルな仕上げ。古楽器やらノンヴィブラートやらなどの演奏スタイルの議論などを吹き飛ばすようなオーソドックスに磨かれた音楽の持つ説得力の素晴らしさに打たれました。もちろんこの日の観客はこの素晴らしい田園に拍手喝采。いやいや本当に連日の名演にクラクラです(笑)

この素晴らしい演奏には長年音楽監督としてオケを育ててきたスダーンと東響の信頼関係、そしてユベール・スダーンという人の音楽への理解の深さが滲み出ていたのだろうと想像しています。

結果として、ハイドンの演奏も素晴らしかったものの、この日の軍隊はやはり前座でしたね。この日のメインディッシュはベートーヴェン。この田園は私の心に深く刻まれました。時代の先端をゆくヤルヴィのベートーヴェンも、ラトルのベートーヴェンもいいですが、私はこのスダーンの流行とは関係なく揺るぎない古典的美しさを帯びたベートーヴェンが最も好きですね。

ユベール・スダーン、また聴きに行きます!



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tag : 軍隊 モーツァルト ベートーヴェン

ホーネック/紀尾井ホール室内管のハフナー・セレナーデなど(紀尾井ホール)

昨日9月21日金曜日はチケットを取ってあったコンサートへ。

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紀尾井ホール:紀尾井ホール室内管弦楽団 第113回定期演奏会

今年の6月に初めて聴いたライナー・ホーネックと紀尾井ホール室内管弦楽団のコンサート。この時はハイドンの受難がプログラムに入っていたのでハイドン目当てで行きましたが、意外にもショスタコーヴィチのピアノ協奏曲が精緻な熱演、そしてベートーヴェンの田園は流石にウィーンフィルのコンサートマスターが振るだけあって実に自然なアーティキュレーションが素晴らしい演奏。正直ハイドンは前座という位置付けでした。

2018/06/19 : コンサートレポート : ホーネック/紀尾井ホール室内管の受難など(紀尾井ホール)

そのホーネックなら、モーツァルトはさらに素晴らしかろうということでチケットを取った次第。その読みは期待を大きく上回って当たりました! この日のプログラムとソリストは次の通り。

モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲(KV364)
モーツァルト:ハフナー・セレナーデ(KV250)

指揮・ヴァイオリン:ライナー・ホーネック(Rainer Honeck),
ヴィオラ:今井信子
紀尾井ホール室内管弦楽団

モーツァルトの曲の中でもこの協奏交響曲は特に好きな曲なので楽しみにしていました。

この日はあいにくの大雨。開場前はホールの外で待たなくてはならないので、ギリギリに到着して、まずは2階のカフェでビールとワインで景気づけ。

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冷えたグラスにプレミアムモルツと、赤ワインは常温と冷えたものが選べるなど酒飲みの好みを心得たサービスが心地よいですね。

この日の席はオケの右手2階。オケを右上から見下ろす席。客席には所々空席がありますが、チケットは売り切れていましたので、ほぼ満員。お客さんもホーネックのモーツァルトには期待しているのでしょう。

定刻になり、オケのメンバーが席につき、チューニングが終わると、ヴァイオリンを持ったライナー・ホーネックとヴィオラを持った今井信子が登場。客席に挨拶して、ホーネックがオケの方に振り向いて軽く合図すると、聴きなれたこの曲の序奏が始まります。前回のコンサートでは明らかにオケが寝起きが悪かったんですが、この日は最初から冴えていました。この曲の刷り込みはクレーメル、カシュカシアンがソロを務めるアーノンクール盤。オケはウィーンフィル。鋭利なクレーメルのヴァイオリンと外連味たっぷりのアーノンクールによるギャラントな演奏が印象に残っています。前回のコンサートでのハイドンやベートーヴェンの演奏から、ホーネックはオーソドックスな演奏で来るだろうと想像していましたが、それはこちらの読み違いでした。もちろんオーソドックスなスタイルに違いありませんが、まずはヴァイオリンのキレ方が凄まじい。テンポがキレているというか、弓の運びが曲のテンポの先を行きオケを類まれなリーダーシップで先導します。クレーメルが現代性を感じさせる鋭利なアーティキュレーションで圧倒するのに対し、ホーネックはモーツァルトの曲に内在する音楽のエネルギーを引き出すようにくっきりとメリハリをつけ、音量、テンポ、音色と全ての次元でハッキリとしたコントラストをつけて彫りの深い曲に仕立てていきます。あまりに見事なホーネックのヴァイオリンソロに釘付け。そしてそのソロが今井信子のヴィオラとオケを、タクトではなく音でコントロールしてき、類まれな一体感を感じさせるまとまり。ハッキリ言ってクレーメル盤の演奏の上を行く感じ。そしてヴァイオリンのキレもクレーメルより上と感じました。また、ホーネックが大柄な体を揺らしながら正確無比のボウイングで演奏する姿は視覚にも訴え、マゼールの指揮をみるのと同じような刺激に満ちたもの。ホーネックのヴァイオリンがここまでキレているとは思いませんでした。さざめくような序奏から愉悦感と推進力に満ちた展開が魅力の1楽章は、ホーネックのヴァイオリンの妙技と、類まれなコントロールを得て、緊張感に満ちたオーケストラが素晴らしい。
続く2楽章は、情感に流されず音楽の緊張感を保ったまま美しいメロディーをくっきりと浮かび上がらせるこれまた妙技の連続。特に弱音のコントロール、ホーネックのヴァイオリンソロが絶品。そして3楽章も同様。ハイドンの協奏曲の終楽章も手の込んだものですが、モーツァルトのメロディーのひらめきは流石なところ。構成はハイドンの方が面白さを味わいやすいですね。モーツァルトはメロディーの美しさをこれでもかと言わんばかりに技巧を凝らしして展開するところがハイドンファンとしてはちょっとくどく感じてしまいます(笑) 演奏の方はもちろん見事に曲を閉じて拍手喝采。いやいやこれは素晴らしい!

あまりに見事な協奏交響曲の余韻が残る中、休憩をはさんで、今度はハフナー・セレナーデ。ホーネックはヴァイオリンを持って登場。この曲でもヴァイオリンソロはホーネック。全8楽章の長い曲ですが、協奏交響曲以上にオケの集中度が上がって、いわゆるゾーンに入る至福の演奏。1楽章はホーネックは座ってコンマス役だったが、2楽章からは立ち上がってソロを担当。ヴァイオリンソロは協奏交響曲以上に絶品。2楽章の美しいカンタービレ、4楽章のさざめくような音階の繰り返しに多彩な表情をつける見事な手腕と圧倒的なテクニックに酔いしれました。曲中3つのメヌエットが挟まり、ハイドンのディヴェルティメントと同様の構成ながら展開の精緻さはハイドンとは桁違いに緻密。ハイドンの才能にも普段驚きっぱなしですが、モーツァルトの天才に改めて驚く瞬間多数。至福の時間とはこのことでしょう。紀尾井室内管のメンバーもホーネックにコントロールされて異次元の出来。いやいや素晴らしい演奏でした。

もちろんほぼ満員の客席はこの素晴らしいコンサートに万雷の拍手で応じていました。何回かのカーテンコールの後、アンコールはモーツァルトのマーチ(K.249)。コミカルな曲想にオケも少しリラックスして楽しげに演奏。オケを讃えるためか、ホーネックは最後の音が終わる前に下手に下がり、舞台上にはオケのみとなり、再び万雷の拍手に包まれました。ホーネックもオケのメンバーも笑顔で拍手に応えていて、この日の充実した演奏に満足していたのでしょう。

今まで聴いたモーツァルトでは最も心に残るコンサート。この先にもモーツァルトのプログラムが用意されているようですので、もう一度ホーネックの素晴らしいヴァイオリンを聴いてみたいと思います。



コンサート後、外に出ると雨はほとんど上がっていました。赤坂見附方面に歩いて帰り、駅の横の牛タンねぎしで夕食をいただいてコンサートの余韻を楽しみました。

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牛タンねぎしに入るのは20年ぶりくらいでしょうか(汗)

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お店は綺麗に改装されていてなかないい感じでした。さて、本日もコンサート。ユベール・スダーンの軍隊をサントリーホールに聴きに行ってきます。



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tag : モーツァルト

トン・コープマン/アムステルダム・バロック管のロ短調ミサ(すみだトリフォニーホール)

9月8日土曜はチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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トン・コープマンプロジェクト2018

いつものようにコンサートでもたったチラシから選んだもの。トン・コープマンが手兵、アムステルダム・バロック管弦楽団と来日して、しかも曲目は好きなバッハのロ短調ミサということで迷わずチケットを取ったもの。

コープマンの素晴らしさを知ったのはモーツァルトのK.136を聴いてから。他の演奏とはレベルの異なるしなやかさと高揚感。この特徴はモーツァルトに合うようで、そのリリースされているモーツァルトの交響曲を色々手に入れて楽しみましたが、最も感銘を受けたのは交響曲23番。当時の古楽器の繊細さと精緻な響きのトレンドとは逆に流麗豊穣かつ湧き上がるような躍動感に満ちた素晴らしい演奏。

もちろんコープマンはハイドンの協奏曲や交響曲を多数録音しているので、レビューでも何度か取り上げています。

2017/09/03 : ハイドン–室内楽曲 : トン・コープマンのクラヴィーア四重奏曲集(ハイドン)
2011/01/14 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】コープマン3度目のオルガン協奏曲
2010/09/23 : ハイドン–交響曲 : 新着! コープマンの97、98番

ハイドンの録音はコープマンがハープシコードやオルガンの独奏者を務める室内楽や協奏曲は素晴らしいものばかり。一方交響曲も初期の1枚、パリセットから1枚、ザロモンセットからから1枚リリースされていますが、コープマンらしい流麗な演奏であるものの、それほど印象的な演奏ではありません。それぞれシリーズ化されそうな体裁ながら1枚で終わっているのもそうしたことに起因しているかもしれませんね。

生では、オルガンのソロコンサートを一昨年に聴いています。

2016/06/23 : コンサートレポート : トン・コープマン オルガン・リサイタル(ミューザ川崎)

前置きが長くなりましたが、この日のコンサートはオルガンの独奏曲1曲とロ短調ミサ。

J.S.バッハ:「小フーガ」 ト短調(BWV578)
J.S.バッハ:ミサ曲 ロ短調(BWV232)

指揮・オルガン:トン・コープマン(Ton Koopmam)
ソプラノ:マルタ・ボス(Martha Bosch)
カウンターテナー:マルテン・エンゲルチェズ(Maarten Enngeltjes)
テナー:ティルマン・リヒディ(Tilman Lichdi)
バス:クラウス・メルテンス(Klaus Mertens)
アムステルダム・バロック合唱団(Amsterdam Baroque Choir)
アムステルダム・バロック管弦楽団(Amsterdam Baroque Orchestra)

土曜のコンサートということで、いつも通り開場時間前にホールに着くと、ホールの前の暗い廊下に行列ができています。開演時間前の気分は意外と重要で、サントリーホールやオペラシティの前は明るい広場になっていて待つ間も閉塞感はありませんが、ここは開演前に並ぶのは苦痛ですね。ホールの内部も含めてホールの収容人数にしては空間が狭く、設計者がコンサートを楽しむ人ではなかったのだろうと想像しています。

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列にしばらく並んでゾロゾロと入場したので、まずは喉を潤しにロビーの上の階にある北斎カフェに直行(笑)

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ビールにワインにサンドウィッチを頼んで一休み。ビールは冷えた陶製のビアグラスが添えられていて、これはグーです。ワインも軽めながら風味豊かでこちらもグー。そしてサンドウィッチは北斎の浮世絵をあしらったもので、またまたグー。カフェのサービスはいいですね。

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狭いながらも、カフェスペースは明るい吹き抜けがいい感じです。

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この日の席は3階席。ホワイエの階段を一番上の階まで昇って席に向かいます。

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席からの眺めはこんな感じ。かなり個性的なホールの形状が良くわかります。お客さんの入りはほぼ満員と流石の集客力。

開演時刻となり、場内の照明が落ちたと思うと、ステージ上のオルガンの脇からコープマンが登場。観客に会釈してオルガンの前に座ると、1曲めの小フーガが始まります。誰でもが知っている聴き慣れたメロディーが重厚なオルガンの響きでホールを揺るがします。コープマンのオルガンは一昨年ミューザで聴いていますが、構えるところなくグイグイ弾き散らかしていくがごとき勢いが魅力なんでしょう。この日の演奏も指が回りきっていないところなど構いもせず勢いを落とさず轟音を轟かせていきます。わずか数分の演奏で、大曲ロ短調ミサの前にこの曲を演奏しなくてもいいとは思いますが、コープマン自身が演奏することが楽しいのでしょう。演奏が終わって拍手に包まれると、いつものように満面の笑顔で観客の拍手に応えていました。

コープマンがオルガンの前から退場して、しばらくすると、今度はステージ上にオーケストラが静かに入場。入念なチューニングを終えると今度はコーラスが入場。最後に歌手とコープマンが登壇すると、すぐにコープマンがマイクを持ち、直前に起こった台風と地震の犠牲者に対する追悼を述べ、そして、この翌日に予定されていた札幌のコンサートも中止となり、この日がジャパンツアー最後の公演となることを告げると、なんとなく、非常に貴重な公演だと思える雰囲気に包まれました。
ロ短調ミサが始まると、まずはコーラスの澄んだ響きと、コープマンらしい柔らかでしなやかなオケの響きに惹きつけられます。オケから遠い席だったので渾然一体となった響きをまるでアルバムを楽しむように聴けた感じ。オケの各パートは完全にコープマン風にふくよかで自然なフレージングにコントロールされ、スタティックなところは皆無。しなやかに盛り上がり、時に推進力、時に愉悦感に満ちながらじっくりと進めていくような演奏。歌手も声量、響きの艶やかさが揃った人選で流石と思わせるものでしたが特に素晴らしかったのがソプラノのマルタ・ボスが膨よかで美しい響きが最高。アルト役はカウンターテナーでこちらも味わい深い声。ロ短調ミサはそれこそ何度も演奏しているのでしょう、それぞれの曲の表情が揺るぎない説得力をもち、まるで千枚目の写経を無心でこなすような迷いのない演奏。コープマンの弾力ある動きにオケもそれこそいつものように反応。バロックトランペットやティンパニ、木管群などは素晴らしい安定感で燻らしたような深い響きを形作っていきます。また唯一ホルンが登場し超絶技巧を披露するQuoniamでは、時折音が外れるもののナチュラルホルンを見事に吹きこなしてホルンには厳しい音階を滑らかにこなすなどなかなかの腕前。この曲は何度かコンサートで聴いていますが、普通は第1部の終わりで休憩に入るところ、この日は第2部の終わりと曲の大部分を終えたところで休憩。第1部の終わりではかなりフライング気味に拍手とブラヴォーが飛んで、雰囲気を削いでしまいました。休憩後の第3部第4部は合わせても20分くらいなので、こちらも集中力十分な体制で聴くことができ、終曲のDona nobis pacemでは雄大で安らかな響きに包まれる素晴らしい瞬間を味わいました。最後はコープマンが腕を下ろすまで静寂が保たれ、すぐに万雷の拍手に包まれ、観客の拍手に何度も嬉ししそうにお辞儀をするコープマンの姿が印象的でした。

期待通り、コープマンのロ短調ミサは素晴らしかったですね。コンサートではラ・フォル・ジュルネでのミシェル・コルボとローザンヌ室内管のニュートラルな演奏も良かったですし、手元に10組ほどあるアルバムの中では古楽器ではブリュッヘン、現代楽器ではジュリーニが好きな演奏なんですが、このコープマンのコープマンにしかできないしなやかな喜びの表現も捨てがたい魅力があります。コープマンのERATO盤持ってないので、手に入れなくてはなりませんね。ただERATO盤も20年以上前のものゆえ、そろそろ新録音が出てもおかしくないですね。



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tag : バッハ すみだトリフォニーホール

ピエール=アンドレ・ヴァラド/東響の「プリ・スロン・プリ」(サントリーホール)

昨日9月1日(土)はチケットをとってあったコンサートへ。

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サントリーホール:サマーフェスティバル2018 野平一郎がひらく 《フランス音楽回顧展Ⅰ・Ⅱ》

いつものようにコンサート会場で配られるチラシを見てチケットをとったもの。普段ハイドンばかり聴いているわけですが、現代音楽は嫌いではなく、、、というより結構好きで、武満、デュティユー、メシアンとアルバムも結構集めたりコンサートにも出かけています。中でも武満と並んでブーレーズは好きな作曲家でたまにアルバムを手に取りハイドン脳の初期化の為に聴いています。ハイドンもアルバムで聴くよりコンサートの方が面白いのは言うまでもありませんが、現代音楽、とりわけブーレーズは多くのパーカッションが散乱するように音を発するため、コンサートで聴くほうが100倍面白いわけです。

2015/07/02 : コンサートレポート : ロト/読響の十字架上のキリストの最後の7つの言葉(サントリーホール)
2013/05/05 : コンサートレポート : 【番外】ラ・フォル・ジュルネで衝撃のブーレーズライヴ

そのことを身をもって体験したのは2013年の・フォル・ジュルネ音楽祭で聴いたアンサンブル・アンテルコンタンポランのコンサート。特にシュル・アンシーズ(3台のピアノ、3台のハープ、3台の鍵盤打楽器のための)は圧巻。とてもライヴとは思えぬ超絶的に精緻な演奏に驚いたものです。

と言うことで、ブーレーズの代表作の一つであるプリ・スロン・プリが取り上げられると言うことで迷わずチケットをとった次第。しかもこのプリ・スロン・プリ、日本初演は1993年若杉弘指揮の都響で、それ以来25年ぶりの日本再演と非常に貴重なコンサートとのこと。

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チケットをとったのはブーレーズ目当てでしたが、このコンサートはサントリーホールが主催するサントリーホールサマーフェスティバル2018という一連のコンサートのうちの一つ。このフェスティバル、8月22日から9月1日までの開催で、その3本柱の企画のうちの1つがザ・プロデューサー・シリーズということで、今年はピアニストで作曲家の野平一郎がプロデユーサーとなり、自作オペラとフランス音楽回顧展ということで3つのコンサートをプロデュース。その中の一つで、フェスティバルの最終日のコンサートがこの日のコンサートというわけです。

この日のプログラムは下記の通り。

《フランス音楽回顧展Ⅱ》現代フランス音楽の出発点〜音響の悦楽と孤高の論理〜

ラヴェル(ピエール・ブーレーズ編曲):「口絵」 ※日本初演
フィリップ・ユレル:「トゥール・ア・トゥールⅢ」〜レ・レマナンス〜 ※日本初演
ピエール・ブーレーズ:「プリ・スロン・プリ」〜マラルメの肖像〜

指揮:ピエール=アンドレ・ヴァラド(Pierre-André Valade)
ソプラノ(プリ・スロン・プリ):浜田理恵
管弦楽:東京交響楽団

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指揮のピエール=アンドレ・ヴァラドは全く初めて聴く人です。1959年フランスのリヨンとボルドーのちょうど間にあるコレーズ(Corrèze)の生まれで、現在はコペンハーゲンのアテラス・シンフォニエッタの客演指揮者、リヨンのアンサンブルオルケストラル・コンタンポランの首席客演指揮者で現代音楽の指揮には定評のある人とのこと。
プリ・スロン・プリでソプラノを歌うのは浜田理恵。こちらも初めて聴く人ですが、藝大卒でフランス在住、ヨーロッパを中心に活動する人で、新国立劇場やN響との共演も多いとのこと。
オケは最近ジョナサン・ノットの振るコンサートでおなじみになりつつある東京交響楽団。東響の現代音楽はジョナサン・ノットがアンサンブル・アンテルコンテンポラン出身だけに、悪かろうはずもなく、以前に聴いた細川俊夫の「嘆き」は緊張感に満ちた素晴らしい演奏でした。

ということで、いつも通り開場時間にサントリーホールに駆けつけます。土曜日のコンサートで開演は18時、開場は17時20分ですが、開場時間にはホールの前の広場にお客さんはまばら。ハードなプログラムゆえ満席にはならないだろうと思っていましたが、結果的には入りは3〜4割といったところでしょうか。これまで私が通ったサントリーホールのコンサートでは最もお客さんの入りの悪いコンサートでした。カンブルランと読響のメシアンのアッシジの聖フランチェスコが売り切れていたので現代音楽もまんざらではないと思っていましたが、指揮者の知名度が影響したのでしょうか。

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とりあえず、いつものように駆けつけ一杯で脳神経を鋭敏な状態に覚醒し(笑)、ハードなプログラムに備えます。この日の席は好きなRA席の1列目。大編成のオケのティンパニの真上で、指揮者の指示もオケの奏者の様子も俯瞰できる現代音楽を聴くには絶好の席。特にステージの後ろ半分は多数の打楽器群が並び壮観です。この日のプログラムは難曲続きですので、ステージ上には多数の奏者が上がって楽器の調子を確かめていました。

開演時間になると、団員が登壇。1曲めのラヴェルからフルオーケストラ。ラヴェルの作品ですが、原曲は2台5手という特殊な構成のためのピアノ曲で、それをブーレーズが編曲したもので、この演奏が日本初演。わずか2分の短い曲ですが、ブーレーズらしくラヴェルの音楽の現代性をフルオーケストラに置き換え、音色に関する鋭敏な感覚でまるでブーレーズの曲のように響かせます。あっという間に終わりますが、しっかりと最後に振り切れるあたりの構成も見事。東響の奏者も精緻な演奏で非常に緻密な演奏でした。あっという間のことに観客があっけに取られる感じ。

一部の楽器が入れ替わり、続いてフランスの現代作曲家、フィリップ・ユレルの作品。こちらは20分くらいだったでしょうか。曲も作曲家も全く予備知識なく、プログラムを頼りに聴きましたが、ストイックに前衛がほとばしる一方、金管陣の大音量が続く部分が多く、少し硬直した作風に聞こえました。演奏の方はピエール=アンドレ・ヴァラドがうまく東響の奏者に指示を出す一方、大きな流れよりもディティールを合わせに行く部分に集中している感じで、微視的な印象が強い演奏でした。オケも精度は十分でしたが曲の理解が不十分なこともあり、ちょっと消化不良。

休憩を挟んでいよいよブーレーズ。手元にはブーレーズの振るアンサンブル・アンテルコンタンポランのアルバムがあり、軋むような響きと、宇宙の彼方の星の響きが無作為に飛び交うような空間を意識させる見事な演奏が印象に残っています。

冒頭の楔を打つような響きでハッとさせられたと思うと、全くメロディーにならないような断片をオーケストラの楽器が指揮者の指示で組み立てていくところを視覚的に体験するようで非常に面白い。オケを上から俯瞰しながら、特に打楽器が繰り出す様々な単体の音がきがどのように連携して、響きを形作るのかがよくわかりました。

曲は5部構成で、マラルメの詩を歌うソプラノが絡みますが、プログラムに載せられた詩の意味からブーレーズがどうしてこの響きを想像したのかまるで不可解。ハイドンの時代からは想像だにできない隔たりがありますが、人間の想像力は感情を通り越して、現代芸術の極北に達した感を強く抱いた次第。ただ、その音楽はハイドンの時代と同様、楽譜に落とされ、奏者はその楽譜と指揮者の指示に忠実に従って響きを作って行くところは同じ。違いは感情を音楽にのせることはなく冷徹なまでに部品に徹するように演奏すること。この冷徹なまでに忠実な演奏を汗水たらして熱演するところに聴きどころがあるのも同じなんですね。

ブーレーズの演奏が精緻を極めた作曲家の脳内のイメージの忠実な再現だとすると、この日のピエール=アンドレ・ヴァラドの演奏はブーレーズのイメージのいわば複製画のような印象。複製者の創意が滲み出たものとは違い、筆の勢いが少し落ちてしまった複製のよう。この超緻密かついくつ音符があるのかわからないような超絶的に複雑な曲を、そもそも作曲家のイメージ以上に筋を通した音楽にまとめることはそもそも無謀だと思えるほど。東響のメンバーは技術的にはかなり頑張って演奏していて、生の迫力を存分に味わえましたが、音楽の流れはブーレーズのアルバムと比べて聴いてみるとかなり違う印象を持つのは仕方のないところ。楽器の中ではピアノがリズムをリードするようなキレを感じさせられなかったのが大きかったでしょうか。一方、ソプラノの浜田理恵は声の艶やかさ、星稜ともに素晴らしく場内を圧倒する素晴らしい歌唱でした。

全体は5部に分かれ、最後の第5部の終結の爆音の響きが消え去ると、1時間以上のこの大難曲の熱演に会場からは熱い拍手が送られ、ブラヴォーが飛び交いました。色々書きましたがコンサートとしては大満足。まずはこのフェスティバルを運営するサントリーホールの英断、野平一郎の好企画、この日の演奏者のメンバーの努力を考えると、素晴らしいコンサートだったと言えるでしょう。この曲を生で聴けるのは国内では25年ぶりだと思うと、実に貴重な機会だったわけです。

帰って、コンサートのことを思い出しながら、ブーレーズ盤を聴きつつ記事をまとめる幸せな時間を過ごしました。またハイドン生活に戻ります(笑)

(参考アルバム)
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TOWER RECORDS (Boulez 20th Century) / amazon / amazon(Boulez 20th Century)



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tag : ブーレーズ ラヴェル サントリーホール

ニコラ・アルトシュテット/ハイドン・フィルのオックスフォード、チェロ協奏曲、驚愕(サントリーホール)

6月30日は楽しみにしていたコンサートに行ってきました。

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サントリーホール:ハイドン・フィルハーモニー

その名もハイドン・フィル。耳馴染みがないと思った方は、アダム・フィッシャーが設立したオーストリア・ハンガリー・ハイドン管弦楽団(Austro-Hungarian Haydn Orchestra)が2015年のシーズンからハイドン・フィルハーモニーと表記するように変わったというと合点が行くでしょう。当ブログの読者の方でもアダム・フィッシャーを知らない方はいないはず。そのハイドン・フィルが来日するということで、もちろんハイドン啓蒙に心血を注ぐ私がチケットをとったのはもちろんのこと。現在の芸術監督は2014年、アダム・フィッシャーの後任として登用されたニコラ・アルトシュテット(Nicholas Altstaedt)。そしてオールハイドンプログラムということで、現在のハイドンフィルの実力はいかほどのものか確認したいとの意図です。

ちなみにブログを書き始める直前の2009年にアダム・フィッシャーと当時のオーストリア・ハンガリー・ハイドン管は来日公演を行っていて、もちろんその公演も聴いています。そのことは次の記事でちょこっと触れています。

2010/01/24 : ハイドン–交響曲 : アダム・フィッシャー全集その後

アダム・フィッシャーのハイドンはBRILLIANT CLASSICSの全集が入手しやすいこともあり、多くの人が聴いていると思いますが、特に録音初期の生気あふれる演奏の魅力が聴きどころとなっていますし、実演でもそのあたりの聴かせ方が上手く、流石にハイドンの名を冠し、本拠地もハイドン自身が活躍したアイゼンンシュタットのエスターハージー城ハイドンザールであるだけのことはあるという演奏。

一方、現在の芸術監督のニコラ・アルトシュテットはもともとチェリストで、こちらもチェロ協奏曲のアルバムを取り上げています。

2014/03/07 : ハイドン–協奏曲 : ニコラ・アルトシュテットのチェロ協奏曲集(ハイドン)

記事に書いたように、この演奏は驚愕の演奏。ハイドンのチェロ協奏曲のカデンツァがまるで現代音楽のような恐ろしいまでのキレ味。これまで聴いたチェロ協奏曲の中でも1番の前衛的な演奏。それもそのはずで、クレーメルに師事し、2012年からはクレーメルが主催してきたロッケンハウス音楽祭の音楽監督を引き継ぐ存在。

ということで、オーソドックスにハイドンの魅力を伝えてきたオケをキレキレの若手がどうコントロールするのかというのが聴きどころということですね。この日のプログラムは下記の通り。

交響曲第92番「オックスフォード」
チェロ協奏曲第1番(チェロ:ニコラ・アルトシュテット)
交響曲第94番「驚愕」



この日の開演時間は14:00ということで、ちょっと早めにアークヒルズに着き、中のお蕎麦やさんで昼食をとってから、おもむろに開場時間に入場します。するとこの日はホワイエでエスターハージー財団によるハイドン展なる展示がされているではありませんか。よく見るとチラシにもその旨書いてあるんですが、よく見てませんでした(笑) この日は2階のほぼ正面の席。いつものようにエスカレーターで2階に上がるとすでに展示された品々を皆さんじっくりと眺めていらっしゃいます。

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チラチラ見ながら廻って見ると見慣れた顔が。ハイドンの音楽を愛し手厚く処遇したニコラウスI世エスターハージー侯爵の肖像画の現物があるではありませんか。

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こちらはハイドンが1765年1月31日に四半期ごとのボーナス50グルテンを受け取った領収書。直筆のサインを目の前にすると、ちょっと感慨深いものがありますね。

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色々見廻ってはいても、脳を覚醒させることも必須です。いつものように、ビールとワインで景気付けして開演を待ちました。



この日はステージ裏や真横の2階席にはお客さんは入れず、また席の埋まり具合も半分くらいだったでしょうか。やはりハイドンだけでは集客が難しいのが現実かとは思いますが、この日のコンサートを聴かなかった人は素晴らしい機会を逸したことになりましたね。

ステージ上を眺めると、通常のオーケストラのコンサートならあるはずの椅子がなく、小規模オケ用に配置された譜面台などがパラパラと置かれ、その譜面台も立っての演奏用。チェロなどごく一部の楽器以外は立っての演奏のようです。定刻となり、団員が黒づくめの衣装に身をまとって入場、そしてチューニングは済ませてきたようで、間をおかずアルトシュテットも登壇。

アルトシュテットも黒づくめですが、カンフー選手のようにダボダボで動きやすそうな衣装。客席に向かってにこやかに一礼すると、すぐに振り返ってタクトは持たずにオックスフォードに入ります。よく見ると管楽器は古楽器、ティンパニはバロックティンパニ。演奏はファイを思わせるというか、ファイよりも攻めてくるように速めのテンポでキレ味と凝縮感を伴うもの。アダム・フィッシャー時代の演奏とは同じオケとは思えないほどの変化。アンサンブルも極度に洗練されていて、一糸乱れぬ快演。ファイが即興性も併せ持っていたのに対し、アルトシュテットは確信犯的にオケを煽り素晴らしい高揚感を作っていきます。アルトシュテットは指揮台の隅から隅まで動き回ってかなり大きなジェスチャーでオケに指示を出し、オケもそれに鋭敏に反応。チェリストとしての腕がキレていたのは承知していましたが、オーケストラコントロールにも天賦の才を持っていたんですね。とにかくインテンポで煽る推進力が凄い。出だしの1楽章で挨拶がわりの豪速球。穏やかなアダージョも緊張感が張り詰める研ぎ澄まされた演奏。中間部の激しい慟哭の荒々しさをアクセントにさらに引き締まります。メヌエットも速めのテンポで舞曲的な表情よりは抑えた表現で終楽章につなぎ、最後は超快速テンポで期待通りのキレ味で見事にフィナーレを結びます。これが現代最高のハイドンだと言わんばかりの見事な演奏に会場も拍手喝采。

何度かのカーテンコールの後、今度はアルトシュテットがチェロを抱えて登壇。指揮台に椅子が置かれて、2曲目のチェロ協奏曲1番が始まります。弾き振りということはわかっていましたが、座って合図を出す程度だと思いきや、アルトシュテット、立ってチェロを抱えながらダイナミックに指揮をしながら序奏に入ります。指揮台いっぱいに動き回る姿はチェロを持っていない時と同じでびっくり。そしてチェロの独奏が始まる寸前にさっと座ると何事もなかったようにさらりと演奏に入ります。チェロは以前取り上げた録音と同様、目眩くような鮮やかさ。こちらも攻めに攻めたスタイルでソロとオケが高速でパンチを打ち合うようなスリリングな演奏。もちろんカデンツァはリゲティかリームかというようなクールなもので、古典のハイドンを現代の視点で再構築したような演奏。これが違和感があるどころかアルトシュテットのセンスの良さで見事にしっくりきます。アダージョも磨き抜かれ、フィナーレはまたまた超速めのテンポで鮮やかに締めくくります。こちらも見事な演奏に拍手喝采。通常だとここでソロのアンコールが入るところですが、弾き振りということでそれはなく休憩に入ります。

休憩後は驚愕。こちらも見事でした。1楽章は期待通り新鮮なアクセントと精緻なアンサンブルでハイドンの構成美溢れる名曲を現代のトレンドで最高の演奏に仕立てる名演。アンダンテは変化球も予想しましたが、砂を巻き上げるような豪速球で正統派のビックリ。驚愕のアクセントも演奏によってはここまで際立つのかと今更ながら本当に驚きました。ところが驚きはその後も次々と意表をつくアクセントの波状攻撃で痺れます。そしてメヌエットもこれまでの演奏の垢を感じさせない新鮮味を感じさせ、やはり最後は快速フィナーレで締めくくりました。驚愕という演奏し尽くされたかと思われる曲をこれほどまでに新鮮に響かせる手腕は見事。ハイドンにもっともゆかりのあるあるハイドンフィルが、現代最高のハイドンを聴かせるという千載一遇の機会に立ち会えたと思える演奏でした。

半分ほどの入りだった会場でしたがもちろんブラヴォーが飛び交い、何度かのカーテンコールの後、どうやらアンコールがあるよう。アルトシュテットが奏者の方に振り返って合図を出すと、88番のフィナーレが始まります。これが凄かった。豪速球も豪速球、砂煙を巻き上げながら地を這うように突き進む見事な演奏。88番の剛演はライナーをはじめとして色々ありますが、これほどの迫力は初めて。最後はクナッパーツブッシュの天才的なギアチェンジが頭をよぎりますが、豪速球のまま竜巻のように聴衆を巻き込んでのフィニッシュ。いやいや素晴らしかった! もちろんアンコールにも嵐のような拍手が降り注ぎ素晴らしいコンサートの幕は閉じられました。

いやいや、アルトシュテット、素晴らしい才能の持ち主ですね。ハイドンフィルもアルトシュテットの指示に見事に応える快演。アルトシュテットとハイドンフィルによるハイドンの録音はまだないようですが、アントニーニやファイの取り組みを超える演奏が期待できると言っていいでしょう。またの来日や、録音を期待したいところですね。先日のロト/レ・シエクルの春の祭典も衝撃的でしたが、それを上回る驚きを感じたコンサートでした。

ハイドン好きの皆さん、要注目です!



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tag : オックスフォード チェロ協奏曲1番 驚愕 交響曲88番

ホーネック/紀尾井ホール室内管の受難など(紀尾井ホール)

コンサート記事が続きます。

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紀尾井ホール室内管弦楽団 第112回定期演奏会

ライナー・ホーネック(Reiner Honeck)指揮の紀尾井ホール室内管弦楽団による、紀尾井ホールでのコンサート。ホーネックもこのオケも紀尾井ホールも初めて。プログラムにハイドンが入っていたので、お手並み拝見と言うことでチケットをとってあったもの。プログラムは下記の通り。

ハイドン:交響曲第49番「受難」
ショスタコーヴィチ:ピアノ協奏曲第1番
ピアノ:アレクセイ・ヴォロディン(Alexei Volodin)、トランペット:古田俊博(Toshihiro Furuta)
ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」

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紀尾井ホールは四谷から中央線と上智大学の間を歩いてニューオータニに突き当たるちょっと前にあります。運営は新日鉄住金文化財団ということで、トッパンホール同様企業の文化施設のようですね。いつものように開場時間にはホールについて、一杯やって聴覚神経にスイッチを入れます。
サントリーホールで赤ワインを頼むとよく冷えて(笑)でてきますが、こちらは赤ワインと頼んだら冷えたものと常温のどちらが好みか尋ねてくれる親切さ。もちろん常温でとお願いして、適温のワインを楽しむことができました。飲み終わったグラスを気配を察して取りにきてくれるなど、ほかのホールでも見習って欲しいですね。

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この日の席はステージ上手の2階席で、ちょうどステージを見下ろす好みの席。紀尾井ホールは客席数が800と言うことで、小規模オケにはぴったりのサイズ。内装も綺麗でなかなかいい感じですが、2階席の手すりがちょうど視線を遮るところにあって、ちょっと鬱陶しいのが惜しいところ。

先日のレ・シエクルが開演前からステージ上で盛大に練習してたのとは対照的に、オケは定刻に皆そろって登壇。入場時に拍手が起こるもの一部のオケでは定番なのでしょう。

さて、ホーネックが登壇して、期待のハイドン。ホーネックは短めの指揮棒を持っての指揮。1楽章のアダージョはちょっとリズムが重い感じで入ります。1曲目なので、まだオケがちょっと硬い感じ。演奏は現代楽器によるオーソドックスなもので、安心して聴いていられるものですが、ハイドンのこの時期の曲に特有な仄暗い感じはあまりせず、オケの鮮明な響きでくっきりとした表情。先日聴いたマルクス・シュテンツが振った哲学者の演奏では、パート間のやり取りにスポットライトを当ててハイドンの曲の面白さを際立たせていたのと比べると、ちょっと工夫がない感じ。テンポが上がる2楽章のアレグロでもキレ味を感じさせるほどではなく、終楽章になってようやくオケが目覚めた感じ。ハイドン目当てでとったチケットでしたが、ハイドンは前座な感じでした。

驚いたのが続くショスタコーヴィチのピアノ協奏曲1番。奏者であるアレクセイ・ヴォロディンにも馴染みはありませんが、曲はアルゲリッチのハイドンのピアノ協奏曲のCDに含まれていて、聴いたことはなくはないと言うレベル。いつものように虚心坦懐に聴きましたが、ピアノのアレクセイ・ヴォロディンはロシア出身だけあって、力強いタッチでこの曲は得意としているよう。オケの方は先ほどのハイドンの時とは冴え方が段違いでキレキレ。もちろん曲の違いもありますが、このオケが名手揃いであることがわかりました。ホーネックはなんとなく古典が得意なのではと言う先入観がありましたが、さにあらず。このショスタコーヴィチは見事でした。ちなみにこの曲はピアノに加えてトランペットもピアノの横に座ってソロ扱いになる珍しい曲。

休憩時間にプログラムのオケのメンバー表をしげしげと眺めると、国内著名オケの首席奏者クラスがずらり。どおりで上手いわけです。

休憩後の田園は、実にオーソドックスな演奏。ハイドンの時よりもしっくりとくるフレージングで、ホーネックも得意としているように見受けました。聴きなれた田園の聴きなれた演奏に安堵感に包まれる感じ。この観客もこの田園はゆったりと楽しんで聴いていたように思います。4楽章の雷雨、嵐の荒れ狂う表情から5楽章の牧歌の幸福感に満ちたメロディーに至る展開も流石の盛り上げ方。実に完成度の高い演奏で終えるかと思いきや、ホーネック、肝心の最後でタクトを落とすハプニング。高雅に締まるはずが、最後は微笑ましい終わり方でした。もちろん観客も一瞬のハプニングに驚いたものの、それまでの素晴らしい演奏を称えて盛大な拍手で迎えました。

ウィーンフィルのコンサートマスターだったライナー・ホーネックの振る紀尾井ホール室内管ですが、ハイドンやベートーヴェンが良かろうとの期待でチケットをとりましたが、意外にも最も良かったのはショスタコーヴィチ。ベートーヴェンは流石に見事でしたが、ハイドンにはひらめきが少し足りませんでした。オケの方は名手揃いで素晴らしい実力。これはもう一度聴かねばなりませんね。



コンサート終了後、外に出てみると霧雨が降っていましたので、向かいのニューオータニの馴染みのとんかつ屋さんに寄ろうかと思って行ってみると、すでに暖簾が降りていたので、仕方なく赤坂見附方面に歩いて、こちらも馴染みのオーバカナルの紀尾井町店に寄ってみることに。

AUX BACCHANALES

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オススメのオランダグロールシュビールなどで乾杯。

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ニース風サラダを頼んだら、巨大なサラダが出てきてびっくり(笑) どこがニース風かと調べてみると生野菜にオリーブを使ったサラダがニース風とのことで、名に偽りなし(笑)

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オムレツも巨大でした(笑)

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ハウスワインをお代わりして、、、

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最後はカツオのグリエ。皆ポーションが大きいのでこれでお腹いっぱいでした。昔は頼んでから料理が出てくるまで時間がかかった記憶があるのですが、今回はサクサク出てきてお酒もワインも楽しめました。





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ロト/レ・シエクルの「春の祭典」など(東京オペラシティ)

レビューもそこそこに、コンサートには出かけています。

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フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル《春の祭典》 | 東京オペラシティ

いつも通り、コンサートに出かけた際にもらったチラシでチケットを取りましたが、ロトは以前、読響を振ったコンサートに出かけていて、しかもハイドンの「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の管弦楽版の濃密な素晴らしい演奏を堪能していて、その実力は体験済み。そのロトが手兵、レ・シエクルを率いて来日し、春の祭典を振ると言うことで興味を持ったもの。

2015/07/02 : コンサートレポート : ロト/読響の十字架上のキリストの最後の7つの言葉(サントリーホール)

チケットを取ってから調べてみると、レ・シエクルとは春の祭典を録音していて、2014年のレコードアカデミー大賞を受賞しているとのこと。レコ芸は読んでいるのですが、海外の動向とか海外盤のレビューくらいしか目を通さないので、このアルバムの記憶はありませんでした。ちなみにコンサート前に予習すると、その印象と比べて聴くようになるのでいつも一切予習はしません。と言うことで、いつも通り、虚心坦懐にコンサートに臨みました。

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この日の会場である東京オペラシティは職場からすぐ近くなので、トコトコ歩いて会場入り。

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いつも通り嫁さんと待ち合わせして、聴覚神経を鋭敏にするのに必要十分なアルコールで喉を潤します(笑)

この日のプログラムは下記の通り。

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
ドビュッシー:バレエ音楽「遊戯」
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」

もちろん目玉は春の祭典ですが、前半のドビュッシー、ラヴェルも魅力的なプログラム。席はステージ右手真横の2階席で、オケを上から見下ろす席。2階のビュッフェで一杯やって席に着くと、すでに約半数の奏者がステージ上で和やかに音出ししています。そのまま人数が増え、特に入場という感じなくオケが勢ぞろい。そして定刻になって場内の照明が落ちると、木管から順にチューニング。通常は管と弦に分けるぐらいはよくありますが、パートごとに念入りにチューニングするのがこのオケの作法なのでしょう。

ほどなくしてスーツ姿のロトが颯爽と登壇。指揮棒を持たず、振り上げた腕ですっと合図をすると、なんとも言えない浮遊感のあるフルートが1曲目の牧神の午後のメロディーを奏で始めます。予想通り、牧神の午後は濃密な芳香を放つロト独特の丁寧なフレージングで、まさに漂うようなしなやかな音楽が流れます。 流麗というより各楽器の音色の色彩感を活かして響き合うようなオーケストレーション。この曲は好きで色々な演奏を聴きましたが、これまでのどの演奏とも異なる響き。すでに観客はロトの繰り出す新鮮な響きに酔っているよう。大きめのアクションで各パートにかなり細かく指示を出すのがロト流なのでしょう、そのアクションに鋭敏に反応するオケの鮮やかさも相俟って至福の境地へ。冒頭からロトの魔術にかかりました。
続く遊戯は、予備校時代に代々木のジュピターレコードで買ったハイティンクのLPが馴染みの曲。落ち着いたテンポでオケをしっかりと鳴らすハイティンクの演奏とはまるで別の曲。ロトはテンポをかなり自在に動かし、それぞれ特徴的な木管、金管の古楽器の音色の絶妙な色合いと喧騒感を見事にまとめ上げ、まさに音楽と戯れるよう。ロトは指揮台の上で踊り出さんばかりに大きなアクションでオケを巧みに制御。耳をつんざくような鮮烈な金管の音色ともなうオケの爆発と静寂を繰り返しながらの見事な演奏。オケもだいぶあったまってきてパワー炸裂の演奏でした。
すごかったのが前半最後のラ・ヴァルス。基本的な演奏スタンスは遊戯の延長なんですが、パワーはさらに増して、オケが火の玉のように赤熱。途中、これがラヴェルの曲かと思うような超高速テンポになり、ロトは3倍速で阿波踊りを踊っているような指揮ぶり。オケの方もそれに合わせて、波動砲をマシンガンのように打ちまくるような大爆発。大規模オケのコンサートでは風圧を感じるほどの大音量は珍しくありませんが、この超高速回転する火の玉の塊のようなエネルギーは初めて。会場のお客さん全員がロトのオーラとオケのエネルギーに吹き飛ばされんばかり。いやいや凄いとは聞いていましたが、このラ・ヴァルスには参りました。ロトも力を出し切ったのか100mレース後のウサイン・ボルトさながらの表情。もちろんお客さんは嵐のような拍手でロトとオケをたたえてました。

前半ですでにノックアウト気味で迎える本命のハルサイ。休憩後も入念なチューニングを経て、ロトが登場。今回の版はストラヴィンスキーの自筆初稿から筆者されモントゥーによる初演時の楽譜(遺失)を復元し初演当時の楽器による演奏。プログラムにはこの日の演奏で使用する管楽器、打楽器のリストまで掲載されていましたが、ステージ上の楽器配置がパーカッションは上手側だったため、上手2階席からは残念ながらパーカッション陣の動きは見えませんでした。冒頭のバソン(バスーン)から現代楽器とは異なる響き。あのバソンの演奏はなかなか難しそうですが、精妙に響きを揃えるという方向ではなく、おどろおどろしい原初の響きを作ろうとしているよう。不規則なリズムが乱舞し始めると、オケは休憩前のラ・ヴァルスの時のエネルギーが戻ってきました。なんとなくラ・ヴァルスの高揚の余韻が残っていて、いつあの炸裂がくるかと待ち構えて聴いていましたが、もちろん、春の祭典の独特のリズムは保ち、いきなり高速テンポにはなりません。ただ、徐々に音量を上げ、オケが炸裂するところに来るとテンポを徐々に上げ、不気味な迫力を帯びてきます。下手をすると腰砕けになりそうな気もしますが、そんなことを気にせずグイグイテンポを上げて独特のクライマックスを作り、その高揚感が軸になって音楽が素晴らしい推進力を帯びて来る感じ。もちろん古楽器の鋭利な音色は迫力に大きく貢献していて、つんざくような高音と鋭いパーカッション陣の刻む目も眩むようなリズムの連続でアクロバット要員にしか対応できないような踊りのリズムを刻んで行きます。静寂が続く「賢者」ではじっくりと情景を描き、第1部の終わりの「大地の踊り」はもちろんど迫力。第2部に入ってしばらくのグランカッサ11連発はやはり速めのテンポで度肝を抜き、最後まで絶妙なるセンスでまとめる見事な演奏でした。この春の祭典もこれまで聴いたどの演奏とも異なる素晴らしい演奏でした。

たった1回きりの日本公演ということで、もちろん満席で、その満席の客席からブラヴォーの嵐が降りそそぎました。何度かのカーテンコールのあと、メモを取り出し超フランス語訛りながら日本語で観客に挨拶して、さらに拍手喝采。そしてアンコールではビゼーのアルルの女の第1組曲からアダージェットを演奏。弦楽パートのみの演奏でしたが、3年前の読響の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」の演奏を思い起こさせるデリカシーに富んでいながら陰影の深い素晴らしい演奏。爆風のような演奏の後にこの美しい弦を聴かせるセンスにまたまたノックアウト。いやいや、素晴らしいコンサートでした。

ロトの録音を調べてみるとほとんどがライヴ。このライヴの高揚感、ライヴだけで伝えられるものがあるというのがロトの心情だと悟った次第。商業的には何回ものコンサートを開催できる人でしょうが、このコンサートの尋常ならざる集中力を保つのはロトばかりではなくオケの団員にとってもなかなかしんどいでしょう。貴重なコンサートに立ち会えた満足感に満たされた1日でした。



さて、初台でのコンサートの帰りの定番は参宮橋のいつものお店です。コンサート後でもラストオーダー前に色々たのんで、のんびり食事ができるのでお気に入り。

LIFEson

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いつも珍しいワインが置いてあります。この日はロゼなどをセレクト。

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白身魚(なんだったかしら?)のマリネ。大量のパクチーで具が見えません(笑)

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夏野菜のサラダ。

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ワインを追加。珍しく小布施ワイナリーの赤があったので注文。白はシュナンブラン。

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たっぷりカラスミが乗ったカラスミのパスタ。バター風味。

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グアンチャーレ(豚の頬肉の塩漬け)のパスタ。こちらもバター風味。終演後、極上のコンサートの余韻を楽しみながらワインと美味しい料理をいただいてお腹いっぱい。いい1日でした。

(参考アルバム)




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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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チェロ協奏曲ライヴピアノ協奏曲XVIII:11弦楽四重奏曲Op.2モーツァルト序曲軍隊バッハヴィヴァルディオペラ序曲ベートーヴェンアリア集パイジェッロ弦楽四重奏曲Op.76皇帝ヒストリカル日の出ピアノとヴァイオリンのための協奏曲XVIII:6すみだトリフォニーホールピアノソナタXVI:49ピアノソナタXVI:46ピアノソナタXVI:34ピアノソナタXVI:20ラヴェルブーレーズサントリーホール弦楽四重奏曲Op.74弦楽四重奏曲Op.71無人島アルミーダチマローザ騎士オルランド変わらぬまこと哲学者の魂、またはオルフェオとエウリディーチェ英語カンツォネッタ集ピアノ協奏曲XVIII:3ピアノ協奏曲XVIII:1ピアノ協奏曲XVIII:4弦楽四重奏曲Op.20交響曲79番交響曲3番アレルヤラメンタチオーネ古楽器驚愕交響曲88番チェロ協奏曲1番オックスフォード交響曲19番交響曲27番交響曲58番アンダンテと変奏曲XVII:6紀尾井ホールショスタコーヴィチストラヴィンスキードビュッシーピアノ三重奏曲ミューザ川崎オーボエ協奏曲協奏交響曲LPヴァイオリンとヴィオラのためのソナタピアノソナタXVI:50ピアノソナタXVI:40ピアノソナタXVI:32ピアノソナタXVI:38ピアノソナタXVI:29スタバト・マーテルピアノソナタXVI:48ピアノソナタXVI:37ピアノソナタXVI:39マーラーブルックナー十字架上のキリストの最後の七つの言葉交響曲90番交響曲97番告別交響曲18番奇跡交響曲99番弦楽四重奏曲Op.64ひばりフルート三重奏曲悲しみ交響曲102番交響曲86番ヴァイオリン協奏曲哲学者小オルガンミサニコライミサミサブレヴィス交響曲95番交響曲93番交響曲78番時計ピアノソナタXVI:23王妃ピアノソナタXVI:52ライヴ録音SACD武満徹交響曲81番交響曲全集交響曲80番交響曲21番マリア・テレジアクラヴィコード豚の去勢にゃ8人がかりBlu-ray東京オペラシティ交響曲9番交響曲10番交響曲11番交響曲12番ロンドン太鼓連打交響曲4番交響曲15番交響曲2番交響曲1番交響曲37番弦楽四重奏曲Op.54ピアノソナタXVI:25ピアノソナタXVI:12ピアノソナタXVI:8ピアノソナタXVI:2ピアノソナタXVI:14ピアノソナタXVI:42ピアノソナタXVI:5ピアノソナタXVI:4ピアノソナタXVI:1ピアノソナタXVI:3天地創造ディヴェルティメントリヒャルト・シュトラウス東京芸術劇場交響曲98番ピアノソナタXVI:36ピアノソナタXVI:7ピアノソナタXVI:35ロッシーニドニぜッティライヒャ弦楽三重奏曲シェーンベルク東京文化会館フルート協奏曲ホルン協奏曲弦楽四重奏曲Op.9弦楽四重奏曲Op.17剃刀弦楽四重奏曲Op.77弦楽四重奏曲Op.103ファンタジアXVII:4ピアノソナタXVI:31ピアノソナタXVI:26モンテヴェルディタリスパレストリーナバードアレグリピアノソナタXVI:6美人奏者四季迂闊者交響曲70番アコーディオンピアノ協奏曲XVIII:7バリトン三重奏曲スコットランド歌曲ヴェルナーガスマンシューベルト交響曲67番ピアノソナタXVI:24交響曲35番交響曲51番交響曲46番DVD交響曲47番テレジアミサピアノソナタXVI:21ピアノソナタXVI:28アリエッタと12の変奏XVII:3ラ・ロクスラーヌ帝国ハイドンのセレナードピアノソナタXVI:51ラルゴ五度ピアノソナタXVI:44ラウドン将軍弦楽四重奏曲Op.33弦楽四重奏曲Op.1騎士交響曲17番ピアノソナタXVI:27シベリウス時の移ろい交響曲42番ベルリンフィルホルン信号弦楽四重奏曲Op.55交響曲87番トランペット協奏曲リュートピアノソナタXVI:10ピアノ五重奏曲チェチーリアミサラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン東京国際フォーラム雌鶏交響曲39番冗談ナクソスのアリアンナピアノ協奏曲XVIII:5ピアノ協奏曲XVIII:9ヴァイオリンソナタ交響曲52番ピアノ協奏曲XVIII:2ロンドン・トリオカノンオフェトリウムモテットドイツ国歌弦楽四重奏曲Op.50よみうり大手町ホールパッヘルベルアダージョXVII:9受難交響曲84番パリセットベルク主題と6つの変奏オペラアリアピアノソナタXVI:41スクエアピアノ交響曲57番交響曲68番リラ・オルガニザータ協奏曲リーム交響曲89番交響曲50番CD-R偽作トビアの帰還ホルン三重奏曲薬剤師オルガン協奏曲交響曲38番火事リベラ・メピアノ協奏曲XVIII:10交響曲77番交響曲34番温泉フルートソナタドイツ舞曲誕生日校長先生ピアノソナタXVI:11ピアノ小品ピアノソナタXVI:47bis音楽時計曲カートリッジ雅楽プロコフィエフヘンデルサン=サーンス交響曲36番リストオーディオバリトン二重奏曲交響曲75番交響曲91番交響曲66番長岡鉄男歌舞伎おすすめ盤ピアノソナタXVI:47第九読売日響オペラ歌舞伎座スケルツァンド弦楽四重奏曲op.33ザルツブルク音楽祭変奏曲XVII:7ピアノソナタXVI:22天地創造ミサジャズネルソンミサ弦楽四重奏曲Op.42交響曲76番ピアノソナタXVI:43古楽器風東急文化村ノットゥルノヴェーベルン府中の森芸術劇場裏切られた誠実バリトン五重奏曲ハイドン入門者向け歌曲ピアノソナタXVI:G1ウィーンフィル月の世界交響曲72番建築ファリャ交響曲56番マリアテレジア2つのホルンのための協奏曲展覧会ピアノソナタXVI:19弦楽四重奏曲全集シャンゼリゼ劇場皇帝讃歌交響曲24番大オルガンミサ新橋演舞場交響曲5番テ・デウムサルヴェ・レジーナカッサシオン室内楽曲ピアノソナタXVI:45ベトナム料理国立新美術館高音質CD交響曲28番交響曲13番交響曲108番交響曲107番交響曲62番ジプシー・ロンドチェンバロ四重奏曲スカルラッティカンタータ声楽曲戦時のミサ珍盤ザロモンセットN響ハルモニーミサミサ曲全集NHKホールハインリッヒミサピアノソナタ全集ジュピターレコードマーキュリー管弦楽曲室内楽変奏曲XVII:5交響曲54番交響曲41番ギターピアノソナタXVI:33府中ピアノソナタXVI:30カラヤンスウェーリンク書籍交響曲65番交響曲71番アプラウスピアノソナタXVI:13魂の歌仙台ヤナーチェク現代音楽狩りピアノソナタ

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