クァルテット・アルモニコの「日の出」(トッパンホール)

心待ちにしていたコンサートに行ってきました。

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クァルテット・アルモニコ:コンサート

クァルテット・アルモニコ(Quartet Armonico)による8年ぶりのトッパンホールでの自主公演。プログラムは下記の通り。

ハイドン:弦楽四重奏曲Op.76のNo.4 
ウェーベルン:弦楽四重奏のための6つのバガテル Op.9
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲「ラズモフスキー第3番」 Op.59-3

クァルテット・アルモニコとの出会いは偶然でした。

2013/08/04 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : クァルテット・アルモニコの「冗談」(ハイドン・トータル)

ハイドン好きの皆さんならばご存知の「ハイドン・トータル」という東京藝術大学音楽学部室内楽科とウィーン音楽演劇大学ヨゼフ・ハイドン室内楽研究所の共同プロジェクトとしてリリースされたハイドンの弦楽四重奏曲全集。奏者は両大学の学生と卒業生によるもので、一部ミネッティ四重奏団などの名声を確立したクァルテットもある中、この全集のために結成されたクァルテットが中心の奏者陣にあって、ちょっと一段レベルの違う演奏を聴かせていたのがクァルテット・アルモニコ。こうした全集を手に入れた際には一応通しでサラッと聴いてみるのですが、「冗談」の入っているCDをかけた時に、第1ヴァイオリンの放つ美音と圧倒的なエネルギーに惹きつけられ、このクァルテットを知った次第。

2013/09/06 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : クァルテット・アルモニコ東京のOp.20のNo.2(ハイドン)

そして、関心を持った後にまたしても偶然出会ったアルバム。クァルテット・アルモニコがウィーンに留学中の2001年に録音したもので、この頃から素晴らしい演奏をしていたと知り、さらに驚いた次第。

ハイドントータルの記事の末尾にも書いた通り、いつかは実演を聴きたいと思っていたところ、当ブログの読者の方からこのコンサートの情報を教えていただき(ありがとうございました!)、チケットをとってあった次第。



この日のコンサート会場であるトッパンホールには初見参です。

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土曜の16時開演ということで、少し早めに着くと、ホール横の2階にある小石川テラスというカフェで開場を待つことにしました。

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ここは凸版印刷の本社ビル内にあって印刷博物館と、クラシック専用のコンサートホールの2つの文化施設に併設したレストランで、日本の食文化を美味しく楽しむレストランとのこと。広々としていて、椅子席がたくさんあり、名前どうりテラス席もありました。

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そこで、いつものように嫁さんとワインをちびりながらのんびり。ホール内のカフェは椅子がないのが一般的ですので、座って待てるのはいいですね。



さて、開場時間となって、ロビーに戻ってみると、すでにかなりの人が列を作って待っていました。この日の席は自由席。

トッパンホール

行かれたことがある方はご存知でしょうが、ホールは木をふんだんに使ったなかなかいい感じの内装で、席数は約400席ということで室内楽のコンサートには最適ですね。今日は右手通路脇の前から5列目くらいの席に座りました。あまり近いと直接音ばかりが耳に届きますので。

パンフレットに目を通すと、チェロがハイドン・トータルの録音の時とは変わっていました。

第1ヴァイオリン:菅谷 早葉(Sayo Sugaya)
第2ヴァイオリン:生田 絵美(Emi Ikuta)
ヴィオラ:坂本 奈津子(Natsuko Sakamoto)
チェロ:松本 卓以(Matsumoto Takui)

定刻となり、しばらくで会場の照明が落ちて会場内が落ち着くと、4人のメンバーが登場。チューニングの響きでこのホールの響きの良さを実感。ホールの規模もあって音響は素晴らしく、4人の奏でる楽器の響きが鮮明かつ適度な残響を伴って溶け合って聴こえます。

お目当ての1曲目、日の出が始まります。穏やかな序奏のメロディーから第1ヴァイオリンの菅谷さんの美音が轟きます。ハイドン・トータルの演奏そのままの素晴らしい響き。コンサートの出だしの曲ですので、最初は全般に演奏に硬い感じが残りますが、徐々に4人のボウイングが滑らかになってきます。第1ヴァイオリンのみならず、4人の強奏部分をキリリと強調する見事な呼吸と精妙なピアニッシモの対比、流れを流麗にまとめるフレージングの変化とまさに完璧なアンサンブルに早くもうっとり。テンポをググッと上げてくるところを引っ張る菅谷さんに3人がピタリと合わせてくる呼吸はこのクァルテットの真骨頂でしょう。
アダージョに入ると、静寂なホールに響く弱音の精妙さが録音では聴けない音楽の深さを感じさせます。こうした緩徐楽章でも菅谷さんのボウイングは大胆でメロディーをくっきりと浮かび上がらせ、このクァルテットの個性をしっかりと印象付けます。
メヌエットでもしっかりと隈取りがされたメロディーが踊り、イキイキと弾んできます。雰囲気が一変するトリオの最初の長音のハーモニーの美しさはライヴならでは。このハイドンの戯れのようなトリオの語り口を断ち切るように再びメヌエットに戻るところの鮮やかさも見事。
そしてハイドンの想像力の限りを尽くした傑作のフィナーレでは、テンポをかなり自由にコントロールして、その想像力を再創造していくような闊達な演奏。一定のリズムでの演奏がその想像力を活かしきれない感を残してしまうパターンも多い中、このフィナーレは見事でした。最後にぐっとテンポを上げていくあたりは、このクァルテットのテクニックの聴かせどころとばかりにテンポをグイグイ上げて素晴らしいフィニッシュでした。もちろん、お客さんは拍手喝采。いやいや、素晴らしかった!

2度ほど拍手に応えて登壇すると、続くウェーベルンに入ります。これが凄かった! 非常に短い曲を6曲まとめた曲ですが、ウェーベルンらしい、極端に少ない音で恐ろしく多様な響きの余韻を作り出す緊張感満点の作品。演奏が始まると鋭利な日本刀のような切れ味で無調の響きが散乱。楔を打つようなアクセントと静寂が交錯しながら、落ち着いて6曲を次々と演奏していきます。この迫力は録音では伝わりませんね。ピチカートや弦楽器とは思えない鋭い音が散りばめられながら、完全に前衛の空気に包まれ、会場のお客さんも迫力に仰け反りながら聴いている感じ。私も含めて6曲目の終わりを奏者が立ち上がった時点で知り拍手を送った次第。ハイドンとは別次元の素晴らしい演奏に驚きます。

休憩を挟んで、最後はベートーヴェンのラズモフスキー3番。実はベートーヴェンの弦楽四重奏曲はあまり好きな方ではありません。弦楽四重奏曲というジャンルを確立し、自ら構築した構成を次々と変革しながら、美しいメロディーとウィットを織り交ぜて音楽を作っていったハイドンに対して、時代が下って、音楽を演奏する目的も変わり、常に強い表現意欲をもとに自己表現として音楽を創作していったベートーヴェンの曲は、結果として重苦しく、張り詰めた印象が強く、特別な事情がなければあまり聴きません。本当はハイドンばかり聴いているので聴く暇がないというのも正直なところ(笑)。この日のラズモフスキー3番は、ハイドンと同じ楽器構成でこれほどまでに大きな音楽が作れるという、歴史の流れを極上の演奏で味わったという感じ。演奏は前半の演奏で奏者もだいぶほぐれて、後半はさらに集中力が上がって、素晴らしく充実した演奏でした。やはり菅谷さんの第1ヴァイオリンがリードしますが、他の3人もしなやかに追随し、アンサンブルの精度も抜群。暗澹たる響きと意志を持ってグイグイと煽る部分をしっかり描き分け、しかも呼吸もピタリ。この日のメインプログラムにふさわしい素晴らしい出来でした。

もちろん客席は拍手喝采。何度かのカーテンコールののち、新たな楽譜を持って登壇すると、アンコールはハイドンのラルゴの緩徐楽章。やはりハイドンはこのクァルテットにとって重要な存在なんですね。もちろん、菅谷さんのメロディーの美しさも、アンサンブルの息のあったフレージングで癒しに満ちた美しい演奏は見事の一言。極上のラルゴを堪能しました。



いやいや素晴らしいコンサートでした。これだけ素晴らしいクァルテットが聴けるコンサートは滅多にありませんね。海外の名のあるクァルテットと比べても引けを取るどころか、音楽的には張り合えるだけの素晴らしいものを持ったクァルテットだと思います。新メンバーで定期演奏会を再開し始めたのが昨年からということで、実力からすると、もっと聴かれてもいいクァルテットです。これから演奏する機会がもっと増えるといいですね。ハイドンを得意とするということで、当ブログも応援していきたいと思います。

室内楽好きな皆さん、要注目ですよ!

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tag : 日の出

ブロムシュテット/N響のベートーヴェン8番、7番(サントリーホール)

4月26日は仕事を早目に切り上げてコンサートに行ってきました。

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NHK交響楽団 第1884回 定期公演 Bプログラム

ハイドンではありませんが、ちょっと気になっていたコンサート。ヘルベルト・ブロムシュテット(Herbert Blomstedt)がN響に客演するということで、いくつかのプログラムからサントリーホールで行われるベートーヴェンの7番、8番を選んだ次第。

ブロムシュテットはおそらくハイドンの商業録音を残していないと思いますし、ハイドンを振る印象もありませんが、調べてみるとコンサートでは取り上げているようですね。もちろん有名な指揮者なので私もよく知っていますが、手元には1970年代にドレスデン・シュターツカペレと録音したベートーヴェンの交響曲全集くらいしかアルバムがなく、実はブロムシュテットの演奏にはあまり馴染みはありません。名前はスウェーデン系で両親はスウェーデン人のようですが1927年アメリカ生まれで御歳90歳になるとのこと。198年代後半からサンフランシスコ交響楽団とDECCAに多くの録音を残し、日本でもかなりプロモーションがかかっていたのでおなじみな方も多いでしょう。

最近ではN響によく客演していて、年齢を感じさせない矍鑠とした指揮ぶりを何度かテレビで見て興味を持った次第。90歳という年齢を考えると今聴いておかないとという気もしてチケットを取った次第。



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いつものようにサントリーホールに開場時刻くらいに到着。この日は平日ということで開場時刻には人はまばら。チケットはソールドアウトになっていましたので、開演時刻に駆け込むお客さんも多いのでしょう。

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そしてこちらもいつものようにワインとサンドウィッチで軽く腹ごしらえして開演を待ちます。この日の席は1階席3列目の右側。ステージ右側の下から仰ぎ見る感じで、指揮者、第二ヴァイオリン、ティンパニ奏者の動きは見えるものの、金管、木管陣は視界にははいりません。発売からかなり経ってから手に入れたチケットゆえ仕方ありません。

コンパクトな編成のオケがステージに揃い、チューニングが終わると長身のブロムシュテットが登場。90歳とは思えぬしっかりとした足取りで指揮台に上り、客席ににこやかに挨拶をすると、すっと振り返ってタクトなしで両椀を振り上げ、さっと振り下ろすと8番の冒頭の和音がホールに鳴り響きます。ノンヴィブラートで透明感溢れるクリアな響き。老成や円熟という言葉よりも、むしろ颯爽とした若々しさを感じるほどのキレ味を聴かせます。ハイドンの交響曲とは異なり漲る力感の表現がポイントの曲想に対して、良い意味で節度を保ちながらも、要所でライヴらしく鋭いアクセントを重ねて畳み掛けてくるようにオケを煽ってきます。8番ではオケの響きの純度を保てる範囲でのコントロール。ブロムシュテットは響き重くなることを避けるようにオケに俊敏な反応を求めながら1楽章を非常にタイトにまとめてきました。2楽章も弦楽器が刻むリズムはキレよく連なり、特に席から近い第2ヴァイオリンの刻むメロディーが鮮やかに響き、オケの反応も鮮やか。そして3楽章では力が抜けてオケの反応もさらに良くなります。終楽章ではオケが秩序を失わず赤熱。コンサート特有の高揚感に包まれ見事なクライマックスでした。もちろん、ホールは老指揮者の年齢を感じさせない鮮烈なコントロールに拍手喝采。ヤルヴィほど反応重視ではなく、どこか頑固さを感じさせながらも音楽にはハツラツとしたものが残る名演でした。

休憩後、オケの編成はほぼ変わらず、今度は7番。7番でもタクトは持たず、主にアクセントのポイントをきっちり指示するスタイル。最初の一音から8番とは異なる気合いというかエネルギーが満ちています。オケの方も先ほどまでの8番の秩序だった枠が徐々に取り払われて行き、少々の乱れはかまわず、ベートーヴェンのこの曲に込められたエネルギーが発散されていきます。所々に鋭角的なアクセント設けて曲のエッジをキリリと引き締め、低音弦の迫力は8番の時よりもかなりアップしてきているので音の厚みが違います。木管陣は実に艶やかな演奏でブロムシュテットの指示に応えて1楽章に見事な潤いを与えていました。7番はもう少しリズムの流れよく振ってくるかと思いきや、かなり頻繁にオケを煽って、攻めの指揮。いやいや素晴らしいエネルギーです。
素晴らしかったのが2楽章。アタッカで入り速めのテンポで透明感溢れる弦によって描かれる音楽はこれまで聴いたこの楽章のどの演奏よりもしんしんと刺さる音楽が流れます。雄大に展開する音楽の表情は情感をおさえつつも響きの険しさと崇高さに包まれる見事な構成。ブロムシュテットは各パートに細かく目配りしながら大きな音楽を作っていきます。
続くメヌエットは8番の時のオケの響きが戻りタイトな演奏ですが、終楽章のクライマックスの爆発を予感させるエネルギーが満ちてきて尋常ならざる迫力。そしてフィナーレに入るとこれまでオケが抑えていたのだとわかる、地響きのようなものを伴いながら、ベートーヴェンの執拗に繰り返される音階が火の玉のごとく熱せられ、ホール中に熱気を発散します。ブロムシュテットは最後まで冷静さを失わずオケのスロットルを巧みにコントロールして、重くなりがちなリズムを煽るように引き締め、最後はオケの力を振り絞らせる見事なさばきを見せます。弦も金管もティンパニも渾身の力でホールの空気を揺るがし、余韻が消え入る前に嵐のような拍手が降り注ぎました。もちろん生でのこの曲のフィナーレは盛り上がるに決まっていますが、最後に混沌とするリズムの処理と老獪なアクセント、そして何より90歳とは思えないエネルギーは特別なもの。観客もこの素晴らしい演奏に惜しみない拍手を送り、カーテンコールが続きました。途中でオケの背側の観客の拍手に応えるよう指示するあたりも誠実な人柄がにじみ出ていました。いやいや素晴らしいコンサートでした。またの来日も計画されているということで、機会があればぜひ、もう一度ブロムシュテットのエネルギーに触れてみたいと思います。



終演後は、サントリーホール向かいのアークヒルズの飲食店で一杯やって帰るのがいつもの慣わしですが、開演前に嫁さんが3階に行ったところ、3階のフロア全体が改装されて綺麗になっているということで、最近愛用している2階のスペインバルではなく、3階に行ってみることにしました。入ったのはラーメン屋さん。

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食べログ:田中そば店 赤坂アークヒルズ店

普段、嫁さんは家での食事が多いので、ラーメンも新鮮ということで、ラーメン屋さんにした次第。まずはビールをグビリ。よく冷えていてグーです(笑)

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私が頼んだのは山形辛味噌らーめん。かなり強めのかつおダシが効いたスープに辛味噌がドカンと乗っています。最初にスープをいただくとただのかつおダシのスープ。ところが辛味噌を溶かすと、表面にラー油が浮かぶ激辛ラーメンに変身。麺は柔らかめでした。

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嫁さんが頼んだのは味玉入り中華そば。こちらはかつおの風味は辛味噌ラーメンよりも薄く、スープが違うようですね。

ラーメンは美味しかったんですが、ラーメンのそれぞれの味と辛味に関心が行ってコンサートの余韻を楽しむ余裕はありませんでした(笑) 夏までのコンサートのチケットを色々取ってありますので、次回サントリーホールでのコンサート時には他のお店も開拓してみたいと思います。

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tag : ベートーヴェン サントリーホール

ジョナサン・ノット/東響のマーラー10番、ブルックナー9番(サントリーホール)

新年度が始まって、いつもながら仕事でドタバタしており、レビューも進まぬ中、チケットをとってあったコンサートに行ってきました。

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東京交響楽団:第659回 定期演奏会

このところお気に入りのジョナサン・ノット(Jonathan Nott)率いる東京交響楽団のコンサート。古典から現代まで幅広いレパートリーを誇るノットですが、マーラーや現代音楽の素晴らしさは体験済み。アルバムでは評判が良さそうだったブルックナーはどうかということでチケットをとった次第。ノットのこれまでのコンサートのレポートは下記の通り。

2017/12/10 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「ドン・ジョヴァンニ」(ミューザ川崎)
2017/10/15 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の86番、チェロ協奏曲1番(東京オペラシティ)
2017/07/23 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「浄められた夜」、「春の祭典」(ミューザ川崎)
2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)
2016/12/12 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「コジ・ファン・トゥッテ」(東京芸術劇場)

初めて聴いた「コジ・ファン・トゥッテ」が滅法面白かったので色々聴きましたが、モーツァルトもマーラーも春祭も見事なコントールで楽しめましたが、肝心のハイドンはちょっと演出過剰でゴテゴテした印象になり、ハイドンを演奏する難しさを感じさせた次第。そのノットがブルックナーの9番をどう料理するのかが聴きどころ。

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この日は土曜で前日夜は札幌泊の出張に出ておりましたゆえ、若干疲れ気味の中、夕刻いつも通り、開場少し前にサントリーホールに到着。事前情報ではNHKのカメラが入ることになっているということで、注目のコンサートなんでしょう、ホールの前はかなりの人で賑わってました。

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すぐに開場となり、まずはこちらもいつも通りホワイエで軽く腹ごしらえ。いつもはワインですが、この体調でワインをいただくと深い眠りに落ちてしまいかねないというリスクを回避するため、ビールをセレクト。結果的には正しい選択でしたね(笑)

この日の席は珍らしく1階席で中央後ろから2列目。オケが正面に見える席ですね。お気に入りのRA席は埋まっていたため高い席を取ったんですね。RA席だと指揮者の指示やパート間のフレーズのやりとりが克明にわかるんですが、この日の席はアルバムやテレビで聴くのと同様、オケの音とともにホールの響きを遠くから聴く席。各パートの響きよりもオケの音量バランスを聴く感じですね。

プログラムは2曲とも大編成の曲ということでステージいっぱいに団員席が広がる中、定刻となり団員がステージ上に並び、いつものようにちょっと小柄なノットが颯爽と登場。ほぼ満席の客席に向かってにこやかに会釈してすぐにマーラーの10番が始まります。最初のヴィオラのメロディーから息を飲むようなただならぬ緊張感が漂い、いきなりヴィオラの孤高の響きに釘付けになります。この曲の刷り込みはアバドがウィーンフィル振ったアルバムですが、アバドらしいしなやかなメロディーの流れの美しさをを極めた演奏に対して、ノットはやはりフレーズごとの表情の変化と現代音楽的な響きの峻厳さ、そしてオケのダイナミクスを極限まで追い込むようにコントラストを明確につけていきます。どちらかというとマゼールに近い感じ。マゼールは灰汁の強い印象がありますが10番はかなり洗練された演奏です。昨年にミューザで聴いた復活と同様の手法。全てのパートをコントロールするようなノットの細かい指示に対し、東響もノットの棒に完璧に応える精緻な演奏でノーミスの熱演。特に素晴らしかったのがヴィオラをはじめとする弦楽陣。弦の奏でるメロディーのニュアンスの豊富さが音楽に深みを与え、弱音のコントロールがこのマーラー最後の曲の孤高感を際立たせていました。静寂の中に消え入るような最後も見事。全ての余韻が消え去り、ノットがタクトをゆっくりと下ろすと客席から拍手が湧き上がります。オケの熱演に惜しみない拍手が送られました。この曲に込められたマーラーの諦観のようなものまで見事に描ききった名演でした。

休憩中にステージ上の座席配置が若干修正され、ハープがかたずけられて後半のブルックナーに移ります。

ノットのブルックナーは以前の8番のコンサートを収録したアルバムがリリースされており、評判はなかなか良いように聞いていますが、私は未聴です。ノットはキビキビ爽快にモーツァルトを描き、マーラーではニュートラルなダイナミックさ、現代音楽では峻厳な透明感を描いてきますが、ブルックナーをどう料理するのかあまりイメージできませんでした。この日のコンサートを聴いた結果から言うと、マーラーと同様なスタイルで現代的なダイナミックなブルックナーでした。ブルックナーの演奏には画家で言う画風がかなり重要な要素かと思いますが、ノットの画風は正攻法でブルックナーの演奏にはもう一歩踏み込みが欲しい印象を残しました。もちろん演奏は素晴らしいもので、3楽章終盤に金管が少し安定度を欠いた以外はオケは見事なパフォーマンス。特にスケルツォ楽章の怒涛の迫力は素晴らしいものがありました。マーラー同様弦楽陣は素晴らしいコントロール。そしてフレーズごとに表情を彫り込んでいくノットのコントロールも見事。ただ滔々と流れるブルックナーの音楽を少し微視的に捉えすぎてもう少し流れの良さがあるとよかった。コンサートではこのところスクロヴァチェフスキの描く大伽藍に圧倒されてきましたが、ノットの大伽藍はコンクリート製で意匠は凝らしているものの、ブルックナーらしさからちょっと離れてしまったといえばわかるでしょうか。この曲も3楽章の終結部は弱音で終わりますが、この日の観客は見事に静寂を保ち、オケの熱演を盛大な拍手で讃えており、お客さんの反応は極めて良いものでした。ノットもオケの熱演を讃え、コンサートは盛況のうちに終了。

マーラーはノットと東響のコンビの底力を見せつける素晴らしい演奏、ブルックナーも機能的には同様かと思いますが音楽の本質を考えさせらる演奏でした。



終演後は、サントーホール向かいの最近お気に入りのお店で反省会。ここ数日は母親がショートステイでお泊りのため、帰って介護の心配がありません。

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バレンシアナバル ブリーチョ

ワインとサングリアで喉を潤し、小皿を色々注文。この小皿が皆絶妙に旨いんですね。

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桜海老のアヒージョに、マグロの生ハムとトマト。アヒージョにはニンニクが丸ごとゴロゴロ入っているんですが、これがまた旨い。海老の香りも良く出ていて見事。そして生ハムに添えられたトマトが甘くて絶品。

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いつも必ず頼むレンズ豆とチョリソの煮込み。チョリソの独特の香りがこれまた絶妙。

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初めて頼んでみたホワイトアスパラのフリット。ナツメグで香りづけしたソースがこれまたいい香り。

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最後はジャガイモとタコのグリル。これとパンで2人でお腹いっぱいです。コンサートの余韻を楽しみながら美味しいお酒と料理でいい気分。

さて、レビューせねば、、、(笑)

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tag : マーラー ブルックナー サントリーホール

マルクス・シュテンツ/新日本フィルの哲学者、驚愕(すみだトリフォニーホール)

昨日2月2日はチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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新日本フィルハーモニー交響楽団:♯583 トパーズ<トリフォニー・シリーズ>

マルクス・シュテンツ(Markus Stenz)指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団。プログラムは下記の通り。

ハイドン:交響曲第22番「哲学者」
ハイドン:交響曲第94番「驚愕」
ヘンツェ:交響曲第7番

このコンサートはもちろんハイドンの曲が含まれるということで目をつけていたものですが、ハイドンはハイドンでも冒頭に置かれた哲学者という滅多に実演には取り上げられない曲がプログラムに含まれるということで、格別の興味を持ったもの。指揮者のマルクス・シュテンツも未聴の人。

マルクス・シュテンツは1965年、ドイツのボンの南にあるバート・ノイェンアール=アールヴァイラー(Bad Neuenahr-Ahrweiler)生まれの指揮者。ケルン音楽院で学び、タングルウッドではバーンスタイン、小澤征爾に師事したそう。現在はオランダ放送フィルの首席指揮者、ボルティモア交響楽団の首席客演指揮者を務めています。1988年にベネチアのフィニーチェ劇場でヘンツェの「若い恋人たちへのエレジー(改訂版)」を初演して以降、ヘンツェの多くの作品の世界初演を担当しており、ヘンツェには格別のこだわりがあるようです。日本ではN響に客演している他、2016年末の読響の第九の指揮を担当するなどそこそこ知られた存在でしょう。手元にアルバムもないため、私はこの日がシュテンツとは初顔合わせです。またヘンツェの曲も聴いた記憶もないため、こちらもこの日初めて聴きます。



平日ゆえ仕事を定時過ぎに切り上げ、新宿からちょっと離れた錦糸町まで向かいますが、中央線と総武線の乗り換えもスムーズでそれほど時間がかからないことがわかりました。

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いつものように先に到着していた嫁さんが、ホールの2階の北斎カフェでサンドウィッチを買って待ってましたので、ワインとサンドウィッチで軽く腹ごしらえをして、期待のコンサートに備えます。

開演は19:00ですが、開演前からオケのメンバーが入り、ほとんど19:00ピタリに演奏が始まるという異例の正確さ(笑) 最初の哲学者のオケの配置は第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが両翼に配置され、ヴィオラが指揮者正面、そしてそのヴィオラの左右にチェロが別れて座るという対称性にこだわった珍しい配置。この日の席は珍しく指揮者の真後ろの真ん中と左右から鳴らされる音を聴き分けるには最適な席。

拍手に誘われシュテンツが指揮台に登壇、大柄な体を揺すって気さくな笑顔で観客に挨拶し、すっと振り返ってタクトを持たずにオケに合図すると、実にユニークな曲想の哲学者の演奏が始まります。テンポは心持ち速めでヴァイオリンは現代風にノンヴィブラートで透明感を重視したもの。この曲は色々な演奏で随分な数を聴いていますが、いきなり驚かされたのが、シンプルなメロディーの多くが左右の第1、第2ヴァイオリンの緻密な掛け合いで交互に演奏されていること。特に指揮者の背後で左右の掛け合いが鮮明にわかる席だったので、その構成の緻密さにはかなり驚きました。シュテンツはフレーズごとにかなりはっきりとコントラストをつけ強弱を鮮明にコントロール。インテンポでハイドンの書いたメロディーを目一杯デフォルメしながら、のどかな曲想から目眩くように変化の面白さをあぶり出す見事なコントロール。そしてメロディーを担当するくすんだ音色のイングリッシュホルンが上手のオケ席後ろ、ホルンが下手のオケ席後ろで立って演奏するというユニークな配置で、オケの左右の掛け合いの面白さを強調。先に書いた弦楽器の左右対称配置と相まって、これがこの掛け合いの面白さを最大限に発揮させるための熟考された配置であることがわかりました。演奏はさながらファイのようにスリリング。というより、ファイよりスリリングでしかもやり過ぎ感は皆無な見事なまとまり。この曲をのどかなメロディーの魅力で聴かせる演奏は数あれど、これほどまでにスリリングな演奏は初めて。1楽章からコンサートマスターの豊嶋さんの見事なボウイングを間近で見ながら素晴らしい演奏を堪能。
1楽章が終わると、先ほどまで両翼に立って演奏していたイングリッシュ・ホルンとホルンの奏者が正面の席に戻ります。シュテンツが再び合図を送ると、このプレスト楽章では前楽章以上にヴァイオリンのキレが際立ち、左右のヴァイオリンの掛け合いはよりスリリングになり、全奏者が体を揺らしてシュテンツに指示されたアクセントを次々にキメていく快感に満たされます。特に第2ヴァイオリンのヴァイオリンの息のあったボウイングは見事。メヌエットは楔を打つようなアクセントをところどころに挟み、舞曲というよりはリズムにも大胆に変化をつけた構成で、オケはシュテンツの巧みな構成にしっかりとついて行く熱演。アタッカで来ると思った終楽章もしっかりと間をとって始まりますが、この湧き上がるような上昇感が各所に散りばめられた曲に対し、シュテンツはその度に体をブルブルと揺らしてオケを煽ります。シュテンツの指揮ぶりは決してタイミングの指示が明確なタイプではないのですが、オケの反応は完璧。よほど練習をしっかりしたとみえてシュテンツの意図に従ってというより意図を先読みして見事な演奏。最後の湧き上がるようなフィニッシュもピタリと決まって、このハイドンの小交響曲を見事に仕上げました。

シュテンツも最初の曲のオケの俊敏な反応に満足そうな笑顔で奏者をたたえていました。続く驚愕のために奏者が少し入れ替わります。

続く驚愕も実にスリリング! 聴きどころの1楽章は、冒頭、シュテンツのポイントの把握しにくい指揮に各パートの入りが少し乱れるところがありましたが、すぐに落ち着き、基本的に少し速めのテンポで、各パートだけでも極めて大胆なコントラストをつけたかなり踏み込んだデフォルメを利かせますが、パート間のスリリングなやり取りの面白さが際立ち、まるで初めての曲を聴くような新鮮さ。そして要所でブルブルと体を揺らしながらオケを煽りまくって炸裂させる波の連続と、やはりファイを上回るファイ感(笑) ヴァイオリンの音階のキレの良さもノンヴィブラートな透明感と相まって実に美しい透明感が漂い演奏に華を添えていました。
見事な1楽章から、肝心のびっくりアンダンテに入ると、やはり何か仕掛けがありそうな予感をさせる、抑えて穏やかな演奏。すると居眠りしていた打楽器奏者に対し、他の奏者がオケを横切りびっくりのところでティンパニを叩いて去るという演出付きでした。もちろんその後の展開部のスリリングさ、ダイナミックさは期待通り、重厚さよりスピードとキレを求めた迫力に圧倒される見事なコントロール。そしてメヌエットはオケの響きの起伏の変化の面白さが聴きどころ、フィナーレではところどころでテンポを極端に落として、熱を冷まして再び炸裂する迫力をますような演出をさせていたのがユニーク。もちろん、観客はおそらく予想外のハイドンの素晴らしい演奏に拍手喝采。誰もこれほどのハイドンが聴けるとは予想していなかったのではないかと思います。私にとっても実演でこれほどの素晴らしい演奏に接すると思っても見なかっただけに非常に満足度の高い演奏でした。

休憩を挟んで後半はこの日のメインディッシュであるヘンツェの交響曲7番。メシアンもデュティユーもブーレーズもリームも聴きますがヘンツェは初めて。この曲はベルリンフィル創立100周年を記念して委嘱され1984年にジャンルイジ・ジェルメッティによって初演された作品。ヘンツェがベートーヴェンの伝統に従い、急・緩・スケルツォ・急という楽章構成に従って作曲した曲で、後半2楽章はドイツの詩人フリードリヒ・ヘルダーリンに影響を受け、ヘルダーリンの苦悩や詩を音楽化したものとのこと。曲は4本のチェロにる暗鬱なメロディから始まり、予想通り不協和音のクラスターが乱舞する難解なものですが、指揮者の真後ろで聞くと、各パートがかなり緻密なコントロールで演奏していることがよくわかり、前衛画家の細密画を間近で眺めるような感じ。おそらく作曲意図はこの不協和音による混沌とした響きの微妙な変化にアーティスティックさを求めたものであろうかと思いますが、緻密さと迫力、そしてオケの見事な演奏はわかったものの曲の真意を汲み取るまでには至りませんでした。まずはこちらの器の問題でしょう。シュテンツの指揮は見事で、オケも一糸乱れぬ快演ということで、最後はカーテンコールが繰り返されました。終演後嫁さんが「武満の偉大さがわかったわ」と意味深なことを呟きましたが、やはり音楽にはテーマがあり、ヘンツェの混沌は常人には難解だということでしょう。

久々の新日本フィルでしたが、オケの演奏水準は非常に高く、前半のハイドンの素晴らしさもあって、楽しめたコンサートとなりました。



ここ数日は母親はショートステイで介護の心配はないため、錦糸町で一杯やって帰ることにしました。

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食べログ:酒屋ばる Tocci

すみだトリフォニーホールの道路を挟んで向かいにあるバル。嫁さんが行きに見かけて良さそうだと目星をつけておいた店。満員の賑わいでしたが、幸い2席のみ空いていてすぐに入れました。お酒はビール、ワイン、日本酒、ウィスキーとなんでも御座れのお店。すぐにオススメのヒューガルテンとワインレモネード(笑)で乾杯。

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まずは豚のハムをつまみます。

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しらすの入った揚げ物。名前忘れました(笑) ビールに合いました。

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喉が渇いていたので、すぐにお酒を追加。グラスの白にスパークリング。

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そして生うにのリゾット。これがウニの香りが乗ってなかなか。量もかなりあって、この辺で打ち止めにしても良かったんですが、、、

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メニューに気になるものがあり、注文してみたのが焼きアボカド テキーラの香り。炎に包まれて出てきたアボカド。日が消えて熱々のところをスプーンですくって食べますが、これが絶妙に美味い。これは見事なアイデアですね。

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そしてイタリアンバルの定番、トリッパ。これも香ばしくて美味かった。

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今日は非常に充実したコンサートだっただけに酒が進みます。私はマッカランをニートでいただきます。昔は何本もいただいたマッカランですが、最近はご無沙汰。口に含んだ瞬間、マッカランらしい蜜のような甘みとバランスの良い樽の香りが広がります。いやいやいいですね。

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嫁さんはバニラアイスのバルサミコソース。ウィスキーとは違う甘みに嫁さんも満足げ。ここはカジュアルな感じでお酒の種類も多く、コンサート帰りに一杯飲むのにオススメのお店でした!



いやいや、この日はいいコンサートでした。マルクス・シュテンツ、要チェックです。新日本フィルの中の人、ハイドンを再びプログラムに入れてください!

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tag : 哲学者 驚愕

サッシャ・ゲッツェル/読響の第九(サントリーホール)

またまた旅行記の途中ですが、コンサートに顔を出しましたので、コンサートレポートです。

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読売日本交響楽団:第607回名曲シリーズ

ちょっと懐かしいエマニュエル・クリヴィヌが読響を振るということでチケットをとってあったものですが、なんとコンサートの少し前に読響からハガキが届き、クリヴィヌは健康上の問題で来日できず、代役としてサッシャ・ゲッツェルというオーストリアの人が振るとのこと。クリヴィヌが聴けないのは残念ですが、私にとって未知の指揮者が聴けるということで、出かけることにしました。

日本ではなぜか年末に第九を聴く風習があり、各オケとも有力な指揮者で第九を当てて来ます。なんとなく昔はそのマーケティングには乗らずにいたんですが、ブログを書き始めて以降、2011年から3年ほど年末の第九を聴きにいっており、最近は第九をよく聴いているという感触でしたが、調べてみると2013年を最後にしばらく空いていて、今年は久しぶりの年末の第九鑑賞。

2013/12/26 : コンサートレポート : デニス・ラッセル・デイヴィス/読響の第九(東京オペラシティ)
2012/12/21 : コンサートレポート : カンブルラン/読響の第九(サントリーホール)
2011/12/27 : コンサートレポート : スクロヴァチェフスキ/N響の第九(サントリーホール)
2011/11/03 : コンサートレポート : 【サントリーホール25周年記念】ホグウッド/N響の第九

ということで、チケットを取る時はN響のエッシェンバッハとクリヴィヌの読響で迷ったのですが、バリトンに妻屋さんが出るということで読響を取った次第。妻屋さんは、先日聴いた高関健と東京フィルの天地創造のラファエル、アダムが実に朗々とした歌唱が素晴らしかったので印象に残ってます。

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これまでに行った第九のコンサートもたまたまというか、なぜか全てサントリーホールでのコンサート。この日もサントリーホールですが、今年はサントリーホールはしばらくお休みして改装工事をしており、私はこの日が改装後はじめてのサントリーホールのコンサートです。ネットで情報収集してみると、今回の改装ではステージの床板の全面張り替え、客席のシート張り替え、パイプオルガンのメンテナンス、トイレ増設、バリアフリー化、照明のLED化、舞台機構のメカニックの最新化などだそうで、音響面は変更なしとのことでした。

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ということで、いつも通り先に着いていた嫁さんがドリンクコーナーでワインを注文して待っていてくれたので、仕事帰りで立ち寄った私も一杯やって士気を高めます。ちなみにサントリーホールのドリンクコーナーで以前赤ワインを注文すると、よく冷えた(笑)赤ワインが供され、お酒の文化を先導するサントリーの運営するホールとは思えない状況だったんですが、今回は赤ワインは適温、白もよく冷えていて、私にはこの点が改装の恩恵が一番感じられたところ。惜しむらくは、サントリーが誇る色々なワインが選べてもいいと思うのですが、、、

この日の席はお気に入りのRA。2階のステージ真横の席。コーラスの編成が大人数の時はステージ裏の客席にコーラスが入ることがありますが、この日はコーラスもステージ上に収まりました。

この日、クリヴィヌの代役として急遽指揮をとることになったサッシャ・ゲッツェル(Sascha Goetzel)についてさらっておきましょう。1970年ウィーン生まれで、グラーツ音楽大学、ジュリアード音楽院などで学び、小澤征爾の招きでタングルウッド音楽祭の研修指揮者を経験。その後ウィーンフィルのヴァイオリン奏者を務めながらシベリウスアカデミーで指揮を学び、2001年にウィーンフォルクスオーパーで指揮者デビュー。その後ベルリン交響楽団、バーミンガム市響など各地の有名オケを振る一方、日本でも神奈川フィルの首席客演指揮者を務めるなど、日本でも活動しているとのことでした。読響には今年の4月に客演しているそうです。現在はトルコのボルサン・イスタンブールフィルの芸術監督とのこと。

今回芸劇、サントリーホール、大阪フェスティバルホール、みなとみらいなど4カ所6公演の代役ということで、それなりの実力とスケジュールの両方が合ったということでの代役でしょうが、ゲッツェルにとっては日本での知名度を上げる好機となったことでしょう。

歌手と合唱は下記の通り。
ソプラノ:インガー・ダム=イェンセン(Inger Dam-Jensen)
メゾソプラノ:清水華澄(Kasumi Shimizu)
テノール:ドミニク・ヴォルティヒ(Dominik Wortig)
バス:妻屋秀和(Hdekazu Tsumaya)
合唱:新国立歌劇場合唱団
合唱指揮:三澤洋史(Hirofumi Misawa)

コンサートの方は、おそらくゲッツェルのことを知らないお客さんがほとんどだったと思われますが、サントリーホールが完全に埋まってます。先週のみなとみらいのデュトワ/N響のコンサートが4割くらいの入りだったのと対照的。やはり第九はお客さんが入るということでしょう。

定刻となり、コーラスとオケが入場、そしてゲッツェルが指揮台に登壇。全く予備知識なしに行きましたので、どのような音楽を繰り出すのかわかりませんでしたので興味津々。登壇したゲッツェルはプロフィール写真とは異なり、ロン毛のちょいワルオヤジ分のイケてる感じの人でした。

1楽章は、ダイナミクスを重視しながらも、丁寧なコントロールでベートーヴェンの燃えたぎる音楽を手探りで形にしていくよう。オケが十分に暖まっていないのか少々テンポが落ち着かないところもありましたが、時折クライバーばりに左右に大きく指揮棒と体をくねらせてオケの響きの深みを求めるなど、オケを鳴らし切ろうとするところが多々あり、徐々にオケもそれに刺激されて活気がみなぎってきます。2楽章に入ると、若手らしく鋭いアクセントでグイグイとオケを煽り、オケもだいぶこなれてきました。歌手は3楽章の前に入場。そして3楽章に入ると意外にテンポを落としてこの曲のジワリとくる静寂感を活かすよう、オーソドックスに攻めてきました。響きの流麗さはまだまだ磨くべきところはあるものの、力感を軸にしながら楽章間のコントラストをしっかり意識していて悪くありません。そして特に良かったのが終楽章。畳み掛けるような迫力と、かなりはっきりと音量を落とすところを設けてコントラストを鮮明に表現。迫力一辺倒の演奏とはならず、ダイナミクスが心地よく流れるなかなかのコントロール。そしてバスソロの妻屋さんの第一声が轟くと場内の雰囲気が一変。体の芯から轟く素晴らしいバスに完全にのまれます。ステージ横から見下ろす席から見ると、場内のお客さんが圧倒されているのが良くわかりなす。この一瞬の轟き、神々しさ、そして人の声のもつ浸透力。そして、コーラスが入るとさらに響きにしなやかな厚みが加わり、オケの演奏も一段ギアチェンジ。やはり第九の終楽章の神々しさは素晴らしいですね。歌手も妻屋さんを筆頭に非常にレベルの高い歌唱。コーラスも一糸乱れぬ名唱で盛り上げ、最後はゲッツェルがフルトヴェングラー並みにテンポアップして終了。ゲッツェルを知っている人も知らない人も楽しめるいい演奏でした。

ゲッツェルも満足いく演奏だったのか、歌手とコーラス、そしてオケの各パートの奏者をたたえますが、ピンチヒッターだからかカーテンコールからの切り上げも早くさっぱりとしたものでした。このへんの謙虚さもなかなか良かったですね。

この日のプログラムは第九1曲でしたので、カーテンコールを含めても20:30にはホールを出られました。サントリーホールのコンサートの反省会の定番、向かいのスペインバルを嫁さんが21:00に予約していたんですが、この日は21:00まで団体客で貸切り。仕方なくコンサートの余韻を楽しみながら、ホール前の広場で少し待ってからお店に入りました。

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バレンシアナ バル ブリーチョ

最初はテンプラニーリョとサングリア。

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頼んだチーズがなかったということで代わりに出されたハードチーズ。味は変わったものではないのですが、変わっていたのは蜂蜜をつけて食べること。これが実に美味。日本人には思いつかないアイデアにちょっと驚きます。

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この日のオムレツにジャガイモのグリル。オムレツはマヨネーズが合わせて出されました。これもなかなか美味。

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レンズ豆、生チョリソの軽い煮込み。いつも頼む定番。独特の香りがお酒に合って旨いんです。

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こちらはブラックベリーのシードル。不思議な(笑)味でした!

ということで、軽めの夕食を兼ねた反省会を楽しんで帰りました。ここ、サントリーホールのコンサート帰りにはおすすめです。

年内のコンサートはこれで打ち止め。また旅行記に戻ります(笑)

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tag : ベートーヴェン

シャルル・デュトワ/N響の王妃、嘆き、スコットランド(横浜みなとみらいホール)

旅行記の途中ですが、12月16日はチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団2017横浜定期演奏会

このコンサート、シャルル・デュトワがハイドンを振るということでチケットを取ったのですが、お目当てはハイドンばかりではありません。2曲目置かれた細川俊夫の「嘆き」もちょっと気になる存在。というのもこの「嘆き」、2013年のザルツブルク音楽祭で、この日の組み合わせであるデュトワとN響、そしてアンナ・プロハスカで初演されており、その模様はNHKの番組で観ています。すなわち今日は初演コンビでの演奏ということです。また、今年の7月にはノットと東響、藤村実穂子の組み合わせで藤村のためにメゾ・ソプラノ用に用意された改訂版も実演で聞いてその素晴らしさを味わっています。

2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)

また、アンナ・プロハスカはDGから歌曲集をリリースしており、その中にハイドンの英語によるカンツォネッタ「人魚の歌」が含まれていたので、こちらも一度記事にしています。

2013/09/24 : ハイドン–声楽曲 : アンナ・プロハスカの歌曲集(ハイドン)

もちろん、デュトワのハイドンも一度取り上げています。デュトワの唯一のハイドンの録音であるパリセットは定番の一つですね。

2012/12/17 : ハイドン–交響曲 : デュトワ/モントリオール・シンフォニエッタの87番

ということで、私にとってこの日のプログラムは非常に興味深いプログラムな訳ですね。

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この日は晴天。いつものように早めにみなとみらいに到着。ホールに入ると全面ガラスのホワイエからの眺めは気持ちの良いもの。

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開演まで時間があるので、いつものようにワインを頼んで、景色をツマミにのんびりさせていただきました。

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この日の席は2階席の真正面。いつもは右側を選ぶのですが、たまには正面でということで取った席。ちなみにこの日の席の埋まり具合は4割弱ぐらいだったでしょうか。2階席の左右後方は誰も居ない感じ。ちなみに数日前にサントリーホールで2夜連続同じプログラムで演奏されたということで、首都圏で3日目ということでこの入りだったんでしょう。また、翌日は福島の磐城で同じプログラムゆえ計4日の興行ということになりますので、N響としても第九並みに力の入った演目という扱いでしょうが、メインがメンデルスゾーンということで第九ほどの集客力はなかったというオチでしょう。

定刻になってオケの奏者がステージ上に現れ始めると拍手で迎えるのはこのホールの習わしでしょう。メンバーが揃ってチューニングが終わるとデュトワが颯爽と登場。1曲目の王妃は手元のアルバム同様、スタイリッシュな演奏でした。全体の設計がしっかりるのでテンポやアゴーギクには揺るぎない安定感があり、逆にスリリングな感じは皆無。そしてオケの奏者もデュトワの指示に従って正確にトレースしていく感じ。パート間の音量のバランス、デュナーミクの変化、アクセントなどまるでセッション録音を聴いているような安定感。古典の構築美をデュトワ流にさらりと表現したという感じの演奏でした。プログラム構成上も完全にハイドンは前座。もう少し攻めてくるかと思いきや、オケのアイドリングのような演奏でした。

観客の拍手もそこそこに切り上げ、ステージ上は次の細川俊夫の「嘆き」に向けて歌手の歌うスペースを用意して、奏者も増えます。そしてプロハスカとデュトワが登場し、場内はハイドンの時以上に盛り上がります。

この「嘆き」は東日本大震災で子供を失った母親のために書かれた哀悼歌。曲については先のノットのマーラーの記事に触れてあります。7月に聴いたジョナサン・ノットの演奏が静寂から響きのクラスターがめくるめくように湧き上がる鋭利な印象を感じさせたのに対して、デュトワの演奏は、大河の流れにキラメキが漂うよな演奏。ユッサユッサと大きなモーションでオケに的確な指示を与えて、その度にオケの響きが湧き上がってくるため、ハイドンどうよう盤石の安定感。ノットのシャープな表現に対して、デュトワは余裕すら感じるコントロールでこの曲を完全に掌握している感じ。時折り鳴らされる鈴やりんの音が祈りの感情を想起させます。ソプラノのプロハスカは鳥肌が立つような高音の伸びと透明感が見事。藤村実穂子が語りでも豊かなニュアンスを聴かせたのに対し、やはり高音の抜けるような伸びやかさが見事。哀悼歌という心情をうつくしさに昇華した印象。もちろん、最後の音が静寂に包まれると万雷の拍手が降り注ぎます。プロハスカの絶唱に観客から惜しみない拍手が注がれました。

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休憩を挟んで後半はメンデルスゾーンの「スコットランド」。私にとってこの日のコンサートのお目当ては前半で、後半は完全にオマケという感じでした。ハイドンもバッハもマーラーもブルックナーも武満も細川もブーレーズも好きなんですが、メンデルスゾーンは完全に守備範囲外。手元にはアバド/ロンドン響の1968年のスコットランドとイタリアにこれもアバド/ロンドン響の80年代の交響曲全集くらいしかありません。スコットランドを聴くのも実に久しぶり。結論から言うとデュトワのメンデルスゾーンのスコットランド、素晴らしい演奏で、目からウロコが落ちた感じ。N響のデュトワに対する絶大な信頼が感じられる素晴らしい演奏でした。絵画的と言われるこの曲ですが、冒頭からデリケートな情景描写の巧さと、明るいメロディーの伸びやかさ、揺るぎない全体設計、一糸乱れぬオケの安定感、そしてハイドンの時以上の完璧な音量バランスで、まさに完璧な演奏。冒頭のハイドンの時にはちょっと安定感と完成度重視で踏み込み不足を感じたんですが、流石にコンサートの目玉にしただけあって最後のファンファーレの部分の堂々とした響きで場内を圧倒。もちろん素晴らしい演奏に惜しみない拍手が送られました。

いやいや、N響にデュトワありとの存在感を見せつけた感じ。やはりオーケストラコントロールにかけては素晴らしい才能を持った人だと再認識しました。嫁さんも、「流石に上手いわね〜」とにっこり。この素晴らしい演奏にしてはお客さんの入りが残念でした。後で聞きましたが、この日はJRが午後動いていませんでしたのでその影響もあるかもしれませんね。

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終演後のホワイエからの景色は陽が少し傾いて雲が目立つようになっていました。

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この日は叔母に母親の留守番を頼んで出かけてきましたので、家路を急ぎました。
デュトワとN響、次のコンサートも要チェックです。

(付記)
この日のプログラムでは、ハイドンの85番のタイトルが「女王」となっていましたが、原題の"La Reine" の直訳は女王でしょうが、この曲にこのニックネームがついた経緯はルイ16世の王妃であったマリー・アントワネットが愛好したという由来を考慮すれば「王妃」が正しいでしょう。

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ジョナサン・ノット/東響の「ドン・ジョヴァンニ」(ミューザ川崎)

旅行記の途中ですが、猛烈に良かったコンサートレポートを書いておきましょう。

ちなみに現在記載中の旅行記の旅行から帰ったのが12月1日金曜日。実はその翌日12月2日にもコンサートのチケットをとってあり出かけました。東京芸術劇場で行われた読響のコンサート。目玉はドラムの名手、ピーター・アースキンのためにイギリスの作曲家マーク=アンソニー・タネージが書いたドラムス協奏曲「アースキン」の日本初演。こちらの方は時間があれば、別途触れることにして、本題に入りましょう。

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東京交響楽団:コンサート情報:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

このコンサートは、昨年同じくノットと東響での「コジ・ファン・トゥッテ」があまりにも素晴らしかったんで、早くからチケットをとってあったもの。ノットと東響のコンサートは最近かなり行ってます。

2017/10/15 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の86番、チェロ協奏曲1番(東京オペラシティ)
2017/07/23 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「浄められた夜」、「春の祭典」(ミューザ川崎)
2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)
2016/12/12 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「コジ・ファン・トゥッテ」(東京芸術劇場)

ノットと東響のコンサートは最近お気に入り。「コジ・ファン・トゥッテ」がかなり面白かったことから通い始めましたが、前回聴いたハイドンの86番は、ちょっとせせこましくて、ノットの指揮する演奏では今ひとつな印象で、逆にハイドンの演奏の難しさというか、奥行きを再認識した次第。

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この日のコンサートの配役は下記の通り。

指揮&ハンマーフリューゲル:ジョナサン・ノット(Jonathan Nott)
ドン・ジョヴァンニ:マーク・ストーン(Mark Stone)
騎士長:リアン・リ(Liang Li)
ドンナ・アンナ:ローラ・エイキン(Laura Akin)
ドンナ・エルヴィーラ:ミヒャエラ・ゼーリンガー(Michaela Selinger)
レポレッロ:シェンヤン(Shenyang)
マゼット:クレシミル・ストラジャナッツ(Kresimir Stražanac)
ツェルリーナ:カロリーナ・ウルリヒ(Carolina Ullich)
ドン・オッターヴィオ:アンドリュー・ステープルズ(Andrew Staples)
合唱:新国立劇場合唱団
演出監修:原純(Jun Hara)

入り口で手渡されたプログラムには「【謹告】出演者変更のお知らせ」というチラシが挟まれ、主役のドン・ジョヴァンニとドンナ・エルヴィーラの歌手が急病のため当初の予定から変わったとのこと。

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この日の開演は15:00ということで、いつものように少し早めについて、ホワイエで嫁さんとワインを楽しんプログラムやらチラシやらをチェックして開演時刻を待ちました。この日の配布物には「オペラ『ドン・ジョヴァンニ』を彩る楽器たち」というチラシが含まれていましたがこれが秀逸。ハンマー・フリューゲル、ティンパニ、マンドリン、トロンボーン、オーボエ、クラリネットなど演奏に使われる楽器の解説が書かれていますが、内容が非常に良くできていて役にたちました。制作はリトルミューザという小学生から高校生までのコミュニティ。これはいい取り組みですね。

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席はお気に入りのステージ右側の2階。歌手は横から聴くことになりますが、何より指揮姿はよく見えますし、オケの響きも程よくダイレクトで音響は申し分なし。

ステージ上には演出用に白と赤の布がかけられた大きな箱が一つ置かれています。ティンパニはバロックティンパニ、そして先ほどのチラシに解説があったハンマーフリューゲルが中央に置かれています。

開演時刻になり、オケのメンバーが登場し、チューニングを終えるとノット登場。序曲からタイトに引き締まったビヴラートを抑えた古楽器風の響きに包まれます。前回の「コジ・ファン・トゥッテ」同様、アクセントをきっちりつけ、フレージングは非常に表情豊か、そしてテンポはかなり自在に動かしながらゆったりとしたところときりりと引き締めるところの対比を鮮明につけ、軽やかなところの爽快感はノットならではの高揚感。やはりモーツァルトはノットの演奏スタイルに合っているのでしょう。序曲が終わって、ハンマー・フリューゲルを実にニュアンス豊かに自ら弾きながら音楽を紡ぎ出していく様子は見事。ハンマー・フリューゲルの入り一つで曲のニュアンスが変わってしまいますので、他の人に任せるわけにはいかないのでしょう。歌手の主役のドン・ジョヴァンニ役はイケメンバリトンで代役ながら素晴らしい演技と歌唱。レポレッロはちょっと太め(笑)で道化役にしてはちょっと演技のキレが悪いですが、歌はよかったです。そして最初に殺されてしまう騎士長は役に負けない素晴らしい声量のバスで迫力十分。ドンナ・アンナは抜けるようなクリアなソプラノで役の期待通りの美しいソプラノ、ドン・オッタヴィーオは実に味わい深い円熟の演技が光るテノール。そして物語の展開を左右するドンナ・エルヴィーラはこちらも代役ながら演技力も歌唱も見事なレベルで、代役とは思えない素晴らしい存在感でした。そのほかツェルリーナ、マゼットとも含めて歌手は皆見事な演技と歌唱ということでジョナサン・ノットによると思われる歌手の配役は皆レベルが高くこれも見事。
第一幕ではモーツァルトの書いたアリアが次から次へと湧き出てくる素晴らしさを堪能できました。特にレポレッロのカタログの歌の軽やかなオケ、そして何より登場人物それぞれの複雑な思いが交錯しながら一つのメロディーにまとめ上げて行くモーツァルトの見事なアンサンブルが味わえる第一幕半ばの四重唱と第一幕最後のアンサンブルの見事なことと言ったらありませんでした。
オケはバロックティンパニの硬質な響きで引き締まって迫力十分。小規模オケにも関わらずキレ味鋭い俊敏な反応でミスらしいミスはなしで完璧でした。
25分の休憩を挟んで第二幕でよかったのはマンドリンの伴奏によるドン・ジョヴァンニのカンツォネッタ「窓辺にいでよ」。舞台下手から登場したマンドリン奏者の女性がドン・ジョヴァンニの横に座って奏でるマンドリンの響きの美しさは素晴らしかった。そして女心を射止めようとするドン・ジョヴァンニの歌が引き立ちました。そして何と言ってもハイライトはやはり最後の騎士長が登場する地獄落ちの場面でしょう。騎士長の亡霊がノックするところから始まる最後のクライマックスは迫真の歌唱と演奏。演出ではドン・ジョヴァンニが拳銃自殺してしまうという落ちでしたが現代風の演奏会形式の舞台にマッチしていてなかなかよかったです。終曲ではドン・ジョヴァンニが生き返って歩き回る大団円。最初から最後まで緊迫した歌唱と演奏に惜しみない拍手が送られ、ノットと歌手陣が何度も何度も呼び戻されるカーテンコールが続きました。

昨年のトーマス・アレンを中心とした歌手陣もよかったですが、このドン・ジョヴァンニのメンバーも実に良かった。そしてノットと東響も素晴らしい演奏で舞台を盛り上げました。非常にレベルの高い舞台にこの日の観客は熱狂。心に残るコンサートとなりましたね。

プログラムには早くも来年の12月にフィガロの結婚が組まれるとの速報が掲載されていました。ノットの素晴らしいモーツァルトのダポンテ3部作が完結することになりますね。こちらも必聴でしょう。

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tag : モーツァルト

ジョナサン・ノット/東響の86番、チェロ協奏曲1番(東京オペラシティ)

10月15日日曜は以前からチケットを取ってあったコンサートに出かけました。

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東京交響楽団:東京オペラシティシリーズ 第100回

最近、ちょっとお気に入りのジョナサン・ノット。昨年末に聴いた演奏会形式の「コジ・ファン・トゥッテ」があまりに素晴らしかったので、その後も何回かコンサートに通っています。

2017/07/23 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「浄められた夜」、「春の祭典」(ミューザ川崎)
2017/07/17 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響のマーラー「復活」(ミューザ川崎)
2016/12/12 : コンサートレポート : ジョナサン・ノット/東響の「コジ・ファン・トゥッテ」(東京芸術劇場)

コジ・ファン・トゥッテはキビキビとした進行に実に多彩な表情をつけて長いオペラを一気に聴かせる素晴らしい演奏でしたし、復活はオケを鳴らしきるど迫力の演奏。そして「浄められた夜」の精緻な透明感と曲ごとに多彩な表情を見せる人。そのノットがハイドンを振る、それも好きな86番にチェロ協奏曲ということでチケットを取ったもの。プログラムは下記の通り。

ハイドン:交響曲第86番 ニ長調 Hob.I:86
ハイドン:チェロ協奏曲 第1番 ハ長調 Hob.VIIb:1 チェロ独奏:イェンス=ペーター・マインツ(Jens Peter Maintz)
モーツァルト:交響曲 第39番 変ホ長調 K.543

ハイドンを振るのにいきなり玄人好みの86番を取り上げるあたりが流石のプログラミングセンス。ハイドンとモーツァルトという2人の作曲家の代表曲の影の傑作交響曲を並べるという趣向でしょう。そして協奏曲にはチェロ協奏曲1番ということで完璧に私好みのプログラムなんですね。



さて、日曜のコンサートということで、少し早めにオペラシティについて、こちらもお気に入りのお店で腹ごしらえ。

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食べログ:HUB 東京オペラシティ店

東京オペラシティの地下1階にある英国風パブチェーンのHUB。コンサート前の腹ごしらえはここです。

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ギネスにレッドアイを頼んで、まずは喉を潤します。

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そして、なぜかいつも頼むザ・フィッシュ&チップス。ビールのつまみになります。のんびりとビールを楽しんでいるうちに開場時刻となり、ホールに向かいます。

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この日の席は2階席のステージ右の一番奥の方。オケを上から眺める席です。しかも指揮者の指示が非常によく見える席。ステージ上は小規模オケということで余白たっぷり。ステージの真ん中だけ使うくらいで、マーラーやブルックナーの時のステージいっぱいに席が並ぶのとは異なりスッキリした感じ。客席の入りは5〜6割とあまりぱっとしません。やはりこのプログラムではお客さんが入らないのでしょうか。

定刻になりオケが入場し、ジョナサン・ノットもいつものようにステージに勢いよく駆け出てきて、注目の86番。ノットがタクトを下ろすと聴き慣れた序奏のメロディーが響きますが、最初はオケがまだ硬い感じなのに加えて、オケの直上の直接音主体の響きも手伝って、奏者の微妙な入りのタイミングの差が少々気になります。ノットのコントロールはフレーズごとにかなり表情をはっきりつけながらも、古楽器風の清透な響きを意識したもの。主題に入って86番独特の規則的なリズムを刻んでいく部分もちょっとリズムを重くしたり、軽くしたりと念入りな表情づけ。ノットの指揮も特に強音部ではかなり細かくタクトを振り回すので忙しい印象を与えます。なんとなくリズミカルなこの曲の魅力が、演出過剰でゴテゴテした印象もついてしまった感じ。ただし聴き進むうちにオケも徐々にこなれて、音楽の流れも良くなっていきます。1楽章も終盤になるとノットの激しい煽りでライブらしい高揚感に包まれます。
続く2楽章のカプリッチョは、古楽器風に少し速めのテンポで、この楽章もノット風のテンポを微妙に細かく変えながらの演奏。アクセントをかなり明確につけるので、メリハリは十分。そしてメヌエットは覇気十分で活気ある舞曲。今少し優雅さがあればとも思いますが、このゴツゴツとした感触を感じるデフォルメがノットの特徴でしょう。そして終楽章は渾身の力演。これは生ならではの盛り上がりを感じさせます。最後はノットの煽りで小規模なオケといってもホールに轟く大音響で終わり、盛大な拍手に迎えられました。

ステージ上にチェリストが乗る台が運ばれ、一部の奏者が入れ替わって、次のチェロ協奏曲。チェロのイェンス=ペーター・マインツとノットが登壇。マインツは長身ですね。チェロ協奏曲の伴奏は86番同様、ノット風に小刻みな表情づけが行われますが、協奏曲ゆえ基本的に流れの良い演奏なので、86番ほどノットの表情づけが気になることはありません。チェロのマインツは非常にキレの良いボウイングでいきなり観客の耳を釘付けにします。特に早いパッセージの鮮やかさは目もくらむほど。テンポよくキレの良いチェロでハ長調のこの曲の明るい推進力あるメロディーを先導します。1楽章のカデンツァはマインツの美音とボウイングの鮮やかさを印象付けるもの。オケも86番よりも流れが良くなり、マインツのキレの良さがノットの鮮やかな面を引き出し、掛け合いの面白さも活きる演奏でした。
続く2楽章のアダージョはマインツの美音の鮮やかさが際立ちました。大柄なマインツが弾くとチェロが小さく見えるほどで、楽器をコントロールし尽くしている感じ。2楽章のカデンツァは現代音楽風の不協和音をも織り交ぜ静寂を印象付ける踏み込んだもの。マインツが完全に観客をのんでいました。フィナーレはチェロの超絶テクニックの聴かせどころ。特に速いパッセージのボウイングの鮮やかさは素晴らしいものがありました。あまりの鮮やかさに聴衆からは嵐のような拍手が降り注ぎました。やはりソロがキレると協奏曲はいいですね。何度かのカーテンコールで、マインツが平台からノットを指揮台に乗せる場面があり、指揮台に乗ったノットがようやくマインツに背が届くとわかって会場は笑いに包まれました。アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲3番からサラバンド。チェロの豊かな低音の唸りを祈りに昇華させるようなアーティスティックな演奏に聴き惚れました。

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休憩を挟んで後半はモーツァルトの39番。オケの編成はほぼ変わらず、コントラバスが2本から3本に増えたくらい。このモーツァルトはハイドンとはまたスタイルを大きく変えてきました。ほぼ古楽器の演奏と思わせるようなリズムの早打ちに、ほぼノンヴィブラートで澄み切った音色を強調するヴァイオリン、そして細かい表情づけは少し後退して優雅さを感じさせるような大らかさも持ち合わせた演奏。1楽章の美しいメロディーの繰り返しにうっとり。ハイドンではあれだけ緻密に表情づけをしていたのに対し、モーツァルトの天真爛漫なメロディーに触発されたのか、流れの良さはだいぶ上がってきています。演奏のテイストは一貫して、2楽章、3楽章、フィナーレと安心して身を任せられる演奏でした。もちろん観客は大満足の演奏だったようで、最後も盛大な拍手に包まれました。



これで4回目のジョナサン・ノットのコンサート。今回は私好みのハイドンの曲中心のプログラムでしたが、このハイドンが演奏の難しさを感じさせるものでもありました。期待の86番はノットのせわしない指揮が曲のシンプルな魅力を表現しきれていない印象も残してしまいました。チェロ協奏曲はソロも含めてなかなかいい演奏、そして後半のモーツァルトは期待以上の素晴らしさでした。86番については好意的に聴いた人も多かったかと思いますが、日頃ハイドンばかり聴いている私ゆえの辛口コメントということでお許しください。

さて、次のノットはドン・ジョバンニです。昨年のコジ・ファン・トゥッテは名歌手トーマス・アレンの魅力もあり素晴らしい舞台でしたが、ドン・ジョバンニは如何に仕上がってくるでしょうか。今から楽しみです。

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tag : 交響曲86番 チェロ協奏曲1番 モーツァルト 東京オペラシティ

高関健/東京シティフィルの天地創造(東京オペラシティ)

昨夜は気になっていたコンサートに出かけました。

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東京シティフィルハーモニック管弦楽団:第309回定期演奏会

コンサートに行くたびにチラシで次のコンサートを物色するのですが、なんと今週来週、東京で天地創造が2回も取り上げられます。一つがこちらの高関健の振る東京シティフィル、もう一つが大野和士の振る都響。東京がアイゼンシュタットになったような祝祭感! 両方とも聴きたかったのですが、いろいろな都合もあり、なんとなく聴いたことのなかった東京シティフィルの方のチケットを取った次第。

指揮・チェンバロ:高関 健(Ken Takaseki)
ソプラノ:安井 陽子(Yoko Yasui)
テノール:中嶋 克彦(Katsuhiko Nakashima)
バス:妻屋 秀和(Hidekazu Tsumaya)
合唱:東京シティ・フィル・コーア(TCPO Chor)
合唱指揮:藤丸 崇浩(Takahiro Fujimaru)

高関健も東京シティフィルも名前はもちろん知っているものの録音も含めて聴くのはまったくはじめて。
高関健は群馬交響楽団のイメージがありますが、国内の主要オケの音楽監督を歴任し、今は東京シティフィルの常任指揮者と京都市交響楽団の首席客演指揮者で芸大指揮科の教授を務める人。1955年生まれで桐朋学園在学中にカラヤン指揮者コンクールジャパンで優勝し、ベルリンでカラヤンのアシスタントを務めていたそう。その後、バーンスタイン、小澤征爾に師事するなど、桐朋、カラヤン、バーンスタインという流れは小澤征爾と同じなんですね。
東京シティフィルは東京に数多存在するオーケストラのうちの一つで、なんとなくN響、読響などとはランクがちょっと違う感じですが、最近の在京オーケストラの水準は以前とは比べものにならないほど上がっていますので、お手並み拝見といったところ。

天地創造のアルバムのレビューは数えてみたら51種も書いていましたが、コンサートはこれまで2度のみです。

2017/06/04 : コンサートレポート : 鈴木秀美/新日本フィルの天地創造(すみだトリフォニーホール)
2010/10/31 : コンサートレポート : アーノンクールの天地創造(サントリーホール10/30)

ハイドンの作品の中でも最高傑作であり、天地創造というコーラスを伴う大規模なオラトリオは録音よりも生で聴きたいものですね。この日のコンサートはお手並み拝見といった気持ちでチケットを取ったわけですが、結果からいうと実に素晴らしいコンサートで、天地創造という名曲を存分に楽しめる超名演でした。



この日の会場は東京オペラシティ。いつも通り西新宿の職場から歩いてオペラシティに参上。先に待っていた嫁さんと合流して、いつも通りサンドウィッチとワインで腹ごしらえ。

IMG_9716 (1)

ワインはいつものものではなく、東京オペラシティ開館20周年記念で勝沼の鳥居平今村の甲州とブラッククイーンが供されており、それを注文。お腹も満ちたところで、いざ、天地創造です。

この日の席は1階前方中央と日頃めったに取らないS席。6列目でしたがステージが拡大されていたので、実質4列目。普段は上から俯瞰できる2階席右側を取るのですが、そちらが空いていなかったので、珍しくS席とした次第。オケの至近距離で響きもダイレクトですが、前方の奏者以外の奏者の様子がよく見えないので、眺めは今ひとつです。

ほどなくコーラスのメンバーが登場。ステージ後方にかなりの人数が並びます。そしてオケも天地創造としては大編成でしょう。オペラシティーのステージが狭く感じるほど。定刻になり歌手と高関健が登場。高関健さんはなんとなく近所のおじさんがタキシードを着てステージに上がったような気さくな感じ(笑) このところファビオ・ルイージ、ジョナサン・ノット、エリアフ・インバル、エサ=ペッカ・サロネンとスタイリッシュな指揮者のコンサートが続いていましたので、隣の嫁さんも指揮者というのはスタイリッシュなものだと思い込んでいたとのこと。高関健はチェンバロも兼ねているので、指揮台はなくステージにたち、チェンバロを20センチくらいの台に乗せ、立ってチェンバロと指揮をこなすスタイル。オケの東京シティフィルも、普通のオケにはいるギラついたオーラを発するような奏者は見当たらず、なんとなくアマチュアオーケストラ風な佇まい。

高関健が拍手に応えて実に気さくに微笑み観客に向かって挨拶を終え、奏者の方に向き直って両手を振り下ろすと、第一部冒頭の混沌の描写が始まります。響きはゆったりとしたもので最初はかなり遅めのテンポでじっくりと描いていきます。ヴァイオリンも丁寧すぎるくらい表情をつけたボウイングで、これより遅いと音楽が停滞しかねないくらい。コンサートの冒頭ゆえかオケもまだ少し硬い感じがありますが、奏者の数が多いので迫力はかなりのもの。そして注目のラファエルの第一声。ラファエルとアダムはバスの妻屋秀和。この日の妻屋さん、実に素晴らしかった。大柄な体に似つかわしくキリリとひきしまったバスがホールに轟きます。ラファエルこそ天地創造の要が持論ですが、アーノンクールの来日公演でのフローリアン・ベッシュの度肝を抜くような声量には及ばずとも、存在感と伸びやかさは十分。そこからのオケが徐々にオケが目覚めて湧き上がるように盛り上がります。ウリエルの中嶋克彦は非常に柔らかで透明感のある声。こちらも声量はほどほどながらしなやかな歌唱が絶品。そしてガブリエルとエヴァの安井陽子は明るく非常に伸びやかな高音の美しい声でチャーミング。第一部の聴きどこのガブリエルのアリアは名盤の名歌手の歌唱にも迫る素晴らしいものでした。この日の歌手陣は3人とも素晴らしい歌唱でした。高関健のコントロールは精緻な演奏ではありませんが、自然な呼吸とアゴーギクはハイドンの音楽の素朴な良さを引き立てます。第一部では前半に硬さが見られたものの、これはコンサートの常。大編成オケの迫力を活かしてゆったりと盛り上げ、要所で各楽器の音色を際立たせるアクセントを設けるなど流石に芸大指揮科の教授。曲全体の流れを一貫して保ちながら場面ごとの情景描写に変化をつける円熟の技。第一部終盤の盛り上がりは素晴らしいものがありました。

この日は第一部終了後に休憩が入り、休憩中にチェンバロを入念に調律し直していました。第一部の演奏は素晴らしかったんですが、お手並み拝見の想定内。ところが、休憩後の第二部以降はそれを超える想定外の素晴らしさ。天地創造の第二部はご存知の通り、素晴らしいアリアの宝庫。休憩でリラックスできたのか、オケも歌手もすっかり落ち着き払って、演奏の方は所謂ゾーンに入って、もはやハイドンの音楽と一体化したような素晴らしさ。淀みない音楽の流れに乗って、歌手が代わる代わるアリアを披露。剛腕指揮者の強烈なドライブとは正反対の自然な音楽。ハイドンの名演奏の多くはこうした素朴な中から心弾むような音楽が溢れ出してくる演奏。まさにこの日の第二部はそのゾーンに入っていました。次々と流れる絶品のメロディー。歌っていない歌手も他の歌手やコーラス、オケの演奏に聴き惚れながら次の出番を待つ至福の時間。ホール全体が演奏に集中する素晴らしい演奏でした。そしてクライマックスでは大波のように押し寄せるコーラスとオケが渾然一体になった怒涛の迫力。

そして、それまでステージに向かってラファエルが指揮者の左、ガブリエル、ウリエルが指揮者の右に配置されていたのが、ラファエルとウリエルが入れ替わって、第三部でのアダムとエヴァのデュエットに備えた配置に変わり、終曲で4重唱に参加するアルトの背戸裕子がステージに上がります。圧巻の第二部に続いて第三部でもゾーンは続いていました。入りのレチタティーヴォに続いて聴きどころのアダムとエヴァのデュエットは絶品。表情一つ変えずに朗々と歌う引き締まったアダムの声に表情豊かに可憐に歌うエヴァが寄り添い、2人の息もピッタリ。まさに至福のデュエット。安井さんのソプラノはまるで全盛期のルチア・ポップのような可憐さ。2つ目のデュエットはまさに夢見心地。そしてさらに素晴らしかったのが終曲。あえて軽めに終わる演奏もある中、堅固な大理石の神殿のような威容が姿を現し、これまでの演奏の総まとめ的クライマックスに突入。指揮者の影に控えていたアルトが前に立ち最後の四重唱。最後のアーメンの響きがホールに吸い込まれる前に拍手が降り注ぎました。

お手並み拝見とは失礼な前振りでしたが、この日の天地創造は素晴らしかった。もちろん生演奏の迫力があってのことですが、これまで聴いた数多の天地創造の中でも、心に残る演奏の一つとなりました。演奏の精度やオケの力量がこの演奏を上回るものは山ほどありますが、天地創造というハイドンが書いた曲の美しさ、素晴らしさを素朴に表現し、曲の本質に迫る演奏という意味では名だたる名演と肩を並べる素晴らしさでしょう。特に歌手3人は絶品。客席から降り注ぐ拍手とブラヴォーにステージ上で歌手もオケもコーラスも満足そうに笑顔で応えていたところみると、満足ゆく出来だったことでしょう。

終演後は、一部の奏者がロビーで観客に挨拶したり、プログラムも丁寧な作りで非常に好感の持てるコンサートでした。東京シティフィル、実に侮れない存在でした。今度はこの名演のコンビで、マイナーながら天地創造と同様美しいアリアの宝庫であるハイドンの「四季」か「トビアの帰還」を是非取り上げていただきたいですね。当ブログの総力を結集して集客に協力させていただきます!(大した集客力はありませんが、、、(笑))

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ファビオ・ルイージ/読響の熊、英雄の生涯(東京芸術劇場)

最近都響や東響のコンサートが多く、ちょっとご無沙汰していた読響ですが、気になるコンサートがありましたので行ってきました。

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読売日本交響楽団:読響サマーフェスティバル2017 ルイージ特別演奏会

テレビのコンサートの放送でしかご縁のなかったファビオ・ルイージが来日し、それもハイドンの熊もプログラムに含まれると知ってチケットを取ってあったもの。放送での印象はかなりアクティブな指揮ぶりで、音楽も少々くどい印象がありましたが、今をときめく一流どころの一人ということで、ハイドンを如何に料理するのか興味津々といったところ。このコンサートの直前には松本で毎年開催されるセイジオザワ松本フェスティバルでマーラーの9番を振っており、ネットなどの評判を見るとなかなか良かったようです。

ファビオ・ルイージは1959年イタリア、ジェノヴァの生まれ。地元のパガニーニ音楽院でピアノを学んだのちオーストリアのグラーツ国立音楽大学で指揮を学びます。指揮者として最初のキャリアはグラーツ歌劇場。1990年に自ら創設したグラーツ交響楽団を皮切りに、ウィーン・トーンキュンストラー管、スイス・ロマンド管、ライプツィヒ放送響、ウィーン交響楽団、ドレンデン・シュターツカペレなどの首席指揮者、音楽監督を歴任。その後も世界の著名なオケに客演し活躍しています。現在はチューリッヒ歌劇場、デンマーク放送響を率い、2018年からはフィレンツェ歌劇場の音楽監督も務める予定とのこと。今が旬の指揮者の一人でしょう。

ルイージは小澤征爾の招きで2014年に前身のサイトウキネンフェスティバルに来ており、2016年にも来日していますが、読響を振るのは今回のコンサートが初めてとのことです。

この日のプログラムは下記の通り。

R.シュトラウス:交響詩「ドン・ファン」
ハイドン:交響曲第82番「熊」
R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」

世紀末に生み出されてた管弦楽の極北の姿であるリヒャルト・シュトラウスの2曲に、古典期に交響曲というジャンルを創り上げたハイドンの曲が挟まれる構成。このプログラム構成の意図はメインディッシュたるシュトラウスに対しハイドンを粋な箸休めとする意図でしょうか。まあ、ハイドンが得意でなければこのような構成はとれないでしょうからよしとしましょう。

この日は早めに仕事を切り上げられたので、前回東京芸術劇場でインバルの大地の歌を聴いた時に発掘した芸術劇場の長いエスカレーターの下にあるベルギービールカフェで腹ごしらえしてコンサートに臨みます。

IMG_9578 (1)
食べログ:ベルギービール カフェ ベル・オーブ 東京芸術劇場

IMG_9577 (1)

頼んだのは海老とアボカドとフレッシュトマトのサンドイッチなどと、酸味の効いた甘口のレッドビール。ホール内のドリンクコーナーよりも落ち着けるので、早くホールに着いたときにはこちらがいいですね。



さて、この日の座席は2階席の右側。S席なのでステージがらさほど遠くなく、オケを軽く見下ろせるいい席。

最初の曲がハイドンではなくシュトラウスなので、ステージいっぱいに団員が並び、チューニングを終えるとファビオ・ルイージが颯爽と登壇。意外に小柄な人でした。ドン・ファンは最初からフルスロットルの曲ですが、ルイージがタクトを上げた途端、今まで読響から聴いたことのないような鮮明な響きが飛び出します。ルイージ、音色に関して非常に鋭敏な感覚を持っているようで、シュトラウスの楽譜に込められた音楽を、重厚なドイツ的響きではなく、超鮮明なハイレゾサウンドのような音にしてホールを満たします。テンポのキレの良さも重厚な響きになる余地をなくしているよう。全ての楽器に対してキューを出すように指揮台いっぱいに動き回って勢力的にタクトを振ります。指揮姿は全くは異なりますが、この指示の緻密さはマゼールを彷彿とさせます。重くなく鮮明、クリアな響きで、ドン・ファンを一気に聴かせ、読響も完璧にそれに応じた演奏。読響がルイージのマジックに完全に制圧された感じ。もちろん、観客は読響のきりりと引き締まったただならぬ熱演に拍手喝采。

2曲目はお目当のハイドンの交響曲82番「熊」。一旦団員が下がっている間にステージが小編成オケ用に配置換えされます。中央奥に据えられたティンパニは4台から2台に減らされ、指揮者に近い方に一段移動。オケの規模は4分の1くらいでしょうか。再びルイージが登壇してタクトを振り下ろすと、今度はしなやかで透明感溢れる響きで満たされます。このハイドンは良かった。クッキリとした筋の通った構成で、所々に多彩なアクセントやルバートが散りばめられ、爽快感と規律、イタリア人らしいスタイリッシュさもある見事な演奏。指揮ぶりはあいかわらす非常に細かく指揮台いっぱいに動き回りますが、音楽に力みはなく、流石にシュトラウスの大編成の曲の間に挟んだ甲斐のあるもの。1楽章の規律ある構成感、2楽章のメロディーをさらりとユーモラスにこなす余裕、そしてメヌエットでオケを伸びやかに響かせてフィナーレは適度に緊密なまとまりを聴かせるなど、ハイドンの面白さを見事に演出。ドン・ファンの大音響とは異なる音楽の面白さを印象付けました。

休憩を挟んで、後半は大曲「英雄の生涯」。少し前にミューザ川崎でマリス・ヤンソンスの振るバイエルン放送響で素晴らしいアルプス交響曲を聴いたばかりでしたが、この日のルイージの英雄の生涯もそれに劣らず素晴らしいものでした。いきなり圧巻だったのは最初の一音。かっちりとエッジの効いた低音弦の伸びやかな響き。ルイージのタクトの一振りで読響から聴いたことのないような引き締まった響きがまたまた引き出され、いきなりルイージのコントロール力を見せつけられます。ヤンソンスの演奏はいつもしなやかさを保ちますが、ルイージはドン・ファン同様、超鮮明ハイレゾサウンドとかっちりとした構成の見通しの良さを武器に、ハイドンとは比較にならない複雑怪奇奇妙奇天烈なシュトラウスの音楽を見事にコントロール。読響もこれまで聴いたどのコンサートの時よりも精緻。このコントロール力はすごいものですね。この日は聴き慣れた版ではなく静かに終わる初稿による演奏。最後の一音が消え入ると、もちろん場内から嵐のような拍手が降り注ぎました。横で聴いていた嫁さんも、「リヒャルト・シュトラウスってやはり変態だったのね」と激賞(笑)。ルイージの統率と読響の力演に拍手は鳴り止まず、ルイージも団員を讃えていました。

いやいや、事前の想定とは異なるルイージの魅力を見せつけられた感じ。リヒャルト・シュトラウスは言うに及ばず、ハイドンも見事にこなすところは流石なところ。現代物を振った時のカンブルランも素晴らしいのですが、ちょっと格が違う感じでした。またの共演の機会があれば、聴いてみたいですね。前回インバルの大地の歌を3階席で聴いた時はそれほど悪いとは思わなかった東京芸術劇場の音響ですが、今回よりオケに近い2階席の前位の方では、オケの残響にちょっと癖を感じ、響きも硬い感じ。席によって結構印象が変わることがわかりました。今度は芸劇ではなく、新装サントリーホールで聴いてみたいところです。

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Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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