Haydn Disk of the Month - October 2011

はじめて1ヶ月通して弦楽四重奏曲をテーマにした10月。こうやって集中して聴く事で、新しいものも古いものもいろいろな魅力があることを再認識。涼しくなった秋の夜、ハイドンの弦楽四重奏曲晴朗かつ深遠な響きに耳を傾けるのは幸せこの上ない時間でした。

Haydn Disk of the Month - October 2011

今月選んだのはかなりマイナーなアルバムと、ちょっと知られたアルバムの2枚。

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2011/10/02 : ハイドン–室内楽曲 : ルクセンブルク四重奏団のOp.20 No.2

このアルバムやクァルテットの存在を知っている人すらあまりいないのではないかと思いますが、日本人の矢口統(やぐちおさむ)さんが第1ヴァイオリンを務めるルクセンブルク四重奏団のOp.20のNo.2。突き抜ける青空のような晴朗さを感じさせる、この曲の本質をついた名演盤。

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2011/10/22 : ハイドン–室内楽曲 : プロ・アルテ弦楽四重奏団のOp.1のNo.1、Op.20のNo.5

もう一枚は1930年代の録音。プロ・アルテ弦楽四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲集。いままでこのアルバムのすばらしさが聴き取れていませんでした。カペーやレナーを聴いて、このアルバムの先進性があらためて良く理解できたというのが正直なところ。

両アルバムとも弦楽四重奏曲の表現を極めたアルバムとして、出来れば多くの人に聴いていただきたいアルバムです。特に前者は有名なアルバムではありませんので、当ブログで表彰するのにふさわしいものかと思います。

今月気に入ったその他のアルバムは下記のとおり。どれも素晴らしいものですので気になるものは是非記事をご覧ください。
2011/10/29 : ハイドン–室内楽曲 : ザロモン四重奏団のOp.74のNo.2、騎士
2011/10/28 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/バイエルン放送響の「ロンドン」ライヴ
2011/10/17 : ハイドン–交響曲 : ライスキ/ポーランド室内管の王妃、雌鶏、狩
2011/10/15 : ハイドン–交響曲 : ギュンター・ヴァント/ベルリン交響楽団の交響曲76番ライヴ
2011/10/11 : ハイドン–室内楽曲 : アマデウス四重奏団のOp.74のNo.1
2011/10/10 : ハイドン–室内楽曲 : レナー弦楽四重奏団の皇帝、Op.76のNo.5
2011/10/01 : ハイドン–室内楽曲 : ストリング・クァルテットARCOの「皇帝」

今月は弦楽四重奏曲の合間に交響曲を取りあげましたが、どれもいい出来。ライスキの王妃、雌鶏、狩にヴァントの交響曲76番ライヴとサー・コリン・デイヴィスのロンドンと名演目白押しでした。

明日より11月。弦楽四重奏曲もふくんでハイドンの室内楽分野を楽しみたいと思います。だんだん寒さも厳しくなりますので読者の皆さんも風邪など召されませんように。

2011年10月のデータ
登録曲数:1258曲(前月比±0曲)
登録演奏数:5,909件(前月比+61演奏)

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : おすすめ盤

モザイク四重奏団のOp.20のNo.5

今日も古楽器による弦楽四重奏。

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モザイク四重奏団(Quatuor Mosaïques)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.1、No.5、No.6の3曲を収めたアルバム。収録は1992年5月、ウィーンのCasino Zögernitzというところでのセッション録音。レーベルはASTRÉE。

すでにこの単体アルバムは廃盤で、モザイク四重奏団のハイドンの弦楽四重奏曲全10枚を5枚づつにまとめたボックスになっていますので今手に入れるならこちらでしょう。私も一部持っていないアルバムがあるので、地道に単体盤をさがすか全集を買うか悩ましいところです。

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モザイク四重奏団は1987年の設立。メンバーはアーノンクールのウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの団員ということでオーストリアの古楽器クァルテットです。メンバーは下記のとおり。クリストフ・コワンはフランス人ですが、他の3人はオーストリア人とのこと。

第1ヴァイオリン:エーリヒ・ヘーバルト(Erich Höbarth)
第2ヴァイオリン:アンドレア・ビショフ(Andrea Bischof)
ヴィオラ:アニタ・ミッテラー(Anita Mitterer)
チェロ:クリストフ・コワン(Christophe Coin)

前記事で取りあげたザロモン四重奏団同様、古楽器のクァルテットとしては代表的な団体でしょう。そのモザイク四重奏団のハイドンはザロモン四重奏団とはまた異なる古楽器の魅力をもつ演奏でした。

Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
楽器の違いでしょうか。ザロモン四重奏団のキツい音とは異なり、豊かな胴鳴りで柔らかめの音。録音は眼前にクァルテットがリアルに定位するもの。直接重視ながら残響も適度にあり聴きやすい音。
1楽章は短調の曲ながらほんのりと明るい響き。一音一音非常に丁寧なデュナーミクをつけて、緻密なコントロール。ヴァイオリンのヘーバルトは軽々としたリズムと伸びのよい響きが特徴。比較的あっさりとメロディーラインを奏でて行きます。逆に雄弁なのはチェロのコワンとヴィオラのミッテラー。後半になるに従って起伏も大きくなりフレーズのキレも良くなってきます。
2楽章のメヌエットは、1楽章との連続性を感じる入り。楽章間の対比というより曲全体の流れを重視した解釈でしょう。古楽器の雅な音色を生かした自然な演奏。所々つぶやくような表現を織り交ぜながら曲の素朴な面に光を当てた演奏。流れがすっと切れてはまた流れるような蝶が花を巡ってさまようような趣。この曲の短調の険しさよりも、短調のほの暗い雰囲気の中で朴訥な美しさを感じさせるメヌエット。
3楽章のアダージョは素朴な美しさが極まります。ゆったりと刻まれるチェロとヴィオラなどによる伴奏にのってヴァイオリンが自在にメロディーを奏でます。ハイドンの弦楽四重奏曲の素朴なメロディーの真髄を捉えたような演奏。この楽章は絶品。のびのびとしたフレーズに音楽が宿ります。
フィナーレもまたゆったりとしたテンポで、フーガをじっくり表現していきます。途中からチェロが楔を打つように入り、起伏を増して大胆さを加えますが、じっくりとした素朴さは保ち、盛り上がるというよりは自然に終わりを迎えるようなフィニッシュ。

ハイドンのシュトルム・ウント・ドラング期の傑作四重奏曲ですが、起伏や光と影といった表情よりも素朴な肌触りと自然なフレージングを楽しむような演奏。まさに音を楽しめと言われているような演奏でした。前記事のザロモン四重奏団がクッキリとハイドンの機知と構成を描ききっているのとは異なるアプローチ。おそらく根底にあるのはウィーンの伝統なんでしょうか。評価は[++++]としておきます。

10月は弦楽四重奏曲を集中的に聴いてきましたが、聴けば聴くほどその魅力にハマりますね。今月のレビューはこの記事で終わりにして、明日は恒例のHaydn Disk of the Monthです。

ちなみに、11月は今月に続いて弦楽四重奏曲とピアノトリオやバリトントリオなど室内楽全般に守備範囲を広げて、芸術の秋を楽しみたいと思っています。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.20 古楽器

ザロモン四重奏団のOp.74のNo.2、騎士

今日は古楽器の弦楽四重奏。

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ザロモン四重奏団(The Salomon String Quartet、のちにThe Salomon Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.74のNo.2とNo.3「騎士」の2曲を収めたアルバム。 収録は1983年11月18日~19日、どこで収録されたかは記されていません。レーベルはロンドンのhyperion。

ザロモン四重奏団のアルバムは何枚かもっているのですが、このアルバムは手元にありませんでした。最近ディスクユニオンで見かけて手に入れたもの。今月は弦楽四重奏曲を集中的に取りあげてはいますが、古楽器のアルバムを取りあげていなかったので、ちょうど良いとばかりに今日はこのアルバムを取りあげました。

ザロモン四重奏団は1982年に設立されたクァルテット。なんでも、英国で最初の古楽器によるクァルテットだそうです。このアルバムの録音は1983年なので設立間もない録音。クァルテットにとってハイドンは最初に挑むべき作曲家でしょう。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:サイモン・スタンデイジ(Simon Standgage)
第2ヴァイオリン:ミカエラ・コンベルティ(Micaela Comberti)
ヴィオラ:トレヴァー・ジョーンズ(Trevor Jones)
チェロ:ジェニファー・ウォード・クラーク(Jennifer Ward Clarke)

サイモン・スタンデイジは古楽器のヴァイオリニストとしては有名な人なのでご存知の方も多いでしょう。1941年生まれのイギリスのヴァイオリニストで1972年にデビュー後、トレヴァー・ピノックのイングリッシュ・コンソートの創設メンバーとなり、その後このザロモン四重奏団を創設、以後ホグウッドのエンシェント管弦楽団(The Academy of Ancient Music)、リチャード・ヒッコクスとともにコレギウム・ムジクム90を創設、最近ではマンフレート・フスのハイドン・シンフォニエッタ・ウィーンとも共演するなど、古楽器オケの隆盛を支えてきた人ですね。私はホグウッドとのモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集の凛とした古楽器らしいヴァイオリンの音色が印象に残っています。

そのスタンデイジが第1ヴァイオリンを務めるザロモン四重奏団のハイドンのクァルテットはやはり古楽器の凛とした緊張感が支配する音楽です。

Hob.III:73 /String Quartet Op.74 No.2 [F] (1793)
冒頭から古楽器特有の鋭い音のヴァイオリンを中心としたアンサンブル。弦楽器の胴鳴りよりも弦の鋭い響きを中心とした響き。録音は直接音を中心としたダイレクト感溢れる音で残響は少なめ。スピーカーの前にクァルテットが並ぶようなリアリティの高いもの。この曲のユニークメロディーをコミカルに描くのではなく、速めのテンポとザクザク刻むような迫力ある演奏。同じ曲でも演奏によって見せる表情がだいぶ変わります。チェロも胴鳴りより輪郭がクッキリとした響き。途中から休符を印象的に長くとり、予想以上の踏み込んだ表現を聴かせます。
2楽章のアンダンテ・グラツィオーソは一転して穏やかな表情。古楽器の音色の雅な側面にスポットライトが当たります。素朴なメロディを訥々と奏でていくことで孤高の境地を表現。
メヌエットも抑え気味。骨格よりもメロディーラインの美しさを重視したメヌエット。歌うメヌエットという感じ。
フィナーレはこの前コダーイ四重奏団のこの曲を取りあげた際にネコが鼠を追いかけているような曲と例えたんですが、ザロモン四重奏団の演奏ではもう少しフォーマルな印象。コミカルなメロディに変わりないんですが、そのメロディを素晴らしいテクニックで自在に変化させ、抜群の起伏と表現の限りを尽くした素晴らしい演出。最後のクライマックスの盛り上がりは素晴らしいですね。クァルテットにも関わらず突き抜けた迫力。

Hob.III:74 / String Quartet Op.74 No.3 "Reiterquartetett" 「騎士」 [g] (1793)
いきなり大迫力のタイトな響き。古楽器であることを忘れてさせるような広大なダイナミックレンジ。抑えた部分と強奏部分の対比が痛快。フレーズごとに丁寧に表情をつけて曲の骨格をきっちり描いて行きます。切り込む部分と流れるような部分を絶妙に組み合わせて抜群の立体感を表現。音響は前曲同様非常にリアリティのある録音なので、曲のみりょくがカッチリと浮かび上がります。成熟したハイドンの筆致が見事に表現されています。今更ながらザロモン四重奏団の迫力に圧倒される楽章。
2楽章のラルゴ・アッサイはゆったりとしたメロディーをピタリと息のあったアンサンブルがじっくり描いて行きます。すべてのメンバーのボウイングも呼吸もデュナーミクもすべてそろった完璧な演奏。遅めのメロディを丹念に起伏をつけて弾いているので、息を合わせるのはかなりの練習が必要なことと想像できます。この楽章も神憑ったような完璧なアンサンブル。
前曲同様、構成感よりも流麗さを意識したメヌエット。この曲では1楽章、2楽章の緊張をほぐすようなさりげなく素朴な演奏。ほどほどの立体感と緊張感。
フィナーレも軽めに入りますが、一音一音の伸びが素晴らしいので聴き応え十分。抑えながら楔のように入る強音のキレを際立たせます。有り余るテクニックと音楽性でハイドンの名曲を自在に料理した名演奏と言えるでしょう。

久しぶりに聴いたザロモン四重奏団のOp.74。やはりスタンデイジの絶妙なヴァイオリンがポイントでしょうか。評価は両曲とも[+++++]とします。以前に聴いた印象よりだいぶ鮮烈なものでした。これは意図してザロモン四重奏団のハイドンの演奏をコンプリートしなくてはなりませんね。未入手盤をメモして捕獲候補リストに入れましょう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.74 騎士 ハイドン入門者向け 古楽器

コリン・デイヴィス/バイエルン放送響の「ロンドン」ライヴ

だんだん寒さが身にしみる季節になってきましたね。このところ仕事やら飲みやら帰宅が遅く更新が途絶えがちです。今日は心機一転交響曲のライヴ。

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サー・コリン・デイヴィス(Sir Colin Davis)指揮のバイエルン放送交響楽団の演奏で、ハイドンの交響曲104番「ロンドン」とエルガーのエニグマ変奏曲の2曲を収めたCD-R。収録は1990年代としか記載されていませんのでロケーションも不明です。レーベルはLIVE SUPREMEというCD-Rでは良く見かけるレーベル。

このアルバムは最近オークションで手に入れたもの。コリン・デイヴィスのハイドンはこれまで5回取りあげていますがセッション録音の交響曲は今ひとつリズムのキレが悪いところがあり、素直におすすめできないのですが、ライヴの方は流石に古典的な均整のとれた素晴らしい盛り上がりが聴かれ、セッション録音とは次元の異なる仕上がりを感じさせます。私の印象はライヴの人。過去の記事はこちら。

2011/08/19 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の熊、雌鶏
2011/08/13 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番3】コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団のネルソンミサ
2011/06/16 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-2
2011/06/14 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-1
2010/07/17 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィスの時計ライブ

そのデイヴィスの「ロンドン」のライヴということで手に入れた次第。このアルバムは期待通り、コリン・デイヴィスのジェントルなスタイルの中での程よい盛り上がりが聴かれるなかなかの演奏。名盤「春の祭典」を振ったデイヴィスに再会した気持ちになります。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
聴き慣れたメロディーですが、冒頭から気合い漲る渾身の序奏。デイヴィスらしい古典的均整のとれた素晴らしい立体感ある音響。デイヴィスの演奏に期待される響きが姿を現します。中庸なテンポながら軽快なリズム感とちょっと跳ねるような弾力のある進行。徐々に表現の幅が広がって行き、知らぬ間にオケもフルスロットルに。威風堂々とした主題と変奏。一貫して自然なテンポと流麗なフレージングで1楽章の終結に向けて起伏を大きくしていきます。録音は若干安定感に欠けるような印象の部分もありますが、基本的に聴きやすいもの。
アンダンテは抑制を効かせた表現ながら、間のとり方がうまく燻し銀のような玄人好みの演奏。やはりデイヴィスならではのしっかりとした芯のある音響。ヴァイオリンをはじめとした弦楽器の艶やかな響きの美しさが印象的。
メヌエットもテンポ感のよい流麗なもの。このほとんど溜めのないすっきりとしたフレージングがコリン・デイヴィスの特徴。テンポの自然さ、揺るぎない構成感に流麗なメロディー。言う事ありません。
そして、それに力感が加わったフィナーレ。少しざっくりした荒々しさを加えて、オケに迫力を宿します。均整のとれたギリシャ彫刻のような美しい力感。ヴァイオリンのフレーズは流麗さを極め、異次元の美しさ。最後はデイヴィスがオケを煽ってテンポを上げ、素晴らしいクライマックス。拍手はなく会場ノイズなどもないことから放送用の録音でしょうか。

サー・コリン・デイヴィス渾身のロンドンです。これまでのデイヴィスの交響曲の録音の中では一押しの出来。流石に録音はCD-Rだけあって同時代のセッション録音よりは少し落ちますが、演奏の迫力を聴くには十分なものです。まさに大理石の透明感まで味わえる大神殿のようなロンドンでした。評価はもちろん[+++++]とします。

10月も残り数日となってきましたので、そろそろ今月の一枚をどうするか考えながら週末にレビューするアルバムを選びたいと思います。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ロンドン ライヴ録音 CD-R

エンジェルス弦楽四重奏団のOp.74のNo.1

今日も弦楽四重奏曲を紹介。すこし新し目のものです。

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エンジェルス弦楽四重奏団(The Angeles String Quartet)のハイドンの弦楽四重奏曲全集。収録は1994年4月から1999年6月にかけて、サンフランシスコ近郊のベルヴェディアの聖ステファン米国聖公会教会(St Stephen's Episcopal Church)でのセッション録音。レーベルは今は亡きPHILIPSです。今日はこの中から、最近良く聴くOp.74のNo.1を取りあげます。

エンジェルス弦楽四重奏団は、このハイドンの弦楽四重奏曲全集の他に録音を見かけませんし、ネットにもあまり情報がありません。ということでたよりになるのはライナーノーツのみ。設立は1988年と最近で、アメリカ西海岸で急速に頭角を現し、その後ニューヨークのカーネギーホールやリンカーンセンターなどでもリサイタルを開くようになりました。ロンドンではウィグモアホールでハイドンシリーズのコンサートを担当したそう。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:キャサリーン・レンスキ(Kathleen Lenski)
第2ヴァイオリン:スティーヴン・ミラー(Steven Miller)から1988年にサラ・パーキンス(Sara Parkins)に交代
ヴィオラ:ブライアン・デンボウ(Brian Dembow)
チェロ:ステファン・エルドディ(Stephen Erdody)

このアルバムはバラで発売された形跡はなく、一気に全集として発売されたもの。ジャケットにはヨゼフ・ハイドン協会のサポートで録音されたとの記載があり、ただの全集ではないようですね。おそらく彼らの透明感溢れる晴朗な演奏スタイルを知ってハイドンの全集プロジェクトが計画されたということではないかと想像しています。ただし、現時点で彼らのオフィシャルサイトなどが見つからないことを考えると現在活動しているかどうかわかりません。

既に触れたとおり、エンジェルス弦楽四重奏団の演奏は、現代楽器による楽天的すぎるとさえ思える伸び伸びとした晴朗な演奏が特徴。同じ現代楽器でもアマデウスのストイックかつ分厚い音色の弩迫力の演奏とは対極をなすような演奏。ハイドンの弦楽四重奏曲に内在する一面にスポットライトを当てた演奏であることに間違えありません。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
PHILIPSらしい空間を感じる比較的残響豊かな録音。ただ定位感が不思議で楽器の実体感があまりなく、空間全体に巨大なクァルテットの虚像が満ちているような音響。定位感の再現がほどほどの我が家のシステムでもこのような印象なので、オーディオ的に空間表現にすぐれた装置で聴くとこのへんは逆に欠点に聴こえるのではないかと思います。PHILIPSにしては珍しい録音といえるでしょう。普通の装置では非常に良い音と聴こえるタイプの録音です。
1楽章は巨大な音像で鮮度も十分なクァルテットの迫力の演奏。伸び伸びとしながらキビキビともしており、それでいて安心して聴ける流れの良さがある演奏。アンサンブルは緊密な一体感で、各楽器の音色もそろっています。強音のはじまりをすこし溜めて力感を表現するあたりの巧みさはなかなかのテクニック。各楽器のメロディーの受け渡しは微妙に前のめりなところが推進力を生み、リズム感の良さを際立たせています。テクニックと音楽性のバランスが絶妙。
2楽章も基本的に同じ魅力をもった演奏。純粋に伸び伸びと奏でられるメロディーラインがアメリカのクァルテットだと感じさせます。呼吸も深く、旋律も良く磨かれていますが、豊かな残響をともなって録られた各楽器の音自体は少々ざらついたもの。おそらくPHILIPSの技術者がこのクァルテットの伸び伸びした演奏とすこしざらついた音のギャップを埋めるべく試行錯誤してたどりついたのがこのアルバムのちょっと変わった録音の背景のような気がします。
メヌエットは大きな楔を打つような趣。楔をうつ槌を振りかざすバックスイングまで見えるような非常にメリハリのあるフレージング。変わったことはやっていませんが、活き活きとした活力溢れる演奏という意味ではすばらしいものがあります。楽章ごとの変化のつけかたも自然な範囲ながら、クッキリと個性を際立たせるなかなかの演出力。
そしてフィナーレでは抜群のテクニックを見せつけます。速いパッセージの安定感のみならず、全体構成を考えた設計も見事。休符やアクセントの付け方も見事のひとこと。

久しぶりに取り出して聴いたPHILIPSレーベルの威信がかかったハイドンの弦楽四重奏曲全集。PHILIPSに期待される素晴らしい空気感溢れる録音ではなかったにせよ、エンジェルス弦楽四重奏団のハイドンはハイドンの弦楽四重奏曲のオーソドックスな演奏としてなかなか良い出来です。活き活きとした曲想、ちょっと楽天的にも感じるコントロール、緊密なアンサンブルとレベルの高い演奏ですが、ハイドンの弦楽四重奏曲の魅力である陰りや憂いといったもの、ヨーロッパの伝統など、失われてしまった側面もあるように感じます。変わった定位感の録音は、おそらく弦楽器の音質をカバーするために工夫をこらしたものだったと思います。評価は[++++]としておきます。

この全集、欠点といえば、「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」が含まれていない事ですが、演奏自体は弦楽四重奏曲をのんびり楽しむには非常にいい全集だと言えると思います。弦楽四重奏曲が好きな方は持っていて損はないいいアルバムでしょう。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.74 弦楽四重奏曲全集

【番外】コスモス満開(昭和記念公園)

今日はニュースを見て近所に花見に。

立川の昭和記念公園は今コスモスが満開とのこと。以前にもこの季節に昭和記念公園に散歩がてらに来ています。

国営昭和記念公園

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今日は府中本町から南武線で立川に出て、青梅線に乗り換え西立川駅から昭和記念公園に入ります。入るとすぐにコスモスの丘の案内が。昭和記念公園は広くコスモスが咲く花の丘は公園の北のはずれの方なのでのんびり散歩がてら公園を北上。1.5キロほど歩くと着きます。今日は多くの人がコスモス目当て。花の丘はすでに多くの人が写真を撮ったり散歩したりと多くの人でにぎわっていました。

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写真を撮るのは先週までの方が良かったでしょう。散りはじめのコスモスはちょっと哀愁漂う感じでした。

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色とりどりのコスモス。

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多くの人がカメラを構えて写真を撮っていました。

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やはり目立つのは濃いピンク、薄いピンクの中に凛とした雰囲気でたたずむ白いコスモス。一山まるごとコスモス畑だけに、白のコスモスがアクセントを付けているようでした。

しばらくコスモスを楽しんだ後は、前回来ていない西側に。こもれびの丘のふもとを歩いていくとこどもの森と名付けられたエリアに。

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ウッドデッキが尾瀬のような感じで、しばらく歩いて行くと山小屋風の建物に。ちょっと建築的にも面白いエリアになります。歩き始めてから1時間以上たちましたので、そろそろ喉が渇いてきました。

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売店に「地ビール」とのメニューがあるの見逃すはずもありません。聞くと地ビールとは先日蔵元を訪問した「多摩の恵」です! これは注文しない訳に行きません。売店のお姉さんが手渡してくれたのは泡がこぼれそうになる、プラスチックのグラスに注がれた琥珀色の多摩の恵特有の濃い色のビール。旨いっ! 散歩でほどよく疲れた体にコクのある地ビールが染み渡ります。極楽浄土に来たような爽快感。言うことありません。売店前の建物の軒下のベンチに座ってしばし涼風とビールを楽しみました。

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帰途につくべく南下すると、ガウディのグエル公園のような広場に出ます。こちらは蛇の口を模した砂場。

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こちらはまさにグエル公園のようなベンチ。本物のバルセロナのグエル公園には大学時代の春休みに行き、早朝にもかかわらず多くの人の憩いの場として愛されていること身をもって体験しました。こちらは国営公園の1エリアを装飾したものとの違いはありますが、スペインから遠く離れた日本のこんなところにもガウディの残像のような造形が残ること自体が独創的なガウディの影響の大きさがわかるところ。

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てくてく歩いて中央の広場に出るとこんどは黄色い花のコスモス畑が。

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帰りは西立川ではなく立川口を目指します。

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雲の多い天気から夕方は夕焼けが綺麗な空に変わり、すすきの穂が夕焼けに照らされて光り輝きます。

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ようやく昭和記念公園を抜けて、ファーレ立川に入ったところで一息入れるために喫茶店に。ほんとはビールでも飲みたいところでしたが、アルコールがないところだったので、嫁さんと2人でアイスカフェオレを注文。流石に専門店らしく美味しいコーヒーを楽しみました。

食べログ:炭火焙煎珈琲桜乃

その後、国立店が移転したディスクユニオン立川店に立ちより、ちょっと物色しましたが、クラシックは国立店の時よりだいぶ貧弱になってしまいましたね。それでも未聴盤1枚を発見して入手。まだ時間が早かったので立川高島屋の地下の食料品売り場でラムやら椎茸やらいろいろ美味しそうなものを仕入れて帰宅しました。

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帰ったら、まずはいつものプレミアムモルツを開けて一杯。はぁ。
高島屋で買った新鮮な椎茸をグリルしてちょっとバターをたらしていただきます。ペッパーの利いたハムやらホタテのオイル付けなどをつまみます。

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今日はラムなのでワインセラーから以前伊勢丹のモンテ物産の試飲会で選んで買ったものを1本開けます。Il Nero Di Casanova 2007。トスカーナのサンジョベーゼです。しばらくワインセラーに寝かせてあったので落ち着きましたね。開けるてグラスに注ぐとイタリアン特有のしっかりした果実味をベースとしながら柔らかく熟成した味わいがなかなかのもの。

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今日手にいれたラムを塩胡椒とローズマリーをまぶしてグリル。ラムとワインの相性はなかなか良いものでした。ローズマリーの香りと塩味がキリッとした食感。

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最後はアサリのパスタ。今日はアサリをトマトベースで。アサリも新鮮で美味しかったです。今日はニンニクをかりっと油になじませたあと、アサリを投入、最後にトマトピューレでなじませたかんたんレシピ。最後にベランダのバジルで香り付けですが、久しぶりのレシピも旨くバランスがとれ、平らげた後のお皿にのこるトマトソースの旨味がいとおしい仕上がりとなりました。満足満足。

今月はもうすこし弦楽四重奏曲を取りあげて行きたいと思います。

テーマ : 東京・多摩地域
ジャンル : 地域情報

コダーイ四重奏団のOp.74

弦楽四重奏曲を古いものでいろいろ聴いてきましたが、今日は有名盤。

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コダーイ四重奏団(Kodály Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.74のNo.1、No.2、No.3の3曲を収めたアルバム。収録は1989年10月21日から23日にかけて、ブダペストのフンガロトンスタジオでのセッション録音。レーベルは廉価盤復興の祖、NAXOS。今日はこのなかからOp.74のNo.1とNO.2の2曲を取りあげます。

ご存知のようにNAXOSからリリーズされ続けたハイドンの弦楽四重奏曲のシリーズは25枚になり、現在は全集としてまとめて発売されています。全集はこちら。

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私の手元のアルバムはもちろんバラの方です。場所をとるので全集に買い替えてもいいのですが、このシリーズはハイドンゆかりの肖像画が各アルバムにちりばめられており、廉価盤ながら妙にコレクション欲をかき立てる企画。上の写真のOp.74のアルバムの表紙はヨハン・ペーター・ザロモン。ハイドンをロンドンに招聘した音楽興行師ですが、もともと弦楽四重奏でヴァイオリンを弾いたり作曲家としても活躍ていた人とのこと。ハイドンがロンドンで作曲した93番以降の交響曲がザロモンセットと呼ばれるのはもちろん彼が作曲を依頼したことから来たものです。

演奏者のコダーイ四重奏団は1965年にハンガリーのブダペストで設立されたクァルテット。メンバーはブダペストのフランツ・リスト・アカデミーの出身者。当初はSebestyén Quartetと名乗っていたが1969年よりハンガリー出身の大作曲家ゾルタン・コダーイの名を冠してコダーイ四重奏団と名乗るようになったとのこと。コダーイ四重奏団はNAXOSにおいてハイドン、ベートーヴェン、シューベルトの弦楽四重奏曲の全集を担当する等、レーベルの重責を担っています。私もNAXOSのアルバムを通してはじめて聴いたクァルテットですが、自然なソノリティと虚心坦懐な表現がハイドンの弦楽四重奏曲の無垢な魅力をつたえる素晴らしい演奏。

このアルバム録音時のメンバーは下記のとおり

第1ヴァイオリン:アッティラ・ファルヴェイ(Attila Falvay)
第2ヴァイオリン:タマーシュ・ザボ(Támas Szabó)
ヴィオラ:ガボール・フィアス(Gabor Fias)
チェロ:ヤーノシュ・デヴィッチ(János Devich)

もちろん現在も活動していますが、第1ヴァイオリンのファルヴェイ以外は入れ替わっているようですね。オフィシャルサイトへのリンクも張っておきましょう。

Kodály Quartet(英文)

今日選んだアルバムは最近良く聴くOp.74です。

Hob.III:72 / String Quartet Op.74 No.1 [C] (1793)
冒頭からこのクァルテットの特徴である自然なソノリティの演奏。テンポは中庸、4人のアンサンブルも息が合っていて緊密。強いて上げれば第1ヴァイオリンのファルヴェイの少し糸を引くようなフレージングに特徴があるでしょうか。音階のきざみに擦弦楽器であることを示すがごとく少し練りがあるという感じ。それ以外は極めてオーソドックスな教科書的演奏。ハイドンの弦楽四重奏を楽しむには標準的な演奏。ピアノソナタにおけるオルベルツの演奏のような基準点の演奏というのがふさわしいもの。決して個性的ではありませんので聴き飽きない演奏と言えるでしょう。録音もスタジオ録音としては標準的。十分に音楽に浸ることができます。
2楽章のアンダンティーノは非常にさっぱりとした表現。淡々とメロディーを刻むうちに徐々に音楽の魅力に包まれるような演奏。後半に行くに従って表現が深まるのが手に取るようにわかる演奏。4人の音色もそろっていてメロディーの受け渡しの妙を楽しめます。
3楽章のメヌエットになると、ちょっとアンサンブルの粗さが垣間見える部分がありますが音楽は破綻なく流れます。メヌエットは古のいろいろな演奏の抜群の起伏と演奏を聴いた耳からすると若干単調さも感じなくはありませんが、これは致し方ないところ。
フィナーレはもしかしたらテンポはすこし遅めかもしれません。迫力は十分ながら、この楽章も歴代のキレまくった素晴らしい演奏が耳にのこっているため、速いパッセージの技術的な部分ではすこしまどろっこしさも感じさせる部分があるのが正直なところ。ただ、これもクァルテットを聴く醍醐味でもあり、不思議と音楽的な不満はあまりなく、逆に曲のスリリングさの魅力と写ります。最後はびしっと決めて終了。聴く側の成熟でしょうか(笑)。 総じてオーソドックスないい演奏という印象の範疇です。

Hob.III:73 /String Quartet Op.74 No.2 [F] (1793)
ユニークな旋律からはじまる曲。1楽章はその主題の変奏が様々に料理されるのを楽しめと言われているような技巧を尽くしたように聴こえる曲。コダーイ四重奏団の演奏は非常に安定しており曲ごとのムラがすくないのが素晴らしいですね。どの曲を聴いても彼らの虚心坦懐な作法が楽しめるので安心して気ことが出来ます。この曲も程よい緊張感と良い意味でこだわりのない淡々とした演奏によってハイドンの音楽の妙を楽しむことができます。
2楽章のアンダンテ・グラツィオーソはシンプルな曲調でかえってファルヴェイのヴァイオリンの美音が際立ちます。ヴィオラもチェロもそれぞれ音階を丁寧にあつかって雰囲気を盛り上げます。なぜか枯淡の表情さえ感じさせます。
メヌエットはもしかしたコダーイのちょっとした弱点かもしれません。自然な演奏ながらわかりやすさがかえって単調さを感じさせてしまうような印象も残してしまいます。
フィナーレも非常に個性的なメロディー、ネコが鼠を追いかけているがごときコミカルなもの。手作りの音楽のような素朴な印象を与えながら、適度に緊密なアンサンブルでハイドンの機知に富んだ音楽を弾き進めて行きます。ハイドンの楽譜は徐々に表現の幅を広げ、クライマックスに向けた盛り上がりと機知を降りまぜ最後まで飽きさせません。コダーイの演奏も指示通りにこなして行きびしっと最後は決めて終了。

廉価盤の雄、NAXOSレーベルの看板アーティストであるコダーイ四重奏団のハイドンのOp.74の2曲は、彼らの素朴な良さを感じさせる、じわりと良さがつたわるアルバムでした。評価は両曲とも[++++]とします。このあとは名曲「騎士」が収められているんですが、そちらはまたの機会に。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.74

プロ・アルテ弦楽四重奏団のOp.1のNo.1、Op.20のNo.5

今日はまた古めの弦楽四重奏曲に戻ります。

ProArte1.jpg
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プロ・アルテ弦楽四重奏団(The Pro Arte String Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲集。第1巻(3枚組)、第2巻(4枚組)の計7枚にハイドンの弦楽四重奏曲27曲と、旧来ハイドンのものと思われていたホフシュテッターの弦楽四重奏曲2曲を収めたアルバム。収録は1931年から38年にかけてロンドンのアビーロードスタジオでのセッション録音。レーベルはヒストリカルの正統派復刻者であるTESTAMENT。

このアルバムも手に入れたのは10年以上前。以前はかなり古い録音とあっさりした演奏ということで、あまり聴きこんではいませんでした。最近ヒストリカルな弦楽四重奏の魅力にすっかりハマり、あらためて取り出して聴きなおしたところ、やはり歴史を経て発売され続ける魅力が十分あるアルバムであることがよくわかりました。今日は第1巻のCD1に収められた最初の2曲を取りあげてみましょう。

プロアルテ弦楽四重奏団は1911年から12年にかけてベルギーのブリュッセル音楽院の生徒で設立されたクァルテット。1913年にデビューすると間もなく現代音楽のスペシャリストとみなされるようになりました。バルトークやミヨー、オネゲルなどが作品の初演を委嘱するようになります。バルトークの弦楽四重奏曲4番は1928年の作曲で彼らに捧げられたもので1930年にプロ・アルテ弦楽四重奏団によって初演された曲。

このアルバムに収められた演奏の頃のメンバーは次のとおり。

第1ヴァイオリン:アルフォンス・オンヌー(Alphonse Onnou)
第2ヴァイオリン:ローラン・アルー(Laurent Halleux)
ヴィオラ:ジェルマン・プレヴォー(Germain Prévast)
チェロ:ロベール・マース(Robert Maas)

この少し後になる1941年には活動の場をアメリカ、ウィスコンシン州のマディソンに移し、そして、なんと現在もメンバーが変わって活動を続けています。現在はウィスコンシン音楽大学に所属するクァルテットのようですね。いつものようにオフィシャルサイトへのリンクを張っておきましょう。

PRO ARTE QUARTET

今回,聴き直してみると、同時代のカペーやレナーなどのポルタメントを効かせたある意味時代がかった演奏が多かった時代にあっては、流石に現代音楽を得意としていただけに、非常に新しいスタイルの演奏だったと思います。キレのいい表現と感情を抑制し音自体に音楽を語らせるような表現は今聴いても十分通用するもの。当時のパースペクティヴに浮かび上がる前衛性といってもいいでしょう。ハイドンのクァルテットも屹然とした語り口が心地よい演奏ですね。

Hob.III:1 / String Quartet Op.1 No.1 [B flat] (c.1757-59?)
滅多に聴かないハイドン最初期の弦楽四重奏曲。5楽章構成でハ長調のシンプルなメロディーの曲。録音は1938年11月5日。1楽章は序奏のようなプレスト、2楽章と4楽章のメヌエットが置かれ、3楽章がアダージョ、そしてフィナーレもプレストという練習曲のような曲調。録音はSP原盤のようで若干のスクラッチノイズが入りますが、クァルテットの音楽自体は直接音重視のキレのいいもの。鮮明さも時代を考えると十分でいい復刻です。
ちょっと聴くとあっさりした演奏なんですが、音量を上げて聴くと、情緒に溺れない毅然としたカッチリとした演奏。やはり現代音楽を得意としているだけに、現代音楽の冷静な視点からハイドンの最初期の曲を眺めているよう。1楽章から速めのテンポで冷静というか若干覚めた視点も感じさせつつタイトで緊密な演奏。一番特徴がでているのがアダージョ。キリッと流麗かつタイトなアダージョ。白磁の美しさのような趣。4楽章のメヌエットも青白い炎のような冷徹かつタイトは響き。フィナーレは後年の曲の成熟を予感させる快速なもの。プロ・アルテの確かなテクニックを感じさせるクリアでタイトな演奏。初期の曲をこれだけタイトに聴かせる見事な演奏。

Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
続いてシュトルム・ウント・ドラング期の傑作。この曲は1934年10月29日の録音。演奏精度は今ひとつながら1楽章の冒頭から迸るタイトなエネルギーに圧倒される演奏。音階にわずかながらポルタメントのような面取りが聴こえますが、演奏の特色は一貫して速めのテンポと緊密感。音響もダイレクト感溢れるもの。意外とデュナーミクの幅も大きくかなりの起伏でハイドンの名曲の構成美というか骨格美をあらわにします。1楽章はテンション高くすすめてきて最後にふっと力を抜いて終わる絶妙なセンス。2楽章はメヌエットで古い録音から聴こえてくるカミソリのような切れ味鋭い演奏。録音を通して演奏者のオーラが伝わってくるような素晴らしい気合い。3楽章のアダージョは前曲同様ひきしまって淡々とした運びがかえって情感を生むような見事さ。ヴァイオリンの突き抜けるような純度の高い響きが心に刺さります。ヴィオラとチェロのさりげないサポートが曲の深みを増しています。フィナーレのフーガはプロ・アルテの面目躍如。ヴェーベルン編曲のバッハのリチェルカーレを聴くような、現代音楽のような険しさをもった素晴らしいフーガ。ハイドンのクァルテットの緊密な構成と現代にも通じる音楽性にスポットライトを当てた見事な演奏と言っていいでしょう。

やはり現在まで聴かれ続ける理由のあるずばらしい演奏。1930年代の演奏としては驚くほど現代的でかつ、その時は前衛的だったことと想像されます。ポルタメントを効かせた懐かしい響きのハイドンも悪くありませんが、プロ・アルテ弦楽四重奏団の聴かせる冷徹かつタイトなハイドンも素晴らしい魅力を持ったものでした。評価はOp.1が[++++]、Op.20は[+++++]とします。

これまで古い演奏を多く取りあげてきましたが、このあとは少し新しいものも聴いていきたいと思います。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 弦楽四重奏曲Op.1 弦楽四重奏曲Op.20 ヒストリカル おすすめ盤

スクロヴァチェフスキ、オペラシティでのブルックナー爆演

今日は東京オペラシティでコンサート。

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東京オペラシティ文化財団:スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮のザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニーの東京公演。プログラムはモーツァルトの交響曲41番「ジュピター」とブルックナーの交響曲4番「ロマンティック」。

スクロヴァチェフスキのコンサートは昨年3月に読売日本交響楽団の音楽監督最後の公演でブルックナーの8番を聴き、生のオーケストラの大伽藍を満喫しました。今度はおなじみのオケとの組み合わせでの公演と知り、チケットをとってあったもの。スクロヴァチェフスキの年齢を考えると、もう何度も聴けないとの思いもあります。以前のコンサートレポートはこちら。

2010/03/25 : コンサートレポート : 読響最後のスクロヴァチェフスキ



久々のオペラシティ。今日は仕事が予定通り終わったので、オペラシティには開場間もなくの時間に到着。

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いつも通り、オペラシティのカフェでサンドウィッチと白ワイン、嫁さんはコーヒーで腹ごしらえ。入口でもらったチラシ等をちらちら見ながらワインでいい気分。オペラシティは規模が大きすぎず、落ち着いた雰囲気がいいですね。

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今日の席は右側前から数列のいい席。いつものように開演前のざわめきを楽しみながらのんびりと待ちます。開演前のステージをこっそりパチリ。今日は指揮台の周囲に4本のマイクが立てられていましたので、ライヴ収録があるようですね。終演後ドイツの放送局が録音していたとの張り紙がしてありました。

お客さんの入りは前の方が少し空いていましたが、程よく埋まってちょうどいい感じ。

定刻を少し過ぎたころにオケがステージに上がります。最初はジュピターなので編成は大きくありません。オケがそろって2段階のチューニングが終わったところで、割れんばかりの拍手のなかスクロバチェフスキが登場。1923年生まれということで88歳! お元気そうではありますが、指揮台に登るときに手すりに頼らないと登れなさそうなところに年齢を感じます。

独特の短い指揮棒を振り上げた途端、引き締まったジュピターの1楽章がはじまります。音楽がはじまるととても88歳という年齢が信じられない機敏な動き。ジュピターは速めのテンポでドイツの重厚さを感じさせながらも非常に引き締まったタイトな響き。下手な若手の指揮よりもよほど若々しい響きに驚きます。ノンヴィブラートだったりするようなことはなく、新しいスタイルではありませんが、キビキビとしたフレージングと独特のメリハリ、アクセントが音楽を活き活きとさせています。3楽章までは、それでもエンジン全開前のならし運転のような風情もありましたが、終楽章に入ると、異次元の迫力。テンポは一層速まり、アクセントのキレも最高。そしてオケから放たれる凄まじいエネルギー。アポロン神殿のような均整のとれた古典的姿ではなく、畳み掛けるエクスタシーのような終楽章。モーツァルトの天才的は音楽がスクロヴァチェフスキの魔術で古典的均整を越えたデフォルメすら感じさせるエネルギーの塊のようなフィナーレとなりました。前半のプログラムから嵐のような拍手とブラヴォー。恐ろしいエネルギーにしばし放心。

休憩にはいると早速ステージ一杯にオケの座席を拡張。後半のブルックナーは私の聴いたコンサートでは間違いなく一番の出来。号砲と静寂、祈りにも似た深い弦の響き。ブルックナーの交響曲の録音では伝わなない殺気のようなものまで感じさせる素晴らしい体験でした。

1楽章はステージ全体から発せられる抑えこんださざ波のようなトレモロにホルンの聞き慣れたフレーズ。会場の霧のような静寂からほのかに光が射すようなブルックナー特有の開始。録音で聴くのとは明らかに異なる気配。冒頭からフルオーケストラが振り切れるような号砲とスクロヴァチェフスキ特有のドイツ風ながら伸びのある弦のメロディーが繰り返され、いきなりブルックナーの大伽藍が眼前に出現。ジュピターとは逆にゆったりしたテンポとスクロヴァチェフスキ流の間を挟んだ流れのよいフレージングでブルックナーの名旋律をたどって行きます。長大な1楽章だけでも壮大な建築物を眺めるような緊密な構築感。今日はオーケストラのノリもよく、ヴァイオリンパートは素晴らしく深いフレージング。そしてブルックナーのメロディを奏でるのに最も特徴的なのがヴィオラ。今日はヴィオラもキレていました。ホルンは非常に安定した演奏。右サイドだったのでコントラバスも素晴らしいメリハリを表現しているのが良く聴こえました。
2楽章はピチカートを多用して朴訥なメロディーを浮かび上がらせます。終盤の盛り上がりは素晴らしい効果。フルオーケストラの号砲とその消え入る余韻までのタケミツメモリアルの空間に響き渡る余韻。オーケストラの醍醐味を満喫。3楽章は何度もオーケストラが爆発。3楽章が終わるとスクロヴァチェフスキは眼鏡をはずして汗を拭くほど。
そしてフィナーレは宇宙との交信のごとき超絶的な音楽。最後の一音がなり終わった後はしばしの静寂。スクロヴァチェフスキが手をおろしてようやく拍手とブラヴォーの嵐。オケのメンバーの快心の笑顔が今日の出来を物語っていましたね。スクロヴァチェフスキはやはりオーケストラコントロールの達人ですね。

今日はオペラシティのホールが吹き飛ばんばかりの素晴らしい迫力でした。何度もステージに呼び戻されブラヴォーの嵐。最後はオケが出払った後も、今日大活躍の首席ホルン奏者やコンサートマスターと一緒に拍手に応じていました。今日は心に残るいいコンサートでした。



コンサート前のサンドウィッチももう消化済み。それゆえオペラシティの地下鉄からの入口の横にあるインドカレーで嫁さんと反省会。

食べログ:ガンジス 初台オペラシティ店

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もちろん、生ビール。嫁さんはマンゴビール(笑)

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カレーのセットを頼んだら出てきた野菜スープ(ニンニク風味)。なかなか旨い。

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ナンとご飯にカレー2種、タンドリーチキンのようなものにサラダまでついています。カレーはマイルド系ながら生姜が効いていました。なかなかのお味でしたね。



今日は十分いいコンサートを堪能できました。明日からまた仕事ですね。ふぅ。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : モーツァルト ブルックナー 東京オペラシティ

ライスキ/ポーランド室内管の王妃、雌鶏、狩

今日も交響曲を1枚。最近手に入れた珍しいアルバム。

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ヴォイチェフ・ライスキ(Wojciech Rajski)指揮のポーランド室内フィルハーモニーの演奏でハイドンの交響曲85番「王妃」、83番「雌鶏」、73番「狩」の3曲を収めたアルバム。録音年の表記はなくPマークが1996年。レーベルはドイツのTACET。

あまり見たことのないジャケットですが、演奏者がポーランドということでディスクユニオンでみつけて手に入れました。ロシアもの、ポーランドもののハイドンには良い演奏が多いとのこれまでの経験からピンときたもの。勘はあたりましたね。これがなかなかの名演。

ヴォイチェフ・ライスキは全く知らない指揮者ですがこのアルバムのTACETレーベルではベートーヴェンの交響曲全集が出ていたり、これまでもかなりのアルバムがリリースされているところを見ると、かなりの実力者のようです。いつものように略歴を紹介しておきましょう。

ライスキは1948年ポーランドのワルシャワ生まれ。ワルシャワの音楽アカデミーとケルンの音楽大学で音楽を学んだ後、交換留学でウィーンに渡りマスタークラスに参加した。1971年から78年までワルシャワのグランド・シアターの音楽監督を担当し、同時にベルリンとワルシャワのほぼ中間に位置するポズナンのポズナン・フィルハーモニーの指揮者、首席指揮者を1980年まで務めた。また、ボンのベートーヴェン=ハレ管弦楽団の最初の指揮者となるなどドイツとポーランドを中心に活動を広げてきたよう。その後、チェコスロバキア、ハンガリー、当時のソ連、フランス、ギリシャ、ルクセンブルク、スウェーデン、メキシコなど各地のオケの客演指揮者として活躍、1993年からはポーランド放送交響楽団の首席指揮者の立場にある人。このアルバムのオケであるポーランド室内フィルハーモニーは1980年にライスキが設立したオケということです。

Hob.I:85 / Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
キレのいい活気に富んだオーケストラ。小編成のオケでの演奏らしく、テンポ感よく鮮烈な演奏。弦楽器を中心に、すべての楽器がキビキビした演奏。フレージングが感情的になることはなく、器楽的、純音楽的な表情でハイドンの傑作交響曲のメロディーを淡々とそして清々しく描いていきます。アクセントの鋭さ、力強さ、推進力は見事の一言。ハイドンにはこういった演奏が似合います。基本的に非常に鮮明な録音。残響は長くはありませんが録音は自然でオケの各楽器の表情が手に取るようにわかるもの。
2楽章も同様、冒頭から抑えながらもクッキリとしたリズムで淡々とした表情を描いていき、そこはかとない静寂感も感じさせる見事なコントロール。ゆったりと力感を増して行きますが、見事な抑制で、気配のようなものを感じさせる鋭敏な感覚。中盤以降の流麗なメロディーの表現も秀逸。クッキリとしたリズムにビロードのような滑らかな表情の弦楽器のメロディーの対比が見事。後半のフルートのソロがクッキリ浮かび上がるところは鳥肌がたつよう。
メヌエットは予想に反して、ゆったりと色っぽい表情すら感じさせる落ち着いたもの。もう少しカッチリした表情でくると思いきや、さにあらず。メヌエットのあり方に対する独自の視点がありそうです。間と溜めを生かして自在にフレーズを刻むメヌエットが新鮮です。
フィナーレは鮮烈さを取り戻し、メヌエットの豊かな表情と1楽章のある意味険しいアクセントの止揚のような素晴らしい表現。フレーズに軽さがあり、複雑なフィナーレのメロディーがクリアに浮かび上がります。きりりと引き締まったアクセントに複数のメロディーが織りなす表情。1曲目から素晴らしい演奏です。

Hob.I:83 / Symphony No.83 "La Poule" 「雌鶏」 [C] (1785)
つづいて雌鶏。音響が少し変わり、高音に少し濁りを感じますが、基本的には前曲同様鮮明な録音。1楽章は快速テンポにクッキリしたアクセントが痛快。曲想も畳み掛けるようないつものフレーズが活き活きとした表情で浮かび上がります。速い部分の迫力が素晴らしいばかりではなく、抑えた部分をしっかり抑えきることで素晴らしい対比。
1楽章の素晴らしい推進力を冷ますような、癒しに満ちた2楽章のアンダンテ。ライスキの抑えた部分のコントロールはここでも見事。抑えているのにリズム感と色彩感が豊かなことに驚きます。フレーズのひとつひとつののメリハリが良く練られていて、フォルテッシモの迫力ではなく構成の巧みさで感じさせるダイナミックレンジ。
だんだん慣れてきたライスキのコントロール。メヌエットは柔らかく色っぽいという位置づけです。そしてフィナーレはこの曲でも総決算のような壮麗な演奏。軽さもキレもきちんと備わることで古典期の交響曲の枠の中で表現を極めた感じを残しています。

Hob.I:73 / Symphony No.73 "La Chasse" 「狩」 [D] (before 1782)
時代が少し遡って、ハイドンの交響曲の作曲技法が最後輝きを放つ前の穏やかな時代の曲。フィナーレが単独で良く取りあげられる曲。先日取りあげたヴァントの得意とする76番もそうでしたが、穏やかな曲想と晴朗なメロディーの魅力に溢れる曲。
1楽章は穏やかな序奏からはじまり、主題は晴朗快活な美しいメロディー。ライスキはだいぶ力が抜けて、穏やかな指揮ぶり。ここでもメロディーをクッキリとリズミカルに浮かび上がらせる手腕は見事。前2曲のパリセットからの交響曲ほど曲が凝ってない分、ライスキも指揮を楽しんでいるような優雅さ。
2楽章のアンダンテは、程よい抑えで進み、途中の転調が印象的。素朴な展開ゆえ力みはまったくなく、曲ごとに演奏スタンスをきちんと使い分けているよう。3楽章のメヌエットも穏やかな演奏。
そしてこの曲のハイライトのフィナーレ。流石ライスキ、抜群のコントロールで抜群のノリです。ここでもキリッとしたアクセントが健在。ホルンの号砲と弦楽器のさざ波が交互に押し寄せる快活な曲。これもハイドンの魅力を存分に感じさせる曲。基本的にオーケストラをキリッと鳴らすことにかけては素晴らしい腕前だけに、このような曲はうってつけでしょう。楽天的になりすぎることもなく節度も感じさせるところがが流石です。

はじめて聴くポーランドのヴォイチェフ・ライスキとその手兵ポーランド室内フィルハーモニーのハイドンは、オーケストレイションの見事さを浮き彫りにするスペクタクルな名演。演奏全体に歯切れのよい軽さを感じさせるのに、軽薄にならない芸術性も兼ね備えたなかなかの演奏。なんとなくポーランドのハイドンは良い演奏が多いという勘で手に入れたアルバムですが、的中です。評価は全曲[+++++]としました。

交響曲が続きましたので、そろそろ10月の集中取り組みテーマの弦楽四重奏曲に戻らなくてはなりませんね。

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 王妃 雌鶏 ハイドン入門者向け

プロフィール

Daisy


Author:Daisy

なぜかハイドン(Franz Joseph Haydn)が特に気に入り膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。東京在住のごく普通のサラリーマンです。

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ハイドン所有盤リスト
Joseph Haydn Discography at H. R. A.
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものは末尾に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

2017年7月のデータ(2017年7月31日)
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